SKY90-BINO

 昨年夏、佐治アストロパークの星祭に参加して、初めてEMS-BINOを覗いて以来、その虜になってしまいました。 松本様・山内様をはじめ多くの方から貴重なご意見を頂き、自分に最適のEMS-BINOを持ちたいと思うようになりました。

 私のEMS-BINOのコンセプトは、「優れた光学系を備え、コンパクト且つ軽量であること」です。海外へも手軽に持ち出せることを念頭におきました。 フローライトあるいはEDレンズを備え、軽さと短さを実現できる鏡筒は限られていますが、スペックだけでは絞りきれませんでした。

最終的には、昨年秋に開催された双眼鏡・望遠鏡サミットに参加して種々の鏡筒を覗かせてもらい、また、 オーナーの方々から助言を頂いて、高橋SKY90に決めました。

 三脚を含めた全重量は15.8Kgです。コンパクトなのに全体を持ち上げるとかなりの重量を感じます。 しかし、組み立てた状態でも短い距離であれば無理なく移動することができます。 重量の内訳は、鏡筒(SKY90 2本:EMS含む)6.0kg、目幅調整機構付台座4.0kg、架台(ビクセン経緯台)3.2kg、三脚(ビクセン90cm)2.6kgです。アイピースはテレビュー4-22mmと4.8mmを使っています。  このEMS-BINOはまだ海を渡っていませんが、鏡筒を機内持ち込み荷物とするために、2本の鏡筒を収納するのに最適な袋物がないかこれから探すところです。 このEMS-BINOを持ってイータカリーナ星雲などの南天の星々を見に行くのが夢です。

EMS-BINOから見た昼間の景色

とにかく明るくかつ美しい。

 まるで船底の丸窓から水中の景色を眺めるがごとく、向かいの山の木々の小枝が風にそよぐ様子をありありと 立体的に眺めることができる。 その奥行き感は言葉で表現できないすばらしさ。 媒体としての空気の存在を感じさせる。 正にリアルな立体絵とでも云おうか。

 星空

 自宅は名古屋から30キロ圏にあり、夜空の状態はよくありませんが、自宅の庭から土星、木星、 オリオン大星雲などを見てみました。 木星及び土星はシャープな像で、単眼の望遠鏡だと星が別れて2重に見えると言っていた家内もEMS-BINO だと1つに見えてとてもきれいだと喜んでいます。 22mmのアイピースを使うと、約3.5°の視界となり、先日プレセペ星団と木星が接近したときには、星団と その星団を背景においた木星を1つの視界の中で見ることができ、実にすばらしい景色でした。 また、オリオン大星雲は、20cm反射望遠鏡だとぼんやりとしか見えない部分のガスの濃淡がはっきりと 見えたのがとても印象的でした。M81,M82も確認できましたが、自宅は淡い光の系外銀河などを見るのに 適していません。

 昨年は双眼鏡・望遠鏡サミットに20cm反射鏡を持参して超感動の二晩を過ごしましたが、今年はこの EMS-BINOも持っていって、漆黒の背景の下で星雲・星団を飽きるまで見てみたいと思います。

尾形 誠
Makoto OGATA

Comment by Matsumoto/ 管理者のコメント;

 尾形さんとは、去年の佐治アストロパーク(鳥取県)星祭りと双眼鏡・望遠鏡サミット(愛知県)でご一緒しました。  また、佐治星祭りの時には、当方にもお立ち寄りいただき、いろいろとお話をさせていただきましたので、 SKY90-BINOを作らせていただく上で、事前のコミュニケーションは十分でした。

 尾形さんの澄んだ感性で双眼視の醍醐味をリアルに表現してくださいました。   特に昼間の地上風景のくどいほどの立体感は、実際に覗いた方にしか理解できないものでしょう。この本来の立体感は、 鏡筒が2本の双眼であることと、像が完全正立であることがセットになって初めて達成されるものです。
  天体の場合には無意味と思われている効果ですが、山の稜線から木々をシルエットにして昇る月、月の前をよぎる黒雲、はたまた 明らかに惑星像より間近に見えるシーイングのカーテン等を見ると、肉眼の延長として当然必須の効果が対象を選ばないことを知り、 感動するものです。

  今年の双眼鏡・望遠鏡サミットは尾形さんのSKY90-BINOを含めて、去年以上の双眼望遠鏡ラッシュが予想されます。 今年のサミットには私も全日程で参加する予定ですので、尾形さん、またよろしくお願いいたします。

Shwarz150S-BINO

 Schwarz-Binoを納品頂いて一ヶ月になります。ひょんなことから30年ぶりに天文への興 味が再燃し、思い切っての購入でした。現在は首都圏のマンション暮らしですが、先日帰 省した際に持ち帰り、漸く満足のゆく観望ができましたのでご報告致します。

 帰省先は名古屋から50km圏の内陸部ながら、年々夜空は明るくなってきています。そ れでも3月末の一晩、透明度の高い晴天に恵まれました。使用アイピースは笠井のケーニ ヒ32mm65度(X23・実視界2.8度)、SiebertOpticsのPrem ium18mm75度(X42・実視界1.8度)です。これでもファインダーの必要性 を全く感じさせません。実は勿体ないことに、購入後一度も附属ファインダーもクイック ファインダーも使用していない次第です。

 さて、星図も持たず、うろ覚えながらも「何となく」の方向に鏡筒を向けて導入できたも のを挙げますと、M1、3、35、36、37、38、41、42、43、44、45、 46、47、51、65、66、81、82、101、104、NGC3628、290 3、h-χなど。特に小宇宙たちのおぼろげながらも確かな光芒は、これまでM31や3 3位しか見てこなかった目には感動もので、思わず独り感嘆の声を上げずにはいられませ んでした。まだ小学生だった頃、同じ田舎で、当時はもっと暗かったであろう空に6cm 屈折を向け、どうしても見つけられなかった天体たちが、今は次々に視野に入って来ま す。時間を忘れる、童心に返る、とは正にこのことです。おかげでこの一晩で風邪を引 き、妻にも子供に、更に姉や姪にも感染してしまった訳ですが・・・

 私にとっての双眼視のメリットは、逆説的ながら「望遠鏡の存在を感じさせない」という ことです。「臓器の存在を最も意識するのは、そこが病気になった時だ」という言葉に通 じるものがあるかもしれません。対空式であることが唯一の不自然さと言えば不自然さ で、それを除けば、経緯台のスムーズさとも相俟って「望遠鏡で観望している」という意 識を持つことが殆どありません。恰も肉眼そのものが広角望遠レンズになったかのような 一体感と快感を覚えます。

 見掛けよりもコンパクトであることも嬉しい驚きでした。宅急便が玄関に到着した時に は、そのダンボール箱たちの巨大さに思わず妻と笑ってしまったものでした。それが、親 子3人の荷物にチャイルドシート、ベビーカーも載せた小型2Box車に楽に収まりま す。自宅がマンション9Fのため台車の購入も検討していたのですが、杞憂に終わりまし た。

 30年のブランクは一気に吹き飛びました。自分が今後どれほどのめり込むか、少々恐れ ているところではあります。

渡辺 文彦

Comment by Matsumoto/ 管理者のコメント;

 本日(2003年4月8日)、渡辺さんよりいただいたメールをそのまま掲載させていただきました。 快く承諾していただいた渡辺さんに、改めてお礼申し上げます。

 BINO製作の仕事を始めて、かなりの年月を経、様々なユーザーの方と触れ合うことができ、大変幸せに思っております。   中にはお忙しくて梱包を一ヶ月も解くことが出来なかった方もあり、また、十分に味わう前に、いきなりソース等の調味料をドバドバかけて 食される方ありと、変化に富んでいるのですが、どの方もありがたいユーザーさんであります。

  しかし、何と言いましても、製作者として一番嬉しい瞬間は、使用リポートをいただく時です。
   渡辺さんも長い中断を経て、天文の世界にUターンされた方のようです。 少年期に宇宙へ夢を馳せ、進学、就職、結婚、子育て等の大事のために一時期天文から 遠のき、ある程度落ち着いて来る中年期に入ってまた天文に戻られた、というパターンを勝手に想像させていだだきました。

  私の少青年期には、口径15cmの屈折式、しかもそれが双眼でなど、とても自分の手に届く物とは思っていませんでした。 中年になってから手にする望みの機材は、人生の前半を真面目に努力して来た方、しかも夢を忘れずにいた方に対する天からのご 褒美ではないか、と最近私は感じるようになりました。

 私自身については、BINO作りがたまたま仕事になったために望みの機材に 近い環境にいるだけであって、本来ならとても天からのご褒美をいただける身分ではないと、これまた最近感じるようになりました。

  それにしても、ご理解のある奥様のようで、ご家庭の暖かさが伝わって来ます。

    渡辺家に一層の幸来たれ。

AstroPhysics Starfire 7inch – BINO

Mr.Wengler set to me some new photos.

ドイツのWenglerさんが新しい写真を送ってくださいました。

WenglerさんがAstroPhysics Starfire 7inch – BINO(18cm3枚玉アポ)の 新しい写真を送ってくださいました。 見事の一言です。

Starfire 7-inch-BINO and other BINOs

Comment by Matsumoto/ 管理者のコメント;
 ドイツのWenglerさんより、EMSを使用した3台の自作BINOと、これまた自作のニュートン反射BINOの画像を 送っていただいたので、取り急ぎ掲載させていただきます。
  メールアドレスの掲載の可否やや反射BINOの詳細についてのご返事がまだありませんが、また詳細が分かりましたら追加いたします。 3台の屈折BINOの素材鏡筒は以下の引用文(Wengler氏からのメールから抜粋)の通りです。

”some time ago I promised to send pictures of my binoculars, realized with Your EMS-systems. FinalIy, I will send You fotos of my three refractor binos, 1. AstroPhysics Starfire 7inch, 2. AstroPhysics Traveler and 3. AstroPhysics Stowaway.”

 ドイツ初のEMS-XLはAstroPhysicsの18cmアポに使用されました。

鏡筒の詳細につきましては、 Astrophysicsまたは代理店のHPをご参照ください。

  Wenglerさんのcraftmanshipには感心させれらます。

10月28日追加

  Wengler さんより反射BINOの追加説明がはいりましたのでご紹介します。

The newton is a 10 inch f6, mirrors are from Barry Arnold/Canada and measured on a Zeiss interferometer to have am rms error of 16 and 18 nanometer. The coatings are from Spectrum Coatings. Focuser is from Darastro/Canada. It is special in that You can change interpupillary adjustment without changing focus.

The azimut bearing is a modified Giro 2 mount. Both carbon tubes with cradle have a total weight of only 65 lbs, the base of 25 lbs.

  鏡筒を回転させないのに目幅調整でピントが狂わないようにしています。さすがですね。
 (lbsはポンドの略)  (10月28日)

15cmF5-BINO

 さて、ここしばらく・・・っというより、 ずぅ~~~と晴れ間がなくて、 なかなか、外に双眼鏡を構えられません。 それでも、何とか、晴れ間が多少のぞいたとき、 星空を覗き見しております。

 やはり、15㎝の集光力と、双眼で覗ける迫力は、 何物にも代え難い逸材であります。 もちろん目の錯覚なのでしょうが、 奥行きがあるのですよね。

 それに、星見人の会に来られた強者たちが 声をそろえていった言葉が、 画がひじょうにシャープだとのことです。 EMSの光軸調整にそれぞれが合わせなければならないために、 多少の不便があったようですし、 見慣れるのに多少の時間が必要でしたが、 『これはいいね』の言葉が多かったです。

 はやく、網状や北アメリカ、 それと、射手座付近の星雲を覗き見したいです。(2002,9/1)

                  続報(2002年10月5日)

 台風21号が大気の塵を吹き飛ばしてくれた日に、 笠井トレーディングに発注しておいたスーパーネビュラフィルターが到着。 早速EMSにスーパーネビュラフィルターを装着しまして まったく雲のない快晴の夜空にSCHWARZ150S-BINOを持ち出し、 スーパーネビュラフィルターの威力を体感することになりました。

 アイピースはこれまた笠井のMC広角アイピースEW-25mm/70°【2インチ】  倍率は30倍。 以前から、みずがめ座のNGC7293らせん状星雲を眼視にて目撃しようと、 努力してみたのですが、いかんせん北緯44度17分の地では、 地上高の低い淡い天体は、大気に遮られ観ることは出来なく、 SCHWARZ150S-BINOの集光力を持ってしても、探し出せませんでしたが、 この日は、ほんの数秒で目的の天体NGC7293を導入できました。

 見事の一言に尽きます。 写真で見慣れた『らせん状星雲』が視野いっぱいに広がり、 互いの星雲が重なり合い螺旋の詳細まで確認できました。 それからは『いて座』方向の、干潟、三列、オメガ、各星雲を 確認していき、詳細な構造を確認するに至りました。 圧巻は網状星雲の詳細なフィラメント構造が手に取るように確認できたのは、 背中が震えました。

 フィルターなしでも網状星雲は確認できていたのですが、 詳細なフィラメント構造までは、無理でしたので、感動はひとしお。 また、プレイアデスがある程度まで高くなってきたところで、 フィルターをはずして、観望したところ・・・・・ プレイアデスの周りに、もやもやが・・・・・・・・ 『うっ・・・くも???』 そう思い裸眼で確認しても雲ひとつ無く、 またのぞくと、もやもや・・・・・・・あれ? 今度は、7×50の双眼鏡でプレイアデスをのぞいても、雲は見えません。 そうです、プレイアデスを覆う【プレイアデスの手前とも言われておりますが】 青く淡い星雲が見えたのです。

 大口径短焦点屈折鏡の威力を体感いたしました。 レンズのコーティングにばらつきがあっても(^^;)、 鏡筒の塗装に傷があっても(^^;)、 15㎝の集光力に、なんの支障はありません。 短焦点屈折鏡の色収差は避けられない壁ではありますが、 低倍率での星雲星団観望には、なんの支障はありません。

 これから、冬に向かい、ばら星雲、馬頭星雲、わし星雲を 観るのが楽しみになりました。

 SCHWARZ150S-BINOという触媒をかりて、 夜空を散歩するのが、本当に、本当に、楽しいです。 これに、スーパーネビュラフィルターが加わり、視野が広がりました。

 ただ、難点を申し上げれば、 EMSを鏡筒に繋ぐ支点が2カ所だけというのは、心許ないです。 実際、鏡筒を外に持ち出したときや、 アイピースに目を近づけ過ぎたときなど、EMSが動いてしまいます。 せめて、3点支持で補強をしたいところです。

赤井 宗光
Munemitsu Akai

Comment by Matsumoto/管理者のコメント;

 本日(2002年9月1日)、赤井さんよりいただいたメールから抜粋させていただきました。 快く承諾していただいた赤井さんに、改めてお礼申し上げます。

 写真は、8月24,25日に北海道風連町で開催された”星見人の会 2002 in 風連”で撮影されたものです。 SCHWARZ150S-BINOのフードに、同会で講演された国立天文台長の
海部宣男先生のサインが見えます。

 2002年10月5日に臨場感溢れる続報をいただき、私も興奮してしまいました。    

FL80S-BINO

  EMS-M ユーザーの坂本です。

  私は鳥の観察に松本式正立双眼鏡を使用しております。

  数キロ先の遠方にいる鳥の観察のため、かねてから双眼望遠鏡の必要性を感 じ、以下の3条件を兼ね備えた機種を探していました。・当然、正立像であること。
・アポクロマート屈折で微細な部分まで観察可能なこと。
・アイピース交換式で、超広角アイピースが使用できること。

  しかし、都合良く思うような製品がなかったので、天体望遠鏡を利用して大型 双眼鏡を自分で組むことにしました。

 松本氏のホームページは当時から光軸調整について大変参考にさせていただ き、EMSも使ってみたいとは思っていたのですが、動き回る動物を観察する のに、直角対空型がどの程度使えるのか不安があったので、ポロプリズムを用 いて組んでみることにしました。

  ポロ型地上双眼鏡でまずまずの成果は得られたのですが、光軸を追い込んでい くと、悩ましい問題が発生してしまいました。光軸調整装置の微動にともなう ガタをなくそうとすると微動装置が大型になり、逆にコンパクトにまとめよう とすると脆弱になってしまいます。シフターなどの粗動装置では、アイピース 交換時の微妙な光軸のずれには対処できません。やはりEMSしかないなと思 いました。

 直角対空型に少々の不安を残しながら、松本氏にご相談のメールをお送りしま した。氏は天体門外漢の私にも懇切丁寧にアドバイスをしていただき、「人間 の体は下を向くように出来ている」という言葉でEMSの購入に踏み切り、氏 の適切なアドバイスのもと、松本式FL80S-BINOが組上がりました。架台は業務用 のビデオ撮影用三脚を使用しております。

 使用してみると、やはり視界のクリアーさと鋭さが印象的です。プリズムの影 響がないということはこれほど違うのかと、改めて実感します。直視の単眼倒 立像である程度わかっていたつもりですが、双眼・立体視になるとその差は歴 然としており、知人の言葉を借りれば「いつまでも見ていたい」見え具合で す。直角対空も対象を導入してしまえば気にならず、顕微鏡を見ている感覚で 楽に観察が出来ます。

 超広角アイピースが使用できるのも、市販品にはない大きな魅力です。私は超 広角アイピースとして笠井さん扱いのツァイス12.5mm 90°を使用(合焦の問 題でアダプターを工夫しましたが)しておりますが、約50倍、見かけ視界90° の双眼視は快感です。

 EMSの光軸調整機構は非常にコンパクトかつ合理的で、機材全体の軽量化と 剛性の向上を図ることが出来ました。アイピース交換時の微妙な光軸調整も可 能なので、高倍率をかけることも容易です。プリズム型の地上望遠鏡では80mm クラスのフローライト機種でも60倍程度が限界のように思いますが、EMSマ シンでは100倍程度でも暗くはなるものの、像自体は十分実用に耐えると思いま す。遠方の対象や、羽毛の1枚1枚といった細かい部分の観察を望まれるバー ドウォッチャーにも是非お勧めしたいものです。

 天体観測に使用した際の性能は、先輩のユーザーの方々が詳しくレポートされ ている通りです。

 動物については、群をなしている対象の観察が魅力的です。カモやシギ・チド リ類の群を80°オーバーの超広角でみると、とても楽しいものです。立体感が あり、クリアーな像が目前に広がり、臨場感も抜群です。

 双眼視は見ていて疲れないので、遠方に飛翔する鳥類を見つけやすく、シャー プな像なので、シーイングがよければトビくらいの大きさであれば5キロくら い離れていても、しっかり形が分かります。通常の機材ではとっつきにくい海 鳥も楽に観察できそうです。今から秋のワシタカ渡りのシーズンが楽しみで す。超広角で見るタカ柱はさぞかしおもしろいことでしょう。

 なお、私は双眼鏡をファインダー代わりに取り付け観察しています。直角対空 型による導入の難しさも解決されます。

 今は目幅調整機構がありませんが、いずれは平行移動台座の作製にも挑戦し、 目幅の異なる方にもEMSマシンで見る世界のすばらしさを体験していただけ るようになればと思います。天体関係のアイピースが使用できるのでデジタル カメラでの撮影も手軽です。最近流行のデジスコ(デジタルカメラ+フィール ドスコープ)による写真撮影を考えられている野鳥や動物好きの皆様にも、E MSは強力なパートナーとなると思います。

 最後に、素晴らしい機材と世界を提供してくださった松本龍郎氏に感謝いたし ます。

坂本 泰隆
Yasutaka Sakamoto

Comment by Matsumoto/ 管理者のコメント;

  坂本さんは、20枚以上の美しい写真を送ってくださり、本頁に掲載させていただく分を 選別するのに、随分と迷いました。 広大な大自然を背景に光に満ち溢れた写真集に、自分が引き込まれて行くのを感じました。
  天文マニアは、天体望遠鏡は夜、星を見る道具だと思い勝ちですが、一番身近な天体である美しい地球を眺めないのは、 実にもったいないことであることを坂本さんに改めて教えられた思いです。

  この度の坂本さんの投稿は、バードウォッチャーの方の初めての投稿であることと、 EMS-M(双眼用カスタム仕様)を使用した自作例である点で、非常に新鮮で、新たにご参考にして いただく部分が多いと思います。

  EMS-MはEMS-LとEMS-Sの間にあって、見過ごされやすいようですが、 今回の坂本さんのリポートを機会に、光路長が短く、30mm60度クラスの 2インチアイピースまで使用できるEMS-Mの存在意義を見直してみていただけますと幸いです。

 坂本さんのFL80S-BINOは、外観が美しいばかりでなく、取手、架台、双眼鏡ファインダー等が 合理的にコーディネイトされていることが写真から見て取れます。 また、同時にいただいたメールから、「左右の視野環が完璧に合致した。」 とのことで、組立も完全であることが分かります。事前にポロプリズムで双眼の自作を経験されていたことも プラスに貢献したのだと推察します。

 90度対空が地上風景観察に支障が無いことも、坂本さんが実証してくださいました。  これには、90度対空型に相応しい架台高というものがあるのですが、坂本さんがこれを良く理解されて いることが分かります。  「屈折望遠鏡は長い脚に載せるもの。」という固定観念を持つ方が多いように見受けますが、 直視や45度対空同様に長い(高い)脚に載せてしまっては、90度対空のメリットが活かせません。

 坂本さんのFL80S-BINOは、非常に軽量、コンパクトで機動性に富んでいるようですので、 ぜひ、天体を含めた観測の続報をお願いしたいものです。

10cmF5-BINO

 記念すべきEMS-ELの1号機を送ってもらい感謝しています。 と同時に恐縮もしていました。(プレッシャー?)

 当初予定していたミザール127ミリ鏡筒の幅が広く、用意した架台では作れない ことが判明し、困ってしまいました。

 目幅に関しては、私の目幅が67ミリくらいなので+70ミリで大丈夫だと思ってい ました。製作に時間がかかると思い、EL受注開始の案内前から部分的に作り始め ていて、肝心の鏡筒が後になってしまいました。

 月、惑星の観望が好きです。高倍率での観望はかなり疲れます。低倍率はミヤウチ の双眼鏡です。疲れたあとに双眼鏡を覗くとほっとします。肩から力が抜けリラック スして空を眺められます。それが双眼望遠鏡を作ろうと思ったきっかけです。

 これから長焦点の双眼を作るのにかなり時間がかかりそうです。それまでELを使わ ない手はないと思い、昨年の12月からマゼラン102Sをテストで使っていまし た。

 今回はマゼランをもう1本取り寄せて双眼望遠鏡を作ってしまいました。 長い方は作戦を練り直し、時間が取れるようになってから再開したいと思います。

 当然のことながらマゼランにELを装着すると合焦の問題が発生します。 それは2インチのアダプターを加工してぎりぎりまで薄くして31.7アイピース PL32ミリで合焦し、ヘリコイドにも余裕がでました。 もちろんそのままでは2インチアイピースは使えませんが、 まだ2インチアイピースを所有しておりません。完成のめどがついたら 取り寄せるつもりでした。

 したがって、ELは当分の間はマゼラン双眼で31.7アイピースで使います。 かなり先になると思いますが、長焦点用ができましたらELを移し マゼランにM型を購入して2インチ仕様を考えています。

 鏡筒切断を考えましたが、自分できれいにできないのでパスです。 旋盤がないと難しいでしょう。

 光軸調整はレーザーコリメーターを使用しましたが、やはり目のほうの問題が 大きいように感じました。いつも松本さん、服部さんのホームページを参考に させていただいています。しかし、作業も観望も一人で行っているので、どれくらい 正確にやれているか不安があり、それに自分のアイピースを覗くレベルが高いと は思えないので注意が必要でしょう。

というわけで、今回は予定と違うマゼラン102S双眼望遠鏡ができました。 作り直した部分もありました。調整は済んでいて現在稼動中です。 まあ、2インチのアイピースは次回のお楽しみという事にします。

 最後になりましたが、EMSを使った感想です。 まず単体で覗いた瞬間に気持ちがいいと感じました。 クリアーな正立像が見られるようになったのは実に嬉しいことです。 それに双眼の立体感は素晴らしいですね。 これから星を見る気持ちとスタイルが変わることでしょう。 好きだけれども疲れると思っていたことが リラックスして楽しめる生活の一部になると思います。

 双眼望遠鏡が天文のスタンダードになることを願っています。 これからもよろしくお願いします。それではまた

吉谷 稔
Minoru Yoshitani

Comment by Matsumoto/ 管理者のコメント;

(松本の返信=★);

吉谷 稔 様

 ★ さっそくにリポートをいただき、ありがとうございます。> 双眼望遠鏡の完成(できた)報告。
> 記念すべきEMS-ELの1号機を送ってもらい感謝しています。
> と同時に恐縮もしていました。(プレッシャー?)
> > 当初予定していたミザール127ミリ鏡筒の幅が広く、用意した架台では作れない ことが判明し、困ってしまいました。
> 目幅に関しては、私の目幅が67ミリくらいなので+70ミリで大丈夫だと思って
いました。製作に時間がかかると思い、EL受注開始の案内前から部分的に作り始め ていて、肝心の鏡筒が後になってしまいました。

★ それは大変残念でしたですね。 フード径が137mmを越えるということでしょう か。 少しくらいなら、工夫すれば何とかなるかも知れませんよ。

> 月、惑星の観望が好きです。高倍率での観望はかなり疲れます。低倍率はミヤウチ の双眼鏡です。疲れたあとに双眼鏡を覗くとほっとします。肩から力が抜けリラック ス して空を眺められます。それが双眼望遠鏡を作ろうと思ったきっかけです。> これから長焦点の双眼を作るのにかなり時間がかかりそうです。それまでELを使 わない手はないと思い、昨年の12月からマゼラン102Sをテストで使っていまし た。

> 今回はマゼランをもう1本取り寄せて双眼望遠鏡を作ってしまいました。
> 長い方は作戦を練り直し、時間が取れるようになってから再開したいと思います。

★ そうでしたか。

> 当然のことながらマゼランにELを装着すると合焦の問題が発生します。
> それは2インチのアダプターを加工してぎりぎりまで薄くして31.7アイピース PL32ミリで合焦し、ヘリコイドにも余裕がでました。
> もちろんそのままでは2インチアイピースは使えませんが、
> まだ2インチアイピースを所有しておりません。完成のめどがついたら
> 取り寄せるつもりでした。

★ 繰り出し装置を改造すると、約20mm光路長が稼げます。
     より太く、短いGS繰り出し装置にするとさらに稼げます。

> したがって、ELは当分の間はマゼラン双眼で31.7アイピースで使います。 > かなり先になると思いますが、長焦点用ができましたらELを移し
> マゼランにM型を購入して2インチ仕様を考えています。

> 鏡筒切断を考えましたが、自分できれいにできないのでパスです。 > 旋盤がないと難しいでしょう。

★ 鏡筒の切断は、気長に慎重にやれば、手持ちでの金切りノコでも結構ちゃんと切 れるものですが、SYNTAの鏡筒の繰り出し装置は内径が細いので、鏡筒を切断して単 純にバックフォーカスを延ばそうとすると、ドローチューブ末端の内径で口径がかな りケラレる心配があります。(恐らく、8cm口径くらいになってしまうでしょう。)  繰り出し装置の短縮が良いようです。

> 光軸調整はレーザーコリメーターを使用しましたが、やはり目のほうの問題が > 大きいように感じました。いつも松本さん、服部さんのホームページを参考に > させていただいています。しかし、作業も観望も一人で行っているので、どれくら い正確にやれているか不安があり、それに自分のアイピースを覗くレベルが高いとは 思えないので注意が必要でしょう。

★ ただ、EMS-ELはミラー自体の光軸がほぼ完璧に調整した状態で固定してあるの で、扱いは非常に楽だと思います。

> というわけで、今回は予定と違うマゼラン102S双眼望遠鏡ができました。 > 作り直した部分もありました。調整は済んでいて現在稼動中です。
> まあ、2インチのアイピースは次回のお楽しみという事にします。

★ それは残念ですね。 今はちょっとバックオーダーに追われていて、時間的な余 裕がありませんが、お時間をいただけば、繰り出し装置の短縮加工等、よろしければ お手伝いさせていただきますよ。

> 最後になりましたが、EMSを使った感想です。 > まず単体で覗いた瞬間に気持ちがいいと感じました。 > クリアーな正立像が見られるようになったのは実に嬉しいことです。 > それに双眼の立体感は素晴らしいですね。 > これから星を見る気持ちとスタイルが変わることでしょう。 > 好きだけれども疲れると思っていたことが > リラックスして楽しめる生活の一部になると思います。

> 双眼望遠鏡が天文のスタンダードになることを願っています。 > これからもよろしくお願いします。 > それではまた

★ もったいないお言葉、本当にありがとうございます。
 よろしければ、マゼラン102S双眼望遠鏡の画像を見せて頂けませんか。  HPにユーザーリポート、もしくは画像だけでも掲載させていただければ 幸いなのですが。(ご多忙でしょうから、無理にとは申しません。)   ありがとうございました。


  以上、私の返信文もそのまま掲載させていただきました。
 いただいた2枚の写真共、大変美しい画像です。モノトーンの鏡筒や架台に、 ハンドルのオレンジ色がほっとするアクセントを与えています。
  それぞれの撮影アングルも、この双眼望遠鏡の特徴を親切に見せてくれています。 HPをご参考になったのでしょうか、平行移動台座も見事に出来ていて、機能性が万全であることを 伺わせます。
 フォークの固定ネジも、ノブ付きに変更しておられ、収納運搬にも配慮してあります。
  非常にタイムリーにEMS-EL-BINOのリポートをくださった吉谷さんに、改めてお礼 申し上げます。

125ED-BINO and others / 125ED-BINO他(群馬県、須田さん)

bino-view + EMS-1 on FC50 photo 1

BORG125ED-MTT photo 2

 

BORG125ED-BINO on alti-azi. photo 3

 

100ED-MTT photo 4

 

ronchi photo on FC50 direct photo 5

 

with a diagonal prism photo 6

 

with the EMS-1 photo 7

BORG125MTT(F8)赤道儀仕様レポート

私と松本式正立ミラーシステム(EMS)との出会いは1989年の天文雑誌にそ の 紹介記事が掲載されたのがきっかけでした。初代の「EMS-1」は今でも愛用して います。
当時はシュミカセに「EMS-1」と双眼装置を取り付けて観望を楽しんでいまし たが、 いつかはEMSを使用した松本式双眼望遠鏡(MTT)を持ちたいと思っていまし た。
幸運にも1995年の福島県石川町スターライトフェスティバルに参加したとき に、 東京の遊馬氏が持参されたMTTを実際に覗かせていただく事ができました。
昼間の景色、惑星、星雲星団など、いろいろと観望させて頂きましたが、初めてM TTを 体感した時の感動は今でも忘れることができません。その数日後には松本さん宛てに 「双眼望遠鏡を製作して頂きたい。」というような内容の手紙を出しました。

翌年のスターライトフェスティバルには自分自身がMTTを持参し参加していまし た。
何よりも、当日は松本さんご本人と会場でお会いできまして、直にMTTの調整のコ ツを ご伝授いただき感動しました。完成まで松本さんとの連絡はFAXでやり取りするこ とが ほとんどでしたが、何かと的をそれた私の質問に対して、松本さんはいつも詳しく、 分かり やすく説明して下さいました。何度もやり取りしましたので、それらのFAX紙は分 厚い ファイルとなりました。当時はほんとにお手数をおかけしました。スミマセン。

MTTは私の天文ライフの中での価値観と言いますか、こだわりを完璧に現実化し て くれました。これは私にとって基本的なスタイルで、一生変わらないと思います。

写真①

タカハシFC50にEMS-1と双眼装置の組み合わせ。1993年に撮影したも のですが、 今でも時々これで見ています。
2001年土星食はこれで移動して高速道路のPAで 観望。 何とユーザーレポートを書かれている林氏と遭遇。私がEMSを持っていたことで、 お互い MTTユーザーと判明!こんな場所でお会いするなんて、土星食よりめずらしいこと でしょう。
林氏は土星食を撮像されていました。「今度はお互いMTTを持ち寄って観望しま しょう。」 空が明るくなるまで話がはずんでしまいました。MTTユーザーと話すのはすごく楽 しいです。
ちなみに、2001年の石川町スターライトフェスティバルではやはりユーザーレ ポートを 書かれている井上氏ともお会いできました。井上氏は太陽望遠鏡にEMSと双眼装置 で参加 されていました。素晴らしい太陽像を見せていただきました。

写真②

私の主力機。鏡筒はBORG125ED(F8)です。鏡筒の選定にはかなり迷い ました。 最終的には松本さんのアドバイスもあり、口径、性能、重量などを総合してこれにし ました。 レンズはロンキーテストにかけてみましたが良くできています。
何よりコントラスト が良い ので、淡い星雲が良く見えます。惑星はシーイングの良い日ですと何時間も見てしま います。 MTTの素晴らしさはユーザーの皆さんが既に詳しくレポートされている通りです。  低倍率から高倍率まで、ぞくぞくするほどの宇宙を体感できます。
赤道儀は以前から使用していた三鷹のGN-22を利用しています。常に快適な視 点が 得られるように、鏡筒は回転装置に付けられています。
この回転装置も松本さんが凝 りに凝って 設計されたもので操作感は抜群です。各部には「ここまでやるか!」と言うほどの微 調整機構 が与えられていて、左右鏡筒の平行や回転の中心及びテンションを完璧に追い込むこ とが可能です。
回転リングとEMSボディーの塗装は三鷹の赤道儀の色に合わせて特別に塗装して いただきました。 こんなわがままにも快く応じていただき恐縮致しました。

写真③

GN赤道儀ですと、いささか重量がありまして移動が面倒な場合が多々あることは 否めません。
松本さんにお願いして鏡筒のみを経緯台に搭載する為のアタッチメントを製作して頂 きました。 これにより、稼働率が大幅にアップしました。最近ではこの経緯台仕様で移動するこ とが ほとんどです。惑星の観望だけなら鏡筒回転装置を使わずに、このまま赤道儀に載せ てしまう こともあります。
その場合、右側鏡筒で観望しつつ、左側は直視用に変えてデジカメ 撮影 という贅沢な使い方も可能です。もちろん経緯台でも高倍率でスイスイ追尾すること ができます。

写真④

これは遊馬氏のMTT。1995年の石川町スターライトフェスティバルで撮影さ せて いただきました。レンズはBORGの10cmですがボディーは松本さんの手により 完全に 作り変えられていました。
いたるところに工夫が凝らされ、細部の細部まで美しい仕 上がり。 驚きました。実際に覗いてみると想像以上の圧倒されるほどの臨場感があり、感動し ました。  これでMTTの製作依頼を決心しました。

写真⑤~⑦

参考までに、タカハシのFC-50をロンキーテストにかけてみました。 左は直視、真ん中は純正の大型プリズムを装着、右はEMS-1を装着したものです。FC-50は所謂「お宝」 と言われています。写真では分かり難いかも知れませんが、プリズムを使用しますと 明らかに色収差が発生し、コントラストも低下しました。  松本さんによりますと、プリズムは球面収差をも惹起させるそうです。

須田 信明
Nobuaki Suda

Comment by Matsumoto / 管理者のコメント

須田さんは、この度のSCHWARZ150(F8)の双眼望遠鏡(初期経緯台仕様) のユーザーでもあるのですが、この度は、1996年にお作りしたBORG125ED(F8) 鏡筒を使用した赤道儀仕様の双眼望遠鏡のリポートを先に頂きました。
須田さんは、EMSをその黎明期より支持し、見守ってくださって来た中の一人です。
当時はネットが今ほど普及しておらず、HPも開設していなかったものですから、 ミタカの赤道儀に載った須田さんや遊馬さんのMTTや、初期のEMSであるEMS-1(光学的capacity,光路長は現行の EMS-Mに相当(ただし、EMS-Mは2インチアイピースの一部使用可))をご覧になった方は少ないと思います。
“MTT”というのは、Multi Purpose Twin Telescopes の略で、(「汎用二連鏡筒」 とでも申しましょうか)、双眼視から、二連カメラ、カメラとガイドスコープ、EMSの左右 を交換して、ティーチング用二連鏡筒、等、広い応用を意図して命名したものでした。
そのまま絵ハガキになりそうな美しい写真の数々と、客観的なデータであるロンキーテスト の写真は、まだEMSやMTTを知らない方々にとって貴重な資料となることでしょう。

(2007年12月25日追記) 悲しいご報告ですが、須田さんは 2007年の3月にお亡くなりになりました。心よりご冥福をお祈りします。このリポートは 今でも異彩を放っている価値ある資料です。今後も大切に管理させていただきたいと 思います。

15cmF8-BINO

15センチF8双眼ユーザーの林です。ご無沙汰しております。

 松本さんが製作された中でたぶん一番稼働率の低いかわいそうな15センチF8双眼 だと思われます(^^;

 それでも今回の夏休み、久しぶりに星を楽しんで参りましたので、以下、私どもの 状況とこの日の報告をお届け致します。

 この間仕事が立て込んでいたことと天候の関係でなかなか星を見る機会がなかった のですが、久しぶりに8月14日夜、一人で富士山須走5合目駐車場へ出かけ、星 を堪能してきました。

 今回から車も変わり中古の1BOX車(ライトエース4WD)になりました。後部 座席はアレンジできるため、二本の鏡筒と架台フレームをどこにどう乗せるかでず いぶん悩みました。

 双眼の保管は、自宅の屋根のある車置き場に、スチール製の物置を新たに設置。そ こに他の天文機材とともに詰め込んでいます。ホームセンターなどで売っている除 湿剤を二個置いていますが、しばらくほったらかしていた罰があたったようで、ハ ンドルのリニアブッシュ部(外側)にさびが・・・唖然。アルミもなんだか心持ち 白っぽく見える・・ < かまってあげなくてごめんね。

 さて、須走5合目(標高約2000メートル)では駐車場はほぼ満車。登山の人た ちがほとんどです。一番奥に陣取り、車に隠れるように組み立てました。夏休み中 でしたがこの日は天文ファンは少なくて、ちょっと意外でした。隣で5センチ双眼 鏡だけで楽しんでいらした初対面の山梨県のTさんに声をかけていっしょに15セ ンチ双眼を見てもらいました。

 空は薄雲というかガスがかかることが良くあり、星が見えても決して期待したほど の空の状況ではありませんでしたが、夜半から何とか楽しむことができました。

 笠井EW40ミリでまずM8、M20、M27、M57などを見ましたが、期待以上の見え方で す。空はすっきりしていないのですが「へー、この空でこんなに良く見えてる。あ れい状も形がよくわかりうつくしい」。ここでM57はアイピースをミード8.8ミリに 変えてみますと、宇宙にぽっかりと浮かんだリングが面白くて時間を忘れてしまい ます。

 その他、色が美しいアルビレオ、視野いっぱいに広がりわくわくさせてくれる M31、星星が輝いてる二重星団・・・と、私のような星座万年初心者でも思いつく 天体を次々探しては「おー、これこれ」と楽しめました。

 Tさんのアドバイスで、空の様子をにらみながら網状星雲や7293にも挑戦したら ちゃんと見えました。さすが15センチの口径がものをいい、またコントラストが 優れているのでしょうね。この時はナビゲータが極めて正確に導入支援をしてくれ ました。これも使い出したら止められませんね。

 そして東の空ににぎやかに並ぶ土星、月、木星たち。この夜はシーイングが良かっ たのでそれはすばらしい見え方でした。130倍くらいでは見え具合に何の欠点も 見つかりませんでした。

 惑星の観測は経験が少ないので何がどう見えたというコメントが出来ませんが、こ んなに安定してコントラスト良くきれいに見えてうれしくなってしまいました。T さんは何が見えている何がわかるなどとぶつぶつつぶやきながら結論は「いままで みたなかで一番良く見えた。やっぱり口径と双眼の威力ですね。それにこの望遠 鏡、フローライトだなんだというのは馬鹿らしくなってきた。いいものをみせてく れてありがとう」とのことでした。

 星雲から惑星まで一晩中振り回して使ったのは今回が始めてですが、とにかく二人 とも大満足出来たことをご報告します。

 高度によって光軸が上下にずれる傾向はやはり今回も見られました。40ミリでも その都度調整が必要でした(後に書きましたが今回各部増締めしましたので対処は 次回様子を見てからにします)。

 戻ってからしっかりとメンテしてあげました。架台はウエスにCRC556を染み込ませ て、なでなでごしごしと。鏡筒の平行具合も若干調整し、各部ボルトも増締めしま した。

 湿気が心配でしたので鏡筒のキャップに写真用の防湿剤を貼り付けてやりました。 それにしてもこうして触ってみるとあらためて良く考えて作られた架台であること がわかります。松本さんがおっしゃっていたように対物のあの余分な出っ張りと重い だけの邪魔な部分が気になりますね。あれがなければ確かにすっきりして架台の形 もこれとは違った物になっていたことでしょうね。

以上、長くなってしまいました。

ではまた。

林 行博

Comment by Matsumoto/ 管理者のコメント;

「久しぶりの林さんのリポート、食い入るように読ませていただきました。  状況がとってもリアルに伝わって来て、素晴らしいリポートです。ぜひユーザーリポートにこのまま掲載させていただきたいのです が、よろしいでしょうか。もし、よろしければ、画像を1枚か2枚送っていただけないでしょうか。」

  メールとして文書のみ受信した後、上記の返信で添付画像を送っていただきました。

 謙遜な方なので、”初心者”を自称しておられるのですが、短期間で15cm双眼を使いこなして おられ、なかなかのキャリアと感性をお持ちであることが分かります。

 仰角による光軸ずれの調整方法も、返信でお伝えしておきましたので、今頃はすでに調整なさっている ことでしょう。

 F8鏡筒のセルのフランジ構造は、笠井さんによると、出荷前の光軸調整を容易にするためだそうで、 笠井さんの、製品に妥協を許さない姿勢に感心させられました。

12cmF8-BINO

 EMSbino120L、梱包を解いて初めて持ち上げた時にまずバランスの良さに 驚きました。ずっしりとしていますが重いという感じはなく、胸の高さのHF経緯台耳軸受けに難なく取り付け出来ます。

 ちなみに双眼部本体の質量(鏡筒2本、接眼部、架台)は14.5Kg、 HF経緯台とHAL三脚は7.6Kgでした。 常時は 2階の自室に組立た状態で置いてあり、庭先に出すときは双眼部本体と経緯台 付き三脚の2つに分けて運びますが、数分で運搬組立が完了し、即座に観望 体制に入れます(組立といっても耳軸への装架、とレンズキャップを外すことく らいですが)

 使用前のセットアップに関して、眼幅調整はロックネジを緩めると左側の鏡筒が音もなく極めてスムーズに左右に移動してくれます。

 光軸微調 整はユーザレポートの山本さんの方法、即ち「明るい恒星を真ん中に入れ、右 側EMS第一ミラーユニットのXY光軸調整ノブを廻して左右の像を一致させる →そのまま少し目をアイピースから離し、目の矯正力で感じなかった像のズレ を左右視野円内の恒星が同一位置になるようウインクしながら微調整する」 方法で行っていますが、ゆっくり行っても2分もあれば完了してしまいます。

 通常、双眼鏡の光軸調整は素人の手には負えないと言われていることから考えると驚異的なことです。 観望に際しては大変使い心地のよい操作性のハ ンドルを握って水平から垂直まであらゆる方向に自由に鏡筒を向けられ、かつ クランプを全く必要とせず任意の方向で停止する、しかも耳軸摺動部に適度な 摩擦抵抗があるため、粗動・微動操作共、極めて快適です。

 デザインも秀逸で 各部が堅牢丁寧に加工組立されていて美しく、いわゆる「持つ喜び」を満喫させ てくれます。

 /見え味について、正直言ってこれほど凄いとは思っていません でした。 昼間の風景では、遠くの電柱に取り付けられている装柱材のボルト やナットがくっきりと手に取るように判り、碍子の周りにはアクロマート特有のま とわりつくはずのハロは殆ど見えません。しいて重箱の隅をつつけば色つきは あることはあるが邪魔にはならないと言ったところでしょうか。 碍子の表面で 反射する小さな光の点は陽炎に揺らぎながらあくまで極小点に収束しているのが判ります。

 花や木々は微妙な色合いや水々しさが眼前に広がりいつま で観ていても見飽きません。経緯台の操作感が抜群なので飛行中の鳥を追 跡することも容易で、旋回しているトンビの羽根の美しさにハッとさせられるこ ともあります。

 最初に観たのが昼間の景色で、既にその時この双眼望遠鏡 の並々ならぬ能力を予感していましたが、星空についてはさらに凄いもので した。視界中心の恒星像を見ながら近距離側から無限点へ静かにピントを追 い込んでいく・・・深く小さな光点に収束して恒星の輝きが頂点に達し、目が痛 くなるほどです。

 月はまるですぐそこにあるかのような臨場感、明暗と細部の 様子が見事なクレーター、二重星団は視界いっぱいに色とりどりの微恒星が 広がり例えようのない美しさに目を奪われます。 現在ペアで所有している唯 一の2インチ低倍率アイピース(WideScan30)による超広視界双眼視、そこ にはもはや「筒から覗いている」という感覚はほとんど存在せず、漆黒の宇宙 空間に漂う船から窓の外をみていると言った方が良い世界です。

 90度対空型 なので低空の星空を観望しているときは顔は下を向いているのですが、アイピ ースの向こう側の宇宙空間に落ちそうな錯覚に陥ることすらあります。

 SCHWARZは「大口径、眼視専用、低廉のアクロマート」と言われているようです が、私の観た限りでは「値段の割によく見える」などという低いレベルでは無さそうです。もちろんその性能を遺憾なく発揮してくれるのは像質劣化の無いE MSの底力があるからだと思います。双眼視による宇宙、その臨場感を一度 味わうと単眼の世界には戻れないかもしれません。「両目で観る」光の量は 単眼の2倍ですが、頭の中で処理され感覚として認識する情報の広さと深さはその何倍にも達するのではないか・・と思います。

Osawa

Comment by Matsumoto/ 管理者のコメント;

 大沢さんは、この度のSCHWARZ120(F8.3)双眼望遠鏡がお初めてにもかかわらず、 最初から難なく使いこなされ(エンコーダもご自分で取り付けられました)、 持ち前の豊かな感性で、痒い所に手が届くリポートを次々に送ってくださっており、 この度、正式にまとめてくださいました。

 大沢さんは、前回のSCHWARZ150(F8)の初期仕様の受注の時に、唯一の12cmとして ご注文いただき、こちらの事情で随分と納期をお待ちいただくことになってしまいました。  もともとは、SCHWARZ150(F8)の初期仕様の縮小コピー的な物を計画していたのですが、 その後にF5タイプで成功を確認した新しい方法を採用しました。