埼玉県の井上さんからの新しい投稿です

TV1

TV2

TV3

—添付写真説明—

写真1(Photo1):全体像

写真2(Photo2):架台部

 リニアシャフトは前後に1本ずつ(1)で、右側鏡筒はリニアブッシュ(2)のハウジング上に固定されたアルミ板の上にあります。眼幅調整時には右側鏡筒がこのリニアブッシュごと左右に動きます。
 鏡筒はマンフロットのスライディングプレート(3)を介して架台に搭載しました。これによってワンタッチでの鏡筒の着脱と前後バランス調整の迅速化をはかっています。

写真3(Photo3):後方から

 ロック付き小型ラック&ピニオンステージ(4)で左右の鏡筒保持部を連結しており、眼幅調整をノブで行えるようにしました。

TeleVue85-BINO(自作)

 シュワルツ150(F8)双眼を購入する際、「真剣に見るときには150双眼、手軽に見るときにはそれまで使っていた10cm屈折」という住み分けを考えておりました。ところが実際にシュワルツ双眼を使いはじめると、あっというまに両目で見ることの快適さに慣れ、手軽に見るにしても単眼では物足りなくなってしまいました。

 そこで小型の双眼望遠鏡の制作を考えていたところ、8cm級としては自分が見たなかで最高の見え味だったTeleVue85が、2本同時に中古で出ていたので、これを入手(全額ローンです…)して具体的な制作をスタートさせました。小型で手軽に、とはいっても星野から惑星までが対象になりますし、星像の鋭さ・美しさ、低倍・広視界の得易さ、実用的な高倍性能、機動性などに妥協はしたくなかったので、この鏡筒が中古で手に入ったのは幸運でした。

 全体構造は実績のあるところで鏡筒平行移動方式+フリーストップ経緯台、そして正立系にはEMSです。40mmクラスの2inch広角アイピースの使用も念頭においているため、EMSはLタイプの双眼仕様としました。細部については写真のキャプションにあるとおりです。

 このTV85双眼を制作するにあたって役に立った道具は、ノギス、巻き尺、電卓、インターネットといったところです。つまり、自分では採寸といくつかのパーツの寸法決定、それに要素部品を売っているお店を探しことが主で、あとは幾つかの穴あけ・タップ立てなどの簡単な加工くらいしかしていません。

 どうにもならない部分、例えば筒外光路長が不足する点に関しては、EMS購入時に松本さんに鏡筒の切断をお願いしましたし、また経緯台(これはTeleVueF2Sを改造しているのですが)の改造用パーツに一部ホームセンターでは不可能な加工が必要だったので、その部分はいつもお世話になっている望遠鏡販売店を通して加工業者に依頼しました。
 さて、実際に組み立ててみてですが、ざっと組んだ状態でほとんど光軸が出ていたため、像倒れの調整とシフトの微調整だけで光軸を出すことができました。EMS単体は調整済みとはいえ、ここが一番手間取ると予想していただけに、クリアできた時点で山は越えたという感じでした。手の抜きどころが掴めず若干重くなってしまったものの、それが幸いしたのか、惑星・二重星観望にも十分対応できる視界の安定性が得られています。

 光学性能に関しては改めてここでインプレッションを行う必要のない鏡筒ですが、当然ながら限界等級ではシュワルツ150双眼には全くかなわないため、暗い天体の見えはシュワルツ双眼が圧勝ですが、低倍から中間倍率での星々の艶とか輝星の星像の小ささに関しては完全にTV85双眼が凌いでいます。

 その星像の鋭さからか、低倍・広視界でスイープするときの視界は、星々の大海を泳いでいるかのような気分にさせてくれます。また、月を見ても色収差を意識させられることはなく、正立・双眼と相まって、まさに近くから月を見ているかのような圧倒的な臨場感です。

 この双眼の調整中はちょうど池谷・張彗星が見ごろだったのですが、LVW42mmとの組み合わせ、5°近い実視界を横断する尾は見ごたえ十分でした。鏡筒の光学性能に双眼視によるコントラスト検出能力の向上が加わり、淡い対象も口径から想像される以上の見え方です。
 テスト時に同行していた星見仲間からは、「星空」を見るならシュワルツ双眼よりいいんじゃないの?という声もありましたが、あらゆる点で主役に敵わない脇役なら最初から要らないわけで、そういう意味では成功しているのかな、と思っています。

 現時点の構想では、今の状態に加えて
・操作ハンドル(ビデオ雲台用のパン棒を予定)
・ヘッドレスト
を付ければ一応の完成になります。無論、まだまだ煮詰めるべき部分は残るにせよ、光学性能、手軽さ、操作性のどれをとっても、ひとまずは自分の望むレベルの双眼望遠鏡に仕上げられそうです。あまりにも自分の手を動かしていないので自作と呼ぶのは少しばかりはばかられますが、望む形に組み上げられたことには満足しています。

 最後になりましたが、制作にあたって、自作経験のない私に数々のアドバイスと励ましを下さった松本さんに深く感謝いたします。

井上次郎


管理者のコメント;

  井上さんが素晴らしいBINOを作られました。平行移動台座等、本家を凌ぐ立派な作りで、非常に感心いたしました。井上さんは、単体のEMS-MのユーザーからSCHWARZ150(F8)-BINOの初期仕様のユーザーを経て、この度、ついにTeleVue85-BINOの自作に成功されたものです。追加加工が少なかったのは、井上さんの設計が優れていた証でしょう。

  坂本さんに続き、奇しくも8cmクラスの高級鏡筒の作例が同時期に集まりました。 最近、私も十年ほど前にお作りしていた初期仕様のFL80S-BINOの現在仕様へのリフォームを受注した際に、8cmクラスのアポ鏡筒の凄さを再認識したことがあります。 その時、アクロマートと比較し、単に像がシャープなだけではなく、視野自体がはるかに明るいことにも驚きました。

 口径の数字を追いかける傾向が強い昨今ですが、特に双眼となると、8cm口径をもう一度見直して見る価値がありそうですね。

 井上さんのTeleVue85鏡筒はこちらで短縮加工をさせていただきましたが、こちらでは双眼に組み立ててチェックしませんでしたので、機会がありましたら、ぜひこの完成したTeleVue85-BINOを覗かせていただきたいものです。



大阪府の坂本さんが投稿をしてくださいました

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FL80S-BINO(自作)

  EMS-M ユーザーの坂本です。
  私は鳥の観察に松本式正立双眼鏡を使用しております。

  数キロ先の遠方にいる鳥の観察のため、かねてから双眼望遠鏡の必要性を感じ、以下の3条件を兼ね備えた機種を探していました。

・当然、正立像であること。
・アポクロマート屈折で微細な部分まで観察可能なこと。
・アイピース交換式で、超広角アイピースが使用できること。

  しかし、都合良く思うような製品がなかったので、天体望遠鏡を利用して大型双眼鏡を自分で組むことにしました。

 松本氏のホームページは当時から光軸調整について大変参考にさせていただき、EMSも使ってみたいとは思っていたのですが、動き回る動物を観察するのに、直角対空型がどの程度使えるのか不安があったので、ポロプリズムを用いて組んでみることにしました。

  ポロ型地上双眼鏡でまずまずの成果は得られたのですが、光軸を追い込んでいくと、悩ましい問題が発生してしまいました。光軸調整装置の微動にともなうガタをなくそうとすると微動装置が大型になり、逆にコンパクトにまとめようとすると脆弱になってしまいます。シフターなどの粗動装置では、アイピース交換時の微妙な光軸のずれには対処できません。やはりEMSしかないなと思いました。

 直角対空型に少々の不安を残しながら、松本氏にご相談のメールをお送りしました。氏は天体門外漢の私にも懇切丁寧にアドバイスをしていただき、「人間の体は下を向くように出来ている」という言葉でEMSの購入に踏み切り、氏の適切なアドバイスのもと、松本式FL80S-BINOが組上がりました。架台は業務用のビデオ撮影用三脚を使用しております。

 使用してみると、やはり視界のクリアーさと鋭さが印象的です。プリズムの影響がないということはこれほど違うのかと、改めて実感します。直視の単眼倒立像である程度わかっていたつもりですが、双眼・立体視になるとその差は歴然としており、知人の言葉を借りれば「いつまでも見ていたい」見え具合です。直角対空も対象を導入してしまえば気にならず、顕微鏡を見ている感覚で楽に観察が出来ます。

 超広角アイピースが使用できるのも、市販品にはない大きな魅力です。私は超広角アイピースとして笠井さん扱いのツァイス12.5mm 90°を使用(合焦の問題でアダプターを工夫しましたが)しておりますが、約50倍、見かけ視界90°の双眼視は快感です。

 EMSの光軸調整機構は非常にコンパクトかつ合理的で、機材全体の軽量化と剛性の向上を図ることが出来ました。アイピース交換時の微妙な光軸調整も可能なので、高倍率をかけることも容易です。プリズム型の地上望遠鏡では80mmクラスのフローライト機種でも60倍程度が限界のように思いますが、EMSマシンでは100倍程度でも暗くはなるものの、像自体は十分実用に耐えると思います。遠方の対象や、羽毛の1枚1枚といった細かい部分の観察を望まれるバードウォッチャーにも是非お勧めしたいものです。

 天体観測に使用した際の性能は、先輩のユーザーの方々が詳しくレポートされている通りです。

 動物については、群をなしている対象の観察が魅力的です。カモやシギ・チドリ類の群を80°オーバーの超広角でみると、とても楽しいものです。立体感があり、クリアーな像が目前に広がり、臨場感も抜群です。

 双眼視は見ていて疲れないので、遠方に飛翔する鳥類を見つけやすく、シャープな像なので、シーイングがよければトビくらいの大きさであれば5キロくらい離れていても、しっかり形が分かります。通常の機材ではとっつきにくい海鳥も楽に観察できそうです。今から秋のワシタカ渡りのシーズンが楽しみです。超広角で見るタカ柱はさぞかしおもしろいことでしょう。

 なお、私は双眼鏡をファインダー代わりに取り付け観察しています。直角対空型による導入の難しさも解決されます。

 今は目幅調整機構がありませんが、いずれは平行移動台座の作製にも挑戦し、目幅の異なる方にもEMSマシンで見る世界のすばらしさを体験していただけるようになればと思います。天体関係のアイピースが使用できるのでデジタルカメラでの撮影も手軽です。最近流行のデジスコ(デジタルカメラ+フィールドスコープ)による写真撮影を考えられている野鳥や動物好きの皆様にも、EMSは強力なパートナーとなると思います。

 最後に、素晴らしい機材と世界を提供してくださった松本龍郎氏に感謝いたします。

坂本泰隆


管理者のコメント;

  坂本さんは、20枚以上の美しい写真を送ってくださり、本頁に掲載させていただく分を選別するのに、随分と迷いました。 広大な大自然を背景に光に満ち溢れた写真集に、自分が引き込まれて行くのを感じました。
  天文マニアは、天体望遠鏡は夜、星を見る道具だと思い勝ちですが、一番身近な天体である美しい地球を眺めないのは、実にもったいないことであることを坂本さんに改めて教えられた思いです。

  この度の坂本さんの投稿は、バードウォッチャーの方の初めての投稿であることと、EMS-M(双眼用カスタム仕様)を使用した自作例である点で、非常に新鮮で、新たにご参考にしていただく部分が多いと思います。

  EMS-MはEMS-LとEMS-Sの間にあって、見過ごされやすいようですが、今回の坂本さんのリポートを機会に、光路長が短く、30mm60度クラスの2インチアイピースまで使用できるEMS-Mの存在意義を見直してみていただけますと幸いです。

 坂本さんのFL80S-BINOは、外観が美しいばかりでなく、取手、架台、双眼鏡ファインダー等が合理的にコーディネイトされていることが写真から見て取れます。 また、同時にいただいたメールから、「左右の視野環が完璧に合致した。」とのことで、組立も完全であることが分かります。事前にポロプリズムで双眼の自作を経験されていたこともプラスに貢献したのだと推察します。

 90度対空が地上風景観察に支障が無いことも、坂本さんが実証してくださいました。 これには、90度対空型に相応しい架台高というものがあるのですが、坂本さんがこれを良く理解されていることが分かります。 「屈折望遠鏡は長い脚に載せるもの。」という固定観念を持つ方が多いように見受けますが、直視や45度対空同様に長い(高い)脚に載せてしまっては、90度対空のメリットが活かせません。

 坂本さんのFL80S-BINOは、非常に軽量、コンパクトで機動性に富んでいるようですので、ぜひ、天体を含めた観測の続報をお願いしたいものです。