William Optics『80mmセミアポ』の銀ミラー化リフォームと15cmBINO /WO80-BINO with Silver Mirror and 15cmBINO

William Optics 80mmセミアポ の銀ミラー化リフォームをして頂きました。 皆さんのレポートと精力的な耐久試験の結果、懸念材料が無く、性能は格段にレベルアップすることが確実であると証明されていますので、迷うことなくリフォームを申込みました。

お忙しい中、日程の無理をお願いし、持ち込み後、即リフォームとBINOのメンテナンスもして頂きました。 生憎の天気でしたが、リフォーム後は、景色の色合いが違っています。BINOに疎い妻も驚嘆していました。私の目は乱視があり、BINOで見る時も、完全には像が一致しなくてもしかたがないとの思いがあったのは確かですが、リフォーム後は、雨を通しても数十メートル先の木々の枝が一本一本クッキリと見えます。雨粒もしっかり見えていますが、雨を通りぬけた景色に見とれていました。 眼鏡がなくとも、キリッとした像に『今までこのセミアポの性能を発揮させていなかった』と気付きました。

丁度、旅行先で海が見え遠くに漁船が浮かんでいます。BINOでは雨の中、かすかにですが赤い旗が見えます。しかし、持参していた口径70mmの双眼鏡では、漁船の存在は分かりますが、赤い旗の存在は確認出来ずとても不思議な感じを体験しました。

赤色付近の反射率が改善された銀ミラーの効果と言えると思います。しかし色彩の改善ばかりでなく分解能も数値では表現できませんが確実に改善されている事例として紹介させて頂きました。

又、BINOを持ち込んだおり、松本さんより、BINOを運搬する方法などを、皆さんに紹介して欲しいとの御依頼がありましたので、10に1つでも皆さんの参考になる部分があればと、恥ずかしながらレポートを作らせて頂きました。

15cmBINOについても若干紹介させて頂きます。 松本さんの工作力、アイデアには足元にも及びませんが、改善の工夫を考える一時は大変楽しいものでして数々の失敗もありますが、成功した時の嬉しさは格別であることに免じてご覧頂ければ幸いです。

双眼鏡と違い、色々と工夫(お金を使わずとも)できるのも、BINOの良い点であると思います。15cmBINOも銀ミラー化できる日が近い事を夢見ながらのレポートでした。 松本さん有難うございました。

石井 邦雄

管理者のコメント;

4月22日に岡山県よりご訪問くださり、WO80-BINO用のEMS-Lセットの銀ミラー化(EMS-ULへのupgrade)を施工させていただきました。 その際、同BINOのご工夫の数々に非常に感心し、当リポートをお願いした次第です。 今回、非常に懇切、詳細に多くの画像を含めてご説明くださいました。

ごく最近になって、小型のPCやスマートフォンでリアルタイムの天体のローカルな位置情報(高度角と方位)に簡単にアクセスできる時代に至り、BINOの高度角と方位を何らかの方法で表示させることで、天体の確実な導入支援が可能になることに 石井さんもいち早く気付いておられ、デジタル傾斜計と方位のアナログ目盛りを巧みにHF経緯台に組み込んで 実際に使用しておられました。

その際、当方が方位表示の試作用に確保していたデジタル分度器をお見せしたところ、同じ物を入手され、当方より先にHF経緯台に見事にインストールされ、実用性を実証しておられました。 実は、5月7日に15cm-BINOのEMS-LSの銀ミラー化で再度ご訪問くださった時に、現物を見せていただき、大変感心した次第です。

石井さん、貴重なお時間を割かれての懇切なご投稿、誠にありがとうございました。 よろしければ、また15cmF5-BINOのリフォーム(銀ミラー化)につきましても追加のリポートをいただけましたら非常に幸いです。

FS102-BINO by Mr. Alfredo Sayalero, Spain

Freddy Universe

管理者のコメント;

スペインの Alfredo さんが、自サイトに(半)自作のFS102-BINOを紹介してくださいました。

スペイン語ですが、そのまま読める方は別として、いきなり日本語への自動翻訳でなく、英語へ翻訳してからお読みになることをお勧めします。 (それでもおかしな翻訳になりますが、日本語への自動翻訳よりはましです。)
EMSとスライドマウントをお送りして、BINOを組み立てられました。 言葉の壁を越えて、自分で組み上げ、調整されたのですから、大したものです。

私の仕事の性質上、依頼者の方との緊密な情報交換により、互いに極めてパーソナルな関係が構築できて、大変嬉しく思っています。 この度の東北関東大震災についても、心よりのご心配と励ましをいただきました。

15cmF6-BINO/ ~初めての体験「M42が赤みを帯びて見える」~

 3月4日は福岡県糸島市は透明度抜群の夜でした。私的な事 ですが、心臓の手術後1年が経過し、体調がこれまで以上に良 くなり、寒い夜の行動もOKになったので、海の近くの暗い場 所まで出かけました。

 黄金色の夕空に浮かぶ雲の底がピンクに染められています。 そのような夕空を見ながら15分で目的地に着きました。  「150LD(銀ミラー)」を組み立て、EWV32㎜アイピー スを装着して、まだ明るい青い夕空の大犬座を観望すると、視 野には沢山の星が見えています。M41もばらけた姿を見る事 が出来ます。

 次に、夕空の青みが十分に残っている午後6時50分頃、オリ オンに双眼望遠鏡を向けたときのことです。何とオリオンの散 光星雲が微かにではなくはっきりと赤みがかって見えたのです 。一瞬わが目を疑いました。

「ウソだろう。散光星雲が夕日に映えてピンク色になってい る。(有り得ない)」と思うほどでした。
 一度目を離して再度見ましたが、やはり赤みがかって見えま す。見えていた範囲は散光星雲の比較的明るい部分でした。イ ーソス13㎜に替えてみましたが、この時は赤みは感じませんで した。再度32㎜に替えてみました。やはり赤みを帯びています 。ずっと見続けていましたが、空の青みが減少して暗い空にな るにつれて、その赤みは感じられなくなり、白っぽい、いつも のもの散光星雲になりました。
 何故、赤みを帯びて見えたのでしょうか。
 目の錯覚?、心理的な意識がそうさせた?、背景がまだ明る く目の色彩を感じる細胞が活動していた?、等々考えてみまし たが私には分かりませんでした。

 このような経験をお持ちの方はいらっしゃるのでしょうか。

 その後は、北の空から東の春の天体を楽しみました。町の近 くとしては比較的暗い空(アルニタク横のNGC2024は見えませ んでした。)でした。二重星団からスタートして、天の川を流 し、M37,36,38と、お決まりのコースをたどりました。

 アイピースを13㎜に交換して、M1からスタートして、M51,108,97,81,82 と、メジャーな天体めぐりです。東の空は福岡市の明かりが有 るので、獅子座の銀河は40度以上の高度になって見え始めま した。MGC2903から始まってM96付近には5つの銀河が見えてい ました。手持ちの星図がポケット版だったので、同定が出来な い天体が有りました。M65,66,それに微かにNGC3628が見えてい ました。  銀河はその特徴的な形が良く見えていました。
 最後に上がってきたばかりの土星を見て観望を終わりました。

 手術後、短い時間ですが何度か心臓が止まった事が有りまし た。止まった時は視野が真っ暗になり頭がジーンとしました。
幸い「再起動」してくれたので良かったです。
 以前とは少し違った気持ちで星を見ています。幸せな気持ち で・・・。

 そんな幸せなひと時を「150LD」は提供してくれます。

   感謝、感謝。 

富山良兼

Comment by Matsumoto/ 管理者のコメント;

 まずは手術後も順調に回復され、以前以上にご健康を取り戻されたことにつきまして、心よりお慶び申し上げます。

  この度は、銀ミラー化で再生した150LD-BINOを、再起されたお体でしっかりと観測された、意義深いリポートをいただきました。 一時的でも生命の危機を体験されたことで、より感性も研ぎ澄まされたのでしょうね。 非常に象徴的なご体験で、良いお話を聞かせていただきました。

  M42の赤みは、去年の双望会の会場でも、銀ミラー化したEMS-BINO等で、複数の方々が異口同音に指摘しておられましたが、今回は、夕方の薄明時に赤みが見えたというご報告です。 以前にも、月がある夜にM42がピンクに見えた(複数の方と一緒に観察:20cm-BINO)というご報告がありましたので、何か関連があるかも分かりませんね。

  気候はこれから良くなる方向ですので、どんどん観測されて、また続報をお願いいたします。   久しぶりのご投稿、誠にありがとうございました。

APM-LZOS152-BINO

1 APM-LZOS双眼望遠鏡構想の経緯と製作経過

そもそも双眼望遠鏡を新調しようと思い立ったのは、メガネの マツモトさんのHPで紹介されている「横浜のKさん」のAPM/LZOS 130/F6-BINO- 新型EMSを拝見し、鏡筒のあまりの美しさとBINOのカッコ良さ に魅せられたからでした。

そこで、2010年3月26日に国際光器へ連絡を取り、「横 浜のKさん」のAPM/LZOS 130/F6-BINO-BINO1でのリクエストを 参考にさせていただきつつ、次の3つの条件を付して2010 年4月14日正式に発注しました。

(双眼望遠鏡にする為の条件)

1) 2台の焦点距離の差を1%以内で揃える事。
2) 2台の接眼部マイクロフォーカサーを左右対象に取付ける 事。
3) フードゴロマークを1本は右/1本は左に貼り双眼にした時 にどちらからでも見えるようにする事。

待つこと3ヶ月半、2010年7月26日に鏡筒入荷のお知ら せメールが来ました(^^) 早速、メガネのマツモトさんに連絡を取り、直接、国際光器から 鏡筒が送付される旨連絡させていただきました。

国際光器への鏡筒発注と同時並行で何度かメガネのマツモトさん とBINO製作の打ち合わせをさせていただいておりましたが、最 終的には主として次のような要望となりました。

(BINO製作にあたっての要望事項)

1) EMS-UXLセット(第2ミラーオーバーサイズ)プレミアム仕様
※ 低倍率用としてテレビュープルーセル55mmを使用 したいため。

2) フォーカサーのつまみの位置を縦にせず、横の位置で操作 できるようにする。

3) 架台は、より安定した新設計のフォークタイプとする。  これに十分な大きさのCRADLEをセットし、そのペースプレー トに2本の鏡筒を別々に着脱するアリミゾを設置する。

※ 鏡筒本体が12kg、鏡筒バンド2kg、合わせて14kg以 上になるため、安全に1本ずつ取り外しができ、且つ耐久性に優れた架台を希望 したい旨お伝えしたところ、新設計フォークタイプのご提案をいただいた。

4) 架台は、俯角30度~天頂まで向く特別仕様とする。   ※ 地上の風景についても観望可能なようにするため 。

5) スーパーナビゲーター自作キットのエンコーダーの組込

6) タカハシSE-Sピラー脚のネジピッチと東海キャスターのネ ジピッチが微妙に合わず殆ど入らないため、取り付け加工を施す。

しばらくBINO製作の順番待ちの状態が続きましたが、いよいよ 2010年10月20日APM(TMB)152-BINO計画がスタートしま した。 少しずつ出来上がっていくBINO、日々のHPの更新をワクワクし ながら拝見しておりました(^^)

2 APM-LZOS 152mm/F8 CNC-LW BINO 遂に完成!

そして、遂に2010年12月2日、APM-LZOS 152mm/F8 CNC-LW 3 枚玉スーパーEDアポクロマート EMS双眼望遠鏡 が完成しまし た! 手元へは、2010年12月6日無事に到着しました(^^)/~~~

荷物が到着して、まず驚いたのはAPM-LZOS鏡筒の入っている箱 の大きさでした。 50インチのプラズマの箱と同じ長さですが、幅の厚いこと・・ ・

早速、慎重に箱を開封し、ピラーから組み立て、次にピラー取 り付け部と新設計のフォーク(丈夫そうで且つ完成度の高い仕 上がりにちょっと興奮^^)を組み立てました。

そして、いよいよ鏡筒の取り出しです。

一瞬、意外とコンパクトかな?・・・と思ったのですが、フォ ークに固定(すごく簡単で楽でした)、フードを延ばして測って みると130cmオーバー、想像はある程度していましたが、いや はや巨大なこと・・・(>_<)

3 初観望

外は暗くなり、雨と靄でコンディションはダメダメですが、組 み上がって、まず約200m程先の街灯をイーソス17mmで覗いてみ ました。

テレビューNP-101双眼望遠鏡を里子に出してから早4ヶ月… う~ん、久しぶりの広視界に感動です。 バックフォーカスがどの位か気になって見てみると、約300m先 の民家の明かりで右8mm、左10mmの残り幅でした。 いずれ星の出ている時に無限遠に合わせてみようと思います。

現在の2インチアダプターは、かつてのテレビューNP-101双眼 望遠鏡の世代と異なり、ナグラータイプ4-12mmやイーソス10mm で本当にギリギリEMS保護フィルターに触れないように設計さ れていて、驚きでした。

今度は、ABBEⅡ16mm、10mm、6mm、4mmに、ツァイスABBEバロー を組み合わせ、約200m先の街灯の明かりを双眼で眺めてみまし た。

ABBEⅡ4mm×バロー2倍=600倍でもクリアで色収差はなく、クリ アなままの見え味でした。
感無量・・・(*^_^*)

かつて譲り受けた今は無きNP-101双眼望遠鏡と比較すると、質 感・機構・造りなど全てがグレードアップしているようで、と にかく感動しました。

4 地上風景の観望(昼間)

152mmの口径の威力は、やはり凄いです。

テレビューNP-101のときは108倍(ナグラータイプ6-5mm)にな ると昼間でもかなり暗くなりましたが、APM152では100倍(ナ グラータイプ4-12mm)でも十分な明るさがあり、なんと言って も像質がシャープです。

銀ミラーによる効果も大きいと思われますが、本当に素晴らし いです。

イーソス17mmとAPM-LZOS 152mm鏡筒との相性については、昼間 の観望では眼の位置を正確に合わせないと視野に一瞬、薄いオ レンジなどの色が現れます。 この点は、テレビューNP-101に装着した場合には一切見られな かったことなので、やはり同じメーカーのアイピースと望遠鏡 の相性が最も優れていると言うことなのでしょう。

因みにイーソス17mmでの最短観望距離は約10mでした。 約10mの距離を、70.6倍の倍率で、落葉低木の僅かに残ってい る赤く小さな実を眺めてみました。 当然、近すぎてEMSの光軸調整は必要ですが、何か不思議な感 じがしました(^^)

5 星空観望

12月は、なかなかよい天気に恵まれないのですが、寒さ対策 として消費電力1,000wの反射式電気ストーブで身体を暖めつつ 、部屋からのお気軽観望方式で、薄雲の向こうになんとか見え る星空を眺めて楽しんでいます(^^)

イーソス17mmによる無限遠(星空)は、その後、目幅をキッチ リ合わせて覗いてみると、バックフォーカスを7mmほど残して 何とか大丈夫でした。

ただし、新しく発売された ニコンNAV-17HW の場合、スリーブ の長さが58mmと非常に長い(通常は35mm程度)ため、無限遠に 焦点が合わないと予想されます。 今後もし、APM-LZOS鏡筒で双眼望遠鏡を計画される場合は、発 注の段階でAPM社に4cm程度鏡筒を切断してもらうよう予め要望 しておいた方が良いでしょう。

このイーソス17mm(71倍)でオリオン座大星雲を見てみました が、写真で見るように翼の広がりが見えました(私の目では色 は白くしか見えまっせんが…^^)。 また、木星もイーソス17mmで見てみたところ、縞模様がハッキ リと見え感激しました。

また、ABBEⅡ-10mm×ABBE2倍バローに換え240倍で見てみたと ころ、シーイングがよくなく、木星が煮えたぎって過剰倍率で したが、それでも凄く明るく見えました^^。

松本さん、このような大変素晴らしいBINOを製作して下さいまし て、誠にありがとうございましたm(_ _)m

2011年1月1日
林 孝之 (Hayashi Takayuki)
秋田県秋田市

BLANCA130EDT-BINO

5年前からテレビューPRONT-BINO、笠井SCHWARZ150S-BINO(以下SCHWARZ)の2台を使用しています。今回3台目のBINOとして笠井トレーディングのBLANCA130EDT-BINO(以下BLANCA)を導入しましたのでレポートします。

【BLANCAの構造】
松本さんのところから届く時は(写真1)のような梱包状態です。梱包はしっかりしていましたが、左側鏡筒の合焦機構にガタが出ていたので松本さんに確認しながら調整しました。松本さんの所で2晩テストした時点では異常が無かったとの事なので輸送時に衝撃が加わったものと思われます。

(写真2)は以前からドーム内で使用していたSCHWARZと並べたところです。拡幅HF経緯台(真鍮耳軸+バランスウエイト付き)+スライド式眼幅調整機構は同じですが、スライド機構の精度向上、アルマイト加工、アリガタ式鏡筒単独取付機構、鏡筒スケアリング調整機構が追加されています。(写真3)この部分の構造はBINO Progress Report 製作状況速報の2010年10月5日前後に詳しく紹介されています。

スライド眼幅調整機構は樹脂系軸受けを使用した新型だそうです。ガタ無く、精密に動きますが、予想より鏡筒が長かったのでアイピースを覗きながら眼幅調整するのはやや困難になりました。(3枚玉の対物レンズが重いので接眼側が長くなる)より大型の鏡筒の場合は鏡筒固定+IPDクレイフォード眼幅調整式の方が使いやすいかもしれません。

BLANCAは焦点距離が900mmあるため、SCHWARZより一回り大きく感じます。双眼状態で重量は約24kgです。SCHWARZが約20kgですから、かなり重いです。(ともにバンド・スライド機構・ファインダー・ウエイトシステムを含む)ただグリップハンドルの太さが適切なため、鏡筒を1本ずつ持ち上げるのは比較的楽でアリガタ式の鏡筒単独取付けの効果もあり、重さ・大きさの割りに組み立ては簡単です。またグリップハンドルは鏡筒の指向方向を確認するのにも便利です。対空型ファインダーをはじめて装備しましたが導入時の姿勢が楽になりました。

合焦機構には減速微動装置があり、この部分が左右対称に調整されて出荷されています。特に高倍率時の合焦に便利です。尚、合焦機構の取扱説明書は入っていましたが、光軸調整機構の説明書はありませんでした。

ウエイトシャフトは360度回転できます。対物側が重いので後ろ側にシャフトを出して鏡筒の重量バランスを調整しています。(写真4鏡筒右側)

(BINO Progress Report 製作状況速報の2010年10月17日にも記事があります)ウエイト位置を簡単に調整できますので、アイピース交換に伴う重量バランス変動をすぐにキャンセルできます。ウエイトは1個約500gです。

操作ハンドルは鏡筒直付けです。SCHWARZでは架台取付方式でした。(写真5)それぞれ一長一短がありますが、握り部分の太さと材質の面ではSCHWARZ(樹脂製)の方が良いと思います。また鏡筒直付け式は、高倍率時にやや振動を生みやすい印象です。これはピラーに移動用キャスターを付けている事も影響しているようです。

【手持ちアイピースでの印象】
SCHWARZとBLANCAを簡単に比較してみました。最上段は倍率、実視界(見掛視界を倍率で割った概算値)、射出瞳径です。


EWV32mm(笠井)
見掛視界85度 アイレリーフ20mm 480g/1個

SCHWARZ150S
【23倍 3.6度 6.4mm】
BLANCAに比べれば星像は大きめですが十分立派な像です。二重星団などは賑やで美しく見えます。 また色を楽しむ二重星もアポ鏡筒より向いているかも知れません。 低倍率では乱視の影響が大きく出るので眼鏡着用など対策が重要になります。80%くらいから同心円状に像が流れ、最周辺部は崩れますが十分実用範囲です。自宅の空ではIDAS-LPS-P2フィルターを併用することが多いです。

BLANCA130EDT
【28倍 3度 4.6mm】
小さく収束するシャープな星像と、非常にすっきりしたコントラストの高い像質が印象的です。周辺像の崩れ方はSCHWARZとほぼ同傾向のようです。射出瞳径が少し小さくなり背景が暗くなるので光害カットフィルター無しでも使えます。SCHWARZでは自宅か らだと難物だった螺旋状星雲やNGC253も容易に確認できました。 また月を見ると背後の恒星群の中に浮かんだような姿を見ることができます。月をこれほど美しく見せる望遠鏡は初めてです。


イーソス17mm(テレビュー)
見掛視界100度 アイレリーフ15mm 725g/1個

SCHWARZ150S
【44倍 2.3度 3.4mm】
見かけ視界100度は絶景です。それも双眼視ですから尚更です。ただ双眼視だと、何故か視野枠がやや目立ちます。目幅や覗く角度に注意がいるのかも知れません。 乱視がある場合はディオプトロクス(乱視補正レンズ)を装着しないと性能を発揮できません。視野の70%辺りから像が流れているように感じられます。昼間の地上風景では色収差と糸巻状の歪曲がかなり出ますが、星では気になりません。

BLANCA130EDT
【53倍 1.9度 2.5mm】
SCHWARZで気になる周辺部での像の乱れが少なくなり、さらに見事な超広視界の世界が楽しめます。射出瞳径がちょうど良いようで、背景が適度に暗くなり星雲状天体が見やすくなります。M42やM33はSCHWARZよりもディテールが見えているようです。昼間の地上風景は、色は感じないものの、歪曲が気になります。


イーソス10mm(テレビュー)
見掛視界100度 アイレリーフ15mm 499g/1個

SCHWARZ150S
【75倍 1.3度 2.0mm】
17mmよりかなり引き出した位置で合焦します。非常に相性が良いようで超広角にもかかわらず、全視野ほぼ良像です。最周辺は若干ピント位置が異なり星像が肥大しますが、余り気になりません。光害が残る空では、この位の 射出瞳径が淡い天体の検出に向くようです。お奨めの組み合わせです。

BLANCA130EDT
【90倍 1.1度 1.4mm】
こちらも視野全面で素晴らしい像です。星像がSCHWARZより小さくなるので見栄えがします。 またコントラストが非常に高くM42の暗黒星雲部が穴のように見えます。月は全景が収まりますが、同時に細部構造まで良く見えます。DEEP-SKYから惑星まで幅広く楽しめる組み合わせです。


ラジアン4mm(テレビュー)
見掛視界60度 アイレリーフ20mm 345g/1個

SCHWARZ150S
【188倍】
アイレリーフが長く覗きやすいですがさすがに過剰倍率ぎみです。月や木星を見ると青紫のハロが気になりますが、模様は意外と良く見えます。第四世代型なので合焦操作がやや大変です。クレイフォード式なら 問題ないでしょう。

BLANCA130EDT
【225倍】
ハロ・着色も無く非常にすっきりした像を結びます。対物レンズは更に高倍率に耐えそうですが、架台の制約でこの位の倍率が実用限界のようです。 木星はこの倍率でも眩しいので、笠井のムーン&スカイグローフィルター かNDフィルターを使うと模様が見やすくなります。


倍率、射出瞳径が異なるので単純な比較は難しいですが、銀ミラーのBLANCAはアルミミラーの15cmSCHWARZと同等か、それ以上の集光力があるように感じます。優秀な光学系により星像が小さく収束する上に、銀ミラーの反射率UPが効いているようです。特に淡い星雲状天体の検出ではBLANCAが勝るようです。但し銀ミラー同士で比較すれば集光力はSCHWARZが上回るかもしれません。

今回、あらためて痛感しましたが、低倍率では乱視の影響が強く出ます。(私の乱視は右目-1.5(90度) 左目-0.75(110度))アイレリーフに余裕のあるEWV32mmでは眼鏡を着用すれば概ねOKですが、イーソス17mmではテレビューのディオプトロクス(乱視補正レンズ)が必要になります。ディオプトロクスの回転位置を調整すると別物のように星が点像になり、光学系の性能が1ランク上がったように感じられます。乱視の方がアイレリーフの短いアイピースを使う場合には必需品でしょう。またFの明るいSCHWARZの方が顕著に影響が出ます。

【まとめ】
当初TOA130等他の鏡筒も検討しましたが、直焦点撮影をする予定が無いこと、架台の制約から使用上限が200倍強程度である事、新たにアイピースなどアクセサリー類を揃える必要もあった事から、コストパフォーマンスに優れるBLANCAを選択しました。実際の星を見ずに発注するのは不安もありましたが、光学系は十分満足の行くレベルで、トータルバランスに優れた組み合わせにできたと思います。
一方で、15cmF5級アクロマートの優秀さを再認識しました。DEEP-SKY中心に100倍程度までならアポ鏡筒と遜色ない性能を秘めています。アポ鏡筒とはかなり価格差がありますので、差額をアイピースやアクセサリー類、遠征費用にあてるという選択肢は十分に成り立つと思います。
今後はBLANCAをドームに設置し、SCHWARZを移動用に使う予定です。

【おまけ ドームへのルームドライヤー設置】
BLANCA導入に合わせて、連続運転できるダイキン製のルームドライヤーを取り付けました。(写真5右側に写っています) 工事費込で約4万円でした。これは横浜のY.K.さんのレポートにあった機種と同じものだと思います。構造上、室温を若干上げてしまいますが、対物レンズの温度順応に顕著な悪影響を与える程では無いようです。

ミサゴ
2010年11月9日


Comment by Matsumoto/ 管理者のコメント;

3台目のBINOとしてBLANCA130EDT-BINOを導入してくださったミサゴさんより、さっそくリポートをいただきました。

まず、着荷時にメインのクレイフォード・フォーカサーが緩んでいたそうでしたが、うまく調整してくださいました。クレイフォード・フォーカサーは、物理実験用の円滑な4輪台車を、定盤(精密な平面)上で与圧を与えながら転がす原理ですので、構造は極めて単純明快です。  問題が生じるのは、与圧が足りなくなった時(ガタやスリップが生じる)や、定盤と車輪の間、またはドローチューブのフラット部とドライブシャフトの間に異物が混入した時(コロコロ感が出る)、あるいは、ノブからシャフトにかけて被覆した化粧パイプ等が移動してドローチューブにこすれている等の場合に限られますので、それらをチェックして原因を取り除くのは難しくありません。

今回は、この規模のBINOとしては、初めて鏡筒平行移動方式を採用してみました。 これは依頼者の方と相談の結果決定したものでしたが、私も新しい平行移動の機構を試してみたかった事情があり、速やかにその方式で合意に至りました。

初めての仕様だけに、操作性等、未知数なところがあり、得失が生じましたことには反省し、今後の改善に繋げたいと思っています。 ミサゴさんの長い経験に基く技量により、うまく使いこなしてくださっていることに感謝しています。

操作ハンドルは、今までも鏡筒固定方式のBINOで鏡筒直付けをしたことがありましたが、鏡筒平行移動方式に採用したのはこれが初めてでした。 今回はどうやら、今まで通り、CRADLEのベースプレートからロッドを延ばしてハンドルを付ける従来の方法がベターのようで、それに変更させていただく予定です。

お手持ちのアイピースとの相性等について、SCHWARZ150S-BINOとの詳細な比較をしてくださいました。アクロマートとアポクロマートの2種類のBINOについて、片方を完全に否定するのではなく、それぞれの存在意義を理解され、両方とも使いこなしておられることに感心しました。 より上の性能を目指すのが、人間のサガ(性)ではありますが、少なくともDEEP-SKY対象については、アクロマートでも十分に善戦することは、先日参加しました、双望会でも感じたことです。

また、銀ミラーの効果が口径の壁を越えることを検証くださいました。 銀ミラーの13cmがアルミミラーの15cmに匹敵もしくは凌駕するとのご報告は、他の方からも同様の感想をいただいておりますので、間違いないようです。 それは、単なる総合的な反射率の向上だけではなく、各色を平等に反射することによるコントラストの向上の効果が相乗するためだと思われます。 去る双望会の会場でも、多くの参加者の方々が異口同音にコメントしておられました。

望遠鏡の性能が良くなるにつれて、架台が課題になって行きます。 BINO製作の納期が延びるので、以前は架台の製作には手を染めないことにしていましたが、最近はそうも行かなくなって来ました。 バックオーダーの消化が滞りながら、自ら墓穴を掘っているような気もしますが、ここは加工手段を進化させながら乗り切らないといけないと思っています。

BINOは依頼者の方と一緒に作り上げて行くものだと思っています。 納品したらそれで終わりではなく、改善箇所があれば、依頼者の方と一緒に改善して行く姿勢でおりますので、今後ともよろしくお願いいたします。 ご多忙中にもかかわらず、懇切なリポートをありがとうございました

FS60-BINO

EMS Binoscope by Takahashi FS60 telescope

This little binoscope is light in weight and small in size which makes it very transportable and usefull for quick observations. The basis is a set of FS60-CB telescopes with 2″ attachment. They were converted with a CSV tube to obtain 22 mm more backfocus. A set of 2″ EMS-UL was used to allow maximum field with minimum backfocus. Together with the new special EWV-adaptor, instead of the eyepiece barrel, backfocus is reduced another 18 mm. The EWV-32 mm eyepiece can now be used to obtain a magnificent 7.7 degree field at 11x power.

To have IPD adjustment the FS60 telesopes are mounted on double Lineair Translation Stage and Track from Edmund Scientific which fits very convenient to the mounting plate of a standard Vixen Forkmount. With the EMS 1-1/4″ adaptor Pentax SMC eyepieces are Parfocal with the EWV-32mm eyepiece. When a 3.5 mm Pentax SMC eyepiece is used with the FS60-EMS binoscope it shows crisp binoviews of Jupiter and the Moon at a stunning 101x power.

___________________
Addition:

Since the CSV tube is not available anymore I guess it should be possible to obain enough backfocus for the EMV 32 mm eyepiece with a shorter version of the EWV-adaptor.

Alexander van Lemel
Rijssen, Netherlands
September 28, 2010

Comment by Matsumoto/ 管理者のコメント

Mr. Alexnander van Lemel has made his second binoscope, FS60-BINO, successfully after making his first one of TSA102-BINO

I would like to give him a biggest applause on his feat of building two binoscopes using my EMS, conquring the limitted information, and especially the language barrier. The only communicative language tool was English which was foreign language for each other.

I am also very appreciative of his generousity for allowing his full name and the link of his e-mail address appearing on his article. That will greatly help foreign guys especially in Netherlands who have the aspiration to build binoscopes someday.

 オランダの Lemel 氏のTSA102-BINO(未発表)に続く第二作の、FS60-BINOです。 都合により、短筒仕様の鏡筒の入手を諦め、通常鏡筒を工夫して合焦の問題をクリヤーしています。  少し前にBINO製作情報速報にて、EWV32㎜のマイナスプロファイル化をご紹介したのは、この方の 注文でした。この改造EWV32㎜はEMSの短いタイプの31.7AD(EMS-S,M) 用のアダプター;高さ44㎜)と同焦点になっていますので、EMSフルシステムでの光路長は、EMS-S等に対して、わずか14㎜の追加で済んでいます。

FMS-UL(Flexible Mirror System)

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2台のFMSを使用した感想

岡山の「やまと」と申します。市立の天文台をボランティアで管理・運営をやっ ています。このたび、FMSを2台導入させていただきました。また、この2台 とも、松本さんにこちらの要望を聞いていただき、改良を加えていただいた物です。

写真4が、2台のFMSを望遠鏡に装着した所です。最初の予定は、同架してあ る20cmのマックと10cmの屈折に装着する予定でしたが、今は、40cm と10cm屈折に装着しています。

最初にFMSの導入を考えたのは、主力の40cmにはワンダーアイが取り付け てあるので、見学者に合わせて接眼部を動かすことができるのですが、同架して いる20cmマックと10cm屈折は接眼部を動かす事ができなくて、アイピー スをのぞくのが難しいことが多かったことからです。 同架してある2台を使用する時には階段を使うのですが、ストレートでのぞいて も、天頂ミラーを使っても、なかなか上手く目の位置に接眼部を合わせることが できませんでした。また、大人は天頂ミラーがないとのぞきにくい、子どもは天 頂ミラーがあると背が足りなくてのぞけない、という状態もおこっていました。 天頂ミラーを付けたり外したりすることは、見学者が待っている状態では現実的 ではありません。この問題を解決するためには、接眼部を動かす事ができるよう にするしかない、ということからFMSの導入を決め松本さんに相談にのっていた だきました。

まずは1台ということで、FMSを作成していただき、望遠鏡に装着したところ、 大型のアイピースを使用したときや、接眼部にカメラを接続したときには、可動 部を止めるネジが1本では少し強度不足に感じました。しっかりと締め込めば何 とかなるのですが、少しでも緩いと接眼部が動いてしまいます。そこで、止めネ ジを2本にするように改良していただきました。これで、大きなアイピースも安 心して取り付けることができるようになりました。 実際に使ってみると、接眼部が動かせるのは想像以上に便利です。個人で使うと きには、あれば便利、という程度と思いますが、次々に背の高さの違う人が見る 公開天文台では必需品という気がします。一般観望者のために、FMSが普及す ることを願っています。

1台目でFMSの効果が十分分かりましたので、ボランティアの皆さんと相談し たところ、是非もう1台ということになりました(金額的にも2台が限度でした が)。

2台目は、1台目を使ってみて、可動部がもっと丈夫になれば、少し大きなデジ 眼も安心して取り付けられるし、すり割りで締め付けるようにできればテンショ ンも自由に調整できるのでは、ということからすり割り式にできないか松本さんに 相談したところ、「新規の開発になり開発費もかかるがやってみましょう」とい うありがたいお返事をいただき、作成していただきました。

主力の40cmにはワンダーアイとプリズムを組み合わせて正立像で利用してい ましたので、FMSを使うつもりは無かったのですが、松本さんと話をしていると、 FMSは角度によって像が変わる、正立になるところもあるというような話を聞 かせていただき、それはそうか、まず40cmでも試して見ようということで、 2台目のFMSを40cmに装着してみました。そして、実際に使ってみると、 その便利さから取り外すことができなくなってしまいました。

写真1がFMSを装着した所です。背の高い人が見るときには写真2のようにな ります。同じ接眼部の状態で、背の低い人が見るときには、写真3のようになり、 FMSの回転のみで対応が可能です。身長の差で3~40cmぐらいの差ならば このFMSで対応可能のようです。また、写真3のような使い方ができるように なったので、今までは踏み台を利用する必要があった子ども達が、踏み台なしで も見えるようにもなりました。

このようにFMSは大変便利に使えることがわかり、今では必需品になっていま す。 また、副産物として、デジ眼を接続したときに自重でズームレンズが勝手に伸び たりすることがあったのですが、FMSによって接眼部を自由に動かせることか ら、接眼部を水平にすることにより、これを防止することができるようになりま した。個人で写真を撮られる方は、ズームレンズを接続して写真を撮ることはな いと思いますが、子ども達に、月を自由に拡大して自分の思うような写真を簡単 に撮ってもらうためにはズームレンズはどうしても必要でした。何か工夫をしな いとこのままではダメだな、と思っていた懸案をFMSで解決することができま した。

先にも書きましたが、FMS、公開天文台では積極的に採用して欲しいものです ね。望遠鏡に人間が合わせるのではなく、人間に望遠鏡が合わせるようになれば、 天文ももっと普及するのでは無いでしょうか。天文に多くの人が親しんでもらえ るようFMSの普及を願っています。        やまと

9月14日追記:

FMS、快適に使わせていただいています。しかし、使ってみると、もう少し・ ・・という部分が出てきました。

使用しているアイピースが重すぎて、1点での留めネジでは強度不足とは言わな いまでも、もう少し強力に留めたい、という欲求が出てきました。早速松本さんに

相談したところ、「他のパーツも含めて送ってください」とのありがたいお返事 をいただき、早速改良していただきました。

写真7のAのネジは元の留めネジです。これにBと(写真では裏側で見えませんが) Cの留めネジを追加していただきました。これで、なんの不安もなく使用するこ とができるようになりました。また、光路長の関係で延長筒を使用していますが、 この留めネジも①の1本留めから、②を追加していただき2本留めになり、十分 な強度を持たせることができました。不安無く安心して使えることは、精神衛生 上大変良いですね。

このように、要望に合わせて細かな改良をしていただけることは、何にもまして 助かります。ありがとうございました。今後ともよろしくお願いします。

Comment by Matsumoto / 管理者のコメント

やまとさんがFMSを2台ご使用になった感想を投稿してくださいました。 単体のEMSの使用 リポートは、なぜか今までにほとんど集まらなかったので、大変嬉しいご投稿でした。

市販の天頂ミラー(1回反射)を屈折望遠鏡の接眼部に対空型にセットして地上風景を上から覗いて 見ますと、左右だけが逆になった直立像が見えます。このままアイピースを天頂ミラーごと反時計回りに90度倒して 横から覗きますと、像は同じ量だけ同方向に回転し、今度は天地だけが逆の裏像となります。

FMSの仰角と像の向きの関係をご説明しましょう。 FMSも天頂ミラー同様側視も可能で、覗き方はほとんど 無限にあるので、ここでは、目標に体が正対して観察する場合に限定します。

まず、仰角0度(直視)では、お察しの通り、望遠鏡の像の向きをそのまま見せてくれます。 つまり、 使用する望遠鏡の像が元々正立像なら正立像、倒立像であれば倒立像がそのまま観察されます。

EMSの構成ユニットが(双眼望遠鏡用で考えた時の)右目勝手の接続の場合、仰角を0度→90度に 移行させて行きますと、倒立像は反時計回りに180度回転します。 ただし、これは単純に2倍角で 回転するのではなく、仰角設定と像の向きの関係は線形ではありません。

EMSの仰角は90度を越えて最大120度までセッティング出来ますが、この間の像の回転量をご説明すれば、先述のことが理解していただけるでしょう。 何と、(右目勝手で)仰角90度→仰角120度(写真1)までのわずか30度の 仰角変化の間に、像は先ほどと同じ方向(反時計回り)に180度回転するのです。
(念のためにご説明しますが、FMSは自由に左右勝手を往復できる機構なので、 最初から右目勝手仕様とか、左目勝手仕様という区別はありません。(9/1追記))

もう一度整理しますと、
* 仰角:  0度 →   90度   →120度 の間に;
 像:  倒立像 →  正立像 → 倒立像  と、同方向に連続して回転するわけです。 左目勝手の接続では、回転方向がこれと鏡 対称になります。(この特徴がEMS-BINOの像回転の調整に功を奏すのです。)

(*注: 上の『仰角』とは、EMSの最終的な折り曲げ角度のことです。観察姿勢のことではありません。 また、上記例は、望遠鏡自体が倒立像の場合です。)

このことが示唆することの重大性は、今まで折に触れてご指摘して来た通りです。 (使用する望遠鏡の正立、倒立に関係なく利用価値があるのもその効果の一つです。)

EMSは元々、単体の対空視手段として開発しました。 しかし、大方のマニアや専門家の長年の固定観念( 2回反射は像劣化をもたらすはず・・^^;)を払拭するのはそう簡単ではないようで、単体のEMSの存在意義や真価が 十分に理解、認知されないまま、先に双眼望遠鏡用の手段として有名になってしまった、というのが、製作者 当人の正直な歴史認識です。^^;
ただ、こうして、”やまと”さんのような方が極めてたまにでも現れてくださると、またEMSを作り続ける勇気を いただいた気がいたします。

9月14日追記:

やまとさんより、追加リポートをいただきました。

FMSの場合は、EMSユニットの回転部の接続の他に、FMSと望遠鏡、FMSとアイピーススリーブ、 さらにスリーブとアイピースと、接続箇所が多いので、それぞれに配慮が必要になります。

通常より重い物を接続する場合には、それなりの対策が必要になるようです。  全ての接続箇所をすり割りクランプ式にすれば理想ですし、接続径を単純に太くするのも、大きな 接続強度のアップが期待できます。

今回いただいたリポートは、マイナーな追加加工の結果報告でしたが、私としましては、 やまとさんが2台のFMSを継続的に、しかも極めて有効に活用してくださっていることの意義を読み取っていただけたら幸いです。 やまとさんは、FMSを臨時的な対空手段ではなく、望遠鏡に常設 してご使用になっていますが、それは製作者の意図とも合致しています。

残念なことに今日に 至るまで、「天体望遠鏡は直視で見るのが基本であり、天頂ミラー等は天頂付近を見る時に 仕方なく使用する臨時手段である。」という固定観念が望遠鏡業界にもマニア界にも非常に 根強く浸透しています。

私が”汎用ミラーシステム”という名称で仰角可変タイプの EMSを初めて世に送り出してから20年が経過しているにもかかわらず、EMS全体に占める 仰角可変タイプの要望が未だに極めて少ないことには、改めて驚きを禁じ得ません。

一度権威を帯びてしまった固定観念を払拭するのは並大抵なことではありませんが、 少数ながらも、やまとさんのような理解者がおられる限り、諦めるわけには行きません。

 

TOA130-BINO in the sliding roof shelter

 古くなった納屋の建て替えに合わせ、屋根裏に念願の観測室を設置しました。

 TOA130BINOは、高い光学性能、持ち出し可能、シンプルで堅固、操作性に富んで、しかも美しい、これ以上求めるところが見あたりません。朝、観測室に運び込みました。松本さんのロゴ第一号の意味が納得です。夕方、電気工事がが完了したので、写真を撮りました。一部送ります。とても満足しています・・・・・・・・。

 続報 1 2010年9月16日

 BINOを設置した後、月をTOAで見ましたが、イーソス8mm125倍100度の視野は、月全体をとらえることができ、その表面の詳細まで見せてくれました。暑い夏の夜の空気のゆらぎが気になる中でしたが、感動を味わいました。不思議なのは、視界いっぱいの月であっても日周運動によるその動きが気にならないで観察できることです 。自動ガイドの必要性は当面感じません。時々ハンドルを動かすだけで十分でした。どうしてでしょうか。

 また、8月26日にはハワイ島のマウナケア山頂4000m超でスバル天文台を横に見ながら雲海に沈む夕日と、東の空に赤く四角形につぶれた顔を出し始めた満月を同時に見る機会をもつことができました。高山病予防のため、星はオニヅカ・ビジター・センターのある2800m付近まで降りてから観察しましたが、月明かりで、手に届く ような星々を見るまでには至りませんでした。このときは持参したNikon7倍50mm双眼鏡が活躍しました。日本よりさらに南側が観測できるさそり座・南斗六星付近の銀河中心部の数々の星団を流しました。ガイドさんによるグリーンレーザーポインター(星まで光が届いているのではないかと思えるほど強力なもの)で指しながらの 星座の説明も楽しみました。

 9月9日台風の後の好条件で、TOA130BINO+イーソスと12cmF5BINO+EWV32を対比しながら短時間でしたが観望しました。それぞれが特長を生かした接眼レンズとの組み合わせで、観望を楽しむことができました。12cmF5で天の川を流し、木星、M13、M59を確認しました。18倍程度の倍率で、見え方は小さいがF5の明るさが特徴的 なことを再確認できました。M13、M59は、その存在がやっとわかる程度の見え方です。

 TOA 125倍では、木星は衛星まで含めて約1/3の視野に収まっています。木星の縞模様がはっきりと確認できました。M13では、無数の星つぶを立体的にとらえていました。環状星雲M57は、リング状のはっきりとした輪が確認できました。12cmF5に比べ、星以外の宇宙ががどこまでも暗く、暗黒の空間を感じました。

 翌日の明け方3時頃、目を覚ましたついでに、冬見られる星々を確認しました。TOAで見るオリオンは見事でした。12cmF5では分離できない台形4個のトラペジウムがはっきりと分かれ、視野いっぱいの立体的なガス星雲の広がりが見事でした。次にアンドロメダ銀河も確認しました。昨年12cmF5を携えて富士山5合目まで行った とき、月を余裕でとらえることができる75倍100度の視野からは、アンドロメダ銀河の全体像があふれてしまっていた事に驚かされたことを思い出しました。(自宅での観望では小さくしかその存在が確認できません) 我が家からはTOA130 BINOの125倍の視野からあふれるアンドロメダ銀河までは確認できませんでした。条件が良 ければ、力を発揮できるでしょう。両極端な2台のBINOですが、それぞれの特長を生かしながら、時に遠征まで含めてディープスカイを求めつつ観望を続けていきたいと思います。 とりあえず短時間の観察のご報告まで 。

水車

Comment by Matsumoto/ 管理者のコメント;

 納期がずれ込んでしまった、水車さんのTOA130-BINOでしたが、観測所の完成と非常に 良いタイミングで、7月24日に当方でお引渡し出来ました。

 完成された観測室に初めてTOA130-BINOを設置された第一報をいただきましたので、まとまったリポートをいただく前に、水車さんにお願いして写真と第一報の一足先の掲載をお許しいただきました。
 観測室には、奥の12cmBINOと手前のTOA130-BINOが仲良く並び、製作者としても嬉しい限りです。

 追記 2010年9月16日

 水車さんより、早速続報をいただきました。  マウナケア天文台にも行かれた由、羨ましい限りです。 標高2,800もあると、満月近くの月があっても下界では見られないような素晴らしい星空を堪能されたことと察します。
 2台のBINOの特徴を活かしながら、どちらも愛用してくださって、嬉しい限りです。 トラペジウム は12cmF5でも分解するはずですので、倍率等を変えて再度チェックしてみてください。

 高倍率時でもTOA130-BINOの中軸架台がうまく機能してくれているようで、嬉しく思います。 中軸架台も、5台以上作り、1台ごとに改良を重ねて、成果が出たように思います。 スラストベアリングの採用が最も功を奏したわけですが、ラジアル方向の円滑さでは、グリスの粘度が重要だと分かりました。 剛性を気にする余りに、初期にはグリスの粘度を高くし過ぎていたことが、水車さんの BINOの頃までに判明し、最近ではグリスの粘度をずっと低くして、より快適な水平回転を達成しています。 初期の製品をご使用の方で、水平回転がやや渋いとお感じになる場合には、水平回転軸部分を分解して、そこに市販のグリススプレーを適量吹きかけて(混合して)調整してください。

 水車さんには、海外遠征のお疲れが取れる間もなく、タイムリーに続報をいただき、 誠にありがとうございました。 これから、秋から冬の天体をじっくりと観察されましたら、ぜひ”続報2”を お願いいたします。 楽しみにしております。

PRONTO-BINO(7cmF7),Mr.Kato (2010,5/29)

photo 1
photo 2
photo 3
photo 4 (before)
photo 5 (after adjust)
photo 6 (mirror)

テレビュー製のプロントEMS-BINO(7cm F7)が納入されたのが2005/2ですから ちょうど5年強が経過しました。 この間の利用状況、印象などをご報告します。

 テレビュー社では「最もよい望遠鏡とは、最もよく使う望遠鏡」のコンセプトで 何種類もの魅力的な望遠鏡をラインナップしていますが、その初期のものが プロントだと思います。 もちろん大型機にはそれぞれの魅力があるのですが「まずは使ってこそ」 と言う考え方には非常に共感します。

 プロントEMS-BINO導入してから5年の間に体調を崩し、入退院・手術を繰り返して 最終的には人工透析(週3~4回 7時間/1回 帰宅は24時頃)を受けることになりました。 このため星を見ることができる時間が大幅に制限されましたが、 プロントEMS-BINOはその扱いやすさから重宝しています。

【運用】(写真1) 通常は自宅2階の書斎に置いてあり、ベランダ観望に用いています。 EMS-BINOとしてはかなりの小型機ですが、その分、

・軽量・コンパクトなため簡単に準備ができる(文字通り数秒)
・対物レンズなど光学系の温度順応が早い
・鏡筒が短いため狭いベランダでも使いやすい
・光学系全体の優秀さゆえ星像が美しく、かなりの高倍率まで耐える(架台の限界はあります) ことから稼働率は高く、晴れ間があれば直ぐに使えます。
(透析日の就寝時間は午前1時頃ですが、就寝前に見ることもあります)

 ベランダ(南向き)のため視界は限られますが 月、惑星はおおむね見ることができます。(西に低くなると隣家の屋根にかかり見えない) またEMSにより視線が下寄りに向くため、街灯の影響を受けにくいのもメリットです。

【使用アイピースと星像】

 EMS-Lを選択したため2インチアイピースが使えます。 現在、主力アイピースはツァィスの12.5mm(見かけ視界90度)で 笠井トレーディングの2インチマルチショートバローのレンズ部のみを取り付けて 約60倍で使用しています。
このアイピースは合焦位置がかなり対物レンズ寄りなのでバロー(約1.5倍)を 合焦用のエクステンダーとして利用しています。

 このアイピースはナグラー・イーソスなどと比較すると 「シャープさを持ちながらも、やわらかめの像質」の印象です。
周辺まで比較的良像を結び、特にFの短い鏡筒との相性が良いように感じます。

 周辺部を注視すると星が流れているのは判るのですが、 中央付近に視線を置くと周辺部の流れが余り気になりません。 眼の構造のためか、何か特別な設計ノウハウがあるのかは判りません。

 地上を見た際の像の湾曲が少ないのも特徴です。(イーソスは盛大に曲がります) また軽量なのも長所でしょう。

・アイレリーフが短い
・合焦位置がかなり対物レンズ寄りで望遠鏡によっては合焦しない(エクステンダーで回避可能)
・月を見ると若干黄色系の着色がある(もともと地上用の光学系として設計されている為らしい)
なことが難点でしょうか。

 この組み合わせでも、星像は十分満足行くものになります。 イーソス10mmを使う場合もありますが、この組み合わせだと 最早文句を言うところが見当たりません。

他にシュバルツ150SEMS-BINO、Ninja320を現在所有しており 過去には

 高橋:MT200、ミューロン250、FC76、FC100N
笠井:アルター(15cmルマック型マクストフカセ)、スーパービノ15倍110mm双眼鏡
ミード:20cmシュミカセ、40cmドブ
宮内:10cm 45度対空双眼鏡
などを使用してきましたが 星像の気持ちよさではダントツで最高だと思います。

対物・EMS・接眼レンズの優秀さもありますが、 EMS-BINOの特徴である

(1)双眼視
(2)90度対空型による観望時の姿勢の安定
(3)眼・脳へのストレスの少なさ
が寄与しているものと思います。

他に32mmアイピース(笠井見掛視界70度)を使って15倍70mmという中型双眼鏡なみの スペックで使用することもあります。 天の川を流すと楽しいですし、 UHCフィルター等を併用すると、普段と違う宇宙を楽しむことができます。

【構造】 (写真2:フードを収納した状態、写真3:スライド機構・フード延長状態)
・写真をご覧いただければ判りますが「極めてコンパクト」です。  重量こそ単体プロント鏡筒の3倍強の11kg(2インチアイピース・5cmファインダー含む)で、横方向にも大きくなっていますが  「よく使う望遠鏡」の美質は失っていません。

・接眼部はプロント標準の2インチです。
・EMS-Lに長めにアイピースを使用しますので、接眼部が目立ちます。
・相対的にEMS-L部分が重いため、鏡筒前方にカウンターウエイトが付いています。
・左右鏡筒の焦点距離がセンチ単位で違っていたようですが、倍率の違いは認識できません。
・鏡筒は数センチ切断しています。
・架台は標準のHF経緯台です。
・スライド機構はリニアブッシュ式で5年使用しましたが全く不具合ありません。
・鏡筒がコンパクトで軽量なため、この構造で不具合を感じたことはありません。
 (鏡筒の重いシュバルツ150SEMS-BINOでは若干不具合を感じる部分がありますが、 現在の製品では改善されています)

【トラブル経験】

 導入初期の頃ですが 観望中に突然、左右の像に(少しずつ)ズレが生じ始めました。 XYチルト機構で修正したのですがズレが止まらないので明らかな異常と判断し 室内の照明を点けて確認すると 「右側の鏡筒バンドが緩み、鏡筒が少し回転しながらずり落ちていた」ことが 判りました。

 鏡筒をセットしなおして、XYチルト機構での修正分を(見当で)元に戻しました。 レーザーコリメーターでのチェックはしていませんので、どこまで原点復帰できたか は多少不安ではあります。
(BINO MAKING Progress Reportの2010年5月24日説明のような状態になっている可能性あり)

最近の製品はXYチルト機構の原点復帰マークがありますので心配ないと思います。 これ以外には特にトラブル経験はありません。

【調整】

 長期間使用していると鏡筒バンドの緩み等で左右のEMSのスケアリングがずれたり 像の倒れが発生することがあります。 星を見ているだけでは、かなりの誤差になっても、意外と気づかないものですが (眼が修正してしまう) ときどき昼間に調整します。

(1)左右の接眼スリーブが平行になっているか? 高さがあっているか?メジャー等をあてて目視でチェックします。

(2)像の倒れの修正  直定規を対物レンズの前に置いて修正しています。(写真 修正前・修正後)
両目で見ると調整中に眼が修正してしまうので、片目で見るか、デジカメで撮影しながら追い込むようにしています。 (BINO MAKING Progress Reportの2009年12月9日説明を参照下さい)

(3)EMSミラーの清掃

 「EMSには保護フィルターが装着されています。星像への影響をほとんど感じないので 観望中も装着したままにしています。(気になる方は観望時に外すことも可能)

 フィルターのおかげでミラーは5年経過後も新品同様です。 それでもどこからか僅かな埃は侵入するのでダスターで飛ばしています。(写真6 ミラー面 フィルターを外して撮影 小さな埃は付着してますが綺麗です)
私はミラー面を無水アルコールで洗浄した経験はありません。 (詳細手順はホームページのEMSミラーのメンテナンス を参照してください)

【遠征】

 病気の制約であまり遠征には行きませんが、Ninja320とともに遠征したことが数回 あります。(自宅から15分程度で着ける直ぐ近くの場所です)

32cmニュートンと7cmでは比較するのが無茶ですが

・星像が美しい(特に視野の均一性) [但し短Fニュートンでもパラコアを使えばコマ収差はほぼ減殺できます]
・淡い星雲などの識別性能が高い
・実視界が広い
・現地に到着して直ぐに使える(温度順応が早い)
ことでプロントBINOにも大きなメリットがあります。

 流石にNinja320の主鏡が温度順応し、パラコアを併用してコマ収差を減殺すると 天体の細部構造の見え味では勝負になりません。 ただ実視界には大きな差がありますし、大口径機が能力を発揮できる気流の夜は限られますので プロントEMS-BINOの存在価値は消えません。

【5年間使用しての感想】

 プロントEMS-BINOのような小口径のBINOは、コスト面でなかなか採用に踏み切るのは 難しいかもしれません(鏡筒自体がシュバルツ150Sよりかなり高価ですし)。 ただ上記のとおり、小型EMS-BINOであるがゆえのメリットは大きく 十分に存在意義はあると感じています。

ナグラーの言う「良く使う望遠鏡」としての良さを維持しつつ EMS-BONOにより「人間が両眼で、楽な姿勢で見るための光学系」としての長所を追加した 本機は天体望遠鏡の一つの到達点だと思います。

加藤 仁
Hitoshi Katoh

Comment by Matsumoto/ 管理者のコメント;

PRONTO-BINOとSCHWARZ150S-BINOのユーザーでいらっしゃる加藤さんより、 3回目のリポートをいただきました。

 ファーストライト直後の新鮮な感動をリポートいただくのも、もちろん嬉しいのですが、こうして5年間 に渡って愛用されたご感想をいただくのは、また格別の重みがあり、非常に価値あるものです。  体調の管理をされながら、渾身のリポートを作成してくださいました。

 当時の定番だった、リニアブッシュ(リニアベアリング)を使用したスライドマウントは、数年前に卒業した形式ですが、 当時の加工手段の範囲で最大限に知恵を搾った結果のデザインで、懐かしく再会させていただきました。 クランプを緩めると左鏡筒が台座ごと自由にスライドし、好みの位置でクランプするという形式でした。 現行モデルでは、クレイフォード(フリクションドライブ)式により微動送り機構を備えています。

 直定規を利用した像の倒れ調整について、よく理解され、見事に調整しておられます。 当方のサイトでは、手元にあった金属製の定規を置いていますが、加藤さんのように、透明の定規を 使われると、大変見やすいですね。 さすがです。 直定規を水平中心に置くのが難しい 場合は、紙箱の角等を利用した直角アングルを作って水平にしたBINOの筒先に置くと便利かも分かりません。 また、左右の見口より定規の直線性をチェックする際、片眼で交互に(素早く)見る ことも大事なポイントでした。

 ミラーのメンテについて、この場を借りて少しご注意申し上げます。 アルミ増反射コートにつきましては、すでに20年以上の実績があり、当方にある20年以上前のミラーも新品同様の輝きを保っております。 しかし、耐久性を加速実験にて確認したとは言え、増反射銀コートミラーにつきましては、まだ十年、二十年もの経年検証が済んでいません。 従いまして、銀ミラー仕様については、防塵フィルターは付け忘れを防ぐ意味でも、外さずに常時装着してご使用になることをお勧めします。 当方にあります銀ミラーサンプルは、すでに3年を経過して初期の反射率を維持していますが、空調が完備していない、吹きさらしに近い スライドルーフやドーム内での長期保管はお避けいただき、EMSだけは人間の快適生活空間で保管されることをお勧めします。(ただし、ご環境やご都合により、EMSの移動保管が現実的でない場合は、自己責任 にて保管してください。)

 忙しさに紛れて、当方のサイトでは唐突な掲載しか出来ていませんが、リポートの形で加藤さんより、改めて好適な保存版の教材をまとめていただいたようで、大変ありがたく思います。

  加藤さん、これからもお体を大事にされ、時々はこうしてリポートをいただけましたら、大変 ありがたく思います。 この度はまた渾身のリポートをいただき、本当にありがとうございました。

Pinkish Orion Nebular by silvered 20cm-EMS-BINO/ ピンク色のオリオン大星雲 by 20cm-EMS-BINO

Mr.OKAMOTO in Toyama Pref.

      2009年11月14日

【銀ミラーの効果】

 一昨日11時半ころから1時ころ 快晴の空の下、銀コートで武装 した20センチF7屈折EMSツインでM42付近を散策してみました。 EWV32 84度のアイピースからこぼれそうなくらいの星空 (自宅なのでバックは明るいですが)を見ながらふっていくと  おやっ?いつもの見なれたM42と違う、  おおっ!淡く ピンク 色に見える。 眼の錯覚ではないか? 先日月明かりの下で見た 時もやや色がついて見え、もしかしたら とはとは思っていたのですが。 もう一度裸眼で夜空を見上げ、校正をかける。 そして覗く、  やっぱりピンクだ!今までは 明るい緑色やや赤銅色の南の翼 しか確認 できなかったのですが。

 頭、ベールのようなやわらかい北の翼、しっかりとした南の翼、が濃淡 のあるピンク色に発光し トラペジウムの近くは黒く抜け、(ガスを消費した結果なのか輝星の 眩惑なのかさだかではありませんが)、そしてさらに周りはモクモクとした グリーンのガスが取り巻き、一部はやや青みがかってさえ見えます。

 写真は作られた色調であり、本当の姿ではありません。 今見ているそれこそが ”30光年まで近づいた宇宙船からの光景”か、 と思うと感慨深いものがあります。  かつて40センチ反射ツインを作った目的も ”オリオン星雲をカラーで見たい” が目的の一つでした。

 そしておそらく最も早く、両眼視でオリオンカラーを視認できた仲間 の一人になれたことを感謝します。 さらに暗い空に下で検証してみたい と思います。                    とりあえず報告まで

ps

残念ながら燃える木もやっとで、とても馬頭は無理でした クロマコールは片方だけ入れると彩度が上がりました 。両方 ではあまり変化ないような感じです。 もうALミラーには戻れません。(単眼に戻れないのと同じくらい) もう一つ、 言ってみたいですね。 ”もうアクロマートには戻れないなんて”

 最高の贅沢を有難うございました。 でも一人で覗いたのでやっぱり夢ではないか?信じられません 今度フィルターも試してみようと思います。

 もし公開されるのでしたら、もう少し待っていただけませんか。 間違っていてご迷惑をかけてはいけないので、誰かと 見てみないと。 あまりにセンセーショナルなので自分でも 信じられないのです 。夢だったのかも? 当日はカラーの観測像が眼に焼きついて いましたが今は写真のイメージと同化してしまいました。

 今後 干潟星雲や 三裂星雲 それらが実際の色 ピンクや 青が見えることが予想されます。 

      2010年4月18日

【やはり本物でした】

 さて去年メールしました、銀ミラーの色再現性についてですが やはり 間違いないようです。

2月に20センチ屈折ツイン銀ミラー仕様をもって愛知県の元気村に遠征 、 このときはある方はこのようにコメントされました。

( 20cm屈折双眼でのM42を見て) あんなに明瞭に星雲の色を感じたのは初めてとのこと 眼視にはこんな世界もあるのかとびっくりされた方もいましたが、 いや色が着いてるとは言えないという方も。どうも個人差はあるようです。

 そして。なかなか星仲間と観望会を開ける機会がないまま4月中旬 となり、やっとある程度の経験者と合同で観望する機会にめぐまれました http://astrobinobicycle.at.webry.info/201004/article_3.html のとおりですが オリオンはやや傾いていたものの透明度がよく近くに3日月があり、色の校正が 自然にできていた事にも助けられたものと思います。

 見た方の第一声は いやー これ色着いてるやん 。やはりM42は基本 的に 淡いピンクの星雲であることを 認識できるものでありました 3時ころやや透明度が落ちたオメガ星雲、干潟 三裂星雲とも残念ながら 色は感じられませんでした。25センチなら可能かも知れません。

Comment by Matsumoto/ 管理者のコメント;

 去年の双望会は天候に恵まれず、せっかくの20㎝BINO by銀ミラーを 見せていただくことが出来なかったのですが、実はその少し後の11月に、 上記の感動的なメールをいただいておりました。掲載を今日まで延ばした理由 も、上記文章より自明ですが、岡本さんの責任ある慎重なご姿勢がよく表れています。

 この度、岡本さんが満を持して発表してくださいましたが、多重反射実験での銀ミラーの 反射特性がそのまま実証された感じがいたします。長波長域で反射率が落ち込まないことの効果 には私たちの予想を超えるものがあるようです。

 岡本さん、今度は25cmの銀ミラー化が待っていますね。 当方の都合により、今回の銀ミラー蒸着の第3回ロットには 入れられませんでしたが、双望会までには間に合わせたいと思っています。 きっとまた銀ミラー仕様の 25cmED-EMS-BINOが未知の世界を 切り開いてくれることでしょう。