Handy EMS-BINO(2008年11月23日)

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チビBINO by 正立ミラーシステム

<ご報告>
 先般いろいろとご相談させていただいておりましたEMS双眼鏡が、 ほぼ完成しましたので、ご報告させていただきます。このEMS双眼鏡 ですが、以降”チビ”と記載します。

 このチビは手持ちできる事、対物レンズが交換できる事が特長です。 写真は70mmと50mmの対物レンズをつけたものです。 さすがに70mmとなると重たく長時間の手持ちはしんどいですが50mmだと 十分手持ち可能です。 これで長年の夢であった、キャンプ用のリクライニングチェアにもたれ てゆっくりと夜空を眺める。また、見たいときに即座に星を見るといった、 私のわがままが叶います。がんばって購入したアイピースの活用率が 上がるのも嬉しい限りです。

<製作のきっかけ> これを作るに至った経緯ですが、以前より、手持ちできる90度または 45度の対空双眼鏡が欲しくて、いろいろ物色していました。 しかし、丁度良いものが見つかりませんでした。宮内光学さんの物も 検討しましたが、手持ちは無理かと思いあきらめてました。 それが数週間前、なんともラッキーな事に、ネットショップで旧型の EMSを、それも左右セットで購入する事ができ、一気に夢の実現 に向かった次第です。

<チビのスペック> チビのスペックについて以下にまとめさせていただきます。

■対物有効径:50mm,70mm
■焦点距離:不明
 ※家にあったビクセンのフィールドスコープと、古い無名の   双眼鏡のレンズを利用のため。
■合焦機構:対物レンズ前方繰り出し式
■光軸調整:対物レンズ取付け部回転方式(取付け部は数ミリ偏芯)
■目幅調整:多少可(接眼部プレートの締め付けを緩めておこなう)
■接眼部規格:φ31.7mm差込式
■材質:  ・接眼部プレート:4mmアクリル板
 ・対物側プレート:5mmアルミ板(松本さん製作品。感謝!)
 ・鏡筒  :塩ビ(全て水道管パーツ)
 ・合焦機構:フェルト
■正立機構:【旧型】EMS
■その他:双眼鏡ホルダー取り付けネジ穴付き

<今後の展開> 実はこの70mmのレンズですが、像が悪くかつクモリがあり50mmの方が 良く見えるような気がするほどです。幸いチビは、どんなレンズでも 受け入れてくれるので、良いレンズを探すなど、これからシステムを レベルアップして行くつもりです。

<お願い> 最後に松本さんにお願いがあります。

 この旧型のEMSですが、購入して初めて市販されていた事を知りま した。ユーザの方のホームページでEMSの開発の過程が少し記載さ れている記事を見させて頂いた事がありますが、正確な所でEMSの 開発史をお教えいただけないでしょうか?松本さんのホームページに EMS開発史のページを作っていただく事をイメージしています。 今回、新旧のEMSを所有し、改めて現行モデルのすばらしさを 実感しております。例えばその開発史の中で、旧型から現行に移行す る過程での松本さんの創意工夫点や苦労話しを明らかにしていただけ ますと、EMSのすばらしさを、私も含め所有者の方にさらにお分か りいただけると思います。

お忙しいとは存じますがご検討いただければ幸いです。

大阪市 赤澤

管理者のコメント;

● 懐かしい物を見せていただきました。   これが、商品化した最初のEMSで、当時の名称は『正立ミラーシステム』でした。 入手してくださってありがと うございます。 きっとこのEMSも、相応しい方の手に届いて、喜んでいると思います。  それにしても、赤澤さんの工業デザイン的なセンスにはいつも舌を巻かされます。この方に本格的な工作手段を与え たら、どんな物が出来るかと、想像が膨らみます。

● 赤澤さんにきっかけをいただきましたので、ちょっと長くなりそうですが、EMSの開発の経緯をご説明したいと思 います。

● EMSの製作販売は、天ガの1989年12月号で紹介してもらってからのスタートです。(構想立案、自分用 の製作は、Sky&Telescope誌の1982年11月号(私の最初の自作BINO)からさらに数年前に遡ります。)(発売価格=@ ¥34,800)
  このEMS、『正立ミラーシステム』は、元来単体用であって、ほとんどは単体の右目仕様で供給していました。  その後数年間で、全部で200個くらいは作ったと思います。   ただ、双眼用のペアを作っていたのは最後頃(1992年頃か?)で、極めて少数のペアだと思います。 15組作った かどうか、はっきりとは記憶していません。 実は、6年ほど前に、当時のEMS仕様から現行仕様にリフォームしたお客 さんが、古いEMS(お送りいただいた写真と同じ物)を寄付してくださった物が当方にも1組あります。(下のリンク のテレビ番組に出てくるもの)

●  初期のEMS(正立ミラーシステム)は、その外観から一般にはダイカスト製だと思われていますが、実は鋳造品 ではないのです。^^;   2種類の厚手のアルミアングルと、側面の穴を塞ぐ薄いアルミ板を複雑に組み合わせて作っていました。全てネジ による接合で、ヤスリ等で継ぎ目が分からないようにし、さらにネジの頭はバテで封印してから焼付け塗装をして、 ごまかしていました。^^; 今から思えば、考えられないような手間をかけていました。 工作機械も、当時は旋盤 やフライスは持っておらず、粗末な家庭用ボール盤と卓上丸ノコと手ヤスリだけで仕上げていました。文字通り、命を 削って作っていました。^^;(ボール盤に治具を付けて、フライスの代用にしていましたが、結構危険で、たびた び悲鳴を上げながら使っていました。^^;)
 当時のEMSは、私のテレビ番組の中でも紹介しています。

 売り出し当時、あまりに作業が大変なので、当時親しくしていた某光学の営業の方(数年前に他界されました)に 話したら、本気で検討してくれたのですが、結果は、「全く同じ物を工業的に作るとしたら、原価コストだけで1個 10万円はかかる。」ということでした。そして、これなら量産可能ということで、代わりに作ってくれたサンプルは、 アルミ板金プレス製の粗末な物で、とても受け入れられませんでした。 結局、そのモデルは最後まで私の手作りで 対応しました。

(一部マニアの方が、あたかもマツモトが特許を傘に着て、不当に高い価格で市場を独占していたか のように中傷されることがありますが、現実は全くの逆なのです。私は現在まで一貫して天文マニアや自作マニアを 支援する姿勢を貫いて来たつもりです。)

● 1990年には、特注の三角パイプ (250kg(最小単位)を確保しましたが、さらにそれから数年で、より能率的 な鋳物に移行したので、結果的にはそのほとんどを無駄にしました。^^;) を使用した、2ユニットタイプの2イン チ用の物(汎用ミラーシステム)も並行して作り始めました。

● 1995年には、今とほとんど同じ形状の鋳物(木型)を開始すると同時に初期の1体型のEMS(正立ミラーシステム )と分割型の汎用ミラーシステムの製作を中止し、さらに2001年の秋には鋳物(木型)を中止してダイカストを採用し、今日に至っています。
  三角パイプを採用した段階で、加工の省力化は著しかったのですが、形状にこだわって角を落としたりすると、 三角パイプの側面の蓋のアルミ板の折り曲げや、組み立て、継ぎ目を隠す作業が結構煩雑に感じ、(だんだん贅沢 (横着)になって^^;) 鋳物屋さんに相談し、アルミ鋳物の採用に踏み切ったのです。

 しかし、それでも木型(つまりは砂型)によるアルミ鋳物は、形状が不正確なため、一皮大きく鋳込んでもらった ものを、やはり機械加工で仕上げるわけですから、アルミアングルの組み立て→三角パイプ→アルミ鋳物 と進めて 来た省力化も不十分に感じ、最終形状が最初から得られる究極な物としてのアルミダイカストの導入に踏み切った次 第です。

● ワンボックスタイプを早期に中止したのは、製作の手間がかかり過ぎることが主な理由ですが、BINO用を意識するようになって、 像の倒れの調整がほぼ不可能であることが分かり、また、ダイカストの型を検討する段階で、致命的に非能率な方法と 悟り、完全に見切りました。 つまり、一型数百万円のダイカストの型がたくさん要るのです。受け(ミラーをセット する側)とカバー(望遠鏡接続バレルとアイピーススリーブをセットする側)だけでも2種類ですし、カバーは左右用 で互換性がありませんから2種類の別の型が必要になります。 ご承知のように、現行のEMSの型は一つで右眼、左眼 用に互換可能です。

 アングルを利用する方法に気付いた時点では、合理的な方法と思ったのですが、工業的な方法を自ら学んで行く 過程で、はるかに合理的な方法が他にあることを悟ったわけです。自作マニアのサイトに、最近、今更のようにこの方法 を画期的なものとして提案されていますが、その認識には26年以上のタイムラグがあるわけです。(あと26年経てば 理解できるでしょう。^^;(EMSが単に市販の斜鏡を2枚無加工のまま貼り付けた物ではないことは、当サイトを 注意深く見てくだされば、理解できるはずですが・・・))

衒学者にご注意を
EMSと特許
タイムラグを考える
2007年を振り返って

昨年他界された須田さんのユーザーリポートには、当時の正立ミラーシステムの ロンキーテストの写真が掲載されています。

 いつもながら、くどい説明で失礼いたしました。   初期のEMSを購入してくださったこと、またそのことをご報告くださったことに、深く感謝したします。



12cmF5-BINO with Ethos 8mm

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 2008年10/12に12cmF5 BINOが届き,EWV32で観望を始めました。PL10,25は,眼視には不満があり高倍率の接眼を入 れたいと思っていたところ松本さんのお薦めもあり,アクロには不似合いの?イーソス8mmを予約してしまいました。

 11/7 にイーソス8㎜が届いてから曇り空が続き,星を見ることができませんでしたが,何日か過ぎて月が雲の先にうっ すらと見えたので観察しました。月は視野のほぼ1/2の大きさで見えますが,月の上部から下部までみると,眼球を めいっぱい上下させる状態になり,この大きさは,隣にある建物を見るのと同等の視界で,動く 雲の先の月が自分に向かって落ちてくるのではないかという錯覚に陥るほど,恐怖感を感じました。

 晴天の満月は,それなりにきれいに見えました。なぜこのような天体が空間に浮かんでいるのか改めて不思議に感 じられました。

 11/19 朝の明るい空に浮かんだ下弦の月は,まぶしくなくきれいに見え,色収差も感じませんでした。  夜は風がふいたせいか空気がすみ,天の川が見えるほどきれいでした。EWV32では,見事な数の星々が見え,スバル やアンドロメダ銀河も大きく見えましたが,イーソスでペルセウス座の二重星団を入れた瞬間,「なにこれ!」という 言葉が自然に出ました。まさに視野いっぱいの宝石箱のようでした。東の空にのぼり始めたオリ オン大星雲も4個のトラペジウム,鳥が羽を広げたような星雲を観察できました。

 11/21 朝散歩に出かける前(AM5:20)夜明け前の空が澄み,15分ほどの時間BINOを持ち出し観望しました。 月齢23日の月の起伏もよく見えましたが,朝の大気の揺らぎも感じられました。その横に薄くなった輪の土星がかわい らしくきれいにみえ,ガイドなしでも広い視野の中ですっきりと観察できました。毎日の中での変 化を感じにくい?宇宙をみたあとの散歩で,日々感じられる季節の移ろい(新緑から深緑,紅葉へ,気象の変化等) ,人間の眼の視界の広さと視る能力の高さ,自分の眼の老化など,この地球のすべての存在と変化の素晴らしさと時間 の大切さを再認識させられています。(いかに今までボーッと過ごしてきたことか)

 EWV32の優秀さとあわせて,イーソス8mmの可能性の大きさは計り知れないものを感じます。12cmF5の性能をめいっぱ い引き出せそうです。軽いのでいつもセットしたままで,フォーク部を抱えて玄関から庭に持ち出し,毎日短時間です が空をみるのが日課の一部になりました。特にドットファインダーは2,3秒で星の導入が可能 であり,楽しく快適に観望しています。

 
  速報(2008年11月30日)

 11/30 朝5時30分に起きて暗い中、朝の運動に出かけようとしたら、晴れていたのでBINOを庭に持ち出し土星を みてみました。笠井TDのバローレンズ(2インチマルチショートバロー2X;マツモト短縮改造1.75×)を取り付けイーソス8mmでみたら、実にきれいに見えました。

 130倍の土星が、視界の左端から右端までゆっくり移動し、3分間もBINOを全く動かさずくっきりと した形でみることが出来、視野の広さと予想外の解像度に驚いています。この倍率でも観察会などで複数の人が 交代で見ても視界からはずれることはなさそうです。衛星らしきものもみられました。

 土星自体が明るいので対物レンズのキャップをつけ中央部をはずしてみたら色収差がとれ、よりすっきり見 えました。5分間位の観望のはずが時間がどんどんすぎ、6時43分(1時間以上)、とうとう太陽が南東の山並 みから顔を出すまで見続けてしまいました。太陽が出ても青空の中に白いUFOが浮かんでいるようで不思議 でした。太陽が顔を出しても土星の薄い輪がかすかに確認でき、接眼レンズの性能により、12cmF5BINO が活性化したことが実感できました。

 気がついたらジャージ姿で自分の身体が冷え切り、BINOは朝露でびっし ょりになってしまいました。BINOをそのまま庭に放置して乾かしながら、太陽に向かって感動の余韻の中いつものトレーニングコース へと走り出しました。

水車

管理者のコメント;

 先月の上旬に12㎝f5-BINOを納品させていただいて以来、水車さんは同BINOをフルに活用してくださって、大変 嬉しく思っております。早朝未明の寸暇にも夜空に持ち出してもらって、BINOもさぞ喜んでいることと思います。

 12㎝というのは、大口径の15cmとコンパクトな8㎝クラスとの間で見過ごされやすい口径ですが、機動性と集光力を バランス良く満たしていることを、水車さんの観測スタイルが証明しています。 また、昨今はアクロマート→セミアポ →アポクロマートと、より高級な鏡筒への指向が強まっているようですが、deep-skyや100倍未満での月、惑星、低倍での 昼間の地上風景と、アクロマート短焦点でも十分に感動を味わえる対象が多いことも忘れてはならないと思います。

 また、アイピースの重要性も水車さんが改めて証言してくださいました。”90度対空の正立像+双眼視+100度の見かけ視界”という、 10年前には想像も及ばなかった世界が現実になったわけで、2インチアイピースすら珍しい物だった20年前を 思い起こすと、本当に隔世の感があります。

 ドットファインダーにも言及してくださいました。長年天文から遠ざかっていて最近リターンされたマニア の方の中には、まだその便利さをご存知ない方もおられるかも分りませんが、この手のファインダーは正立等倍で 視差がありませんので、最もシンプルで最も有効な導入アシスト手段であると断言できます。
 覗き方は、必ず両眼開放で 使用するのが鉄則です。(もちろん片眼でも使用できますが、両眼平行視線で用いるのが本来の使い方であり、最も 能率的な導入が可能になります。)

 水車さん、わずか1か月未満の間に、よく観測してくださいました。 季節がめぐりましたら、ぜひ続報をよろしくお願いいたします。

 ありがとうございました。

 (11月30日) 水車さんより、さっそくの続報をいただきました。

 F5という、アクロマートとしてはDEEP-SKY目的に特化した短焦点鏡筒ではありますが、アイピースやバローレンズ、そして、口径絞りの選択に よって比較的高倍率まで使用できる実例を提示してくださいました。
 EWV32㎜の巨大なアイレンズによる圧倒的な覗きやすさは、すでにマニアの定評が確立しているところですが、この 覗きやすさのまま、EWV18㎜として使える、この2インチバローは非常に有効な物です。  さらにイーソス8mmがイーソス4.6㎜100度としても使えるわけですから凄いことです。
 ただ、このバローは純正のままですと、 名前は”ショート”ながら、EMSに使用するにはまだ挿入長が長過ぎ、挿入しきれない挿入部が余ってしまい、 外観が不恰好になるのみならず、合焦に支障をきたします。当方で2個(1組)お求めいただきます と、OPTIONでこの短縮改造を承ります(写真3の黄色い矢印の部分が短縮改造済みのバロー)。この加工により、倍率は少し下がりますが、性能的には問題ありません。

 月、惑星等の明るい対象で色収差が気になる際に、キャップの中央絞りを利用されるのは、賢い方法だと思います。 12cmF5鏡筒のキャップの中央絞りは53㎜(15cmF5鏡筒は確か110㎜)ですので、80mmくらいまでの絞りを数種類自作して試されて、 使用目的に最善な口径を見つけられてはいかがでしょう。 同心円的にいくらでも絞れるのは、屈折式望遠鏡の大きな 利点で、大いに活用されたら良いと思います。 中央遮蔽がある反射式ではそうは行きません。

 水車さん、さっそくに続報として有意義なご提案をいただきまして、ありがとうございました。