15cmF8-BINO

15センチF8双眼ユーザーの林です。ご無沙汰しております。

 松本さんが製作された中でたぶん一番稼働率の低いかわいそうな15センチF8双眼 だと思われます(^^;

 それでも今回の夏休み、久しぶりに星を楽しんで参りましたので、以下、私どもの 状況とこの日の報告をお届け致します。

 この間仕事が立て込んでいたことと天候の関係でなかなか星を見る機会がなかった のですが、久しぶりに8月14日夜、一人で富士山須走5合目駐車場へ出かけ、星 を堪能してきました。

 今回から車も変わり中古の1BOX車(ライトエース4WD)になりました。後部 座席はアレンジできるため、二本の鏡筒と架台フレームをどこにどう乗せるかでず いぶん悩みました。

 双眼の保管は、自宅の屋根のある車置き場に、スチール製の物置を新たに設置。そ こに他の天文機材とともに詰め込んでいます。ホームセンターなどで売っている除 湿剤を二個置いていますが、しばらくほったらかしていた罰があたったようで、ハ ンドルのリニアブッシュ部(外側)にさびが・・・唖然。アルミもなんだか心持ち 白っぽく見える・・ < かまってあげなくてごめんね。

 さて、須走5合目(標高約2000メートル)では駐車場はほぼ満車。登山の人た ちがほとんどです。一番奥に陣取り、車に隠れるように組み立てました。夏休み中 でしたがこの日は天文ファンは少なくて、ちょっと意外でした。隣で5センチ双眼 鏡だけで楽しんでいらした初対面の山梨県のTさんに声をかけていっしょに15セ ンチ双眼を見てもらいました。

 空は薄雲というかガスがかかることが良くあり、星が見えても決して期待したほど の空の状況ではありませんでしたが、夜半から何とか楽しむことができました。

 笠井EW40ミリでまずM8、M20、M27、M57などを見ましたが、期待以上の見え方で す。空はすっきりしていないのですが「へー、この空でこんなに良く見えてる。あ れい状も形がよくわかりうつくしい」。ここでM57はアイピースをミード8.8ミリに 変えてみますと、宇宙にぽっかりと浮かんだリングが面白くて時間を忘れてしまい ます。

 その他、色が美しいアルビレオ、視野いっぱいに広がりわくわくさせてくれる M31、星星が輝いてる二重星団・・・と、私のような星座万年初心者でも思いつく 天体を次々探しては「おー、これこれ」と楽しめました。

 Tさんのアドバイスで、空の様子をにらみながら網状星雲や7293にも挑戦したら ちゃんと見えました。さすが15センチの口径がものをいい、またコントラストが 優れているのでしょうね。この時はナビゲータが極めて正確に導入支援をしてくれ ました。これも使い出したら止められませんね。

 そして東の空ににぎやかに並ぶ土星、月、木星たち。この夜はシーイングが良かっ たのでそれはすばらしい見え方でした。130倍くらいでは見え具合に何の欠点も 見つかりませんでした。

 惑星の観測は経験が少ないので何がどう見えたというコメントが出来ませんが、こ んなに安定してコントラスト良くきれいに見えてうれしくなってしまいました。T さんは何が見えている何がわかるなどとぶつぶつつぶやきながら結論は「いままで みたなかで一番良く見えた。やっぱり口径と双眼の威力ですね。それにこの望遠 鏡、フローライトだなんだというのは馬鹿らしくなってきた。いいものをみせてく れてありがとう」とのことでした。

 星雲から惑星まで一晩中振り回して使ったのは今回が始めてですが、とにかく二人 とも大満足出来たことをご報告します。

 高度によって光軸が上下にずれる傾向はやはり今回も見られました。40ミリでも その都度調整が必要でした(後に書きましたが今回各部増締めしましたので対処は 次回様子を見てからにします)。

 戻ってからしっかりとメンテしてあげました。架台はウエスにCRC556を染み込ませ て、なでなでごしごしと。鏡筒の平行具合も若干調整し、各部ボルトも増締めしま した。

 湿気が心配でしたので鏡筒のキャップに写真用の防湿剤を貼り付けてやりました。 それにしてもこうして触ってみるとあらためて良く考えて作られた架台であること がわかります。松本さんがおっしゃっていたように対物のあの余分な出っ張りと重い だけの邪魔な部分が気になりますね。あれがなければ確かにすっきりして架台の形 もこれとは違った物になっていたことでしょうね。

以上、長くなってしまいました。

ではまた。

林 行博

Comment by Matsumoto/ 管理者のコメント;

「久しぶりの林さんのリポート、食い入るように読ませていただきました。  状況がとってもリアルに伝わって来て、素晴らしいリポートです。ぜひユーザーリポートにこのまま掲載させていただきたいのです が、よろしいでしょうか。もし、よろしければ、画像を1枚か2枚送っていただけないでしょうか。」

  メールとして文書のみ受信した後、上記の返信で添付画像を送っていただきました。

 謙遜な方なので、”初心者”を自称しておられるのですが、短期間で15cm双眼を使いこなして おられ、なかなかのキャリアと感性をお持ちであることが分かります。

 仰角による光軸ずれの調整方法も、返信でお伝えしておきましたので、今頃はすでに調整なさっている ことでしょう。

 F8鏡筒のセルのフランジ構造は、笠井さんによると、出荷前の光軸調整を容易にするためだそうで、 笠井さんの、製品に妥協を許さない姿勢に感心させられました。

12cmF8-BINO

 EMSbino120L、梱包を解いて初めて持ち上げた時にまずバランスの良さに 驚きました。ずっしりとしていますが重いという感じはなく、胸の高さのHF経緯台耳軸受けに難なく取り付け出来ます。

 ちなみに双眼部本体の質量(鏡筒2本、接眼部、架台)は14.5Kg、 HF経緯台とHAL三脚は7.6Kgでした。 常時は 2階の自室に組立た状態で置いてあり、庭先に出すときは双眼部本体と経緯台 付き三脚の2つに分けて運びますが、数分で運搬組立が完了し、即座に観望 体制に入れます(組立といっても耳軸への装架、とレンズキャップを外すことく らいですが)

 使用前のセットアップに関して、眼幅調整はロックネジを緩めると左側の鏡筒が音もなく極めてスムーズに左右に移動してくれます。

 光軸微調 整はユーザレポートの山本さんの方法、即ち「明るい恒星を真ん中に入れ、右 側EMS第一ミラーユニットのXY光軸調整ノブを廻して左右の像を一致させる →そのまま少し目をアイピースから離し、目の矯正力で感じなかった像のズレ を左右視野円内の恒星が同一位置になるようウインクしながら微調整する」 方法で行っていますが、ゆっくり行っても2分もあれば完了してしまいます。

 通常、双眼鏡の光軸調整は素人の手には負えないと言われていることから考えると驚異的なことです。 観望に際しては大変使い心地のよい操作性のハ ンドルを握って水平から垂直まであらゆる方向に自由に鏡筒を向けられ、かつ クランプを全く必要とせず任意の方向で停止する、しかも耳軸摺動部に適度な 摩擦抵抗があるため、粗動・微動操作共、極めて快適です。

 デザインも秀逸で 各部が堅牢丁寧に加工組立されていて美しく、いわゆる「持つ喜び」を満喫させ てくれます。

 /見え味について、正直言ってこれほど凄いとは思っていません でした。 昼間の風景では、遠くの電柱に取り付けられている装柱材のボルト やナットがくっきりと手に取るように判り、碍子の周りにはアクロマート特有のま とわりつくはずのハロは殆ど見えません。しいて重箱の隅をつつけば色つきは あることはあるが邪魔にはならないと言ったところでしょうか。 碍子の表面で 反射する小さな光の点は陽炎に揺らぎながらあくまで極小点に収束しているのが判ります。

 花や木々は微妙な色合いや水々しさが眼前に広がりいつま で観ていても見飽きません。経緯台の操作感が抜群なので飛行中の鳥を追 跡することも容易で、旋回しているトンビの羽根の美しさにハッとさせられるこ ともあります。

 最初に観たのが昼間の景色で、既にその時この双眼望遠鏡 の並々ならぬ能力を予感していましたが、星空についてはさらに凄いもので した。視界中心の恒星像を見ながら近距離側から無限点へ静かにピントを追 い込んでいく・・・深く小さな光点に収束して恒星の輝きが頂点に達し、目が痛 くなるほどです。

 月はまるですぐそこにあるかのような臨場感、明暗と細部の 様子が見事なクレーター、二重星団は視界いっぱいに色とりどりの微恒星が 広がり例えようのない美しさに目を奪われます。 現在ペアで所有している唯 一の2インチ低倍率アイピース(WideScan30)による超広視界双眼視、そこ にはもはや「筒から覗いている」という感覚はほとんど存在せず、漆黒の宇宙 空間に漂う船から窓の外をみていると言った方が良い世界です。

 90度対空型 なので低空の星空を観望しているときは顔は下を向いているのですが、アイピ ースの向こう側の宇宙空間に落ちそうな錯覚に陥ることすらあります。

 SCHWARZは「大口径、眼視専用、低廉のアクロマート」と言われているようです が、私の観た限りでは「値段の割によく見える」などという低いレベルでは無さそうです。もちろんその性能を遺憾なく発揮してくれるのは像質劣化の無いE MSの底力があるからだと思います。双眼視による宇宙、その臨場感を一度 味わうと単眼の世界には戻れないかもしれません。「両目で観る」光の量は 単眼の2倍ですが、頭の中で処理され感覚として認識する情報の広さと深さはその何倍にも達するのではないか・・と思います。

Osawa

Comment by Matsumoto/ 管理者のコメント;

 大沢さんは、この度のSCHWARZ120(F8.3)双眼望遠鏡がお初めてにもかかわらず、 最初から難なく使いこなされ(エンコーダもご自分で取り付けられました)、 持ち前の豊かな感性で、痒い所に手が届くリポートを次々に送ってくださっており、 この度、正式にまとめてくださいました。

 大沢さんは、前回のSCHWARZ150(F8)の初期仕様の受注の時に、唯一の12cmとして ご注文いただき、こちらの事情で随分と納期をお待ちいただくことになってしまいました。  もともとは、SCHWARZ150(F8)の初期仕様の縮小コピー的な物を計画していたのですが、 その後にF5タイプで成功を確認した新しい方法を採用しました。