
ちょっと早いですが、解答をUPしますね。^^
Innovation of Astronomical Telescope
正立ミラーシステム(EMS)を開発した松本龍郎のサイト。 たった2回の反射で天体望遠鏡の像を正立像にします。
Tatsuro Matsumoto; Inventor of the EMS, Erecting Mirror System. EMS offers non reversed upright image with no additional undesirable abberations.
図の中に、A 例、B 例のレンズの結像方程式と、解答を示しました。
左上の角が座標系の原点で、上の右向きの横線が S 軸、左の下向きの縦線が D 軸です。S 軸の目盛り単位=m(メートル)で、D軸の目盛り単位=ディオプトリー( 1/ 焦点距離(m))です。当然ですが、エクステンダーは凹レンズなので、度数には-が付きます。
2つの曲線の交点に相当する点から、問題の条件を満たす、S と D が求まるわけです。
問題の条件を満たす エクステンダー(A 例) に投射される虚物点(望遠鏡対物レンズの焦点)の 物点距離=30mm 、エクステンダーの度数= – 16.666・・D、(焦点距離= – 60mm)ということになります。
ややこしいですが、3xの拡大率が得られる物点距離 S とDの再現は、グラフではなく、座標軸を – s 方向に 0.01 移動することで得られます。
このエクステンダーは、物点距離=30mm で2倍、40mm まで繰り入れると、3倍のバローとして機能するということです。
解説(&解答)は、2~3回に分けて段階的に詰めて行きますので、途中で閃いた方は、すぐにお知らせいただけると幸いです。
まず、超前提を誤解していては、全く先に進めません。
以前に、「鏡筒を3cm切ったら、対物レンズの焦点距離も3㎝短くなりますか?」というご質問があったことをご紹介しましたが、繰り出し装置を伸縮させても、対物レンズの焦点位置は微動だにしないこと!理解していましたか? そうでなかった方は、上記の初心者さんの噴飯ものの質問を笑えませんよ! ズボンの裾を3㎝切っても、あなたの脚は、3㎝短くなりませんから! 今回の問題で、まずはそこが一番重要な前提です。 前回、”レンズ系の非破壊検査”の方法について、ご紹介しましたが、今回の問題に数式すら組めなかった方は、非破壊検査の記事も曖昧なままスルーしておられた方です。
対物レンズの焦点位置は動かないこと、まずは、それがこの問題の最初にして重要な前提です。望遠鏡のスペックが分からない、というのも、望遠鏡のスペックはこの問題に全く関与しないということです。
この問題の主役は、”エクステンダーユニット”であり、他は全て脇役なのです。
エクステンダーの虚物点であり、動かない点である、対物レンズの焦点に対して、2倍の拡大率を確認したエクステンダーを10mmだけ対物側に移動させたら、拡大率が3倍になりましたよ! という問題です。
1/s’ – 1/s = D (1/f) に未知数を代入し、A 例と B 例で2つの方程式が組めれば、この問題は解けたも同じです。
ここで、問題になるのは、A 例 だけでも、公式の形のまま、未知数をS, S’ ,D としてしまうと、方程式が2つあっても、未知数が3つになるので、計算に難航し、挫折してしまうでしょう。
問題の条件に、拡大率=2倍、3倍、とあるので、A 例では、S’ = 2S なので、そのまま代入します。3つの未知数が2つに減り、問題解決の道が開けます。
B 例は、S,S’ とも、A 例とは、異なります。それを T,T’ とすると、1/T’ – 1/T = D (1/f) となりますが、A 例と同じ未知数を使用しないと、問題は解けません。問題の条件から、T=S+0.01, で、T’ = 3T =3(S+0.01) として結像公式に代入すれば、A 例と同じ未知数 を使用した、もう一つの方程式が組める訳です。
2つの方程式さえ組めれば、以下の連立一次方程式と大差ない問題になります。
x + y = 5
2x + y= 6
「基礎光学の知識が何の役に立つのか?さっぱり分からん!」とか、友人から言われ続け、初心者の方に分かりやすい説明を模索して来ましたが、レベルを単に下げるよりも、多少難しくても、”役に立つ!”ということを分かってもらえる練習問題も良いかな?と、この問題を作りました。
問題の条件;
上図のように、エクステンダーレンズユニットを繰り出し装置に固定、それに何らかのアジャスタブルな伸縮管を介して、撮像カメラをセットします。
エクステンダーユニットは、焦点距離、パワー、主点位置、レンズ構成枚数 のどれも分からないブラックボックスとします。
分かっているのは、
1. 短めの延長管で、丁度望遠鏡の直焦点に対して、2.0 倍の倍率が得られたこと。(A)
2. その状態から、きっちり10mm 、繰り出し装置を繰り入れたところ、延長管の延長により、ピントが合った時点の倍率=3.0 倍となることが分かった。(B)
・・・の上記2点のみ。
望遠鏡のスペックも隠されていて、延長管の長さや延長量も分からないものとします。分かるのは、エクステンダーレンズユニットを10mm繰り入れたことと、2例の倍率だけ。
問題; このエクステンダーユニットのパワーと焦点距離を、上記2点の条件のみを使って求めよ。(小数点以下、3桁で切り捨て)
(結像公式:1/s’ – 1/s = D (1/f) が活用できるかどうかの問題。式を丸暗記しているだけではダメで、理解し、応用できないと役に立ちません。)
図の赤いドットは対物レンズの主焦点で、繰り出し装置を動かしても動きません。濃紺のドットがエクステンダーとの合成焦点で、エクステンダーと対物主焦点との位置関係で大きく移動します。
焦点距離 f =1m(1D)の対物レンズの物点距離(s) と像点距離(s’)の関係式、1/s’ – 1/s = 1 (1/f) を可視化してみました。
元来は、s と s’ は、レンズ中心が原点の x 軸上の数値 のため、s を x 軸に、s’ を y 軸に設定したので、不慣れな方は返って混乱されるかもわかりませんね。
物点がレンズの左側にあって、光線は左から右に進む前提です。 第2象限の青い曲線が、”実物点 → 実像点のグラフです。(レンズを挟んで、左に物点、右に像点の典型的な実像結像の曲線です。)
レンズから ±1m 以内の実物点は実像を結ばないこと、先日ご提供した薄レンズの結像図のテンプレートを練習いただいた方は、感覚的に体感されたはずですが、数学的に検証すると、こうなります。s = -1 と s’ = 1 が漸近線になりますね。
天体望遠鏡は、鏡筒があるので、接眼側からあまり深くレンズに接近できませんが、対物レンズ単体で考えると、逆方向からの結像もあるので、逆追跡の結像グラフもお示ししました。
どちらにしても、第2象限の s < -1m , s’ > 1m と、第1象限の s > 1m , s’ > 1m が 実物点が実像点を結べる範囲で、両サイドからの結像を考えても、レンズの前後の両サイド、≦ 焦点距離 には、実物点と実像点は共存できないことが分かります。s = ± 1 と、s’ = 1 が漸近線になりますね。
、実物点と実像点が
高度な質問に先回りしてのご説明です。
前投稿で、「P’ が本当に P の虚像だと言えるのか?」という疑問を持たれた方も少なくないはずです。私も当初、そうでしたから。
1本の光線だけで、虚物点だ、虚像点だと言われても、納得できませんよね?
少なくとも、もう1本の光線が交わらないと信用できません。
で、メインの 物と像を結ぶ光線 の中で、他に P,P’ を通るものがあるのか? ということですが、いくらでもあります。水色で塗りつぶしたエリアの光線がべったりと該当します。
図から、P に向かって収斂する全ての光線は、P’ から射出する、ということ、ご納得いただけると思います。
物側主面と像側主面は、列記とした物像関係であり、倍率=+1の共役面なのです。従って、両主面間の 物像マトリックス から、主点距離も容易に計算できるわけです。
厚いレンズや複合レンズ系も、薄レンズとほぼ同じ手法で結像図が描けます。結像図が同じ方法で描けるということは、数式も共有できるということで、先人による”主点”の発見がいかに偉大なものだったかが分かるはずです。
主点の意味も、最近の投稿と併せて上図をご覧になれば、よりご納得いただけると信じます。
ついでに、各用語の説明をしておきますね。
まず、薄レンズの中心 O に相当するのが、厚レンズの主点、H1, H2 です。
2 点になりましたが、薄レンズの O点と同様、H1に入射する光線の全てが、同じ角度でH2から射出します。
また、物側主面上の点 P に入射する光線の全ては、同じ高さの像側主面上の点 P’ から射出します。 両主面自体が、倍率=+1倍の共役面になっています。
いかがでしょう? 今日のご説明で主点の意味がより具体的に理解出来た方、ご連絡いただけると励みになります。