ステレオタイプ(stereotype)の呪縛 / Spell of the Stereotype

”天体望遠鏡=倒立像”、というのも一つのステレオタイプであって、世間一般的には未だに抜け出せていないもの だと言えますが、この辺までですと、当サイトをご訪問くださる方々はすでに問題意識を持たれて長く、とっくの 昔に脱ぎ捨てられたステレオタイプかと存じます。

しかし、このステレオタイプにも段階があって、さらに上の、またその上の階層でも、それは存在するわけです。 私たちが未だに抜け出し難い、(屈折式の)天体望遠鏡の構造のステレオタイプは、外観から言いますと、筒先 から、対物フード →(中に)対物レンズ(セル&対物側フランジ) → 鏡筒パイプ → (フランジ&)繰 り出し装置(ドローチューブ)→ 接眼アダプター の順に構成されるもので、実際、これから逸脱した市販の天 体望遠鏡は皆無であると言っても過言ではありません。

そして、望遠鏡メーカーには、天体望遠鏡は直視で見るのが基本だという意識が猛烈に強くあって、アイピースと 望遠鏡接眼部との間には、せいぜい天頂プリズム(ミラー)が1個介在するくらいの認識しかありません。 です から、たまに双眼装置等に気を使った、極端にバックフォーカスの長い鏡筒を出したとしても、上記、直視(もし くは天頂プリズム1個)での合焦とを両立させようとするものだから、どうしても極端に長いドローチューブを 一緒に装備してしまうことになるわけです。

そして、その長い管路(ドローチューブ)の末端に、これまた長い同等管路を持つ双眼装置やEMSを装着して、 ドローチューブをうんと繰り入れて使用していたわけです。

合焦しない場合は、やむなく鏡筒のカット等を行って長い総管路のフルシステムをさらに対物側に繰り入れ、鏡筒カットを 免れて合焦する場合も上記のジレンマを背負うわけです。(特に小口径の鏡筒では、ドローチューブの後端が対物レンズ後面 に当たりそうになることも珍しくありません。 ドローチューブもカットすれば状況は緩和しますが、往々にして 内径が細い物が多いので、抜本的な解決に至らないのが普通です。)

望遠鏡メーカーが、“直視(もしくは天頂ミラー1個)での合焦”の呪縛から解き放たれない限り、EMSの都合と 市販鏡筒が完璧に折り合うことは今後もあり得ない、ということに気付くのに、あまりに長い年月を要しましたが、 ようやく最近になって、そのことを明確に認識できるようになりました。 つまり、私自身も、『望遠鏡パーツは、ドローチューブ末端のアダプターに挿入するもの』というステレオタイプ の呪縛に縛られていた、というわけです。

長いドローチューブの末端に、さらに長い光路長の光学アタッチメントを装着することの矛盾は、単に光学的な側 面ばかりではありません。視度補正や、規格が統一されていないアイピースのピント位置のばらつき《これはアジ ャストリング等の外部的な工夫で克服できる》を補償するためだけに、ドローチューブ+光学アタッチメント+重 量級アイピース、という巨大な総質量を大掛かりな手段で以って常に動かし続ける、という、力学的な矛盾でもあ るのです。

上記ステレオタイプから開放された先に、どんな正解が待っているかと言いますと、それは、『メインフォーカ サー(+長いドローチューブ)を撤去した鏡筒、またはフランジにEMSの第一(望遠鏡側)ユニットを直結する。』 ということです。
(もちろん、今度は余るバックフォーカスに相当した延長管を要する場合もありますが、市販鏡筒の現状からする と、それは不要か、せいぜい極短い物でしょう。 特に小口径の場合は、重量構成比が大きいメインフォーカサー の撤去は、軽量化という極めて大きな副産物ももたらしてくれます。また、今までEMS-BINOの素材として 却下して来た、繰り出し装置の先にレンズ後群が配置されたphoto-visualタイプの鏡筒も 射程に入ることになります。)

ただし、それを美しい形で実現するには、いくつかの課題をクリヤーする必要があります。当サイトを注意深く 見てくださっていた方は、私がそれらの一つ一つを克服して行った過程を思い出してくださっていることと思い ます。

まず、メインフォーカサーを撤去するわけですから、別の設置箇所を決めて、代替フォーカサーを設置しないとい けません。先述の趣旨からして、設置箇所は当然アイピースのごく近傍になるわけですが、2インチサイズのアイ ピースを使用する前提に於いて、58㎜くらいの目幅制限を満たすための外径制限があるので、low-profileの要求 と相俟って、これだけでも十分、計画を断念するに足るハードルがあったわけです。

曲折を経て、最小目幅の障害にならないアイフォーカサーの基礎的な実験に成功したことは、すでにここで発表し ています。

次に、フォーカサーをアイピースの根元に移動したことで、第一ミラーユニットを少し大きくする必要が生じま す。 これは単に光学的な要求ばかりではなく、鏡筒→フランジ→EMSの第一ユニットに至るアウトラインが極力 段差なく美しい流線型となって繋がるためにも、十分な大きさ(開口径)の第一ミラーユニットを準備することの 意義は大きいのです。

これは、現状でも口径12cmクラスくらいから窮屈だったEMSの第一ミラーハウジングを、いよいよ大きくす るための機が熟したということです。

目下、20年来の懸案だった新型の大型ミラーハウジングを、満を持して開発中であり、それが完成すると、 EMSがこれまでの諸々のジレンマから開放され、いよいよ次のステージに向けて大きく進化するわけです。

数ヶ月以内には、ここで重大発表をさせていただくことになるでしょう。

 


 

2009年5月25日

MOROHA NO TSURUGI (両刃の剣)

“MOROHA” maeans “double-edged” in Japanese, and “NO” is for “of” , and “TSURUGI” is for “sword”. The order of the words is reversed in Japanese. So, the title means ” DOUBLE-EDGED SWORD”. Japanese use the term expressing contradictive resort that can bring us both the blessing and curse.

A video of EMS-BINO was submitted to “YOU TUBE” by an Italian user. I firstly welcomed the fact that the VIDEO of my EMS-BINO is being released to all over the world, and put the link on top of my website. But, stop to think of it, I thougt at the same time of the concern of MOROHA NO TSURUGI both in the field and in its contents itself. I know that there is no harm meant by the submitter, but he treats my EMS-BINO as if it were of the same level of product as the commercial binoculars. So, I withdrew the link of it on the top of my website.

イタリアのユーザーが”YOU TUBE”にEMS-BINOの動画を投稿してくれたので、一時トップページに リンクを貼ったものの、国内のユーザーの方のアドバイスもあり、また自分自身の危惧もあったので、取り下げました。 常に新鮮な情報を発信し続けるのには莫大な時間とエネルギーを費やすのですが、一方で情報発信は 両刃の剣の側面を持ち、何ともやっかいなものです。

投稿者には悪意はなく、業者さんでもあるので、市販の大型双眼鏡も売らないと経営が成り立たない 事情も分かりますが、撮りかたから、氏の本音の価値観が自ずと読み取れます。 ここはおおらかに受け止めるのも一つの選択肢 ではあると思いますが、好意的な第三者の目にも違和感があったということは、やはり”blessing”を抑えこむ”curse” の部分が無視できないのだろうと判断しました。また、すぐ隣にこんなふざけた投稿が並んでいるような”YOU TUBE” という玉石混交のメディア自体についても慎重になる必要があるようです。

EMSを扱いながら、横に裏像の天頂ミラーを並べる販売店も、営業のために仕方なくという雰囲気ではなく、 積極的に裏像の天頂ミラーを推販していることに矛盾を見ますが、今後どの辺で線を引くのか、 難しい判断を迫られることが多くなると思っています。