FS102-BINO(最新型)
マツモトさんにBINOの製作を依頼し、ゴールデンウィーク明けに完成して新型台座に乗った、 FS-102BINO のすばらしさを紹介させていただきます。このBINOを受け取ってまだ1ヵ 月半ですが、 特に新型台座の使い勝手の良さ・完成度の高さを未熟者ですが報告いたします。
導入経緯
私は小学生の頃、ちょうどアポロが月に着陸した頃に初めて望遠鏡を買ってもらい、その後10年くらいは 一生懸命に星を追いかけておりましたが、いつの間にか星を見なくなり忘れておりました。
ところが5年位前にふと本屋で天文ガイドを手に取り投稿写真を見ると「なんだこれっ!!」。望遠鏡の広 告をみても「自動導入???」驚きのあまり「おもしろそう」とこの世界に戻ってきてしまいました。 それからは機材を買い・買い替えを繰り返し、25センチニュートンと自動導入赤道儀にある程度満足し、 落ち着いたつもりでした。
しかし、現在の観望仲間と出会い、またまた衝撃を受けてしまいました。 その仲間たちの30~40センチドブソニアンは銀河や球状星団が写真のように見え、ついには50センチまで 登場し銀河の腕がぐるぐる見えるのには卒倒しそうでした。
その仲間の1人に12センチの双眼望遠鏡を使っていらっしゃる方に覗かせてもらい、大口径とは違う「楽に 見る楽しさ」を教えてもらいました。そしておおたさんのCAPRI-BINOを覗かせていただき、私の腹は決まり ました「手元に1本あるFS-102を生かしてBINOをつくってもらおう」と。
もう1本を譲っていただける方をスターベースさんでご紹介いただき、早速マツモトさんとメールで打ち合 わせをさせていただき、「65φバレルであとはおまかせで」なんていい加減な依頼をしてしまいました。
ゴールデンウィークごろの製作状況速報で進行具合が分かるようになりマツモトさんから「新型の台座にし ますのですごく良いですよ」とのご連絡をいただき、完成品は「目幅調整機構は、今まで製作して来た中で も最高の滑らかさと操作性で、もちろん最高の剛性も兼ね備えています。」とのことで、早速鳥取へ引き取りに向かいました。 その場で基本的な調整法や使い方を2時間ほど習い、帰宅後一度ばらして組み上げ構造を理解しました。
実際に手にするまでは、調整が難しいとか、光軸はどうするんだろうといろいろ心配をしておりましたが、 「なにも難しいことはありません」「案ずるより生むが易し」そんな感じでした。
新型台座
今回マツモトさんが開発された目幅調整スライドユニットの使い勝手が「誰にでも簡単に扱えて」すこぶる 良いものです。
写真でもわかるかと思いますが、クレイフォード微動の要領で5kg強の鏡筒が実に滑らかにスライドし、 まさに最高の滑らかさと操作性で、最高の剛性も兼ね備えたというのが良く分かりました。そしてその 微動ハンドルが接眼側と対物側両方にあり、接眼側は自分で調整するときに使い、対物側のハンドルは例え ば子供が覗いているときに楽に調整をしてあげることができます。この機構は微妙な目幅の調整に絶大な 威力を発揮します。
これは常に現状に満足することなく研究開発に時間をかけておられた成果が生んだものだと思います。 耳軸も真鍮製のものでバランスにこそ敏感ですが、これもバックラッシュもなく非常に使いやすいもの です。私の場合はバランス用に手首・足首用のトレーニングウエイトの500gと1kgのものを用意し ました。
アイピースと木箱
アイピースはハイペリオン 3.5mm 234倍 実視界0.29度
ミードUWA 6.7mm 122倍 実視界0.67度
イーソス 13mm 63倍 実視界1.59度
EWO 30mm 27倍 実視界2.52度
これらのアイピースでピント位置も問題はありませんでした。 ただ、ハイペリオンを2インチで使おうとすると防塵フィルターにあたってしまうので、31.7mm で使わなければなりません。車の積み下ろしや室内の移動の事故を考え、木箱を桐で作りました。 軽い箱ですが、深く考えずに作ってしまい、非常に持ち運びにくい大きさになってしまいました。
天気に恵まれず暗い空に出会えておりませんので、早く夏の天の川あたりや普段あまり見ることがない月 を見てみたいと思います。 仲間からも「BINOさえ持ってくれば他の機材はもってこなくていいから」とも言われております。
記念すべき新型1号機を私にいただけたことを感謝し、一生ものとして自分で手を加えつつ大切に使ってい きます。ありがとうございました。
そら
Comment by Matsumoto/ 管理者のコメント;
「そら」さんはBINO製作を思い立たれてから、かなり早いテンポでプランニングの決定から素材 鏡筒の確保、当方への発注をこなされ、遠路にもかかわらず、完成したBINOを当方まで受け取りにお見えいただきました。
ご注文いただいた頃、ちょうど中小口径用のシステムの設計を根本的に洗い直していたところで、多くの 方を随分とお待たせしてしまった主因にもなったのですが、こうして、リポートの形で、製作者の意図を 完璧に代弁していただくと、製作の苦労が完全に報われる気持ちがいたします。
新型のスライド台座は、中小口径のBINOの基本構造を構成する部分です。旧型の自由スライド、クランプ方式から、 微動送り機構へと進化しました。原理は極めて単純で、クレイフォード・フォーカサーと酷似しています。 コストや重量が肥大しないことにも配慮し、成功を納めたと思っています。 依頼者の方々のニーズは 多岐に渡りますので、汎用性に富ませることも重視し、構成パーツ(のネジ穴配置等)は極力対称性を 持たせ、プレートパーツは都合によってリバーシブルに再構築できるようにしています。逆に、旧型でこだわった プレートパーツの角のアール加工は、機能に 関係ないので、生産性(納期短縮)を優先させるために割愛し、直線的な トリミングにしました。そうした製作者の隠れた腐心に ついて、「そら」さんがユーザーとして完璧に理解して発表してくださり、大変喜んでいます。
今回は、「そら」さんには、新型スライド台座のメカについて重点的に発表していただきましたが、 梅雨が明けて夏のdeep-skyを堪能されましたら、またぜひ観望リポートをお願いしたいと思います。 「そら」さん、すばらしいリポートを本当にありがとうございました。