15cm Hybrid-BINO completed!! / 15cmハイブリッド-BINO 完成!

ハイブリッドBINOが完成しました。 天頂に向かない問題は、2インチスリーブを長く(90mm(標準は58mm))することで解決しました。合焦ダイヤルが微妙な位置に来ますが、これは承知の上です。 TOA150-BINOの時のように下側に配置すれば操作性は良いのですが、天頂時にフォークベースに干渉する(第一、手が入りません)ので仕方ありません。 枝葉末節に目を向けるのではなく、EMSと市販の大型双眼鏡の対物ユニットと市販のGOTO経緯台(フォーク式)のコラボが数々の困難を乗り越えて実現したことをご評価いただければ幸いです。

LUNT35-BINOのパーツのアルマイトも完了していますが、台風を待つ天気では、しばらく組み立て、調整が出来ません。 急を要する他の2件も並行して進めています。今から、双望会から帰宅後の仕事の段取りを考えています。 自分で選んだ道とは言え、因果なものです。^^;

Lunt35mm-BINO almost completed!! / Lunt35mm-BINO ほぼ完成!

The theory of the EMS is more universal than you have expected.Many of you know that a pair of 60-deg mirror units will make a right-angled erecting mirror system; EMS.But few of you seem to understand there are as many answers for as many index angle’s pair. To tell the conclusion, the pair of the right angle mirror and the EMS unit will make the non-reversed upright image at the viewing angle of 120 deg.

偏角60度のミラー(プリズム)2個で正立系(EMS)を構成することはすでにご存知のはずですが、構成ユニットの角度に応じた正立解があることは、意外に知られていないようです。 極端で実用的でない例としては、天頂ミラー(プリズム)2個の正立解です。 構成ミラーの反射面の法線が直交する時が解なので、この例では解が簡単に求まります。 そうです、2個の天頂ミラーを逆視に折り返し、う~んとおじぎをして自分の腹を見るようなアクロバット時な姿勢(180度対空)を取れば正立像が見られます。(天頂付近だけは自然な姿勢で見れます。)

さて、今回のEMSユニット(入射角60度)と天頂ミラー(入射角45度)を組み合わせた時の解ですが、結論から申しますと、対空角度が90度をさらに向うに越えて120度の時が正立解(120度対空)です。 高度角30度で真下を覗くスタイルですので、太陽(天体)用として実用にならない角度ではありません。 天頂付近だと、むしろ90度対空よりも楽なくらいです。

Hybrid 15cm-Bino preliminarily assembled! / ハイブリッド15cm-BINO、開眼!!

I found the “Hybrid Binoscope Project” to be splendidly successful.The image was more than perfect both in sharpness and in the clarity of the field.It has totally kicked off the possible negative estimation of the optical engineers quoting the negative effect of replacing the prisms for the mirrors.

仮組み立をして実際に近所の風景を見てみました。 光軸は組み付け段階ですでにほぼ完璧に出ており、見え味も期待以上でした。計算家はとかく市販の双眼鏡のプリズム系をミラー系と交換することに批判的ですが、それは机上の計算上でのことであり、現実には計算外の多くの要素の集積の結果が勝負となりますので、そうした専門家の予想は当たらないことが多いのです。 今回は、期待以上の好結果で、私も驚いています。 視野周辺までのピンポイント結像という観点では、必ずしもEWV32との相性はベストではないかも分かりませんが、視界の透明感や、水銀灯のピラーと電線の間に張られた蜘蛛の巣のリアルでシャープなのには、久しぶりに身震いしました。 純正の状態を見たことはありませんが、多分、初期の設計に反したプリズム交換による得失の収支はプラスに働いたものと予想します。

LX200架台とのマッチングですが、フォークの長さが少し足りません。 手前の合焦機構部を重くしトップヘビーを最大限キャンセルしましたし、、これから長めの2インチスリーブを製作することを前提としても、理想バランス状態ですと、高度角75度が上限です。 敢えて少しバランスを崩してBINO本体をアリガタ1のリミット一杯に前に出すと、高度角85度までは向けられます。(左の写真)完璧に完全バランス状態で天頂オーバーまで向くことにこだわりますと、非現実的に重いウェイトを手前に追加するか、フォークアームを切断中継ぎ等の大手術が必要になります。

ただ、この天頂の問題は、上記のBINO本体の基本性能上の成功に比べれば、些細なことです。 枝葉末節にこだわってシンプルさを失うよりも、優先度の低い案件を潔く切り捨てることも、素材をうまく活かしたスマートな結果を得るためには重要なことです。(LX200はコントロールプログラムで自動導入時の仰角制限が設けられるはずです。強制駆動はオーバー可能。)

しかし、このBINOの基礎重量は数値以上に半端ではありません。(数値を挙げるのは無意味です。ダンベルではありませんから。光学機器はデリケートで持ちにくいという現実を直視しないといけません。) 架台(CRADLE)へのセットには、BINO本体のアリガタとCRADLEのアリミゾがちゃんと自分に見えていることが必須です。 アリミゾクランプの位置と構造上、機構部を見ずに上から勘で置いてからクランプを締めて行く方法は今回の架台では出来ません。(説明が長くなりますが、よりシンプルな構造でより強力なクランプ機構を実現するためのトレードオフでした。) 20㎏をはるかに越えるBINO本体を顔の高さくらいまでほぼ片腕で挙上し、BINO本体の腹のアリガタをCRADLEのアリミゾに差し込まないといけません。

私は、最近筋トレをして来たことと、作業に慣れたので大分楽になりましたが、同じことがユーザーの方に出来るのかどうか、正直、不安です。 このプロジェクトを計画された時点で、ユーザー様は相当の力自慢か、あるいは計画発案当初よりトレーニングを積んで来られたものと確信しています。

しかし、今回のような挑戦を広く一般に推奨するわけではございませんので、ご理解くださいますよう、お願いします。 こうした特殊なご要望に対応することが、一般的なEMS-BINOの納期にどうしても影響してしまうからです。 こうした対応は今回で最初の最後とさせていただきます。しかし、今回のプロジェクトは、画期的なセンターフォーカス機構の実現等、私も良い勉強になりましたし、今後の一般的なEMS-BINOの進化にも大いに貢献してくれました。

Center focusing system (Hybrid Bino) / センターフォーカスの部品(ハイブリッド15cm-BINO)

The parts in the left photo will slide as a unit according to the center helicoid system to make a focus. The difference between left and right can be canceled by adjusting the IPD helicoid tubes.

左の写真の部品が一体となって前後に動いてフォーカスを合わせます。 左右の視度に差があれば、目幅へリコイドで補正できます。 考え方は先のTOA150-BINOと同じです。

Center focusing system in the making (Hybrid Bino) / センターフォーカス機構製作中(ハイブリッド15cm-BINO)

Here are the hints to understand the mechanism.
1. The shaft will not turn.
2. The helicoid inner tube (black part) will not slide, but only turn,
3. the outer tube will not turn, but slide according to the turning of the helidoid tube.

以下、メカニズムのヒントです。
1.シャフトは回転せず。 完全固定。
2.内筒(ヘリコイド部品、黒い部分)は回転のみで、前後に移動しません。
3.外筒(アルミ合金の部品)は回転はせず、(2)の内筒の回転に従ってシャフトに添って前後に移動します。
((3)にはメガネ型プレートが取り付き、回転を阻止するので、前後にしか移動しない。)

当然ながら、素材の大型双眼鏡の頭部は、EMSを接続することを前提にしていませんので、末端構造はその目的には実に不親切なものです。^^; しかし、困難であるほど闘志が湧くものです。^^; 知恵をしぼれば、不可能はありません。

(余談ですが、手作業に手先の力は重要ですね。 特にステンレスシャフトへのダイス切り等、結構力を使いますが、最近のトレーニングの成果を実感します^^;。)

Hybrid EMS-BINO; EMS-UXL completed!! / ハイブリッドBINO; EMS-UXL 完成 !!

EMS-UXL is completed, and the center-focus system is under planning.

EMSが完成したとは言え、このBINOが完成したわけではありません。 持ち込まれた鏡筒部は、天体望遠鏡ではなく、市販の大型双眼鏡の対物ユニットであり、前回のSWAROVSKIのユニットのように都合良くインナーフォーカス機構が装備されているわけでもありません。末端もそっけない鋳物ハウジングのままで、後続のパーツを接続する足掛かりもほとんどありません。 つまり、フォーカシングシステムをゼロから構築しないといけないわけですが、設計はほぼ煮詰まりました。

(因みに、心配していたバックフォーカスですが、むしろ長すぎる(余る)ほどで、光路長に於けるEMSの優位性を再認識いたしました。ただ、予想外に鏡筒全長が長くなるため、LX200マウントのフォーク長では天頂時にEMSがマウントに干渉する恐れが出て来ました。しかし、このシステムでは、たとえ仰角制限を多少設けても(多分コントローラーでデジタル的に設定できるはず)、オリジナルのシンプルな外観を崩さないのが正解だと考えています。)

Hybrid EMS-BINO; Commercial 15cm Binocular Head and EMS !! / ハイブリッドBINO;市販大型双眼鏡対物ユニット+EMS !!

Here is another larger Hybrid Binoscope; Commercial 15cm binocular head and EMS.

単体のEMS扱いかどうかの微妙な案件であり、BINO受注の系列とは別個に1年もお待たせしていたのですが、いつまでも放ってはおけません。^^;EMSの合体は簡単なのですが、LX200マウントに載せるのをお手伝いする”ハメ^^;”になりました。 乗りかかった舟、仕方ありません。 この素材の双眼鏡パーツは、笠井さんで扱っている15cm90度対空の双眼鏡の試作品?か何かの放出品だったそうです。 しかし、この前部だけでもとてつもなく重く(私が言っているので間違いありません。^^;)、力自慢の人でないと、使えないレベルだと断言できます。^^;

しかし、私がお手伝いするからには、使えるようにしないといけません。写真のような強力アリミゾをCRADLEのベースプレートに作り付け、クランプレバーが下面から操作できるようにしました。 理想的な構造にしたつもりですが、これでも、装着時にはCRADLEが動き易いので、慣れが必要です。

Another Swarovski ATX95-BINO / Swarovski ATX95-BINO 3台目

The two oculars this client had sent to me in advance seem to be the best match for this binoscopoe, in my opinion.Koenig 32mm offers specially high contrast and the calarity of the field. Though there was some distortion to be seen, it would be no problem in the night sky.

Swarovsky’s Zoom was superb with this binoscope. No distortion could be seen and gives very clear image to the edge of the field through the full range of the magnifications.The barrels of the both should be cut short so that they would not touch the mirror edge.(See the right photo.)

今回持ち込まれた2種類のアイピースは、(私の感触では)このBINOに最高のマッチングだと思いました。ケーニッヒ32mmは、視野のごく周辺の崩れや糸巻き状の歪曲等はあるものの、その単純な光学系(レンズ枚数が少ない)ならではの抜けの良さが際立っています。

Swaroのズームは、さすがに同一メーカーのマッチングのせいか、それ自体が優秀なのか、視野の全域で均一な結増性能を示していて、素晴らしいです。倍率の全ストロークで光軸もピントも微動だにしません。 ビルの直線もほとんど曲がらず、歪曲がほとんどありません。 複雑な光学系のはずですが、それを感じさせないヌケの良さがあります。低倍時の見かけ視界が狭い点はあるものの、アイレリーフも十分で、全ての焦点距離でメガネ装用の私が余裕で覗けました。

両アイピースとも、EMSのスリーブ類とアイピースのバレルを加工しないとこのBINOでは合焦しません。 防塵フィルターも観察時には撤去します。左の写真はSwaroズームのカスタマイズの図です。バレルが単体で外れないので、切断には周到な準備が必要でした。

BORG 71FL EMS-BINO完成

 以前BORG 71FL EMS-BINOのプロトタイプを報告しましたが、最近なんとか完成しました。 コンセプトは「公共交通機関と人力で運用可能な口径70mmの広視界対空双眼鏡」で、2インチアイピースでの実視野 が6度以上を目指しました(現在対空型でこのスペックの双眼鏡はありません)。 そしてもう一つの大切な条件は「接眼部が動かないこと」です。目幅調整のためのヘリコイドによる移動は 許容できますが、フォーカシングによる接眼部の移動はあまり好きではありません。というか、 一度でも接眼部の移動のないシステムを使うと後戻りできません。

 ということで、完成したのがこの双眼望遠鏡です。構造は至って簡単、H型ユニットに左右の望遠鏡 (ヘリコイドEMS仕様)を鏡筒バンドで固定するだけです。このH型のユニットはファインダーとアリガタを付 けるために一部突起部があるので、正確なH型ではありませんが、私はあえてH型と呼んでいます。この構造に よる双眼望遠鏡化はK-ASTEC製C型鏡筒バンドを活用することで可能となりました。フォーカシング用ヘリコイドはBORG製で対物ユニットを移動することでフォーカスシングしています。
 ところが、このヘリコイド は意外とヤワで「支え」が必要になります。ここで登場するのがすり割り式のC型鏡筒バンドです。通常の上 下分割式の鏡筒バンドでは対物ユニットを支え、かつヘリコイドでの摺動に対応することが上手くできません。 接眼部側の鏡筒バンドはただの固定なので、どちらでもかまいませんが、対物ユニット側の鏡筒バンドはこ のすり割り仕様であることが必須です。今回はH型ユニットを削りだし加工とし、鏡筒バンド連結部に溝を 付けました。これで、左右の鏡筒の平行性は無調整で担保されます。

 この双眼望遠鏡に組み合わせるアイピースは1.25インチがZeiss製のWw-Planokularです。焦点距離は23mm、 見かけ視界は65度の古いアイピースですが、視度調整機構が組み込まれています。凝った作りなので、見え 味は・・・と不安でしたが、他の最新型のアイピースを駆逐するだけの良像でした。このアイピースとの組合 せで17倍、3.7度の実視野が確保できます。さらに2インチによる広角仕様ではHyperion36mm (72度)で11倍6.5 度の実視野となります。使えるアイピースの種類が非常に多いこともこの双眼望遠鏡の特徴で、低倍率で も高倍率でもアイピースの選択には困りませんが、今はこの2種類に落ち着いています (ただし、Leica zoomも使えるので、こちらに移行する可能性はあります)。
 いずれにしてもおそろし く抜けの良い像の双眼望遠鏡です。同口径の双眼鏡と比較しましたが、網膜に届く光の量が明らかに違います。 感覚的にはガラス窓を通して見るのか、それとも窓を開けて見るのかの違いがあります。2枚玉の対物 と銀コートミラー2枚のおかげかもしれません。とにかく透過率が高い印象です。

 問題点もないわけではありません。鏡筒バンドの間隔、鏡筒長の最適解がまだ見つけられていません。 現状は無限遠の焦点位置に余裕を持たせる長さになっていますが、もう少し鏡筒を長くしてもいいと思って います。使用するアイピースもほぼ決まっているし、近距離から無限遠の合焦範囲を詰める必要があるかもし れません。ただ、実際に覗いてみるとそんなことはどうでもいいように思えてしまいます。とにかく枝葉末節 がどうでもよくなる楽しい双眼望遠鏡に仕上がりました。

 現在は私のような機械工作の素人でも既存の部品を組み合わせることで比較的簡単に双眼視を楽しむ ことができるようになりました。EMSの存在はその大前提ですが、的確なアドバイスや細かな手直しを引き受 けていただけるプロの手助けがあるからでもあります。EMS開発者の松本さんとK-ASRECの川野さんにこの場 を借りて深謝いたします。

黒木嘉典 (Kuroki Yoshifumi)
栃木県宇都宮市

Comment by Mtsumoto/ 管理者のコメント;

 黒木さんの自前設計によるBORG 71FL EMS-BINOの完成です。 じっくりと検討されたようで、見事に 理にかなった構造になっています。 まずは、心より、「おめでとうございます。」と申し上げたいと思います。

 このBINOの特筆すべき点は、H型のジョイントと前方のスリット付きバンドでしょうか。  一見しただけでは見過ごしそうなほど、さらっとシンプルに仕上がっていますが、ここをよく見ていただかないと、 このBINOの真価を理解したことにはなりません。

 実際に物を作るということは、自然に使い方も学ぶことになります。 作れないからと言って、その人がBINOを 使いこなせないわけではありません。工作や設計は全く出来なくても、BINOを上手に使いこなしている方もあります。 しかし、作れる人は、まず光軸調整に困ることはありません。
”使える”→”作れる”は常に真ではありませんが、 ”作れる”→”使える”は常に真です。 海外からの依頼は、もっぱらEMS部単体で自作されますが、使いこなせなかった例は 過去に一件もありません。

 この度は、非常に斬新なアイデアによるBORG 71FL EMS-BINOのリポートをいただき、ありがとうございました。  SWAROVSKI-X95-BINOの完成が梅雨の最中でしたので、多分まだ十分に見比べをされるチャンスがなかったと思いますが、 梅雨明け後にじっくりと観望されたご感想をいただけましたら幸いです。