EMS-UL SET for Korea in the making


 延長管の無いヘリコイド仕様では、第1,第2ハウジング共、端面の接続用テーパリングが無いことにご注目ください。これは、ヘリコイドの縮退長を最小限にする工夫で、ヘリコイドとハウジングの接続は、ヘリコイド両端のテーパボスをハウジングに嵌入させ、ハウジング端面の3方からセットビスで固定するのです。
 なぜ、こうした詳細な手の内を公開しているかと申しますと、固定仕様のEMSを所有している方、もしくは固定仕様で発注した方が、後にヘリコイドのみを購入して簡単にセットできると誤解している方が多いからです。
 固定仕様のEMSには、上の写真のような3方のセットビスはないため、ユーザーサイドで、ヘリコイドを幼児のレゴブロックのようにセットすることは出来ません。
 従って、将来ヘリコイドを使用することを想定しているのであれば、最初から3方のセットビスを施工しておくようにご指示いただけば良いのです。(ダミーネジになりますがね。)


松本の光学講座 2024;復習4/Basic theory-1/ 超基礎からの復習-1

 上の図は、絵本レベルの光学書や 小、中学校で教わる結像公式を図で示したものです。
負数の概念も、数直線も知らない段階の公式で、物点距離 a も像点距離 b常に>0として扱います。
 下の図は、虚像の時の光路図ですが、a,b>0を前提にした、1/a + 1/b = 1/f が成り立たず、別の公式を立ち上げないといけません。1/a – 1/b = 1/f
 負数や数直線さえ理解できれば、光軸をx軸、レンズ位置を原点として物点、像点の座標を決めると約束すれば、1/b – 1/a =1/f ( 1/s’ – 1/s = 1/f ) という一般式が、全ての結像ケースで成り立つことが分かります。(結像ケースごとに、違う公式を使わなくても良い。)

 それから、一見、a と b という距離同士の関係式に見える結像公式ですが、その裏にある角度関係を見落としてはいけません。
 図の最初に出て来る、α+α’ = γ が始まりだということです。これは三角形の基本定理なので、中学生でも知っていますね。 これも、先ほどの a, b 同様、正負の概念を加えて、上の方の図の α’>0 , α<0 と定義しておけば、一般的に
α’ – α = γ —–① と書けるわけです。
近軸域の極限値では、
γ = h/f となることが分かっていて、1/f = Φ(レンズのパワー)なので、
α’ = α + hΦ と書けるわけです。また、屈折の前後で h は変化しないので、
h’ = h となるわけです。 これらの2つの式を行列で表記したのが、

                        です!

*近軸領域では、α = h/a , α’ = h/b
  これも極めて重要な点ですが、言い換えますと、屈折光線の曲がり角度 γ は、α や α’ とは無関係で、h とレンズのパワーだけで決まる、ということです。現実にはそうならないことが多いですが、それが理想結像であり、それに近付けるために、光学設計者が腐心するわけです。 因みに、近軸追跡で扱う屈折の角度とは、実際の光線の角度のことではなく、tan α として定義された特別な角度です。
 また、α’ = α + hΦ について、h の初期値に何を代入してもかまわない理由は、
α’ = h/a , α = h/b を上式に代入していただけばご納得いただけるはずです。
h/a = h/b +  となり、h が α、α’ の中に隠れているため、h が任意に決められるわけです。(hはもともと両辺に均等に掛けたもの!)

光学講座の当初に提示していました、三角形の角度関係の重要な定理です。
近軸理論では、これが頻出します。



2-Pairs of EMS-UMA SET for Switzerland completed !

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松本の光学講座 2024;復習2/Review/移行マトリックス

移行マトリックスを図示しました。↑

 行列方式の利点は、屈折マトリックスと移行マトリックスを無制限に連結、掛け合わせることが出来ることです。一般的な結像公式は、1/s’ を求めても、次のレンズによる1/s” を求めるには、一旦逆数の s’ を求めた後、さらに面間隔を差し引いてから新たな s を設定しないといけないので、連続して運用するのにかかる手間が著しいのです。

松本の光学講座 2024;復習1/Review

一般的な結像公式(1/s’ – 1/s = 1/f)と行列方式(屈折マトリックス)の表記の関係がよく分かるように、図中でご説明しました。
 一般的な結像公式では、物点と像点を基点としているのに対し、行列方式では、入射点(屈折点)の光軸からの高さhと、その点での光線の方向 α を基準にしています。
 行列方式は、都度、s, s’ がダイレクトには求まりませんが、複数エレメントの光学系では最後に計算すれば良いわけです。

松本の光学講座 2024;応用編-6/ Interesting Drill/ 面白い課題

これは凸レンズ???(課題1)
 前面と後面が全く同じ曲率半径(面パワーの絶対値が同じく、符合が反対)なので、薄レンズだと、度数は0(ゼロ)になるはず!

前面が+10Dで後面が-10Dなので、ほぼ度数はゼロになるはず。問題は、厚みの12mmがどう効くのか?
 実際に近軸追跡をしてみた。↑
 +0.8Dなので、近似的にも 度数 0 とは言えなかった。初めて掛ける弱度の老眼鏡のレンズ度数に近い。

同心球で囲まれた、こんなレンズはどうなる?(課題2)
厚さが均等なので、度数=0 ??

近軸追跡の結果、-5.0Dと出ました。これは、近視用レンズとしては、強度近視の仲間にもうすぐ入りそうな、結構な度数の凹レンズです。物側、像側主点が球心に合致しています。
 高さ10mmの平行光線を実際に光線追跡してみました。かなりの球面収差が出ています。


松本の光学講座 2024;応用編-5/Distortion and the Iris/ 絞りの位置と歪曲

 この問題も結構奥が深いですが、逆に、視覚的、直感的に理解しやすいかも分かりません。
同じレンズ系でも、絞の位置で歪曲の傾向が逆転することがあります。上図のような単レンズですと、絞を物側のレンズ前に置くと樽型歪曲、像側に置くと、糸巻き型歪曲になります。
 グレードの低い虫メガネを見ると③の糸巻き型に歪曲して見えるのは、自分の眼の瞳孔が図の該当位置の絞りになるからです。
 単レンズの場合、図の①の位置に絞りを置くことは出来ないのですが、敢えて置いてシミュレーションすると、歪曲から解放されることが分かります。ほとんどのカメラレンズが、絞を中央にしてシンメトリックなレンズ構成になっている所以の一端について、ご納得いただけたと思います。
 余談ですが、歪曲と像面湾曲が頭の中でごちゃごちゃになっている方が多いように見受けます。
今回取り扱ったのは、“歪曲”であり、像面自体の湾曲とは関係ありません。ですから、作図も敢えて像面が平坦だと相当して描いています。
 絞りの中心を通る光線が、光学系入射前と射出後で平行に出て行けば(つまり角倍率=+1)、歪曲はなくなります。