~秋のメシエ天体めぐり~
SE115ED-BINOの「ファーストライト」をなんとか無事(?)終了し、興奮冷めやらぬその週末の夜。好天を待ち切れず、前回同様の仙台泉ケ岳にて「セカンドライト」してしまいました。以下レポートします。
2011年7月10日(日)時刻は23時すぎ。出動する時間帯を変え、夜半過ぎからの観望としました。この日は、月齢9近い上弦すぎの月が出ており、光軸調整などセッティングを終えるとすぐに月の観望から開始しました。使用したアイピースは、EVW32mm(25倍)とナグラー16mm(50倍)、それにマルチショートバロー(×1.75倍)です。上弦すぎなので、豊かの海や静かの海などは「のっぺり」として見えていましたが、コペルニクスやエラトステネスなどクレーターの欠け際の方がとても美しく見えました。色収差も出ないので、低倍~中倍率でずっと月の全体像ばかりながめていました。一日のつかれも癒えるようです。朝からうだるような暑さで、仙台の日中は「最高気温」を記録する真夏日。夕方にはざっと夕立もありましたが、もうすぐ梅雨明けを予感する天気でした(翌日、東北地方全体がやっと梅雨明けしました!)。夜半過ぎの到着でしたので、土星はすでに西へ沈んでおり、この晩は観望できませんでした。
前回ファーストライトが、アンドロメダ座M31で終わっていましたので、ここからの再スタートです。はじめ目が慣れていなかったせいか、伴銀河M32やM110が確認できませんでした。しかし、時間がたつにつれてはっきりと見えてきます。(前回の興奮がだんだんとよみがえってきました!)。さっそく、アンドロメダ座ミラクからさんかく座方面へ向かいM33を探します。しかし、なかなか見つからず。「空の状態がよくないのでは?...」と天頂をながめると、ファーストライトほど天の川は見えていませんでした。このBINOなら淡い天体でも見つかるものと思っていましたので、すこしガックリ。気をとり直して、一気にペルセウス座の「二重星団hχ」へ向かいます。「いたーっ!」(あった!という意)。このBINOでぜひのぞいてみたい天体の一つでした。なんと(!)恒星一つ一つに生きているような「ゆらぎ」を感じます。その透明な立体感と星々の色のちがいが、本当に生きているようで素晴らしい眺めでした(まずは目標一つ達成です!)。
双眼正立なので以前よりカンタンに(ストレスなく)天体が導入できます。BINO上部に星図をのせて(赤の)ヘッドライトで位置を確認しながら導入目標を探します。星図はS&Tの「Pocket Sky Atlas」を使用しています。この程度の重さならBINOもバランスをくずさないので、今後さらによい導入方法を探していきたいと考えております。
次に、ペガスス座の「秋の四辺形」へ向います。エニフからその鼻先にM15を発見!再度「いたっー!」。小ぶりな球状星団が分解していてとてもきれいに見えます。片目ずつ目をつぶってみましたが、なぜか片目だけでは分解しないのです(両目で見てはじめて分解!)。松本さんが「双眼視だと2~3割の倍率アップがある」とメールで書いていましたが、これがまさに「双眼効果」なのでしょうか。小型の球状星団などではその効果が顕著です。調子が上がってきたのでそのまま南下し、みずがめ座の「三ツ矢マーク」からM2を経由し、さらにやぎ座のM30へ。いよいよ球状星団めぐり開始!です。
秋の星座では基準とする星が少なく、手持ちの25cmドブソニアンではこの付近のメシエ天体(特に70番代前後)の導入を苦手としていました。しかし、このBINOではEMSと星図によって、見た通りのまま導入ができるのです!まさに鬼に金棒!試しにM72とM73を導入した後、M75とM55を観望しました。さらには、南斗六星の下方に位置するM69~M70~M54まで全部確認できました!西天に沈む直前でしたので、「待っていてくれたんだね」とひとりごと(!)を発し、星団たちと闇夜の対話!です(笑)。
前回、いて座付近で「迷子」となったので、あらためて星図を見ながらの復習です。お気に入りの球状星団M22のすぐ近くにはM28を確認。さらにM8からヘアピンカーブで上がったM20の近くにM21が隠れていました。さらにM18~M17~M16へと遡上し、M11とM28のスモールスタークラウド付近までは迷わず到達できました。ファーストライト時に気づけなかったメシエ天体がたくさんあります。さらには、夏の球状星団であるM56やM92まで導入することができました。前回あまりに興奮しすぎで、冷静な(?)判断ができず、導入していても見えていなかったようです。これで天体導入のレパートリーが一気に加速しそうです!
午前1時すぎ、東天にはもうすでに「木星」が出現していました。BINOを東側へ向けるとBINOの像が少しダブってみえていましたので、あわてずEMSを再調整しました(調整ノブでみごとに像が一致します)。このような暗がりでも落ち着いて望遠鏡が操作できるのは、なにより「鳥取訪問」の成果なのだと思います。松本さんには、光軸調整のみならず素朴な疑問(~森羅万象?)まで親切にご指導いただき本当に貴重な機会でした(これからBINOをつくられる方々は、絶対「鳥取訪問」をオススメします。必須です!)。 ガリレオ衛星が4つ一直線上に並び、昨年まで1本だった木星の中央の帯が2本はっきり確認できます。そんな季節の移り変わりを肌で感じるひとときでした(蚊もかなり増えました...)。
そして午前2時すぎ。東の空からプレアデス星団M45がいよいよ登場し、今晩のクライマックスです。「おーっ!」またもや声にならない深夜の奇声。ずっとこの瞬間を待ち望んでいました。低空なので雲に少し邪魔されていますが、キラキラ輝く「すばる」の星々は、まるで「天使のウインク♪(‘85年/作詞・作曲:尾崎亜美/歌:松田聖子)」。心地よい興奮と眠気やらなんともいい気分で、しばしその光景に見入ってしまいました。多くのメシエ天体を導入し、BINOの操作にも少しずつ慣れてきたところで撤収し、薄明近づく午前3時過ぎに「泉ケ岳」をあとにしました。
セカンドライト中に、松本さんに初めてメールしてからこの観望に至るまでいろいろな思いがよみがえってきました。今回の震災では大切な友人を亡くしたり、実家を失ったりいろいろな経験も思い出しました。なくしてしまったものはもう戻ってきませんが、新たにこのBINOと出会うことができました。これからもこのBINOを通して、素晴らしい人々と出会っていけるような気がします。「今できることを先延ばしせず、今やろう!」という思いが、今回のファーストライトにつながったものと考えております。このような出会いを与えてくださった松本さんに深く感謝し、これから周囲にBINOの素晴らしさを伝えていければと考えております。今後ともご指導よろしくお願いします。本当にありがとうございました
仙台市 渡辺 利明
管理者のコメント;
渡辺さんより、神速の続報をいただきました。 秋から冬の天体までじっくりと観察された感動を素直におまとめくださり、 興奮を分けていただきました。 渡辺さんはBINO初心者を標榜される謙虚な方でしたが、リポートいただいた観望記録を読ませていただくと、少なくとも、ちゃんと年季の入った観望家でいらっしゃったことが分かります。
光軸調整についても、徐々に、途中で再調整される必要もなくなって行かれることと思います。 渡辺さんにはすでにご紹介していますが、EMS-BINOのことを一通り理解された段階で、BIG-BINO(服部さん)のサイトの ”光軸調整”の「5:松本からのメール」をお読みになると、よりご理解が深まると思います。 むしろ上級者になられるほど、剛体としての BINOの光軸精度の方に注意が向くものですが、私たちの眼の自律的な動き(輻輳)こそが桁違いの齟齬を産む”くせもの”であると言えるのです。
渡辺さん、感動的な続報をご投稿くださり、本当にありがとうございました。 またぜひ、よろしくお願いいたします。