125ED-BINO on Equatorial / 赤道儀仕様

松本さんから12.5BINOをうけとってから、約10年経過した今レポートを記すこととなりました。 そのきっかけは今年の3月に自宅を新築した際、思い切って観測室を設置したことです。 今までは自宅から歩いて3分の所の畑にスライデイングルーフ式の観測所があり、ここに設置していたのですが これで愛機と同居ということになりました。

場所は三重県の最南端で昨年世界遺産に指定された熊野地方です。この地区は日本の中で指折りの交通不便なところで、 それゆえ観光地でありながら乱開発されることなく自然が残り、星空の美しさも自慢の一つであります。特に天の川は クッキリと見え星々の集まりであることが肉眼でもよく分かります。 立地している場所は小高い山の頂上に位置し360度パノラマで東側に海があり、1年中日の出が見えます。

BINOは鏡筒がボーグ12.5 f8 アイピースはPENTAX LX7 14 28 40 赤道儀がミタカGN-170です。 性能の割には非常にコンパクトにまとまっており、楽に振りまわすことができ、 天頂を見る時は床にあぐらをかいた状態で接眼部が目の高さに来ます。 鏡筒は対物レンズ部と接眼部と回転装置部の3体に分解でき、それらを外して雲台プレートを乗せ替えること で写真赤道儀になります

肝心の見え味はシャープの一言です。ゆっくりと天の川の中を散策していると、二重星が多いことに驚かされます。 両目で見るということは微妙な部分がはっきり分かるものです。この部分の説明は他のリポーターの方達が充分されていま すので割愛させていただきます。

自宅に観測室があることのメリットは計り知れません。2階にある自分の部屋から階段を上って入ります。夜中でも明け方で も見たい時に最高の機材で見ることができることは幸せなことです。

写真で分かると思いますが10年経った今もバランスのよさ、美しさは変わりません 今となっては松本さんの作品の中で初期に分類されるものですが、ここに原点があるように思えます。

2005年8月8日   仲 賢

Comment by Matsumoto / 管理者のコメント

本日、三重県の仲さんより、お手紙と写真集入りのCDを郵便にて受け取りました。  ご連絡先が分からず、掲載の詳細を決められませんが、 あまりに写真集が素晴らしいので、先に写真だけを掲載させていただくことにいたしました。

ご投稿いただいたBORG125ED-BINO(赤道儀仕様)は、十年ほど前にお作りしたものですが、この度、お住まいの 新築と同時に観測所もご自宅に引っ越されたとのことで、改めてご投稿いただきました。 動画を含む多数の画像を お送りいただき、これだけに絞るのに大変苦労しました。似た写真もありますが、これ以上はどうしても割愛できませんでした。

このBINOは、私が今の工作手段の半分くらいしか持たない頃に、全身全霊を込めて製作したもので、久しぶりに対面させていただき、 感無量になりました。率直に言わせていただいて、今見ても、付け加える物は何もないほどの完成度です。 回転装置は、外リングだけを外注し、他は全て私が発案、加工したものですが、ガタは皆無で、ジャイロスコープのように 円滑に回転し、クランプ機構も備わっています。 最初は無垢の板材から大型旋盤でくり抜いてもらっていたリングでしたが、仲さんのモデル の頃からは木型を外注し、一皮大きなリングを鋳造してもらい、それを旋盤で加工するようにしていました。

(8月8日追記) 本日、仲さんよりリポートをいただきました。 改めて、十年の月日の早さにおののきます。   前のみかん畑の中の観測所も、BINOが美しく収まっていたのが印象に残っています。 本来なら、サイト開設時に真っ先 にリポートをお願いすべきだったのですが、日々の仕事に追われるまま、月日が経ってしまいました。

仲さんは富士山写真家としても有名で、最も遠い距離から撮影された記録保持者としてテレビ出演されたこともありました。 謙虚な方で、今回は具体的な観望の感想を割愛されましたが、機会がありましたら、またぜひ投稿をお願いしたいものです。   仲さん、懐かしいリポートを本当にありがとうございました。

SKY90-BINO

≪はじめに≫
 産業革命発祥の地、英国テムズ川にてビッグベンからグリニッジ天文台へ通ずる 遊覧船がある。たいそうな髭を生やした船長はジョークを交えながら語り、遊覧船 は煤けた大きなアーチの元をゆっくり進んでいく。 しかし、おおよそその地の裏、豪州では、白銀に光り輝く巨大なアーチが音もな く赤い大地をほのかに照らし、沈むことのない南十字がキリストの慈愛のごとく優 しく見つめている。ティーポットに映る対日照は朝食までの残り時間を知らせてく れ、巨人の舌のように天頂高く突き上げられた黄道光は、小さな星雲・星団達をこ とごとく一飲みにするほどの明るさであった。

 言葉にしても表現しきれないオーストラリアの空。日本ではどんなに空が良くて も残念なことに銀河中心部が天頂に来ることがありませんが、ここでは暗黒帯が複 雑に入り組んだ巨大なエッジオン銀河が横たわり、煌々たるバルジが天頂に来ます。 よく星明かりという言葉がありますが、驚いたことにこの地では天の川にて影が出 来るのです! 手のひらを銀マットにかざし動かすと、真下に影ができ同調して動くのです。こ んな最高の空の元でごろりと寝ころび、銀河浴を楽しめるのは星見を趣味とする我 々としては最高の至福の一時でありました。

≪完成まで≫
 この夜空の元でEMSで天の川下りをしたい。これが今回のSky90Twinを作製した理 由です。鏡筒選定にあたって、トラベル仕様にしたいため軽量であること、広視界 が得られること、出来るだけ口径は大きい方がよいという欲張った要求がありまし た。幸いにも松本様のユーザーリポートにも掲載されております尾形様のSky90-BI NOを覗ける機会があり、Sky90に決心することができました。また,架台はTeleVueの F2経緯台を想定しておりましたが、これまた幸いにもインターネットオークション にて自作の軽量経緯台が出ており、その経緯台をベースに作製を進めることとしま した。

 作製の手順は以下となります。
  1.鏡筒・EMSの入手
  2.鏡筒・EMS・アイピース関連のつじつま合わせ
  3.架台設計

 まずは、双眼作製のスタートとして鏡筒・EMSの入手を行いました。この辺のディ メンジョンがわからないと3.架台設計が進められないためです。鏡筒はちょっとし た小さなこだわりで双眼を意識し、ステッカーが対称になるよう一方の鏡筒を反対 側に貼って頂くよう販売店の方にお願いを致しました。またSky90はf値が小さいた め焦点位置がシビアとなることから、接眼部は頑張ってフェザータッチフォーカサー に変えることとしました。鏡筒との接続アダプターを出来る限り切りつめたことに よりNagler Type4-22mmでも20mmほどのバックフォーカスの余裕を設けることが出 来ました。

 さて架台設計に移るのですが、ここからが慎重に行う必要があることろです。方 式は設計が楽な平行スライド方式を採用することとしました。目幅調整を如何ほど にするのか。57-72mmとし、最小値はEMSの幅で決まり、最大値は双眼鏡の目幅を参 考にしました。そしてエドモンド社の微動送り(±10mm)を松本様ユーザーリポート にも掲載されております井上様より譲って頂き、上記数値を鑑みて設計値中心を62 mmになるように鏡筒取り付け位置を決定しました。その時の鏡筒間隔は私の使用し ておりますEMS-Lで136mmとなります(EMSの黒色中間リングの長さによって多少数値 が異なってくるのと、使用していて最大値が74mmほどあった方が良いようですので、 数値を参考にする方は各自実測するようお願い致します)。

 上下回転の中心位置は、鏡筒下周りの金物を軽量に行ったため鏡筒中心より上側 にしております。これは下重心にすることにより天頂を向けた時、鏡筒が人側に倒 れることを防止することと、Naglerのような重いレンズが重心位置を上げてしまう ためです。細かな計算はあまり参考になりませんので回転軸周りの設計コンセプト のみ簡単に記載すると、45°傾けた状態でアイピースが合焦する位置でモーメント 計算を行います。アイピース交換等でモーメント量が変化することがわかっている ことから回転軸の摩擦を振り分けできるようにという配慮です。また合焦位置で計 算するのは、小型望遠鏡の場合長さが短いため、焦点以外に持っていくだけでもバ ランスが崩れ易くなるためです。

 ただし、これらの誤差は製作後の鏡筒の前後である程度とれますし、最悪わから ない場合はベースプレートを横縫いにしておき、回転中心を鏡筒上数十mmほどにな るように作製すれば、後ほどの修正も側面板の穴あけ加工のみで済むかと思われま す(今回のSky90では10mm、鏡筒下回りが重いほど鏡筒中心に近づきます)。

 最後に軽量化に関してですが、鏡筒の連結が容易且つ軽量な手段として、マグネ シウム合金の中判カメラ用のクイックシュー (Velbon QRA-667L)を用いました。目 幅調整を行う都合、移動プレートとベースプレートが必要となりますが、通常は付 け足しの発想となりがちですが、ベースプレートをくり抜き、そこに移動プレート を入れました。また移動プレートを保持する要素として、松本様も採用されている リニアブッシュを採用するのが安価かつ精度も確実なのですが、重量が重いためリ ニアガイドを使用する方法を採りました。2本前後方向に配置することによりその 方向の倒れを押さえ、さらに2連のガイドブロックにすることにより左右方向の倒 れを拘束しています。

 移動プレートとベースプレートの連結は小型アルミブロックを介して前出の微動 送りと連結しています。また鏡筒バンドに関しては、既製品は非常に重い且つ横に 張り出しているため特別に作製をお願い致しました。それにより元重量の半分以下 にすることが出来たのと、架台部左右幅が350mm程に押さえることができました。

≪観望≫  スッーと滲んだ光が点になった瞬間、そこはまさに別天地でした。アイリスのよ うに煌びやかに咲くエータカリーナ星雲。砂粒を集めたようなオメガ星雲。長くた なびくNGC4945。フライフィッシングを楽しむ釣人NGC2547。視野いっぱいに広がる 大・小マゼラン。どれをとっても来て良かったと思わせる瞬間でした。いつまで見 ていても飽きることはありません。広がりがあるのに中心の集光が凄い球状星団NG C104、不気味なタランチュラ星雲(Sky90ではどちらかというとかわいい子蜘蛛)、 南天にはすばらしい天体がいっぱいあるのです。

 しかし北天も負けてはいません。いて座付近の散開・散光・球状をはじめ、ハー ト形のアンテナ銀河NGC4038/4039、鋭く切り裂かれたM104ソンブレロ、M13と双璧を なすM5などなど。90mmでもビノのおかげで余裕で見えるマルカリアンチェーン、う みへび座NGC3311付近(Abell1060)の銀河団ですらたった90mmで見えるほどの空でし た。

 北十字が昇る頃、乳白色に輝く天の川が頭上を通過しクライマックスを迎えます。 しばし経緯台はお休みし、銀マットに寝ころびながら壮大な天の川を見ていると、 自分の小ささを思い知らされます。天の川と平行に寝ころぶと、天の川の光に吸収 されそうな錯覚さえ覚えました。

 天の川が傾きを持った頃、大きな窓を持ったEMS双眼で、あたかも宮沢賢治の 銀河鉄道の夜を奏でたのでした。10°程度しか昇らない北アメリカ星雲やγ星付近 の散光星雲も、UHCフィルターを用いれば難なく見えてしまいました。徐々に高度を 上げると、白鳥区の終わりであるアルビレオの観測所に到着。二つの大きなサファ イアとトパースの玉はどこまでも透き通っています。黒い空間に突如とポッカリ浮 かぶM27,賢治のマントを掛けるCr399コートハンガー、天文学者泣かせのM71を通過 した後、鷲の停車場に着きます。

 盾の散開を通過する頃から銀河の一部なのか星雲・星団なのかわからないほどに なっていき、M17のオメガ星雲にさしかかる。倍率を上げるとまさしく白鳥が優雅に 漆黒の宇宙に浮かんでいるようです。バンビの横顔(私はお茶の水博士に見える)は 写真のように見え、珊瑚礁に囲まれた南の小島M8でしばしバカンスを楽しんだ後は、 ζ星と色の対比が美しいNGC6231がある蠍の尾に至ります。盾からの暗黒帯が複雑に 入り組んだこのあたりは本当にすばらしいの一言です。

 そして、祭壇に飾られた球状星団NGC6352,6397を恐る恐る眺めた後、力強くもオ レンジ色に光り輝く二重星ケンタウルスαに目を奪われていると、そこはまもなく 終着駅の南十字星。漆黒なるコールサックの脇に輝く、決して手にすることは出来 ない宝石箱を眺めながらカムパネルラとジョバンニの旅は終わるのです。

≪主な仕様≫
鏡  筒:Takahashi Sky90 (f500mm、F5.6)
接 眼 部:Starlight Instruments, Feather Touch Focuser 2.0″ Travel
双眼装置:EMS-L
ファインダー :等倍ファインダー (Baader Planetarium, Sky SurferⅢ)
架  台:平行スライド方式(二連リニアガイド仕様)
目幅調整:57~72mm
上下範囲:-5°程~100程°
微動装置:フリクション固定、ネジ押し式 (上下・水平共)
三  脚:Berlebach, Report2042 (Vixen開止付)
使用接眼:Meade UW8.8、TeleVue NaglerType4-12mm、22mm、WideScan TypeⅢ 30mm、
Pentax XL40
総 重 量:15kg(三脚込、アイピース別)

≪謝辞≫  本双眼望遠鏡を作製するにあたってアドバイス等頂きました井上様、快く見せて 頂きました尾形様、加工部品の作製にご協力頂きましたコプティック星座館、遊馬 様、唐沢様にはこの場を借りまして心よりお礼を申し上げます。
 また、本オーストラリア旅行を本当に楽しい旅行にして頂きましたトラさん、村 山さん、同行した皆様、そして現地の皆様、心より感謝致します。

Okada

Comment by Matsumoto/ 管理者のコメント;

 Okadaさんが、オーストラリア遠征記を持参されたSky90-BINOの製作記を兼ねた、非常に 内容の濃いリポートをくださいました。 非常にコンパクトかつ優秀なBINOで、台座の精密な メカの写真からもOkadaさんの意気込みが伝わって来ます。

  一緒にお送りいただいた銀河の写真もインパクトがありますね。 実際にその中に浸れば、 人生観までもが変わりそうですね。 多大なエネルギーを傾注して遠征される意義が分かるような 気がします。

SKY90-BINO (Mr. Tsuji)

 松本さんに双眼望遠鏡の構造をいろいろお聞きしたのが去年(2006年)9月。12月末にヘリコイド式EMS-Lを納品してい ただき、今年(2007年)4月になりようやくBINOとして覗ける形になりました。簡単ですがレポートを送ります。

催眠誘導?
三重の大台ヶ原で見かけたSky90-BINOが最初に目撃した松本式BINOでした。そのときは「ずいぶん凝っ てるね~」「調整大変そう」という程度で、失礼ながらそれ以上の関心は湧かなかったのです。その後 数年が過ぎ、所属している同好会の方が作製したNerius80-BINO(愛称ヘビーノ)で富士山の測候所跡な どを見上げる機会があり「けっこう行けてるね~」となり、同氏が作製した双眼ドブソニアン(愛称ド ビーノ)やその方から影響された方の10cm屈折BINOなどが誘引剤として作用し、いつしか「お気軽観望 用にBINOが欲しいな~・・・」と感化されていったのでした。

コンセプト
星見遠征での基本スタイルは写真撮影です。せっかくの星空も撮影の合間に手持ち双眼鏡で見上げるだ けともったいない状態でした。車に載せた撮影機材のすき間に大型の観望機材を押し込むこともでき ず、撮影を始めればヒマをもてあます・・・。これでは趣味として長続きしません。といったところが BINOのコンセプトを考える元になっています。

イ) 見た目カッコよく! 趣味は形から
ロ) 気軽に持ち出せる小型軽量機材
ハ) 月・惑星から星雲・星団まで何でも見えること
ニ) ずっと使える耐久性

構造
「お気楽でもちゃんと見える」をマジメにやるとなかなか大変です。さいわいなことに双眼望遠鏡の世 界は松本氏やBigBino服部氏のサイトなどで詳細に説明されていますので何度も眺め返すと、ストレス のないBINOの特徴は単眼でも良好な望遠鏡としっかりした足回りの組合せがキモらしいとわかります。

本機は90mmの小口径BINOですが、よいタイミングでEMSのヘリコイドがペンタックスからボーグに代 わったことにより筒外焦点距離の消費が減り選択しやすくなったのと、全体の軽量化と調整項目を減ら す目的から鏡筒固定タイプにしました。眼幅調整はEMS中間筒に設けられたヘリコイドによります。鏡 筒間隔をD=156mmとすることで67mmを中心にして60~74mmに対応しています。また、合焦装置をFeather Touch Focuser に換装することで難物のNaglarType4-22mmをヘリコイドが最も伸びた状態でも約6mmの 繰り出し量を確保して合焦させられました(写真4)。

左右鏡筒の光軸調整は接眼方向から向かって左側を基準鏡筒にして、右側の鏡筒をファインダーと同じ 要領で前後3ヶ所ずつの押しネジにより調整します。初期調整時には200倍まで調整しましたがアイピー スの抜き差し具合でもズレますのであまり神経質に調整しなくても問題はありません。固定枠はズレが 生じないよう強固に造りましたので「象が踏んでも・・・」というほどではないですが、私が踏んでし まっても大丈夫でした。

架台はユーザーレポートにあるWenglar氏作製のTeleVue140-BINOが理想です。しかし、これほど潔くは なれないため、カッコだけ真似て細かいギミックを付け足して逃げています。まず、TeleVue F2経緯台 から軸受け部分と側板を流用し、メガネ状の鏡筒固定枠を耳軸部で前後にスライドさせて重量バランス をとれるようにしました。架台を載せる足は1/2インチネジが使える軸受けをつくりタカハシのEM200赤 道儀用三脚を使っています。とても丈夫です。もとのF2経緯台の軸受けに戻せば3/8インチネジになり 大型のカメラ三脚も使えるようになりますので海外遠征などはカメラ三脚仕様で行く予定です。

観望

イ)初期調整

初期調整のために見た春がすみでモヤッと白んだ昼間の景色はやはり単眼とは大違いでした。白んだ空 気が対流で視野の中を移動していく立体感がわかってしまいます。ためしに同じ状態で片目をつぶると 「アレッ?」というほど立体感が失われます。

ロ)ファーストライト

4月中旬に富士山近郊でファーストライトを迎えました。明るいうちに現着してケースからBINOを取り 出すと右側のEMSがヘリコイドと第一ミラーケースのつなぎ目で回転しているのを発見。応急処置で視 野の回転を合わせましたが、左右の接眼筒の位置が多少斜めになって視野回転が合う状態に。さらに片 方のSky90がわずかに光軸不良なのも発見。カスミがひどいのと合わせてファーストライトは不発に終 わりました。

ハ)再調整

Sky90はメーカー送り。EMSは松本氏のHPを参考に調整治具を作製してミラーの原点復帰を行い、数キロ 先のビルを見ながら捻れ角も調整。はたして、元どおり?になったSky90-BINOは200倍の高倍率でも スッキリした視界が確保できるようになりました。

ニ)本領発揮?

a)天の川22mmのアイピースをつけて23倍ほどの倍率で天の川下りをすると、天の川沿いの散開星団、散光星雲、 球状星団が次々と視野に入り、双眼鏡でもドブソニアンでも出しにくい谷間の倍率が今までにない新鮮 な視界を創り出します。さらに、単眼では片目を開いても閉じても左右の視野の明るさがちぐはぐにな り長時間見続けるのは疲れますが、BINOでは長時間の観望が楽になり目を離さずに次々と対象を移動で きるためまさにクルーズ状態です。時間をかけて覗けることで暗黒星雲の切れ込みもハッキリと追いか けられます。また、アポ屈折のスッキリした星像のおかげで散開星団巡りにはおそらく最高の組合せで はないか?という気がします。やはりユーザーレポートで皆さんが言われるように、NaglarType4-22mm は双眼望遠鏡に特別にマッチするようです。

b)惑星
200倍で見る土星は輪の影がスパッとエッジの立った状態で土星本体に落ちているのがわかります。輪 の傾きが寝てきているのでカシニのすき間は1/4周ずつ両サイドに確認できるだけですが、両眼視によ る安定感から経緯台での追尾にもストレスは多くありません。今シーズン、南天低い木星はフェストー ンがうねうねとしているのが容易にわかります。模様のわかりやすさは20cmニュートン反射のMT200と ほぼ同じなのにはビックリです。さすがに口径が小さいので模様の色は淡いですが、これだけハッキリ 見えれば気が向いたときにサッと出せる機材としてはじゅうぶんです。

c)月
口径90mmともなればじゅうぶんに眩しい月が見え、それが双眼視によって色彩情報も昼間の景色のよう にハッキリと感じられるようになります。月の海にこんな色あったっけ?クレーターから伸びる光条ど こまで続いてるの?といった感想がでるほど色彩豊かな月面が広がります。クレーターの中を見るよう な高解像度は口径の限界で無理ですが、BINOによって得られる安定感とより確認しやすくなる多彩な色 によって飽きのこない楽しさが長続きします。片目で月を見ていた頃はアイピースから目を離すと効き 目だけ暗順応が無くなって違和感たっぷりだったのですが、BINOでは両目とも等しく暗順応が無くなる ので違和感無く周りが見えなくなります。

以上、長々と書いてまいりましたが、Sky90-BINO作製にあたり先達の方々のレポートや作例を参考にさ せていただけたおかげで、かなり満足できるBINOを完成させることができました。松本さんをはじめ参 考にさせていただいた皆様に感謝いたします。また、本レポートが次にBINOを作製される方の参考にな れば幸いです。ツジ

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写真の説明

●(写真7)富士山新五合目にてユーザーリポートに出られているスタークラウド宮野さんのMegrez90-BINO、 OkadaさんのSky90-BINOと偶然にも居合わせまして90mm-BINOを3台並べて記念写真を撮り、雑談などさ せていただきました。

●(写真6)同じ同好会の方のNerius80-BINO(愛称ヘビーノ)とツーショット

●(写真5)収納ケースに使用している東洋リビングのドライバッグF-47

Comment by Matsumoto/ 管理者のコメント;

 「Sky90-BINOを鏡筒固定のヘリコイド仕様で製作したい」、とのご希望を最初にツジさんからお聞きしたときには、 Sky90鏡筒の場合はバックフォーカスの確保が難しいことを理由に、標準の鏡筒平行移動方式をお勧めしました。しかし、その後の交信から、ご計画が無理解に基づく 単なる思い付きではなく、綿密なプランに基づかれたものであることを知り、了解いたしました。

 ツジさんが描かれた詳細で美しい図面を拝見し、私もご計画の成功を確信し、安心してお手伝い出来ました。 写真をご覧になってお分かりのように、実際に仕上がったBINOも見事な物です。BINOのメカに関心を持っておられる方には、説明は 不要かと思いますが、念のために少しコメントさせていただきます。

 耳軸がアリミゾになっており、BINO本体のアリガタとの接続位置を調整することで、前後バランスを瞬時に調整できるようになっています。 カウンターウェイト等の余分な構造や追加重量を排除した優れた方法です。 その他にも優れた工夫が詰まっていて、”見事”としか言いようが ありません。

 EMS-BINOの目幅調整は、鏡筒自体を平行移動する方式と、ツジさんの例のようにEMSの2つのユニットの間隔をヘリコイド等で伸縮させる方式の 2種類があります。 私としては、小型のBINOには前者が適し、大型のBINOには後者が適すると考えていますが、構造をよりシンプル にして軽量化を図る上では、諸条件が許せば後者が有利になるようです。ただし、後者の方式では、目幅調整でピントが移動しますので、 大勢で観察する場合は前者の方式の方が便利かも分かりません。
 剛性については、トータル的には作り方次第で、必ずしも どちらが有利というわけではないと思います。 ただ、市販のヘリコイド自体がそう頑丈な物ではありませんので、 大型のBINOについては、今後は目幅調整用のヘリコイドの代わりに、当方オリジナルのクレイフォード方式に移行する準備を具体的に進めています。

 ツジさん、素晴らしいリポートをありがとうございました。
  これからBINOに入門される方の中には、あまりに凄すぎて、ひるんでしまわれる方もあるかも分かりませんが、 何事も一朝一夕には実現しないものです。 理解度や工作技術の達成度に合わせて、無理の無いご計画を立てられることを お勧めします。具体的には、まずは標準の仕様のBINOをご計画になることをお勧めします。

12cmF5-BINO

 2004年12月に、SCHWARZ120S-BINOを松本さんに注文し 今までいろんな場所に持って行き星空を楽しんでいました。 見え味は、素晴しく自宅にある30cmの望遠鏡より使う回数が 多くなったかもしれません。 しかし、今まで使っていたBINOの合焦機構は、微妙な調整が出来て よかったのですが、アイピースの交換の時やフィルターの取り付けの時に 調整するのに意外と時間がかかっていたこともあり、せっかく新しい アイピースを買ってもあまり使うことができませんでした。そんな時、たまたま見た山内さんのHPで、新型のクレイフォードが私のBINOにも取り付け が出来ることを知り、これだったら私でも微妙な調整が出来るような気がして 早速、リフォームするために松本さんに注文いたしました。

 2週間ぐらいで届き、G.Wが終わった後に取り付けをしました。 松本さんから、「もしかしたら望遠鏡側の穴とクレイフォード側の穴がピッタリと合わない かもしれません。」と言われていましたので大丈夫かなぁと思っていました。 やはり、取り付けの時穴が合わなかったのですが、そんな大きなずれではなかったので 松本さんに言われていたとうりに望遠鏡側の穴を少し削り何とか取り付けることが出来ました。

 そんな時、星見仲間から連絡をいただき今年初めての蔵王坊平に星見に行ってきました。 リフォームしたばかりのBINOを使い、春の銀河を久しぶりに楽しんできました。

 今まであまり使っていなかったアイピースも使ってみましたが調整がとても楽になりました。 リフォームして正解でした。使い方は、前と同じなのですが私には新型のクレイフォードの方が 調整しやすいみたいです。操作もとてもスムーズです。倍率高めで見た球状星団とても綺麗でした。

 自宅にある30cmの望遠鏡で夏になると球状星団巡りをするのが大好きなのですが これからは、BINOで空のいい場所で球状星団を楽しむことが多くなりそうです。 ますます30cmを使うことが少なくなりそうです。

松本様、今回最優先で加工していただきありがとうございました。

稲村陽子

Comment by Matsumoto/ 管理者のコメント;

 稲村さんに第4世代のSCHWARZ120S-BINOを納品させていただいてから、2年半が経ちましたが、随分と長い期間のような、逆に短いような不思議な感じがいたします。 「EMS-BINOは常に進化しています。」と言えば一見格好良いのですが、私はもともと機械加工のプロではありません ので、以前の自分を振り返りますと、いつも顔が赤くなる思いです。本来なら、無償でリフォームをお引き受けすべき なくらいに思っているのですが、営業を考えると、残念ながらそういう訳にも行きません。^^; にもかかわらず、こうして パーツのみお送りし、ユーザーサイドで立派に取り付けて光軸を再現してくださったことに、敬意と感謝の気持ちで一杯です。

 写真をたくさん送ってくださいました。選んでくださいとのことでしたが、どれも意義のある写真でしたので、ほとんど全てを 掲載させていただきました。 稲村さんの観測室(写真1)を初めて見せていただきました。 スライディングルーフの観測室の 外にも広いベランダがあって、大変合理的で使いやすそうな観測所ですね。

PH130-BINO

 PH130-BINOを製作していただき、ありがとうございました。 完成から2ヶ月経ちGWに、やっとファーストライトとなりました。 この2ヶ月の間、出張の為ほとんど自宅にいない状態と、 いても(雨男ではないけど)晴れない男ぶりに感心してしまう状況でした。

 EMS-BINOを初めて知ったのは、今から3~4年程前でした。そのときに、” これが自分にとっての理想の望遠鏡” と思い、ネット上の関連した所を巡り、FL102をBINOにと思い貯金を開始し ましたが、FL102の販売中止・・・。 時が経つにつれ、いろんな事を考え始め100mmアポがいいか150mmアクロが いいか。それとも100mmをEDにして 150mmアクロと1つの架台で2種の鏡筒を使えるようにしてもらおうか。など妄 想していた頃にPH130の販売を知り、 FL102の事があったので、買わずに後悔するよりはという思いから購入し製作の お願いとなりました。

 届いたPH130-BINOの大きさは予想してはいましたが実際に見て持ってみる と大きいです。 2階の部屋から1階への持ち運びにちょっと苦労してます。 そして、最大の問題は車に入らないことです。無理な体勢なら入れることも出来るの ですがカーブ・ブレーキ等に対して 影響が有りそうで今の車ではダメです。車が変わるまでは移動しての観望はおあずけ となってしまいました・・・残念。

 ということでファーストライトは自宅前となり。1年半前までの自宅前は畑で空の条 件は良くはない けど人の目も気にせずにゆっくり観望できたのですが。今はアパートという条件悪の 場所となり、 アパートや駐車場の明かりとヘッドライトやテールランプによって浮かび上がるBI NOの雄姿が 艶やかに写し出され、アパートの住人がチラッと見ている視線を感じながら、まずは 30倍弱で見ると・・・空が白いです。

 仕方がないので惑星の観望に変更です。まずは土星に向けてみますとさすがに100 倍程度でもいい感じに見えますが、 高度が低くなってきており、覗きと間違えられるのもイヤなので木星に移動します。 200倍程度でみた木星は、イイです。 スゴイです。今まで小口径でしか見たことがなかったせいか、模様がこんなにもウネ ウネしていて衛星が木星表面に突入して いくし大赤斑が裏に隠れていくのを感動し見続けて、気がつくと木星だけで2時間以 上も経っていました(恐ろしいや)。 ちなみに気がついた原因はアパートの2階部屋の蛍光灯が点灯し光が差し込んできた せいで、カーテンが閉まる気配が無いので、 心の中で”何でカーテンを閉めないんだ~”と叫び撤退となりました。

 実際に使ってみて思ったことは、HF経緯台のリバウンドがちょっと大きい点(20 0倍程度までなら何とかなるんだけど) それと、左右の鏡筒に若干差を感じたのですが同時に見ると気にならない点です。 とにかく、EMS-BINOは自分にとって理想の望遠鏡になりそうです(車どうし ようかな・・・)。

横山

Comment by Matsumoto/ 管理者のコメント;

 PH130は、凸玉にPHOTARONを使用した3枚玉だそうです。製造が中止されたのは、恐らく素材が入手できなく なったためかと思います。

  PHOTARONは、住田光学ガラスが製造したCaFK95と思われ、そうだとすると、凸玉は私の愛機の15cmホタロンと同じということに なります。CaFK95は、一般のEDガラスよりもフローライト(CaF2)に近い光学特性を持ち、従って光学性能もよりフローライトに近い ものが期待できます。

 私の愛機は2枚玉のF8ですが、横山さんのPH130は、F値は小さいものの、3枚玉ですので、少なくとも設計上は私の対物よりもさらに上の 性能が期待できるはずです。

  1991年、15cmPHOTARON-BINOを計画中に、私はポケコン(当時流行った電卓サイズのPC)のBASICで独学で光線追跡ソフトを作り、ビルトインの ミニロール紙プリンターで数値を打ち出し、それを手描きでグラフに表すという気の遠くなるような作業を経て 性能評価をしてみたことがありました。(当時のポケコンでは、1行の数値を打ち出すのに数秒かかりました。)

  相手ガラスで最高の結果を示したのはKzF5でしたが、その後にレンズメーカーに相談したところ、その硝材はすでに入手不可能であ ることと、たまたま、研磨、コーティング済みのKF3+CaFK95の15cmF8が2セット在庫ありとのことでしたので、 KzF5をKF3で妥協した組み合わせで計算してみました。
 すると、残存収差は理想値とは少し外れるものの、実用上問題ないレベルであることを確認し、 採用を決断したのでした。

  望遠鏡の性能が極限に迫るにつれて、架台も課題になって来ます。 フリーストップのフォーク式経緯台は、元来deep-skyを 低倍で流す前提での設計のようですが、私は、より高精度で大型の望遠鏡に対応できる汎用型のフォーク式経緯台を光学メーカーが 一日も早く発売してくれることを願って来ました。
 1991年に私が15cmPHOTARON-BINOを製作した時も、当時は信頼できる大型の自動追尾式 の架台として、ドイツ式赤道儀しか選択肢がなく、大がかりな回転装置を準備しなければなりませんでした。しかし、これから据え付けの 大型BINOを作る方には、2軸制御の経緯台をお勧めしています。

  光学メーカーは、十年一日のごとくドイツ式赤道儀の呪縛から逃れられないようですが、その目を覚ますには、消費者の方が 光学メーカーに対して、より強いメッセージを送ることが必要だと思います。 たとえば、望遠鏡のバックフォーカスやドローチューブ内径等に関しては、「ピントの出ない望遠鏡は買わない!」 くらいの強いご姿勢が求められると思います。  

15cmF5-BINO

 昨年は、私の150S-BINOを製作していただき、その節は大変お世話になりました。 あらためてお礼申し上げます。すばらしい製品をありがとうございました。

 稲村さんとは山形天文同好会、小さな天文学者の会でご一緒しており、女性ながら 自宅にスライディングルーフ付きのミード30㎝を所有する、大変天文趣味に熱意を 持っていらっしゃる方と存じておりました。ビノビューも所有する双眼派です。

 私がマツモト式BINO(SCHWARZ150S-BINO)を注文したと言ったときから、届いたら是非見せて欲しいという 事でしたので、昨年の11月頃だったでしょうか、蔵王坊平高原(標高約1000m)に お誘いしました。

 その日はなかなか良く晴れており、O3フィルターを通して網状星雲、北アメリカ星雲 ~ペリカン星雲がよく見えており、今まで見えないと思っていた(思いこんでいた)星雲 がいとも簡単に見えてしまうBINOの性能にしきりに感嘆(笑)しておられました。

 同行した山形天文同好会のベテラン観測者の方々からも、「うわぁ~これはスゴイ」 「星像が針で突いたように鋭い」「久しぶりに眼視の醍醐味を堪能させてもらった」など 色々なお褒めの言葉を頂きました。EMSの操作性の良さにも関心しておられました。 そして約2.8度の実視野からあふれんばかりに見える伴銀河を伴ったアンドロメダ 銀河を見た瞬間に稲村さんの心は決まっていたのだと思います。

 後日、稲村さんからメールがあり「BINOを買いたいんだけど悩んでいます」との ことだったのですが、もうすでに決心しておられたようで、私の「背中押して欲しいん ですか?」との問いに「はい、そうです!」と返信されてきましたので、背中を押してあ げた次第でした(^^)

 先週の土曜日に稲村さん宅へお邪魔してBINOの調整を手伝ってまいりましたが、 改めてEMS-BINOのポテンシャルの高さに感心してしまいました。 と、言っても私自身BINOの調整がうまくできているかどうかは甚だ疑問なんですが(^^;) 視野円のズレや、像の倒れも感じることなく気持ちよく観望させて頂いていますので、うまく EMSの調整が出来ているのだと思っております。

 ただ、松本さんのHPにある”EMS-BINOの光軸調整講座”の通りに調整しているつもり なのですが、私と稲村さんで快適位置が違います。これは個人の癖による物なのでしょうか?

PS:

 当方、文才が全くありませんで、ユーザーリポートをお出しするのがおっくうになってしまい 今まで報告出来なかった事、お許し下さい。簡単ですがこのメールにてユーザーリポートと させて頂きます。稚拙な文章で申し訳ありません。

 現在、EMS-BINOを所有できる喜びに満ちあふれております。 本当にありがとうございました。

本野健二

Comment by Matsumoto/ 管理者のコメント;

 本野さん、お心のこもったメールをありがとうございました。 ともすればBINOを一人で作り続けておりますと、 倦怠に陥り勝ちなのですが、このようなメールをいただくと、また燃料をいただいた気分になります。

  謙遜なさっていますが、立派なユーザーリポートをいただきました。 またお陰で、 稲村さんのBINO注文に至られた経緯が良く分かりました。 稲村さんは最初から上手に光軸調整をされたそうで、 なかなかBINO使用の資質の高い方とお見受けしました。 最後のSCHWARZ120S-BINOのユーザーの方でもあり 稲村さんのことは長く記憶に残りそうです。

  光軸の快適位置の個人差については、確かにあると思います。ご自分で覗かれた時に、対象がだぶらず、視野円もほぼ一致していれば 十分に問題ないレベルの範囲ですので、自信をお持ちください。

  それでは、続報と写真をお待ちしています。 稲村さんからのユーザーリポートもお待ちしております。

FS102-BINO

 奈良在住の”hama-san”です。ご無沙汰しております。 (9月初旬に、EMS-L中間筒の交換をお願いした者です)

 おかげさまでこの度、FS102-BINOが完成いたしました。 僭越ながら、下記HPに作製プロセスを公開しております。 http://www5f.biglobe.ne.jp/~hama-san/

 先週末(12月11日)、無事にファーストライトを済ませて参りました。 やはりEMS-BINOのヌケの良さは素晴らしく、 特に、散開星団の微光星の緻密な美しさは独特の世界でした。 さすがにFS102だけあって、星像が針で突いたように小さく、 星団の中に点在する、異なる色の星が印象的でした。 考えてみれば、無遮蔽の屈折光学系+反射2面という構成ですから、 最もロスのない正立の宇宙がそこにあるのだと言えるかもしれません。 私自身痛感したことですが、プリズム式の双眼鏡を使っておられる方が、 広視界&クリアな星像に歓声を上げておられたのが印象的でした。

 以前からドブソニアンを使っております経験上、 フリーストップがお気軽観望には必須だと考え、 鏡筒の前後のみならず、上下のバランスも考えて耳軸位置を設定しました。 また、耳軸は真鍮で作製していただき、結果として、 HF経緯台に載せただけ(さすがに危険ですが)でもフリーストップとなり、 200倍以上での惑星の観望も容易で、この点はこだわって正解でした。

 また、F8という無理の少ない光学系であるため、 ワイドスキャン30mmでも周辺まで十分満足のいく星像が得られ、 27倍、視界3度から280倍の惑星までこなす、 まさに一生モノの一台となりました。

 初めてEMS-BINOの存在を知ってから4年になりますが、 その間、ネットや観望会で知り合った方々のおかげで、 思いもよらずスムーズにBINOを組み上げることが出来ました。 まだ、鏡筒の長さから来る振動等、解決すべき問題はありますが、 それ以外は、現段階でも非常に満足しております。                              
hama-san
E-Mail

Comment by Matsumoto? 管理者のコメント;

hama-san、素晴らしいリポートをありがとうございました。
 いやー、本当に立派なBINOが完成しましたね。 正直、驚きました。 各所が実に合理的で、しかも丁寧に加工されていて、本家の仕様が恥ずかしいくらいです。

  EMSのみをご提供した場合、最後まで見届けられない場合が多いので、こうして完成した姿を 見せていただくのは、この上ない喜びです。  

 HPを見せていただきましたが、製作プロセスが懇切に掲載してあり、これからBINOの製作を計画して いる方には、貴重なデータとなるでしょう。 物を作るということは、出来上がった”物”には見えて来ない苦労があるものです。製作者は 材料の調達から外注加工の依頼先まで開拓する必要があり、それらを全て含めて、hama-sanの快挙に 拍手を送りたいと思います。

TOA130S-BINO

 双眼望遠鏡の導入を本格的に検討し始めたのは昨年(2003年)の夏くらいでした。当初は松本さんのところでシュワルツ150S-BINOを購入しようかと思っておりまし た。F5はコンパクトでいいけどF8の方が高倍率での見え味はいいという話だし、 FS-128で作成してある方もいらっしゃるし、どうしようかと思っているときに井上さんの TOA130 BINO のレポートが松本さんのホームページに掲載されました。このレポー トを読んだときから、一気にTOA130 BINOへと流れが加速して行くことになったので した。

 私が所属している天文クラブ「ティコ」の内野会長のところに相談にいったとこ ろ、折角作るならばがんばってTOAにするほうがきっと満足いくものができるよとの 助言をもとに、TOAで検討を進めていきました。しかし私は金属加工はできない ので、どなたかに作成をお願いしないといけませんでしたが、TOA-130は鏡筒無改造で EMSが使用できること、EMSをヘリコイド式にして架台を簡素化するということ で、会長に作成をお願いしたところ快く引き受けて頂きました。

 作成において課題となるのは水平回転軸ということで、そこをどうするか検討し たところ、故障して使用していなかったミードLX200の架台を改造して使用する ことにしました。当初はフォークアーム部も使用する予定でしたが、フォーク部 は別途製作になりました。これで、大きな課題はクリアしましたので、11月初に 松本さんへEMSセットと取り付けアダプタ(タカハシ72mm→EMS65mm)の作成を依頼す るとともに鏡筒2本の注文を致しました。清水の舞台からの大々々ダイビングでし た。

  松本さんのほうにはお忙しい中、1月初にはEMSセットを送っていただきました。 鏡筒の方もほぼ同じくらいに届きました。そこからが、本格的な製作の開始と なります。実際の寸法や重さを調べて、フォーク部分の幅を決めて材料を注文し てと、会長の方でどんどんと進めていただき、私の方はああしたい、こうしたいと 注文ばかりを出しておりました。会長も忙しい中、鋭意製作のほうは進めて頂い たのですが、やはり、双眼望遠鏡の製作は初めてのことでもありましたし、LX200 の架台を利用するため制約があったり、更には度重なる台風の襲撃により、会長の 御実家が被害に遭われその修理も手がけながらの製作となられましたので、構想 からほぼ一年という時間を要しました。しかし、ゆっくりと時間をかけて検討し ながら慎重に進めて頂き、仕上げのほうも丁寧にしてもらってますので、非常に 満足のいく、世界に一台しかない双眼望遠鏡だと思います。

 EMSは非常に操作性が良く、X-Y光軸調整機能により簡単に光軸を調整できます。 初めての双眼望遠鏡ですが、全く問題もなく使えております。この双眼望遠鏡が 成り立っているのも松本さんのEMSのおかげであり、EMS無くしては存在していない でしょう。

 さて、実際の見栄味なのですが、それは予想を遥かに超えたものでした。 星野村天文台「星の文化館」の職員の皆さん、天文クラブのメンバーに見てもら いましたが、正立双眼視ということで、非常に見やすく時間をかけてじっくりと みることができ、たいへん好評でした。

 また、フリーストップの経緯台ということで、重さを全く感じさせない スムーズな動きと相まって誰でもすぐに扱えるすぐれものです。

 まだ、完成して間もないのであまり見れてはおりませんが、いくつか見たものの 見え方を書いてみます。アイピースは22mm(45倍)、40mm(25倍)を使用してます。 月以外は月がでていないときの印象です。

月(上弦)   コントラストが高く、くっきりと見えます。双眼視のためか、 変なまぶしさを感じません。月の前を雲が流れていくときなどは 風情があります。初めて月を見たときの感動が再現しました。 明るい月が出ているとあまり星を見ないようになっていましたが、 これからは月があれば月を楽しめるようになりました。

M1   そらし目をしないと見えないかと思ってましたが、そらし目を しなくても広がっているのが判ります。一緒に比較したわけでは 無いので正確ではないでしょうが、32cmドブソニアンの見え方と 同じような感じです。

M31   25倍 約2.5度の視界からはみ出てます。さすがに写真のようには 見えませんが雰囲気は近いものがあるような感じがします。今まで 見た中で一番の見え方です。

M37   小さい粒々がはっきり見えます。星はまさに点像です。

M45   視界一杯に広がって見えます。もう少し低倍率で視界がほしい ところです。星の周りにベールをまとっているように感じます。

M42   想像を遥かに超えるものです。ガスの濃淡が(疑似)立体的に見えま す。 中心部分は黄緑なのが判ります。トラペジウムも目のいい方はちゃ んと 6個見えているということでしたが、私には5個しか見えませんで した。

h-χ   明るい星が手前に、暗い星が奥に見えて、これも(疑似)立体的に見 えます。 星の色が判り、暗い星まで綺麗です。

NGC2024   今まで注意して見たことはなかったのですが、初めて見ました。 そらし目をせずとも、その濃淡がはっきりと見えます。

 天文にあまり詳しくなく、また鋭眼の持ち主でもない私にとっては、猫に小判的 な双眼望遠鏡ですが、その見え味のすばらしさは実感できます。 九州でも星見の集まりがいくつかありますので、この双眼望遠鏡で星を見て頂き 正立双眼の見やすさ、素晴らしさを少しでも伝えられたらと思っております。 松本さん、大変素晴らしいEMSをありがとうございました。

坂田 信
Makoto Sakata

Comment by Matsumoto/ 管理者のコメント;

 TOA130-BINO、素晴らしいですね。
内野さんによる金属加工も、緻密で綺麗に仕上がっていて、お見事です。

 坂田さんは謙虚に初心者を自認しておられますが、BINOについては、大抵はどなたも 初心者ですから、むしろその謙虚さが素直にBINOに溶け込めた要因でもあるのでしょうね。
 良い実例を作ってくださいました。

 観望リポートも、的確に対象の特徴を捉えておられ、大したものです。大きな決断 をなさいましたが、十分に報われましたね。

BORG45ED-BINO

2003年の双眼鏡・望遠鏡サミットにて決断致しました双眼望遠鏡です。 EMSセットを頼みまして半年が経とうとしておりましが、他の場所にてお願いして おりました鏡筒バンドの作製が大幅に遅れたため、いまだにツインになっており ませんでした。その間、EMSが手元に在りながら使えないことに歯がゆく思い、折 角だから何かおもしろいことをしようと即席で生まれたのがBORG45ED-Twinです。

即席の所以は実は片方の鏡筒は友人のもので2004石川町SLFの時の写真です。組み 合わせは鏡筒部に2インチホルダーSⅡ[7504]を使用することにより合焦します。 ただし2インチアイピースは合焦しません。他、着脱の簡易・迅速性を考慮して 架台部と鏡筒部の取り付けにはベルボンのクイックシュー(中判用)を介して使用 しております。

見え味に関してですが残念ながら星の方は見ておりません。風景を見た感じでは、 小さいながらも定評ある鏡筒だけあって、非常に抜けの良い綺麗な見え味を示して くれました。倍率を上げても色収差等は感じられません。実はこれは正立プリズム だとわずかに色収差が出たりしますが、ミラーを使っているEMSならではの「技」 と言えると思います。

以上、ショートレポートになってしまいましたが、現在作製中の双眼望遠鏡にて 再レポートを致します。この高いポテンシャルを秘めたEMSを使える日を今か今か と楽しみにしております。
OKADA

Comment by Matsumoto/ 管理者のコメント;

 可愛いTwinですね。
 本命鏡筒用の鏡筒バンドが間に合わなかった由、残念でした。  当方に気を使ってくださったのでしょうか、他に依頼されたのは。 私も責任を感じます。^^;

  確かに、市販鏡筒のバンドは、双眼使用など全く眼中になく、ヒンジ部等の干渉で 私も随分と泣かされて来ました。しかし、これも発想次第で、固定観念を捨てると、 結構簡単な解決法が見つかるものです。私が察するに、多分その下請け屋さん?は、 頭を捻りながら時間が過ぎて行ったのではないでしょうか。

  私がお勧めする解決法の一つは、バンドのヒンジ側を通常と反対の、鏡筒外側に 向け、ローレット付の締めボルト側が内側で対向するように持って来ることです。「これだと尚更出っ張って 干渉する!」ですか? ^^;・・・それが固定観念なんです。^^

  ヒンジ部を薄くするには、大手術が必要ですが、締め側ですと、ローレットボルトを 細めのキャップ(六角穴)ボルトに変更すれば、締め部の出っ張りの大半を切除することが 出来るのです。(元のボルト位置より内側にネジ穴加工を施す)その部分の構造により、ボルトはM5程度を1本か、M4を2本かを判断します。

(BORG鏡筒が素材であれば、鏡筒径が細いので、鏡筒バンド同士の干渉の心配はありません。)

  ともかく、バンドが早く完成し、本命の鏡筒が搭載できますことを祈っております。