EMSの種明かし

それでは、お約束通り、EMSの種明かしをさせていただきます。

EMSの種明かし

 まず、EMSの光路は、立方体を3つ直列に繋いで出来る正四角柱の1側面の一つの頂角 から同じ側面の対角に至る最短路です。 ただし、経路は他の3面を通るものとします。(1図: 赤い線が光路、青い線がそれぞれの反射点での反射面の法線)

EMSの種明かし

  EMSを手前から見た時、視線に垂直な平面に投影した第1反射光線(2つの反射点を結ぶ直線)の傾斜角を α とすると、tanα =1/√2(白銀比)ですので、規格 紙の対角線の傾きと同じです。このαは、x-y調整ノブの配置の位置角にも重要な意味を持ちます。
  さらに、β=2α こそ、EMSのユニット間のねじれ角で、cosβ=1/3 というシンプルな数字で表されます。

  α、β の2つの角度がEMSを決定する重要な要素ですが、これらの角度は、B5,A4等の規格紙から完璧に再現できます。

EMSの種明かし



大阪の岩崎さんからのご投稿です。

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BORG125ED PH F6.4 EMS BINO

 平成15年9月6日にBORG125ED F6.4 松本式EMS-BINOを鳥取市の「メガネのマツモト」 にて受け取り双眼望遠鏡ユーザーの仲間入りをいたしました。

 1986年春に社会人となり東京での一人暮しが始まり、望遠鏡を手元に置けなくなって以来ですので 17年強のブランクを経てということになります。その間に中途退職、転職、結婚など人生いろいろありました。 子供時代の虫眼鏡シングルレンズでの自作や、8cmシングルレンズコルキットの組み立ての経験はありますが、 今回が初めての屈折所有になります。私の少年時代の憧れは8cmアクロマートの屈折や10cm反射の赤道儀で したので、125mmの鏡筒が2本しかもアポクロマートなど、その頃からすれば全く夢の様です。

 17年のブランクを経ての復活ですし、受け取り以降、月齢と天候に恵まれず、思ったように観望できてい ないので、あまりデータとして参考になるようなことは言えないのですが、松本式EMS-BINOを導入する 経緯と使い始めての感想ということで報告したいと思います。
 第1子の長男が物心ついてきた一昨年から、また天体観望を始めたい、子供と一緒にできたら楽しいだろうし、 子供にも刺激になるだろうと思うようになりました。そこで、望遠鏡貯金と一人勝手に銘打って小遣いを節約して 積立を始めました。二年後には火星も大接近することだし、自動経緯台の30cm級のシュミカセでも買おうと思 ってましたので、目標額はそのあたりに置いてました。同時にPC買い換え貯金も開始し、また前年に自宅を建て てましたので、ローンもありなかなかやりくり大変でした。

 そういう話とは関係なく、「里山」などといったキーワードでネットサーフィンしていたときに 「ひとりでも仙人」というサイトに行き当りました。もちろん知る人ぞ知る 「しんかい」で有名な山内さん のサイトです。そこで掲示板に書き込みなどする様になり、再び天体観望に復帰しようと思っているなどという話 を書きこみますと、強く松本式EMS-BINOを勧められました。そこで、松本さんのサイトや 服部さんのBIG-BINOのサイトをはじめとする双眼望遠鏡ヘビーユーザーのサイトを見て色々考えておりましたところ、 山内さんより「下手な考え休むに似たり、実行あるのみ」とばかりに、松本さんをご紹介いただき、製作をお願いす ることにいたしました。それが今年の春であったと思います。

 主に星雲星団を見たいのでできるだけ大きい口径、でも子供に分かりやすい月も惑星も見ると欲張りな話で、 鏡筒を何にするか大分考えましたが、焦点距離短めのアポクロマートということは決め、コストパフォーマンス 重視ということで、色々迷った結果BORG125ED F6.4と決めました。トミーテックさんとは、私の本業 (大阪松屋町の玩具卸)でご縁があるということもありました。松本さんは、BORG125は改造経験があり、 BORGパーツ類も良く分かっているということで、鏡筒引渡前から設計を練って下さり、私の変な質問や常識的 ではない要望にも適切に対応してプランをまとめて下さいました。 中版ヘリコイドに小型のラックアンドピニオンでの合焦となり、大きな合焦キャパシティを持つようになったの はその為です。仕様を活かした使い方ができるように頑張りたいと思います。少々プレッシャーを感じています。

 初めて山内さんと松本さんにお目にかかったのは、今年の8月2日の佐治アストロパークの星祭り会場でした 。山内さん所有機と松本さん所有機の合わせて4台の松本式EMS BINOを実際に操作体験しました。ここまで の事が総てネット上のやり取りだけで進んだのですから、なかなか面白いことだと思います。  星祭りの日は、北アメリカ星雲が肉眼ではっきり見える程のすばらしいコンデションで松本式EMS  BINOを堪能できました。この時にシュワルツの性能に驚き従来持っていたアクロマートに対するイメージ を変えさせられました。自分のが完成するまでの待ち遠しさが増しました。

 8月末に完成したとの連絡をいただき、9月6日に鳥取に受け取りに伺って、「眼鏡の松本」店頭で光軸調整 や各部の説明を受け、実際に操作してみるなどしたのですが、すべて想像していたよりも簡便でスムースでした。 これは松本式EMSの熟成度の高さと、BORGの改造計画を十分に練っていただいた為と思います。  その日に鳥取から近く、星祭りの際は素晴らしい星空だった佐治にてファーストライトの予定でしたが、 佐治に予定通り宿泊したものの、雨となり果たせませんでした。

 翌日9月7日は昼頃から快晴となりました。佐治より帰宅して、夕方より自宅屋上バルコニーに設置調整しまし た。BORG鏡筒は、剛性不足等と言われる可能性もあるのでしょうが、軽くコンパクトで設置は容易です。 一人で余裕で組み立て調整ができます。バルコニー横の部屋から出してセット完了するのに5分で足ります。

 自宅での望遠鏡の稼動率はかなり高くなると思います。私の自宅は大阪平野の北の端JR大阪駅から阪急電車で 30分ほど北の箕面市です。自宅から200mほど北の裏山は国定公園で丹波・日本海側まで繋がる山稜が 始まります。山には猿も鹿も出る様な環境ですので、北側は良いのですが、南は大阪梅田の上空となり アンタレスも見えないくらい空は明るいですし、都市の排熱で南側の気流はいつもよくありません。 南方向は高度30度位まではダメです。天体導入するのに必要な星が肉眼では見え難いですから BINOにはスーパーナビゲータと自作大口径のファインダーを搭載しました。星見には良くない環境ですが、 ここが私のレギュラーな観望場所であります。観方を変えれば大阪の夜景が美しく見える場所とも言えます。

 使用アイピースは、製造終了在庫限りということで特価となっていたペンタックスのXL40とXL7です。 何でも二個必要な双眼ですので、この特価は大変有り難かったです。バローは笠井の2インチマルチショート バローです。

 地上風景ですが、南西数キロにある大阪空港を離発着する航空機を観ましたが、大変鮮明に見えました。 航空無線のレシーバーを持っているので、受信しながら見ていたのですが、臨場感があってなかなかよろしいです。 これは大変楽しいです。

 さて暗くなって、半月過ぎの月と火星でいよいよ天体でのファーストライトとなりました。私には沢山の望遠鏡、特に最新機材を覗いた経験があるわけではありませんので、評価というほどのことは言えないことはお断りしておきます。  非常に明るい火星と月を観ても、色収差やハレーション等余計なものは出ていません。月面や火星のピントはぴた り決まります。像のシャープさは気流が良くない状態でしかまだ観てませんので、なんとも言えませんが、XL7 に2倍バローを使って228倍までかけてみても、像がボケるということは起きているようには見えません。 気流の中で一瞬クッキリ見えるという状況でした。

 恒星像は、少しシャープさが欠ける感じがあります。「針で突いたような」とは言えません。焦点の内側と 外側の像は対象ではありません。これはメーカーでもコメントしている通りです。  星雲星団ですが、月が明るい状況ですのでレポートになりませんが、M31は上弦の月あかりの中でも見えは いたしました。周辺の淡いところはやはり見えませんでした。月明かりが無くなるのを待たねばなりませんが、 光学性能というより光害の影響が大でしょう。

 前述のインプレッションは、BORGやアイピース、バローの性能の話であって松本式EMSや松本さんによる カスタム部分の評価にはなりません。EMSによる像への影響は意識されませんので、レポートできないというか、 EMSにより問題となる影響が出なければ、レポートでは、EMSへの言及がないということになると思います。 松本さんの手による部分については、EMS含めすぐに慣れることができました。何等特別に意識する事がなく 使えています。特に意識なく使えるというのは素晴らしい事です。良く考えられ、緻密に作られ熟成している証拠で それが実感できます。

 久々に観た月の地形は、気流が悪い中ですがクレーターの中央の山や海の皺がきれいに見え、立体感があり 印象的でありました。昔10cm反射でよく見ていた月の地形をたどるのも懐かしく楽しいです。まだ結構 クレーターの名前など覚えているものです。雲が多い状況だったので、月の前を雲が過ぎり立体感を強く感じる なかなか面白い構図となりました。これは双眼ならではの光景でしょう。8月2日の佐治以来一月ぶりの火星は、 小さくなった南極冠がクッキリ見えました。火星自体は思っていたよりもずっと大きく見え、 模様も良く分かります。流石に大接近という感じです。いつまでも観ていられます。火星や月を使って、 光軸調整の練習をしたりもしましたが、高倍率では日周運動で動く対象で合わせるのは、結構大変でした。 拙宅からは沢山見える夜景で合わせるのが得策と思いました。

写真1(photo1)は、 ・火星と月の接近(初めてのデジカメ天体写真です。手持ちで撮影しました)
写真2(photo2)は, ・屋上バルコニーでの設置状況
写真3(photo3)は、・EMS BINOを収納している屋上バルコニー横の私の部屋
 自作ファインダーは、ディスカウンターで売っていた70mmの アクロマート短焦点屈折を手近なもので改造したファインダーです。一応2インチ対応にしてあります。 元々入っているバッフルの絞りが小さくて、松本さんに計って頂くと対物有効利用径は50mmであるそうです。 70mmを50mmに絞っているので像は50mmより良いでしょうということでした。しかし、 趣旨は星雲星団導入用の大口径低倍広角ファインダーなので、そのうちまた自作してみようと思っています。

 今後私の部屋のバルコニーに面した窓にくっ付けて窓の高さに合わせた机を置き、望遠鏡の出し入れや観望時の用品 の置場にして、窓から出し入れできるようにしようと考えています。カウンター式になって非常に便利になる はずです。

 屋上バルコニーは家を設計した当時、まだ天体観望再開は具体化はしてませんでしたが、星を観る事を意識 して作ることにしたものです。実は子供の頃から星を観る為の屋上は夢でありました。夏は子供のビニルプール、 淀川の花火観望場所等としても活躍する我が家の重要な遊びスペースです。

 月の明るい時期が過ぎたら、星雲星団を観望したいと思いますが、これまた待ち遠しいことです。その間に、 添付写真のように各種ネジを工具不要なものに変更したり、対物のフードが緩いのでマジックテープを貼ったりと 作業を行っています。これもなかなか楽しいです。

 余談でありますが、私は肩こりが酷いので、観望用に写真に写っているワークチェアを奮発購入しました。 なかなか快適で双眼の楽しさと合わせて何時までも見ていられます。簡単に一時間くらい経ってしまうので驚きです。 寝不足にならぬ様に注意したいと思います。

 ファーストライト以降も月があったり、週末の天気が悪かったりでなかなか思ったように観望できていません。 台風通過の翌日透明度に恵まれた夜があったのですが、翌日は仕事で少し観望しただけなのですが、20年ぶりに アレイ状星雲が綺麗に見えて嬉しかったです。  どうしても空が明るいので、光害カットフィルターの購入を検討しています。革命的に見えるようになるとは思 いませんが、少しでも見えやすくなれば、と思っています。

岩崎 哲也
Tetsuya Iwasaki


管理者のコメント;
 岩崎さんは着手前(佐治星祭り)とお引き渡し時の二度、お越しいただきました。 二度共、奥さんと小さい子供さん二人のご家族でお見えになりました。  4歳でパソコンの天文シミュレーションソフトを巧に操作する息子さんは、いつも行儀良く大人に付き合われるのに感心 しました。

  岩崎さんには、引き渡し時に光軸調整の練習をしていただきましたが、瞬時にマスターされたので驚きました。 以前から両眼開放でファインダーを覗く要領をマスターしておられたとのことで、なるほどと納得した次第でした。
  ヨットマンでもあられる岩崎さん、澄んだ感性でED-BINOの醍醐味を満喫してください。

   月と火星の写真、手持ち撮影とは思えませんね。お見事です。自作ファインダー、塩ビパイプのジョイントを上手に使っておられます。
 大作のリポート、本当にありがとうございました。