EMS-UL(with IPD Helicoid) for Germany in the making

 数十年に渡り、際どい技術情報を含む画像を惜しみなく公開してまいりましたが、製作者が意図する情報を閲覧者の方が読み取ってくださって来たか?という点で、甚だ疑問がつのる、今日この頃です。
 EMSハウジングは、通常は、端面にM2のネジ6本(ブルーの矢印)で接続用のテーパフランジをセットし、二次的に延長筒等を接続することが多いのですが、光路長を節約するために、ハウジング内に接続パーツのテーパフランジ部(写真では黄色い矢印)を嵌入させて接合することもあります。
 まさに、目幅ヘリコイド(延長筒なしの場合)をハウジングにセットするのがその方法になります。
 したがって、固定タイプのEMS-UMや、EMS-ULをご使用になっている方が、ヘリコイドペアのみを購入されて組み込むのは、ハウジングの3方のセットビス加工(赤い矢印)が施工できない場合は無理です。また、ミラーを内蔵のまま加工するには、さらなる技術が要求され、外したミラーを再セットするには、コリメーションの知識と技量が必要になります。
 ということなので、BINOの計画の初期には、ヘリコイド式で行くのか、固定式で行くのか、熟慮の上決定いただく必要があります。

 今日、海外の(自称)dealerさんから、「M3のセットビスを3本から6本にして欲しい」というご提案をいただいた。(上の写真の赤い矢印)
 時々こうした、浅知恵に基づくご提案をいただくが、困ったものだ。

 そもそも、3本で問題ありと判断する時点で、運用が間違っている。直進ヘリコイドは3重構造で、内径を最大限確保するために、各層は薄く出来ている。そこを3方のセットビスを過剰に締めれば、変形することは自明で、直ちに回転が渋くなる。過剰に締めなくても実用上問題ないことは長年で検証されている。

 百歩譲ってセットビスを増やすにしても、均等分割6本は現実的でないことは、写真を見れば分かろう。

 EMSハウジングは光路長を最小限にするために上サイドの尖り部分が紙のように薄い。だから、現在の2本のセットビスの中央は空席以外になく、この間全域はセットビスの追加に適さない。

 敢えて追加するとすれば、下側の2箇所だ。ということで、(加工は面倒だが)5箇所なら現実的にあり得る。
 しかし、自称DEALERさんは、自社扱い品を差別化したいのだろうが、それが当方や、すでにユーザーになっている方や、既存のDEALERさんにどんなメリットがあるというのか? つまり、自称DEALERさんは、他者をSPOILすることを考えていることになる。冗談じゃない!

 ついでに、EMSの防塵フィルターについても。当方の考え方を述べておく。

 防塵フィルターは、文字通り、EMSハウジング内への埃の侵入を防ぐものですが、それ以上、突出したミラーエッジやミラー面の損傷を防ぐ命綱だということです。

 結像性能にうるさい天文マニアは、防塵フィルターを撤去して使用したり、(自分が信じる)より高精度な?フィルターと交換したりしているが、全く無意味で無謀な行動と断言できる。対物レンズの前に配置するフィルターであれば、球面収差的な精度が極めて高いレベルで要求されるのは勿論であるが、焦点のごく近傍に用いる防塵フィルターの球面収差的な精度は、あなたのメガネレンズ程度で全く問題ないというのが、正解だ。

 それよりも、埃の侵入や長すぎる挿入物によるミラーの損傷のリスクの方がかるかに問題だ。

 往々にして、天文マニアの思考は科学的根拠を離れて、感情的に過度に数値精度に神経質になる傾向がある。

「あなたは、”星マニア”ですか?それとも”星像マニア”すか?」と問いたくなることがある。

もちろん、一度購入したEMSをいかに使おうと、ユーザーさんの自由だ。

 ただ、以下のような当方のAgent志願者からの提案は、侮辱以外の何ものでもない。

「防塵フィルターは、当社独自の物を使用するので、防塵フィルターなしのEMSを供給してもらいたい。」