Non-destructive Testing of the Focal Length/ レンズ系の非破壊検査

 レンズ構成が未知のレンズ系(分解、エレメントへのアクセス不可)の光学諸点(主点と焦点)を非破壊で検査する方法をご紹介します。
 一般的な結像公式は、レンズ中心(もしくは両主点)を基点とした物点距離と像点距離の関係式; 1/s’ – 1/s = 1/f を用いますが、天文マニアには、レンズ中心よりも両焦点を基点とした結像公式; ss’ = – f 2 の方が利用価値が高そうです。
 その公式より、上の図のように、x座標の -2f と 2f の位置に、それぞれターゲット板(照明付き)とスクリーンを配置すると、倍率= -1 (等倍)で結像します。
 それから、ターゲットとスクリーンを、2倍になるように動かすと、下図のようになります。両焦点を基点とした結像公式; ss’ = – f 2 が奏功するわけで、s = -f/2, s’ = 2f で、左辺=- f 2 となり、上記公式が成り立っていることが分かります。 つまり、レンズには全く触れることなく、スクリーンの移動距離から焦点距離が求まるわけです。主点位置もそれで決まります。


Visual Approach of the Principal Points / 主点の視覚的な説明

 理論には踏み込みたくない、という方のために、今回は主点の意味が”絵”で直感的に分かるモデルを用意しました。
 H2が像側主点で、H1が物側主点ですが、面倒な方は、今回は H1のことはスルーしていただいて結構です。
 天体望遠鏡とバローの図です。F0が対物レンズの焦点で、F がバローとの合成焦点です。(P-F)/(P-F0) = 拡大率です。
 上の図の凹レンズから射出している光路の尻尾を逆に延長し、入射平行光束と交わる点から光軸に下した垂線の足、H2 が像側主点です。
 バローと対物レンズの合成焦点距離=H2-F です。

 平行光線を接眼側から投入して同じ考察をすると、H1(物側主点)が求まります。

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Today’s Supper / 今日の夕食

 ご心配をおかけしたくなかったのと、全国では私同様の治療を耐えているさらに高齢な患者さんが多くいるので、弱音を吐くのはどうか?と思ったため、治療の影響について、敢えて公開して来ませんでした。
 脱毛はないのですが、毎回、拒食症状に苦しんでいます。数年前の65kgの体重を、先月は48.5kgまで最低記録を更新し、これではいけないと、努力しても、50kgをタッチしたり、戻ったりの状態です。
 我ながら、鏡の中の自分に、”釈迦の断食苦行像” その物を見て、ぞっとしているのが実情です。客観的に見ると、もう痩せしろはなく、これが死の間際なのか?と思えて来ます。^^; 頭だけは、妙に冴えているんですがね。LOL
 病院食はほとんど食べられないので、朝食(ロールパンx2+牛乳+まずいゼリー+辛い味噌汁)以外は断り、昼食と夕食は自前調達(外出禁止ですが、毎朝、下のコンビニでの買い物を依頼できる。)
 今日の夕食は、先日家内が差し入れてくれたレトルトのビーフシチューを看護師さんにチンしてもらおうか?随分迷ったのですが、3日前に高熱が出た影響で、完食の自信がなく、バナナとプロテインを流し込みました。 味の濃い物はことごとく舌が拒絶し、味が薄いものは何とか流し込める。味噌汁も1匙ほど飲んだら、塩辛くて、もう飲めない。好きなバナナすら苦い。
 

Ultimate Tutorial of the Principal Points /瞬時に分かる、主点の意味!

 中学理科から見慣れた薄レンズの結像図だと思います。
近軸理論では、薄レンズの厚み=0と想定しますので、レンズ中心(O)が、全ての基点となり、厚いレンズ系のように、主点の概念を導入する必要はありません。
 中学のおさらいですが、上図のように、
1:レンズ中心を通る光線は全て直進する。(赤線で示した。)
2:焦点を通過する直線は、レンズを出ると、全て光軸と平行に射出する。(光軸と平行に入射する光線は焦点を通る。)
 上記の2点だけ理解できていれば、薄レンズによる結像は全て作図でき、定量的な解析も簡単です。

 では、分厚いレンズや、複数枚で構成された複合レンズ系ではどうだろう? という話です。
 恐らく、光学黎明期には、上の薄レンズの(O)のような単独の代表点が複合レンズ系の中にないか?、最初は探したに違いありません。 そして、光学台による実験から、そのような好都合な点は存在しないことがすぐに分かったはず。
 で、やっと到達した事実が、複合レンズ系では、1点じゃなく、2つの点が、薄レンズの(O)のような”要の点”として存在するということです。次の図を見てください。

 複合レンズ系には、薄いレンズの(O)のような好都合な単独の代表点は無かったわけですが、食い違いながらも、入射光線と平行に射出して行く光線があることに、光学黎明期の人もすぐに気付いたはず。
 上の図は、厳密には主点ではなく、節点(角倍率=+1の共役点)なのですが、物界、像界とも空気の場合は、節点と主点は一致するので、敢えてこの図を示しました。説明がよりシンプルになり、素早く視覚的にご理解いただけると思ったからです。
 この1週間ほど、熱心な天文マニアの方に主点の意味をご説明して来て、あの手この手を考えた結果、到達した ”主点-Tutorial ” です。
 H1に向かう全ての光線が、H2から射出するということ。
(H1,H2は虚物点と虚像点ですから、実際に光線がそこを通るわけではありませんが。) そして、主点を通り、光軸に垂直な平面が両主面です。
 物側主面の高さ h に入射する光線の全ては、入射角度に関係なく、同じ高さ h の像側主面から射出します。(2つの主面を光学的に定義すると、横倍率+1の共役面ということになります。)
 当初はブラックボックスだった複雑な複合レンズ系の骨格を、シンプルに理解するために発見された至宝の点、それが主点であり、節点なのです。
(図は分かりやすく描いていますが、物側主点と像側主点の定義は、その存在位置とは無関係で、像空間に物側主点が来ることや、レンズの外にあることもあります。像側主点も同じ。 従って 物側(第1)主点 像側(第2)主点 の並び順が本例とは逆になることもざらにあります。)

 「これでやっと主点の意味が分かった!」と感動してくださった方、ご連絡いただけると、大いに励みになります! LOL

(主点(節点)とも、一般の光学系は収差のために光線の角度や光軸からの高さによって位置がずれますが、角度も高さも限りなく光軸に近付けた極限値を以って、それらの点を定義します。)



 

For those who are allergic to the Matrix/ 行列アレルギーの方へ!

 上の連立一次方程式、今は中学2年で習うようです。
下は、それを行列表記したもの。 同じ物なので、毛嫌いしないでくださいね。
 松本の光学講座でも、これ以上難しいことは何も言ってないつもりなんですがね。
 2x = 4 を解く時、両辺に x の係数の2の逆数 1/2 を掛けて、x=2 を求めますよね?
  行列も同様に、両辺に
2  1
1  1 の逆行列、
1  -1
-1  2  を掛けてやれば、( x, y ) が同時に求まるわけです。

 アクロマートレンズを設計する際は、色分散が少ない(アッベ数が大きい)凸レンズと色分散が大きい(アッベ数が小さい)凹レンズを、色消し条件を満たしながら組み合わせ、かつ、合成度数が目的値になるように両レンズの度数配分をしないといけませんが、これも連立一次方程式(中2レベル)で解けます。

 レンズ系のシステムマトリックスは、逆行列を知らなくても求まりますから、これよりも簡単です。 実数なら、エクセルが計算してくれますしね。


Calculation of the Principal Points / 主点位置の計算方法

 理解しやすくするために、両主点位置をレンズ系の外に作図しました。たとえば、H1が実際にはレンズ系第一面より右側に存在する場合は、t>0 となり、同様にH2がレンズ系最終面よりも左側にあれば、t’ <0 となるだけです。
 また、移行マトリックスは左→右向きの距離を正(+)と定義します。
 まとめますと、レンズ系のシステムマトリックスを
A D
B C 、とし、
 物側主点の位置は、レンズ系の第一面を基点として定義 ( t ) することとし、像側主点は、レンズ系最終面を基点として定義 ( t’ )することとします。
 従って、tが第一面から物側主点までの距離、t’が最終面から像側主点までの距離で、符号は上図と解説に従います。

解説 ↑;
H1 – H2  の 横倍率=+1の 物像マトリックス を計算します。
結果は何と!
1  D
0  1 、
 という、超シンプルな行列になりました。(右上の要素のDは常にレンズ系のパワー)
 両主面は、横倍率=+1の共役面ですから、左上と右下の要素は常に1,物像関係なので、左下の要素は常に0。(計算不要)
最終的に整理する直前の行列と比較し、
A + Dt = 1, C – Dt’ = 1, から、
t = (1-A)/D ,
t’ = (C-1)/D, となるわけです。
 マトリックスの方法が、いかに近軸解析に奏功するか! ご理解いただけましたでしょうか?

補足;
一般に、物像マトリックスは、
1/M   D
0    M 、 (Mは横倍率)
で、物と像が両主面の場合は、M= +1  となる訳です。

 5/25の記事のモデル(システムマトリックス)に、今日ご紹介した公式 ( t = (1-A)/D ; t’ = (C-1)/D )を当てはめてみて、結果に矛盾がないことをご確認ください。
 シンプルな公式を機械的に当てはめるだけですから、分かる?分からない?の話ではありません。まずは、やり方を真似てみて、 ”これは凄い!” とお気付きいただけば、→ 何故だろう?と、次に進むモチベーションになるはずだと確信しています。九九を覚えるのに、一々理屈を考えたでしょうか? まずは、公式を疑わずに、実際に試していただきたいと切に思っています。

What is the Principal Point?/ 主点とは何か?

再三の総”無視”にもめげずに、投稿しています。
 今回は数式には踏み込まずに、概念的な話に限定します。
 分かる?分からない?ではなく、受け入れるか?受け入れないか?です。
 上の図は、薄いレンズによる結像の光路図です。1/s’ – 1/s = 1/f という結像公式が確立しています。
 下の図は、複数のレンズで構成されたレンズ系の光路図です。(合成焦点距離は同じとします。)
 光学黎明期の人たちは、光学台による実験から、複数レンズ系も、薄い単レンズ系と同じような物と像の結像関係があることにすぐに気付いたはずで、当初はブラックボックスのレンズ系に於いて、外側にある物点と像点は別として、物点距離(s)と像点(s’)距離を決定する基点がどこなのか、戸惑ったに違いありません。
 断言はしませんが、当初は帰納的に、「下図のような、1対の倍率=+1の共役面(のちの物側主面と像側主面)がもし存在すれば、薄い単レンズの公式がそのまま使える!」と考えたのではないでしょうか?
 それを帰納的に検証するのには、そう時間はかからなかったはずです。
 で、実際はどうなのか? ですが、レンズ系が何枚構成であっても、2つの共役な主面が存在することが分かっています。

 実際の物体面と実像面が互いに共役面であることにはご異存はないと思います。物と像は交換できます。上の図で言うと、物体面と像面が、倍率=(-1 )倍の共役面となっています。
 で、実際の物と像の結像関係とは別系列で、倍率=+1倍の共役面が存在すれば、上の図の光路をレンズの所で2分割して、主点間距離を離しただけですから、元の薄レンズの公式がそのまま使えるわけです。
 物側主面が虚物面で、像側主面が虚像面なので、光線は実際にはP,P’,H1,H2,Q,Q’は通りませんが、物側主面上のある点に向かう入射光線は、全て、像側主面上の同じ高さの点から最終レンズ面を抜けて行く、ということです。
(物側、像側主面は、上図のように行儀よくレンズ系の内部に収まっているとは限らず、順番が交差していたり、レンズ系のずっと外にあったりしますが、原理的には同じことです。)
 
 

The effect of the Stop before the focus / 焦点前絞りの効果(超短焦点対物レンズ用)

 友人とのやり取りから、最近、貴重な発見をしまして、長年の天文マニアの多くが、光路図の視覚的な意味すら理解していない、あるいは誤解したまま放置していることに気付きました。
 光線を線で表現するのは、解析のため。この、横から見た線は、当然ながら接眼部の観察者には見えません。観察者に見えるのは、焦点面(あるいは参照面)に投影された無数の光線がその面を貫く無数の点の集合、いわばスポットダイアグラムです。収差がある(無収差はあり得ない)光学系の焦点は、一定の面積を持つ錯乱円なわけですが、その錯乱円が小さいほど像がシャープになるということに異存はないでしょうか? 食い下がって質問する方はどんどん賢くなり、曖昧にスルーする方は、ずっと誤解を引きずります。
 上下の図を比較して、「両方共結構シャープに結像してるじゃん!」なんて言ってはいけません。先ほども申しましたように、横から見た光線の絵は、観察者には見えません。視野中心でピント合わせをした前提だと、あなたに見える★像は、図のfocal-plane(焦点面)で光束を切った断面であり、それにアイピースの収差が加算されたものです。
 友人からのもう一つの質問は、この複数の線は、全て一つの星からの光線なのか? というのがありました。これも極めて重要なことで、全ての線は、無限遠の一つの点光源から入射した平行光線だということです。 上から数えて、1本目がベガの光線で、3本目がデネブからの光線なんていうことはありません。
 この辺の約束を今一度確認いただいた上で、上の図を見ていただけば、最大視野付近だけの光束を絞りで少しトリミングしてやることで、視野周辺の星像が劇的に改善されることがお分かりになると思います。当然、視野の周辺減光は伴いますが、もともと破綻している視野周辺像であれば、それは意義あるトレードオフと言えますし、また、私たちの眼の生理的特徴から、視野周辺ほど光感度が飛躍的に高いために、周辺減光は眼視に関する限り、そう気になるものではいとも言えます。
 図は、ファインダークラスのF3~F4の対物をモデルとして、入射角度=6度(実視野12度)を想定しているので、実視野8度くらい以下は、この絞りは影響しません。


 この手の適当な位置と内径の絞りであれば、視野の中心付近では絞りの影響が皆無であることが上図から明らかです。
 アイピースの視野周辺の像の崩れは、一般的には、大半がアイピース自体の責任なのですが、対物が極端に短焦点な場合は、対物の像面湾曲、コマ収差等もそれに拍車をかけます。まずは、対物起因の要素を改善して、アイピースにバトンを渡せば、嬉しい結果が待っていると信じます。
 フラットナーの研究をしている中で、適当な絞りだけでも結構奏功するのでは?と気付いた次第です。
 ただ、鏡筒内の構造で、すでに結果として絞り効果を利用してしまっている場合は、いくら追加で絞りを入れても無駄ですが。