BLANCA130EDT-BINO (Mr.Ebi)

新潟市在住の海老と申します。3月中旬に制作していただいたBLANCA130EDTⅡ双眼望遠鏡ですが、5月になりようやく天候が安定し、観望を何度か行うことができましたので、レポートをお送りいたします。

①双眼望遠鏡導入の経緯
私の天文趣味の始まりは6年前です。趣味の写真撮影の一環として星の撮影に興味を持ち、広角レンズによる天の川撮影から始めたのですが、その時に安物の7×50双眼鏡で何気なく覗いた夜空の星の多さに仰天し、そこから天体観望への興味が一気に湧き上がりました。まずは10×50と15×70の双眼鏡でカメラ用三脚とビデオ雲台による観望ライフをスタートさせ、主に白尾元理氏著「双眼鏡で星空ウォッチング」等を教科書として双眼鏡で見ることのできるメシエ天体や主な星団の観望を楽しみました。その流れから現在も正立双眼視による星野の観望、いわゆるリッチフィールドを楽しむことが中心です。

機材に関しては、すぐにより大きな口径に目が行き、直視型25x10cm、10cm45度対空双眼鏡を入手し、ひとまず落ち着きました。さすがに10cmの対空双眼鏡ともなると様々な天体を楽しむことができたのですが、やはり天文趣味の宿命でしょうか、一年後にはさらなる機材のグレードアップを思案するようになります。先ずはより大口径の双眼鏡としてビクセンのBT125を購入候補としたのですが、この頃目に入ってきた言葉が「EMS双眼望遠鏡」です。EMS?松本式?これは一体なんなのだろう?ネット上では何やら市販の対空双眼鏡なぞ相手にならんスグレモノだという評価・・・。

この頃胎内の星祭りで17.5cmの巨大双眼望遠鏡のオーナーさんにお話を伺う機会を得ました。その時に印象的だった言葉が「対空双眼鏡のままで10cmから12.5cmにしてもあまり変化は感じられませんよ。」「グレードアップするならEMSしかありません。鏡筒はやはりアクロよりはアポクロマートが良いです。」「でも15cmF5(当時すでに完成域に達したVersion10でした)BINOは別格です。あれはよくできた双眼望遠鏡です。」この3つでした。このアドバイスがいつも私の脳裏から離れない金科玉条として耳に残ったのです。

その後、一昨年の春にたまたまオークションで中古の10cmF5BINOを見かけ、衝動的に落札してしまいました。実物のEMS双眼望遠鏡を手にしたおかげで、それまで松本さんのホームページを読んでもさっぱり理解できなかったことが手に取るようにわかり、将来の本格的なEMS双眼望遠鏡制作に向けての準備が整って行きました。また、ほぼ同時期にED屈折式望遠鏡がどのようなものかを知る為に笠井トレーディングのBLANCA115EDTⅡを購入し、これまたオークションで入手したEMS-ULを装着して単眼ですが、10cmF5BINOと併用し、双眼望遠鏡制作の検討を進めました。

そして検討の結果、「15cmF5双眼」「11.5cmED双眼」「13cmED双眼」の3つを候補として考え、一度は予算的に手頃な11.5cmED双眼に決めかけたのですが、土壇場で13cmに計画変更して松本さんに制作を依頼しました。笠井トレーディングのBLANCAを選択した理由は、初期型を中心に過去多くの双眼化の実績があり、また、単眼で11.5cmを実際に使用してみて自分的には十分な性能と感じたからです。そして15cmF5ではなく13cmED双眼を選択した理由ですが、自分の一番大好きな天体は散開星団だからです。10cmF5の経験からアクロでも散開星団の微光星に色収差は見られずアポクロマートとの差は小さいのはわかるのですが、逆に言えば小さいながらも差があることも単眼ながら併用した11.5cmのBLANCAとの比較で感じていました。また私は特に目的も無く星野をゆるゆると流すことが好きで、その時の星々一つ一つの美しさを堪能するのが大きな楽しみでもあるのです。そのため微光星の一つ一つがよりシャープに見えるアポクロマートを選択しました。実際には11.5cmでも十分だったとは思いますが、自分の性格からして後々13cmの存在を気にする事が目に見えていましたので(笑)思い切って13cmに変更しました。今思えばやはり13cmにして良かったと思います。

②制作依頼から完成、引取りまで
昨年の12月からメールで松本さんと仕様決定に関する質疑応答を交し、2月上旬に正式に発注しました。鏡筒は笠井トレーディングBLANCA130EDTⅡ、EMS-UXL、中軸式架台、傾斜センサー付き、フォーカサーは3インチ以上の大型のものに交換したかったのですが、オリジナルの2.5インチでも実用上問題ないとのことでしたので鏡筒付属のものをそのまま使用することにしました。(予算の問題もありますのでどこかで線引きも必要かと思いました)

完成までの約1ヶ月は制作状況速報を楽しみに読み、時には松本さんにその感想を伝え、引き取りの日を迎えました。3月下旬の週末、はやる心を抑えつつ700km先の鳥取へ針路を取り車のハンドルを握ります。折角の西方への旅路ですので自分にとっての前人未到(笑)の天橋立の観光もついでに、ということで宮津で一泊。翌日の鳥取到着の折には鳥取砂丘の見物も。双眼望遠鏡受け取りに花を添える良い思い出となりました。

松本さんのお店には予定通り15時に到着し、ドキドキの対面です(笑)。松本さん、その節は風邪を召されたばかりで体調が優れなかった中、完成したBINOの説明のみならず、持参した中古購入の10cmF5BINOのメンテナンスまでしてくださり、どうもありがとうございました。また実際にお会いして直接お話しすることにより、メールではわかりにくい事柄等もよく理解でき、BINOの運用に役立つ知識をたくさん得ることができました。実際、BINOを受け取ったのちに遭遇したトラブルも簡単なメールのやり取りで解消することができましたが、それはこの鳥取訪問で得た知識があったからこそです。私の住まいからはかなり距離があるのでなかなか難しいですが、もう一度訪問してお話を伺いたいと思うほど有意義な時間でした。

③周辺機材
もともと笠井10cm対空双眼鏡(売却済)や10cmF5BINO、さらにはビクセンBT-ED70S-A対空双眼鏡も所有しているため、アイピースは双眼用に一通り揃っていました。Masuyama32mm、XW20mm、14mm、10mm、7mm、LVW17mm、5mm、3.5mmなどが中心でしたが、今回の双眼望遠鏡制作を見越してより広角のアイピースの購入を思案し、昨年より発売された賞月観星XWA20mm、XWA13mm(100度)、UWA16mm、7mm、4mm(82度)の各種を取り揃えました。結果、広視野の迫力が素晴らしく、コントラストやシャープさも満足の行くXWAの2本が低倍率用のMasuyama32mmとともにメインアイピースとなりました。また、高倍率は使用頻度が低いため、XW7mmとLVW3.5mmは売却しました。UWA7mmと4mmは私の要求レベルでは代替えが十分な性能を有しています。

三脚はマンフロットの475Bという大型のアルミ三脚を使用しています。この475Bは複数所有しており、AOK AYO経緯台を装着して左右合計15kgほど機材を載せてテスト済みで、13cmF7BINOでの使用に対応できるとの判断です。実際の運用では脚部、エレベーターともに問題無く使用できています。エレベーターのおかげで中軸架台の延長筒が不要になりコストダウンになりますが、一番のメリットは延長筒を省略することにより、三脚の脚部の寸法を長く取ることができ、結果として脚三点を結んだ線が形成する三角形が大きくなり安定性が増すことです。実際載っている望遠鏡の重さも効いており、転倒の恐れは極めて低くなっています。また、エレベーターを使用しなくても仰角80度くらいまでは可能ですし、エレベーターを20cmほど伸ばすと90度もOKとなり、使い勝手は良好です。

収納ケースはアイリスオーヤマのRVボックス1150Dを使用しました。ホームセンターでサイズがぴったりの長座布団を見つけ、中に敷いて鏡筒を収納しています。人間が横になっても快適な座布団ですので鏡筒の保護には十分なレベルだと思います。

ファインダーは国際光器の正立ファインダーとスカイサーファーを装着しましたが、傾斜センサーとSkySafariのおかげでほとんど飾りと化しています。

④運用
3月下旬に受け取ったのはいいのですが、4月いっぱい天候が不純でいつまで冬が続くのかと呆れるほど晴れません。しかしこの期間に昼間の風景や2階のベランダより光害まみれですが実際の星空を眺め、光軸の追い込みや所有するアイピースとの相性を確かめたり、傾斜センサーとSkySafariの運用、BINOの組み立てなどの練習を繰り返しました。おかげで実際の運用時の組み立て、撤収はとてもスムーズに行えています。

GWの後半の5月になってようやく安定した晴天が訪れました。4月の不安定さのお返しのように晴天が続き、おかげで5月は6回も観望することができ、存分にEMS双眼望遠鏡の性能を堪能できました。観望地は胎内星まつりの会場となる天文台の駐車場のほか、より暗い県北の観望地2箇所を訪れました。特にGW後半の5月2、3日は非常に透明度が高く、事実上のファーストライトということもあり、そこで目にしたいくつかの著名な天体の美しさはとても印象深いものでした。

時期的に観望開始時の時間帯は春の銀河団を、次にこと座、はくちょう座近辺、そしてさそり座、射手座などの天の川の中心部、そして木星、土星といった惑星を見て終了という流れになります。

春の銀河団
アイピースはXWA20mmを使用。45.5倍、実視野2.2度です。瞳径2.86mmは適度に背景が締まり暗い天体を探すのに都合が良いです。しかし薄明終了直後の空は地上の光の影響も大きく銀河の観望には今ひとつ。それに何より13cm双眼と言えども銀河は遠く淡い対象です。同定するのが精一杯で形状や模様を楽しむまでには至りません。それでも乙女座銀河団の中の銀河の配置などの予備知識が無いにも関わらず、2.2度の視野の中に弧を描くように連なる一群を見つけることが出来たのは驚きでした。言うまでもなくこの一群はマルカリアンチェーンなのですが、双眼視のおかげで長時間覗き続けることができ、また両目じっくりと眺めることにより認識度が上がったための結果です。おとめ座銀河団はM84、M86からNGC4459までマルカリアンチェーンを辿り、そこから左へM88、M91、下へ降りて一番明るいM87、左のN89、M90、下がってM58、左へM59、M60と流れるように辿っていけました。そのほかに定番の獅子座トリオ、M104やかみのけ座のNGC4565、M64などを確認。その後おおぐま座近辺へ移動して、M97、M108、M109、M106、M101、M94、M63、M51を確認し、M81、M82へ。形状、模様などがある程度わかるのは限られた銀河ですが、双眼望遠鏡ならこれで十分かと思います。より大口径の反射系の望遠鏡の経験がない自分には銀河の同定だけでも楽しい観望でした。

天の川下り
アイピースはMasuyama32mm(28倍、約3度)で軽く流して、その後XWA20mmで迫力を楽しみ、最後にXWA13mmやXW10mmで特定の天体の詳細を観望しました。この辺は小口径の機材でも楽しめるところですので馴染みの天体が多く、M4、M6、M7、M8、M20、M21、M23、M28、M25、M22、M24、M17、M16、M11とまさに川の流れに任せるが如く次から次へと導入していきます。しかし、見慣れたはずのこれらの天体も13cmアポ双眼、特にXWA20の45倍100度での観望には圧倒されました。M6やM7の大型の散開星団は視野いっぱいにカラフルな星々が煌めき、M4、M22の大型球状星団はツブツブがはっきり見えます。M8、M20、M17などの散光星雲は白いガス雲のたなびく様子や、暗黒帯のスジが高いコントラストで浮き上がります。小口径では星雲状にしか見えなかったM11も光芒の中心まで星に分解してまるで球状星団のようです。そしてこれらの美しい天体を心ゆくまで覗き続けられるのも正立双眼視の醍醐味です。時間が経つのを忘れるほど、というのはまさにこのことでしょう。

惑星
この5月は当地では比較的気流が安定していたと思います。主にLVW5mm182倍とUWA4mm228倍で木星と土星を観望しました。13cmアポ屈折ですので気流が安定すれば大変よく見えます。経緯台での追尾ですが、双眼視と優秀な中軸架台のおかげで楽に観望できます。さすがに300倍とかは大変かと思いますが、自分としてはこの程度の倍率で十分と思っています。

⑤光軸調整について
EMSシステムの要であるXY調整ノブですが、2本の鏡筒がきちんと平行にセットされていれば回す範囲はごくわずかです。これは常々松本さんが仰っている通りでアイピースが持つ固有のバラツキを補正するものですが、実際アイピースを交換するときに稀にわずかに動かす程度で済みます。逆にいえば、鏡筒とEMSをセットした時にこのXY調整ノブを大きく動かさなければいけない時は、鏡筒2本の光軸がずれているか、EMSがきちんと装着されていないなどの異常が発生している知らせになります。鏡筒の光軸がずれることは滅多に無いですが、EMSの左右平行はドローチューブとの接続部が緩んだりして狂うことがあるので、そのチェックは重要です。

⑥銀ミラーについて
煌めく星々を見て感じたのですが、市販の対空双眼鏡に比べてEMSを使用した望遠鏡は星々の色がとても多彩に見えます。単純にオレンジとか青とかではなく、それぞれの色に濃淡を感じます。銀ミラーは赤系の色の反射率がアルミに対して特に高いそうですが実際にはどの色に対しても感度が高いように感じます。私は10cmF5BINO(銀ミラーにリフォーム済み)を2年間使用してきましたので以前からそう感じていましたが、鏡筒の性能が飛躍的に向上した今回は改めてその印象を強くしました。とにかく星の一つ一つの煌めきが美しい。本当に心が癒される思いです。

⑦SkySafariによる導入支援システム
中軸式架台に内蔵された水平エンコーダーと傾斜センサーAAS-2とSkySafariの連携による導入支援システムですが、想像以上に正確であり、また便利であると実感しました。セッティングも非常に簡単で、AAS-2を鏡筒のハンドルにベルクロで固定し、電源ケーブルをモバイルバッテリーに、水平エンコーダーの端子に信号取得ケーブルを接続するだけです。傾斜センサーは2型になってからWi-Fi機能も内蔵しているためNEXUSが不要(コレが素晴らしい!)となり、コスト削減と安定性が向上しています。アライメントも極めて容易で、まずは著名な一等星をSkySfariで検索しておき、視野の中心にその星を導入して画面上の「Align」ボタンをタッチするだけです。観望中にわずかなズレが発生したりもしますが、前述の方法で修正はあっという間です。そして運用においても観望記の中にある春の銀河の同定に凄い威力を発揮しましたし、その他の天体においても同様で、ドットファインダーと8×50の正立ファインダーも装着していましたがほとんど使用しないまま終わりました。iPadminiの設置場所もベストな位置でデザイン的にもBINOとマッチしておりとてもカッコイイと思います。

⑧これまでの運用から感じたこと
観望の感想の中の「アレが見えた、これが見えた」といったものは、実は鏡筒の性能によるものです。つまり13cmアポ屈折ならばこれくらい見えますよ、といったレポートでしかありません。しかしながら、長時間これだけ多くの天体を楽しく観望できたのは、正立双眼視による快適さ、肉眼で見た天空と望遠鏡で覗いた星空との整合性のおかげです。さらには、13cmアポ屈折望遠鏡を2本載せてもスムーズな動きを保証する松本さんオリジナルの中軸式架台。そして傾斜センサーと水平エンコーダーとSkySafariによるPush to導入支援システム。もちろん根幹をなす松本さんの発明であるEMS正立ミラーシステムを忘れてはいけません。これらの総合的な工夫と技術の結晶が素敵な星空観望へといざなってくれるのです。

その中でも特に感銘を受けたのが中軸式架台です。通常、13cmクラスのアポ屈折鏡筒を1本運用するだけでも経緯台を使用する場合は選択に苦慮します。だいたいの市販品は片持ち式のため反対側にバランスウエイトを要して大型化したり、スーッと動いてピタリと止まることが難しいものがほとんどです。松本さんの中軸式架台は、(これが非常に重要なことなのですが)パンとチルトの支点が望遠鏡の重心と見事に一致しています。そのおかげでこのスーッと動いてピタリと止まるのが自然に決まります。私はここに松本さんのフィロソフィーを感じます。単に正立ミラーシステムを用意して双眼望遠鏡を提供するにとどまらず、架台をはじめとしたあらゆる部分に創意と工夫を凝らして快適な眼視観望に対するトータルソリューションを提供する、それが松本さんの職人魂だと思うのです。

このフィロソフィーはシステム全体としての完成した双眼望遠鏡のいたるところに感じられます。例えば中軸式架台が2本の鏡筒を抑えるアリミゾのレバー。小型ながら非常に締めやすく、またラチェット式になっているのでチルトのクランプレバーと干渉しても簡単にかわすことが出来ます。そしてこのチルトのクランプレバーですが、非常にスムーズに動き、そしてとても軽い力で固定できます。固定力の増減も自由自在です。また、ハンドルバーと兼用のバランスウエイト。真鍮製のウエイトはとても美しく前後のスライドも滑るように動いて快適です。私のシステムは一番軽いアイピースが31.7mmアダプター込みで250g、一番重いのはXWA20mmの705gですが、このバランスウエイトの前後と鏡筒のフードをわずかに前後させるだけで架台の前後バランスが取れています。

⑨まとめ
天文趣味のきっかけが双眼鏡だったせいもあり、正立像の眼視(それも双眼)に徹底的にこだわる私にとって、松本式EMSミラーシステムは理想的なソリューションです。天文台の観望会で見せてもらう大口径の反射式望遠鏡で見る、例えば詳細な球状星団などもいいのですが、やはり私は煌めく星々の中に見つかる星雲、星団、そして一つ一つの星の輝きを眺めるのが好きです。銀ミラーの項でも述べましたが、私にとってのEMS双眼望遠鏡は最高の癒しタイムを醸し出してくれます。iPhoneに入れたお気に入りの音楽をイヤフォンで聴きながらのスカイウォークは浮世の喧騒、ストレスとは無縁の世界。松本さんの発明がなかったらこのような素敵な体験を知ることなく人生を終えたでしょう。EMS正立ミラーシステムに巡り会えて本当に良かったと思います。これから憂鬱な梅雨ですが、梅雨が明ければ夏の天の川、そして大好きな二重星団をはじめとする散開星団が目白押しの秋冬の天体が深夜には上ってきます。13cmF7BINOで観るそれらの姿を楽しみにレポートを終了します。

Comment by Matsumoto / 管理者のコメント;

I felt that Mr.Ebi has eloquently wrote for me with his close and kind explanations based on his valuable experiences.  I really recommend those who are planning to get EMS-BINO to peruse this report.
I was so moved, and at the same time, I would like to exhort some of my agencies who lack his attitude to study and actually master the EMS-BINO by themselves before marketing it.

海老さんより、渾身のリポートをいただきました。製作者が日頃から訴えたいところを、詳細に解説、代弁くださり、私が蛇足を付け加える余地がないくらいです。本当に感動しました。
海老さん、本当にありがとうございました。 続報も楽しみにしています。^^

(この場を借りて、(EMSの)代理店さん(海外含む)に苦言を呈したいと思います。EMSで営業をなさるのであれば、海老さんのように、まずは自分で使いこなしてみるべきです。そうでないと、お客さんに適切なアシストが出来る訳がありません。)

BORG-107FL-BINO by Mr.Zhao Xiaoqiang, China

Dear Tatsuro,

I haven’t contacted with you since purchase of EMS-Bino. Today I browsed your website and saw a lot of fabulous Binoscopes, which reminded me to write a letter about mine.

First of all, thanks for your great product.

In the fall of 2017, I started my plan of EMS-Binoscope. With the help of several friends, including Range and 2047 and others, my binoscope was finished in the spring of 2018. Up to now I have used it for one year and it is satisfactory.

The objectives of my binoscope are two set of Borg 107mm lens which included one piece of fluorite lens in each. One amazing feature of the Borg 107mm lens set is that the tube will be stretched out when used, while drew back when stored. So the 107mm binoscope could be very compact. The focusers are Feather Touch FTF3035.

My friend, whose online name is 2047, proposed the general conception for the binoscope and made the other components except the objective, focuser and EMS-Bino.

Attached are the pictures of my 107FL binoscope.

Good health and best regards,

Sunglasses of Beijing, China

Comment by Matsumoto;

It is my greatest pleasure to get reports from my clients.
Above all, this binoscope is the most impressive one I have ever seen.
I would like to extend my sincerest appreciation to you and those who had assisted you for the accomplishment of this fine Binocope using my EMS.

シンプルを極め、美を極めていて、言葉もありません。見事の一語に尽きます。
鏡筒保持パーツは、(取っ手を除いて)通常は4つの部品を組み合わせるのですが、画像を見る限り、ソリッドな素材から削り出しているように見えます。加工技術も半端じゃない。

SE120L-BINO by Mr.YN in Tokyo

参考に御社の「EMS-ULセット+IPDヘリコイド」を使用した自作の双眼望遠鏡がようやく一応完成しましたので、紹介の写真を添付ファイルで送付します。
EMSユニットや情報の提供有難うございました。
素人DIYですので加工精度は良くないですが、実用範囲内には作成できたと思っています。
架台はHF2経緯台で、アームを45度設定にしています。しかし、気軽に自宅のベランダからも見たいので、ベランダの幅が120cm程度と狭いことと、望遠鏡の鏡筒が比較的長いことからアームを45度にしたHF2経緯台ではスペース不足で扱いずらいので、ベランダで運用時にはアームを90度(垂直)設定としたHF経緯台にのせて使用しています。もともと自宅のベランダからは上部のひさしなどにより天頂方向は見えず、視界が限定されるので、天頂方向に向けられないアーム 90度(垂直)としたHF経緯台でも十分に使える感じです。
HF経緯台にのせる双眼望遠鏡ユニットとしては15.2kgの重量になりました。HF経緯台へのせたり降ろしたりを少しでも楽にするためにEMSユニットとバランスウエイトは外した状態の13kgの重量でのせたり降ろしたりしています。
鏡筒はケンコーのSE-120Lでアクロマートですが気持ちよく見える感じです。
天体の導入支援補助器としては方位環とデジタル傾斜計を用いています。

東京都 YN

3月11日 追記:

(1) バックフォーカス確保のため鏡筒を23mm切断しました。また、ドロチューブによるケラレが発生しないようにすることと、最手前の既存の絞りにドロチューブの先端が当たらないようにするためにドロチューブ先端を25mm切断しました。
ドロチューブはフルに引出しての使用は今後無いと考え、ドロチューブの先端部分のラックギアにかかる手前でドロチューブを切断しました。
SE-120Lのバックフォーカスは160mmのようなので、今回のEMSを使用すると5~10mm程度バックフォーカスが不足するような感じでした。鏡筒を23mm切断・短縮したことによりバックフォーカスが183mmとなったと思います。
松本さんの記述で「IPD 64mm時のEMSの光路長が166mmでマージンを15mmとして180mm以上のバックフォーカスが欲しい」とあり、これをカバーできそうだったので、絞りの削除などを行わない程度でおさまる範囲として選択しました。
眼幅66mmで近眼の私の場合、裸眼でEF19mm接眼レンズ使用時にドロチューブの引出し量は20mm程度で合焦します。

(2) 右側の鏡筒の接眼部は、手持ちにあった12cm用の接眼部がほぼ同一寸法であったので交換してみました。最新のSE-120Lの接眼部は途中にネジ止め段差があり120mm用鏡筒だけでなく、部品を外すと102mm用鏡筒にも適合できる寸法のようです。
また、右側鏡筒は接眼部のファインダー用アリミゾが使用可能なように回転させています。
合焦摘みとバランスウエイト(55mm径)との干渉が無く、外すこともできるような位置に現物合わせでしています。
とりあえずこの位置のファインダー取り付けは予定していませんが、取り付けたくなったときの準備です。取り付けたとしても使いやすさから90度ファインダーか更なる手元短縮のためのバランスウエイトの追加となるでしょう。片側の鏡筒に力が加わることになり片側操作で一時的に視軸がずれる可能性もあり好ましくない感じもしますがここを操作ハン
ドルを取り付けるベースとすると、現在の操作ハンドル取り付けより軽量化できます。

(3) 以前から交換していることですが、今回は特に鏡筒間隔D=162mm でHF経緯台ではギリギリの横幅となっており、HF経緯台の上下クランプのネジ摘みが干渉しないように既設の40mm径より小径の約19mm径の摘みにしています。6mm穴径のサイドから軸にネジで摘みを固定するタイプの音響用摘みが使用できます。内部に滑り止めギザギザがある場合は6mm
ドリルで削ればHF経緯台のクランプネジの6mm径頭に取り付けられます。
HF経緯台は耳軸部分で約308mmで水平回転部に向かってテーパ状に300mm程度まで狭くなっ
てゆきます。他のHF経緯台でも直ぐに使用できる汎用性を考え、この幅内に納まる設計としました。
テーパ状になっているので横幅を有効に使用できるように下側への寸法も極力短くなるようにしました。
鏡筒下部に部材が多くあるので、耳軸中心は鏡筒の中心として設計しました。これで大丈夫のようです。

(4) 耳軸には31mm径の黄銅の丸棒を長さ33mm程度に切断して使用しました。縦プレート側は13mm間隔でM5のタップ穴にして、M5ネジ2本で固定して回り止めしています。縦プレート側は幅寸法消費が無いようにネジ頭は座ぐって縦プレートから頭が出ないようにしています。
外側は中心に1/4Wのタップ穴を設け、アルカスイスクランプなどカメラネジ品が容易に取り付けられ双眼ファインダーが取り付けられる可能性としていいます。1/4Wは厳密にはカメラネジ規格ではないですが経験上だいたい使えています。
当然、アルカスイスクランプを取り付けるときはアルカスイスクランプにネジ穴を追加してイモネジで押しネジにして回転防止の対応が必要です。

(5) アルミ(A5052)切板部材は端面へのM5ネジ穴の作成しやすさと部材の販売単位でのコストパフォーマンスから50mm幅12mm厚、長さ1,000mmのものを購入して切断・穴あけ加工をして使用しました。購入の50mm幅は若干大きめですがそのまま使用しました。切断加工は長さ方向だけになるようにしました。

(6) バランスウエイト(外径55mm、内径12mm軸対応、883g)とウエイト軸(12mm径、M10ネジ部分長さ10mm、ウエイトスライド部分長さ390mm)は手持ちにあったものを使用しました。昔で記憶していませんがどこかの架台のジャンク品を入手したものだと思います。
片持ち固定なので振動要因となることを心配しましたが今のところ感じられません。
31.7mm接眼鏡使用時にバランスウエイトを手前側に持ってきたときにバランスが取れるように鏡筒バンド位置を調整して、できるだけ重たい対物レンズが遠くになり、操作しやすいように手前側が短くなるようにしました。
2インチ接眼鏡使用時にはバランスウエイトを遠くに移動させるだけでなんとかバランスはとれる感じです。31.7mmアダプタ2個で178gと接眼鏡2個を外し、例えばマスヤマ26mmを2個で768gを取り付ける。

(7) 操作ハンドルの握り部分は。ジャンクの安物三脚の雲台のパン棒で先がM5ネジになっていたので相手側にタップを切ってねじ込んでいます。

(8) 取っ手などはアルミフレームの20×20のもので、手で握って角が無く握りやすい種類ものを使用しています。断面中心に4.3mm径の穴があいており、M5のタップでそのままねじ切りできます。

(9) 上下方向の視軸は組み立てただけで、EMSの調整範囲内に入っていたので、それ以上の調整は行っていません。
水平方向の視軸はフォークのプレートのM6ネジタップに対する取り付ける鏡筒側のバンドに取り付けたプレートの穴の大きさの緩みを利用してEMSで覗きながらできるだけ像が重なるように動かして、その位置で鏡筒当たりM6ネジ2本を固く固定して、EMSの調整範囲内に入ったのでこれでよしとしました。
もともと横幅がギリギリだったことから加工精度不足で左右の鏡筒の位置のためにヤスリで穴を削って大きくしていたので、ネジを固く固定しないとなりませんでした。

EMSは調整摘みに回転リミッタがついており、安全な調整範囲が明確にわかり、自作時などはまずはこの範囲に入るように鏡筒方向を調整することにより、安心して組み立てられて良いです。以前に松本様の記述にあった「ユーザーで調節しているときに設定位置を見失って、調整摘みの回しすぎが多く発生したのでリミッタを追加した。」との記述が実感され、回しすぎの危険から守ってくれて安全です。従ってEMSの原点位置への復帰も、摘みのリミッタの真ん中の位置と簡単に認識できて、まずは鏡筒本体での視軸調整に努力して調整可能範囲内への追い込みをすれば良く安心です。
御社の中軸式架台使用の双眼望遠鏡では上下方向の視軸、水平方向の視軸を加工精度と組立て精度で調整範囲内に入れて維持していると思われますので感心します。何か組立て時の微調整の裏技みたいなものは用いているのでしょうか。

(10) 接眼部で2インチ接続でのEMSへのクランプが弱い感じがして使用しているうちに回転する感じなので、クランプネジを現在の2本から3本に追加改造してみようと思っています。IPD調整などしていて知らず知らずに力が加わっているせいかもしれません。

続報(3/12)

頑張ればハンド工具と電動ドリルでも作成できるかもしれませんが、私はDIYレベルの安価なボール盤(1-13MMチャックのもの、SK11卓上ボール盤、13,000円程度)と安価なチップソー(高儀 CS-100TA、8,500円程度)を用いて作成しました。精度など機械性能はあまり良くないレベルのDIY入門機種とも思いますが自分で加工するならこれぐらいはないと作業効率やそこそこの精度など作成が厳しいです。

Comment by Matsumoto / 管理者のコメント;

I am very happy to have another user’s report after a long time.
He has shown the good example of the Binoscope making with reasonable OTAs.
Thank you, Mr. YN !!

久しぶりのリポートコーナーへのご投稿です。
“Best or Nothing” ではなく、リーズナブルな鏡筒でも十分にBINOの効果を満喫できることをアピールいただけると思います。皆さんも挑戦してみてください。
YNさん、新鮮なご投稿、ありがとうございました。

追記:バックフォーカス確保のための鏡筒の切断量等、追記いただけますと幸いです。
YN様より、さっそく詳細な製作情報をいただきましたので、上記本文の下に追加させていただきました。これから挑戦される方には大変貴重なデータとなるはずです。YNさん、重ね重ね、本当にありがとうございました。(3月11日)

(9)の最後のご質問ですが、これは裏技ではなくて、内蔵ミラーはもともとハウジングに製造組み立て段階でスケアリングとセンタリングが調整できる構造になっており、レーザーコリメーターと測定器具によって調整すれば、必然的にお届けしたEMSの初期状態になるわけです。

YN様より、さらに続報をいただきました。自作される方の良い参考になると思います。YNさん、重ねてお礼申し上げます。(3/14)

TSA102-BINO (reform from TSA120-BINO) by Mr.Matt S. Canberra, Australia

Hello dear Tatsuro,

I hope you are well and safe from the storms that I have been watching on the news.
I recently decided to down-size my binoscope a little bit.  I replaced the two Takahashi TSA120 tubes with a pair of TSA102S to make for a lighter and more portable system as I also have an 18” scope I just completed.
I have not yet had a chance to try out the smaller binoscope but I expect it will also be successful.  The EMS-ULS and adapters are a direct fit and there is enough back focus for it to work as well as the original setup.  Range made a new cradle for me, I am using the same ‘D’ of 170mm so there is no need to adjust anything.
I took a couple of pictures today of the new setup.  Here is also a picture of my new 18” scope, it took me about 5 months build it.
the 18” is in a welded aluminium structure with carbon fibre poles and kevlar/carbon baffle. It is an F3.5 so I can stay seated even when looking at zenith.
I find the binoscope is a great complement to the big scope.
Stay safe,
Matt
Comment by Matsumoto;

Dear Matt,
Thank you very much for your thrilling report.
Congratulations on the successful reform of your TSA120-BINO into 102S-BINO and finishing the splendid 18”scope.
I am looking forward to have your further report after watching the targets of seasons.

Thank you for allowing me to post your report to my website.

Best regards,
Tatsuro

リフォームは増築だけでなく、減築というのもあるのですね。^^
どちらにしても、言語の壁を超えて、EMSのみ求められて最初のBINOを見事に作られ、さらに減築リフォームをやり遂げられました。お見事です。18インチドブも格好良いですね。

TOA130-BINO on TTS160-MOUNT (Mr. A in Tokyo)

テラスにコンクリートの土台を作ったのですがTTS160の架台もぴったりおさまりました。
松本さんに製作していただいた架台と望遠鏡のプレート部分は非常にうまくできており重たい鏡筒を上から簡単に載せることができます。簡単に載せれることは重たい鏡筒の場合は特に非常に重要なことです。
またバランスウエイト2個でバランスをとることを念頭に最小限のサイズで製作していただき見事2個バランスウエイトでバランスをとること ができました。 ありがとうおございます。
このプレートは一度視軸のアラインメントを行うと次回からはアラインメントは必要なくEMSのXY調整の微調整で視軸を簡単に合わせることできます。
TTS160架台の操作にまだ慣れていませんが一度星を1個もしくは2個アラインメントするだけでかなりの精度で星の導入追尾ができます。
望遠鏡を操作するコントロールノブの使い方に慣れが必要ですが非常によくできた架台だと思います。
重い鏡筒ですが簡単に載せれるよう松本さんの様に日ごろトレーニングを行い末永く楽しみたいと思います。
東京都 A
Comment by Matsumoto / 管理者のコメント:
This is a good example of “Making a binoscope  without making.”.
You can make a binoscope with a pair of EMS-UXL and TTS160-MOUNT along with the base plate.
「作らずに作るBINO」の典型のような例です。
EMS-UXLと90Φアダプター、そしてTOA130鏡筒、シンプルなベースプレートTTS160マウントがあれば、簡単にBINOが構築できます。
Aさん、最高の環境でのTOA130-BINOの実現、羨ましいです。^^
一通り観望されましたら、ぜひ続報をお願いします。 素晴らしいリポートをありがとうございました。

Cff140-BINO on the Center Mount (Mr.K in Kanagawa-Pref.)

①導入経緯
幼少の頃から天文に興味があり、子供向け宇宙図鑑を何冊も買ってもらったり各地の観望会に連れていって貰っていたりでしていましたが、小学校高学年辺りから段々と天文から離れていってしまいました。それからずっと休眠状態が続いていたのですが、5年ほど前に全く関係ないところから双眼望遠鏡を魅力的に紹介しているサイトに出会い、天体観望熱の再燃と、新たに松本さんが製作されている双眼望遠鏡に対する興味に火を点けられました。

倍率の計算式すら知らない状態からの再スタート、いきなりbinoというのは経済的にも知識の面でも敷居が高かったので、手持ちの双眼鏡を購入。東京の市街地でも肉眼では想像出来ないほどに星がみえる事に驚き、勢い衰える事なく卓上マクカセ、単眼屈折、ドブソニアンと歩を進めていきました。
眼視の世界に夢中になっていく一方で、松本さんのサイトのバックナンバーはじめ、先達ユーザーの方々のレポートも追っていました。
使用していた機材には、
・双眼鏡は長時間の使用で手ブレと重さが気になる。口径や倍率の面からも一つの天体をじっくりと観察するには力不足。
・単眼望遠鏡は光軸調整、観望姿勢、単眼裏像倒立像などで違和感疲労感。
それぞれ光学性能の面でというよりも、機材そのものの根本的な部分での不満を感じていました。
そういった中で天文再燃のきっかけであったBINOへの憧れは褪せるどころかますます大きくっていったこと、色々と機材を所有したり覗かせて貰ったりする中である程度自分の理想の星見のスタイルが定まっていったこと、また私生活の方で節目を迎えたこともあり、松本さんへのオーダーに至った次第です。

②使用鏡筒ーCffについて
自分は普段自宅から星を見る、機材を使う機会は滅多になく、スケジュールに余裕が出来た時にある程度気合を入れて、星見の為だけに車で遠征に行く事が殆どです。なので無理が生じない程度に出来るだけ大きい13cmクラスを選択、複数機材の運用管理するほどの余裕がなく、BINOの導入に際して手持ちの機材を全て処分し、唯一の所有機材とする事に決めていたので、低〜高倍率まで満足度の高い見え味が期待できるハイエンドの三枚玉アポを探す事にしました。また、高倍率の観望よりはなるべく低中倍率、広視界(出来れば最高実視界3度以上)を中心に楽しみたいと思いました。
TOAは性能に定評がありますが、このクラスの中でも一回り大きく重いのを販売店でみて諦めました。TECは14cmなのにTOAより軽量に出来ているのが魅力でしたが、実視界3度を取るには焦点距離が少し長過ぎました。APM-LZOSとAstroPhysicsは理想的なスペックでしたが、値段がTOAを基準にしてもひと回りふた回り高い、そもそも後者に至っては入手自体が困難という事で、ちょっと手が出ないと思っていました。
悩んでいる中でCloudynightsのフォーラムで見つけたのがCFFというポーランドの新興メーカーの鏡筒でした。日本では代理店もなく殆ど認知されていませんが、
・140mmf6.5の短焦点寄りなレンズ設計
・レンズ組み付け精度、温度順応に比較的寛容なオイル充填式
・3枚玉140mmにしては控えめな大きさ、重量(鏡筒+3インチフェザータッチフォーカサーで8.1kgでした)
などの点はbino向きでないかと思いました。上に挙げた他の高級鏡筒と比較をした海外ユーザー達の評価も悪くなく、問い合わせた際の対応や相談にも丁寧に応じて貰ったこと、そして他の鏡筒と一線を画すデザインがとても魅力的に思えたという事もあり、ここの鏡筒を選択する事にしました。

ちなみに値段ですが、BINO用に2本まとめて注文したということもあってか、送料含めてもTOAと変わらないか、専用ケースなど考えるとややお値打ちなのではといった値段にして頂けました。とても良い選択が出来たと個人的には思っています。
肝心の光学性能について、このクラスの鏡筒を他に覗いた経験がない為詳しいレビューは出来ませんが、コントラスト、視界のクリアさが卓越している印象です。月惑星、明るい恒星や地上風景などをみても色収差は感じられず、360倍を試しに掛けてみても鑑賞価値のあるシャープネスを保っていました(勿論低倍率時と比べると大気の影響もあり若干劣りますが)。
140mmの三枚玉という事で極端なトップヘビーには悩まされましたし、あちこちに気軽に運ぶにはケース含めると大きすぎる重過ぎる、大気の影響も受け易いですが、それを補って余りある像質、大口径の解像度です。自分自身はあれこれと鏡筒を比較する趣味はないのですが、とにかくこの鏡筒が見せてくれる世界にはとても満足しています。恐らく同社の屈折鏡筒は現在日本で所有しているのは自分だけだと思うので、ご興味のある方がいらっしゃれば覗いて頂く機会があれば良いのですが…

③双眼効果について
鏡筒自体の性能について述べさせて頂きましたが、それ以上に単眼と双眼の違いは驚異的なものがあります。母に月をみせた時、最初眼幅調整が分からず単眼で覗いていたのですが、上手く双眼で見ることが出来た時には「望遠鏡を2本並べている意味がやっとわかった!」と叫び声をあげていました。
立体感、解像度、コントラストの向上などの効果は他のユーザー様が証言している通りですが、なかなか実際に覗いてみないと本当の意味で実感するのは難しい様に思います。自分も先達の皆様のレポートはかなり読み漁り、binoの見え味について想像は膨らませていたのですが、実際に覗いた時の感覚は想像とは全く異なるものでした。
喩えとして適当かわかりませんが、単眼とbinoは自分にはアップライトピアノとグランドピアノの違いに似ている様に感じます。音質だけをとって「いい音」を出すピアノはアップライトにも数多ありますが、キータッチ、ダイナミックレンジ、音の拡がり方など前者と後者では同じピアノとして一括りにすることすら憚られると、実際に演奏すると誰でも感じるほどの違いがあります。3枚玉アポで双眼を組んだ自分が言うのも難ですが、用途にもよりますが、運用環境さえ整えば同じ値段でも輸入アップライトより国産普及品グランド、高性能アポ単眼よりもアクロ、セミアポ双眼の方が感動、満足度が大きいのではと個人的には思ってしまいます。それほどまでに双眼の威力は凄まじいものでした。

④光軸調整について
自分に縁のあるピアノをbinoのたとえ話に持ち出しましたが、両者には一点、決定的に大きな違いがあります。ピアノは自分の理想の音を出すために長い鍛錬が必要ですが、binoはいくつかのポイントを押さえておけば、あっという間にそのbinoが持つ最高の像を見ることが出来るという点です。
かくいう私も実際にbinoを持つまでは光軸調整に一抹の不安を抱いていました。「市販双眼鏡メーカーが精密な機械をもって調整している光軸を、自分の眼で合わすことが出来るのだろうか」「厳密に光軸の合っていないbinoを気付かずに覗き続けて、binoの性能が発揮出来ないばかりか眼を悪くしてしまう(?)のではないか」。結論から言えば全くの杞憂でした。
いわゆる御三家をはじめとする有名光学メーカーの双眼鏡でさえなんらかの原因で、許容範囲内だったとしても光軸がズレるものが珍しくない中で、自分で納得いくまで調整出来るbinoは、市販の正確に組み付けられた高級双眼鏡と同じかそれ以上に気持ちよく覗く事ができました。
経験上文字を読んでいるだけでは不安は拭いがたいと思いますが、実際に触ってみれば文字通り「案ずるより産むが易し」、反射望遠鏡の3点ネジによる光軸調整はもとより、フォーカシング作業よりも容易に素早く行う事が出来ました、と体験談を述べるにとどめようと思います。ただ一点だけ「完璧な光軸のbinoでも覗く人間の視軸が輻輳したり斜位があればズレてみえるし、逆もまた然り。注意が片手落ちになってはいけない」ということだけ念頭においておいた方がいいかもしれません。

⑤中軸架台ー運搬、取り回し、操作性について
140mm3枚玉アポという事で、覚悟はしていましたがやはりお気楽観望用の機材の範疇からは一歩踏み出しています。しかし中軸架台、単体鏡筒管理を中心に松本さんにbino全体のデザインをシンプルに突き詰めて頂いたおかげで、とても簡単に運用させて頂いております(参考になりそうな写真を何枚か撮ってみました)。逆に中軸架台などがなければ、僭越ながら自分は天文ファンの中では比較的体力のある方だと思いますが、このクラスのbinoを導入しようとは考えられなかったかもしれません。
究極と言っても過言でない様に思われるシンプルさを達成しながら、運搬、組み立ての簡便さから、鏡筒平行度、200倍超の追尾も微動の必要性を感じない滑らかさ、フリクションを自由に調節可能にする強力なクランプ機構など、必要な機能は十二分に備わっています。自動導入、追尾などを考えれば他の架台を考える余地がありますが、フリーストップの架台として、特に大型binoでは他のものを検討する気になれません。また、鏡筒リングに取り付けて頂いたL字型金具ハンドルとあわせて、比較的低い位置で望遠鏡を取り付ける事が出来る点も運用のし易さに一役買っていると思います。

⑥常用アイピースと前後バランス
アイピースは良いものを最小限の組合せで、という事で、Masuyama32mm、Nikon nav-hw17mm、(14mm、12.5mm)、10mm、2倍powermate、28倍約3度から182倍0.56度を常用しています(より高倍率を使用したい場合はpowermateと単焦点アメリカンアイピースを組み合わせます)。見え味の他に、重い2インチアイピースで統一することでシビアな前後バランスを解消するという狙いもありました。しかしそのままでは一番軽いmasuyama(実測441g)からnav-hw10mm+powermate(1073g)まで、大きくバランスが崩れます。色々と試行錯誤した結果、masuyama使用時にpowermateを入れたネオプレーン製レンズケースをハンドルに掛け、持ち手の上に乗せると安定性、操作性を損なわずバランスを取る事ができました(青い金具のレンズケースにはフィルターが入っており、フィルターボックスとあわせてアイピースより素早く交換が出来ます)。これにより常用アイピースの範囲で、フードの長さ調整などバランスを取り直す手間を殆ど掛けることなく(カウンターウェイトの位置調整だけで)、無駄なウェイトを極力廃しながら快適な操作をする事が出来るようになりました。
また当初天頂に鏡筒を向けた際フォーカサーの内側ノブがピラーに干渉しましたが、松本さんにノブを取り替えてもらうことで、水平から天頂まで360度自由に鏡筒を振り回すことが出来る様になりました。

⑦初遠征
8月11日は月齢新月とペルセウス座流星群、そして自分の空きスケジュールが重なる滅多にないほど良い条件に恵まれた遠征の機会でしたが、私の住む関東近辺は全滅。普段なら諦めるのですがこれ以上初遠征の機会を先に延ばしたくないという事で、岩手の某高原まで遠征しました。お盆の帰省ラッシュと重なり行きに掛かった時間が9時間ほど(帰りは6時間弱でした)、現地に到着したのが22時過ぎでした。
やっとの思いで到着した現地は満天の星空、流星群の極大日が近づき、彼のしし座流星群ほどではありませんが、もはや有り難みが薄れるほど大小流星が飛び交っています。早速望遠鏡を組み立て(暗闇でもあっという間でした)skysafariのアライメントがてら火星から観望開始、土星〜天の川を上り主要な天体を拾いつつ秋の天体まで観望していきました。スカイサーファーと7倍正立ファインダーを装備していたのですが、masuyamaで3度あればファインダーなしで火星の導入は容易で、その後高倍率でアライメントしてしまえば後はskysafari+傾斜センサー、エンコーダの独壇場、ついに一度もファインダーを覗くことなく飾りのまま終わってしまいました。超広視界アイピースを使った観望はこの世からどこまでも遠く美しく離れた世界、殆ど望遠鏡を覗いているという感覚がなくそのまま宇宙を自由に漂っている様な錯覚に陥ります。3時間弱経ったところで雲が一面に広がり無念の撤退となってしまったのですが、長距離遠征してよかったと思えるだけの成果がありました。いくつか特に印象に残った天体についてコメントしようかと思ったのですが、二重星、散開星団を中心にひとつひとつが横浜で観望した時とはあまりにも別次元に美しく映えていてコメントし切れないこと、言葉を尽くそうとと試みるほどに実際の感動から離れていってしまう様な感覚に陥ったので、具体的な天体を対象にしたコメントは一旦控えさせて頂きたいと思います。とにかくたった一回の観望でなにか世界観のようなものまでが変わってしまいそうになる経験で、今後の機会が楽しみです。

⑧最後に
思わぬきっかけで再開した天文趣味ですが、自分には勿体ないほどに美しい世界をbinoは見せてくれました。色とりどりに輝きを放つ星々、宇宙の果てで神秘性を湛えながら存在する星雲、銀河、球状星団…それらを眺めながらあれこれと思いを巡らせる時間は、憂い多いこの世界を生きていく大きな糧になります。スケジュール的になかなかこういった機会は取れないのですが、比較的体力や眼が充実している内にこの様なbinoを手にする事が出来た幸運と、この世界に導いて頂いた先輩ユーザーの方々、鏡筒を供給して頂いたcff telescopesのCatalin氏、そして素晴らしいEMS-binoを発明、製作して頂いただけでなく、その普及に尽力されてこられた松本さんに感謝致しまして、長文になってしまいましたがレポートを終了させて頂きます。ありがとうございました。

・番外編ー改良点
ここでは実際に使用して、今後手を加えていこうかと思案している点を2点だけ報告させて頂こうと思います。
フィルターボックスについて、手持ちの中でNDフィルターとidasのlpsフィルターは問題なく使用できたのですが、baaderのUHCフィルターが厚く、スロットに入りませんでした(写真有)。そういったものは使用しないという事にしようかと思っていますが、一応報告だけさせて頂きます。
もう一点は操作ハンドルについて、200倍を超えての操作開始時に、少しガタを感じます(中軸架台の問題ではなさそう)。アリミゾのロッドホルダーを固定するネジを2点留めにする事で更に操作性が向上するかも…などと素人考えを巡らせていますが、これももし今後のご参考になる事があれば幸いです。

Comment by Matsumoto / 管理者のコメント;

微に入り細に入り、BINOの運用面での工夫や順応についてまとめてくださり、未来のユーザーさんのみならず、すでにユーザーになっている方々にも非常に参考になるリポートをいただいたと思います。
製作者の意図もしっかり代弁してくださっていて、非常に感激しました。
また季節が一巡した頃にでも、ぜひ追加リポートをよろしくお願いします。^^
この度は、非常に価値の高い詳細なリポートをありがとうございました。
(フィルター枠が厚くてディスケットに入らない場合は、フィルター枠を薄い物と交換すれば解決しますのでご相談ください。(枠は確保しています。))

FC100DL-BINO on AZEQ5GT

今回のBinoは松本さんに製作していただいた2作目の BINO になります。
この BINO は東京都心で使用することをメインに惑星、月をメインで見るために製作していただきました。
望遠鏡は惑星、月用として定評のあるタカハシの
FC100DL 10㎝ 2枚玉 フローライトアポです。
架台はSkyawatcher製 AZ-EQ5GT架台で赤道儀と経緯台の両方が選べる架台です。
惑星、月ようなので高倍率が必要になります。対象が明るいのでGOTOは必要なかったのですが高倍率での使用のため追尾機能は必須と考えました。 松本さんに望遠鏡の製作を相談し製品を製作していただきました。
この架台はオリジナルの設計では経緯台と使用する場合横側に望遠鏡を設置してもう片方に他の望遠鏡を付けるかカウンターウエイトを付けバランスを取る方式です。 ただこの方式では望遠鏡を片側保持のため振動に弱いと考え松本さんと相談の上コの字型のマウントを製作していただきその上に鏡筒を載せる形にしていただきました。 この方式ですと両側で保持しているため片側より安定しています。 今回も松本さんの有り余るアイデアを存分に注ぎ込んでいただき素晴らしい BINO が誕生いたしました。
この BINO が優れいている点
1)視軸が1回の調整で何度鏡筒の付け外しを行っても簡単に視軸が合う構造になっている。
右側のアリミゾに調整機能がありアリミゾクランプを押し付けると意図した方向にいつも向いてくれます。もちろんEMSのXY調整機能がここで威力を発揮します。
(詳しくは松本さんのHPに動画がアップされています。)
2)完全バランスが取れる
望遠鏡にアリガタがついており前後にずらすことによりバランスがとります。またカンターウエイトの位置を決めると完全バランスが取れます。 たぶんこれによりかなりの過積載をしても問題なく自動追尾ができると思います。
3)脱着式のカウンターウエイト
これは便利です。 一度バランスをとるとカウンターウエイトの位置を変更する必要がないですがカンターウエイトが脱着式のため簡単に取り外しができます。 マンションのバルコニーで BINO を組み立てますが脱着式のため非常にに簡単に設置できます。
これらの機能により望遠鏡の設置が本当に楽に短時間にできます。
4)価格が安い
鏡筒バンド+コの字型マウント+脱着式カウンターウエイト+光路短縮するための接眼部を合わせて12万円ほどでした。
(EMSは別です。) もし自作や他メーカーから部品を集めて製作するこんな金額ではできません。
5)デザインが美しい
いろいろな会社の製品を組み合わせて製作していただいていますが非常に美しいので所有していて誇らしい気持ちになります。
昨日実際に BINO を使用し木星を覗いた感想を述べたいと思います。
バルコニーが南西方向を向いているため木星を見ることができるのが夜12時頃になります。春霞のためぼんやりした空で北斗七星がようやく見えるような天気でしたがシーイングは良かったと思います。アイピースの持ち合わせがHyperion Zoon(8mm-24mm)と2.25倍バローレンズしかありませんでしが最高倍率の約250倍でも像が全くぼやけることなく今まで見たことのない鮮明な木星を見ることができました。たぶん300倍以上の倍率で見ても鮮明に見えるのではないかと思いました。やはり両眼で見る惑星は細部が見えるのと木星自体が非常に大きく見えるため双眼高倍率での木星の大きさにびっくりしました。 また架台のAZEQ5GTの自動追尾は全く問題なく木星を視野にとらえ続けさらに高倍率でも問題なく使用できると思いました。 架台組み立て時に架台の水平方向駆動部分にガタがあり気になっていたのですが実際の観望では全く問題ありませんでした。強風の時は問題になるかもしれませんが。。。
この素晴らしい BINO を 使用して好きなときに都心の自宅で惑星、月を観望できることが幸せです。
東京都 A
 Comment by Matsumoto/ 管理者のコメント;
納品後、神速のすばらしいリポート、ありがとうございました。
これからじっくり観察され、続報をいただくのが楽しみです。
光害はともかく、大変開けた視界に恵まれたベランダ観望の条件が整われ、羨ましい限りです。^^

BOR77ED-BINO (Mr.T in Tokyo)

 

######  ファーストインプレッション編   ######

  • 導入の経緯

安くてコンパクトなBINOが欲しい!というオーダーで松本さんに連絡した次第です。

完成品を実際に手にして、都内マンションの狭いベランダでも何とか運用できるサイズと重量であり、あまり口径を欲張らなくて正解だと感じました。

BINO本体 全長約47cm (フードを縮めた状態)

鏡筒+架台+その他アクセサリー 約6.4kg (三脚は含まず)

  • 光軸調整について

平行法による光軸調整について、ステレオ写真での練習をどう生かすのか、今ひとつイメージがわいていませんでした。松本さんに質問したところ、ご丁寧にメールで説明して下さり本当に助かりました。

【松本さんからのメール】

『うまく平行視線で融像しますと、両目で見て、中央に左右のアイピース(射出瞳)が融像した像があり、左に右眼で見えている左のアイピースが、右に左目で見えている右のアイピースがあります。つまり合計3つの像が見えることになります。』

なるほどと思いつつ、頂いたアドバイスのもと何度か試していくうちに、徐々に感覚が掴めてきました

XYノブの操作については、マニュアルやユーザーレポートを繰り返し読んで勉強しました。アイポイントから徐々に目を離して平行視していくと、輻輳で認識出来ていなかった分の左右のズレがどんどん現れてきます。特に明るい恒星でやってみると、左右に像が離れていくのがよく分かります。

(特に参考にしたページ http://www.page.sannet.ne.jp/mazmoto/tomiyama4-j.htm

なお、このBINOは市販のアルカスイスパーツを多用したモデルですが、通常の望遠鏡に付いているアリガタアリミゾに比べて薄く、噛み合わせ部分が小さいです。一度鏡筒をT字プレートから取り外して再び組み立てるときは、鏡筒をしっかりプレートに押しつけるようにすれば光軸の再現性が保たれるというアドバイスを頂きました。

スラリとした中軸架台は、ずんぐりとした架台に見慣れた身としてはかなり新鮮です。極めて軽く、センターポールだけの状態だと約1.2kgです。クランプフリーにすると指一本で操作でき、気持ちのいいくらい 「スー、 ピタッ」が実現します。

これは考え抜かれた設計の賜物かと思いますし、松本さんのサイトでもBINO本体の重心と回転軸の一致は繰り返し言及されています。実際に使ってみて、凝ったベアリング機構などは必ずしも必要ないと感じました。

この架台の性能を最大限に引き出せるかどうかは、ユーザーによるバランス調整にかかっているようです。私の場合は、鏡筒に取り付けられたプレートにメモリシールを貼り付けて目安にしています。

調整がうまくいけば高倍率でも十分追尾出来ます。もちろん多少の振動が発生しますが、私はあまり気にせず普段の二重星観望に使っています。

  • 覗いてみて

美しいディフラクションリングをまとった恒星像を、しかも両目で楽しめるのは自分にとって最高に嬉しいことです。プリズムが多用された対空双眼鏡にありがちな歪んだ星像とは全く違います。

プリズムが使われた双眼鏡か、それとも裏像の単眼かという二者択一を打ち破るEMS BINOは本当に素晴らしいです。従来の機材につきまとうストレスを何ら感じなくていい訳です。また、見口がしっかりしたアイピースを使えば、VRゴーグルの「没入感」に似たものを味わえます。何と贅沢なんでしょうか…‼

  • 最後に

自分のような天文初心者の若造にEMS BINOは早すぎるのでは…?!と悩みに悩んだ末の注文でした。貧乏サラリーマンには高価な買い物でしたが、いやー今では全く後悔していません(笑)。大満足です。

このBINOを製作して下さった松本さんに感謝を申し上げます。どうぞお体に気をつけて頑張って下さい。松本さんにしか出来ないモノづくりを今後も期待しています。

Comment by Matsumoto / 管理者のコメント(1/2)
Tさんが非常に簡潔、的確に製作者の意図の全てを代弁してくださった感じで、付け加えることはほとんどありません。
Tさんには、2017年の12月後半に当方で完成したばかりのBINOとご対面いただき、後日宅配でお届けしました。

######   和歌山遠征編 ###### 

先日、天文マニアに大人気の和歌山県某所へ出撃したのでご報告します。白浜で子どもにパンダを見せる「ついで」の旅ですので、色々制約がありましたが充実した初遠征となりました。

  • 機材の輸送について

BINOを解体して荷造りしたところ、それほど大きくない箱に三脚以外のものが全て入ってしまいました。写真では、箱のサイズが伝わればいいと思いA4ファイルと比べてみましたが…どうでしょうか(*_*;)。

なお、安全のため更にもうひと回り大きな箱に入れて二重にしましたが、それでも非常にコンパクトです。軽自動車のトランクに余裕で収まります。

  • 観望記録

いくつか印象に残ったものを抜粋します。

【おとめ座 マルカリアンチェーン】

もやっと見えるひとつひとつのシミが何千億個の星の集団かと思うと、宇宙があまりに巨大であることに背中がゾクゾクしました。他人が撮った写真は散々見たことがありましたが、自分で機材を操作して覗いてみて初めて「本当にそこに存在したんだ!」と感じた次第です。

【しし座 M65 M66 NGC3628 三つ子銀河 】

【おおぐま座 M81 M82 ペア銀河】

メジャーな銀河なら小口径でも非常に見応えあります。出来ればより大きな反射式とサイドバイサイドで比較したいところですが、自分には到底機材を揃えられません。そこで、市販の天体スケッチ集を開いて口径別の見え方を確認しています。8cm屈折スケッチと比べてみて、このBINOは明らかにそのワンランク上をいくイメージか、中口径反射で描かれたものに見劣りしないかも!という印象を受けました。

【ケンタウルス座 オメガ星団】

こんなもの日本で見えるのか半信半疑でしたが、南紀の澄み切った冬空の中、しっかりと浮かび上がった姿を確認できました。導入した瞬間、眼前に迫る光に思わず声をあげました。やはり双眼だと、対象がまさにそこにあるという感覚が強いです。写真のようには見えないはずなのに、これはこれで不思議と満足感があります。

  • 導入支援システムについて

時折強風の吹き荒れる海辺でしたのであまりに寒く、観測以外のところでもたつくのは命取りでした。松本さんの導入支援システムは大変便利で、次から次へと対象を視野に入れられてスムーズに進められました。仮にうっかり三脚の位置をずらしてしまったとしても、RESTART ALIGNで近くの輝星を一つ設定すればあっという間に復帰出来ます。

この架台は、どんな天体でもまあ試しに見てみるかという気にさせてくれます。全く億劫にならないのです。そして実際に覗いてみて、やはり小口径には厳しいなと思ったり、いや意外と見えるぞと発見したり。その意味で、自分の鏡筒で見える天体の限界が何なのか初めて分かるようになりました。これまで手にしてきたものは、結局真の実力を試してやれなかったと思います。全く松本さんのシステムのお陰です。

  • 最後に

もともと自分は四国の山育ちなので、光害の無い空は見慣れているつもりでした。しかし、もっと宇宙は深く巨大であるとはじめて感じて、これまでで一番幸せな観望となりました。今後、こういった軽量BINOシステムが更に世に広まり、眼視観望の喜びを味わえる人が増えることを願います。

Comment by Matsumoto / 管理者のコメント(2/2)

EMS-BINOの特長を実に簡潔に網羅しておられ、久しぶりに溜飲が下がる思いで読ませていただきました。
光軸調製についてのコメントもお見事で、ご自身が理想的な方法をマスターされていることが読み取れます。
もちろん、ハード的な部分も重要ではありますが、『観察者がアンダーとオーバーが識別できること』の方がはるかに重要なのです。
ピント合わせが可能なのは、観察者がピント位置のアンダーとオーバーが明確に認識できるからであり、初心者の方にピント合わせを託すと、大抵は、恐る恐る調製ノブを超スローで回すので、ピントの山が全く掴めないように、光軸調整のキモが理解できていない方は、迷いのない調製が出来ません。その辺のことを、製作者以上に簡潔に分かりやすくご説明いただいたことに、驚きと興奮を禁じ得ません。
AAS-2(傾斜センサー)も使いこなしてくださっているようで、大変嬉しく読ませていただきました。通常の架台であれば、水平、垂直軸にエンコーダをセットすれば良い話ですが、中軸架台のメカを極限までシンプルにするためには、傾斜センサーは必須のアイテムでした。

Tさん、この度は非常に素晴らしいリポートをありがとうございました。
季節が巡りましたら、また続報をよろしくお願いします。^^

 

WSP2018 with 140APO-BINO by Mr.Yuri Petrunin

Dear Tatsuro,
The WSP at Chiefland (instead of usual, but destroyed by hurricane Key West place) was quite short by timing due to weather conditions.
In 3 night we had only two to observe and in those two – only before 10PM (so, total appr. 5 hours of whole trip), after that, the fog was coming and staying until next morning.
And this fog did not give us any planets )-:
But it was enough for testing the 140Bino, it works great on deep sky and on it it was appr. equal to APO200ED that was near by, but the 140 bino had wider field.
Adjusting optical axis for me was not difficult and flawless, but not as easy for other people, since it takes time to set up for each personl, but when set up was done the impression was like” “wau, now I see what these binoculars about!”.
Regards, Yuri
Attached please find a few pics:
I am using Mitutoyo 100mm block for checking the bino after long trip on the road (~3000km), same block is used as a “gage” for setup of my IPD.
Best regards, Yuri

Comment by Matsumoto / 管理者のコメント

Mr.Yuri Petrunin sent me the hot report of WSP2018 with the TEC140-BINO on TTS-160.
I would like to extend my biggest applaud on his feat of his new binoscope.  Thank you very much for the follow-up report with the fabulous photos, and I will be looking forward to seeing your following reports.

経営者自らが実際にBINOを組み立ててみる、使ってみる。大切な姿勢であり、頭が下がります。その度に引き合いに出すのも何ですが、その裏には、そうでない業者さんが多いという実情があります。