12cmF5-BINO

 さて、去る7月11日に、12cmF5BINOを受け取りにお店にお邪魔して以来、天候不順と月明かり のせいで、なかなかBINOをまともに振り回せず悶々としていました。 が、ようやく高気圧の張り出し域に スッポリと覆われて、先週8月15日に、自宅から比較的アクセスしやすい南房総の山中へ遠征してきま した。

 本当に待ちに待った日です。目的地への道中、お盆中でもあり帰省や行楽の渋滞も覚悟していまし たが、以外やスムースに流れました。夜行性の趣味にもメリットはあるようです。海ほたる方面の東京圏 の大光害域を背に南下してゆくと、右手にさそりのS字が傾きかけています。急がねば。しかし、後部シ ートには主役のBINOを寝かせているので、レーサー気分でつづら折れの山道を駆け上がるわけにはいきま せん。ここは、はやる気持ちを抑えて、粛々と歩を進めます。

 開放した車窓からは昼間の暑さは影を潜め、どこはかとなく秋の気配が忍び寄ります。到着するやいなや車から飛び出し空を見上げると、満天の星空 を天の川がサラサラと流れています。思わずこの地の山ノ神に手を合わせてお礼をつぶやきました。この 星見場は稜線づたいを通る林道の待避所的な平場で、昨年より時折足を運びます。
 首都圏の光害の影響はかなりありますが、 朝、晴れると浦賀水道、三浦半島越しに秀峰富士が拝め、地理的な開発の困難さが、 周囲の自然を色濃く残しています。また、江戸時代の南総里美八犬伝のゆかりの地でもあります。さらに 安房という名は、神武天皇の御世に四国阿波から派生したもので、古代史を紐解いてゆくと、宇宙の成り立 ちまで到るそうです。かの地、鳥取で産声をあげたBINOに、星空を案内してもらうのにふさわしい、氣の 良い土地です。

 わくわくしながらも、あっけなくBINOを組上げ、光軸と眼幅を微調整。鼻歌交じりで誰で もいたって簡単。眼幅調整のクレイフォードのつまみをゆっくりと廻し、左右の視野円が合致したその時、 単眼時代の観望スタイルは粉々に砕け散りました。
 もちろん、双眼鏡での星空散歩は好きでした。何とい いましょうか、倍率による迫力、視野全体の透明感、迫力は50ccの原付スクーターとナナハンぐらいの 違いがあります。透明感は、車を運転中、雨がフロントガラスを濡らし始めたときと、ワイパーでさっと 拭い去った直後ぐらいの違いがあります。一般的な7倍50mmなどのスペックを持つ双眼鏡でさえこの 差ですから、単眼の望遠鏡ではいわずもがなです。誇大広告と公正取引委員会から怒られそうですが、数字 には現われない体感のインパクトに偽りはありません。こうなると、空の何処に眼を向けても、大満足 です。

 かつて、マクルーハンという学者が 「Media is message] なる言葉をメディア界に投げかけまし た。これは、個々人が情報をどのように解釈するかは、その内容よりも伝えるメディアそのものに大きく 影響を受ける。というものだったと記憶します。BINOにはメディア進化の可能性が大いにありますよ。 今、林の輪郭にアンタレスとM4が沈みかけています。急ぎ向けてみます。ターゲットを導入する際の操作 性、安定感、全体のバランス、どれも申し分なしです。長く付き合う道具とは、かくありたいものです。

 WS30mm 20倍 4゜強、M4が中心近くまで星々に分離されています。妖光を放つアンタレスと同一視野で の光景は絶品です。ここから、銀河に沿ってゆっくりと散策してゆきましょう。ファインダーは要りま せん。ただ、行きたいほうへ向ければよいのです。大抵、一つや二つ小さい散開星団や散光星雲が視野に ちりばめられています。背景には微光星の海原が拡がります。時折、有名どころの星雲星団に立ち寄る 際、視野の端で捉えてから中心へといざなうこのひと時がたまらずスリリングです。静止像は勿論の事、 視線を流している最中の動きのある光景も魅力です。このような感覚、楽しみは単眼では気づきません でした。旅人が旅のプロセスにこそ重きを置くような感覚です。

 夢中で操作ハンドルを握り締め ていると、あっという間に時間は過ぎ、天頂付近を飛翔する白鳥付近が視野に入ってきました。 この位置でもBINOの見易さにかげりは一切ありません。夥しい数の星の海をかきわけて、網状レムナント のある辺りへと進行します。もう、何も言えましぇん。一度、他人の30cmドブソニアンにOⅢ フィルターを通してハの字の東側のアップを見せていただき、いたく感動したこともありました。
 今、眼前に広がる漆黒の背景には、ハの字の両方がその独特な形状と濃淡をあらわに鎮座しています。 ノーフィルターです。何故か深呼吸をせずにはいられません。 ...。夜も更け東の空には雲越しに 下弦の月が山肌を照らし始めています。足早に、ケフェウス、カシオペア、ペルセウスと天の川を辿ること にします。低空の層雲が空を覆ってきました。足元ではコオロギが遠慮気味に独唱しています。残念ながら お開きのようです。

 そうそう、ボーグの60EDで夏の散光星雲を撮る予定でしたが、それどころではあり ませんでした。
 松本さん、この上ない素敵な道具をこの世に生み出していただき、ありがとうございました。 良い道具には、優れたデザインや高い機能性、利便性などの土台に、製作者の高次の志が脈々と息づい ています。利益最優先の大量生産により日常生活に流布する、さまざまな工業製品や農産物等々にもこう した高い志の復権が欲しいものです。
 今後もご健勝でわれわれ星見人を刺激し続けてください。私も 微力ながら、一人でも多くの人にこのBINOで宇宙の美しさを紹介できたらと思い、ペンを 置きます。

              サルスベリの紅白の花が満開の頃      玉川

Comment by Matsumoto/ 管理者のコメント;

 製作者冥利に尽きるリポートをいただきました。今までにいただいている数々の リポートもそれぞれに個性があって素晴らしいものばかりですが、久しぶりに感性にストレート に浸透するリポートに出会った気がいたします。

 単体の屈折式天体望遠鏡のランク表記に、(単レンズはもうあり得ませんね)アクロマート、 セミアポクロマート、2枚玉アポクロマート、3枚玉アポクロマートと、かなりのバリエーション があるわけですが、EMS-BINOの真価は、そういうランクの比較の次元の外にあるということを、 玉川さんが非常に分かりやすく説明してくださいました。

 もちろん、素材鏡筒を選べば、さらに素晴らしいことは事実ですが、決定的な部分はEMSが持つ 基本原理のシンプルさによる勝利に他ならないという事実が、昨今の鏡筒の高級指向の陰でかすんでしま うことに少々の危機感を持っておりましたので、この度は非常に良いタイミングで、私たちが原点を 見失わないように一喝いただいた気がするわけです。

 玉川さんの初対面の印象は、”天文マニア”のステレオタイプからはほど遠い、スポーツマン 的な立派な体躯の持ち主だったことですが、もっと忘れられないのが、『合理的な命や道具の裏には シンプルな数学の定理が隠されている。』という信念を深く共有する方だったことです。
 私の拙文である、『人類の至宝』もよくお読みくださっていて、玉川さんはその日、大変興味深い、 フィボナッチ数列(曲線)の話をしてくださり、一緒に大いに盛り上がりました。 5億年を生き抜いたオウム貝の巻き線等がこの曲線と合致するのだそうで、長年繁栄して来た合理的 な命や使い道具には、合理的でシンプルな数学の定理が隠されているということを再確認した思いでした。 EMSの種明かし

 ただ、数年前、箱型のEMS-Sユーザーの方が同新型を追加購入された際( その方はネットをしない方で新型の画像を見ていなかった)、「今度はサザエみないな奇妙な形だ・・・」 と不評だったことも印象に残っています。^^;この、サザエの形^^;を具現するために数百万円の投資をし た意義は、この方には理解できなかったわけです。
 ですから尚更、信念を心底共有できる方との出会いは貴重であり、何物にも替え難いわけです。

 蛇足を重ねて、せっかくの素晴らしいリポートを spoil してはなりませんので、ここらで締めくくります。

 また、追加リポートを楽しみにしております。

TMB130-BINO

 マツモトさんに製作を依頼したTMB130-Bino(シグニチャーシリーズ口径130mm/F7アポクロマート 鏡筒)が 7月に完成し、やっと星空を見る機会に恵まれました。 そこで、導入の経緯と観望しての印象について、報告させていただきます。

1 導入の経緯

 仲間が持っていたSky90-BINOで見せてもらったのが、Binoとの最初の出会いです。そのときに 見せてもらったM31が、はるか遠くにあるはずなのに、手前に浮き上がっているように見え、その不 思議な光景がずっと頭から離れませんでした。そこで、どうしてもBinoが欲しくなり4年前にマツ モトさんから12cmBinoを購入しました。

 Binoで星空を見ていると、時を忘れてしまいます。 仲間に見せると、だれもがじっと見入ってしまいます。そして、Binoを見て感動した仲間が、次々 とBinoを購入しました。FS102・CAPRI-102ED・ZS110と気がつくと購入した人はみなアポ鏡筒でし た。低倍率で見る限り12cmBinoで見る星空は決して10cmクラスのアポBinoに負けていません。 それどころか、淡い星雲は12cmの方がよく見えました。しかし、アポBinoで見る星像はシャープで すし、月や惑星の周りには全く色がつきません。もう少し大きい口径のアポで見たら、どんなにすばら しいかと思うとアポBinoが欲しくなり、その気持ちを抑えることができなくなってしまいました。

 アポ鏡筒をBinoにするために、まず考えたことは口径と重さでした。口径は12cmよりも大きく、 重さは21kgを超えないことが条件でした。TOA130Sを所有しておりましたので、これでBinoを作って もらおうかとも思いましたが、片方だけで10.5kgもあり、完成すれば21kgを超えることが予想されます。 また、150LD-Binoを使っておられる方々のレポートを読ませてもらうと、とても大きくて私には無理だ と思いました。TOAをBinoにすることはあきらめました。

 そんなある日、TMBシグニチャーシリーズ口径130mm/F7アポクロマート鏡筒が中古で出ているのを見て、 大きさといい、重さといい、Binoにするにはもってこいだと思い、すぐに購入しました。しかし、 もう一本同じものがなければBinoはできません。そこで、私が所有している機材をすべて手放して 新品をもう一本買うことにしました。当然、TOA130も手放すつもりでしたが、仲間から思い留まるよう に言われ、この鏡筒だけは手元に置いておくことにしました。30cmドブも28cmシュミカセも惜しいとは 思いましたが、両目で見る宇宙の魅力には勝てませんでした。

 さて、国際光器さんにもう一本注文してから3か月が経ち、やっと2本揃いました。そして、最初の TMBを購入してから待つこと4ヶ月。やっと待望のTMB13cmBinoが手に入りました。

2 観望の印象  Binoの取り扱いは慣れているつもりでも、今回のBinoは12cmのときとはその構造が違うた め、マツモトさんに直接お会いして、調整の仕方を教えていただくことにしました。

  マツモトさんには丁寧で分かりやすく説明していただき、そのおかげでファーストライトの折は何 も心配することなく、扱うことができました。ただ、どのBinoでもそうですが、アイピースを交換 するたびに、EMS調整ノブで光軸を補正しなくてはいけないのがちょっと面倒ではあります。

 今年の夏は、天候に恵まれず、せっかく出来上がったのに覗く機会が無くてイライラしていまし た。先月の終わりに一か八かでいつも行くG村へ行ってみました。
 すると、上弦の月が雲間から見えてい ました。逸る心を抑えつつ、筒を月に向けました。月の周りには全く色がついていません。クレーター のエッジも立っています。ときどき、月の前を雲が流れていくのですが、これがまたすばらしい眺めで した。明らかに12cmBinoとは違います。TOAに双眼装置を付けて見たのとも違います。明るさと いい、シャープさといい“アポクロマート双眼望遠鏡”で見る月はすばらしかったです。
 次に、上って たばかりの木星を見てみました。笠井のバローレンズ(2インチマルチショートバロー2X;マツモト短 縮改造1.75×)を取り付けイーソス8mmで約200倍で見ました。12cmとは1cmしか口径が違わな のに、とても眩しいのには驚きました。そして、模様が濃いのにも感動しました。色はニュートン反 射(15cmF9・鏡は足立製で38年前に自作)で見たのと同じで、とても綺麗でした。ピントを合 わせるときは振動がありますが、それもすぐに収まり、見かけ視界100度の中でじっくりと見ること ができました。これなら、赤道儀でなくても十分観望することができます。その他に雲間からM13を 見ました。これも12cmよりもはっきりと見ることができ、端まで星が分離して見えました。

 その後もG村へ持っては行くのですが、いつも曇りでなかなか見られませんでした。しかし、16日の 夜は運よく一時間程度見ることができました。 我慢強く晴れるのを待っておりますと、願いが叶ったの か、東の空から晴れ始めてきました。さっそく、M31、M33、hχ、M15といった秋のメジャーどころを観 しました。M31は何度見てもすばらしい眺めです。腕がどこまで伸びているのか、残念ながらコンディシ ョンが悪く確認はできませんでしたが、視野いっぱいに広がるその姿は圧巻です。また、hχも息を呑む 美しさでしばし見とれてしまいました。
 そのうちに、雲がとれはじめ夏の星も見えてきましたので、 M13、M57、M27とたてつづけに見ることができました。ただ、すぐにまた雲が出てきて、しばし休戦。 再び、雲がきれてきたところでもう一度、秋の空を流していると、今度は濃い霧が立ち込めてきて、 全く辺りが見えなくなってしまいました。さすがに、今度はいつ晴れるか分からないので、帰宅する ことになりました。まだ消化不良ですが、とりあえずご報告させていただきました。

 最後に、今、国際光器さんの松本さんにビクセンのジュラポール三脚(ニューアトラクス赤道儀 2000PC用)にHF経緯台を取り付けるアダプターを作っていただいております。これが完成す ると、もっと安定して見ることができるのではないかと期待しております。

                    星好き先生

Comment by Matsumoto/ 管理者のコメント;

”星好き先生”は、今回も奥さまとご一緒に、出来上がったBINOとの対面に わざわざ遠路をお越しくださいました。

 前回、12cmF5-BINOにご対面いただいてから早4年とは、月日の早さに驚かされます。 前回は奥さまが、闘病中だった犬のクーに優しく声をかけてくださったのが印象に残っています。 星好き先生には、12cmF5-BINOをしっかりと稼動させてくださり、多くの方にEMS-BINO入門の きっかけを与えていただき、さらにまたこの度、ハイエンドのBINOを作らせていただいたことに、深く 感謝しております。

 このTMB(Signature)130と、すでに販売中止になっている150LD鏡筒辺りが、1体構造のBINO の重量的な限界ラインに位置するようです。 星好き先生より今回のBINO製作の依頼をお受けした 時点では、大型の中軸式の架台のアイデアがまだ煮詰まっておらず、無難なHFフォーク式でお作りしました。

 リポート本文中で、「木星の色が過去に見たニュートン反射の色・・・」と 肯定的にご評価くださり、大変光栄です。
 それは一つには、色収差が非常に少ないTMB鏡筒と プリズムを通さないEMSとのコラボレーションの結果でもあるのですが、望遠鏡やEMSを通して 見える”色”について、最近衝撃的な体験をし、EMSのさらなる向上に着手しているところでございます。

EMS-ULTIMA coming soon

EMS-ULTIMA
Evolution from aluminum to Silver

EMS-ULTIMA, equipped with enhanced silver coated mirrors, is coming soon. The graph above shows its extraordinary reflectivity.
Dark blue line shows the relfectivity of one reflection, and light blue line shows that of two times reflectons. Note that the scale of the bottom of table is not “zero”, but “75 percent”.

Now that EMS has achieved not only the diffraction limited resolution but also the practically total reflection of the incoming light, there will be no reason even for the most conservative users to dispense with EMS in their visual observation.
I believe it declares the advent of the new age of visual Telescopes.

It has been well known that Silver inherently has very high reflectivity through the visible spectrum except for the violet. But at the same time, it is also widely known that Silver degrades rapidly. So a Silver coating has not yet replaced aluminum in spite of its attractive features.

特殊増反射銀コート使用のEMS-ULTIMA(EMS-アルティマ)がもうすぐ誕生します。 上のグラフは、この度EMSへの応用に成功した特殊銀コートの反射率特性です。青のラインが 1回反射の曲線、水色が2回反射後の曲線です。どちらも入射角は60度の場合です。表枠のボトムの スケールはゼロ(0)でなく、75%であることにご注意ください。驚異的な反射率を達成していることが お分かりになると思います。

これにより、EMSは、望遠鏡の解像度を極限まで引き出すのみならず、明るさの最終的な利得についても 実質上の全反射をほぼ達成したと言えます。このことは、未だに倒立像や裏像に固執される保守的なマニアで さえも、EMSを排除する根拠を失うものであり、眼視用の望遠鏡のあり方に於ける新時代の到来を宣言するものである と確信します。

金属としての銀が紫付近を除けば、可視光線(及び赤外まで)の反射率が理想的に高いことは古くから 知られていますが、同時に、その面が化学的に耐久性に乏しいことも広く知られています。 そのため、 銀コートはアルミコートを駆逐するには、現在までには至っていません。

Not yet, but not “not from now on”.
Now, EMS-ULTIMA is breaking the age long stereotype as a past one. Recently developed enhanced silver coating has achieved super high reflectivity through the total visible spectrum including violet and enough durability allowing the continual use in the air at the same time, and I have developed the way to realize it on the mirror of EMS overcoming many difficulties.
The average reflectivity through the visible spectrum per one mirror is as high as 98.5 percent, and 97 percent of the incoming light is secured even after 2 times of reflections.
Following is the history and process I have traced before reaching this ultimate goal.

しかし、それは”現在までは・・”という意味であり、”これからも無理・・・”という意味ではありません。 EMS-ULTIMA(アルティマ)が完成したら、上記の常識は直ちに覆されて過去のものになるわけです。 この度開発された増反射銀コートは、紫を含む全可視域で極めて高い反射率を達成し、同時に過酷な環境 テストにパスした、非常に画期的なものなのです。その蒸着を具体的にEMSのミラーに応用するには、また それなりの困難もありましたが、それらも全てクリヤーしました。

可視光線全域の平均反射率=98.5%で、2回反射後でも97%を達成しています。 以下に、この究極の コートを選択するに至った経緯をご説明します。

Attaining erect image at the right angle viewing with only two reflections itself is unexcelled feature of the EMS that cannot be substituted by any other devices. Judging from the least possible number of the reflection,”2″ of EMS, compared with the traditional devices of 4 or 6 times reflections, originally I did not think it urgent to additionally improve the reflectivity of the mirrors. So, I had chosen the traditional mirror of the highest visible reflectivity with time proven durability, among those that were available at that time.
The answer was “enhanced aluminum coating” that is the aluminum coating over coated by some layers of dielectric to boost the reflectivity of the normal aluminum and at the same time to enhance the surface durability.

2回反射のみ(しかもノンダハ)で90度対空の正立像を達成しているEMSの特長は、他のいかなる手段 でも置き換えることは出来ません。 従来の手段で同じことをしようとすれば、4回~6回の反射を要求するので、EMSのミラーの反射率を特に 上げることの性急性を当初は感じていませんでした。 従って、当時、長年の実績もあって、性能が 安定して反射率も高い、増反射アルミ蒸着を選んだわけです。増反射アルミというのは、通常のアルミ蒸着の 上に誘電体膜をかけて、反射率のダメ押しと表面強化を兼ねたものです。

Dielectric coating is becoming popular recently for its alleged remarkable reflectivity. But, regrettably, recent investigations showed that it is not suited for the purpose of higher index-angle, such as 60 degrees of the EMS, and thicker light cone of brighter optics of F/5 or shorter that should contain rays of wide range in index-angles. Dielectric coating is very critical about index-angles and causes unwelcome polarization, and we should know that the perfect reflection is given only under the optimum condition originally intended in the plan. Even by customizing the layer thickness and increasing the number of coatings up to hundreds layers to overcome the degradation at the higher index-angle, unwelcome byproduct effect will balance out the merit of its original super high reflectivity, along with the inflation of the cost.
Concretely speaking, there is a tendency of shortening the width of the peak plateau of the reflectivity, peak shifting to the shorter wavelength direction (violet shift), and cause drastic down turn at the longer wavelength or the counterpart.

誘電体多層膜ミラーが、「驚異的に高い反射率・・」というキャッチと共に、最近人気が 高まっていますが、残念なことに、EMSのような高入射角度(60度前後)の光学系や、F5程度以下の 明るい光学系には不向きであることが分かって来ました。後者も、いろんな角度から鏡面に光線が入射 するからで、やはり誘電体膜の入射角依存性が高いことがその理由です。

誘電体多層膜は、設計意図に合致して使わないと、その能力が目一杯に発揮されないのです。むしろ、誘電体多層膜 は、特定の波長だけを反射させるレーザー関係の素子としてその本領を発揮するようで、ブロードバンド の要求が高いほど膜数が増え、同時に弊害も生じます。 具体的には、入射角が大きいほど、また反射域を広く取るほど困難になり、膜数が100層を越えたりして、 コストも非現実的に肥大し、強い偏光等の副産物も生じます。

I have done some experiments on three kinds of coatings to check which is the most excellent and suitable choice for my purpose. Seeing the results of the experiments will help you understand why I have chosen the enhanced silver coating as the ultimate one for my EMS.

私は、1.増反射アルミ(当方で使用している物)、2.誘電体多層膜、3.増反射銀コート、の 3種類のペアサンプルを使用していくつかの実験をしてみました。 その結果を見ていただけば、 私がなぜ増反射銀コートを究極の物として選んだかがご理解いただけるものと思います。

Test 1: multiple reflection experiment-1;

If you hold a pair of mirrors in such a way that two surfaces closely face each other, and obliquely poke into the gap, you will see the endless line of your eyes of multiple reflections.

テスト1:多重反射実験1;

2枚の同種類のミラーを近接して対面させ、隙間を斜めに覗くと、あなたの眼の連続反射像を 観察することが出来ます。それは、反射のしくみから、1,3,5,・・・と奇数回でカウントアップ して行きます。

enhanced aluminum

enhanced silver

The largest image of the camera lens is the direct, number 1, reflection image and next to left will count up to 5,7,9,….times reflected images. Left photo is enhanced aluminum and the right is enhanced silver. いずれの写真も、右端の大きなカメラレンズが1回反射の像で、3回反射の像はどちらかのミラー の陰になって撮影できず、5回反射以降の像が写っています。写真に番号を振りました。左に行くほど 反射回数が増えます。 可視光線平均としては95%の高反射率を誇る増反射アルミであっても、 赤い光線の落ち込みによって、カラーバランスがどんどん崩れて行くのが顕著です。 また、デジカメのレンズ部だけでなく、ミラーを保持する私の指先も写っていますが、 銀ミラーでは、その健康な血色が20回反射を超えてもまったく褪せないことは驚きに値します。

Test2: multiple reflection experiment-2;

Two mirrors faced to each other in such a way that forward end touch each other like a book slightly opened. The set stayed on my visiting card. In this experiment, dielectric one showed worst in contrast, though brightness was rather good. (direct image is marked by a red circle.)

テスト2:多重反射実験2;

矩形の(アルミだけは楕円形)ミラーをブック型にわずか開いたペアを、私の名刺の上に置きました。 いずれの写真も、赤い印がダイレクト(無反射)像です。この実験では、反射率の高さでは 銀と同等だった誘電体多層膜の像のコントラストが極端に悪いのが印象的でした。(紗がかかった見え方)

enhanced aluminum

dielectric

enhanced silver

Test3:transparency test on dielectric mirror;
テスト3:誘電体多層膜の透過テスト;

diode key-holder light

passing through dielectric mirror

You can even see through fluorescent tube

I found rays passing through dielectric coating. If it reflects 98 percent of the incoming light, 2 percent of the light seems to go through it. I thought it very unwelcome feature when I aim at the superb image contrast. The photo witnesses the fact of the diode flashlight passing through the dielectric mirror.

何気なく誘電体多層膜ミラーを屋内からかざして屋外を見たら、明るい屋外の景色が透けて見えたので 仰天しました。ミラーを大きく傾けた際に顕著であり、視線に垂直にしたら外の景色が見えなくなったので、入射角 依存の関係で仕方ないのだろうと思いましたが、ダイオードライトで試したら、垂直でも完全に光を 通していることが分かりました。先の実験でのコントラストの低下と関係があるかも分かりません。

蛍光管も透けて見えます。例えば、誘電体多層膜ミラーの場合は、98%反射したとすると、どうやら2%の光は ほぼ透過しているようです。かすかな迷光を嫌って遮光シートを貼るほどの天体望遠鏡の使用目的に対し、 わずかでも光が漏れることは気持ちの良いものではありません。

Comparison of Silver and aluminum Coatings

銀とアルミの比較

comparison of reflectivities

From top to bottom, dark blue line represents one reflection by enhanced silver, light blue that of two reflections, red line one reflection by enhanced aluminum, green line that of two reflections.

You will find not only the extraordinary high reflectivity of the enhanced silver, but also the remarkable flatness of the line. Through these experiments, I have studied the fact that the flatness of the line is as important as the highness of it.

(No image processing has been done on the above photos of experiments except for trimming. And I must add that the silver sample mirrors were almost two years old since deposition at the experiment.)

グラフは、上から、青が1回反射の増反射銀、水色が同2回反射後、赤が1回反射の増反射アルミ、緑が 同2回反射後です。

増反射銀は、単に反射率が高いだけでなく、曲線が極めてフラットであることに気付かれたと思います。 この一連の実験から、私は曲線のフラットさが、その高さと同じくらいに重要であることを知りました。中央(緑付近)が 極端に突出した比視感度曲線が有名ですが、視感度が低い領域は重要でないというのは逆で、そうであるからこそ、 強い刺激を眼に入れてやらないといけないようです。

それと、私たちはミラーの反射率について、どうしても望遠鏡メーカーや販売店の公称値を 鵜呑みにする傾向がありますが、このような簡単な実験により、かなり正確に実際を検証することが出来ました。
たとえば、反射率99%と言っても、反射率曲線のピークや視感度のピークに於ける数値を言っている場合や、 可視域全体の平均と言っても、可視域の幅の定義の仕方で、その表面的な成績は随分と異なるものになります。 まして、入射角依存のことなどは全く認識されていないのが通例のようです。
それと、何よりも大切なことは、単なる数値では表しにくい要素こそがより重要であるということです。 いくら明るくてもコントラストが悪くては淡い対象を 認識できないわけで、高いコントラストと両立した上での高反射率が求められるわけです。  正直申しまして、当初は、現在まで使用して来たアルミ増反射以上の物を他のミラーに認めたくない気持ちもありましたが、 1回反射の段階ですでに圧倒的に鮮やかな自分の顔色を映す銀ミラーに強い衝撃を受け、今まで 嘘の色を見て来たことに気付かされたわけです。
この度は、先入観を捨てていろんなミラーを実際に試してみたことで、究極の物に出会えたことを大変幸せに思っています。

(実験写真は、どれもトリミング以外の画像処理は一切やっておりません。 また、 実験の時点で、サンプルの銀ミラーは蒸着からすでに、ほぼ2年経過していたことも付け加えておきます。)

Acknowledgement

I musn’t forget to extend my sincerest appreciaton to some of my friends who have assisted me devotedly. They have given me a lot of information about the silver coating and even have done durability experiments.
Above all, their encouragement helped me a lot to keep up going wih this difficult project.

謝辞

特殊銀ミラーのEMSへの実現に関し、数名のEMSユーザーかつ友人の方々には、貴重な情報のご提供 や、ミラーの耐久性テスト等で大変お世話になりました。 また特に、心よりのお励ましをいただいたことで、 このプロジェクトを最後まで諦めないで続けられたことに、この場を借りて深くお礼申し上げます。(2009年8月4日)

Durability test on the Silver Coating