12cmF5-BINO

 従来、天体の観察は、より大口径の望遠鏡で…という概念を持っていましたが、数年来訪ねた石川町スターライトフェスティバルで双眼望遠鏡の見え方を目の当たりにして、考えが変わりつつ有りました。

 自分では精度の良い(目のおかしくならない)双眼望遠鏡を自作する技術が無いので…それではこの道の第一人者の松本さんに、そして銀ミラーに依る光量損失の無いEMSという所が依頼の要でした。

 完成品を使用しての感想等/他お伝えします。先ず首や顔や目が疲れない。90゜対空両眼視ですから当然ですが片目を瞑って頬を引き吊らせる事もなく、また淡い天体を認知するのに逸し目の必要もありません。むしろ両眼で凝視しても疲れません。

 アンドロメダ銀河や二重星団h・χ等の全景を余裕を持って捕らえるにはRFT位の焦点距離がBESTなのだと思います。夏のカブト虫が木に取り付いて樹液をむさぼる様に双眼望遠鏡の天体虫(観測者)は接眼部を覗き込んで、いつまでも離れないのです。

 こんな快適な星見機材なのにポータブル性スクランブル性にも優れています。空が晴れて来たならサッと出してパッと見れる!ジックリ観たら又サッと片付け。

 口径の大きいモデルは集光量があるのでしょうが観望観測時の空の状態(月回り、光害の有無、快晴天)等で透過光量も変わるようです。

 この秋はその様な条件のそろった天文快晴の瞬間を逃さない様にしたいと思います。秋虫の声をBGMに天体双眼観察と洒落込みましょう。

 松本さん、Bino の製作ありがとうございました。

いわき市 佐藤正巳

Comment by Matsumoto/ 管理者のコメント;

 東日本大震災の被災地方面より、まだ余震が続く中でご依頼いただいたので、このBINOのことは強く 印象に残っています。 震災以降、日本全体から活力がやや失われた印象がある中で、むしろ、東日本の 方の方が、より積極的に生きておられるように見受けます。 

 本件でもう一つ印象に残っているのは、架台対応のご注文がユニークだったことです。 通常のHF経緯台の他、もう一つの大型双眼鏡用架台(後に、NIKONの双眼鏡の(12cm?)架台と判明)にも載せたいとのご希望でした。 それぞれの 架台用の耳軸を依頼されましたが、それでは変換が不便だと思い、何とかアダプターを工夫してみました。

 アダプターはスリ割にして、本来の耳軸クランプが間接的に効くように配慮しました。(製作情報速報2011年5月22日)

 このNIKONの(旧タイプ)大型双眼鏡用の架台は、なかなかしっかりと出来ていて、方位目盛りも付いた優れ物でした。 平行移動タイプのBINOの構造上、ハンドルロッドが天頂時に架台に干渉するのを心配しましたが、佐藤さんによるとほとんど問題ないとのことでした。

 12cmというのは、大型指向の15cm~13cmと、コンパクト指向の10cm以下の狭間で、見過ごされるのか、 意外に要望の少ない口径でした。 しかし、よく考えてみますと、機動性や稼働率から考えて、実にバランスが取れたサイズ、規模だと言えると思います。 また、昨今は3枚玉アポに人気が集中していますが、予算組の段階で、”Best or Nothing” ではなく、使用目的やご予算に応じて、星雲、星団用には遜色のない、短焦点アクロマートも選択肢に入れて考えても良いのではないかと思います。 たとえアクロマートであっても、正立系を含めて、余分なガラス中を光路が通らないシンプルな光学系の 抜けの良さ、ノイズのなさというか、視野の透明感のようなものは、一般的な光学系のランク付け(アクロ、セミアポ、アポ)では補完できない、圧倒的なものがございます。

 震災にもめげずに新しいBINOに挑戦された佐藤さんに敬意を表しますと共に、素晴らしいリポートをくださったことに 感謝いたします。 秋の天体を満喫された後に、またリポートがありましたら、よろしくお願いいたします。