NP127-BINO(自作)(2007年11月25日)

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かねてより計画中であった松本式EMSを使用した屈折双眼望遠鏡が完成したのでご報告いたします。

 最初の始まりは松本式NP101双眼望遠鏡でした。この機種で完全に屈折双眼望遠鏡の素晴らしい魅力にとりつかれ、 無謀にも大口径化へと進んでしまいました。

 まずは鏡筒選択です。中・低倍率で広視野を楽しむことを重点に鏡筒を選びました。結果、鏡筒はNP127 (660mm口径比5.2) に決定です。TOA130や現在単眼で使用しているTEC140などと随分悩みましたが、小さく軽いこと(1本7Kg弱)と焦点距離が決め手 でした。31.7mmサイズのアイピース(パンオプティック24mm)でさえ33倍2.3度の視野が取れます。

 鏡筒は固定式として目幅調整は松本式EMSヘリコイド式を使用、また筒外焦点距離の調整のために接眼部をフェザータッチ フォカッサーに変更しています。ヘリコイド式EMSの使用がこれほどよいとは思いませんでした(以前のNP101双眼は鏡筒平行移動 式でした)。ヘリコイドの質感は最高ではありませんが、現在望み得る一番良いシステムではないでしょうか。松本式EMSの発明で 私のようなアマチュアに双眼望遠鏡の道が開けたのだと思います。

 架台はフォーク式経緯台でTG-Lのフォークアームを2本と水平回転軸を流用し手元にあったビクセンのピラー脚使用にしまし た。ノブスターを利用し工具無しで簡単に組み立てができます。架台は鏡筒が小型(通常の10cmより少し大きい程度)であるため にフォークアームの間隔も狭く作製することができて十分な剛性を確保することもできました。とにかく小さいことは重要な性能 の一つだと思います。

 仰角はおよそ85度です。ベースプレートの一部を切り込んで鏡筒との干渉を避けています。フォークアームを寝かせればよい のですが、その工作精度に自信がなかったこととベースプレートとフォークアームの固定ネジの強化をしていないので垂直で妥協し た結果です。もともと経緯台では天頂が特異点になるのでそれほど気にはなりません。

 バランスシステムはハンドルを利用してロスマンディーのバランスシステムを流用しています。これは垂直方向のバランスも 取れるのでなかなかよいシステムです。本当はハンドルをもっと長くして鏡筒の保護にも利用したかったのですが、工作機械の大き さの制限があり予定より短くなっています。架台の塗装はマークエックスブルーにするつもりでしたが、実際に見せてもらったペン タックスMS-3Nのグリーンに心を奪われ、外注でペンタックスグリーンに塗っていただきました。鏡筒と組み上がった姿はかなりフ ォトジェニックです。

 ファインダーはテレビューのスタービームと宮内の5cm正立ファインダーを使用しています。たまたま持っていただけで特に 選択の理由はありません。  自動導入は必要ありませんが惑星をじっくり観る場合に自動追尾が欲しくなります。完全なるフリーストップと自動追尾の両立 を可能とするシステムが理想・・・ですが、これについてはまだ具体的にアイディアがまとまりません。実現はまだまだ先になり そうです。私自身は30分も追尾してもらえば十分なのですが・・・。

 アイピースについてはまだ決定していません。
通常は1.25インチサイズアイピースのテレビュー パンオプティック/24mm(27.5倍2.3度@瞳径4.6mm)、ナグラータイプ5/16mm( 41.3倍1.9度@瞳径3.1mm)の使用頻度が高いようですが、最近はテレビュー イーソス13mm(50.8倍1.9度@瞳径2.5mm)がデフォ ルトになっています。さらに広視野を望む場合はパンオプティック27mm(22.4倍2.6度@瞳径5.2mm)を使うことが多いようです。 アイピースとの組み合わせでは4度弱も視野も可能ですが、星像の美しさや視野のコントラストを考慮すると上記のようになりまし た。中・高倍率は経緯台なので必然的に広視野が得られるアイピースになります。高倍率は双眼効果?で132倍程度でかなり満足し ています。

 星空の下での報告です。アイピースの選択はイーソス13mm(50.8倍1.9度@瞳径2.5mm)です。この組み合わせでは視野のほと んど端まで星が「点」です。歪曲収差は非常に少なく、フリーストップで視野を動かしても違和感がありません。中心部のコントラ ストも十分高いようです。超広視野と双眼効果でそのまま肉眼で見ているような錯覚に捉えられます。アイレリーフは15mmでアイポ イントがややシビアですが、双眼なので目の位置はほぼ固定されるためか(しかも星空の背景は黒い)ブラックアウトもそれほど気 にならず、何ら問題はありません。ただ、どうしてもアイレンズと眼球の距離が短くなるのでアイレンズが曇りやすくなります (興奮しているためでもあります)。架台の強度も十分でしかも非常にスムース、おかげで余計なことに気を回さず星空に浸るこ とが出来ます。

 M31では伴星雲が浮遊している感じがします。この浮遊感は初めての経験でした。M42ではトラペジウムがあれだけはっきり 離れて見えるのに視野内に小三つ星が入っています。プレアデスも星がゴチャッとではなく離れた感じで全部視野内に入ります。 二重星団も十分離れているのに同一視野です。しかも中心部では擬似立体感を味わうことが出来ます。M13は背景?の星野に周辺が 星に十分に分離した状態で浮かんでいます。M57も然り。これらは初めての経験でした。

 なにぶん高価な機材であり、またほとんど工作経験のない状態での制作でした。架台のアイディアを頂いた井上さんをはじめ として鏡筒の入手に尽力していただいた吉田さん、奈良部さんや三野輪さん、服部さん、野木さんらのアドバイスやご協力が無けれ ば完成まではいたらなかったと思います。 もちろん松本さんのEMSが存在したからこそ実現できたシステムであります。この場をか りまして厚く御礼申し上げます。

 最期に素晴らしい星空双眼視の世界を我々アマチュアにもたらしてくださった松本さんに再度感謝したいと思います。

黒木嘉典 (Kuroki Yoshifumi)
栃木県宇都宮市

管理者のコメント;

 この度、黒木さんよりNP127-BINOご自作のリポートをいただき、まずはこのBINOの美しい外観にしばし見入りました。  鏡筒からfocuser、EMS、バランサーシステム、架台、ポールと、見事にコーディネイトされています。  『機能的に優れたメカは見た目も美しい。』というのが私の信念ですが、このBINOはまさにそれを主張 しているようです。

 バックフォーカスを稼ぐためのフェザータッチフォーカサーの使用は、Tsujiさんのsky90-BINOと同じ方法 ですが、これは、鏡筒のorijinalの状態をキープできる良い方法だと思います。 純粋に特定のブランドで統一 することに拘る方もあるでしょうが、各部で優れたパーツを集結させれば、結果として新たな統一感が出て来るものだと 思います。

 イーソス13mmの使用で、このBINOシステムの完成度の高さをさらに駄目押ししています。 さらりと実視界を書いておられますが、 これが今話題の見かけ視界100度のアイピースですね。先日のサミットでも、数名の方が単体の同アイピースをチェックしながら 驚嘆の声を上げていました。「100度は無駄に広い視野じゃない!」と異口同音に言っておられたのが印象に残っています。(残念ながら 私は隣の方で150LD-BINOでのDEEP-SKYに酔っていましたので、このアイピースを覗くチャンスを逃しました。)

 一昔前とは、自作の方法も変わって来たと思います。ゼロから製作することに拘る方も未だにおられるかも 分かりませんが、優れたパーツが以前よりも買いやすくなって来たことを考えると、パーツは極力市販の優秀な物から選ぶのが 賢い方法だと思います。 自作の楽しみが無くなったのではなく、優れた完成パーツの選択肢が増えたわけで、わざわざ そられのパーツ自体を自作するメリットがなくなったということです。市販パーツをうまく利用しながら、ここぞという 部分で自前加工をすれば良いのです。

 タカハシの片持ちフォークを2個使用したフォークは、その発想はもとより、機能的にも素晴らしい物であることが 分かります。 現在の所、当方では架台の製作までは手が回らず、VIXENのHF経緯台をほぼそのまま使用していますが、黒木 さん製作の架台を見ると、それが恥ずかしくなります。

 また、わずかに天頂を諦められたのも賢い trade-off だったと思います。  先日のサミットでもそうでしたが、EMSユーザーの方々の工夫に、私自身も大いに刺激を受け、新たな開発のエネルギーを いただいています。その意味で、私こそこの度の黒木さんのリポートにお礼申し上げます。  



小川茂樹さんのISS(国際宇宙ステーション)観望記

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 2001年に一度ユーザーレポートを掲載して頂いた小川です。 当時はニューヨーク州のMonroeという町に住んでおりましたが、 メガネのマツモトさんに15cm双眼望遠鏡初期型(f8)を発注し米国まで送って頂きました。 その頃の感動を観望記として綴った のが当時発表させて頂いたユーザーレポートでした。

 それ以来、この双眼望遠鏡は私が所有する複数の望遠鏡の中で最も稼働率の 良い機材として2005年3月に帰国するまでの約3年半に225夜の観望夜数を記録しました。

 帰国後の勤務地は東京都八王子市、夜空に関して全く期待はしていなかったのですが案の定、晴れても夜空には殆ど星が見え ない有様で望遠鏡は梱包も解かれず完全に休眠状態でした。 私は所謂団塊の世代に属していますので、この頃から定年を現実の ものとして意識し始めました。

 何時の頃からかリタイアしたら空を見て過ごすと決めていましたので、観望条件の良い土地を求めて山梨県などに物件を探し始め ましたが、結局生まれ故郷に近い兵庫県小野市に終の棲家を定めました。
 昼間は南に広がる国宝浄土寺とその杜の景観もあって 「大きな空が見える理想的な環境ですね」と訪問された方には言って頂けますが、残念ながら夜空はあまり暗くありません。  天頂付近で5等星が見える程度でしょうか。 神戸の中心部まで1時間ちょっとで行けるロケーションですからこれも仕方ないと ころでしょう。

 ところで最近ISS(国際宇宙ステーション)を15cm双眼望遠鏡で追跡観望しましたので報告したいと思います。 きっかけはNASAの サイトにISSの通過予報を発見したことです。
http://spaceflight.nasa.gov/realdata/sightings/index.html
日本国内では16ヶ所の通過データが選べますが都市の選び方が少しヘンなのがご愛嬌です。

 その通過予想に従ってある夜に55倍(アイピースはN4/22mm)で捉えてみますと点像ではなく面積体で突起があることが分かりました が、眩しく輝いておりそれ以上の詳細は分かりませんでした。 100倍位なら何とか詳細が分かるかもしれないと思いつつ永らく実 行しておりませんでしたが今回100倍のアイピースを装着した状態で上下バランスを良く取って再度挑戦することにしました。  アイピースは見掛け視野82度のN4/12mmを使用しました (ユーザーレポートでISS観望の報告をされた岡本さんと偶然同じアイピ ースです。 またファインダーも岡本さんと同じ発想の90度正立タイプを本機のアイピースと並べて配置してあり、本機で見失った 時の再導入が容易です)

 去る10月6日(土)の夕方6時26分に西北西に出現して北北東に抜けるISSを追いました。 西空低いアークツールスの近くに現れた 移動する明るい光点をファインダーに導入、本機のアイピースに眼を移すと同時にISSのH形が明確に分かりました。

 倍率が高くなって単位面積当たりの光量が落ちたからでしょうか、55倍とは全然違って細部が思っていた以上に窺えました。  手動で追うせわしない状況の中で何とか詳細を見ようと努力して、中央部が白色で太陽パネル部が金色であることは分かり ました。

 高速で移動する為、恒星が線になって飛び去る視野の中を光り輝くISSがすっ飛んで行くさまは何か神々しく人類の 技術の偉大さを象徴しているようです。 またこの光景は過去に見た何か別のイメージに似ていました。 そうだ幼い頃、神戸みなとまつりの夜に目の前を電飾 で光り輝きながら通り過ぎた花電車の姿だ、と何故か私の遠い感動とISSが重なりました。

 結局、具合の良い架台に助けられてISS が北の倉庫の屋根に消えるまで、視野を外さず追うことが出来ました。 通過時間は2分くらいだったと思います。 後に資料でISS の外観を確認すると本体が白色で、太陽パネルが金色だったのは印象どおりでした。

 次回には片方の鏡筒にビデオカメラを付けて 追尾撮影を試みたいと思っています。 まともなイメージを得るには相当数の通過回数が必要かもしれませんが・・・。

私の15cm双眼望遠鏡は購入当時と殆ど同じですが僅かに変えた部分は以下のとおりです。

① 合焦部をスライド式(微動なし)のオリジナルからBORGのヘリコイド(#7757)と2インチホルダー(#7505・7506・7508・ 7509)に変更しました。 外径67mmのヘリコイドを使用したため、私の眼幅63mmに合わせる必要からヘリコイド部分が左右で互い 違いになるよう異なった長さの2インチホルダーを組み合わせたところがミソです。

② ファインダーは90度正立タイプに変更し本鏡の接眼部と並べて配置しました。 90度正立ファインダーでは目標導入が難し いという意見もありますが、私には使いやすく重宝しています。

③ アイピース(特に2インチ)を変えた時の前後バランスに対応するため、鏡筒フレームの前後に必要に応じてマジックテー プで取り外し可能なウエイトを追加しました。
 購入以来6年半を経過したこの15cm双眼望遠鏡ですが、これからもずっと現役であり続けるのは間違いありません。 隣接地に建設 予定の「観測棟」では屋上のフリー観望スペースに置かれて天体をはじめ鳥、航空機などあらゆる対象を私に楽しませてくれること でしょう。

小川茂樹


管理者のコメント;
 小川茂樹さんより、久しぶりのリポートをいただきました。 小川さんは、初期の15cmF8-BINOのユーザーで、2001年にいただいた渾身のリポートは、6年が経過した現在でも異彩を放って います。ぜひとも前回のリポートと合わせてお読みくださることをお勧めします。

 最初のリポートをいただいた当時、小川さんは某光学メーカーの海外駐在員として、ニューヨーク近郊に住んでおられました。 氏の卓越した観察眼と光学的、機械的なセンスで、今から思いますと、改善すべき点を多く残した15cm BINOを、その能力以上に 長所を引き出して使いこなしてくださったと思っています。

 去年はわざわざ当方をご訪問くださり、感激の対面をさせていただきました。

 この度写真を添付していただいた15cmF8-BINOは、小川さんの的を射た見事なカスタマイズで、その操作性がさらにアップして います。左右のアイピース根元のヘリコイドは、スペーサーをうまく利用して互いの干渉をうまく回避しておられます。

 15cmF8-BINOが、これからも末永く小川さんの観測の友としてお役に立てることを願っています。 また、次にお手伝いする機会 に備えて、松本もさらに精進を重ねていく決意を新たにいたしました。



「スノー」さんの ホームズ彗星観測記

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 10月下旬になり、彗星急増光の情報が飛び込んできました。そうですホームズ彗星です。自宅では、台風一過の日の 夜半過ぎに初めて確認できました。15cmBINOで見ると、2重の丸い光芒に包まれた見たことのない光景が広がって いました。双眼による立体感も手伝って、何かの原生生物を見ているような姿でした。

 その後、晴れれば、自宅にて毎夜観望を継続しておりましたが、少しずつ大きく薄くなっていく彗星の姿に、早く遠征観望したい と言う気持ちが強くなって行きました。そして、昨晩、やっと月の影響を逃れられる週末と言うことで、奥日光まで、BINO を連れて遠征に行きました。体調が不良のため、現地滞在時間は2時間未満でしたが、彗星を堪能するには十分でした。

 BINOを設置して、早速、EWV32mmを装着して彗星を覗くと・・・驚きました。明るく丸い広がりの外に更に薄く、 寒色系の大きな広がりが見られます。自宅では、明るい中心部を濃淡のある2重の光芒が包んでいるように見えましたが、実際は 第3の光芒と言うか薄いガスのような広がりがあります。濃い光芒が白色から薄い黄色イメージに対して、 外郭の薄い光芒は淡い 青緑の色が印象的です。

 更に倍率を上げてナグラー16mmを装着すると、薄い光芒が視野一杯に広がりますので、1.5度程度の広がりはありそうです。 自宅では、BINOや20cm反射等で観望してきましたが、このような広がりは確認できませんでした。ちなみに、奥日光でも 小型の双眼鏡では確認できませんでした。実際、この外の広がりは相当薄く、BINOの片側だけで見ると(単眼では)、見落とし そうな淡さです。また、16mm装着時は更に淡くなり、色は感じなくなりました。

 さて、濃い光芒の部分は、もっと倍率を上げられそうですので、ミードUW8.8mm、4.7mmと使用し、倍率を約85~16 0倍まで使って観察して見ました。核周辺の光芒で、核の後ろの濃淡や、第2の光芒の上部の噴出す雰囲気が微かに認められます。 この詳細な感じは、数日前に大口径ドブで見せて頂いた光景と良く似ています。恐らく、一度明瞭に観察させて頂いたおかげで、 昨晩は微かに見えたのだと思います。もちろん、暗く透明度の高い空に恵まれ、BINOの高コントラストに助けられたことは間 違いないでしょう。そして全体的な球状の姿は、双眼による立体感で、まるで彗星帝国が地球に向かってくるような光景です (歳がバレル・・・)。

 昨晩は、短時間でしたので、ホームズ彗星を中心に、合間にメジャーな星雲星団を流す形の観望となりました。この時期は、 透明度の高い空の下で、網状等の夏の対象から、オリオン大星雲と言った冬の天体まで楽しめます。特に空が澄んでいるだけに、 BINOによる天の川流しには最高のシーズンです。そこに、これまでの彗星と様相が異なるホームズ彗星が輝いています。日々、 その姿も変化している上に、暗い空で初めて見えてくるものがあります。これからも可能な限り暗い空にBINOを持ち出し、 ホームズ彗星観望を継続したいですね。もちろん、明るい自宅でも。。。

(スノー)


管理者のコメント;
 久しぶりにスノーさんより観測リポートをいただきました。 初期の12cmF5-BINO以来、ずっとmotivationを失われる ことなくEMS-BINOを活用してくださって、大変嬉しく思います。 私の方はまだ同彗星を見ていませんが、BINOの納期を 待ってくださっている方々のことを思いますと、それどころではございません。^^;