SE102-BINO by DIY of Mr.YN in Tokyo

御社の「EMS-ULセット+IPDヘリコイド」とケンコーのSE-102鏡筒にエクステンダーレンズを組み込んだ自作の双眼望遠鏡を作成しましたので紹介の写真を送付します。
これで「EMS-ULセット+IPDヘリコイド」使用の双眼望遠鏡は4台目になりました。
尚、「EMS-ULセット+IPDヘリコイド」は使い回しです。

先に紹介のSE-120鏡筒(F5、焦点距離600mm)でのエクステンダーレンズを組み込んだ自作の双眼望遠鏡をSE-102鏡筒(F4.9、焦点距離500mm)に展開したものです。SE-102鏡筒を持っていたのでこちらではどのようになるのか興味があり作成してみました。

EMSは使い回しで対応しています。汎用性の高い2インチ取り付けの「EMS-ULセット+IPDヘリコイド」にしておくと、興味を持った双眼望遠鏡を自作して試したいときにコストや保管スペースなどで便利です。

SE-120鏡筒使用のときと同様にSE-102鏡筒のF4.9の短焦点のアクロマートにエクステンダーレンズを追加した方式で、収差を好まない人もいると思いますが、それなりには見えているので実用範囲と思います。エクステンダー無しに比べても悪化した印象はありませんが、収差増大による解像度の低下はあるようで中倍率までの使用になると思います。

また、同じくエクステンダーレンズにはステレオ顕微鏡用の補助対物レンズ0.75Xを転用して、更に対物側がレンズ凸面、接眼側がレンズ凹面になるように逆方向にして組み込みました。
HF2経緯台にのせる双眼望遠鏡ユニットとしては9.9kgの重量になりました。

SE-120双眼望遠鏡よりさらに軽くなり扱いやすいです。また既設接眼部を使用できるのでコストアップが少ないです。ただし、小さくなっても、EMSやバランスウエイト重量、経緯台への取り付け部品は大きさはほとんど変わらないので、それほど軽量になるわけではありませんが重量が10Kgを下まわり容易にHF2経緯台に載せたり降ろしたりできる感じです。
対物レンズが少し軽量になり前後バランス位置がほとんど接眼部近くの位置になったので鏡筒バンド位置が経緯台上下軸より前方になりました。

HF2経緯台も以前から紹介と同じHF2経緯台の使いまわしであり、天体の導入支援補助としてはGPS機能付きタブレットなどの星座アプリで目標天体のその時の方位と高度情報を入手して方位環とデジタル傾斜計を用いて導入します。1度以内程度の誤差範囲で導入でき
てそうな感じで便利です。もちろん等倍目視LEDドットファインダーで直接導入できる人はそのほうが速いです。
その時の気分で使用する鏡筒を選択して、HF2経緯台を使いまわして載せて楽しんでます。
それでも、HF2経緯台もアームを垂直に設定状態にしたものや45度に設定状態にしたもの、HF経緯台を含め複数台所有になっています。

以下、詳細について追加説明します。

(1) SE-102鏡筒のバックフォーカスは127mmで「EMS-ULセット+IPDヘリコイド」の光路長を確保しようとして鏡筒をカットすると大きく対物レンズ口径がケラレることになる。そこでエクステンダーレンズを組み込んで、バックフォーカスを長くして対応することにした。SE-120鏡筒と同じバックフォーカス量だった。
以前に紹介したSE-120鏡筒(F5、焦点距離600mm)エクステンダーレンズ版と同じ、エクステンダーレンズにステレオ顕微鏡用の対物補助レンズ0.75Xを使用しました。尚、私が入手したものは中国製で実売単価2,000円程度で対物補助レンズ0.75Xは2枚貼り合わせの凹レンズであった。レンズ径は39mm径。試用してみたところ、凸面を対物側にしたほうが見えが良かったので、対物側をレンズ凸面、接眼側をレンズ凹面として使用することにした。

SE-120鏡筒(F5、焦点距離600mm)エクステンダーレンズ版と同様にレンズセルの外形50mm径にビニールテープを巻きつけてドロチューブ内に押し込み、更にラックギアの手前側にM3イモネジで押し固定した。

光路としてはEMSの対物側にエクステンダーの凹レンズを入れた単純な構成です。一般のバローレンズのバローレンズ本体とアイピース間が長いタイプで、EMSの2インチスリーブの長さ30mmにEMS-UL+IPDヘリコイドの光路長最大180mm程度を足した最大210mm程度の長さになります。

(2) ドロチューブの繰り出し量でエクステンダーとしての倍率も変化し、ドロチューブの繰り出し量を除いた接眼部からのバックフォーカスも変化する。
バックフォーカスやエクステンダー倍率はSE-120鏡筒のときと同様程度と思われる。
通常の無限遠合焦もドロチューブ繰り出し量45mm程度となっている。
アイピースの瞳径を測って計算したところでは1.6倍程度のエクステンダーとしてはたらいているようです。従って500mmx1.6=800mm 程度の焦点距離になっているようです。
6mmアイピース使用時の133倍でも使える感じですが、木星の縞を見たところコントラストなどが低くなり見えづらくなり、この辺の倍率が実使用限界と思われ、低・中倍率での使用に割り切ったほうが良いと思います。

(3) エクステンダーにより焦点距離が800mm程度と長くなり、瞳径7mmの最低倍率15倍はほぼ実現できなくなりましたが、40mmアイピースで20倍、瞳径5.1mm、32mmアイピースで25倍、瞳径4.1mm、26mmアイピースで31倍、瞳径3.3mmであり私には十分です。
老人になっているので瞳径は5mm程度も開けられているかかどうか判りませんし、白内障手術での眼内レンズの直径は6mmとのことで、瞳径5mm対応できれば十分と思います。

蛇足ながら31.7mm規格アイピースで私がよく使用するのは、ケンコーのプロフィールド7×32双眼鏡の接眼部分を取り外して、31.7mmスリーブを取り付けた焦点距離18mm相当のアイピースです。今回だと44倍で瞳径2.3mmになります。
アイレリーフが19mmと長く眼鏡を使用した場合でもアイカップのゴムを折り曲げれば気持ちよく使用できるとともに、アイカップも柔らかく裸眼でも見やすいです。見かけ視野も60度で、構成は3群4枚でガラス非球面レンズも含まれており優秀な部類だと思います。
普及型の双眼鏡という量産品からの流用であり、更に、ジャンク品では格安となり1個1,000円程度で作成できるときもありコストパフォーマンスが良いです。当然、双眼鏡なので1台から2個のアイピースが取れます。光軸ズレなどの不良品で返却できないプロフィー
ルド双眼鏡があり、興味があれば是非自作を試して見て下さい。尚、31.7mmのスリーブは別途入手ください。重量も85gで扱いやすいです。2インチアイピースは一般に300g以上なので31.7mmアイピースに比べ重量や保管スペースで扱いづらいです。また、結果的に焦点位置がマイナス側(アイピースのスリーブ段差の対物レンズ側になる)に3mm程度余裕に
なったので、バックフォーカスが不足ぎみの厳しい機器でも合焦可能性が高くなります。
特に近眼の人で裸眼で見るときには重要です。自作で31.7mmスリーブをゴムなどの緩衝材をはめこんで固定しているだけなので注意して扱わないと分離して脱落しそうになる時があります。8×40や10×50の双眼鏡は焦点距離18mm相当のアイピース部分を用いているものが多いようです。
また、31.7mm規格アイピースで低倍率を用いるときはケンコーのPL25mmもよく使用します。
アイレンズがギリギリに浅い位置にあり、アイレリーフも長いことから眼鏡を使用した場合でも見やすいです。
焦点位置のチェックの時はアイピーススリーブ段差の位置にアイピースの焦点位置のあるケンコーのPL20mmをよく用います。PL25mmでは目視で焦点位置をつかむのに範囲が広く感じられ合焦の山の頂点を見つけづらくバラツクからです。特に私は近眼なので裸眼で長焦点アイピースで合わせるとズレが大ききなりがちです。

(4) 鏡筒が短いので鏡筒バンドとHF2経緯台のアームとの衝突を避けるために、鏡筒バンド固定つまみを内側とし、鏡筒径が小さくなったことから左右鏡筒バンドつまみが同位置でも重ならないことが可能になった。
かえってぶつからないように鏡筒間隔D=162mmに広げた。

(5) バランスウエイトは31.7mmアイピース使用時は手前側とし、2インチアイピース使用時は対物側に移動で前後バランスはとれる。31.7mmアイピースや2インチアイピースも重量が変わらないことから、必要バランスウエイト重量も同じとなる。
バランスウエイトの取り付け位置もSE-120鏡筒使用のときと同じく、アイピース交換時に操作しやすく、接眼部側を短縮できる手前側設置とした。対物側重量不足の万一のときのためにバランスウエイトシャフトは対物側にも伸ばしており、取り付け可能なようにしてある。

(6) EMSの上下方向の調節範囲に入らなかったので片側に0.5mm厚のワッシャーを入れて、調節範囲内とした。

(7) エクステンダーレンズに使用のステレオ顕微鏡用の補助対物レンズについて、入手した0.7Xのものを試したが、0.75Xと光学仕様はほとんど変わらないと思われるのに、SE-102の対物レンズとの相性が良くなかったせいかわからないが、倍率を上げていくとピン
ボケのような解像度の無い見え方が顕著に感じられ、SE-120鏡筒で使用した0.75Xの補助対物レンズをSE-102鏡筒でも使用することにした。入手した0.75Xの補助対物レンズ使用だと0.7Xに比べそれほど悪化が感じられない。

(8) ケンコーのSE-120L、SE-120、SE-102鏡筒 で双眼望遠鏡を作成してきて、アクロマートではあるが SE-120L がやはり好みではあるが、私には重く、長く扱いづらく感じられ、
どうしても使いたいと思うとき以外は使用しないことが多い。102mmのED双眼望遠鏡に比べ色収差により透明感やスッキリ感などは劣るが見え味はかなりいいとこまで迫っていると思うので、既存接眼部がそのまま使え、鏡筒のカット程度の工作で対応できるので、コストパフォーマンスも良く、重さや、長さをそれほど苦にしない人には良いと思います。
SE-120、SE-102鏡筒では接眼部を短いものに交換してバックフォーカスをEMS使用できるように長くするか、素人では手が出ない程度の接眼部の改造をしてバックフォーカスをEMS使用できるように長しなければならない。
簡易的にエクステンダーを追加してバックフォーカスを長くする方法があり、ステレオ顕微鏡用の補助対物レンズ0.75Xを用いて実現できることがわかった。ただし、倍率を上げたときに性能低下に簡単に気づく。
私の個人的な印象ではSE-120Lは200倍程度まで、SE-120は150倍程度まで、エクステンダー追加版は100倍程度までの運用範囲が良いのではないかと思います。
個人の好みや目的にもよりますが100倍程度まででも惑星などを除けばかなり楽しめると思います。これでも一般の大型プリズム双眼鏡よりは90度であることなど使いかってが良いことや見え味、2インチアイピースを含むアイピース交換による倍率変更、見かけ視野
変更などで勝っていると思います。
そのうちEDレンズなど使用の双眼望遠鏡にグレードアップしたくなれば作成する仕様範囲
にもよりますが現在使用の「EMS-ULセット+IPDヘリコイド」は転用・兼用使用できるの
でコストパフォーマンスは良いと思います。

(9) Amazon で使用できそうな安価な2インチ接眼部がありましたので参考に紹介します。

私が購入したときは1個5,360円でした。現在、在庫切れになっているようです。
これぐらの金額で使えそうな2インチ接眼部が入手でき、適合できれば、エクステンダーが1個2,000円ほどなのでエクステンダーを選択しなくてもよさそうですね。
全長137mmのドロチューブの先端を37mm程度切断加工して100mmに短くすればF4.9鏡筒でもギリギリ使用できそうな感じです。先端開口は55mm径です。尚、商品説明記述には誤り記述もあります。
SE-102で焦点位置をあてがって簡易に試してみたところIPDヘリコイドの最短から最長でドロチューブ繰り出し量23mm~7mmで無限遠合焦したので、ドロチューブのストロークが37mm切断したとして70mm-37mm=33mmであり適合しそうです。ただし接眼部は鏡筒内径より小さいので接眼部の取り付け方法、取り付け位置で少し変動します。鏡筒の切断は必要なしです。クレフォードの動作域での切断なのでネジ取り付けなどでのストッパーが必要に
なります。クレフォードでのストッパーの取り付けは経験がないので検討が必要です。
現在作成したSE-102双眼望遠鏡にこれを適用して更新改造することは今のところはまだ予定していませんが試してみるかもしれません。

(10) 蛇足ながらSE-120の双眼望遠鏡で使用した接眼部は笠井の蔵出品放出で1個8,000円で2個を以前に購入できたものを用いました。正規品だと高くて購入はしていなかったと思います。
エンビパイプを切ってスペーサーにして位置安定と遮光に使用しました。固定は鏡筒フランジにM4ネジを切って、接眼部の回転固定部分の溝を3本のM4ネジで押して行っています。
旋盤を扱える環境の人だと簡単にアルミでアダプターを作成するところでしょう。

(11) ほかに、80mmF7EDレンズ使用の双眼望遠鏡の作成は私の中で先に行いたいことが多く後回しになり遅れています。
80mmEDレンズはM89/P1.0内ネジで鏡筒にねじ込むレンズセル構造になっているのですが、旋盤の環境が無く、90mm径鏡筒外周に外ネジを作成できないので、エンビ継ぎ手を加工してレンズセルを取り付けて、この継ぎ手を介して90mm径鏡筒に接続しようと加工中です。
当初はSE-102の対物レンズ部分を外して、残りをまるごと鏡筒バンドなど含めて使用と思っていましたが止めて90mm外径鏡筒使用に変更しています。

(12) 私は実際に天体を見るのも楽しいですが、どちらかというといろいろな機器を持つのが楽しく感じられています。作成自体は面倒なのでそれぼど楽しく作業してるわけではありませんが、それなりには楽しめています。できるだけお金をかけないようにコストを抑えるために自作で作成しているものが多くなっています。当然、欲しい状態の品で完成品で販売しているものは、完成度が高く、手間も省けるので完成品で購入しています。私の自作品は完成品には及ばないレベルであり、外観など完成品に近づけようとも思っていません。機能が果されれば十分満足です。結果的にトータルで結構な出費となってしまいました。
もう、私と同じ年代の年寄りは終活を考えたり実施している人も多いと思います。私の場合、機器が多くなってきているで終活だけでなく、そのうち整理が大変になることは予想していますが着手は当分先の気持です。
だらだらと私的感想を含めて長文になってしまったことご容赦ください。

SE120-BINO by Mr.YN in Tokyo

「EMS-ULセット+IPDヘリコイド」とケンコーのSE-120鏡筒で自作の双眼望遠鏡を作成しましたので紹介の写真を送付します。

SE-120鏡筒の仕様のF5(焦点距離600mm)のままで既設接眼部をEMSでケラレなく使用できるようにする方法が見つからなかったので、入手して持っていたドロチューブの短い接眼部に交換しました。それでも120mmが117mm程度に若干ケラレましたが、程度が軽いので良しとしています。

F5の短焦点のアクロマートでもあり、収差を好まない人もいると思いますが、それなりには見えて実用範囲と思います。なんしろSE-120L鏡筒使用に比べ鏡筒が短いので、扱いやすいです。HF2経緯台にのせる双眼望遠鏡ユニットとしては12.5kgの重量になりました。
EMSやバランスウエイトをとりはずさ無くても、私ひとりでHF2経緯台に載せたり降ろしたりできるレベルの重量です。取り外せば時間はかかりますが更に容易となります。

天体の導入支援補助としてはタブレットなどの星座アプリで目標天体のその時の方位と高度情報を入手して方位環とデジタル傾斜計を用いて導入します。1度以内程度の誤差範囲で導入できてそうな感じで便利です。もちろん等倍目視LEDドットファインダーで直接導入できる人はそのほうが速いです。この程度の双眼望遠鏡では倍率のある光学ファインダーは口径50mmのものでは重量が500g程度あり、バランス調整の面倒さもあり必要ないと思います。

以下、詳細について追加説明します。

(1) SE-120鏡筒のバックフォーカスは127mmで既設接眼部のドロチューブ長さが158mmで先端開口が52mm径で「EMS-ULセット+IPDヘリコイド」の光路長を確保しようとして鏡筒をカットすると大きく対物レンズ口径がケラレることになる。入手していた接眼部はドロチューブ長さが97mmで先端開口が51mm径でケラレが若干でおさまるものであり、これに交換して使用することにした。

(2) ケラレを少なくするために鏡筒間隔D=154mmとした。最大眼幅は制限されるが、私の眼幅の66mmは範囲内にあり70mm程度までは対応できるみたい。
アイピースのスリーブの段差の位置にアイピースの焦点位置のあるアイピースを用いる通常の無限遠合焦はドロチューブを25mm程度引出した位置であり、この位置で120mmが117mm
程度に若干ケラレるものになった。測定方法が正しいかは判らないが、接眼部のアイピース焦点位置にレンズを外した安価な1灯LED懐中電灯のLED部分をセットして点光源とし扱い対物レンズ側に紙を置き投影して透けた光円で計ってみた。
尚、鏡筒のカットは行っていません。

(3) 鏡筒が短いので鏡筒バンドとHF2経緯台のアームとの衝突を避けるために、鏡筒バンド固定つまみを内側とし、左右鏡筒バンドつまみが重ならないように位置を前後にずらした。

(4) バランスウエイトは31.7mmアイピース使用時は手前側とし、2インチアイピース使用時は対物側に移動で前後バランスはとれる。

(5) 交換した接眼部の取り付け誤差もあり、EMSの上下方向の調節範囲に入らなかったので片側に0.5mm厚のワッシャーを入れて、調節範囲内としました。

(6) 接眼部を交換したのでその分コストアップになってしまいました。大きさによる扱いやすさや、低倍率になりずらさをいとわなければ、先に紹介したSE-120Lのほうが見えが良いと感じますがSE-120では扱いやすさは格段に良くなり、ちょい見には使用頻度は多くなります。重量や大きさは物理寸法からはそれほど差が大きくはありませんが、私にとってはこのあたりに一つの壁があるように感じます。
蛇足ですが、光学性能に満足できない人はEDレンズなど使用の高価格品を使用するしかないと思います。特に高倍率になっても鮮明な像となることを望む人はEDレンズなど使用品を使用がストレスが少なくて良いと思います。

Comment by Matsumoto / 管理者のコメント;

東京のYNさんより、また自作双眼望遠鏡(EMS-ULセット使用)のリポートをいただきました。
20年前くらいと比べると、自作マニアの方の数が減って来た印象がございます。 その中でも、こうして果敢に自作に挑戦さえているご様子を拝見し、頼もしく思いました。
今回も鏡筒のバックフォーカスの確保に腐心されたようですが、市販鏡筒の実情、30年前と少しも変わっていませんね。

方位メモリを水平回転軸に設けられ、デジタル傾斜計を鏡筒にセットしておっれる写真に注目しました。SkySafari等の天文アプリと連携すれば、強力な導入支援が實現しますね。
YNさん、今回も素晴らしいユーザーリポートをありがとうございました。

ZenithStar80ED-BINO by Aoi-Hoshi-San / “蒼い星”さんのBuruko(8cmED-BINO)

現在の私の8cmBINO(Buruko)の画像を久しぶりに添付します。
手前味噌ですが特筆すべきはEMSユニット以外はすべて市販の汎用パーツで構成されていて、加工もビクセンのHF用汎用プレートにネジ穴を12箇所加工した以外は、全て通販などでパーツを揃えて加工なしで組みあがっています。

鏡筒ユニットはHF汎用プレートにアルカスイス規格の台座クランプで取り付けています、ここで鏡筒の前後バランスも可能ですし、左右EMSのキャブレーション調整も松本さんの推奨(?)のEMSシフト調整ネジ1/4回転以内の精度なら、遠方を覗きながら10分以内で可能です。
画像ではHFフォーク架台に取り付いていますが、取っ手を固定する底板プレートにジッツオ-マンフロット規格の雲台プレートを使いましたので、ビデオ雲台での運用も可能です。

自前の加工がHF汎用プレートへのネジ穴加工だけなので、組みあがった全体像も素人自作っぽさが少ないです。
松本さんの組み上げるBINO完成品には遠く及びませんが、私個人としてはこれで十分満足していますし、何より松本さんにお願いするより早くて安いです(笑)

青い星

Comment by Matsumoto / 管理者のコメント;

「蒼い星」さんのEMSの修理を承った機会に、久しぶりにご愛用の8cmBINOの”BURUKO”の近況をご報告いただきました。
市販品パーツの組み合わせでも、これだけ洗練されたBINOが構成できるという好例だと思います。これから自作を考える方にも大いに参考になると思います。
蒼い星さん、この度は、また素晴らしいリポートをありがとうございました。 今後共よろしくお願いいたします。

BLANCA130EDT-BINO (Mr.Ebi)

新潟市在住の海老と申します。3月中旬に制作していただいたBLANCA130EDTⅡ双眼望遠鏡ですが、5月になりようやく天候が安定し、観望を何度か行うことができましたので、レポートをお送りいたします。

①双眼望遠鏡導入の経緯
私の天文趣味の始まりは6年前です。趣味の写真撮影の一環として星の撮影に興味を持ち、広角レンズによる天の川撮影から始めたのですが、その時に安物の7×50双眼鏡で何気なく覗いた夜空の星の多さに仰天し、そこから天体観望への興味が一気に湧き上がりました。まずは10×50と15×70の双眼鏡でカメラ用三脚とビデオ雲台による観望ライフをスタートさせ、主に白尾元理氏著「双眼鏡で星空ウォッチング」等を教科書として双眼鏡で見ることのできるメシエ天体や主な星団の観望を楽しみました。その流れから現在も正立双眼視による星野の観望、いわゆるリッチフィールドを楽しむことが中心です。

機材に関しては、すぐにより大きな口径に目が行き、直視型25x10cm、10cm45度対空双眼鏡を入手し、ひとまず落ち着きました。さすがに10cmの対空双眼鏡ともなると様々な天体を楽しむことができたのですが、やはり天文趣味の宿命でしょうか、一年後にはさらなる機材のグレードアップを思案するようになります。先ずはより大口径の双眼鏡としてビクセンのBT125を購入候補としたのですが、この頃目に入ってきた言葉が「EMS双眼望遠鏡」です。EMS?松本式?これは一体なんなのだろう?ネット上では何やら市販の対空双眼鏡なぞ相手にならんスグレモノだという評価・・・。

この頃胎内の星祭りで17.5cmの巨大双眼望遠鏡のオーナーさんにお話を伺う機会を得ました。その時に印象的だった言葉が「対空双眼鏡のままで10cmから12.5cmにしてもあまり変化は感じられませんよ。」「グレードアップするならEMSしかありません。鏡筒はやはりアクロよりはアポクロマートが良いです。」「でも15cmF5(当時すでに完成域に達したVersion10でした)BINOは別格です。あれはよくできた双眼望遠鏡です。」この3つでした。このアドバイスがいつも私の脳裏から離れない金科玉条として耳に残ったのです。

その後、一昨年の春にたまたまオークションで中古の10cmF5BINOを見かけ、衝動的に落札してしまいました。実物のEMS双眼望遠鏡を手にしたおかげで、それまで松本さんのホームページを読んでもさっぱり理解できなかったことが手に取るようにわかり、将来の本格的なEMS双眼望遠鏡制作に向けての準備が整って行きました。また、ほぼ同時期にED屈折式望遠鏡がどのようなものかを知る為に笠井トレーディングのBLANCA115EDTⅡを購入し、これまたオークションで入手したEMS-ULを装着して単眼ですが、10cmF5BINOと併用し、双眼望遠鏡制作の検討を進めました。

そして検討の結果、「15cmF5双眼」「11.5cmED双眼」「13cmED双眼」の3つを候補として考え、一度は予算的に手頃な11.5cmED双眼に決めかけたのですが、土壇場で13cmに計画変更して松本さんに制作を依頼しました。笠井トレーディングのBLANCAを選択した理由は、初期型を中心に過去多くの双眼化の実績があり、また、単眼で11.5cmを実際に使用してみて自分的には十分な性能と感じたからです。そして15cmF5ではなく13cmED双眼を選択した理由ですが、自分の一番大好きな天体は散開星団だからです。10cmF5の経験からアクロでも散開星団の微光星に色収差は見られずアポクロマートとの差は小さいのはわかるのですが、逆に言えば小さいながらも差があることも単眼ながら併用した11.5cmのBLANCAとの比較で感じていました。また私は特に目的も無く星野をゆるゆると流すことが好きで、その時の星々一つ一つの美しさを堪能するのが大きな楽しみでもあるのです。そのため微光星の一つ一つがよりシャープに見えるアポクロマートを選択しました。実際には11.5cmでも十分だったとは思いますが、自分の性格からして後々13cmの存在を気にする事が目に見えていましたので(笑)思い切って13cmに変更しました。今思えばやはり13cmにして良かったと思います。

②制作依頼から完成、引取りまで
昨年の12月からメールで松本さんと仕様決定に関する質疑応答を交し、2月上旬に正式に発注しました。鏡筒は笠井トレーディングBLANCA130EDTⅡ、EMS-UXL、中軸式架台、傾斜センサー付き、フォーカサーは3インチ以上の大型のものに交換したかったのですが、オリジナルの2.5インチでも実用上問題ないとのことでしたので鏡筒付属のものをそのまま使用することにしました。(予算の問題もありますのでどこかで線引きも必要かと思いました)

完成までの約1ヶ月は制作状況速報を楽しみに読み、時には松本さんにその感想を伝え、引き取りの日を迎えました。3月下旬の週末、はやる心を抑えつつ700km先の鳥取へ針路を取り車のハンドルを握ります。折角の西方への旅路ですので自分にとっての前人未到(笑)の天橋立の観光もついでに、ということで宮津で一泊。翌日の鳥取到着の折には鳥取砂丘の見物も。双眼望遠鏡受け取りに花を添える良い思い出となりました。

松本さんのお店には予定通り15時に到着し、ドキドキの対面です(笑)。松本さん、その節は風邪を召されたばかりで体調が優れなかった中、完成したBINOの説明のみならず、持参した中古購入の10cmF5BINOのメンテナンスまでしてくださり、どうもありがとうございました。また実際にお会いして直接お話しすることにより、メールではわかりにくい事柄等もよく理解でき、BINOの運用に役立つ知識をたくさん得ることができました。実際、BINOを受け取ったのちに遭遇したトラブルも簡単なメールのやり取りで解消することができましたが、それはこの鳥取訪問で得た知識があったからこそです。私の住まいからはかなり距離があるのでなかなか難しいですが、もう一度訪問してお話を伺いたいと思うほど有意義な時間でした。

③周辺機材
もともと笠井10cm対空双眼鏡(売却済)や10cmF5BINO、さらにはビクセンBT-ED70S-A対空双眼鏡も所有しているため、アイピースは双眼用に一通り揃っていました。Masuyama32mm、XW20mm、14mm、10mm、7mm、LVW17mm、5mm、3.5mmなどが中心でしたが、今回の双眼望遠鏡制作を見越してより広角のアイピースの購入を思案し、昨年より発売された賞月観星XWA20mm、XWA13mm(100度)、UWA16mm、7mm、4mm(82度)の各種を取り揃えました。結果、広視野の迫力が素晴らしく、コントラストやシャープさも満足の行くXWAの2本が低倍率用のMasuyama32mmとともにメインアイピースとなりました。また、高倍率は使用頻度が低いため、XW7mmとLVW3.5mmは売却しました。UWA7mmと4mmは私の要求レベルでは代替えが十分な性能を有しています。

三脚はマンフロットの475Bという大型のアルミ三脚を使用しています。この475Bは複数所有しており、AOK AYO経緯台を装着して左右合計15kgほど機材を載せてテスト済みで、13cmF7BINOでの使用に対応できるとの判断です。実際の運用では脚部、エレベーターともに問題無く使用できています。エレベーターのおかげで中軸架台の延長筒が不要になりコストダウンになりますが、一番のメリットは延長筒を省略することにより、三脚の脚部の寸法を長く取ることができ、結果として脚三点を結んだ線が形成する三角形が大きくなり安定性が増すことです。実際載っている望遠鏡の重さも効いており、転倒の恐れは極めて低くなっています。また、エレベーターを使用しなくても仰角80度くらいまでは可能ですし、エレベーターを20cmほど伸ばすと90度もOKとなり、使い勝手は良好です。

収納ケースはアイリスオーヤマのRVボックス1150Dを使用しました。ホームセンターでサイズがぴったりの長座布団を見つけ、中に敷いて鏡筒を収納しています。人間が横になっても快適な座布団ですので鏡筒の保護には十分なレベルだと思います。

ファインダーは国際光器の正立ファインダーとスカイサーファーを装着しましたが、傾斜センサーとSkySafariのおかげでほとんど飾りと化しています。

④運用
3月下旬に受け取ったのはいいのですが、4月いっぱい天候が不純でいつまで冬が続くのかと呆れるほど晴れません。しかしこの期間に昼間の風景や2階のベランダより光害まみれですが実際の星空を眺め、光軸の追い込みや所有するアイピースとの相性を確かめたり、傾斜センサーとSkySafariの運用、BINOの組み立てなどの練習を繰り返しました。おかげで実際の運用時の組み立て、撤収はとてもスムーズに行えています。

GWの後半の5月になってようやく安定した晴天が訪れました。4月の不安定さのお返しのように晴天が続き、おかげで5月は6回も観望することができ、存分にEMS双眼望遠鏡の性能を堪能できました。観望地は胎内星まつりの会場となる天文台の駐車場のほか、より暗い県北の観望地2箇所を訪れました。特にGW後半の5月2、3日は非常に透明度が高く、事実上のファーストライトということもあり、そこで目にしたいくつかの著名な天体の美しさはとても印象深いものでした。

時期的に観望開始時の時間帯は春の銀河団を、次にこと座、はくちょう座近辺、そしてさそり座、射手座などの天の川の中心部、そして木星、土星といった惑星を見て終了という流れになります。

春の銀河団
アイピースはXWA20mmを使用。45.5倍、実視野2.2度です。瞳径2.86mmは適度に背景が締まり暗い天体を探すのに都合が良いです。しかし薄明終了直後の空は地上の光の影響も大きく銀河の観望には今ひとつ。それに何より13cm双眼と言えども銀河は遠く淡い対象です。同定するのが精一杯で形状や模様を楽しむまでには至りません。それでも乙女座銀河団の中の銀河の配置などの予備知識が無いにも関わらず、2.2度の視野の中に弧を描くように連なる一群を見つけることが出来たのは驚きでした。言うまでもなくこの一群はマルカリアンチェーンなのですが、双眼視のおかげで長時間覗き続けることができ、また両目じっくりと眺めることにより認識度が上がったための結果です。おとめ座銀河団はM84、M86からNGC4459までマルカリアンチェーンを辿り、そこから左へM88、M91、下へ降りて一番明るいM87、左のN89、M90、下がってM58、左へM59、M60と流れるように辿っていけました。そのほかに定番の獅子座トリオ、M104やかみのけ座のNGC4565、M64などを確認。その後おおぐま座近辺へ移動して、M97、M108、M109、M106、M101、M94、M63、M51を確認し、M81、M82へ。形状、模様などがある程度わかるのは限られた銀河ですが、双眼望遠鏡ならこれで十分かと思います。より大口径の反射系の望遠鏡の経験がない自分には銀河の同定だけでも楽しい観望でした。

天の川下り
アイピースはMasuyama32mm(28倍、約3度)で軽く流して、その後XWA20mmで迫力を楽しみ、最後にXWA13mmやXW10mmで特定の天体の詳細を観望しました。この辺は小口径の機材でも楽しめるところですので馴染みの天体が多く、M4、M6、M7、M8、M20、M21、M23、M28、M25、M22、M24、M17、M16、M11とまさに川の流れに任せるが如く次から次へと導入していきます。しかし、見慣れたはずのこれらの天体も13cmアポ双眼、特にXWA20の45倍100度での観望には圧倒されました。M6やM7の大型の散開星団は視野いっぱいにカラフルな星々が煌めき、M4、M22の大型球状星団はツブツブがはっきり見えます。M8、M20、M17などの散光星雲は白いガス雲のたなびく様子や、暗黒帯のスジが高いコントラストで浮き上がります。小口径では星雲状にしか見えなかったM11も光芒の中心まで星に分解してまるで球状星団のようです。そしてこれらの美しい天体を心ゆくまで覗き続けられるのも正立双眼視の醍醐味です。時間が経つのを忘れるほど、というのはまさにこのことでしょう。

惑星
この5月は当地では比較的気流が安定していたと思います。主にLVW5mm182倍とUWA4mm228倍で木星と土星を観望しました。13cmアポ屈折ですので気流が安定すれば大変よく見えます。経緯台での追尾ですが、双眼視と優秀な中軸架台のおかげで楽に観望できます。さすがに300倍とかは大変かと思いますが、自分としてはこの程度の倍率で十分と思っています。

⑤光軸調整について
EMSシステムの要であるXY調整ノブですが、2本の鏡筒がきちんと平行にセットされていれば回す範囲はごくわずかです。これは常々松本さんが仰っている通りでアイピースが持つ固有のバラツキを補正するものですが、実際アイピースを交換するときに稀にわずかに動かす程度で済みます。逆にいえば、鏡筒とEMSをセットした時にこのXY調整ノブを大きく動かさなければいけない時は、鏡筒2本の光軸がずれているか、EMSがきちんと装着されていないなどの異常が発生している知らせになります。鏡筒の光軸がずれることは滅多に無いですが、EMSの左右平行はドローチューブとの接続部が緩んだりして狂うことがあるので、そのチェックは重要です。

⑥銀ミラーについて
煌めく星々を見て感じたのですが、市販の対空双眼鏡に比べてEMSを使用した望遠鏡は星々の色がとても多彩に見えます。単純にオレンジとか青とかではなく、それぞれの色に濃淡を感じます。銀ミラーは赤系の色の反射率がアルミに対して特に高いそうですが実際にはどの色に対しても感度が高いように感じます。私は10cmF5BINO(銀ミラーにリフォーム済み)を2年間使用してきましたので以前からそう感じていましたが、鏡筒の性能が飛躍的に向上した今回は改めてその印象を強くしました。とにかく星の一つ一つの煌めきが美しい。本当に心が癒される思いです。

⑦SkySafariによる導入支援システム
中軸式架台に内蔵された水平エンコーダーと傾斜センサーAAS-2とSkySafariの連携による導入支援システムですが、想像以上に正確であり、また便利であると実感しました。セッティングも非常に簡単で、AAS-2を鏡筒のハンドルにベルクロで固定し、電源ケーブルをモバイルバッテリーに、水平エンコーダーの端子に信号取得ケーブルを接続するだけです。傾斜センサーは2型になってからWi-Fi機能も内蔵しているためNEXUSが不要(コレが素晴らしい!)となり、コスト削減と安定性が向上しています。アライメントも極めて容易で、まずは著名な一等星をSkySfariで検索しておき、視野の中心にその星を導入して画面上の「Align」ボタンをタッチするだけです。観望中にわずかなズレが発生したりもしますが、前述の方法で修正はあっという間です。そして運用においても観望記の中にある春の銀河の同定に凄い威力を発揮しましたし、その他の天体においても同様で、ドットファインダーと8×50の正立ファインダーも装着していましたがほとんど使用しないまま終わりました。iPadminiの設置場所もベストな位置でデザイン的にもBINOとマッチしておりとてもカッコイイと思います。

⑧これまでの運用から感じたこと
観望の感想の中の「アレが見えた、これが見えた」といったものは、実は鏡筒の性能によるものです。つまり13cmアポ屈折ならばこれくらい見えますよ、といったレポートでしかありません。しかしながら、長時間これだけ多くの天体を楽しく観望できたのは、正立双眼視による快適さ、肉眼で見た天空と望遠鏡で覗いた星空との整合性のおかげです。さらには、13cmアポ屈折望遠鏡を2本載せてもスムーズな動きを保証する松本さんオリジナルの中軸式架台。そして傾斜センサーと水平エンコーダーとSkySafariによるPush to導入支援システム。もちろん根幹をなす松本さんの発明であるEMS正立ミラーシステムを忘れてはいけません。これらの総合的な工夫と技術の結晶が素敵な星空観望へといざなってくれるのです。

その中でも特に感銘を受けたのが中軸式架台です。通常、13cmクラスのアポ屈折鏡筒を1本運用するだけでも経緯台を使用する場合は選択に苦慮します。だいたいの市販品は片持ち式のため反対側にバランスウエイトを要して大型化したり、スーッと動いてピタリと止まることが難しいものがほとんどです。松本さんの中軸式架台は、(これが非常に重要なことなのですが)パンとチルトの支点が望遠鏡の重心と見事に一致しています。そのおかげでこのスーッと動いてピタリと止まるのが自然に決まります。私はここに松本さんのフィロソフィーを感じます。単に正立ミラーシステムを用意して双眼望遠鏡を提供するにとどまらず、架台をはじめとしたあらゆる部分に創意と工夫を凝らして快適な眼視観望に対するトータルソリューションを提供する、それが松本さんの職人魂だと思うのです。

このフィロソフィーはシステム全体としての完成した双眼望遠鏡のいたるところに感じられます。例えば中軸式架台が2本の鏡筒を抑えるアリミゾのレバー。小型ながら非常に締めやすく、またラチェット式になっているのでチルトのクランプレバーと干渉しても簡単にかわすことが出来ます。そしてこのチルトのクランプレバーですが、非常にスムーズに動き、そしてとても軽い力で固定できます。固定力の増減も自由自在です。また、ハンドルバーと兼用のバランスウエイト。真鍮製のウエイトはとても美しく前後のスライドも滑るように動いて快適です。私のシステムは一番軽いアイピースが31.7mmアダプター込みで250g、一番重いのはXWA20mmの705gですが、このバランスウエイトの前後と鏡筒のフードをわずかに前後させるだけで架台の前後バランスが取れています。

⑨まとめ
天文趣味のきっかけが双眼鏡だったせいもあり、正立像の眼視(それも双眼)に徹底的にこだわる私にとって、松本式EMSミラーシステムは理想的なソリューションです。天文台の観望会で見せてもらう大口径の反射式望遠鏡で見る、例えば詳細な球状星団などもいいのですが、やはり私は煌めく星々の中に見つかる星雲、星団、そして一つ一つの星の輝きを眺めるのが好きです。銀ミラーの項でも述べましたが、私にとってのEMS双眼望遠鏡は最高の癒しタイムを醸し出してくれます。iPhoneに入れたお気に入りの音楽をイヤフォンで聴きながらのスカイウォークは浮世の喧騒、ストレスとは無縁の世界。松本さんの発明がなかったらこのような素敵な体験を知ることなく人生を終えたでしょう。EMS正立ミラーシステムに巡り会えて本当に良かったと思います。これから憂鬱な梅雨ですが、梅雨が明ければ夏の天の川、そして大好きな二重星団をはじめとする散開星団が目白押しの秋冬の天体が深夜には上ってきます。13cmF7BINOで観るそれらの姿を楽しみにレポートを終了します。

Comment by Matsumoto / 管理者のコメント;

I felt that Mr.Ebi has eloquently wrote for me with his close and kind explanations based on his valuable experiences.  I really recommend those who are planning to get EMS-BINO to peruse this report.
I was so moved, and at the same time, I would like to exhort some of my agencies who lack his attitude to study and actually master the EMS-BINO by themselves before marketing it.

海老さんより、渾身のリポートをいただきました。製作者が日頃から訴えたいところを、詳細に解説、代弁くださり、私が蛇足を付け加える余地がないくらいです。本当に感動しました。
海老さん、本当にありがとうございました。 続報も楽しみにしています。^^

(この場を借りて、(EMSの)代理店さん(海外含む)に苦言を呈したいと思います。EMSで営業をなさるのであれば、海老さんのように、まずは自分で使いこなしてみるべきです。そうでないと、お客さんに適切なアシストが出来る訳がありません。)

BORG-107FL-BINO by Mr.Zhao Xiaoqiang, China

Dear Tatsuro,

I haven’t contacted with you since purchase of EMS-Bino. Today I browsed your website and saw a lot of fabulous Binoscopes, which reminded me to write a letter about mine.

First of all, thanks for your great product.

In the fall of 2017, I started my plan of EMS-Binoscope. With the help of several friends, including Range and 2047 and others, my binoscope was finished in the spring of 2018. Up to now I have used it for one year and it is satisfactory.

The objectives of my binoscope are two set of Borg 107mm lens which included one piece of fluorite lens in each. One amazing feature of the Borg 107mm lens set is that the tube will be stretched out when used, while drew back when stored. So the 107mm binoscope could be very compact. The focusers are Feather Touch FTF3035.

My friend, whose online name is 2047, proposed the general conception for the binoscope and made the other components except the objective, focuser and EMS-Bino.

Attached are the pictures of my 107FL binoscope.

Good health and best regards,

Sunglasses of Beijing, China

Comment by Matsumoto;

It is my greatest pleasure to get reports from my clients.
Above all, this binoscope is the most impressive one I have ever seen.
I would like to extend my sincerest appreciation to you and those who had assisted you for the accomplishment of this fine Binocope using my EMS.

シンプルを極め、美を極めていて、言葉もありません。見事の一語に尽きます。
鏡筒保持パーツは、(取っ手を除いて)通常は4つの部品を組み合わせるのですが、画像を見る限り、ソリッドな素材から削り出しているように見えます。加工技術も半端じゃない。

SE120L-BINO by Mr.YN in Tokyo

参考に御社の「EMS-ULセット+IPDヘリコイド」を使用した自作の双眼望遠鏡がようやく一応完成しましたので、紹介の写真を添付ファイルで送付します。
EMSユニットや情報の提供有難うございました。
素人DIYですので加工精度は良くないですが、実用範囲内には作成できたと思っています。
架台はHF2経緯台で、アームを45度設定にしています。しかし、気軽に自宅のベランダからも見たいので、ベランダの幅が120cm程度と狭いことと、望遠鏡の鏡筒が比較的長いことからアームを45度にしたHF2経緯台ではスペース不足で扱いずらいので、ベランダで運用時にはアームを90度(垂直)設定としたHF経緯台にのせて使用しています。もともと自宅のベランダからは上部のひさしなどにより天頂方向は見えず、視界が限定されるので、天頂方向に向けられないアーム 90度(垂直)としたHF経緯台でも十分に使える感じです。
HF経緯台にのせる双眼望遠鏡ユニットとしては15.2kgの重量になりました。HF経緯台へのせたり降ろしたりを少しでも楽にするためにEMSユニットとバランスウエイトは外した状態の13kgの重量でのせたり降ろしたりしています。
鏡筒はケンコーのSE-120Lでアクロマートですが気持ちよく見える感じです。
天体の導入支援補助器としては方位環とデジタル傾斜計を用いています。

東京都 YN

3月11日 追記:

(1) バックフォーカス確保のため鏡筒を23mm切断しました。また、ドロチューブによるケラレが発生しないようにすることと、最手前の既存の絞りにドロチューブの先端が当たらないようにするためにドロチューブ先端を25mm切断しました。
ドロチューブはフルに引出しての使用は今後無いと考え、ドロチューブの先端部分のラックギアにかかる手前でドロチューブを切断しました。
SE-120Lのバックフォーカスは160mmのようなので、今回のEMSを使用すると5~10mm程度バックフォーカスが不足するような感じでした。鏡筒を23mm切断・短縮したことによりバックフォーカスが183mmとなったと思います。
松本さんの記述で「IPD 64mm時のEMSの光路長が166mmでマージンを15mmとして180mm以上のバックフォーカスが欲しい」とあり、これをカバーできそうだったので、絞りの削除などを行わない程度でおさまる範囲として選択しました。
眼幅66mmで近眼の私の場合、裸眼でEF19mm接眼レンズ使用時にドロチューブの引出し量は20mm程度で合焦します。

(2) 右側の鏡筒の接眼部は、手持ちにあった12cm用の接眼部がほぼ同一寸法であったので交換してみました。最新のSE-120Lの接眼部は途中にネジ止め段差があり120mm用鏡筒だけでなく、部品を外すと102mm用鏡筒にも適合できる寸法のようです。
また、右側鏡筒は接眼部のファインダー用アリミゾが使用可能なように回転させています。
合焦摘みとバランスウエイト(55mm径)との干渉が無く、外すこともできるような位置に現物合わせでしています。
とりあえずこの位置のファインダー取り付けは予定していませんが、取り付けたくなったときの準備です。取り付けたとしても使いやすさから90度ファインダーか更なる手元短縮のためのバランスウエイトの追加となるでしょう。片側の鏡筒に力が加わることになり片側操作で一時的に視軸がずれる可能性もあり好ましくない感じもしますがここを操作ハン
ドルを取り付けるベースとすると、現在の操作ハンドル取り付けより軽量化できます。

(3) 以前から交換していることですが、今回は特に鏡筒間隔D=162mm でHF経緯台ではギリギリの横幅となっており、HF経緯台の上下クランプのネジ摘みが干渉しないように既設の40mm径より小径の約19mm径の摘みにしています。6mm穴径のサイドから軸にネジで摘みを固定するタイプの音響用摘みが使用できます。内部に滑り止めギザギザがある場合は6mm
ドリルで削ればHF経緯台のクランプネジの6mm径頭に取り付けられます。
HF経緯台は耳軸部分で約308mmで水平回転部に向かってテーパ状に300mm程度まで狭くなっ
てゆきます。他のHF経緯台でも直ぐに使用できる汎用性を考え、この幅内に納まる設計としました。
テーパ状になっているので横幅を有効に使用できるように下側への寸法も極力短くなるようにしました。
鏡筒下部に部材が多くあるので、耳軸中心は鏡筒の中心として設計しました。これで大丈夫のようです。

(4) 耳軸には31mm径の黄銅の丸棒を長さ33mm程度に切断して使用しました。縦プレート側は13mm間隔でM5のタップ穴にして、M5ネジ2本で固定して回り止めしています。縦プレート側は幅寸法消費が無いようにネジ頭は座ぐって縦プレートから頭が出ないようにしています。
外側は中心に1/4Wのタップ穴を設け、アルカスイスクランプなどカメラネジ品が容易に取り付けられ双眼ファインダーが取り付けられる可能性としていいます。1/4Wは厳密にはカメラネジ規格ではないですが経験上だいたい使えています。
当然、アルカスイスクランプを取り付けるときはアルカスイスクランプにネジ穴を追加してイモネジで押しネジにして回転防止の対応が必要です。

(5) アルミ(A5052)切板部材は端面へのM5ネジ穴の作成しやすさと部材の販売単位でのコストパフォーマンスから50mm幅12mm厚、長さ1,000mmのものを購入して切断・穴あけ加工をして使用しました。購入の50mm幅は若干大きめですがそのまま使用しました。切断加工は長さ方向だけになるようにしました。

(6) バランスウエイト(外径55mm、内径12mm軸対応、883g)とウエイト軸(12mm径、M10ネジ部分長さ10mm、ウエイトスライド部分長さ390mm)は手持ちにあったものを使用しました。昔で記憶していませんがどこかの架台のジャンク品を入手したものだと思います。
片持ち固定なので振動要因となることを心配しましたが今のところ感じられません。
31.7mm接眼鏡使用時にバランスウエイトを手前側に持ってきたときにバランスが取れるように鏡筒バンド位置を調整して、できるだけ重たい対物レンズが遠くになり、操作しやすいように手前側が短くなるようにしました。
2インチ接眼鏡使用時にはバランスウエイトを遠くに移動させるだけでなんとかバランスはとれる感じです。31.7mmアダプタ2個で178gと接眼鏡2個を外し、例えばマスヤマ26mmを2個で768gを取り付ける。

(7) 操作ハンドルの握り部分は。ジャンクの安物三脚の雲台のパン棒で先がM5ネジになっていたので相手側にタップを切ってねじ込んでいます。

(8) 取っ手などはアルミフレームの20×20のもので、手で握って角が無く握りやすい種類ものを使用しています。断面中心に4.3mm径の穴があいており、M5のタップでそのままねじ切りできます。

(9) 上下方向の視軸は組み立てただけで、EMSの調整範囲内に入っていたので、それ以上の調整は行っていません。
水平方向の視軸はフォークのプレートのM6ネジタップに対する取り付ける鏡筒側のバンドに取り付けたプレートの穴の大きさの緩みを利用してEMSで覗きながらできるだけ像が重なるように動かして、その位置で鏡筒当たりM6ネジ2本を固く固定して、EMSの調整範囲内に入ったのでこれでよしとしました。
もともと横幅がギリギリだったことから加工精度不足で左右の鏡筒の位置のためにヤスリで穴を削って大きくしていたので、ネジを固く固定しないとなりませんでした。

EMSは調整摘みに回転リミッタがついており、安全な調整範囲が明確にわかり、自作時などはまずはこの範囲に入るように鏡筒方向を調整することにより、安心して組み立てられて良いです。以前に松本様の記述にあった「ユーザーで調節しているときに設定位置を見失って、調整摘みの回しすぎが多く発生したのでリミッタを追加した。」との記述が実感され、回しすぎの危険から守ってくれて安全です。従ってEMSの原点位置への復帰も、摘みのリミッタの真ん中の位置と簡単に認識できて、まずは鏡筒本体での視軸調整に努力して調整可能範囲内への追い込みをすれば良く安心です。
御社の中軸式架台使用の双眼望遠鏡では上下方向の視軸、水平方向の視軸を加工精度と組立て精度で調整範囲内に入れて維持していると思われますので感心します。何か組立て時の微調整の裏技みたいなものは用いているのでしょうか。

(10) 接眼部で2インチ接続でのEMSへのクランプが弱い感じがして使用しているうちに回転する感じなので、クランプネジを現在の2本から3本に追加改造してみようと思っています。IPD調整などしていて知らず知らずに力が加わっているせいかもしれません。

続報(3/12)

頑張ればハンド工具と電動ドリルでも作成できるかもしれませんが、私はDIYレベルの安価なボール盤(1-13MMチャックのもの、SK11卓上ボール盤、13,000円程度)と安価なチップソー(高儀 CS-100TA、8,500円程度)を用いて作成しました。精度など機械性能はあまり良くないレベルのDIY入門機種とも思いますが自分で加工するならこれぐらいはないと作業効率やそこそこの精度など作成が厳しいです。

Comment by Matsumoto / 管理者のコメント;

I am very happy to have another user’s report after a long time.
He has shown the good example of the Binoscope making with reasonable OTAs.
Thank you, Mr. YN !!

久しぶりのリポートコーナーへのご投稿です。
“Best or Nothing” ではなく、リーズナブルな鏡筒でも十分にBINOの効果を満喫できることをアピールいただけると思います。皆さんも挑戦してみてください。
YNさん、新鮮なご投稿、ありがとうございました。

追記:バックフォーカス確保のための鏡筒の切断量等、追記いただけますと幸いです。
YN様より、さっそく詳細な製作情報をいただきましたので、上記本文の下に追加させていただきました。これから挑戦される方には大変貴重なデータとなるはずです。YNさん、重ね重ね、本当にありがとうございました。(3月11日)

(9)の最後のご質問ですが、これは裏技ではなくて、内蔵ミラーはもともとハウジングに製造組み立て段階でスケアリングとセンタリングが調整できる構造になっており、レーザーコリメーターと測定器具によって調整すれば、必然的にお届けしたEMSの初期状態になるわけです。

YN様より、さらに続報をいただきました。自作される方の良い参考になると思います。YNさん、重ねてお礼申し上げます。(3/14)

TSA102-BINO (reform from TSA120-BINO) by Mr.Matt S. Canberra, Australia

Hello dear Tatsuro,

I hope you are well and safe from the storms that I have been watching on the news.
I recently decided to down-size my binoscope a little bit.  I replaced the two Takahashi TSA120 tubes with a pair of TSA102S to make for a lighter and more portable system as I also have an 18” scope I just completed.
I have not yet had a chance to try out the smaller binoscope but I expect it will also be successful.  The EMS-ULS and adapters are a direct fit and there is enough back focus for it to work as well as the original setup.  Range made a new cradle for me, I am using the same ‘D’ of 170mm so there is no need to adjust anything.
I took a couple of pictures today of the new setup.  Here is also a picture of my new 18” scope, it took me about 5 months build it.
the 18” is in a welded aluminium structure with carbon fibre poles and kevlar/carbon baffle. It is an F3.5 so I can stay seated even when looking at zenith.
I find the binoscope is a great complement to the big scope.
Stay safe,
Matt
Comment by Matsumoto;

Dear Matt,
Thank you very much for your thrilling report.
Congratulations on the successful reform of your TSA120-BINO into 102S-BINO and finishing the splendid 18”scope.
I am looking forward to have your further report after watching the targets of seasons.

Thank you for allowing me to post your report to my website.

Best regards,
Tatsuro

リフォームは増築だけでなく、減築というのもあるのですね。^^
どちらにしても、言語の壁を超えて、EMSのみ求められて最初のBINOを見事に作られ、さらに減築リフォームをやり遂げられました。お見事です。18インチドブも格好良いですね。

TOA130-BINO on TTS160-MOUNT (Mr. A in Tokyo)

テラスにコンクリートの土台を作ったのですがTTS160の架台もぴったりおさまりました。
松本さんに製作していただいた架台と望遠鏡のプレート部分は非常にうまくできており重たい鏡筒を上から簡単に載せることができます。簡単に載せれることは重たい鏡筒の場合は特に非常に重要なことです。
またバランスウエイト2個でバランスをとることを念頭に最小限のサイズで製作していただき見事2個バランスウエイトでバランスをとること ができました。 ありがとうおございます。
このプレートは一度視軸のアラインメントを行うと次回からはアラインメントは必要なくEMSのXY調整の微調整で視軸を簡単に合わせることできます。
TTS160架台の操作にまだ慣れていませんが一度星を1個もしくは2個アラインメントするだけでかなりの精度で星の導入追尾ができます。
望遠鏡を操作するコントロールノブの使い方に慣れが必要ですが非常によくできた架台だと思います。
重い鏡筒ですが簡単に載せれるよう松本さんの様に日ごろトレーニングを行い末永く楽しみたいと思います。
東京都 A
Comment by Matsumoto / 管理者のコメント:
This is a good example of “Making a binoscope  without making.”.
You can make a binoscope with a pair of EMS-UXL and TTS160-MOUNT along with the base plate.
「作らずに作るBINO」の典型のような例です。
EMS-UXLと90Φアダプター、そしてTOA130鏡筒、シンプルなベースプレートTTS160マウントがあれば、簡単にBINOが構築できます。
Aさん、最高の環境でのTOA130-BINOの実現、羨ましいです。^^
一通り観望されましたら、ぜひ続報をお願いします。 素晴らしいリポートをありがとうございました。

Cff140-BINO on the Center Mount (Mr.K in Kanagawa-Pref.)

①導入経緯
幼少の頃から天文に興味があり、子供向け宇宙図鑑を何冊も買ってもらったり各地の観望会に連れていって貰っていたりでしていましたが、小学校高学年辺りから段々と天文から離れていってしまいました。それからずっと休眠状態が続いていたのですが、5年ほど前に全く関係ないところから双眼望遠鏡を魅力的に紹介しているサイトに出会い、天体観望熱の再燃と、新たに松本さんが製作されている双眼望遠鏡に対する興味に火を点けられました。

倍率の計算式すら知らない状態からの再スタート、いきなりbinoというのは経済的にも知識の面でも敷居が高かったので、手持ちの双眼鏡を購入。東京の市街地でも肉眼では想像出来ないほどに星がみえる事に驚き、勢い衰える事なく卓上マクカセ、単眼屈折、ドブソニアンと歩を進めていきました。
眼視の世界に夢中になっていく一方で、松本さんのサイトのバックナンバーはじめ、先達ユーザーの方々のレポートも追っていました。
使用していた機材には、
・双眼鏡は長時間の使用で手ブレと重さが気になる。口径や倍率の面からも一つの天体をじっくりと観察するには力不足。
・単眼望遠鏡は光軸調整、観望姿勢、単眼裏像倒立像などで違和感疲労感。
それぞれ光学性能の面でというよりも、機材そのものの根本的な部分での不満を感じていました。
そういった中で天文再燃のきっかけであったBINOへの憧れは褪せるどころかますます大きくっていったこと、色々と機材を所有したり覗かせて貰ったりする中である程度自分の理想の星見のスタイルが定まっていったこと、また私生活の方で節目を迎えたこともあり、松本さんへのオーダーに至った次第です。

②使用鏡筒ーCffについて
自分は普段自宅から星を見る、機材を使う機会は滅多になく、スケジュールに余裕が出来た時にある程度気合を入れて、星見の為だけに車で遠征に行く事が殆どです。なので無理が生じない程度に出来るだけ大きい13cmクラスを選択、複数機材の運用管理するほどの余裕がなく、BINOの導入に際して手持ちの機材を全て処分し、唯一の所有機材とする事に決めていたので、低〜高倍率まで満足度の高い見え味が期待できるハイエンドの三枚玉アポを探す事にしました。また、高倍率の観望よりはなるべく低中倍率、広視界(出来れば最高実視界3度以上)を中心に楽しみたいと思いました。
TOAは性能に定評がありますが、このクラスの中でも一回り大きく重いのを販売店でみて諦めました。TECは14cmなのにTOAより軽量に出来ているのが魅力でしたが、実視界3度を取るには焦点距離が少し長過ぎました。APM-LZOSとAstroPhysicsは理想的なスペックでしたが、値段がTOAを基準にしてもひと回りふた回り高い、そもそも後者に至っては入手自体が困難という事で、ちょっと手が出ないと思っていました。
悩んでいる中でCloudynightsのフォーラムで見つけたのがCFFというポーランドの新興メーカーの鏡筒でした。日本では代理店もなく殆ど認知されていませんが、
・140mmf6.5の短焦点寄りなレンズ設計
・レンズ組み付け精度、温度順応に比較的寛容なオイル充填式
・3枚玉140mmにしては控えめな大きさ、重量(鏡筒+3インチフェザータッチフォーカサーで8.1kgでした)
などの点はbino向きでないかと思いました。上に挙げた他の高級鏡筒と比較をした海外ユーザー達の評価も悪くなく、問い合わせた際の対応や相談にも丁寧に応じて貰ったこと、そして他の鏡筒と一線を画すデザインがとても魅力的に思えたという事もあり、ここの鏡筒を選択する事にしました。

ちなみに値段ですが、BINO用に2本まとめて注文したということもあってか、送料含めてもTOAと変わらないか、専用ケースなど考えるとややお値打ちなのではといった値段にして頂けました。とても良い選択が出来たと個人的には思っています。
肝心の光学性能について、このクラスの鏡筒を他に覗いた経験がない為詳しいレビューは出来ませんが、コントラスト、視界のクリアさが卓越している印象です。月惑星、明るい恒星や地上風景などをみても色収差は感じられず、360倍を試しに掛けてみても鑑賞価値のあるシャープネスを保っていました(勿論低倍率時と比べると大気の影響もあり若干劣りますが)。
140mmの三枚玉という事で極端なトップヘビーには悩まされましたし、あちこちに気軽に運ぶにはケース含めると大きすぎる重過ぎる、大気の影響も受け易いですが、それを補って余りある像質、大口径の解像度です。自分自身はあれこれと鏡筒を比較する趣味はないのですが、とにかくこの鏡筒が見せてくれる世界にはとても満足しています。恐らく同社の屈折鏡筒は現在日本で所有しているのは自分だけだと思うので、ご興味のある方がいらっしゃれば覗いて頂く機会があれば良いのですが…

③双眼効果について
鏡筒自体の性能について述べさせて頂きましたが、それ以上に単眼と双眼の違いは驚異的なものがあります。母に月をみせた時、最初眼幅調整が分からず単眼で覗いていたのですが、上手く双眼で見ることが出来た時には「望遠鏡を2本並べている意味がやっとわかった!」と叫び声をあげていました。
立体感、解像度、コントラストの向上などの効果は他のユーザー様が証言している通りですが、なかなか実際に覗いてみないと本当の意味で実感するのは難しい様に思います。自分も先達の皆様のレポートはかなり読み漁り、binoの見え味について想像は膨らませていたのですが、実際に覗いた時の感覚は想像とは全く異なるものでした。
喩えとして適当かわかりませんが、単眼とbinoは自分にはアップライトピアノとグランドピアノの違いに似ている様に感じます。音質だけをとって「いい音」を出すピアノはアップライトにも数多ありますが、キータッチ、ダイナミックレンジ、音の拡がり方など前者と後者では同じピアノとして一括りにすることすら憚られると、実際に演奏すると誰でも感じるほどの違いがあります。3枚玉アポで双眼を組んだ自分が言うのも難ですが、用途にもよりますが、運用環境さえ整えば同じ値段でも輸入アップライトより国産普及品グランド、高性能アポ単眼よりもアクロ、セミアポ双眼の方が感動、満足度が大きいのではと個人的には思ってしまいます。それほどまでに双眼の威力は凄まじいものでした。

④光軸調整について
自分に縁のあるピアノをbinoのたとえ話に持ち出しましたが、両者には一点、決定的に大きな違いがあります。ピアノは自分の理想の音を出すために長い鍛錬が必要ですが、binoはいくつかのポイントを押さえておけば、あっという間にそのbinoが持つ最高の像を見ることが出来るという点です。
かくいう私も実際にbinoを持つまでは光軸調整に一抹の不安を抱いていました。「市販双眼鏡メーカーが精密な機械をもって調整している光軸を、自分の眼で合わすことが出来るのだろうか」「厳密に光軸の合っていないbinoを気付かずに覗き続けて、binoの性能が発揮出来ないばかりか眼を悪くしてしまう(?)のではないか」。結論から言えば全くの杞憂でした。
いわゆる御三家をはじめとする有名光学メーカーの双眼鏡でさえなんらかの原因で、許容範囲内だったとしても光軸がズレるものが珍しくない中で、自分で納得いくまで調整出来るbinoは、市販の正確に組み付けられた高級双眼鏡と同じかそれ以上に気持ちよく覗く事ができました。
経験上文字を読んでいるだけでは不安は拭いがたいと思いますが、実際に触ってみれば文字通り「案ずるより産むが易し」、反射望遠鏡の3点ネジによる光軸調整はもとより、フォーカシング作業よりも容易に素早く行う事が出来ました、と体験談を述べるにとどめようと思います。ただ一点だけ「完璧な光軸のbinoでも覗く人間の視軸が輻輳したり斜位があればズレてみえるし、逆もまた然り。注意が片手落ちになってはいけない」ということだけ念頭においておいた方がいいかもしれません。

⑤中軸架台ー運搬、取り回し、操作性について
140mm3枚玉アポという事で、覚悟はしていましたがやはりお気楽観望用の機材の範疇からは一歩踏み出しています。しかし中軸架台、単体鏡筒管理を中心に松本さんにbino全体のデザインをシンプルに突き詰めて頂いたおかげで、とても簡単に運用させて頂いております(参考になりそうな写真を何枚か撮ってみました)。逆に中軸架台などがなければ、僭越ながら自分は天文ファンの中では比較的体力のある方だと思いますが、このクラスのbinoを導入しようとは考えられなかったかもしれません。
究極と言っても過言でない様に思われるシンプルさを達成しながら、運搬、組み立ての簡便さから、鏡筒平行度、200倍超の追尾も微動の必要性を感じない滑らかさ、フリクションを自由に調節可能にする強力なクランプ機構など、必要な機能は十二分に備わっています。自動導入、追尾などを考えれば他の架台を考える余地がありますが、フリーストップの架台として、特に大型binoでは他のものを検討する気になれません。また、鏡筒リングに取り付けて頂いたL字型金具ハンドルとあわせて、比較的低い位置で望遠鏡を取り付ける事が出来る点も運用のし易さに一役買っていると思います。

⑥常用アイピースと前後バランス
アイピースは良いものを最小限の組合せで、という事で、Masuyama32mm、Nikon nav-hw17mm、(14mm、12.5mm)、10mm、2倍powermate、28倍約3度から182倍0.56度を常用しています(より高倍率を使用したい場合はpowermateと単焦点アメリカンアイピースを組み合わせます)。見え味の他に、重い2インチアイピースで統一することでシビアな前後バランスを解消するという狙いもありました。しかしそのままでは一番軽いmasuyama(実測441g)からnav-hw10mm+powermate(1073g)まで、大きくバランスが崩れます。色々と試行錯誤した結果、masuyama使用時にpowermateを入れたネオプレーン製レンズケースをハンドルに掛け、持ち手の上に乗せると安定性、操作性を損なわずバランスを取る事ができました(青い金具のレンズケースにはフィルターが入っており、フィルターボックスとあわせてアイピースより素早く交換が出来ます)。これにより常用アイピースの範囲で、フードの長さ調整などバランスを取り直す手間を殆ど掛けることなく(カウンターウェイトの位置調整だけで)、無駄なウェイトを極力廃しながら快適な操作をする事が出来るようになりました。
また当初天頂に鏡筒を向けた際フォーカサーの内側ノブがピラーに干渉しましたが、松本さんにノブを取り替えてもらうことで、水平から天頂まで360度自由に鏡筒を振り回すことが出来る様になりました。

⑦初遠征
8月11日は月齢新月とペルセウス座流星群、そして自分の空きスケジュールが重なる滅多にないほど良い条件に恵まれた遠征の機会でしたが、私の住む関東近辺は全滅。普段なら諦めるのですがこれ以上初遠征の機会を先に延ばしたくないという事で、岩手の某高原まで遠征しました。お盆の帰省ラッシュと重なり行きに掛かった時間が9時間ほど(帰りは6時間弱でした)、現地に到着したのが22時過ぎでした。
やっとの思いで到着した現地は満天の星空、流星群の極大日が近づき、彼のしし座流星群ほどではありませんが、もはや有り難みが薄れるほど大小流星が飛び交っています。早速望遠鏡を組み立て(暗闇でもあっという間でした)skysafariのアライメントがてら火星から観望開始、土星〜天の川を上り主要な天体を拾いつつ秋の天体まで観望していきました。スカイサーファーと7倍正立ファインダーを装備していたのですが、masuyamaで3度あればファインダーなしで火星の導入は容易で、その後高倍率でアライメントしてしまえば後はskysafari+傾斜センサー、エンコーダの独壇場、ついに一度もファインダーを覗くことなく飾りのまま終わってしまいました。超広視界アイピースを使った観望はこの世からどこまでも遠く美しく離れた世界、殆ど望遠鏡を覗いているという感覚がなくそのまま宇宙を自由に漂っている様な錯覚に陥ります。3時間弱経ったところで雲が一面に広がり無念の撤退となってしまったのですが、長距離遠征してよかったと思えるだけの成果がありました。いくつか特に印象に残った天体についてコメントしようかと思ったのですが、二重星、散開星団を中心にひとつひとつが横浜で観望した時とはあまりにも別次元に美しく映えていてコメントし切れないこと、言葉を尽くそうとと試みるほどに実際の感動から離れていってしまう様な感覚に陥ったので、具体的な天体を対象にしたコメントは一旦控えさせて頂きたいと思います。とにかくたった一回の観望でなにか世界観のようなものまでが変わってしまいそうになる経験で、今後の機会が楽しみです。

⑧最後に
思わぬきっかけで再開した天文趣味ですが、自分には勿体ないほどに美しい世界をbinoは見せてくれました。色とりどりに輝きを放つ星々、宇宙の果てで神秘性を湛えながら存在する星雲、銀河、球状星団…それらを眺めながらあれこれと思いを巡らせる時間は、憂い多いこの世界を生きていく大きな糧になります。スケジュール的になかなかこういった機会は取れないのですが、比較的体力や眼が充実している内にこの様なbinoを手にする事が出来た幸運と、この世界に導いて頂いた先輩ユーザーの方々、鏡筒を供給して頂いたcff telescopesのCatalin氏、そして素晴らしいEMS-binoを発明、製作して頂いただけでなく、その普及に尽力されてこられた松本さんに感謝致しまして、長文になってしまいましたがレポートを終了させて頂きます。ありがとうございました。

・番外編ー改良点
ここでは実際に使用して、今後手を加えていこうかと思案している点を2点だけ報告させて頂こうと思います。
フィルターボックスについて、手持ちの中でNDフィルターとidasのlpsフィルターは問題なく使用できたのですが、baaderのUHCフィルターが厚く、スロットに入りませんでした(写真有)。そういったものは使用しないという事にしようかと思っていますが、一応報告だけさせて頂きます。
もう一点は操作ハンドルについて、200倍を超えての操作開始時に、少しガタを感じます(中軸架台の問題ではなさそう)。アリミゾのロッドホルダーを固定するネジを2点留めにする事で更に操作性が向上するかも…などと素人考えを巡らせていますが、これももし今後のご参考になる事があれば幸いです。

Comment by Matsumoto / 管理者のコメント;

微に入り細に入り、BINOの運用面での工夫や順応についてまとめてくださり、未来のユーザーさんのみならず、すでにユーザーになっている方々にも非常に参考になるリポートをいただいたと思います。
製作者の意図もしっかり代弁してくださっていて、非常に感激しました。
また季節が一巡した頃にでも、ぜひ追加リポートをよろしくお願いします。^^
この度は、非常に価値の高い詳細なリポートをありがとうございました。
(フィルター枠が厚くてディスケットに入らない場合は、フィルター枠を薄い物と交換すれば解決しますのでご相談ください。(枠は確保しています。))