15cmF8-BINO

松本式SCHWARZ150対空正立双眼望遠鏡 愛称「のっぽ君」 をメガネのマツモトさんで、受領してから1ヶ月が経ちました。 まだ、その実力の片鱗をほんの少し垣間見せてくれた状態です が、ここでファーストインプレッションを報告させていただきます。

のっぽ君は松本さんが発明考案された、天体を眼視観察するた めに特化された類い希な性能を持つ機器です。写真でご覧にな るのっぽ君は、ジュラルミンの鈍い輝きとSCHWARZ鏡筒のブラ ックのツートーンにより、やや冷たい印象を持たれるかもしれま せんが、実機をご覧になるとその印象は異なり、操作する人にや さしく語り掛け、いともたやすく深淵の天体世界に私達を誘ってく れます。

のっぽ君が使用者に対してやさしいのは、直視に対し像質劣化 が認められない90°対空と、完全な正立を実現している松本式 正立ミラーシステム
<EMS>を搭載した双眼であり、なおかつい ともたやすく操作できる機構部とが作り出す、ハーモニーを持って いるからです。

のっぽ君の最大の特徴は、左側鏡筒全体がスライドする眼幅調 整機構でしょう。一般に精密な鏡筒平行度が要求されるのではな いかと推定される双眼望遠鏡の、それも巨大と言っていい150mm F8鏡筒を、2個所のリニアブッシュでスライドさせて大丈夫なのだろ うかと、懸念されるむきもいらっしゃるかもしれません。 でも、実際に山間の星見ポイントまで運搬して、暗闇のなかでセット アップして、「眼幅調整」、「合焦」、「光軸調整」を行い観望態勢に 入るまでが、それはもうあっけないほど簡単なのです。

「眼幅調整」は、右手の親指1本でシュルシュルと左側鏡筒がスラ イドし、
自分の眼幅位置は右手親指が覚えているので、瞬時です。 小型双眼鏡の眼幅を調整するときの、両手でする折り曲げ動作と 比較して、のっぽ君は指1本・瞬時ですからその容易さが想像して いただけるでしょう。

「合焦」は、SCHWARZ鏡筒オリジナルのラック&ピニオン接眼部が その内径不足により撤去されたので、接眼レンズスリーブ部がスラ イドするやや特異な構造になっています。 スリーブが薄肉の2重筒になっており、三好機械のパイジョン連接 棒により接眼レンズが挿入された外筒側が任意の位置にスライド・ 固定されます。

ここは、2インチ接眼レンズ使用と最小眼幅60mmを成立させる構 造として、特に考えに考えられた部分だと思います。接眼レンズに PENTAX XL40を使用して、無限遠・矯正視力時に1番縮めた状態 から約10mm引き出した位置にきました。そしてフルストロークは 40.5mmありました。

そして「光軸調整」ですが、これほど入手前の予想と実際の操作が 違うとは思いませんでした。ここで言う光軸調整とは左右の視野円 がひとつの丸になり、左右の像を完全に一致させることです。
市販の双眼鏡の光軸調整方法は専用の測定器により、その精度 はとても人間の感覚による調整には及ばない精度を有するものと 紹介されることがありました。それが、自分に出来るのだろうかと 不安を抱かせましたが、杞憂だったんですね。
調整ネジは、右側第1ミラー(大きい方)ボックスの外側、右手を伸 ばした自然な位置に2個あり、視野の中で対象がX軸方向、Y軸方 向にそれぞれのネジにより調整できます。
明るい輝星を視野に導入し、すばやく2つにずれた星をひとつに合 わせます。それから、対象の星をみつめながら徐々に眼を接眼部 から離していくと、自分の眼の矯正能力により合わせられていた残 存ずれが現れてきますので、さらにこれを調整ネジによりひとつに 合わせると完了です。

そして、15cm屈折双眼望遠鏡の世界が始まります。それがいまま で何回も見た対象であっても、いつまで眺めていても飽きるというこ とがありません。

今回は観望にいたるまでの調整過程を書きましたが、また機会が ありましたら観望結果や、分解・運搬・組立についても報告できれば 幸いです。

Yuzo Yamamoto

Comment by Matsumoto/ 管理者のコメント;

製作者の操作マニュアルに優るコメントをいただきました。

のっぽ君、身長180cm超のYamamotoさんにそう名付けられ、
鼻高々ですね。

夏の天体を十分に満喫された後の観測報告が楽しみです。

8cm-BINO

 私が定年後、山中の一軒家に住むようになって5年が経った昨年の夏のある夜、 頭上に輝く美しい昴、M-31の雲の様な星雲の姿、更にはおうし座 で煌く木星や土星を肉眼で見たとき、もっと大きくして眺めたいと思うようになりました。

 勿論、当時は星雲、星団の名前も知りませんが、美しいものをそのままの 姿で近くで見てみたいという素朴な気持ちからでした。  早速某メーカーの114mm反射鏡を購入し昴を覗きました、ところが何か 違う気がするのです、眼視や7x50の双眼鏡で見たのと星の並び方が違う のです、左右、上下が反転しています天文の世界ではそれが当たり前の 事とは当時知る由もありませんでした。

 むかし、船乗りをしていまして双眼鏡は必需品でしたので7x50はいつも つかっていました、これは見たままの形を近づけて見せてくれます、これ 船乗りの常識ですし一般の常識でもあると思います。 なのに天文界では どうして????。

 そこで初歩の天体観測という本を買い、佐治アストロパークをたずね、 宮本さんにいろいろとんちんかんな質問をし、くわしく、丁寧に教えて戴き 松本さんを紹介してもらいました。

 松本さんも素人の私に、親切に対応して戴いたのですが、特に何が見たいのか的を 絞ってと教えていただきました。 私は望遠鏡で星を眺めているとき 右に逃げたら鏡筒を右に振ると更に大きく逃げてしまうのは、人間の生理 に反する現象なのでどうも腑に落ちない事を強調しましたところ、EMSを見せてもら いこれだっ!! とすぐに注文してしまいました。

 しばらくは、Vixen102EDを赤道儀に乗せて星空散歩をしていましたが、 何かものたりず、再々松本さんを訪ねるうちに、100mmMTTを見せてもらい 遂に私の理想とする両眼でありのまま見える望遠鏡にたどりつきました。

 松本さんに無理を言って工程の中に私の80mmBINOを割り込ませて もらい、Vixenのハーフピラーの経緯台に加工搭載してもらいました。

 この自称チビBinoは常に組み立てたまま我が家に大きな顔押して鎮座して 居ますが取り扱いはいたって簡単、400mm F5だけあって、  1.分解も脚とフォークマウントがワンタッチで切り離せる。
  2.軽自動車にそのままつめる。
  3.眼幅、視野調整もいたって簡単。
  4.アイピースの交換も暗闇の中でも簡単。
  5.合焦調節も左右のヘリコイドで一発。
  6.軽量で、星の導入もクイックファインダーの装備と相まって
    素人にも簡単。
  7.組み立てたまま片手で抱いて持ち運べる。

  などなど、これからの好シーズンに大いに活躍してくれそうです。 どうも天文の素人がと思われるでしょうが、素人が、彗星大接近や惑星 大接近のとき大騒ぎするだけでなく、美しい夜空にロマンを求めていつも 楽しく複雑な設定なしに、気軽に見たままの星の姿を捉えることのできる 天体望遠鏡こそ真の望遠鏡だとおもいます。

 ちなみに私はこの夏、120mm F5 Twinn-Binoの製作を依頼して います。 チビBinoとあわせてこの夏小3の孫娘と星空散歩をするつも りです、どんな夏休みになるか、今からたのしみです。

山内 満喜男
Makio Yamauchi

Comment by Matsumoto/ 管理者のコメント;
 山内さんは、深海6500の操縦士として、世界最深の潜航を達成された方で、MHKの ドキュメントシリーズ ”プロジェクトX”でも紹介されておられますので、ご存じ の方も多いと思います。

 この度、海の底から空の上へと、挑戦の対象を180度転向されたかに見えますが、 山内さんのお話を聞くにつれ、未知な物に対する探求心には共通項があるのだという ことをいつも実感させられます。

Astrophysics 15cmF7APO-BINO

  上の写真は、私のEMSとアストロフィジックスの15cm3枚玉F7アポ鏡筒を使用して、アメリカのジョーさんが
自作された物です。
 写真のEMSセットは、EMS-Lをベースにし、構成ユニットの連結部分に眼幅調整用のヘリコイドを設置し、
右のEMSに光軸調整装置を組み込んだタイプです。

  では、ジョーさんのリポートをご紹介しましょう。

These EMS units by Tatsuro Matsumoto are a fine piece of craftmanship.
The man takes pride in his work and it shows. After looking at these
units when they first arrived, I thought their appearence was closely
ressembling product received from Pentax or Canon. As a matter of fact
as part of the adjustment process on the bino units, a Pentax Helicoid
unit is used. The EMS units use all mirrors, no prisms – therefore no
light loss or added color.

There are more adjustments to attend to than a binoviewer. The end
result blows a binoviewer away. The visual 3D effect is only hinted at
in binoviewers. Here in the binoscopes it’s very pronounced ! The moon’s
crater walls jump at you with detail. You are actaully looking down both
sides of the mountain ranges. The amount of information your eyes see is
probably amplified by a factor of three over simple binoviewers. Not to
mention you have much greater light gathering ability; but the same
resolution of a single scope. You would think after looking through the
the binoscopes that your resolution had just gone way up, though it has
not. When looking at the Sun in white light, the binoscopes were very
impressive. The sunspot group coming into view on the limb actually
showed a depression. We thought this to be an optical illusion; but too
many people saw the same view. We cannot explain it. It surfices to say
the solar white light view was the best veiw I ever had of a stellar
object so far. I expect the moon’s views to be superb also. Then next as
the moon sets, I will try clusters and extended deepsky objects next;
but I really think these bino ( EMS ) units will perform their best on
the planets.

SETUP:

The Bino backs just slip into the 2″ back of your focuser. You first
have the interpupillary adjustment which is done by moving the Pentax
Helicoids on each rear EMS unit. On the right Bino unit there is an
ALTaz ajustment for correction in the x-y plane and next you need to
correct in the rotational or axial plane. For example in the left
eyepiece there might be a telephone pole that is placed 6 to 12 o’clock.
But in the right eyepiece that same pole might be 11 to 5 o’clock. There
is a rotation portion of the bino back that handles this adjustment. Of
course the two scopes must be parallel and the bino backs must be
parallel also. Once you place them into the focusers, you must align
them with respect to one another. The scopes must be close to the same
focal length for the same power, the eyepieces must be the same and you
make all adjustments at medium to high power at infinity.

Is it easy to align them or does precise alignment not matter ?

The above process is really more simple than it sounds. I can be
setup and running, now that I know the procedure, in about 5 minutes for
equipment setup and another 5 minutes for alignment. After that each
person that looks through the scopes has to adjust for their own
interpulliary adjustment and re focus.

I can recommend these EMS bino units to you if your
considering the purchase. It is the ultimate binoculars for those who
want the ultimate view. The planets are now up and I am about to start
evaluation of the planetary views shortly.

Joe Castoro
Coram, New York

翻訳(松本龍郎)

USER’S REPORT FROM USA
by JOE

 この松本龍郎氏によるEMSセットは、まさしく職人技の産物だ。
氏は、その仕事に誇りを持ち、そして製品はそれを示している。
  着荷後に荷を解いた時、その外観がペンタックスやキャノンの製品に良く似ていると感じた。
実際、眼幅調整用のヘリコイドにはペンタックス製の物が使用してある。
  EMSセットはミラーのみで構成され、プリズムを使用しておらず、光量の低下や色収差は全く認められない。
  通常の双眼装置よりも調整箇所は多いが、その効果は、通常の双眼装置を吹き飛ばしてしまうものがある。(心理的な)3D効果について言うと、通常の双眼装置のそれは、単なるヒント程度にしか過ぎない。 この(EMS使用の)双眼望遠鏡を見れば、双眼装置の3D効果が実にみすぼらしいものに見えてくる。
  月のクレーターの斜面の壁が細部と共にあなたの眼前に迫って来る。実際に月の山並みを眼下に見下ろしている感じそのものだ。あなたの眼に入る情報量は、通常の双眼装置の3倍以上はあるだろう。 光量が格段に多いばかりではなく、(天体望遠鏡本来の)解像度が劣化しないまま見られるのだ。この双眼望遠鏡を実際に覗けば、解像度が格段に増していると感じるに
違いない。理論的には、口径なりの解像度には変化は無いはずなのだが。
  この双眼望遠鏡で、太陽を白色光(注意:もちろん減光している)で見ると、実に印象的だ。
 縁から出現しようとしている黒点群にくぼみが認められたのだ。これは光学的な錯覚だと言われるが、多くの人が見ており、一概には言えないのではないか。
  ともかく、この双眼望遠鏡で見た(白色光での)太陽像は、私が今までに見た天体像の中で最高のものであった。
  月面各所の眺めも、同様に素晴らしいに違いない。
 月が沈み次第、今度は星雲、星団にトライしてみる。

 しかし、この双眼望遠鏡の真骨頂は、惑星観測にこそあると確信している。

SETUP

組立
  このEMSセットは、望遠鏡の2インチ挿入部に挿入、セットすることができます。 まず最初にヘリコイド部を操作して眼幅を調整します。
 次に、右のEMSに備えてあるX-Y光軸調整装置を操作して光軸を平行にします。 次に像の天地方向の調整をします。
  たとえば、左鏡筒で電柱先端が12時方向(完全垂直)に見えていて、右鏡筒で11時方向に見えていたとします。(実際にはこんなにずれることはない) これに対処する機構も、EMSには備わっています。この作業中、鏡筒及び接眼筒(アイピース)は常に平行を保つようにしなければなりま
せん。
 EMSを最初に望遠鏡にセットする時に、上記のように、左右の相対的な光軸を調整しなければならない、ということです。 2本の望遠鏡の焦点距離は、ほぼ同じでないといけません。アイピースもしかりです。中倍率から高倍率に至る観測に耐えられるだけの調整をしておかないといけません。
  「調整は難しくありませんか?」ですって?  いえ、実際には言葉で説明するよりもずっと簡単です。私が調整できて、すでに使用しています。私はすでに調整プロセスを理解したので、5分もあれば双眼望遠鏡を組立てることが出来ます。そして、さらに5分あれば光軸の初期調整をすること
が出来ます。
  初期調整(製作組立時)が済めば、後の使用状態での調整は、観測者が自分の眼幅に合わせることと、ピントを合わせるだけです。
  このEMSに興味をお持ちなら、ぜひ購入されることをお勧めします。
  これは、究極の見え味を追求する人のための、究極の双眼望遠鏡です。
  今や惑星観測の好期です。これから惑星についても試してみようと思っています。