上の図は、絵本レベルの光学書や 小、中学校で教わる結像公式を図で示したものです。 負数の概念も、数直線も知らない段階の公式で、物点距離 a も像点距離 b も常に>0 として扱います。 下の図は、虚像の時の光路図ですが、a,b>0を前提にした、1/a + 1/b = 1/f が成り立たず、別の公式を立ち上げないといけません。1/a – 1/b = 1/f 負数や数直線さえ理解できれば、光軸をx軸、レンズ位置を原点として物点、像点の座標を決めると約束すれば、1/b – 1/a =1/f ( 1/s’ – 1/s = 1/f ) という一般式が、全ての結像ケースで成り立つことが分かります。(結像ケースごとに、違う公式を使わなくても良い。) それから、一見、a と b という距離同士の関係式に見える結像公式ですが、その裏にある角度関係を見落としてはいけません。 図の最初に出て来る、α+α’ = γ が始まりだということです。これは三角形の基本定理なので、中学生でも知っていますね。 これも、先ほどの a, b 同様、正負の概念を加えて、上の方の図の α’>0 , α<0 と定義しておけば、一般的に α’ – α = γ —–① と書けるわけです。 近軸域の極限値では、γ = h/f となることが分かっていて、1/f = Φ (レンズのパワー)なので、α’ = α + hΦ と書けるわけです。また、屈折の前後で h は変化しないので、h’ = h となるわけです。 これらの2つの式を行列で表記したのが、
です!
*近軸領域では、α = h/a , α’ = h/b これも極めて重要な点ですが、言い換えますと、屈折光線の曲がり角度 γ は、α や α’ とは無関係で、h とレンズのパワーだけで決まる、ということです。現実にはそうならないことが多いですが、それが理想結像であり、それに近付けるために、光学設計者が腐心するわけです。 因みに、近軸追跡で扱う屈折の角度とは、実際の光線の角度のことではなく、tan α として定義された特別な角度です。 また、α’ = α + hΦ について、h の初期値に何を代入してもかまわない理由は、 α’ = h/a , α = h/b を上式に代入していただけばご納得いただけるはずです。h/a = h/b + hΦ となり、h が α、α’ の中に隠れている ため、h が任意に決められるわけです。(hはもともと両辺に均等に掛けたもの!)
光学講座の当初に提示していました、三角形の角度関係の重要な定理です。 近軸理論では、これが頻出します。