Megrez80-BINO

 お送りいただいたEMSセットと目幅調整台座、短縮済み鏡筒等を、先日組み立て、Megrez80-BINOを 完成させることが出来ました。 以来、こちらは天気が悪い日が続きますが、晴れの合間を見て具合をみました。 右側に妙な金色の棒が付いてますが、重りの付いた棒を前後に移動させて全体の前後重量バランスをとってます(重りを変えたりもします)。 添付写真のように難なく組み立て、アイピース他納入品の不具合品はありませんでした。 光軸合わせは右の鏡筒を振って出来るだけ行い、EMSの調整ノブは最後に使うという松本さんのアドバイスでちゃんと出来た気がします。 合焦状況は問題無く、下の通りで鏡筒の切断した長さは適切だったです。          ドローチューブ繰り出し量      2倍バーロー時
EWV-32mm        14 mm            5 mm
イーソス13mm       22 mm           4 mm
WO-6mm           15 mm            6 mm
気になった点は以下ですが大きな問題ではないです。

● 片持ちの「Easy Touch」に積んだのでモーメントが大きいので傾く。 もう片方に適当な望遠鏡を積めば勾配は軽減されると思いますが、トータル重量が気になってきますが... 望遠鏡を購入してバランサー兼用させようかと考えてますが何かアドバイスあればお願いします。 曇りでしたが、雲間から顔を出す月や木星、天の川の付近を観望しました。 感想は「やはり全然違う、松本さんから購入して良かった~」と思いました。 いったんセッティングしてしまえば、ストレスを全く感じずに気持ちよく観望できました。 上下左右に鏡筒を楽に自在に振り、視界の先の星野は、非常に広視界で明るシャープな像で感動的です。 これまでは大体Megrez80に双眼装置を付けて(バローを使わないと合焦しないので好きな低倍率が無理)天体観測してました。 これだと視野周辺はケラレるし視野は狭い・暗い(特に高倍率)、双眼装置は重いので天頂付近はドローチューブがズルズル落ちるし、 双眼装置自体も回転し易いしストレスのたまる天体観測でした。 「Easy Touch」のような片持ちは少数派で、重量が片側に偏る不利はありますが天頂も楽々見れるし、 ストレスなしに操作出来るのは経緯台式と変わらないと思います。
 曇りがちでしかも月夜に一度天の川付近を短時間流した位ですが、プリズムを使わないEMSでの双眼システムの実力は充分感じました。 これからは有名な球状星団や新月時の晴れた夜に天の川付近をじっくり流すのが楽しみです。 Megrez80はバックフォーカスが短くて、色々対策はありましたが松本さんへ送って、鏡筒の切断短縮の完璧な仕事をして頂き正解でした。 納期や配達も非常に気をつかっていただき恐縮しました、良いものをありがとうございました。                                       K:(オランダ在住)             

Comment by Matsumoto/ 管理者のコメント;

 Kさんは同胞ながらオランダ在住で、ご見学はもとより、事前のパーツ類の往復にも大きな制約がありました。 Megrez80鏡筒とT字型架台はすでに所有しておられましたが、荷物の安全と軽量化のため、鏡筒パイプ(フランジ付き) のみをこちらにお送りいただき、切断、短縮加工をした物を、目幅調整台座とEMSと一緒にご返送しました。  にもかかわらず、写真のような見事なEMS-BINOを完成されたことに、まずは敬意を表したいと思います。 さらに、独自のウェイトシステムは非常に合理的に出来ていると思います。

 片持ち架台に搭載した際の傾斜傾向は、私も以前にZenithStar80-BINOで経験していました。アリガタ取り付け用のブラケットを ソリッドな10mm厚のアルミ板にして対策にしたつもりでしたが、やはりそれでもタワミ傾向が出るようですね。

 タワミは、片加重による架台のタワミとBINOの台座のタワミの合算だと 思いますが、後者の対策としては、ブラケットとベースプレートが作るL型の部分に筋交いを設置するか、タワミ分を見越してL型の角度が少し鋭角に なるようにシムを入れればほぼ解決すると思います。

 ただ、片持ち式はもともと、総合的に軽量で、シンプル、コンパクトが売りのシステムなので、強化対策で重量が増したり構造が複雑化するのであれば、 最終的にはやはり両持ちのフォーク式架台に分がありそうですね。
 搭載機材の下に自由空間が広く確保される片持ち架台の開放感には、確かに大きな魅力はありますが、 EMS-BINOに関する限り、90度対空のメリットにより、通常の両持ちフォークでも 天頂付近の観察に何らの障害もありません。
 実は、この度供給させていただいた目幅調整台座は、 一般用と共通な規格を採用していますので、耳軸部を設置するだけで即、両持ちフォーク架台に対応できるように 配慮しています。      

15cmF5-BINO

1 購入の決め手

 約1年半ほど松本さんのホームページを拝見させていただいていたのですが, 思い切って2007年1月に15㎝F5-BINOを注文しました。このタイミングで お願いしたのは,概ね次の理由です。

 まず,15㎝F5-BINOそのもの評判のすばらしさですが,これは言うまでも ないと思います。次に,私も今年「不惑」の年を迎えるということで,体力や視力 に余裕があるうちに15㎝F5-BINOで存分に観望を楽しみたいと思ったこと です。また,僭越ながら,松本さんの15㎝F5-BINO開発がたいへん高水準に 安定してこられたように感じたからです。さらに,原油高など物価が上がって くる中,松本さんの経営努力で価格が維持されているうちに購入しようと思った 次第です。迷われている方はぜひ参考にしていただき,ご決断下さい。(^_^;) なお,注文してからオプションを決めるに際しては,松本さんからいろいろと 有益かつ適切なアドバイスをいただきました。そのおかげで15㎝F5-BINO そのものにしたことを含めて,私にとってベストな選択ができたと思っており ます。

2 訪問

 EMSの光軸調整のレクチャーを受けるために,宮城県から鳥取市までうかがい ましたが,とても有益で価値ある体験でした。松本さんが「一度は現物を見て調整 方法などのアドバイスを受けられた方がいいですよ」とおっしゃる意味がよくわか りました。EMSを鏡筒からはずしてからとりつけ,光軸調整をするところまで, 手取り足取り丁寧に教えていただきました。また,像が傾いたときにそれを修 正する方法なども教えていただきました。やはり,百聞は一見にしかずです。 おかげさまで,ファーストライトでも光軸調整に手こずることなく,星空を満喫 できました。
 また,開発にまつわる苦労話など興味深いお話をうかがうことができ,大変 楽しいひとときでした。松本さん,完全な文系で素人の私にいろいろとご教示 いただきまして,ありがとうございました。m(_ _)m

3 観望

 私は天体写真はまったくやらず,眼視専門ですし,これまで大口径の望遠鏡 は持ったことがないので(タカハシFS-102のみ所有しています),他と比べて どうこう言える立場にはありません。しかし,15㎝F5-BINOの使いやすさ, すばらしさはファーストライトで実感しました。

 ファーストライトの観望地は仙台市内から車で30分程度のところで,天の川は はっきり見えるのですが,それでも仙台市内の光は気になります。肉眼では 5等星がやっと見える程度です。

 私のものはEWV32㎜と2インチマルチショートバローを備えただけのシステム ですが,夏のメシエ天体,天の川めぐりは息をのむ美しさです。最初にのぞいた ときは,「なんじゃこれー。星がありすぎる!」という感じでした。「宇宙船の窓から 星を見ている」という表現がぴったりです。また,バローを使うとコントラストが 上がり,球状星団のつぶつぶもはっきりしてきて絶景です。クレイフォード接眼 部のなめらかさのおかげでピント合わせも簡単で,シャープで美しい星像を楽し めました。M11,M13,M22,ペルセウス座の二重星団は特にすばらしい眺め でした。M27や干潟星雲などもよく見えましたが,星雲用にフィルターが欲しく なってしまいそうです。(^_^;)

 幅広改造HF経緯台の性能もすばらしいです。ガタは皆無で高度軸の堅さの微 妙な調整も自由自在です。三脚とHF経緯台,15㎝F5-BINOの相性もばっちり で,風が吹いてもほとんど揺れず,安定した観望ができました。 松本さんが勧めてくださったドットファインダーも大変便利で,15㎝F5-BINOの 正立,低倍率と相まって,目的の天体が指差し感覚で簡単に導入できます。 ちょっと暗い天体の場合は5㎝正立ファインダーと併用することでよりスムーズ に導入できます。

 ファーストライトの日はみずがめ座流星群がたくさん飛んでおり,15㎝F5-BIN Oの視野の中で流星を3つほど見る幸運がありました。(^_^)v 流星にも色の違 いがあるものだと思いました。広視界の賜ですね。

4 機動力

 15㎝F5-BINOの機動力もすばらしいと思います。写真のとおり,自宅では 和室に無造作に立てています。三脚の下端には雑誌を置いて畳を傷つけ ないようにしています。先日震度5弱の地震がありましたが,無事にその まま立っていてくれました。HF経緯台の60度加工のおかげです。

 持ち出すときはEMSとアイピースのついたままの鏡筒を自動車の後部座席 にポンと載せ(緩衝材は何も無し),三脚とHF経緯台はトランクにそのまま 入れます。もちろん,安全運転はしますが,普通の振動などは全く気にせず, そのまま運んで,観望地で組み立てればすぐに使えます。15㎝F5-BINO の鏡筒も男性なら1人で簡単に経緯台に載せられます。屈折なので温度 順応に神経質になることもありません。こんなに簡単にすばらしい星空を観 望できるのですから,なまけぐせがつきそうです。(^_^;)

 最近は車の後部座席に積んでおいて,仕事帰りにちょっと郊外に観望に いこうかとたくらんでいます。

5 最後に

 このようにバランスのとれたすばらしい双眼望遠鏡を持てて大変うれしく 思います。最近は天候不順でストレスがたまる日々ですが,晴れ間を ねらってお気軽観望をしたいと思います。

 仙台市では7月に新しい天文台がオープンして,連日多くの市民が天文 台に足を運んでいるようです。素人に毛が生えたくらいの私が言うのも おかしいですが,天文ファンが1人でも増えてくれればいいと願っています。

 松本さん,私の素人的な質問にも丁寧にお答えいただき,また,調整方法 についても懇切丁寧にご教示いただき,ありがとうございました。また, わからないことなどご相談させていただくかも知れませんが,どうぞよろ しくお願い致します。m(_ _)m                              宮城県 S

Comment by Matsumoto/ 管理者のコメント;

 宮城県のSさんより、大変懇切なリポートをいただきました。 また、車でBINOを受け取りに見える方は比較的多いのですが、Sさんは空路でわざわざ出来上がったBINOを見に 来てくださり、BINOは後日宅配便でお送りしました。”初心者”を自認していらっしゃいますが、このご姿勢には感服し、 感謝の気持ちで一杯です。 また、”PROGRESS REPORT(製作情報速報)”もずっと見てくださっていたようで、 この点も、とかく固定観念で捉えやすい老練マニアや一般業界人よりも客観的に見てくださっていたようです。

 振り返りますと、鏡筒が黒かったSCHWARZ150S-BINO(ちなみにschwarzはドイツ語で黒のこと)の第一世代から始まり、 第二、第三、第四世代に至り、さらにフォーカサーをオリジナルの大径クレイフォードにし、目幅調整を鏡筒固定のヘリコイド 目幅調整方式から、IPDクレイフォード方式へと進化して来ました。BINOに有害なイメージシフトの要素を 一つずつ潰して来たわけで、ここに至って全ての阻害要因を排除できたわけです。

 Sさんには、観測リポートもしっかり書いていただきました。分かりやすい言葉でご感想を飾らずに的確に書いてくださっています。 マニアも古参になるほど光学系の机上データにうるさくなるという一般的傾向があるのですが、15cmF5アクロマートというスペック の従来的な常識を覆すものが、この15cmF5-BINOにはあります。製作者が言うのでは説得力に乏しいので、 こうしてユーザーの方が証言してくださるのは大変ありがたいことです。

 私の地元の友人も、15cmアポの単体鏡筒は別に持ちながら、この数年はもっぱら15cmF5BINOでのdeep-skyにはまっていて、前者の アポ鏡筒はたまに惑星や二重星観測をされる時しか出番がないそうです。 主観的な表現ではありますが、ざっと、

従来の(短焦点アクロマートに対する)一般常識
                  < 15cmF5(アクロ)単体鏡筒
                           << 15cmF5BINO


  ということで、最後の(<<)は体感して初めて理解できる部分だということです。

 Sさん、素晴らしいリポートをありがとうございました。 またBINOを作る元気が湧いて来ました。