EMS-US SET for the catadioptric use in the making

 EMS-US/UMのミラーが小さいのは、接続間を排除して内部光路長が短く、大きなミラーが干渉するからそうしているのであって、安価にするために小さくしているのではありません。今回のケースのように、シュミカセで延長管を用いるのであれば、EMS-ULを使用すべきと考えますが、代理店経由のお客さんが(コストのためか?)EMS-USに固執されているとのことで、この選択になりました。
 シュミカセ等の主鏡移動方式のフォーカシングで、バックフォーカスを大きく引き出すと、球面収差は容認するにしても、合成焦点距離がさらに長くなる(例えば、F10ならF12くらいになる。)ので、少しでも低倍広角に対応する意味でも、EMS-UL以外の選択肢はないと思うのですが、その辺、どれだけ理解なさっているのか?
 目幅もお知らせいただけず、いきなり、「鏡筒間隔=145にしてくれ」とのご指摘でしたが、ご自分の目幅で固定して使用されるとのこと、目幅をお聞きしたところ、「大体70mmくらい^^;」とのことでした。

2-pcs of EMS-UL for the single use in the making / ハウジングの塗装が完了、即納態勢に戻りました。

 EMSは数社の販売店さんで代理いただいて久しく(20年以上)なりましたが、各社とも従来の天頂ミラー/プリズムが主流の中での取り扱いという点は当初より変わっていません。評価はすれども特殊な製品としての扱いということでしょうが、以前から申していますように、それは、中国古典の”矛盾”そのものと私は考えています。

楚人有鬻楯與矛者。
譽之曰、吾楯之堅、莫能陷也。
又譽其矛曰、吾矛之利、於物無不陷也。

或曰、以子之矛、陷子之楯何如。其人弗能應也。楚人(そひと)に楯と矛とをひさぐ者有り。これを誉めて曰く
「わが楯の堅きこと、よくとほすもの無きなり」と。また、その矛を誉めて曰く「わが矛の利きこと、物においてとほさざるなし」と。
ある人曰く「子の矛をもって、子の楯をとほさばいかん」と。その人こたふることあたはざるなり。😂

Module parts of APM140-BINO are in the processing / APM140-BINO用のフレーム加工中

Inlay processing is done on the dovetail to minimize the “D” (OTA span).
 BINOの実現に必須ではないですが、アリガタに鏡筒バンドの底部がはまる印籠加工をすることで、鏡筒間隔を最小限にします。3mmずつの段差で、合計6mm鏡筒間隔を短縮できます。”たった3mm”ではありません。(EMSの)光路長だと、その√2倍(4.2mm)の節約になります。
(こうした段差加工は、あらゆる局面で効果を発揮します。この程度の加工は、本格的なフライス盤がなくても、ボール盤にXYテーブルをセットしても可能なので、自作マニアにはどんどんやって欲しいと思います。)

実測で、写真の該当部の寸法=63mmでした。
これに何を加えたら”D”(鏡筒間隔)が算出できるか? BINOを検討している人なら、反射的に答えて欲しいものです。 答は、鏡筒径です。APM140の鏡筒径=156mmとのことなので、D=219mmです。

 今まで、海外の方には、EMSしか供給しないことにしていましたが、ドイツから速やかに鏡筒バンドとフォーカサーのエンドリングを送って来られる等、熱心さが伝わりましたので、例外的にBINO製作のお手伝いをさせていただくことにしました。
  中軸架台は、先客さんの予約分を借用したものなので、これからまとめて数台作らないといけません。

Another EMS-UL SET completed !

 同じような写真を投稿し続けていますが、依頼者の方にとっては、それぞれが貴重な出会いの一品、
工程をリアルタイプで投稿し続ける路線を変えることは出来ません。
 ほとんどの方が、こうしてEMSのみを求められてBINOに仕上げておられます。特に海外の方は、言語の壁もあるので、立派なBINOを作り上げる方には敬意を表したいと思っています。
 双眼望遠鏡を自作となると、必要以上に身構える方が多いようです。知識があるほどその傾向が強く、一番(悪い意味で)先入観が根強いグループは、(非技術系の)業界人と自信あふれる古参マニアさんでしょうか。
そうした方々の悪い傾向は、器械的な精度だけに目線が向いて、眼の生理の方に考えが及ばないことです。
 双眼鏡や双眼望遠鏡を製作する時の光軸の要求精度は、確かに角度にして分や秒の世界ではあるのですが、私たちの眼の視軸は、固定しておらず、この記事をモニターで見ているあなたの視線は左右で10度くらい輻輳(より目)していますが、何らの苦痛も感じていないはずです。だから器械的な精度はどうでも良い、というのとは逆で、そのことを謙虚に自覚していないと、完璧な組み立ては出来ませんよ、ということが言いたいわけです。

 もっとも、EMSも発売以来、優に30年以上が経過し、随分と進化を遂げています。特に、XYノブにリミッターをセットしたことで、上記違反者の悪用もほぼ出来なくなっており、上記のような警鐘を鳴らすことすら無意味に近くなっています。 ただ、だからと言って、無理解な汚れた(←観念的に)手でEMSに触って欲しくない、という、何というか、職人根性のようなものが時々出てしまうわけです。

Perfect balance through the stroke (ASKAR-72-BINO)

 クランプフリーで、垂直軸フルストローク、完全バランスを達成しました。
 鏡筒質量が小さいほど、鏡筒が短いほど、また、使用するアイピースの重量レンジが幅広くなるほど上記は実現困難になります。
 カウンターウェイトが不要がミニマムになるようにフレーム構造設計時に配慮しても、さすがにイーソス13mm X2の重量をキャンセルするには、ウェイトは避けられません。さらにこれからセットすることが想定されるファインダー(軽い物が推奨)や傾斜センサーを考慮すると、ウェイトは必須ですね。

EMS-UL SET with IPD-Helicoid in the making

しばらくお待たせしてしまいましたが、着手しています。
ハウジングがこれで払底し、次の方からは、次期ロット分の加工と塗装が完了するまで、最長で2週間ほどお待ちいただくことになります。