”目からウロコ”のEMS-BINOの光軸調整講座

これからEMS-BINOのユーザーになられる方には必見の項目です。

  EMS-BINO完成品は、出荷前に十分に調整してお送りしています。(EMSの光軸は輸送の振動くらいでは狂いません。) にもかかわらず、像の盛大な倒れを訴える方が 非常に多くいらっしゃいます。 これは明らかに寄り眼調整が原因しています。
(まれに輸送中に鏡筒自体が少し横に振れてしまっている場合があるかも分かりませんが、この場合は、決してEMSの調整ノブを 操作しないで、鏡筒を振ることで光軸の相対的な平行をほぼ復元してから、最後にEMSで微調整してください。とにかく、最初の組み立て時にEMSの調整を盛大に操作 しないといけない場合は、何らかの異常が発生したものとお考えください。この 場合に、敢えてEMSの調整を大きく操作しますと前例のような問題が生じます。)

  また、初期組み立てと調整の練習は、必ず明るい昼間に、地上遠景で行ってください。初心者の方がいきなり星野を 見ながら像の倒れの調整等をするのはまず無理です。

  繰り返しになりますが、左右の像が合致していれば光軸が合っている とは限りません。
 ただ、私たちの情報の主要な入り口である、眼からの情報については、私たちは 頑固なまでに確信を持ってしまいます。 これが調整の袋小路に入る原因なのです。

  「左右の像が合致しているから自分の調整に誤りがあるはずはない、像が倒れているのは動かない現実だから、 絶対に器械の方が狂っている。」と結論付けてしまわれるのです。

  上記につきまして、この項を含めて当HP内で繰り返し解決方法をご説明しておりますので、なにとぞご精読くださいますよう、お願いいたします。
(2003年1月31日)(2月20日、一部追加)

 EMS-BINOで遠くのアンテナを見た状態です。左右の像が完璧に合致し、視野中心を見ている限り、左右の視野円の不一致も ほとんど気付きません。
  さて、果たしてこれで本当に左右の光軸が平行になっているでしょうか。
 次の方法でそれを確認することが出来ます。

このチェックは、目幅が完璧に合っていることが前提になります。初心者の方で目幅が合致した感覚が 分からない場合は、目幅を正確に測定してもらい(眼鏡店等で)、ノギスでBINOの目幅を正確に設定してください。 (目幅は正確には瞳の中心から中心までの距離ではありません。個人差はありますが、それより1mmくらいは小さくなります。 進化途上にある私たちの眼の光軸(眼軸)と視軸は数度ずれているからです。)
(2004,5月3日追加) 

左の射出瞳

右の射出瞳

 眼をアイポイントから徐々に離して行き、上の写真のように、対象物の像が左右それぞれの 射出瞳に占める相対位置がほぼ一致していれば、初めて、「十分な精度で左右の光軸の平行度が出ていた。」と言えます。 (この時、絶対に顔を横にシフトさせてはいけません。本能的に顔を動かして目標を探してしまえば、光軸が平行でなくても 上の写真のように見えてしまいます。左右別々にウィンクする時に顔をしかめる人はこのテストの適性が低いと言えます。)

(2008年12月16日追記)ターゲット(アンテナ)が近距離ですと、当然ながら無限遠の対象(星)とは適正 位置が異なりますので、最終的には無限遠の対象で追い込む必要があります。無限遠に調整したBINOでは、 有限距離のアンテナは、鏡筒間隔分だけ内にずれているのが正解です。ただ、見ている対象に対しては、この 方法による調整が正解です。

左の射出瞳

右の射出瞳

 現実には、特に初心者の場合は前の写真のような理想的な状態であることはまずなく、この写真のように、大抵、 相対的に内寄りにずれています。この程度でも調整できていれば優秀な方で、初心の方の場合は、片方の対象が 完全に射出瞳から外れている場合の方が多いでしょう。
  この写真程度のずれであれば、地上の昼間の風景の美しさに十分な感動を与え、月面等の明るい対象を見ている限りは 観察者は光軸のずれを全く自覚しないでしょう。 しかし、光刺激の小さい微光星になると、視野の全ての星が二重星に なっていたりするのですが、初心者の場合はそれにすら気付かず、「昼間の景色には感動するが、星野では、単眼との差があまり無かった。」というような とんでもない感想も出かねないのです。^^;
  眼をアイポイントより数十センチ離し、右のEMSの調整ノブで前の写真の状態にすれば、左右の光軸は完全に 平行になるのです。このマニュアルに従っていただければ、調整にはわずか数秒しかかかりません。決して主観に惑わされずに、 自分の考えを付け加えず、忠実にマニュアル通りに実行していただくことが肝腎です。

右の像を上下に極端にシフト

右の像を左右に極端にシフト

 左右の視線をほぼ平行に保っている限り、EMSの調整ノブの調整量はほんのわずかで済みます。
 左の写真はY調整(上下方向)、右の写真はX調整(左右方向)を敢えて盛大に操作した状態を示しています。左右の写真とも、中心の濃い像が左鏡筒の像だとお考えください。
 まず、右の(以下”右の”を省略)像を上に大きく移動させると、像は右に傾き、下に大きく移動させると左に傾きます。(左の写真)
  また、像を左に大きく移動させると、左に傾き、右に移動させると右に傾きます。(右の写真)
   これで、寄り眼調整がいかに有害であるかがご理解いただると思います。寄り眼調整は、単に観察者の眼を 疲れさせるだけでなく、左右の視野の相対的な倒れも発生させるのです。出荷時に私が入念に調整しているにもかかわらず、 視野の倒れを指摘される場合のほとんどの原因が、ここにあるのです。
  眼の極端な癖を介入させない限り、EMSの調整機構は、視野の回転が影響しない 安全圏の範囲で十分にその目的を果たします。

(左右の像の倒れを調整する際には、わざと光軸を上下にずらしますが、その時、上の写真の傾向を理解した上で、 上下にずらした時の倒れが均等になるように調整するのです。)

       像の倒れの調整方法は”15cmF8双眼望遠鏡の使い方”の
       ”EMSの接続アングルの調整方法”をご参照ください。


2007年4月6日追記

調整原点と調整ストロークの中心とは関係ありません。

  右のEMSのXY 調整用の調整ノブの使用法につきまして、数年前より以下でご説明してまいりましたが、 タイトルの誤解が、誤った調整につながる一因だと感じましたので、ご説明を追加することにいたしました。

 原理構造を無理解のままに最初から鏡筒を分解される方が意外に多く、安易に復元を試みられる場合に陥りやすい失敗として、 調整原点を調整ストロークの中心に合わせてしまわれることがあります。 この間違いを犯されますと、常に光軸が狂った状態で BINOをご使用になることになります。

 調整ネジは、組み付けネジを兼ねており、どんどん緩めて 行きますと、やがて脱落します。 また、製作工程上、調整原点の相対位置(言い換えますと、調整域リミットの両端位置)は一定ではなく、製品ごとに微妙に異なり、上下調整と左右の 調整との間でも異なります。 以下のご説明に従って、調整ノブを正しくご使用くださいますように、お願いいたします。


2009年12月14日追記

 訂正が遅れましたが、下記の調整原点の問題は本年の4月より、右のEMSの第一ユニットのX-Y調整ノブに 原点位置を示すことにより、解決しております。

 また、上記では、アンテナのポールの垂直線を規準にしてお話していますが、その後の研究で、むしろ水平線を 規準にした方が、左右の像を分離しやすく、像の倒れの把握に有利であることが分かって来ました。