
松本の光学講座 2024;Roundup-5 / 総まとめ-9/ What is “Astigmatism”? / 乱視とは?

”乱視”も、眼について一般に誤解されているものの代表のようです。
まず、文字面(漢字)のイメージが良くないですね。だから、「あなたには乱視がある!」と指摘されると、大抵、ショックを受けられるようです。
レンズで矯正できる(正規)乱視は、上の図が示すように、眼の経線によって屈折度が異なる眼です。上図では、きっちり垂直断面だけが近視の眼(直乱視)ですが、角度は様々で、検者から見て、右を基点の 0 °~180°まであります。本例は、水平断面が正視の例ですが、水平断面が少し弱い近視だったり、あるいは遠視だったりするわけです。(厳密に測ると、乱視が皆無な人は滅多にいません。)
本例の矯正には、図のような円柱状のレンズを用います。分かり易く、文字通り円柱面形状で図示していますが、実際には、メニスカス状に湾曲した、見かけは通常のメガネレンズになります。度がない方向(図では水平方向)を軸と言い、必ず直交した方向が度数最強で、それを強主経線と言います。
本例では、乱視の度数を C-4.00(Cは Cylindrical 円柱の略)としていますが、仮に同じレンズをもう一枚用意して軸を直交させて重ねると、通常のS – 4.00( S はSpherical の略)のレンズと同値になります。
ここで、メガネレンズ表記の約束をご紹介します。
水平方向の度数が -3.00Dで、垂直方向の度数が-4.00Dの眼は、S-3.00 : C-1.00 AX. 180° と表すのが一般的です。理論的には、もう2つの表現方法があります。(AXはAxis, 軸です。)
S-4.00 : C+1.00 AX.90° と、 C-3.00 AX 90°:C-4.00 AX180° です。 どれも理論的には間違いではありません。不慣れな間はピンと来ないかも分かりませんが、少し練習すれば、理解できます。
Another EMS-UL SET for the US in the making!
松本の光学講座 2024;Roundup-5 / 総まとめ-8/ Range of clear vision of the reading glass / 近用メガネの明視域

近業用メガネ(老眼鏡)の”明視域”というものを理解していただくために、単純なモデルをご用意しました。眼の調節力(水晶体が膨らむ程度)は、年齢や個人差によって異なりますが、一律に調節力=+2.0Dと想定しています。調節力=+2.0Dとは、水晶体が目一杯に膨らんだ時に、+2.0Dのレンズ相当の水晶体の度数アップを行えますよ、という意味です。目一杯ですから、それを長時間キープするのは疲れるということも、お留め置きください。調節力は個人差が著しいので一概には言えませんが、+2.0Dとは、大雑把に言うと、50~60歳の調節力でしょうか。
調節力が3.0Dくらいになると、33㎝を見る時に全力を使うわけですから、長時間の近業が厳しくなって来ます。これが、大体やせ我慢の限界で、40歳代の後半になってメガネ店に駆け込むタイミングになることが多いようです。
上の図からご説明します。
調節力=+2.0Dの人に+1.0Dの凸レンズを装用させると、無調節の時に1m先まで明視することが出来ます。110cmになれば直ちにボケるか?と言われれば、そうでもないので、狭い部屋であれば、この段階では、遠くがぼけて困る、という印象はあまりないでしょう。で、今度は近くですが、調節力を目一杯に発揮すると、レンズの+1.0Dと調節分の+2.0Dを加えて+3.0Dになるので、瞬発力では33㎝まで見えることになりますが、これも長時間の作業は厳しいでしょう。40㎝くらいで作業するように習慣付ければ、このレンズでも実用になることになります。
2番目の図は、レンズの度数を2倍の+2.0Dにしたものです。近業距離がより余裕で見られるようになります。ただし、明視域が随分狭く(浅く)なりました。これは、固定したレンズで眼の調節力を加勢してやってるわけですから、より遠くが見たければ、都度、レンズを除去するしかありません。
3番眼の図は、レンズの度をさらに2倍の+4.0Dにしたものです。
この辺になると、明視域はさらに浅くなります。「もっと近くをよりよく見たい!」というお客さんの要望に安易に乗ると、「前のメガネの方が良く見えた!」と言われかねません。
一般の方は、”明視域”という概念がほぼなく、度数を上げればさらに良く見えるだろいう!という考えなので、注意が必要です。
松本の光学講座 2024;Roundup-5 / 総まとめ-8/ Your real field of the best view/ あなたの眼の本当の視野?

ちゃんと見えているのは視野のごく中心(網膜の黄斑部中心窩付近)のみ!

今日は、皆さんをがっかりさせるために記事を書いています。^^;
視力が1.0以上あるのは、せいぜい、腕を伸ばして立てた親指の爪の面積!
信じられますか?
どうしてこうなるか? ですが、網膜で視力に関与している錐状体視細胞は、網膜の黄斑部の中心窩という、非常に狭い範囲だけに集中しているからです。角度にして1度程度でしょう。
視野周辺は、桿状体視細胞が多く、視力は非常に悪く色盲で、明るさの感度は錐状体視細胞よりもはるかに高く、望遠鏡で暗い星雲や彗星を見るときに、そらし目(Averted Vision)を使う理由です。
100度の視野の最周辺までの点像に拘った、超高級アイピースを完全に否定するわけではありませんけどね。同時に、こうした私たちの眼の特性も理解しておくと、財布を軽くしてまで、あるいは重すぎるアイピースでバランスの調整に苦慮してまでして、そうしたアイピースに拘る必要性について、また、違った判断も出てくるだろうね。
とかく天文マニアは重箱の隅をつつくのが好きなんだけどね。メーカーさんもそうしたマニアに媚びた製品開発をして、今の製品の現状に至っているようですね。
この人間の視野と視力の特性、嘘だと思ったら、腕時計(秒針付き)を2つくっつけてデスクトップに並べ、秒合わせをトライしてみてください。片方の文字盤を見ている時には、もう片方の文字盤は見えていませんから。
XY limiter knobs in the making


X-Y 調整ノブにリミット制限を掛けるのは、容易ではありませんでした。
ノブに原点復帰用の矢印シールを貼っていても、ユーザーさんが不用意に180°以上ノブを回転させたら、簡単に原点が迷宮入りになっていました。180°以上回すと、矢印の復帰の仕方で、ノブを1回転させてしまうからです。
ノブを回し過ぎないように、サイトで警告していましたが、違反者は無くならず^^;、リミッターをセットするに至った事情は、以前にもご説明した通りです。^^
以前に、テレビで、リサイクル事情のドキュメントをやっていて、ペットボトルのリサイクル工場が、キャップを除去する施設に**億円を投じたとが言っていましたが、それに似てるな!と思ったものです。 違反者がいなければ、不要な施設、装備なんですが、人間、仕方のないものですね。
松本の光学講座 2024;Roundup-5 / 総まとめ-7/ Correction of the Eye / 眼の矯正原理

「眼は情報の入り口、ここを誤解すると、全てを誤解することになる。」
と広く一般に主張すると、ちょっと過激に響くと思うけど、では、カメラマニアとか、天文マニアとか、眼と密接にかかわる人に限定するとすれば、決して過激ではなく、真っ当な意見だと思いませんか?
真ん中の”正視”以外を、”屈折異常”と言うわけですが、前回もご説明したように、屈折異常とは、水晶体が無調節の時に、網膜の中心窩から出た光束が、前方の無限遠以外で結像する眼のことです。そこに、”視力”というものが介入する余地はありません。ピント位置の問題ですから、ピントが合った状態での視力がどうなのかは、全くの別問題です。
そして、そのピント位置をどうやって修正するかは、前回もご説明しましたが、今回はより分かり易いように、矯正レンズを追加しました。
上図から容易に推察できるように、近視矯正の凹レンズの場合は、レンズが角膜から遠ざかるほど、より強い凹レンズが必要になります。つまり、メガネのレンズが眼から離れるほど矯正効果が弱まるわけです。一方で、遠視矯正用の凸レンズの場合は、レンズが角膜から遠ざかるほど、より弱い凸レンズで間に合うことになります。つまり、レンズが離れるほど矯正効果が高まるわけです。
松本の光学講座 2024;Roundup-5 / 総まとめ-6/ Imaging Formula /結像公式-2種

物点から像点、もしくはその逆を特定する結像公式は、主に2種類あります。
1つめは一般的な、レンズの中心(もしくは主点)を基点にして物点、像点距離を指定するもので、上図の s, s’ に相当し、それぞれ赤と青の矢印で表しています。右向きの矢印が正の向きであり、左向きの矢印は負の向きになります。
もう一つの結像公式は、物点、像点距離を、両焦点を基点にして指定するもので、それぞれを赤、青の矢印で表し、正負の向きも先例と同様に矢印の向きに倣います。
①と➁については、2種類の方法で物点距離と像点距離の向きが同じですが、③の、虚物点結像の場合は、s’ と t’ の向きが逆転するので、注意が必要です。
より一般的な結像公式は、レンズを基点とした「 1/s’ – 1/s = 1/f 」ですが、天文マニアには、焦点を基点にした公式(ニュートンの公式)「 t ・ t’ = – f 2 」の方が用途が広いかも分かりません。距離の単位を焦点距離に取ると、t と t’ が互いに逆数関係になるので、計算が非常に楽になります。
たとえば、➁の例だと、t = -3f ; t’ =f/3 となって、積=-f^2 になることがすぐに分かります。
焦点距離=1000mm (1m) の望遠鏡で対物レンズから101m先の目標を見ると、ピント面が対物レンズの焦点位置より1cm 手前に来ることが分かります。より短焦点の望遠鏡では、数ミリしかピント位置が変わらないことになりますね。繰り出し装置を繰り出す感覚からは、うんと引き出すような気がしますがね。