NERIUS150LD-BINO

  【動機】

①10数年ぶりに星を見たくなり,子どもも楽しめる観望用の機材について検討をはじめました。
②見え味に迫力があると言われている自作大型ドブソニアンか,
③感動という言葉で評価する人の多い松本さんの手作り双眼望遠鏡にするか,
④悩んだ結果,子どもにとっては迫力より感動,また,子どもでも安全でのぞきやすく,しかも正立!
 という自分なりの整理をして松本さんに相談を兼ねて一報をいれました。そして,子どもが使えるように目幅等工夫をして いただけるということでネリウス150LD利用型の製作をお願いしました。

【機種の選択について】

 松本さんより2階からの移動は困難で1階での保管もしくは比較的軽いアクロマートの機種への薦めもあり,悩みましたが,私にと ってセミアポクロマートという肩書きの魅力は大きく,結局,ネリウス150LD利用型にしました。

 しかし,完成直前に松本さんのお店で展示されていた10cmアクロマートでのなんとも言えない立体的で,アクロマートとは 思えないシャープな像を見て,色収差だけでセミアポクロマートとかに悩んでいた自分が恥ずかしくなったりしたことを付け加えて おきます。

【使用してみて】

 ①心配していた重さは,私はですが(身長171cm体重62kg運動特に無し),全長がコンパクトなため階段での移動も十分可能でした。   しかし,この機種は対物側が重いため運搬時にバランスが悪く,また,細いステンレスのハンドルを持つのは手が痛いので,バンド 等は初期の位置のままで重心を対物側に移動した位置で持てる木製の取っ手を取り付けました。材料は35mm径の木製手すりと支柱。 アルミ製の支柱はグラインダー(私にとって初めての使用)で切断し,中心にM8のステンレスボルトを貫通(初めてのねじ切り)させ て強固に固定できました。これで,15cmの屈折×2とは思えない移動が可能となりました。

 ②EMSの調整については,実際に使ってみると,悩むことも手間に思うこともありませんでした。言われた通りに,目幅を合わせて, 接眼鏡から目を10数cm離し,両目で対象物を漠然と見て,左右の像が重なるように右のEMSの上下調整ネジ,そして,左右のネジ を回してやれば,(私はですが)合った瞬間,脳のストレスがスーと消える感じがします。その時間は数秒です。  天体写真のピント合わせのように微調整する必要はまったくありません。最初は厳密に合わせないと星がすべて2重星になるのかと 思っていました。また,最初は明るい昼間のうちに鉄塔等で合わせるようにと指導もありましたが,夜間に組み立てた場合等でも,明る い星を見ながら調整をしても難しいとも思ったことはありません。このことで,ホームページ等ではかなり慎重に案内等をしておられる のだという松本さんの心が理解できました。

 ③新型ピント補償機構も快適です。まさに,シンプルイズベスト。特に目幅が大きく違う子どもと一緒に見るには非常に便利です。 余談ですが,私はこの機構の付いた美しいEMSユニットを手に持ったとき,なんともいえない満足感に心が癒されます。松本さんの EMSにかける情熱が癒しとなって伝わってくるのでしょうか。

 ④レンズを通して見た感想 昼間見た山は,木々の葉っぱが1枚毎くっきり分かるほどシャープで影の部分とハイライト部分のコントラストがとても美しく,星は (条件は肉眼で4等星位の市郊外)とても明るく色も鮮やかで,にじみもなくくっきりとシャープ,そして双眼鏡(私の3~5万円, 5.6~8cm)のイメージからは想像出来ないほどクリアーな視野…ということになりますが,この双眼望遠鏡の本当の凄いところは, 最初に少し書きましたが,そういう評価でないところにあります。

 上手く言えませんが,美しい等という感覚が単眼とまったく違うのです。特に月を見たときに実感します。(EWV32mm+2倍ショ ートバロー)なんと月が丸い球体に見えるのです。しかも,クレーターの周囲の高いところや低いところが立体的に見えるのです。双眼 視により頭の中で想像力がフルに活動して,見えないものまで見えているのでしょうか…松本さんのお店で見せていただいたとき,10歳 の子どもが「手のひらの上に街灯があるみたい!」,「歩いている人の心の中が見えるみたい!」とはしゃぎながら言っていたのですが, まるでそのような感覚でした。不思議なことに双眼望遠鏡を片方だけと双眼視とを見比べて見ると,同じ対象でも双眼視の方が明るさや ディテールそれに大きさまでもが数段アップしているように感じます。そのためか,単眼(10.5cmアポクロマート)で月を何度も見た 経験のある子どもも双眼望遠鏡を覗いて思わず「わぁスゴイ!」と声を出していました。

 まだ,条件の良くない空で,しかも,家の窓から見える沈む秋の星と3日月しか見たことがないのですが,M31が22倍にもかかわ らず,びっくりするほどはっきりと大きく,しかも,ぽっかり宇宙に浮かんだように見えてびっくりしました。このハイコントラストで 明るくシャープな像を確認する毎に,セミアポクロマートで良かったと(比べた訳ではありませんが)今では満足しています。

 大型高級双眼鏡等他の機材を多く覗いた経験がない私ですが,この双眼望遠鏡で初めて望遠鏡で見る星々等の本当の美しさに会えたよ うな気がします。

 また,目幅のカスタマイズで最小目幅は57mmとなっていますが,子ども(8歳)の53.5mmの目幅でケーニッヒ40mm,さらにEWV32 mm+2倍ショートバローでも特に問題は無いようです。子どもが使用する上で心配していたアイポイントの位置によるブラックアウト もまったく問題なく使用しています。

【これから】

 動機の欄に書かせてもらった目的のほか,個人的にも機材を駆使してもっと深く星等を見るというより,心が疲れたとき,何気なく空 が気になったとき等に近くの山でのんびり眺めるスタイルになることと思います。その道具として私にとって大きなプレゼントとなり, 松本さんには製作していただき本当に感謝の気持ちでいっぱいです。
 また,私は岩国在住広島勤務です。この近く等で関心等のある方がおられましたら,連絡いただければと思います。2008.2   

 岩国在住広島勤務 N

Comment by Matsumoto/ 管理者のコメント;

 専門用語や天文キャリアに関連した事柄は散りばめられていませんが、core(コア)な部分の感性に響く リポートをいただきました。 150LD-BINOに感動してくださったようですが、このリポートを読んでいる私も、そのくらい、 いやそれ以上に感動しています。

 2人の子供さんがBINOで観察しておられる写真が全てを物語っています。遠い昔はこういう絵が頻繁に見られたような気がします。 私だけがそう思うのでしょうか。忘れ去られようとしている何か貴重なものがこの写真に見え、目頭が熱くなりました。

 focus-compensator(ピント補償機構)も使いこなしてくださっているようで、嬉しく思います。(このピント補償機構は第二世代仕様 ですが、実は第三世代仕様のアイデアが煮詰まりつつあります。^^;)

 理想的な取っ手を付けてくださいました。これなら楽に持てますね。 吊り輪や鉄棒よりも太くて、平行棒よりも細い太さのようですが、 大変持ち易そうですね。今後の参考にさせていただきます。

 もっとコメントしたいことがあるようですが、蛇足になりそうですので、 ここらで締めくくります。Nさん、素晴らしいリポートをありがとうございました。

CAPRI-102ED-BINO

 メガネのマツモトさんに製作を依頼しましたCAPRI-102ED-BINOが昨年12月に完成しました。 おそらくCAPRI鏡筒の双眼望遠鏡として世界初、1号機だと思います。 機材導入の経緯から、製作過程、インプレッションまでReportします。 長文で申し訳ありませんが、しばしお付き合いいただければ嬉しいです。

【導入の経緯】

・大口径&双眼視に魅せられて、現在は口径38cm/F5のドブソニアンに双眼装置をつけて 観望しております。このシステムでの双眼視の最低倍率は140倍/実視界0.6°となります。

・中倍率用にミヤウチ製10cm双眼鏡(セミアポ45度対空)を愛用しておりました。  大変、覗きやすくよい機材でしたが接眼レンズの選択に制約があり、手持ちの広視界ア イピースが使用できません。また月を見た時、エッジ部での若干の色収差が気になり ました。ドブではカバーできない140倍以下をカバーできる双眼鏡があればいいなぁと  常々思っておりました。

・天文仲間にSKY90-BINO、12cmF5BINO、FS-102-BINOのユーザーがいらっしゃいます。  彼らの機材を覗かせてもらう度に心はどんどん高まってきてました。「いつかは自分も 双眼望遠鏡を手にしたい」と。

・双眼望遠鏡を検討する際、散開星団、天の川など低倍率から惑星など高倍率まで一台で こなせ、月をみても色収差を感じない鏡筒となるとやはり、アポクロマートを使いたい。  しかし、鏡筒だけでも高価でなかば諦めかけていた折、笠井トレーディングから新製品  :CAPRI-102EDが発売となりました。  スペックはほぼ希望どおり、これなら価格も手が届くのではと思うと高ぶる心が抑えきれず、 実際の星像を確認することなく、今回の製作依頼となりました。

【BINOの仕様と製作】

・CAPRI鏡筒がマツモトさんへ入荷したとの連絡で早速、手持ちのアイピースで合焦の確認 と打合せを兼ねてマツモトさんを訪問しました。CAPRIはEMSの使用も想定し、市販鏡筒 の中ではバックフォーカスを十分にとってある鏡筒なのですが、手持ちのアイピースで最 もバックフォーカスが必要なWS(ワイドスキャン)20mmにおいてはかろうじて合焦する  ものの余裕がないことがわかり、エンドフランジの加工で1cm短縮していただきました。  これでほとんどのアイピースで合焦可能です。(マイナスポイントアイピ-スアダプター など使用すると筒は無加工でも合焦できるかもしれませんがEMSの保護フィルターとの干 渉を確認しないといけません)  この短縮改造で、CAPRI純正のマイクロフォーカサーがそのまま使用できました(写真③)。

・眼幅の調整は10cmクラスでは鏡筒スライド式がマツモトさんの推奨とのことで、この方式としました。・その他、主な加工は、左鏡筒のマイクロファーカスノブの左右対称化加工と、左右鏡筒バ ンドが干渉する部分の切除加工です。

・CAPRI鏡筒がマツモトさんに入荷してから、製作着手までの約1ヶ月、1本をお借りし実際の 星像を確認しました。高倍率でも色収差はほとんど気にならず、星像も非常にシャープで 優秀な機材であり、完成したBINOに寄せる期待がさらに膨らみました。

【BINO完成・ファーストライト】

・CAPRI鏡筒はブルーのアクセントカラーが印象的な美しい鏡筒ですが写真①のように BINOにするとさらに美しい姿の双眼望遠鏡になりました。

・星像のファーストライトは、遠征仲間(気ままに星空観望仲間)の観望会となりました。  写真②は観望会当日のものです。BINO完成以来、遠征にはBINOと38cmドブを  車載し、それぞれの対象に合わせて楽しむという、とても贅沢な観望を楽しんでおります。

・いよいよファーストライトです。星像は極めてシャープ、かつ双眼の効果で臨場感あふ  れる見事な光景が視野いっぱいに広がります。2重星団、M46/M47、プレアデスなどは多 くの天文仲間からも絶賛でした。集光力では38cmドブには及びませんが、星像のシャープ さはさすがアポクロマートです。微光星までカチッと見えます。また明るさについて は単眼の2倍ではなく、数倍の明るさに感じます。10cm×2本の計算上の口径面積は14.4 cmに相当しますが感覚的には口径20cmかそれ以上の明るさに感じます。さらに倍率も双眼視 の効果により、単眼よりも大きく見えます。目の専門家のマツモトさんによれば、両目 で見ることで解像力が上がるため、大きく見えるように感じるとのことです。

【双眼用アイピース類】

・もともと双眼装置ユーザーであったので31.7mmサイズの広視界アイピースはペアで所有  しておりました。写真④がCAPRI-BINOに使用する見掛け視界80度以上のアイピース郡です。 高倍率にはJAPANOPTIK製の×2.8バローレンズを使用します。

・これらのラインアップで下のように倍率、実視界を対象に合わせて自在に選択できます。  アイピース   見かけ視界    倍率    実視界  射出瞳径

 EWV-32mm     85度     22倍    3.81度   4.6mm
 WS-20mm       84度     36倍    2.35度   2.9mm
  NA-17mm      82度     42倍    1.95度   2.4mm
  WS-16mm      84度     45倍    1.84度   2.3mm
  NA-13mm      82度     55倍    1.49度   1.9mm
  UWA-8.8mm     82度     81倍    1.01度   1.3mm
  WS-20×2.8     84度     100倍    0.84度   1.0mm
  WS-16×2.8     84度     125倍    0.67度   0.8mm
  NA-13mm×2.8   82度     154倍    0.53度   0.7mm
  UWA-8.8mm×2.8  82度     227倍    0.36度   0.4mm 

・アイピース交換時の重量バランスについてですが、HF経緯台のフリクションねじの調  整で多少のバランス変化でもフリーストップとはなりますが、高倍率ではバックラッシ ュが気になります。締め付けがきついと耳軸部の樹脂シートの微小な変形により発生す るのでは?と考えてます。そこで最も重いNA17mm装着時がデフォルトになるよう、鏡筒 バンド位置を決め、他のアイピースではウエイトをBINOのハンドルに引っ掛けます。  これにより、フリクションねじをかなり緩めた状態でバックラッシュがほとんどなくフリーストップ を達成しました。

【観望インプレッション】

・月: 球体であることを強く感じます。また雲の流れが月面を通過する時などは、遠近感に溢れ、立体的な光景が楽しめます。また200倍を超える倍率で月のエッジをみても、 色収差はほとんど感じません。ED2枚玉とはいえ、大変パファーマンスの高い鏡筒です。

・M46/M47: EWV-32mm(22倍)でM47の北にある散開星団NGC2423も同じ視界に入ります。  各々の散開星団の特徴が同時に見え、賑やかで面白い光景です。

・ホームズ彗星: 立体感、透明感に溢れ、まさに宇宙を漂う「水クラゲ」のようでした。

・M42: NAー17mm(42倍)で小三ツ星の全景とトラペジウムもキッチリ見えます。この倍率  で射出瞳径2.4mm、バックグランドも暗くなり、オリオン大星雲も浮かび上がります。

・土星: 高倍率の対象ですが、当日のシンチレーションに合わせ倍率、×154、×227を  選択します。227倍においても十分シャープな星像です。  これ以上の倍率はまだ試してませんが300倍程度なら実用域かもしれません。  高倍率時は追尾と合焦操作などで機材に触れると振動がやや気になりますが、この振動 は数秒で収まります。真っ暗なバックグランドにシャープな土星が浮かんでます。  コントラストも高く、本体の縞も良く見え、そして本体が球形であることを感じます。

・ばら星雲: さらにEWV-32両眼にナローバンドフィルターの装着で、ドブでは部分しか見 ることのできなかった「ばら星雲」の全景を見ることができました。
 実は同じフィルターを2個持っていませんので、左右で若干異なるフィルターを装着して みました。 NBN-PV(IDAS)とスーパーネビュラフィルター(笠井)ですが、片目ずつ覗い てみるとフィルターによるコントラストの差はわかるのですが、両目で見た時は違和感  は全くありません。恐らく左右の明るさ、色などの若干の違いならば人間の脳内で合成 してひとつの映像として感じているのでしょうね。  この現象を応用すると、例えば、UHCとOⅢとを左右に装着し、微光星の輝きを損ねるこ となく星雲のコントラストを上げる。あるいはOⅢとHβの組み合わせで難物とされる対 象をより美しく見ることができる。このような期待ができるかもしれません。  今後のチャレンジ課題です。

・おとめ座銀河団: 実視界3.8度が確保でき、口径10cmとは思えないぐらい、多数の銀河を はっきりと確認できます。

・M81/M82のペア: BINO;42倍(NA-17)、38cmドブ;59倍(EWV-32)で比較してみました。  10cmBINOは大口径に決して見劣りしません。コントラストはBINOに軍配があがります。  (瞳径の差によるコントラストの向上の影響もあるのでしょう)

【今後の期待】

 昨年12月に完成し、まだ2ヶ月弱の稼動ですが、夏の天の川やその中の暗黒星雲、網状星 雲の全景など今から楽しみです。

【最後に】

 以上、大変長々と書き綴ってしまいました。BINO自慢ばかりでお聞き苦しい点が多々ありま したがご容赦ください。BINOの購入、製作を計画されている方やBINOユーザーの方に少しでも 参考になれば幸甚です。

おおた
奈良県

Comment by Matsumoto/ 管理者のコメント;

『おおたさん』より、CAPRI-102ED-BINOの詳細なリポートをいただきました。  おおたさんには、CAPRI-102ED鏡筒の入荷時と、BINOの完成時(お引取り)の2回、ご訪問いただきましたが、 やはり直接お会いすることで、仕様の打ち合わせばかりでなく、より多い情報をお伝え出来たような気が しています。(百聞は一見にしかずの諺が当てはまります。)

 「長文なので編集して良い・・」とおっしゃっていましたが、有用な情報ばかりですので、 写真を含め、全文を掲載させていただきました。これからBINOを検討される方にとっても、すでにBINOの ユーザーとなられている方にとっても大変有意義なリポートだと思います。

 10年ほど前より大口径(15cm)アクロマートがアマチュアの射程に入って以来、Deep-Sky用の大口径 BINOブームが続いているわけですが、最近になって中小口径のアポ鏡筒の価格的なハードルも下がり、いよいよアポ鏡筒BINO の時代の到来の兆しが見え始めました。

 おおたさんのBINO用アイピースのフルラインナップには感心いたしましたが、左右異種のネビュラーフィルターを試された 研究心にも注目しました。私たちの眼は、左右の像の大きさの違いには極めて不寛容で、ストレスの原因と なるのですが、左右眼の視野の色の違いには極めて寛大です。試しに肉眼で白い壁等を見ながら左右の眼による壁の白色 を比較すると、大抵の場合、色調が大きく異なることを発見して驚かれることと思います。 おおたさんが提案された 左右異種のフィルターを使用することの効果については、今後多方面で検証が進むことを期待しています。

 鏡筒が高級になるに従って、架台が課題になって行くのは、もとより承知しておりました。 ナイロンブッシュ式の耳軸は、中低倍では極めて有効であるものの、高倍率では使いにくいようです。アポ鏡筒仕様の BINOユーザーの方のために真鍮製の耳軸を用意しましたので、今後希望される方はご用命ください。ただし、真鍮耳軸に しますと、バランスの変化に敏感になりますので、その対策も必要です。(2009年4月10日追記: その後の検証で、低倍に於いても真鍮耳軸で問題ないことが判明し、現在では全面的に 真鍮耳軸に移行しました。)

 おおたさん、この度は記念すべきリポートをありがとうございました。 また、お名前は分かりませんが、 おおたさんをこの世界に導いてくださったSKY90-BINO、12cmF5BINO、FS-102-BINOのそれぞれのユーザーの方々にも 深くお礼申し上げます。

NP127-BINO(自作)(2007年11月25日)

かねてより計画中であった松本式EMSを使用した屈折双眼望遠鏡が完成したのでご報告いたします。

 最初の始まりは松本式NP101双眼望遠鏡でした。この機種で完全に屈折双眼望遠鏡の素晴らしい魅力にとりつかれ、 無謀にも大口径化へと進んでしまいました。
 まずは鏡筒選択です。中・低倍率で広視野を楽しむことを重点に鏡筒を選びました。結果、鏡筒はNP127 (660mm口径比5.2) に決定です。TOA130や現在単眼で使用しているTEC140などと随分悩みましたが、小さく軽いこと(1本7Kg弱)と焦点距離が決め手 でした。31.7mmサイズのアイピース(パンオプティック24mm)でさえ33倍2.3度の視野が取れます。
 鏡筒は固定式として目幅調整は松本式EMSヘリコイド式を使用、また筒外焦点距離の調整のために接眼部をフェザータッチ フォカッサーに変更しています。ヘリコイド式EMSの使用がこれほどよいとは思いませんでした(以前のNP101双眼は鏡筒平行移動 式でした)。ヘリコイドの質感は最高ではありませんが、現在望み得る一番良いシステムではないでしょうか。松本式EMSの発明で 私のようなアマチュアに双眼望遠鏡の道が開けたのだと思います。
 架台はフォーク式経緯台でTG-Lのフォークアームを2本と水平回転軸を流用し手元にあったビクセンのピラー脚使用にしまし た。ノブスターを利用し工具無しで簡単に組み立てができます。架台は鏡筒が小型(通常の10cmより少し大きい程度)であるため にフォークアームの間隔も狭く作製することができて十分な剛性を確保することもできました。とにかく小さいことは重要な性能 の一つだと思います。
 仰角はおよそ85度です。ベースプレートの一部を切り込んで鏡筒との干渉を避けています。フォークアームを寝かせればよい のですが、その工作精度に自信がなかったこととベースプレートとフォークアームの固定ネジの強化をしていないので垂直で妥協し た結果です。もともと経緯台では天頂が特異点になるのでそれほど気にはなりません。
 バランスシステムはハンドルを利用してロスマンディーのバランスシステムを流用しています。これは垂直方向のバランスも 取れるのでなかなかよいシステムです。本当はハンドルをもっと長くして鏡筒の保護にも利用したかったのですが、工作機械の大き さの制限があり予定より短くなっています。架台の塗装はマークエックスブルーにするつもりでしたが、実際に見せてもらったペン タックスMS-3Nのグリーンに心を奪われ、外注でペンタックスグリーンに塗っていただきました。鏡筒と組み上がった姿はかなりフ ォトジェニックです。
 ファインダーはテレビューのスタービームと宮内の5cm正立ファインダーを使用しています。たまたま持っていただけで特に 選択の理由はありません。  自動導入は必要ありませんが惑星をじっくり観る場合に自動追尾が欲しくなります。完全なるフリーストップと自動追尾の両立 を可能とするシステムが理想・・・ですが、これについてはまだ具体的にアイディアがまとまりません。実現はまだまだ先になり そうです。私自身は30分も追尾してもらえば十分なのですが・・・。
 アイピースについてはまだ決定していません。
通常は1.25インチサイズアイピースのテレビュー パンオプティック/24mm(27.5倍2.3度@瞳径4.6mm)、ナグラータイプ5/16mm( 41.3倍1.9度@瞳径3.1mm)の使用頻度が高いようですが、最近はテレビュー イーソス13mm(50.8倍1.9度@瞳径2.5mm)がデフォ ルトになっています。さらに広視野を望む場合はパンオプティック27mm(22.4倍2.6度@瞳径5.2mm)を使うことが多いようです。 アイピースとの組み合わせでは4度弱も視野も可能ですが、星像の美しさや視野のコントラストを考慮すると上記のようになりまし た。中・高倍率は経緯台なので必然的に広視野が得られるアイピースになります。高倍率は双眼効果?で132倍程度でかなり満足し ています。
 星空の下での報告です。アイピースの選択はイーソス13mm(50.8倍1.9度@瞳径2.5mm)です。この組み合わせでは視野のほと んど端まで星が「点」です。歪曲収差は非常に少なく、フリーストップで視野を動かしても違和感がありません。中心部のコントラ ストも十分高いようです。超広視野と双眼効果でそのまま肉眼で見ているような錯覚に捉えられます。アイレリーフは15mmでアイポ イントがややシビアですが、双眼なので目の位置はほぼ固定されるためか(しかも星空の背景は黒い)ブラックアウトもそれほど気 にならず、何ら問題はありません。ただ、どうしてもアイレンズと眼球の距離が短くなるのでアイレンズが曇りやすくなります (興奮しているためでもあります)。架台の強度も十分でしかも非常にスムース、おかげで余計なことに気を回さず星空に浸るこ とが出来ます。
 M31では伴星雲が浮遊している感じがします。この浮遊感は初めての経験でした。M42ではトラペジウムがあれだけはっきり 離れて見えるのに視野内に小三つ星が入っています。プレアデスも星がゴチャッとではなく離れた感じで全部視野内に入ります。 二重星団も十分離れているのに同一視野です。しかも中心部では擬似立体感を味わうことが出来ます。M13は背景?の星野に周辺が 星に十分に分離した状態で浮かんでいます。M57も然り。これらは初めての経験でした。
 なにぶん高価な機材であり、またほとんど工作経験のない状態での制作でした。架台のアイディアを頂いた井上さんをはじめ として鏡筒の入手に尽力していただいた吉田さん、奈良部さんや三野輪さん、服部さん、野木さんらのアドバイスやご協力が無けれ ば完成まではいたらなかったと思います。 もちろん松本さんのEMSが存在したからこそ実現できたシステムであります。この場をか りまして厚く御礼申し上げます。
 最期に素晴らしい星空双眼視の世界を我々アマチュアにもたらしてくださった松本さんに再度感謝したいと思います。
by Mr. Kuroki Yoshifumi

Comment by Matsumoto / 管理者のコメント;
 この度、黒木さんよりNP127-BINOご自作のリポートをいただき、まずはこのBINOの美しい外観にしばし見入りました。  鏡筒からfocuser、EMS、バランサーシステム、架台、ポールと、見事にコーディネイトされています。  『機能的に優れたメカは見た目も美しい。』というのが私の信念ですが、このBINOはまさにそれを主張 しているようです。
 バックフォーカスを稼ぐためのフェザータッチフォーカサーの使用は、Tsujiさんのsky90-BINOと同じ方法 ですが、これは、鏡筒のorijinalの状態をキープできる良い方法だと思います。 純粋に特定のブランドで統一 することに拘る方もあるでしょうが、各部で優れたパーツを集結させれば、結果として新たな統一感が出て来るものだと 思います。
 イーソス13mmの使用で、このBINOシステムの完成度の高さをさらに駄目押ししています。 さらりと実視界を書いておられますが、 これが今話題の見かけ視界100度のアイピースですね。先日のサミットでも、数名の方が単体の同アイピースをチェックしながら 驚嘆の声を上げていました。「100度は無駄に広い視野じゃない!」と異口同音に言っておられたのが印象に残っています。(残念ながら 私は隣の方で150LD-BINOでのDEEP-SKYに酔っていましたので、このアイピースを覗くチャンスを逃しました。)
 一昔前とは、自作の方法も変わって来たと思います。ゼロから製作することに拘る方も未だにおられるかも 分かりませんが、優れたパーツが以前よりも買いやすくなって来たことを考えると、パーツは極力市販の優秀な物から選ぶのが 賢い方法だと思います。 自作の楽しみが無くなったのではなく、優れた完成パーツの選択肢が増えたわけで、わざわざ そられのパーツ自体を自作するメリットがなくなったということです。市販パーツをうまく利用しながら、ここぞという 部分で自前加工をすれば良いのです。
 タカハシの片持ちフォークを2個使用したフォークは、その発想はもとより、機能的にも素晴らしい物であることが 分かります。 現在の所、当方では架台の製作までは手が回らず、VIXENのHF経緯台をほぼそのまま使用していますが、黒木 さん製作の架台を見ると、それが恥ずかしくなります。
 また、わずかに天頂を諦められたのも賢い trade-off だったと思います。  先日のサミットでもそうでしたが、EMSユーザーの方々の工夫に、私自身も大いに刺激を受け、新たな開発のエネルギーを いただいています。その意味で、私こそこの度の黒木さんのリポートにお礼申し上げます。  

「スノー」さんの ホームズ彗星観測記 (2007年11月6日)

 10月下旬になり、彗星急増光の情報が飛び込んできました。そうですホームズ彗星です。自宅では、台風一過の日の 夜半過ぎに初めて確認できました。15cmBINOで見ると、2重の丸い光芒に包まれた見たことのない光景が広がって いました。双眼による立体感も手伝って、何かの原生生物を見ているような姿でした。

 その後、晴れれば、自宅にて毎夜観望を継続しておりましたが、少しずつ大きく薄くなっていく彗星の姿に、早く遠征観望したい と言う気持ちが強くなって行きました。そして、昨晩、やっと月の影響を逃れられる週末と言うことで、奥日光まで、BINO を連れて遠征に行きました。体調が不良のため、現地滞在時間は2時間未満でしたが、彗星を堪能するには十分でした。

 BINOを設置して、早速、EWV32mmを装着して彗星を覗くと・・・驚きました。明るく丸い広がりの外に更に薄く、 寒色系の大きな広がりが見られます。自宅では、明るい中心部を濃淡のある2重の光芒が包んでいるように見えましたが、実際は 第3の光芒と言うか薄いガスのような広がりがあります。濃い光芒が白色から薄い黄色イメージに対して、 外郭の薄い光芒は淡い 青緑の色が印象的です。

 更に倍率を上げてナグラー16mmを装着すると、薄い光芒が視野一杯に広がりますので、1.5度程度の広がりはありそうです。 自宅では、BINOや20cm反射等で観望してきましたが、このような広がりは確認できませんでした。ちなみに、奥日光でも 小型の双眼鏡では確認できませんでした。実際、この外の広がりは相当薄く、BINOの片側だけで見ると(単眼では)、見落とし そうな淡さです。また、16mm装着時は更に淡くなり、色は感じなくなりました。

 さて、濃い光芒の部分は、もっと倍率を上げられそうですので、ミードUW8.8mm、4.7mmと使用し、倍率を約85~16 0倍まで使って観察して見ました。核周辺の光芒で、核の後ろの濃淡や、第2の光芒の上部の噴出す雰囲気が微かに認められます。 この詳細な感じは、数日前に大口径ドブで見せて頂いた光景と良く似ています。恐らく、一度明瞭に観察させて頂いたおかげで、 昨晩は微かに見えたのだと思います。もちろん、暗く透明度の高い空に恵まれ、BINOの高コントラストに助けられたことは間 違いないでしょう。そして全体的な球状の姿は、双眼による立体感で、まるで彗星帝国が地球に向かってくるような光景です (歳がバレル・・・)。

 昨晩は、短時間でしたので、ホームズ彗星を中心に、合間にメジャーな星雲星団を流す形の観望となりました。この時期は、 透明度の高い空の下で、網状等の夏の対象から、オリオン大星雲と言った冬の天体まで楽しめます。特に空が澄んでいるだけに、 BINOによる天の川流しには最高のシーズンです。そこに、これまでの彗星と様相が異なるホームズ彗星が輝いています。日々、 その姿も変化している上に、暗い空で初めて見えてくるものがあります。これからも可能な限り暗い空にBINOを持ち出し、 ホームズ彗星観望を継続したいですね。もちろん、明るい自宅でも。。。(スノー)

Comment by Matsumoto/ 管理者のコメント;
 久しぶりにスノーさんより観測リポートをいただきました。 初期の12cmF5-BINO以来、ずっとmotivationを失われる ことなくEMS-BINOを活用してくださって、大変嬉しく思います。 私の方はまだ同彗星を見ていませんが、BINOの納期を 待ってくださっている方々のことを思いますと、それどころではございません。^^; 

BORG 76/101ED-BINO

 「松本さんの双眼天体望遠鏡」と言えば充分聞き及んではいましたが、初めてそれを見たのは東京「あきる野市」にある スタークラウド宮野さんのショールーム(William Optics代理店)でした。雨模様のせいか2階からの景色はいまいちで したが、何よりびっくりしたのはZenithstar 80 EDの左側の鏡筒が何んとスルスルと嘘のように軽く左右に移動できること でした!
 これはただものではない、と直感しました。是非入手したいと考え、松本さんのHPで値段を調べると、とても2本の鏡筒 込みの値段とは思えないreasonableなものでした;しかし待てよ、うちには屈折が5本もある!これ以上新規に入手したら 部屋で座る場所もなくなるではないか?何とか手持ちの鏡筒を活かしたい。

 Scope Lifeの遊馬さんに相談したら、幸いにもボーグの77 EDと101 EDの「訳あり品」が1本づつ格安に入手できました。 Borgはレンズ交換式なので、これなら手持ちの鏡筒とあわせて二種類の双眼天体望遠鏡が一挙にできるかも知れない! 松本式のミラーは十数年前に買った手持ちがあります。メールで松本さんにお尋ねしたところ、問題なくそれを活かしてEMS セットとして頂けるとのこと・・・これで一応自作材料は揃ったようです。 勿論、松本さんの「クラフツマンシップ」に頼る方が無難なのですが、なぜか「作りたい」という衝動がおさえられません。

 はじめ無謀にも鏡筒スライド方式を考えましたが、素人がそんなムリをするより、EMSに目幅調節用のヘリコイドをつけてもら えば済むではないか、と考え直しました(ただし、焦点合わせを簡単にするためには本当はスライド方式の方が分があるように も思えますが・・?)。
 松本さんからはメールで懇切な指導が得られました! 鏡筒間隔は156ミリ程度が良いとのことで、早速近くのドイトに行って 材料を買い漁りました;まさに「クラフツマンシップ」ならぬ、「ドイトマンシップ」で作ったのが写真1の鏡筒台座です。 木板も3ミリのアルミアングルで補強するとかなりの強度が得られます。予め眼鏡に定規をあてがい鏡で眼幅の見当をつけて いたので、あとはEMSに内臓されているXY調節機能の助けを借りて意外に容易に「双眼視」が実現(!)しました。片目で見る のとは全く違う!

 一応、製作に先立つコンセプトとしては;
[1] レンズ交換式(77EDと101ED)にする場合、両者のレンズハウスの重量差を考慮すると運搬用の取っ手は前後にスライドお よび固定できることが好ましい(ドイトでは充分に長い金属取っ手は売っていないので)。
[2] その取っ手は観望中には不要だから、着脱式としてファインダーと交換できると面白い。
[3] ファインダーは「対空用」としては90度の正立ミラー(松本さんの31.7mm用の小型ミラーも所有していましたので)を使 用し、一方「地上用」としては普通の45度正立プリズムを付けたものをそれぞれ製作する。
[4] 見る対象によっては微動の利くTA経緯台の方が良い場合もあり得るので、HF経緯台との間で簡単に兼用可能とする。

 製作の手順としては;
A]アルミアングル材で補強した木板をHF汎用プレートに取り付け、その下から自作の木製アリガタでプレートをサンドイッチ 式にはさんで頑丈に固定。これで写真1のようなHF/TA兼用の鏡筒台ができました。なお、中央の長いアルミ材は「運搬用の 取っ手」または「ファインダー」をスライドさせるためのレールです。
B]このレールには写真2のAの「取っ手」およびBの「対空直角ファインダー(松本氏の小型ミラー装着)」のいずれかを 取り付けられます。なお、Cは45度プリズム付きの地上用ファインダーです(いずれも鏡筒部分は自作)。
C]あとは鏡筒バンドを取り付けて鏡筒をしっかり固定し、76EDまたは101EDのレンズハウスをねじ込むだけです。(とは言 え、光軸を物差しレベルで±0.1mm程度の精度で調整する必要があるのは勿論です。一旦調節すれば、あとは鏡筒バンドをゆ るめない限り、対物レンズを交換しても全く問題ありません)
D]一先ず完成です。写真3は76EDを付けたところ(運搬用取っ手が付いたままです)で、写真4は101EDに対空ファインダー をつけたところ、また写真5はHF経緯台からTA経緯台に移して地上用のファインダーを装着したところです。

 結構多目的に使えそうですが、まだ実は木星と月しか見ていません。アイピースは松本さんにお願いしてEWV 32mmを購入しま した。 反省点としては、台座が何分にも木製であるため、10cmクラスなら何ら問題ないのですが、15cmクラスではこの方法では強度 的に不安と思われます。また夜露に頻繁に晒される使用法の場合には耐久性も問題かと思われます。

 外観のスマートさから言っても松本製には遠く及びません。しかし何といっても「自作」は楽しいものです。家から車で5分 のところにドイトがあったので、助かりました。一日に何度もドイトに通ったのが楽しい思い出です。これからも「ドイトマ ン」として頑張ってみたいと思っています。
 何よりも矢張り、自分の考えで設計(?)し作ったものは大袈裟に言えば我が子のように可愛いものです。それにしても松本 さんのEMSと数々のアドバイスがなければ到底できなかったことです。同氏に深く感謝申し上げます。 これからもいろいろとご指導お願い致します。 

立川 四郎
Shiro Tachikawa
E-Mail
HP:ベランダで星空散歩

Comment by Matsumoto/ 管理者のコメント;

 立川さん、BINOの完成、おめでとうございます。
  立川さんとは、BINOのご計画段階で何度もメールを交換させていただいたのですが、EMSをお送りした後は、スムーズに組み立てを 完了され、初期調整方法についても特にご質問はなかったように記憶します。もともと単体EMSのユーザーでいらっしゃったのも、ご理解が 早かった理由かも分かりませんね。

 入手できるパーツと工作手段をうまく活用して製作されたと思います。自分の工作手段と入手可能な材料に従って設計を決める、という 点では、私が物作りをする時の方針と何ら変わりません。 鏡筒をBORGにされたのは、口径76mmと101mmの互換のメリットの他に、この鏡筒の徹底したmodule化による汎用性の高さ、応用性の 豊富さから、自作向きの鏡筒だったという点で正解だったと思います。ヘリコイドは眼視用のメインのfocuserとしては必ずしも操作性は 良くありませんが、これも他のlow-profileのcrayford式等と交換することも可能ですね。

  材料を、金属に限定されずに、利用できる工作手段を考慮されて、木材とアルミ材を組み合わされたのも正しいご選択だったと思います。  自作は、立川さんも書いておられるように、単に予算の節約ではなく、それによってしか得られないものが多くあると 思います。

  自分で作る事の喜びや、作った物への愛着があるのはもちろんですが、私は、『作ることで理解が深まる』という点が自作の最大の 意義だと思います。たとえば、望遠鏡業界には売るだけの立場の方も多いですが、そういう方には、どうしても到達できない 理解の壁のような物があると思います。 
 私は、売るだけの立場と、作る立場の両方を体験して来られた方を知っていますが、その方が、 昔を振り返られ、「あの頃は何も分かっていなかった。下請さんにも随分と無理を言っていた。赤面の至りだ。」というような 意味の事を述懐しておられたのが印象に残っています。私自身も、今でも物を作りながら、ほぼ毎日が新たな発見や反省の連続です。

 鏡筒の選択、材料の選択と、適切な判断をされましたが、眼幅調整の方式をヘリコイド式にされたことも、設計を簡素にする意味で 正解だったと思います。 私が今までに海外に供給した双眼用のEMSセットのほとんどはヘリコイド眼幅調整方式なのも同じ理由です。  ただ、リニアベアリング等の入手先をご存知であれば、自作でも平行移動方式はさほど難しいことはありませんが。

  完成した写真を見せていただきますと、ファインダーも絶妙な位置に配置され、全体も格好良く仕上がっています。確かに機能は 外観に表れると言った感じですね。木材と薄手のアルミアングルを組み合わせる方法は、強度と軽量を両立させる意味では優れた 方法かも分かりません。 そう言えば、”零戦”もアルミ合金材と木材が巧みに組み合わせてあったと聞いたことがあります。 これが、立川さんの初作のEMS-BINOですから、今後のさらなる進化を期待しております。また、観測リポートの方もお待ちしています。
 立川さん、詳細な自作リポートをありがとうございました。

TSA102N-BINO

 12センチBINO(F5アクロマート)を購入して以来、いつかはアポ双眼を所有したいと考えて おりました。そうこうしているうちに新型15センチBINOの発売があり、 また、スノーさんのリポートを拝見してから物欲がどうしようもないくらいに 暴れ出し、最近弾かなくなったギター数本を売ってしまう等金策の後、15セ ンチBINOを注文しました。

 となると本来12センチの載っていた架台が遊 んでしまう。これはもったいない(?)。そこでこの際、アポ双眼にしようと 思いました。注文した15センチBINOとの兼ね合いから、ちょっとFの長 いのと思っていたのと、何人かの方の FS102-BINO のカッコイイのに憧 れ、TSA102N を思い切って2本購入しました。(ローンで~す) N(対物フード固定式)にしたのは特に意味はありません。今まで12センチBIN Oを収納していたケースにもぴったり入ります。値段の方も安いです。

 さて注文してから4日目の日曜日の朝、定休日の会社で息を凝らして(?)待 っていると、ヤマト運輸のトラックの例の「キーッ」と止まる音。とうとう来 ましたタカハシの箱2つ。実はタカハシの望遠鏡買うのは30年ぶりなんです。 フード周りのTAKAHASHI TSA102 の文字が緑色でなかなかです。

 さていよいよ換装です。特に難しいことはなく、落っことさないように気を付 けてと。鏡筒バンドはビクセン製ですが少し大きめだったので、バンド内側に 薄いウレタンを3点貼りにしました。2時間ほどで完成。うーんデカイ。架台 のハンドルはもう少し手前がいいな。(これは松本さんにお願いしました。) フォーカスノブは12センチBINOに付いていたのを使用。ファインダーは 国際光器の正立。ドットファインダーはスカイサーファーです。

 カッコついた ところで会社のガラス越しに遠くの木々を眺めます。よく見えます。ただ当日 は天気も悪く、ファーストライトは翌々日の夜となりました。まずはお月様。 EWV32を付けて見ました。さすがアポです。クレーターの彫りが深いです。 シャープです。12センチアクロには完勝です。エッジが切れ上がる感じです 。次は土星。ショートバローを追加して観望です。輪は鋭く、本体は丸く、何 というかいつぞやグラビアで見た伊東美咲のヒップラインの如しです。暫し見 とれておりました。(土星をです)。恒星は色がきらびやかです。

 総合的にみて、換装は成功と言えると思います。鏡筒を切断せずとも余裕で合 焦します。(例の<上がり>のええっと例のTYPE4-22ってやつでもOKで す)あとフェザータッチフォーカサーがあればと思いました。(また・・・)

 松本様にはいろいろとアドバイスしていただきました。ありがとうございまし た。15センチBINOの残金も使ってしまったので、出来上がりは遅れてもい いです。(嘘・・いや少し遅れる方が・・) また機会があれば、今度は空の暗いところでのレポートを送ります。

                             わかやまん

Comment by Matsumoto/ 管理者のコメント;

 ”わかやまん”さんが気取らずにさらっと書いてくださった原文をほぼそのまま 掲載させていただきました。 12cmF5-BINOから15cm-BINO発注、そして12cm-BINOの TSA102N鏡筒への換装と、筆者のエキサイティングな心情の動きがストレートに伝わって、楽しく 読ませていただきました。

 12cm-BINOが、確か納品から約半年という短命に終わりましたが、発展的なリフォームの結果ですので、 大いに歓迎いたします。 こうした、ユーザーの方自身によるリフォームやカスタマイズは、EMS-BINOを理解 する上での最高の教材であり、それに成功されたということは、”わかやまん”さんがかなりのレベルのEMS-BINO ユーザーになられたことの証明です。
 それでは、観測リポート、お待ちしています。

MEGREZ90-BINO

 2006年12月23日いつもお世話になっている北軽井沢のキャンプ 場でMegrez90BINOで星を見ました。 天の川が楽に見える素晴らしい環境です。 天気は時折曇った時もありましたが、概ね晴れていて星を堪 能する事が出来ました。

 Megrez90BINOで見る散開星団は星像が小さくシャープで、色も 忠実に再現されていて思わず「生きていて良かった!」と思い, しばし時を忘れてその美しさに見入ってしまいました。 松本さんや、BINOを紹介して頂いたスノーさんに感謝していま す。 Megrez90BINOで見るhχやすばるは素晴らしいです。

夜半過ぎは春の銀河観測に没頭しました。 M81、82、M108、フクロウ星雲、M106、M109、M101、M51、M63 、おとめ座銀河団など楽しみました。 9cmとは思えない成果で、生まれて初めて見た星雲もありまし た。

 明け方は水蒸気が多く、ソンブレロ星雲は確認できませんでし た。思ったよりも寒くなかったので、水蒸気が多かったのかも しれません。

 9cmだと銀河はやや迫力不足を感じました。 銀河用に12cm又は15cmBINOが欲しくなりました。  惑星・散開星団用にMegrez90BINO、星雲・銀河用に12cm又は15cmBINO を使い分けたいと思います。 フィルターも欲しくなりました。 こちらは研究課題です。

後日4mmのアイピースを使い155倍で金星を観測しました。 155倍でもEMSのXY調整を少し動かすだけで簡単に両目の星が合 致します。 素晴らしい機構です。これからも高倍率での惑星観測や低倍率の星雲星団観測を楽し みたいと思います。

 最後にBINOの素晴らしさを列挙します。

①長時間(一昼夜)観測していても大丈夫な位楽に観測できる。
②宇宙の奥行きを感じる事ができる。(3次元的に見えます)
③対空双眼鏡と比べて低倍率から高倍率まで使用できる。
④ミラー2枚で正立対空を実現している為非常に抜けが良い星像。
⑤EMSによって2本の望遠鏡の調整が簡単に短時間に出来る。

などがあげられます。

 BINOは宇宙を楽しむ究極のお気楽望遠鏡だと思います。 これからも宜しくお願いします。                         スタークラウド 宮野

Comment by Matsumoro/ 管理者のコメント;

 宮野さんは旺盛な情熱とエネルギーで頻繁に遠征観測なさっているので、 今後も体験を重ねてBINOのエキスパートになってくださることを期待します。
この度はすばらしいリポートをありがとうございました。

「スノー」さんが ”新型15cmF5-BINO第1号機” のリポートをくださいました。(2006年11月23日)

新型15cmF5BINOの1号機が届きました。 12cmF5BINOからのステップアップとなります。 打ち止めと思って購入した12cmBINOでしたが、これが素晴らし過ぎて、半年で、遠征すること十数回、晴れれば自宅観望と 嵌ってしまい、むしろ加速して15cmに辿り着いてしまいました。

 届いた日に自宅にて軽くファーストライトを行い、先週末に観望会に参加しディープスカイによるファーストライトとなりま した。写真は左が 15cmBINO、右がお世話になっているショップの方(私の12cmBINOで感染されたようです・・・)の Megrez90BINOです(これもスーパーBINOで素晴らしい絵を見せてくれます)。

 さて、新型15cmBINOの特徴は①鏡筒プレートが無く鏡筒バンドを繋げて支持していること、②ハンドルが鏡筒に直付けになって いること、③クレイフォード接眼部がオリジナルになっていることです。①と②は写真の2台のBINOを比較するとよくわかります。

 まず、①ですが、当初は鏡筒バンドの締め付け具合がわからず、いつの間にか光軸がずれていることがありましたが、 適切な締め具合が見つかってから光軸の変化が無くなりました。むしろ、鏡筒バンドを緩めて鏡筒を捻って行う光軸調整は実際に 行うと非常にやりやすく、従来20~30分かかっていた光軸調整がものの数分で終ります。また、従来の鏡筒移動式の目幅調整 ですと、不意に左鏡筒を触って、平行に動いてしまうことがありましたが、新型では鏡筒が固定されており、EMS部のヘリコイ ドで目幅調整しますので非常に快適です。
 低倍率では眼の補正力でカバーできますので、他の方に少し見てもらう分には、 目幅とピントの再調整を繰り返すことも無く、各自のピントのみ合わせて頂くだけで問題ありませんでした。総じて軽量化も 進み、バランスが良く想像以上に軽く持ち上がります。非常に進化した印象を持ちました。

 次に②ですが、顔下に空間に余裕が出来たこと、ピント位置とハンドルが近く手の移動量が減ったことなど、実際に使用してみ ると、非常に快適になっております。また、持つ幅が広くなり、望遠鏡を振り回す軽快感が一層高まっています。私見ですが、 見た目にもシンプルになって格好良くなっています。ひとり悦に入っております(笑)。

 ③に関しては、口径確保等の光学的な問題の解決にも繋がっていそうですが、実際の操作感も素晴らしいものがあります。 従前の12cmに付いていた純正のラックピニオン式繰り出し装置と異なり、非常に滑らかな操作感となっています。バローを挟んで重量が増して もその滑らかさは変わりません。おかげでピント合わせが非常にスムーズになりました。またまた私見になりますが・・・(笑)、 オフブラックに塗装されており、非常にカッコえ~です。ここの高級感が一番高かったり。。。。

 以上、新型で進化した部分の感想です。次に、実際に覗いた時の印象ですが、既に多くのレポートがありますので、12cmとの 比較の上で簡単に報告いたします。まず、印象的なのは強烈な明るさです。そのおかげで、散開星団などでは、奥行きが非常に深 くなった印象を持ちました。また、網状星雲では細かい襞までよく分かります。バラ、北アメリカ等の散光星雲も強烈に迫ってき ます。12cmと15cmでは一段ポテンシャルが異なります。

 その中で、強い印象を受けたのが銀河です。12cmでもM81、82、その お伴星雲を同一視野に見ながら、M82の爆発銀河の様子がよくわかったのですが、15cmになるとM82の不規則形状が一層強烈に浮か び上がります。きれいなM81と不規則なM82が同一視野で対照的にポッカリ空間に浮かんでいる様子は、宇宙の奥深さが感じら れます。同口径の単眼では想像できない、大口径ドブとは異なる世界がそこには広がっています。更に感動だったのが、 かみの毛からおとめ座にかけての銀河群でした。BINOを流すだけで次から次へと無数の銀河が飛び込んできます。視野の中は 銀河、銀河、銀河、銀河・・・と数え切れません。超広角で低倍率でありながら、無数の銀河を容易に視認することができます。 まさしくハイコントラストな屈折BINOの本領発揮です。無数に漂う銀河を眺めていますと悠久の時の流れを実感します。

 このよう に銀河を相手にしても15cmBINOであれば潜在的なポテンシャルは相当に高いと期待できる結果となりました。 12cmよりターゲット が一層広がることは間違いありません。他にオリオン星雲やアンドロメダ、すばると他の方々にも覗いて頂きました、総じて良く 見える、すご~い、きれい~、欲しい~と、高評価を頂きました(自画自賛!笑)。

 こうして15cmBINOのファーストライトが無事終了しました。12cm時代からの経験も踏まえると、低倍率の時は、大抵の場合、 目幅調整無しに多くの方に簡単に覗いて頂けます。また、一般の方々でも星雲星団を容易に視認でき、無数の星々に圧倒され 感動してもらえます(単眼時代には「がっかり」されることが多かったのですが・・・)。つまり多くの方々と一緒に楽しむこ ともできる望遠鏡だと言えます。正立超広角ハイコントラストのおかげで、等倍ファインダーだけで次から次へと簡単に対象が 導入できます。覗く姿勢も楽です。

 また新型になって、鏡筒による光軸調整が容易になり、接眼部のピント合わせも楽にな りました。つまり、15cmF5BINO新型の操作性は従来の12cmより一層ビギナーに優しくなったと感じます。もちろん、大きく重 くなっているのですが、座布団に包んで折りたたみ2輪カートに対物側から載せて運んでいますが、移動による振動で光軸がずれ ることもありませんでした。架台に載せる力があれば、15cmF5の使用は問題ありません。天文ファンに限らず、アウトドアライフ やスローライフの延長で宇宙の無限の時間を感じたい方にもお勧めできる望遠鏡です。朝に見た雪を頂く浅間山を覗いた時も 最高の迫力でした。恐ろしいほどの視野の抜けの良さ、対象の立体感は双眼鏡の及ぶ所ではありません。ますますBINOライフ にどっぷり浸かって行きそうな予感です(既に浸かっている?笑)。                      スノー

追記:11/28 先週に引き続きディープスカイ観望を目的に遠征して参りました。いつもの遠征場所はそろそろ凍りつく季節になります ので、冬眠前にと・・・(笑)
 今回は、時間に限りがあり、メジャーなものを一通り流した後に、オリオン座周辺を対象に散光星雲のテストを行いました。 レンズに夜露が付くことはありませんでしたが、鏡筒が凍りつくほど厳しい冷え込みで、非常に濃い天の川が見られるコ ンディションの夜空でした。アイピースはEWV32mm、左に UHCフィルターを、右にOⅢフィルターです(1枚しかありません ので・・・泣)。
 観望したものは、バラ星雲、オリオン星雲、ワシ星雲、もみの木星雲、エンゼルフィッシュ星雲、モンキー星雲です。 低空は若干の光害にかぶっている中で、観望できたのは驚きです。もみの木星雲は恒星との間の暗黒帯が、モンキー星雲はお 饅頭形状にくびれが明瞭に認識できました。ワシ星雲は長細い襞にしか見えませんでした。馬頭星雲は認識できませんでした ・・・残念!!更に暗い空が必要かもしれません。いつか再度チャレンジしたいと思います。
 上記以外にメジャーなものでも収穫がありました。網状星雲やオリオン星雲の強拡大です。沈みかけの網状星雲を50倍近く で見ると、もうそれは複雑な襞の形状が見られました。非常に繊細な印象の星雲です。90倍近くのオリオン星雲は、ガス雲の 中に放り込まれたような気分になります。ガス層が何層にも重なって複雑にうねっており、絹のようにガスのベールを感じで見 ることができました。また、プレアデス星団の恒星を取り巻くガス雲も印象的です。下部の方に広がりがあって写真のイメージ に近い絵です。このように見えたのは初めてで、しばらく見惚れておりました。
 以上の通り今回のテストは短時間ながら先週を上回る成果を得ました。対象の中には、この観測地ではドブを持ってしても 困難な対象が含まれています。それが、存在だけなら容易に、中には形状の認識までできる星雲があったことには驚きました。 両目で見るため、特段の集中力も不要で、気楽に探索が出来ます。15cmBINOのポテンシャルには驚かされます。 これからの活躍がまたまた楽しみになった夜となりました。(スノー)

 私信(★松本との交信):12/2 
 上記の追加リポートをいただいた時の私信部分の掲載につきまして、スノーさんのご了解を得ました。

11月28日:
> > たいしたレポートではありませんが、よろしければ追加下さい。

★ 掲載の件、承諾くださって、ありがとうございます。

>> > > 自分の感じたホットな気分(体は極寒でしたが・・・笑)をもう少し上手く 伝えられればと思うのですが・・・・

★ それは文章という手段が持つ宿命的なもので、読み手のキャパも大きく関係 するので、感動が100%伝わらないのは、やむを得ないと思います。少なくと も、私が読むと、BINOの醍醐味、凄さがビシビシと伝わりますよ。

>> > > それにしても15cmBINOには驚かされます。12cmBINOとも大きな差が あり、以前愛機だった15cmF6.5屈折や15cmF10マクカセの単眼から は想像できないほど別次元の世界を見せてくれます。星を見るのは機材単体の性 能が半分、人間の認識力が半分と感じます。機材の単体性能を追求するのも良い ですが、最近の機材は安くても一定の水準に達しているだけに、人間側の潜在力 を引き出す方が効率的なのでしょうか。

>> > > そういう意味でBINOは人間側の認識力を大きく引き出す為、結果的に非常に 効率的に観望の幅を広げる望遠鏡だと最近は思っております。

★ ここまで理解されましたか。感覚的には体感しても、上にご指摘の点をきち んと文章にしてくれた方はまだいなかったような気がします。
 世の中は、まだ机上の光学性能を、収差曲線等だけを持ち出し、重箱の隅をつ つくような議論ばかりが横行しているような気がしますが、比較する光学系が一 定の水準を保っているという前提の下では、上にご指摘の要素の方が圧倒的な効 果を発揮するわけです。

  たとえば、単眼の視力がそれぞれ0.7程度の人が、両眼では1.0くらいの視力 が出る場合が多いことは、私は本業のメガネ業から日々経験していますが、これ は、言い換えますと、単眼で100倍で見ているのと、双眼で70倍で見ているのと がほぼ同じ大きさに見えるということです。
 双眼視否定論者が机上論から「望遠鏡自体の分解能が単眼、双眼で変わるはず がない。」と言います。 確かにそれはその通りですが、それは議論のすり替え であり、それは「望遠鏡はゆらぐ大気の底で生身の人間が覗くものだ」というこ とを忘れた議論だと思います。
 現実には、より低倍で同じ効果が得られる双眼視の方が、はるかにシーイング の悪影響を排除できるのであり、双眼視の生理的なコンポジット効果とそのこと (倍率の実効値)が相乗するのです。

Comment by Matsumoto/ 管理者のコメント;
 スノーさんが、新型の15cmF5-BINOのリポートをくださいました。 何台ものEMS-BINOを使いこなして来られただけ あって、製作者の意図を雄弁に代弁してくださいました。

 鏡筒バンドで2本の鏡筒を連結する方式は、今回が初めてではございませんが、「BINO製作状況速報」でも触れました通り、 今回は、今までの経験を活かし、運搬用のハンドルを基本構造の一部に取り込む事で、剛性のアップと軽量化を同時に実現い たしました。構造は至って単純ですが、製作にはいくつかの秘訣がございます。

 スノーさんは、1組のEMSと1つの眼幅調整台座を共用されて、12cmF5鏡筒とFS102鏡筒を随時換装されながら2種類のBINOとして活用して おられましたので、換装の度に、製作者の初期調整の作業をされていたことになり、その熱意と到達された技量には感服いたします。

 しかし、ここでスノーさんが引用されました、”20~30分かかっていた光軸調整”という意味は、その作業の事であり、通常のEMS-BINOの 使用では不要な作業ですので、誤解のないようにお願いいたします。
 私が今まで製作して来ましたEMS-BINOは基本的にユーザー調整は不要ですので、 よろしくお願いいたします。(アイピース交換時のアイピース起因のずれをEMSのXY調整でわずか補償するのみ)

 新型の15cmF5-BINOのねじれ調整の方法も、普通はユーザーの方が使用されることはなく、バランス調整のためや、 鏡筒の分解等の必要が生じた際に、バンドを締め直す際のみに必要になるものです。これはBINO製作時のメーカーサイドの 初期調整とお考えください。 今回の新型の15cmF5-BINOの光軸の安定性は、鏡筒を固定したことも貢献していますが、 クレイフォード式のフォーカサーが操作の円滑さとガタの無い剛性を同時に満足していることもその大きな理由です。 特に、クレイフォードの原理構造上、ドローチューブの回転ガタが皆無であることのメリットはBINOにとって計り知れないものがあります。

 15cm-BINOの見え味について、スノーさんならではの、実体験を元に説得力ある解説をしてくださいました。 15cmというのは、口径の一つの節目のようで、ずっと以前ですが、 某天文アマチュアの重鎮の方が、「15cmクラスのEMS-BINOは、日頃30cmクラスの単眼の望遠鏡の見え味に慣れている者をも唸らせる。」 という意味の事をおっしゃいましたが、スノーさんの今回のリポートでそのことを思い出しました。

 この15cmF5鏡筒は、中国製のアクロマートですが、その明るいF値や口径の大きさから、古典的な常識からしますと、大味な見え味(たとえば集光力のみ目立って、 像の精度が甘いというような)を 予想し勝ちですが、どっこいそれは多くのユーザーの方々が証言しているように、少なくとも低倍での眼視性能は、市販の大型双眼鏡などは 比較の土俵にも上らせないほどのものがございます。私が初めてこの15cmF5鏡筒を手にした時、同社のF8鏡筒と並べて 昼間の景色を同じ30mmクラスのアイピースで見比べた時、むしろ前者の方が明るくシャープな印象を持ったくらいでした。(倍率 が低いからですが、低倍性能に於いて、F値が小さいメリットが発揮できているということです。)

 今、冬に向かった季節ですが、季節がめぐりましたら、またぜひ夏の天体についてのリポートも楽しみしていていますので、 スノーさん、よろしくお願いします。

 スノーさんがさっそく追記をくださいました。 スノーさんは12cmBINO以来、極めて 高い稼働率でBINOを活用してくださっていて、興味深い私信もたくさんいただいています。ご本人の了解をいただいた上で、 近日中に一部をご紹介できたら、と思っています。(11/28)

FS102-BINO

 12cmF5のBINOを所有し始めて日も浅いというのに、手元の望遠鏡をBINO化してしまいました。それほど、12cm F5BINOの衝撃は大きいものでした。

 さて、BINO化したのはFS102です。この鏡筒で見る、単眼時での惑星のシャープさとコントラストには素晴らしいもの があり、以前は自宅観望のメインとして使用しておりました。12cmF5BINOに接して以来、FS102の双眼で見る月 ・惑星はどれほど凄い画を見せてくれるのか想像する日々でした。そこで、思い切ってもう1本購入し、BINO化した次第 です。

 さて、梅雨の合間を狙い、天気予報と睨めっこする週末が続きましたが、ついにチャンスが巡って参りました。前線はやや 南にあり、日本海側方面は晴れ予報、大気はやや不安定なものの、こうした時は、標高の高い場所では短時間でも雲海の上 に出る可能性があります。出撃です。

 現地に到着すると、霧が出ているものの、薄らいできます。直ぐに組立て、高く上がった天の川の観望体制に入ります。 EWV32mmで覗くと、針を突付いたようなシャープな微光星が迫ってきます。単眼以上に明るいせいか、痛いほど目に付き刺 さるような星々の輝きです。そして流していると、北アメリカ星雲が飛び込んできました。ややもやった空であるものの ノーフィルターで十分に見れます。そのうちに、霧が再び出始めました。慌てて、ネビュラフィルター装着し、天の川を 南下します。そして干潟星雲へ・・・・おぉぉおお!絹のような繊細な星雲構造が見えます!!ドブ以来の迫力です。 そして、急いでフィルターを外し、M6、7へ。散会星団の美しさはアポならではと言うぐらい、繊細な輝きを見せます。 そのうち、東から霧が覆って来ました。ざっと実観望時間30分程度ですが、FS102BINOの実力の片鱗を感じとれた日 となりました。

 そして、数日後、仕事から帰って駅を降りると、晴れています!!木星です!!急いで帰宅し、即、組立て観望体制に入り ます。
 まずは、PL20mmで木星を覗きます。プローセルですが、テレビュー製で、抜けの良さと、シャープさ、望遠鏡を選ば ない汎用性で、実は最も気に入っているアイピースです。広角を求めないならば、安価で非常にお勧めです。 さて、木星ですが、倍率40倍、十分に模様が見れます。低倍率、衛星、模様、BINOの立体感が相まって、本当にポッカリ 木星が浮いているように見えます。少し気流が安定しないようですが、UW4.7mm約170倍に上げます。気流がピタッと とまる瞬間、恐ろしいほど、うにゃうにゃした模様に彩られた木星が浮かび上がります。「口径10cm?倍率170倍? 嘘でしょう!!」。双眼装置で見るより、矛盾するようですが、立体感と平坦さが両立して、非常に自然な立体感で見え ます。また、12cmF5と違い、まだまだ倍率が上げれる余裕を感じます(アイピースへの物欲が・・・)。色収差も少 なく、両目で見ているため、長時間でも疲れません。ひたすらシーイングの良くなる瞬間を待てます。

 こうして、星雲星団、惑星と楽しんだ次第です。後は、お月様ですね・・・

 さて、12cmF5との比較も交えながら、ポイントをまとめますと、

①星雲の迫力は口径差があり、12cmの方が上に感じます。一方で散会星団は、シャープさがあり、色が楽しめる FS102です。むしろ最強の兵器かもしれません。

②月、惑星は口径差が小さいこともあり、長いF値を持ち、かつフローライトであるFS102が圧倒的です。また、気持 ち良さもFS102が圧勝です。

③一方で、調整はFS102の方がシビアになります。星像が鋭い分、周辺まで非常に気になります(覗きたくなる?)。 遠征時は、現地で、30分も鏡筒の位置の微調整を続け、ミラー調整前の光軸調整に時間を掛けていました。遠征時は明 るいうちに現地に着きたいですね。

④重量も、長さもFS102は楽なものではありません。逆に12cmF5は口径を考えると、驚くほど軽量、コンパクト だと言えます。したがって、自宅FS102、遠征は12cmF5が中心となりそうです。

⑤対象や好みによっては広角アイピースが必ずしも良いわけではありません。特に2インチ超広角アイピースは視野の制約 がないと思えるほど覗き回れる分、アイポイントが安定せず見やすいものではありません。楽に見るには、自分のポイント に合わせたアイカップを作成するなどの工夫が必要かもしれません。一方で、テレビューのプローセルなどは抜けシャープ さとも抜群で、コストパフォーマンスは高いと思います。視野も狭い分、アイポイントが安定し、楽に見えるメリットは大 きいと感じます。単眼時には感じなかった問題で、BINOの良さは低倍率超広角が得られる面にあるのも事実ですが、対象に よって使い分けるのも良いかと思います。

 最後に、FS102はバックフォーカスに余裕があり、非改造で、10分で鏡筒換装が終ります。このようなことが出来るの も、EMSおよび架台の汎用性の高さゆえです。シンプルな構造と楽な調整が相まってなし得る楽しさです。対象により長焦 点アポと短焦点アクロを使い分けるのは、BINOの楽しみの幅を大きく広げます。

 さて、目の前にボーグが転がっています。超軽量BINOが出来るかも・・・・(笑)

スノー

Comment by Matsumoto/ 管理者のコメント;

スノーさんが、初めての12cmF5BINO(アクロマート)を入手されてから、快進撃を続けておられます。

 最初のBINOの完成時に、わざわざ当方まで対面に来てくださいましたが、スノーさんの探求心と吸収力には、 目を見はらさせられます。

 元の12cmF5鏡筒とFS102鏡筒は、最大径が同じくらいなので、EMSも台座も共用が出来ます。ハンドルのロッドのみ、 少し長いのをお作りしました。

 自分で作って(組み立てて)みる、というのが、EMS-BINOの原理を理解するための好適かつ最終のレッスンだと思います。  スノーさんは、それを1か月ほどでクリアーされたわけです。 BINOの耐性菌に取り憑かれられたようで、ごしゅうしょうさまです。^^;

 続報を楽しみにしております。

FS102-BINO; Mr.Mario, Spain

Comment by Matsumoto/ 管理者のコメント;

Mr.Mario,Spain, has successfully completed in assembling the EMS set with telescopic materials into a splendid BINO-scope. I must admire his feat with the BINO-SCOPE all the more for the fact that there was a language barrier between us and limited information in my web-site available for him.