BORG150ED-BINO

 松本様、山内様こんばんは、村井です。@’04.10.18 購入までの経緯と、思いと、タイミング、、いろいろありすぎてうまくお伝えできませんが、 とにかくサミットにて、のっけから最高の一晩でした、有難うございました。  長文、雑文失礼につき、暇なときにでも読んでくださいませ。。。^。^/

【ボーグΦ150ED双眼、製作有難うございました】   ほんっとうに最高です、感謝いっぱい、大感激\^o^/!!  サミット間に合った上に、満天の星空のもと、ファーストライト成功!!   こんなことってあるのでしょうか、幸せ感じています。

  お世話になりました筆頭;松本様、製作と我侭聞いて下さりありがとうございました、  製作運搬他、親身にアドヴァイスいただきました山内様、ありがとうございます。   山内様の初期後押し無ければ、やはり気後れのままだったかもしれません。

 山内様からご紹介で当日にお世話になりました、服部様、岡本様、、  暖かい皆様のお力添えで、無事、ファーストライト成功の運びとなりました。  まずは最初にこのことをお伝えしたいと思います。   ありがとうございました、そして、これからもご指導よろしくお願い申し上げます。

【サミットにて】   そもそも松本様には今年2月に初めてTELして以来、お世話になりっぱなし。  当方素人ゆえに、惑星、星雲あれもこれも見たい、と多分訳もわからぬご迷惑な相談に、  愛想尽かさずいろいろお付き合いいただきました。    (見捨てないで下さったのが不思議なくらい、、、)

 なおかつ、作成日程ご無理お願いして10/16 15:30、  スターフォレスト御園、双眼鏡望遠鏡サミット本番の受付開始直後に、  宅配にて現品現地で受け取り成功となりました。  (ここでは詳細述べませんが、ある事情=仙人殿HP参照で、運搬編にご登場いただく予定の山内様、筋金入り潜水艦乗りの山内様 に自称15年アマチュアダイバーの村井は、強い興味を抱くのでした)

  少し心配しました。私自身が自分の機材持つのが35年ぶり、ましてBINOとなると、  全く見たこともない初物難物で、はたして夜までに観望できる状態になるのか、、、?。   もちろん私ひとりでは無理なわけでして、仙人山内様口利きバトンタッチの、  服部様→岡本様ご指導で組み立て、調整ご教授いただき、素人ゼロ号→1号として、デビューする ことができました。

 p.s 現地に向かう途中のカーショップでバッテリーと配線を購入し、到着後に配線を仕上げ、    山内様ご紹介の横田様よりあらかじめ購入の露避けヒータと組み合わせました。    バッテリ充電状態も間に合わせにもかかわらず明け方4:00ころまでは作動していました。    目的のひとつでしたので、濡れずに機材回収できたのも嬉しいです。     (もっとも、ある程度風もあって、ヒーターの必要もなかったようですが。)   

【ファーストライト インプレッション】  すみません、素人ゆえまっとうな言及はご容赦お願い致します。
   @アイピースは(トラ殿の強いお勧めもあって)N4-22mm
   これも、先週届いたばかり。
    ちなみに服部様にからかわれ?ました『これ買ったら、もう上がりだよ!』

  ①.練習;山の稜線の鉄塔@開梱組み立て終了、16:30~
     松本様HPの調整法、服部様からのバトンタッチ岡本様ご指導で鉄塔を相手に四苦八苦、 本当に調整できているのか定かではありませんが、手前の山の木々とのすさまじい限りの立体感に しばし唖然、、、というか、断然気に入った次第です。天体望遠鏡って、定義は何なのでしょうか、、、。 帰宅後、じっくり調整取り組みます。それにしても、眼幅調整スライドブッシュのなんとスムースな ことか、、、。ここまでスムースだとちょっと調整狂うと×になる?、、、なんて余計な考えが頭 をよぎります。

  ②.星空;天の川の存在を久しぶりに意識しました@18:00~23:00驚いたのは、 かろうじて自分で導入できた2重星団とアンドロメダ。これはもう写真のレベルに近い!!眼視ではどうやっ ても光量蓄積のできる写真と比較しようもないのでしょうが、つぶつぶの星が不思議な立体感、 皆様のHPなどでお聞きしていた通りの迫力を感じました。 M31も、しっかりした腕の広がりと伴星雲の星雲らしさをもって、素人なりに納得のいくひと時となり ました。

  ③.あれ?夜半過ぎころからか見にくる方のなかに調整の狂いを指摘される方が数人、、、。      私にはなんとも、、、?でしたが、気がついてみると左右EMSの間隔が斜め、、。EMS固定ね じ2箇所は締まっていてOK、暗闇では気付きませんでしたが、明けてから鏡筒本体側ねじが緩んでいるの に気が付きました。締め付け後、ご指摘なくなりましたので、多分大丈夫なのだと思います。

  ④.夜半過ぎ、オリオン。上記の状態にもめげず、というか、私の目幅がN4-22口径いっぱい 近くまで狭くて、固定OKの左に対して、緩みのある右が接触して、結果EMSの倒れが無かったのかもしれ ません。上がってきたオリオン大星雲を3:00すぎまで堪能しました。本当にすごい光景です、 鷲のくちばしも羽の根元の模様も、羽の先も、言い古された表現=鷲そのものの姿で、魅了されてし まいました。
  これも、不思議と星やガス部分の立体感をはっきりと感じるのです。眼の訓練無しで、 なおかつ写真見て妄想のみ育ててしまった私の目にすら、何の言い訳の必要もないほどの圧倒的説得性 で迫ってきます。(明日持って帰って、かみさん&子供に見せるのが楽しみです)
 木々の陰から上ってくる瞬間の立体感に始まり、天頂に近付いてからは、イスに座っての楽チンさ含め、 予想外の冷え込みに震えながらも臨場感楽しむこと4:00すぎまで。。(参加前はせいぜい2:00すぎ に惑星見て寝るつもりでした)

 ⑤.同夜半過ぎ;土星
      気流が悪いのは感じていましたが、ものすごく悪かったようです。      雲こそまったくない晴天なるも、ベテランの皆様ですら、こんなに悪いのは、       本当に初めて!!と言われるくらいの状態だったようです。       確かに土星見ても、環こそ認識できるものの、感動無し。      ある人いわく、空に卵があると、、、。      そういえば星像も点ではないような。、、、。←^^;わかってませんね、、、。       皆様に慰められました、せっかくのアポなのに残念だね、、、、。      そう言われて、ますます、当所目標の惑星、月見る日が楽しみです。

  ⑥.すみません、機材紹介
    口下手ゆえ、お二人のこと、うまくお伝えできませんでした、、^^;

 以上、またまた、うまいことお伝えできないのが心残りですが、寝不足解消にいたっていないので、 申し訳ございませんが、これにて失礼致します。 本当に、有難うございました。

村井 聡太
Sota Murai

Comment by Mtsumoto/ 管理者のコメント;

 村井さんより、ご帰宅直後でお疲れにもかかわらず、さっそくに詳細なメールをいただき、 当コーナーへの掲載も快諾してくださいました。
 BORG150EDは、BINOの素材鏡筒としては鏡筒最大径(フード、セル部径)が小さく、軽量でもあり、好適な鏡筒なので すが、やはりこの口径でEDとなりますと、相対的にはリーズナブルな価格設定とは言え、やはりハードルは結構高い ようで、今回の村井さんのBINOで初めて採用させていただきました。
  フード径、鏡筒径共、SCHWARZ150Sとほぼ等しいので、同規格の台座が利用でき、好都合でした。 ただし、F6.7と、焦点距離がF5の(SCHWARZ)より25cmほど長いことで重心位置の設定に少し勝手が異なり(鏡筒を 手前に引く必要あり)、操作ハンドルと接眼部の干渉等があって、どたんばで慌てました。

  サミット会場に直接発送という綱渡りをしてしまいましたが、BINOは無事届き、好天に恵まれ、 会場では双眼エキスパートの方々の親切なアシストもあり、村井さんはBORG150ED-BINOを立派に組み上げてくださり、 感激のファーストライトを体験されました。 これは製作者としてもこの上ない幸せです。
  このBORG150ED-BINOが村井さんの天体観測の友として、末永くお役に立てることを願っています。
 そして、また後続のリポートをいただけましたら幸いです。
                  ありがとうございました。    

15cmF5-BINO in Australia

Milky Way by Mr.Okada
SHWARZ150S-BINO
C.Neat by Mr.Okada

 今晩は、ID21番のトラです。今日、オーストラリアから帰国いたしまし た。明日からアメリカ出張なので、とりいそぎレポートいたします。

 今回は、東京のコプティック星座館が企画したツアーに参加し、2004年5月15日から 23日までの日程で、2つの彗星と南天の観望に行ってきました。観望場所は、ニュー サウスウェールズ州クーナバラブランという、サイディングスプリング天文台のある 村の飛行場と競馬場です。飛行場に設置したシュワルツBino150Sの写真を添付いたしま す。

 機材は、シュワルツBino150S、ニンジャ320、ニコン18×70IF、ニコン7×50SPで、これ らを仲間と分担して持ち込みました。写真用の機材は諦めました。

 彗星については、地平線にあるユーカリの枝葉の真っ黒なシルエットの間から、リニ ア彗星がその筋模様の尾や青緑色のコマを見え隠れさせながら没していく様子を見る ことができました。立体感のある地上風景と彗星とを、同時に自然な美しさで観望で きたのは、空の透明度と15cm双眼の組み合わせによる幸運でしょう。

 天の川は、非常に明るくて星の密集度も高いため、どの部分がカタログ番号を付され ている星雲星団で、どの部分がそうでないのか区別するのが、時折困難でした。濃い 銀河の中に濃淡・大小さまざまな暗黒星雲が浮かんでいる様子を広視野の双眼で見る と、(星空を背景に星雲星団が浮かび上がってくるという通常の見え方とは異な り、)深い凹凸のある影を伴った面のように見えました。

 もちろん、個別の星雲星団についても、極薄緑から淡い小豆色のグラデーションと暗 黒の襞のあるエータカリーナ星雲、不気味な泡状の暗黒部分があるタランチュラ星 雲、中心まで完全に分離している(シンチレーションが感じられない)満月サイズの オメガ球状星団、ディスク状の中心を持つNGC104球状星団、圧倒的星数のNGC3532 散開星団、内外に多数の小さな散開星団が散らばる大マゼラン銀河、暗黒帯内部の濃 淡までみえるケンタウルスA電波銀河、フィルターなしで無数の微光星を背景に浮か ぶ網状星雲、UHCフィルターで淡い複雑なフィラメント構造を見せるガム星雲、 等々、写真のイメージをはるかに超える生の姿を擬似立体感をもって楽しむことがで きました(とはいっても、一番楽しめたのは、180度に広がる巨大エッジオン銀河、 つまり天頂にバルジのある天の川の肉眼視でしたが)。

 幾晩にもわたって徹夜で観望をするので眼の疲労が心配でしたが、アイリリーフの長 いアイピースを使っての双眼観望、毎日のビタミン剤摂取、昼間の爆睡により、ある 程度まで眼の疲労を軽減することができました。

 普段、見慣れない南天では、エンコーダによる導入・対象確認が大変役立ちました。 知らない土地でこそ、カーナビも活躍しますよね。

 ところで、海外への運搬方法については、今年のお正月から松本様にご相談にのって 頂きながら検討を開始しました。国内の移動観望で何度も試行錯誤を行った末、今回 実施した主な工夫は以下の通りです。

(1)鏡筒のラッパ部分と合焦装置との間で鏡筒を分解し(ここが最も光軸が狂うリ スクが少ない)、また、フードを巻きつけ式のものに交換して、鏡筒長を短縮する。

(2)合焦微動ハンドルの側面の抜け止めネジを緩め、微動・粗動軸を合焦装置から 分離し、ショックを受けた場合の微動・粗動軸の狂いを防止する。

(3)三脚と三脚架台をぎりぎり使用に耐える程度の小型軽量のものに交換する。

(4)鏡筒を固定するプレートの耳軸を、HF経緯台のフォークの耳軸受けで締め付 けた上で梱包し、耳軸方向へのショックを受けた場合のプレート耳軸とフォークの両 方への損傷リスクを軽減する。

(5)全てのネジの上にテープを貼りつけ、振動によるネジの緩みや紛失を防止する と共に、予備のネジと軽量な工具一式を持って行く。

  今回は、松本式双眼望遠鏡をオーストラリアに持ち込めたおかげで、彗星や南天を より美しくリラックスして楽しむことができました。このような機材を製作していた だきましたこと、心からお礼申し上げます。

「トラ」
Comment by Matsumoto/ 管理者のコメント;

「トラ」さんより、オーストラリア遠征のリポートをいただきました。
  写真から、現地の広大さを感じますが、実際に体験すれば、こんなものではないのでしょう。

  濃い銀河の中の暗黒星雲等の描写を読まれ、居ても立ってもいられなくなった読者の方も多いのでは、と想像します。
  私も「180度に広がる巨大エッジオン銀河」と言う体験をしてみたい!

  オーストラリアまでの150S-BINOの運搬にも周到な準備をされました。 最初から搬入を諦める方も多いと思いますが、 見事な実例を作ってくださいました。

日本人「十万分の一の肖像」

今日、知らない方から大きな封筒が届いた。確かに宛名、住所は私に間違いない。
表に、「写真在中」と「折り曲げ厳禁」 のスタンプが押してある。首をかしげながら開封してみた。
写真と添付文書を見て、直ちに事情を理解した。

添付文書

日本人「十万分の一の肖像」

1999年5月から始まった私の自分探しの旅も2001年2月に最後の1200人目の人を東京で無事に撮影して 終了となりました。 その後、膨大な量の現像、プリント作業を2002年の夏までかかって写真を仕上げました。 撮影を快く受けていただいたみなさんに出来上がったプリントをお送りすると言っていましたが、やっと 準備が整い発送する事になりました。

多分写真を写された事さえ覚えていない人もいるかと思いますが、私が感謝の気持ちを込めて焼いたプリントです、 どうぞご笑納ください。

この写真が写真集というまとまった形になるのか今の私には判りませんが、みなさんの お陰でとても素晴らしい経験ができました。

本当にありがとうございました。

河野公俊

東京都***********

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写真家の河野さんは、上記の通り、全国を単身で行脚して1200人のポートレートを撮影されました。 原画は階調が豊かで非常に美しい写真ですが、デジタルに忠実に再現できませんでした。

数年前の写真に感慨がこみ上げました。

現像、プリントにも相当の歳月を費やされましたね。1200人それぞれの人生、想い、また、その編集に携わった 河野さんの情熱に思いを馳せると、胸が苦しくさえなります。

河野さん、ご苦労様でした。 写真集が一日も早く発行できますように、お祈りしています。

ED115-BINO

1.使い勝手編

 1-1.光軸調整:

   初期組み立て時に、左右のアイピーススリーブが平行になるよう EMSを(結構適当に)装着し、いきなり恒星を200倍で見ました。   それでも左右の像は一致しました(もちろんXY調整機構は使用しましたが)。 結構心配していたのですが何の問題もなし。ただその後昼間に見たら 少々狂っていました。やはり基本に忠実、昼間にあわせたほうがいいですね。

 1-2.合焦部分:

   第4世代用の合焦装置、使いやすいです。
   動きが渋めなので高倍率での調整時にはさすがに像は揺れますが、ガタや   バックラッシュが全くないのでピント合わせ自体はしやすいです。
   しゅう動抵抗が大きいので、粗動のほうはあまり使わないことが前提に なっているみたいなのですが、アイピース交換時に大きく移動させるときは 微動の調整範囲内でも、微動で送るより粗動の方が使いやすかったです。
   ただ大きく動かすのは、ピント位置が他と大きく異なるNagler22mmと他の アイピースと交換するときだけで、その他の場合は一度バックフォーカス を調整したらその後粗動を使うことはないです。

 1-3.目幅調整:

   スライド式の目幅調整ですが、簡単に目幅が合いました。 ヘリコイド式と、どちらがいいかは一長一短ですが、私はスライド式で十分満足です。

 1-4.全体的に

   何のストレスもないです。長年の工夫がたくさん反映された結果だと 思います。すばらしいです。

2.見え方編
 (空は街中、4.5等が見えるくらいの感じです。)

 2-1:低倍率

   M35,M41,M42,M44,M45などの大型の星雲星団を見てみました。   アイピースはNagler Type4 22mm(30倍)とPENTAX XL40mm(17倍)です。    手持ちの小型双眼鏡と(当然)全く違う光量で、街中でもこれらの   星雲星団は見て面白い程度に見ました。
   90°対空双眼なので本当に楽に長い間のぞけます。ひとたびのぞくと、 気づくと結構長い時間がたっていたりして、びっくりします。
   早く夏の天の川を見てみたいところです。

 2-2:高倍率

   土星、木星を見てみました。
   アイピースはMeade UW6.7+TeleVue バロー2.0x (200倍)です。    シーングは何とかこの倍率が使える程度。
    像は感動ものでした。    単眼に比べ像劣化が全くなく明るくなっている像です。しかも単眼より   同じ倍率でも大きく見えます。特に木星は200倍なのにとてつもなく大きく見えました。
   大きな望遠鏡+双眼装置でも同じような像は見えるのかもしれません。   しかし温度順応時間が短く、シーングにも強く、EMSアポ双眼のほうが断然 お手軽のようが気がします。
   リバウンドを考えながら移動させなければいけませんが、HF経緯台でも この倍率なら追尾はそれなりにできます。
   スケッチや写真撮影を行わないのなら、惑星用にアポEMS双眼お勧めです。   (でもこれで追尾できるようになると、さらにいいんですけどね。)

 2-3:地上の風景

   ここもアポ双眼が得意なところです。像は一言でいうと「完璧」です。   ものすごくコントラストが高く、明るいです。100mほど先の木を見ていたの ですが、枝の前後関係や青空との対比がものすごくよく見えました。

3:その他

   鏡筒はいろいろ迷ったのですが、自分としてはいいものを選べたと 思います。
   集光力は大型アクロに負け、高倍率の像は長焦点アポやフローライトに 負ける鏡筒ですが、この鏡筒はかなり高いレベルでそれらを両立していると 思います。
   大きさ的にも小型と大型の間ぐらいです。海外遠征に持っていくのは無理 でしょうが、平日に30分だけ見るために外に出そうと思える大きさです。当初は中途半端になるかと思い、 小型の高倍率用と大型の低倍率用を1組ずつそろえようかとも思ったのですが、 見事にこれ1台でそれぞれの役割を果たしてくれそうです。
   究極を求めず、1台であれもこれもとやりたい人にはお勧めです。

4:終わりに
   松本さんへ。忙しい中質問や仕様変更にすべてお答えいただき、 これだけのものを作製していただきありがとうございました。

村山 義彰
Yoshiaki Murayama

Comment by Matsumoto/ 管理者のコメント;

 村山さんより、詳細、的確なリポートをいただきました。村山さんは去年の望遠鏡サミットでも お会いしましたし、他の会場等でもEMS-BINOを何度も見てくださったようで、素早く使いこなしておられる ことに納得ができます。  最初にED115でのご相談を受けた時には、正直、やや中途半端なご選択のような気もしたのですが、実際に 出来たBINOを覗いてみて、新鮮な感動を覚えました。BINOが完成すると、まず店先から地上の風景を見るのですが、 そのコントラストの高さと視野の明るさは特筆物でした。  口径115と聞きますと、1が二つ続く響きからか10cmクラスであるかのような 錯覚に陥っていたのですが、よく考えてみますと、ほぼ12cmであり、実効の集光力は恐らくアクロマートの12cmを越えて いると思われます。
  鏡筒の短さに加えて頭部の軽い鏡筒で、重心をかなり手前に持って来ることが出来、天頂と水平に向けた時の接眼部 の高さの変化が非常に少なく、快適な操作性を約束します。  オリジナルの合焦装置はSCHWARZ-SタイプのBINO用に確保しており、手作りで製作が追い付かないもので、正直使いたくなかったのですが、村山 さんの熱心さに負けました。^^;   標準の繰り出し装置でも11cmくらいの口径は確保したと思いますが、やはりフル口径を確保された村山さんの判断は正解でした。   より完璧を目指すことで、1台ごとの製作時間が延びる一方ではありますが、EMS-BINOの進化のためにはユーザーの方の激励に励まされきながら前に進むしかないと思っています。

(蛇足ですが、ED115は鏡筒径が140mm(SCHWARZ150に匹敵)もありますので、HF経緯台は幅広改造仕様が必要です。)

15cmF5-BINO

In December time has come to test my improved bino under the alpine sky at temperatures down to minus 15/20 degrees. Dear Mr Matsumoto let me tell You my summary experience: The Schwarz Bino works simply fantastic. I discovered a new night sky compared to my old 26×100 Miyauchi. Only a few examples under 6,0 mag conditions:

– The Orion nebula at 30x like in good photos with undescribable details
– The E and F components of Trapezium no problem at 90x
– The Flaming Tree Nebula with dark strunk and branches at 30x
– Open clusters M 35, M 37 and others like bee swarms at 30x
– The neighbour cluster of M 35 NGC 2158 at 60x at the beginning of resolution with averted vision
– Eps Lyr already split at 90X under good seeing conditions
– M 81 with dark lanes at 60x
– NGC 891 with central bulge easy with direct vision at 60x

Though I know the bino is a richfield instrument, I had stunning views to Saturn. Using a fringe filter I saw at 150x the planet with six moons, the Cassinidivision roundabout an equatorial stripe and a brown south polar region.

Dear Mr Matsumoto, let me finally say: Though I had to do some (in my opinion necessary) improvements, it was absolutely worth to wait for and acquire Your new Schwarz Bino. It opened me a new dimension of binoviewing. Thank You once more for Your efforts.Best regards
Klaus Zott

Comment by Matsumoto/ 管理者のコメント;

 完成したBINOの着荷直前にバイクの転倒事故で骨折され、回復を待ってのファーストライトのご報告です。    ゾットさんは光学系にウルサイ^^;方で、実視テストを要求され、その時のことは去年の雑記帳でも紹介させて いただきました。実視テストの結果は雑記帳掲載の通りですが、氏はたいそう鋭眼のようで、片方の対物が気に入らず、専門家に収差量を 測定してもらい、片方の対物を現地(ドイツ)で納得がいく物と買い換え、SYNTAの鏡筒の標準を越えたSUPER-BINOの完成にほくそ笑んでいます。   また、氏によると眼幅調整も精度不足だそうで^^;、少し改造したのだそうです。 最初からシェフの料理にドバドバと調味料を かけてくれましたが、氏の情熱と、海外からの注文のリスクを承知で注文してくれたこと、BINOがドイツまでの道中に何らかのダメージを 受けた可能性に免じて、見過ごしています。^^;
    改造の経緯もメールにありましたが、混乱を招く恐れが強いので、その箇所は掲載から除外しました。    何はともあれ、ゾットさんの情熱と執念には脱帽です。 さすがに観測リポートも具体的で、単なるこだわり屋さんではないことも分かります。

ED130SS-BINO

  ED130SS-BINOの完成から3週間目に幸運にも、私の星仲間所有の38cmドブソニア ンと17.8cmEDアポ(F9)の2台と並べて見比べることができる機会を得、贅沢 な比較観望会となりました。

  大型機である2台に挟まれて、私のBINOはとてもコンパクトに見えましたが、その見 え味は決して引けをとるものではありませんでした。

  笠井トレーディングのSWV24ミリ(94度)で見る二重星団は吸い込まれるよう な感覚で、双眼であるためか94度の見かけ視界を無理なく一望できます、今までは 実は二重星団にピンクやブルーの星が多く含まれており、とてもカラフルな星の集ま りであるとは気づきませんでした。両眼でみる星はストレスなく長い時間にわたり見 つめることができるので、星の色など今までなかった発見があります。

  アイピースをケーニッヒ32ミリ(65度)に変えて、プレアデス星団を見ましたが メローぺ周辺のガス雲に簡単に気づきました、蒼い星の集まりは神話の通り 6姉妹の涙に濡れたようなイメージです、眺めながら一杯やりたいくらい綺麗でし た。

  散開星団に関して言えば、広視界をフラットにしかも高コントラストで実現するBINO の圧勝という感じです。 立体的に見えるのは大きく明るい星は近く、小さな暗い星は遠くに感じるからでしょ うか、双眼視でなければ感じることのできないイメージです。

  昇ってきたばかりの系外星雲M81&M82を38cmドブと見比べましたが、ふた つの星雲を同一視野で見ることができる倍率なら、私のBINOは38cmドブと遜色な い見え方えをしました、瞳径がBINOの方が適切だったのかもしれませんが驚きです。

  同席した私の家内の言葉を使えば「同じくらに見えるなら両目のほうが楽にみえる」 私も同感です。ただし、M82だけをクローズアップして見るなど集光力にものを言 わせるような場面では、さすがに38cmの大口径には及ばない部分もあります。

   アイピースをナグラー4.8ミリ(180倍)に交換し土星を見ました、「EDにしてよ かったな!」と覗いた星仲間から言われました、ポッカリと浮かんだ土星は印象的で す。 180倍という倍率よりは大きく見える気がします、追尾も思ったより楽でした。

  しかし17.8cmEDが300倍オーバーで見せる土星の迫力には正直、一本取られた という感じです。余談となりますが、この友人の17.8EDには、私が以前から所有し ているC11EXで何度も挑んで、惑星だけでなく、球状星団や惑星状星雲といった C11EXの本来得意とする分野でも、連戦連敗し比較するには苦手意識がありま す、ED130SS-BINOは、まだまだ倍率を上げる事ができそうです、もう少し高倍率が出 せるアイピースを用意して何とかリベンジしたいところです。

  東の空からオリオンの大星雲が昇ってきたところを、BINOで見てみると、ちょうど視 界に地上の立木と大星雲が同時に入り、何とも言えない遠近感です、「地上から星を 見ているんだ」と認識させられる、予想外の風景に得した気分でした。 オリオン座が十分に高い高度となったところで、アイピースをペンタックスのXL1 4ミリに交換し再度、大星雲を覗きました、このBINOは本当に素晴らしいです。 まさかと思いましたが、17.8cmEDよりも明るく見えます、そして38cmドブソ ニアンよりもリアルに見えます、正立であるためオリオン大星雲の怪鳥のような形を したガス雲が、地上に落下する方向でなく上空へ飛び立つ方向に見える姿が印象的で す。

   38cmドブソニアンのオーナーがBINOをさして「M42や二重星団など明るい大き な対象はドブソニアンよりも良く見える、ドブソニアンは集光力で今まで見たことの なかった星雲などを見せてくれるが、この双眼望遠鏡は見慣れた星を見たことない 程、美しく見せてくれる」そして「夏の遠征観測会では射手座周辺をゆっくり見たい ので30分くらい独占して使わせてくれ!」(本気で言ってるみたいだ...)

   最後に私の私見ですが、天体望遠鏡を使う回数でなく、覗く時間でコストパフォーマ ンスを考えるならBINOはとてもコストパフォーマンスが高いと思います。 今回の比較観望会において17.8cmEDでも38cmドブソニアンでも、ほとんどの 人が覗いても10秒程度でアイピースから目を離しましたが、BINOを覗いたときだけは誰 もが1分くらい(声をかけなければいつまでも?)は覗き続けていました。 椅子に腰掛けて、飲み物を用意して、静かな音楽でも聴きながら、いつまでも覗きた くなる、そんな望遠鏡です。

   同じ土俵では比較は難しいのだと思います、今回の比較観望会ではBINOの得意分野で の比較が多かったですし、空のコンディションもBINOに有利に働いた気もします。 それでも、大きな望遠鏡に挟まれながらのED130SS-BINOの大健闘の一夜でした。

野木孝一
Koichi Nogi

Comment by Matsumoto/ 管理者のコメント;

 野木さんはご夫妻でBINOの引き取りに来てくださいました。 野木さんはもとより、奥さんも大変素敵な方でしたが、 このBINOに愛称(Blue)まで付けてくださいました。それまでは、星見にやや傍観的だった奥さんが本当の意味で星に興味を 持ち始められたそうで、大変嬉しく、光栄に思っています。

 それにしても、最初から強豪を相手にされたのですね。私も15cmホタロンBINOを作るまでは、屋上のドームの中には、中型の赤道儀に15cmニュートンと
8cm屈折を同架していました。やがてコンパクトなコロ付きの低い架台に載せた8cmBINOを作り、本来主役であるはずの前者の周りで使用していましたが、 その8cmBINOを見るようになった途端に15cm反射は一切覗かなくなり、deep-skyは8cm-BINO、惑星と二重星は長焦点8cmアクロマートという時期がしばらく 続いたのでした。 ということから、敢えて不適切な比較をしますと、BINOには総合的に見て、確かに倍の口径の単体鏡筒を凌ぐ魅力があるように思います。

 それと、野木さんが指摘されたように、BINOは生体である私たちの能力をそのまま増幅してくれることが、その魅力の大きな部分であろうと思います。  巨大望遠鏡による電子化された画像がwebを通して簡単に入手でき、ジャンボジェットで世界中のどこにでも運んでくれる現代ですが、それは古代から私たちが夢に描いた ”空を翔ぶ”というイメージとはほど遠いのでは ないでしょうか。”全身に風を受けて羽ばたいて飛ぶ”、BINOは私たちのそういう夢をかなえてくれます。

 野木さん、ストレートで分かりやすく、すがすがしいリポートをありがとうございました。どうぞこれからもご夫婦で 美しい星空に浸ってください。

TOA130-BINO

Mr. Jiro Inoue

 火星大接近に向けて…という訳だけではないのですが、2年半近く使用 してきたシュワルツ150F8Binoの鏡筒を変更してしまいました。今もっとも 旬の鏡筒、高橋TOA130Sです。なんとかファーストライトまでこぎつけまし たので報告させていただきます。

 鏡筒は2月末に注文しましたが、思いのほか早く4月中旬には納品されま した。しかし逆に早過ぎて架台の構想を練る時間がなかったため、とりあ えずシュワルツ150F8Binoの架台に最小限の改造を加えて乗り切ることに しました。基本的な構造は以前作成したTV85双眼と同じで、鏡筒は1本づつ 取り外しを可能にしています。TV85双眼との差異としては、左右を連結する プレートを省略し、リニアシャフトで連結してその上に鏡筒保持部を構築 している点です。もちろん、鏡筒重量を考えて、各部分をサイズアップし ています。このせいで全体ではかなりの重量増になっていますが、もとも と鏡筒が重量級なため、この点は現時点ではやむなし、として眼をつむっ ています。

 ようやく天文雑誌にもリポートが載りはじめたTOA130ですが、その光学 性能は素晴らしいの一言に尽きます。低倍率での抜けの良さ、中倍率での 細部の分解力、高倍率でのシャープネスとコントラスト、全域を通しての 着色のないニュートラルな視界と豊かな色彩…。木星ではEZ内の濃淡や 高緯度の縞も容易に判別可能で、NB、SBのうねりなどは細部まで良く見え ます。333倍まで倍率を上げても像は崩れる兆候すら感じさせません。実に 色彩豊かでシャープな像です。恒星も色鮮やかです。200倍で見たアンタ レスは、燃えるような赤色の主星と僅かにグリーンがかったブルーの伴星 との色彩のコントラストが鮮やかで、しばしみとれるほどでした。71倍で 月齢9の月の全景を見ても、背景への光の拡散は一切なく、迷光対策が万全 であることが分かります。また、エッジ部での色収差も全く見えません。 倍率を200倍に上げても印象は変わらず、たんにシャープなだけでなく、 中間トーンが豊かで美しい像を見せてくれます。双眼による立体感・コン トラスト検出能力の向上とあわせて、38万km彼方の地形を見ているとは 思えないリアル感が味わえます。今のところ透明度に恵まれておらず、 最大の楽しみであった「天の川下り」はおあずけになっていますが、これ も大いに期待できそうです。

 鏡筒最大幅は約180mmですが、初期型シュワルツ150F8Binoは最大幅190 mmに対応した大型EMSが採用されていましたので、鏡筒バンド(あの高橋の 立派なヤツです)さえ左右の鏡筒で互い違いに組めばEMSも無改造で流用 可能でした。問題になるかと思われたフォーカスですが、延長筒類を全て 撤去すれば実に270mm以上もの筒外焦点が取れるというありがたい設計に 救われ、今回は切断もなしで済みました。

 架台は上記の通り松本さん製作の大型フォークをそのまま使用していま す。2年以上大したメンテナンスもせず使っていますが、初期のスムース ネスを維持しており、大変快適です。TOA130双眼では今までよりもずいぶん と重量を背負うことになってしまいましたが、それでもなおスムースに動い てくれています。333倍/見掛け視界50°という、フリーストップ経緯台では 通常使おうと思わない倍率・視野まで試しましたが、視野の狭さからくる 煩わしさは拭えないものの、動きそのものにストレスを感じることはあり ませんでした。今まで屈折用のフリーストップ架台でこれ以上のスムース さを有するものはお目にかかっておりません。

 また、今回の架台部の改造では、操作ハンドル兼ウェイトシャフトと してSUSのシャフトを組み、ここに真鍮の可動式ウェイトを通しました。 一応、アイピース交換に伴うバランス変動に対応させるための装備だった のですが、シャフトの取り付け位置が悪かったため、操作性に難を残して います。これは今後の課題です。

 自作となった平行移動台座部もなんとかものになっております。ただ、 目幅調整用のラック&ピニオンのノブの位置が手元からかなり遠くになっ てしまい、覗きながらの目幅調整が難しくなってしまっています。ノブ部 に延長シャフトを加えるなどの改造が必要そうです。

 …と、まあとりあえず動いた、という段階であり、完成度はまだまだ ですが、まずは実用に耐え得るシステムになりそうです。Wenglerさんの StarFire7inch-Binoや服部さんのBigBinoには遠く及びませんが、私自身 が作成・所有できる屈折双眼望遠鏡としては、ドライブシステムの搭載 といったベクトルでの進化の道は残っているものの、光学系的にはこれで 打ち止めかな、という安堵感(?)を感じております (またまたローンでの購入、双眼望遠鏡貧乏一直線で安堵している場合 ではないのですが)。

 もともとの鏡筒重量が重たいこともあり、気軽に使えるシステムでは なくなってしまっていますが、それでもなお移動可能な範疇には納まって おり、さまざまな空の下で素晴らしい宇宙を見せてくれそうです。

謝辞:

 本双眼の作成にあたっては、遊馬製作所・遊馬弘さんに部品加工の大半 を行っていただきました。私の拙い構想と落書きのような寸法図にも関ら ず、鏡筒納品から1月弱でここまでこれたのはひとえに遊馬さんのお力に よるものです。この場を借りてお礼を申し上げます。
                     Jiro Inoue

Comment by Matsumoto/ 管理者のコメント;

  実は、TOA130-BINOは外国の方が検討していたのですが、井上さんがあっさりと先に実現してしまいました。 同鏡筒は、極めて斬新、高級な設計に基づく3枚玉のアポクロマートで、その収差曲線(というより直線)に仰天したものですが、 実際の見え味も理論値を裏切らない素晴らしいもののようですね。

  TeleVue85-BINOに続き、見事な快挙です。少なくとも光学的な性能では究極に至ったようですね。  複数の優秀な望遠鏡と複数の観察者による同時的な比較結果もお知らせいただき、この双眼望遠鏡の並はずれた能力を証明していますが、  他の望遠鏡に支障が出るほどの結果なので、そのままお伝えできないのが残念です。 今年の双眼鏡・望遠鏡サミットに参加 される予定なので、そこで現物をご覧になればその凄さを実感できるでしょう。

 このTOA130-BINOもTeleVue85-BINOと同じく、鏡筒平行 移動方式にされました。 ただ、元の架台の特徴を活かされたのか、ベースプレートを省いてシンプルな構造を実現しておられます。
  まさに「藍より出て藍より青し」の諺通り、井上さんの工業デザイン的なセンスにはいつも脱帽させられます。去年の望遠鏡サミットで 一緒させていただきましたが、同じ架台に載っていたSCHWARZ-F8-BINO(初期仕様)のロッド式focuserをクレイフォード式に改造 しておられたのにも非常に感心しました。またその時TeleVue85-BINOも見せていただきましたが、作りや見え味が素晴らしいだけでなく、 光軸が完璧に調整されていたのも印象に残っています。

 さて、今回は時間的なご都合もあって旧架台を利用してくださったものと思います。落ち着かれましたら、トータル的に さらなる進化に挑戦されるのではないでしょうか。 平行移動方式は眼幅を変えてもピントが変化しないメリットがありますが、丁度今回の サイズ的(重量的)な規模が、平行移動式か、鏡筒固定のヘリコイド調整式かを判断する分岐点になるようです。 より軽量、シンプルにするには、 後者の方法が有利かも分かりませんね。

 遊馬さん、機械加工ご苦労様でした。お見事です。遊馬さんは最近独立されるまで、ずっと望遠鏡販売店に勤務しておられたので、 関東方面の方はご存知の方も多いと思います。
 遊馬さんはEMSが出て間もない頃(初期のEMS-1の頃)からその意義を見抜き、並でない思い入れで EMSを応援し続けてくれた方です。
 当時は、業界はもとより、大半のマニアが「EMS=海の物とも山の物とも分からない?」という感じで遠巻きにしていた頃です。 販売店勤務の立場上、私のEMSを応援するために相当な逆風も浴びられたことを察しています。遊馬氏私用の MTTを勤め先の販売店に置いておられたら、上司より持ち帰るように言われた事等を思い出します。

  さて、このコーナーにも次々に画期的なBINOが登場するようになりましたが、一番最初、EMS-1を装着した小型の屈折鏡筒2本を 別々のカメラ三脚に載せ、平行を出して臨時の双眼を構成し、地上を試験的に覗いて見たのを思い出すと感慨無量です。
  老婆心ながら、この時期での皆さんへのお願いは、究極に近いBINOが登場しても、引かないでいただきたいということです。 どなたも究極の機材には一朝一夕に到達していません。先を越されたとか思うのではなく、自分自身の今のニーズと環境に合った 物を手に入れてください。後から来た方には、またそれなりの拾い物や、新しい発見があるものですから。

C8-BINO

メガネのマツモト製EMSで軽量・コンパクトな20cmシュミカセ双眼を製作

「軽量・コンパクトな双眼望遠鏡が欲しい。しかもできるだけ大口径で・・・・」 大変ムシのよいコンセプトです。

 軽量・コンパクトで大口径と言えばやはりシュミカセ。しかも筒外焦点距離も長く取 れるからEMSをつければ正立対空90°も実現できる。もうこれしかないでしょう、 ということで20cmシュミカセを2本使って製作を開始しました。しかし・・・

 眼幅調整を鏡筒平行移動式としたため箱形の左右連結部分その他の重量がかさみ、一 式重量が20kgを軽く越えてしまい、重い! またEMS部分も自作のため光路長が 長く、焦点引き出し量が多くなってバッフル先端で口径が18cmくらいにケラれる、損 だ!  これでも一応星は見えたのですが、何か違う・・・軽量・コンパクトな20cm 双眼望遠鏡を作るはずだったのに。何とかしなければ。

  そこで、まず鏡筒の平行移動をやめ、余分な重量物は全部取っ払って左右の鏡筒を ガッチリとビス止めしました。これで大分軽量化し、左右鏡筒のインターバルも最小 となりました。しかし、こうするとEMSの第一・第二ミラー間の距離を変えること で眼幅調整を行わなければならなくなります。

 よし、ヘリコイドを入れたEMSを作るぜ! と思いましたがミラーにニュートン式の 斜鏡を流用している限りどうやってもハウジング部分が大きくなって左右鏡筒のイン ターバル内に納めることができません。おまけに使うつもりだったボーグのヘリコイ ドTが製造中止になってるじゃないですか。 この時点で私の「軽量・コンパクトな20cmシュミカセ双眼」という目的を達成できる 選択枝が一つしかないのがハッキリしました。そう、「メガネのマツモト製EMS」で す。即、発注。

  「メガネのマツモト製EMS」は多種ありますが、私が松本さんに製作依頼したものは

1 2インチ仕様
2 ヘリコイドで眼幅調整
3 左右像合わせチルト機構
4 防塵フィルター
5 左右鏡筒のインターバル指定

  というカスタマイズのものです。

  ほぼ即納された「メガネのマツモト製EMS」は自作のモグリEMSばかり作ってきた私に は本当にすばらしい物に見えました(一瞬、使わずに床の間に飾っておきたい衝動に も駆られましたが、もちろんそんなことをしても何にもなりません)。

  まず、ミラーが細長い! 私たちがEMSを自作するときは、長径:短径=√2:1のニュートン式の斜鏡を流用 するのが一般的なんですが、これだと短径が大すぎて干渉するからハウジングが大き くなってしまうんです。しかし「メガネのマツモト製EMS」では斜鏡を流用してある のは同じなんですが、長径:短径=2:1ぐらいに細長く削りこんであるんですね。 これによって最小のサイズで最大のイメージサークルが得られる、と。当然ハウジン グもコンンパクト化できます。

  チルト機構の操作性が素晴らしい! 双眼仕様のEMSは右側の第一ミラーハウジングに「左右像合わせチルト機構」が設 けられています。これは左右の像が微妙に狂った時、二本のツマミをXYに操作して 瞬時に合致させるという優れものです。双眼鏡と双眼望遠鏡の違いのひとつは左右像 の合致をユーザーに調節させるか否かだと思いますが、その考え方の根幹をなす機構 と言えましょう。また私のようにシュミカセで双眼望遠鏡を作った場合、ピント合わ せのミラーシフトで左右像がズレますのでその修正に必須です。

  眼幅調整のヘリコイド(ペンタックスのやつ)が同じ向きに回せる! 眼幅調整のヘリコイドをそのまま取り付けると、眼幅を狭める、広げる、どちらの動 きでも左右逆向きに回さないといけないので操作性が悪くなります。「メガネのマツ モト製EMS」では左右ヘリコイドが上下逆転して取り付けられているので同じに向き に回せばいい。これはやりやすいです。

   このEMSを取り付けて完成した20cmシュミカセ双眼の鏡筒部(耳軸、2インチアイ ピース含む)ですがなんと総重量12.4kg!  20cmの双眼望遠鏡としてはひょっとして日本一軽いのではないでしょうか? なんて 思ってしまいます。。「メガネのマツモト製EMS」のおかげでしょう。しかしEMSは決 して安価なものではありません。今回の私の20cm双眼でも総制作費の半額以上がEMS のコストになってます。

  松本さんのHP上で言うのも何なんですが、EMSの原理を応用した正立ミラーユ ニットの自作は可能です。私も実際に何回か作ってみました。今はウェブ上でいろい ろな情報が得られますのでそんなに難しい物ではないと思います。ひょっとしたら自 作はEMSの構造や調整方法を知るのに一番いい方法なのかも知れません。それになん と言っても安くできるし、製作機材によっては十分実用性のある物が作れると思いま す。

  しかし、今回の私のようにギリギリの条件でやろうとした場合、まず自作は無理で しょう。技術と製作機材環境に恵まれた人が時間やコストを度外視して取り組めば別 だとは思いますが、それだと「メガネのマツモト製EMS」を買った方が安いはずで す。さて、皆さんはどうお考えになりますか?

   話は20cmシュミカセ双眼に戻ります。 常用アイピースはWS30mm、67倍です。 鏡筒の平行調整に手間取っていたのでまだあまり稼働していませんが、さすが、20cm だけあってそれまで使っていた10cmの屈折双眼とは全然集光力が違います。銀河の構 造なんかがわかりやすいです。瞳径も小さめなのでバックも黒く引き締まって好みで す。しかし、地上の風景なんかで見るとコントラストは明らかに屈折に負けますね。 風景は視野も広い10cm屈折のほうが楽しめます。

  でもまあ、何と言っても20cm双眼にしちゃ軽いので、持ち出すのが苦にならなくてい いですね。これが一番です。以上です。

 天気は悪いですが、晴れ間をねらってちょくちょくC8双眼も稼働しています。 今までは等倍のクイックファインダーのみで導入していましたが、やはり暗い星が見 えないのでやりづらいものでした。そこで、5cm14倍・実視界5°(アイピースは ボーグSWK22mm70°)の正立ファインダーを自作して取り付けました。「実視界5 °」は僕が常用している「フィールド版スカイアトラス」の拡大星図部分(直径5° の円や長円で表示されている場合が多い)を意識したものです。ファインダーで見え る星野が拡大星図のイメージに近いので大分導入しやすくなりました。明るい対象だ とファインダーで直接確認できるのも○です。ただ総重量13.2kgと少し重量増にはな りました。

 ハンドルは、前のセパレートタイプが少し剛性がなかったので、左右一体のものに 付け替えました。ただこれだと頭の左右に両手を持ってくる形になって少し面倒です ね。ハンドルはシュワルツ双眼のようにアイピースの下にT字型にあるのがベストだ と思います。

 今後の最大の課題は、EMSと鏡筒接眼部との接続の強化です。 20cmともなるとEMSの第一ミラーと第二ミラーの距離(オフセット量)も結構なもの となります。EMSは2インチバレル&スリーブで三方向からネジで締め付けることに よってシュミカセ接眼部に固定されているのですが、モーメントの先端に2インチア イピースという重量物がついていることもあって、ちょっとした衝撃でほんの少し回 転してしまうんですね。すると、てきめん像の回転方向ズレとなって現れてきます。 何とか固定したいのですが、EMS部分に傷を付けずにできる方法がまだ思いつきませ ん。今後の懸案事項でしょうか。

 あと、焦点をかなり引き出しているのですが、厳密な合成焦点距離はよくわかりま せん。とりあえず、ノーマルの20cmF10と考えると、常用アイピースWS30mmで67 倍、瞳径3mmということになります。この瞳径は結構、眼の位置に敏感になり双眼望 遠鏡では眼幅の調節がシビアになる、と言った形であらわれます。具体的には「片目 ブラックアウト(?)現象」が発生しやすいですね。眼幅が合ってないことによる 「片目ブラックアウト」は、慣れてない人に双眼望遠鏡を見てもらうときにすごく心 配な部分です。

 もちろん慣れている人でも瞳径が大きい方がルーズに見られて楽なのでもっと長焦 点のアイピースも導入したいところです。しかし、2インチスリーブの制約上、見か け視界80°を越え、なおかつ30mm以上の長焦点アイピースは実現が難しいでしょう。 市販品の例では40mmだと60°、50mmだと50°ぐらいの見かけ視界になってしまうで しょうか。僕の場合、見かけ視界が広いことが最優先なので、これらのスペックでは あまり食指が動かないところです(いや、しかし、一応そろえておいた方がいいかな ・・・・)。

 さて、20cmの集光力は思っていたより結構なものでした。僕は散開星団のM35が好 きなんですが、10cmで見るM35と20cmで見るM71(M35よりだいぶ小さいやつ)が同 じくらいの感じに見える気がします。ぎょしゃ座の3つの散開星団を見るのが今から 楽しみです。球状星団では、M13などあんまり大きく明るく見えたので「何かの間違 いでは?」と思ったくらいですし、10cmでは無理だったちょっと小さめの球状星団も 楽々分離します。少々透明度の悪い日でもM8、M17などメジャーな対象はそれなりに 楽しめます。ずいぶん観望の幅が拡がりました。今、「フィールド版スカイアトラ ス」に載ってる対象を順番に見て行ってるのですが、それぞれの対象についているコ メント内容がよく実感できます。なかなか楽しいものですね。自分としては個人的に これ以上の大口径双眼は稼働不可能だと思いますので20cmの双眼望遠鏡でこれだけ見 えたのはうれしい誤算でした。

 光学性能ですが、星像はそれほどシャープではないかも知れません。でも、これは 光軸を必死で追い込んでないからのような気がします。焦点内外像がパッと見た目で 同心円状に見える程度にはしてあるんですが、67倍で見てる限りではほとんど気に ならないので「これでよし」とし、一回合わせた後はいじってないです(面倒くさい ので)。あとF10、fl=2000mmだけあって、短焦点屈折と比べると視野はかなりフ ラットだと思います。最周辺はさすがに崩れますが。

横山 均
Hitoshi Yokoyama

Comment by Matsumoto/ 管理者のコメント;

 横山さん、初めてのシュミカセ双眼のリポート、ありがとうございました。   シュミカセ等のカタディオプトリックタイプのBINOは、今まで10台以上手掛けて来たはずですが、 ずっと以前に北海道の方が天ガに投稿してくださったのを最後に、ほとんど公開されなかったように記憶します。

 この度の横山さんのリポートは、シュミカセであるということだけではなく、シュミカセBINOの自作経験者ならではのコメントを いただいていることに、高い価値があると思います。

  内蔵ミラーの形状とか、X-Y調整機構の意義についてのコメントは、自作に苦労された裏付けがあればこそでしょう。  極めてシンプルで合理的な作りになりました。グリップも90度対空として絶妙な位置に配置してあり、全体とのバランスも絶妙です。  去年の望遠鏡サミットでは、私のEMSを使用される前の段階でしたが、自力で仕上げられたユニークなシュミカセ双眼が参加者の 注目を集めていました。 この度さらに洗練されたシュミカセ双眼、今年の望遠鏡サミットで見せていただくのが楽しみです。

  シュミカセは、主鏡を移動させる合焦機構により、いくらでも焦点を外に出せるのが好都合です。また、それによる収差量の変化も、理論家が心配するほどではなく、 EMSが要求する程度の引き出しであれば、実害もありません。 ただ、主鏡を移動させて焦点を引き出しますから、合成焦点距離は伸びます。恐らく、元のF10がF12近くにはなっているでしょう。   もっとも、20cmF12の双眼があのようなコンパクトさ、軽量さで実現すると考えれば、有利な特徴とも言えますが。  

  また、本来の合焦操作時のミラーシフトの心配もありますが、その代わりに接眼部が固定なので重量物の接続には有利で、並の繰り出し装置のガタと比較すれば、致命的な減点にはならないかも分かりません。   さらに、他の合焦機構を外付けする解決策もあります。  総合的に見て、双眼望遠鏡の素材としてのシュミカセのデメリットは低倍が得難いこと、メリットは大口径が非常に軽量コンパクト、 しかも安価に実現することでしょうか。  私は自分で製作しながら、シュミカセ双眼で実際に夜空を見たのは一度しかありませんが、球状星団のM15の凄さが印象に残っています。
  また、地上風景には向かないようにおっしゃっていますが、口径が大きく、倍率も高いので、地表付近のシーイングの影響も考慮する 必要があると思います。 至近距離を見ると、意外なポテンシャルに驚かれるも分かりません。私の所から、数十メートル先の市役所の外壁のひび割れが非常にシャープ に見えたこと、また数百メートル先のネオンサインが綺麗だったことが印象に残っています。大地が冷えている早朝等、森の木々を見ても楽しいことでしょう。

  横山さん、懇切なリポート、本当にありがとうございました。 今度はぜひ観測リポートを追加してくださいますよう、お願いいたします。

SKY90-BINO

 昨年夏、佐治アストロパークの星祭に参加して、初めてEMS-BINOを覗いて以来、その虜になってしまいました。 松本様・山内様をはじめ多くの方から貴重なご意見を頂き、自分に最適のEMS-BINOを持ちたいと思うようになりました。

 私のEMS-BINOのコンセプトは、「優れた光学系を備え、コンパクト且つ軽量であること」です。海外へも手軽に持ち出せることを念頭におきました。 フローライトあるいはEDレンズを備え、軽さと短さを実現できる鏡筒は限られていますが、スペックだけでは絞りきれませんでした。

最終的には、昨年秋に開催された双眼鏡・望遠鏡サミットに参加して種々の鏡筒を覗かせてもらい、また、 オーナーの方々から助言を頂いて、高橋SKY90に決めました。

 三脚を含めた全重量は15.8Kgです。コンパクトなのに全体を持ち上げるとかなりの重量を感じます。 しかし、組み立てた状態でも短い距離であれば無理なく移動することができます。 重量の内訳は、鏡筒(SKY90 2本:EMS含む)6.0kg、目幅調整機構付台座4.0kg、架台(ビクセン経緯台)3.2kg、三脚(ビクセン90cm)2.6kgです。アイピースはテレビュー4-22mmと4.8mmを使っています。  このEMS-BINOはまだ海を渡っていませんが、鏡筒を機内持ち込み荷物とするために、2本の鏡筒を収納するのに最適な袋物がないかこれから探すところです。 このEMS-BINOを持ってイータカリーナ星雲などの南天の星々を見に行くのが夢です。

EMS-BINOから見た昼間の景色

とにかく明るくかつ美しい。

 まるで船底の丸窓から水中の景色を眺めるがごとく、向かいの山の木々の小枝が風にそよぐ様子をありありと 立体的に眺めることができる。 その奥行き感は言葉で表現できないすばらしさ。 媒体としての空気の存在を感じさせる。 正にリアルな立体絵とでも云おうか。

 星空

 自宅は名古屋から30キロ圏にあり、夜空の状態はよくありませんが、自宅の庭から土星、木星、 オリオン大星雲などを見てみました。 木星及び土星はシャープな像で、単眼の望遠鏡だと星が別れて2重に見えると言っていた家内もEMS-BINO だと1つに見えてとてもきれいだと喜んでいます。 22mmのアイピースを使うと、約3.5°の視界となり、先日プレセペ星団と木星が接近したときには、星団と その星団を背景においた木星を1つの視界の中で見ることができ、実にすばらしい景色でした。 また、オリオン大星雲は、20cm反射望遠鏡だとぼんやりとしか見えない部分のガスの濃淡がはっきりと 見えたのがとても印象的でした。M81,M82も確認できましたが、自宅は淡い光の系外銀河などを見るのに 適していません。

 昨年は双眼鏡・望遠鏡サミットに20cm反射鏡を持参して超感動の二晩を過ごしましたが、今年はこの EMS-BINOも持っていって、漆黒の背景の下で星雲・星団を飽きるまで見てみたいと思います。

尾形 誠
Makoto OGATA

Comment by Matsumoto/ 管理者のコメント;

 尾形さんとは、去年の佐治アストロパーク(鳥取県)星祭りと双眼鏡・望遠鏡サミット(愛知県)でご一緒しました。  また、佐治星祭りの時には、当方にもお立ち寄りいただき、いろいろとお話をさせていただきましたので、 SKY90-BINOを作らせていただく上で、事前のコミュニケーションは十分でした。

 尾形さんの澄んだ感性で双眼視の醍醐味をリアルに表現してくださいました。   特に昼間の地上風景のくどいほどの立体感は、実際に覗いた方にしか理解できないものでしょう。この本来の立体感は、 鏡筒が2本の双眼であることと、像が完全正立であることがセットになって初めて達成されるものです。
  天体の場合には無意味と思われている効果ですが、山の稜線から木々をシルエットにして昇る月、月の前をよぎる黒雲、はたまた 明らかに惑星像より間近に見えるシーイングのカーテン等を見ると、肉眼の延長として当然必須の効果が対象を選ばないことを知り、 感動するものです。

  今年の双眼鏡・望遠鏡サミットは尾形さんのSKY90-BINOを含めて、去年以上の双眼望遠鏡ラッシュが予想されます。 今年のサミットには私も全日程で参加する予定ですので、尾形さん、またよろしくお願いいたします。

Shwarz150S-BINO

 Schwarz-Binoを納品頂いて一ヶ月になります。ひょんなことから30年ぶりに天文への興 味が再燃し、思い切っての購入でした。現在は首都圏のマンション暮らしですが、先日帰 省した際に持ち帰り、漸く満足のゆく観望ができましたのでご報告致します。

 帰省先は名古屋から50km圏の内陸部ながら、年々夜空は明るくなってきています。そ れでも3月末の一晩、透明度の高い晴天に恵まれました。使用アイピースは笠井のケーニ ヒ32mm65度(X23・実視界2.8度)、SiebertOpticsのPrem ium18mm75度(X42・実視界1.8度)です。これでもファインダーの必要性 を全く感じさせません。実は勿体ないことに、購入後一度も附属ファインダーもクイック ファインダーも使用していない次第です。

 さて、星図も持たず、うろ覚えながらも「何となく」の方向に鏡筒を向けて導入できたも のを挙げますと、M1、3、35、36、37、38、41、42、43、44、45、 46、47、51、65、66、81、82、101、104、NGC3628、290 3、h-χなど。特に小宇宙たちのおぼろげながらも確かな光芒は、これまでM31や3 3位しか見てこなかった目には感動もので、思わず独り感嘆の声を上げずにはいられませ んでした。まだ小学生だった頃、同じ田舎で、当時はもっと暗かったであろう空に6cm 屈折を向け、どうしても見つけられなかった天体たちが、今は次々に視野に入って来ま す。時間を忘れる、童心に返る、とは正にこのことです。おかげでこの一晩で風邪を引 き、妻にも子供に、更に姉や姪にも感染してしまった訳ですが・・・

 私にとっての双眼視のメリットは、逆説的ながら「望遠鏡の存在を感じさせない」という ことです。「臓器の存在を最も意識するのは、そこが病気になった時だ」という言葉に通 じるものがあるかもしれません。対空式であることが唯一の不自然さと言えば不自然さ で、それを除けば、経緯台のスムーズさとも相俟って「望遠鏡で観望している」という意 識を持つことが殆どありません。恰も肉眼そのものが広角望遠レンズになったかのような 一体感と快感を覚えます。

 見掛けよりもコンパクトであることも嬉しい驚きでした。宅急便が玄関に到着した時に は、そのダンボール箱たちの巨大さに思わず妻と笑ってしまったものでした。それが、親 子3人の荷物にチャイルドシート、ベビーカーも載せた小型2Box車に楽に収まりま す。自宅がマンション9Fのため台車の購入も検討していたのですが、杞憂に終わりまし た。

 30年のブランクは一気に吹き飛びました。自分が今後どれほどのめり込むか、少々恐れ ているところではあります。

渡辺 文彦

Comment by Matsumoto/ 管理者のコメント;

 本日(2003年4月8日)、渡辺さんよりいただいたメールをそのまま掲載させていただきました。 快く承諾していただいた渡辺さんに、改めてお礼申し上げます。

 BINO製作の仕事を始めて、かなりの年月を経、様々なユーザーの方と触れ合うことができ、大変幸せに思っております。   中にはお忙しくて梱包を一ヶ月も解くことが出来なかった方もあり、また、十分に味わう前に、いきなりソース等の調味料をドバドバかけて 食される方ありと、変化に富んでいるのですが、どの方もありがたいユーザーさんであります。

  しかし、何と言いましても、製作者として一番嬉しい瞬間は、使用リポートをいただく時です。
   渡辺さんも長い中断を経て、天文の世界にUターンされた方のようです。 少年期に宇宙へ夢を馳せ、進学、就職、結婚、子育て等の大事のために一時期天文から 遠のき、ある程度落ち着いて来る中年期に入ってまた天文に戻られた、というパターンを勝手に想像させていだだきました。

  私の少青年期には、口径15cmの屈折式、しかもそれが双眼でなど、とても自分の手に届く物とは思っていませんでした。 中年になってから手にする望みの機材は、人生の前半を真面目に努力して来た方、しかも夢を忘れずにいた方に対する天からのご 褒美ではないか、と最近私は感じるようになりました。

 私自身については、BINO作りがたまたま仕事になったために望みの機材に 近い環境にいるだけであって、本来ならとても天からのご褒美をいただける身分ではないと、これまた最近感じるようになりました。

  それにしても、ご理解のある奥様のようで、ご家庭の暖かさが伝わって来ます。

    渡辺家に一層の幸来たれ。