松本の光学講座 2024;応用編-2/Testing the theory/ エレメントの厚み/実際に検証

 昨日の講座の具体例について、本当に厚肉レンズの表面を削ぎ取って、中の平行ガラスを除去し、さらに間隔を1/N で保持したら完璧に等価な薄レンズ2枚系となるのか?実際に光線追跡してみました。
 上図がその結果です。見事に一致しました。
 上は、実際に1面ごとに近軸追跡した結果です。
(参考までに、実際に光線追跡した結果を黒い線でお示ししました。球面収差がよく分かります。)
 下は、等価なはずの2枚レンズ系の追跡結果です。
 その、等価な薄レンズ2枚系のシステムマトリックスを以下にお示しします。

 システムマトリックスの右上の成分、18 が、2枚レンズ系の合成パワーです。焦点距離=1/18=0.0555・・ m =55.55・・mmです。
ガラスの屈折率=1.5で、上の両凸レンズの r =50mm です。
 仮に、上のレンズの厚み30mmの間隔を残したまま中央の平行ガラスだけを除去したらどうなるか?ですが、上のシステムマトリックスの計算例から、中央の移行マトリックスの左下の成分 -0.02を-0.03に変えて、各自で計算してみてください。 合成パワーが 17D になることが分かります。つまり、同じ間隔のまま、中の平行ガラスだけを除去すると、合成パワーが弱くなるのです。
 その他に興味深いこととして、主点位置があります。元の厚肉レンズと、下の等価薄肉レンズ系とで、光学端面からの主点距離が同じになっています。しかし、下の等価肉薄レンズ系の間隔が小さいため、物側主点と像側主点の位置が交差しています。
 システムマトリックスの左上と右下の成分が等しいので、両主点の位置が全系の中心に対して対称になることが分かります。実際に計算してみると、(0.8-1)18 =- 0.01111・・≒ – 11mmになることが分かります。レンズ間隔=20mmなので、2mmほど交差することが分かります。
 以上、厚肉レンズが、所定の間隔で保持された薄肉レンズ2枚系と等価になることの検証でした。