TOA130-BINO

Dear Tatsuro –

I am sending you photos of my completed binoscope. All is perfect.

I am enjoying the views very much. My self-made mount functions very well in all respects. I even find no need to add any friction adjustment capability, because the adjustable stainless steel weights allow perfect quick adjustment for fine balance with any eyepiece pair to perfectly hold any altitude. Of course, this idea was given to me from the photograph of the TOA-130 binoscope on your web site. It was a very good idea and I thank you for it.

Perhaps the only disadvantage of the TOA-130 is the heavy weight, which requires more careful setup and take down, especially the take down in the dark. But of course the big advantage is the optical near perfection.

I am not exactly happy with these photos, because it is hard to see detail of the black mount when the sky background it so bright. I hope to take some better photos on a cloudy day to send you some better photo.

Best regards,
John Pierce
e-mail

 Here comes his quick response!

Tatsuro,

Thank you for the link. Now, yes, I would like to add to my report these comments:———————————–

Tatsuro, I want to thank you very much for your EMS backs that I purchased from Joe Castoro. Your EMS backs are very fine craftsmanship, and your design is very elegant. The system is easy to collimate and merging views is always easy. And I really appreciate the views that are oriented correctly up/down and left/right. The various adjustments have become easy to accomplish now with very little thought. This is all made possible by your great EMS invention.

Thank you for suggesting that I should use your Extra Large 65mm EMS backs. These TOA-130 are rather large diameter, and the Extra Large backs allow the tubes to be spaced a wider distance apart. I think assembly of the system would be less convenient with the 50mm EMS backs requiring closer spacing of the telescopes. Plus I am happy to know that there is never any vignetting with this system.

My eyesight is not perfect. My left eye has a little astigmatism, and my right eye has more astigmatism. The merging of two eye views results in an image quality that helps very much to overcome the defects of my eyesight, without wearing glasses. Thank you for making this possible.

I would also like to thank Joe Castoro for his advice and assistance in helped me to make a successful binoscope. Joe is a good partner for you in the USA.

管理者のコメント;

Dear John,
Congratulations on your completion of the fine “TOA130-BINO”! I am much proud of you on the splendid job. It is very interesting and exciting to see various approach that is different from mine, but as efficient as mine. I also note of your special talent of planning, too. I am also looking forward to your next plan and am always ready to assist you. Thank you for your generosity to allow me to put your name and e-mail link on this file, too. I am always welcome of your further contribution to this corner. Your friend, Tatsuro mustn’t forget to thank Mr.Joe Castoro who had kindly assisted him through his project, too. 

 EMSセットと鏡筒用65φスリーブのみをご提供し、後は自作されました。(自ら設計して外注 されたパーツも含む) いつも思うのですが、言語の壁を越えて、EMS接眼部のみを取り寄せてBINOを自作される外国の方には、深い 敬意を禁じ得ません。BINO本体の製作には、BIG-BINOの服部さんの作品も参考にされたそうです。最初のメールをUPさせていただいたら、ジョンは直ぐに追加のコメントをくれました。 まさに以心伝心。近所に住んでいてもコミュニケーションが取り難い友人もいますが、地球の裏側に 住んでいても痒い所に手が届く友もいる。スリリングな時代に生きて良かった。^^

ステレオタイプ(stereotype)の呪縛 / Spell of the Stereotype

 ”天体望遠鏡=倒立像”、というのも一つのステレオタイプであって、世間一般的には未だに抜け出せていないもの だと言えますが、この辺までですと、当サイトをご訪問くださる方々はすでに問題意識を持たれて長く、とっくの 昔に脱ぎ捨てられたステレオタイプかと存じます。 しかし、このステレオタイプにも段階があって、さらに上の、またその上の階層でも、それは存在するわけです。 私たちが未だに抜け出し難い、(屈折式の)天体望遠鏡の構造のステレオタイプは、外観から言いますと、筒先 から、対物フード →(中に)対物レンズ(セル&対物側フランジ) → 鏡筒パイプ → (フランジ&)繰 り出し装置(ドローチューブ)→ 接眼アダプター の順に構成されるもので、実際、これから逸脱した市販の天体望遠鏡は皆無であると言っても過言ではありません。

そして、望遠鏡メーカーには、天体望遠鏡は直視で見るのが基本だという意識が猛烈に強くあって、アイピースと 望遠鏡接眼部との間には、せいぜい天頂プリズム(ミラー)が1個介在するくらいの認識しかありません。 です から、たまに双眼装置等に気を使った、極端にバックフォーカスの長い鏡筒を出したとしても、上記、直視(もし くは天頂プリズム1個)での合焦とを両立させようとするものだから、どうしても極端に長いドローチューブを 一緒に装備してしまうことになるわけです。

そして、その長い管路(ドローチューブ)の末端に、これまた長い同等管路を持つ双眼装置やEMSを装着して、 ドローチューブをうんと繰り入れて使用していたわけです。

合焦しない場合は、やむなく鏡筒のカット等を行って長い総管路のフルシステムをさらに対物側に繰り入れ、鏡筒カットを 免れて合焦する場合も上記のジレンマを背負うわけです。(特に小口径の鏡筒では、ドローチューブの後端が対物レンズ後面 に当たりそうになることも珍しくありません。 ドローチューブもカットすれば状況は緩和しますが、往々にして 内径が細い物が多いので、抜本的な解決に至らないのが普通です。)

望遠鏡メーカーが、“直視(もしくは天頂ミラー1個)での合焦”の呪縛から解き放たれない限り、EMSの都合と 市販鏡筒が完璧に折り合うことは今後もあり得ない、ということに気付くのに、あまりに長い年月を要しましたが、 ようやく最近になって、そのことを明確に認識できるようになりました。 つまり、私自身も、『望遠鏡パーツは、ドローチューブ末端のアダプターに挿入するもの』というステレオタイプ の呪縛に縛られていた、というわけです。

長いドローチューブの末端に、さらに長い光路長の光学アタッチメントを装着することの矛盾は、単に光学的な側 面ばかりではありません。視度補正や、規格が統一されていないアイピースのピント位置のばらつき《これはアジ ャストリング等の外部的な工夫で克服できる》を補償するためだけに、ドローチューブ+光学アタッチメント+重 量級アイピース、という巨大な総質量を大掛かりな手段で以って常に動かし続ける、という、力学的な矛盾でもあ るのです。

上記ステレオタイプから開放された先に、どんな正解が待っているかと言いますと、それは、『メインフォーカ サー(+長いドローチューブ)を撤去した鏡筒、またはフランジにEMSの第一(望遠鏡側)ユニットを直結する。』 ということです。
(もちろん、今度は余るバックフォーカスに相当した延長管を要する場合もありますが、市販鏡筒の現状からすると、それは不要か、せいぜい極短い物でしょう。 特に小口径の場合は、重量構成比が大きいメインフォーカサー の撤去は、軽量化という極めて大きな副産物ももたらしてくれます。また、今までEMS-BINOの素材として 却下して来た、繰り出し装置の先にレンズ後群が配置されたphoto-visualタイプの鏡筒も 射程に入ることになります。)

ただし、それを美しい形で実現するには、いくつかの課題をクリヤーする必要があります。当サイトを注意深く 見てくださっていた方は、私がそれらの一つ一つを克服して行った過程を思い出してくださっていることと思い ます。

まず、メインフォーカサーを撤去するわけですから、別の設置箇所を決めて、代替フォーカサーを設置しないとい けません。先述の趣旨からして、設置箇所は当然アイピースのごく近傍になるわけですが、2インチサイズのアイピースを使用する前提に於いて、58㎜くらいの目幅制限を満たすための外径制限があるので、low-profileの要求 と相俟って、これだけでも十分、計画を断念するに足るハードルがあったわけです。

曲折を経て、最小目幅の障害にならないアイフォーカサーの基礎的な実験に成功したことは、すでにここで発表し ています。

次に、フォーカサーをアイピースの根元に移動したことで、第一ミラーユニットを少し大きくする必要が生じま す。 これは単に光学的な要求ばかりではなく、鏡筒→フランジ→EMSの第一ユニットに至るアウトラインが極力 段差なく美しい流線型となって繋がるためにも、十分な大きさ(開口径)の第一ミラーユニットを準備することの 意義は大きいのです。

これは、現状でも口径12cmクラスくらいから窮屈だったEMSの第一ミラーハウジングを、いよいよ大きくす るための機が熟したということです。

目下、20年来の懸案だった新型の大型ミラーハウジングを、満を持して開発中であり、それが完成すると、 EMSがこれまでの諸々のジレンマから開放され、いよいよ次のステージに向けて大きく進化するわけです。

数ヶ月以内には、ここで重大発表をさせていただくことになるでしょう。


2009年5月25日

MOROHA NO TSURUGI (両刃の剣)

“MOROHA” maeans “double-edged” in Japanese, and “NO” is for “of” , and “TSURUGI” is for “sword”. The order of the words is reversed in Japanese. So, the title means ” DOUBLE-EDGED SWORD”. Japanese use the term expressing contradictive resort that can bring us both the blessing and curse.

A video of EMS-BINO was submitted to “YOU TUBE” by an Italian user. I firstly welcomed the fact that the VIDEO of my EMS-BINO is being released to all over the world, and put the link on top of my website. But, stop to think of it, I thougt at the same time of the concern of MOROHA NO TSURUGI both in the field and in its contents itself. I know that there is no harm meant by the submitter, but he treats my EMS-BINO as if it were of the same level of product as the commercial binoculars. So, I withdrew the link of it on the top of my website.

イタリアのユーザーが”YOU TUBE”にEMS-BINOの動画を投稿してくれたので、一時トップページに リンクを貼ったものの、国内のユーザーの方のアドバイスもあり、また自分自身の危惧もあったので、取り下げました。 常に新鮮な情報を発信し続けるのには莫大な時間とエネルギーを費やすのですが、一方で情報発信は 両刃の剣の側面を持ち、何ともやっかいなものです。

投稿者には悪意はなく、業者さんでもあるので、市販の大型双眼鏡も売らないと経営が成り立たない 事情も分かりますが、撮りかたから、氏の本音の価値観が自ずと読み取れます。 ここはおおらかに受け止めるのも一つの選択肢 ではあると思いますが、好意的な第三者の目にも違和感があったということは、やはり”blessing”を抑えこむ”curse” の部分が無視できないのだろうと判断しました。また、すぐ隣にこんなふざけた投稿が並んでいるような”YOU TUBE” という玉石混交のメディア自体についても慎重になる必要があるようです。

EMSを扱いながら、横に裏像の天頂ミラーを並べる販売店も、営業のために仕方なくという雰囲気ではなく、 積極的に裏像の天頂ミラーを推販していることに矛盾を見ますが、今後どの辺で線を引くのか、 難しい判断を迫られることが多くなると思っています。

TMB: APM APO 130/F6-BINO

経緯

 1992年にMeade LX-200 20cmF10を購入しましたが、家の前の空きスペースで観望するためには、階段を10段少々 降りなければならず、また、住宅環境や転勤、多忙生活のため、自然と望遠鏡の稼働率は低くなってしまいました。 Al Nagler の名言 「望遠鏡は、使わない時間が長い。」

 時は流れ、2005年に家の建て替え計画が持ち上がりました。当然、“屋上にドーム”も頭をよぎりましたが、 2~3種類の望遠鏡を使い分けたかった事、予算が無かった事で見送りました。ただし、将来、簡易型ドームなどを 設置できるように、しっかり屋上にスペースは確保しておきました。紆余曲折あり、2007年2月に完成。膨大な音楽 関係の資料等の片付けに1年近くかかりましたが、一段落してくると、屋上が気になってきました。幸い、ペントハ ウスを望遠鏡収納スペースとして占領する事に成功し、以前の観望の煩雑さの反動から、Kowa High Lander Prominar を購入しました。屋上に出して2分後には観望できる簡便さ、10cm程度の優秀な屈折望遠鏡を無用としてしまう程 の恐ろしく優秀な光学系、アイピースを交換して21×(実視界3°)~96×(実視界0.8°:Meade UW 4.7mmを使用) まで対応できる応用力、アイピースまで純正トランクに収納できて総重量が11kgですから、非の打ち所がありません。
 その後、第1回双望会に参加する事ができ、天候には恵まれませんでしたが、圧感!の望遠鏡群を見る事ができま した。

 EMSを使用した2インチ・アイピースの双眼の世界は流石でした。双眼鏡もそうですが、一度広い見掛け視界に 慣れてしまうと(しかも、あっという間)、狭い視界は、随分と窮屈に感じてしまいます。また、ちょうどその 頃、仕事で大変お世話になった同世代の方が亡くなり、EMS双眼をやらずして死ねるか、という強い思いと、松本 さんと親交を持つに至り、ついにEMS双眼望遠鏡を発注する事となりました。

双眼の魅(威)力

 今は無き、Atom横浜店のA氏から同社の双眼装置を紹介され、Meade LX-200 20cmF10にPentax XL 21mmで使用し ていました。私の双眼装置は今も健在で、球状星団や惑星など、見事に見せてくれます。 我が家から700m離れた所に高圧線の鉄塔があり、屋上では、ちょうど手を伸ばした親指の先位の大きさに見えます。 私は、いつもこれで光学系のチェックをしています。この鉄塔のガイシを大きく視野に導く事も可能ですが、 近傍のパラボラ・アンテナの文字がはっきり見えるのは、Nagler 5mmでもTMB Super Monocentric 5mmでもなく、 双眼装置+ Pentax XL 21mmです。しかも見やすさは圧倒的です。これが双眼の魅力・威力でしょう。

鏡筒選びは楽しくもあり、悩ましくもあり

鏡筒を選ぶのは実に楽しいですが、明確なコンセプトがあったので、選択肢はあまり多くありませんでした。1. 優秀な屈折。
2. 低倍率指向(嗜好)。EWV 32mmで実視界3°確保。
3. EMS双眼望遠鏡を丸ごと移動可能(総重量20 kg、できれば18 kg以下)。
4. 生涯を共にするEMS双眼望遠鏡(only oneを目指す)。

 優秀な屈折というと、真っ先にTOA-130が候補に挙がります。今まで覗いた中で最高の1本でしたが、鏡筒重量が10.5 kgなので、これでは重くて移動できません。いくら高性能でも、観望する度に組み立てるのは、私の場合、結果的 に疎遠になってしまうのは体験済みなので、ここは諦めざるを得ません。また、TOA双眼はいくつか報告もあり、 追従では面白みに欠けます。
 ASTRO-PHYSICSは全ての点で条件を満たしていますが、納期に何年かかるか見当もつ きません。TECは140mmですが、F7で重さが8.6 kgという事で却下。BORG 125SDは重さがわずか3.5 kg、しかも焦点 距離は750mmですから、EMS双眼にうってつけです。実際に覗いてみると、ヌケが良いクリアーな像ですが、色収差 の点で、TOAに一歩譲ります。
 そこで登場したのが、TMB:APM APO 130/780 LW でした。780mmという焦点距離も、 7.4 kgという重量も申し分ありません。有り余るバックフォーカスも魅力です。解像度もTOA並み、という事でし たが、いかんせん予算がかなりオーヴァーしてしまいます。同シリーズには、3.5”フォーカサーのCNC-LW IIと いう、実に美しく眩しい鏡筒がありますが、重量は8.3 kgで、価格もさらに高くなってしまいます。松本さんに、 「2.5”のフォーカサーと3.5”のフォーカサーがあるのですが、どちらが良いでしょう?」と聞いたら、 「断然3.5”のフォーカサーの方が良い」との事。随分悩みましたが、ああ、もうこうなったらやるしかない!  円高も手伝って、一目惚れしたCNC-LW IIを注文する事となりました。焦点距離を1%以内で揃える、というリクエ ストも快諾していただきました。

鏡筒が到着。しかし…

 鏡筒を注文したのが2008年11月初旬で、1月末に出来上がるとの事。3ヶ月ありますから、その間に、まず架台の 準備をしました。ピラー脚にキャスターを付け、ペントハウスからゴロゴロと移動する事に決めていたので、ピラー 脚はVixen(85cm)を採用。足のネジは12mmφなので、東海キャスター F100N12Sがぴったり入ります。デザイン上、 グレイ色と100mm径を選択しました。

 我が家に鏡筒が届いたのは2月中旬ですから、ほぼ予定通りで、焦点距離も1%以内に収まっていました。何と 美しく魅力的な望遠鏡でしょう。フードを短縮すると、信じられない位短くなり、2本並べると、潜水ボンベが2本 並んでいるようです。名付けて “ツイン・タンク”。3.5”のフォーカサーも頼もしく、この鏡筒にして本当に 良かった!と思いました。
 ところが、メーカーが鏡筒出荷の段階で鏡筒バンドが品切れである事に気づき、これか ら製作するので1ヶ月待ってくれ、という連絡が入ってきました。その上、レンズには恐ろしい程のホコリが入って おり、へなへなと腰が抜けてしまいました。レンズ・セルを外してみると、幸いホコリはレンズ後面のものだった ので、きれいにクリーニング。さっそく覗いてみると、色収差の無い素晴らしい解像度の鏡筒でした。不思議なの は、TOAは、あっさりしたクリアな像ですが、TMB/APMは、PLフィルターを通して見たような濃い色で、ずいぶん 見え方が違っていた事でした。しかし、この“濃い色”が、きっと+の方向に働いてくれるに違いありません。 EMS双眼望遠鏡の大成功を予感し、鏡筒は松本さんの所へ旅立って行ったのでした。

EMS双眼望遠鏡の製作

 鏡筒バンドが届く間、フレーム以外の部分の製作開始です。製作は、松本さんに全て一任しました。たまたま注 文が少ない時だったので、あっという間に心臓部のEMS-LSが完成。ドロー・チューブの末端の所に接続するEMS専用 のアダプターを製作していただきましたが、この美しい鏡筒のデザインにマッチする、素晴らしい仕上げのアダプ ターでした。フレームは、鏡筒バンドを利用したシンプルなものとし、耳軸の連結部等はアルマイト加工を希望し ました。もっとも、私があれこれリクエストしなくても松本さんは全て把握していて、今回ほど以心伝心という 言葉を感じた事はありません。

 結局、鏡筒バンドは、到着まで1ヵ月半かかりました。もう3月中旬を過ぎています。この間、ジリジリとした 思いで待ちましたが、不安と夢は膨らむばかりでした。別な鏡筒バンドが届いたらどうしよう… 早くしないと トラペジウムが沈んでしまう! 春のメシエ・マラソンには間に合うのか?

 鏡筒バンドを松本さんの所へ送ってから完成までは、まさに電光石火。2日後にはフレームが出来上がり、 1週間後には完成してしまいました。何とシンプルで機能美あふれるフレームなのでしょう! HF経緯台の延長も 見事な仕上がりです。長年の松本さんの経験とエッセンスが凝縮されているのを感じ、すっかり感動してしまいま した。 

鳥取訪問

 遂に4月初旬の週末、“恋人”を引き取りに、鳥取へ行く事になりました。強風のため、飛行機が着陸できず、 空中旋回しています。フライト・アテンダントに聞いたら、「冬などは、よく名古屋か大阪に着陸する」との事。 夜に名古屋で下ろされたら、どうやって鳥取まで行けばよいのでしょう。フライト・アテンダントの答え 「私共 は、その後については分かりかねます」。また先週は、風の影響で成田で飛行機が落ちています。「半年も待って、 覗かずに死んでたまるか!!」 幸い30分程旋回したところで天候が回復し、無事鳥取へ着いたのでした。

 ワクワク・ドキドキ。半年の思いが脳裏を駆け巡ります。ああ、ついにこの瞬間が… 何と美しい佇まいなので しょう。さっそくBINOを覗いてみると、闇夜の水銀灯が高解像度で迫ってきます。色収差は全くわかりません。
 少し頭を冷やした所で、“鏡筒をねじる光軸調整”等を教わりました。夜も更けてきたところで空を見上げたら、天 候が回復し、月が見えてきました。少しモヤがかかっていますがBINOを外へ出し、観望する事になりました。EWV 32mmに続いてEthosへ。おおっ、何というシャープな像でしょう! Nagler 6 5mmでは、宇宙船の窓から顔を出し て、すぐ近くの月面を見ているようです。エラストテネスなどは、今、隕石が衝突してできたばかりのように見 えています。月齢8.9ですが表情豊かです。見慣れているクレーターなのに、BINOから目を離す事ができません。 さらにNagler Zoomでぐんぐん倍率を上げてみましたが、2mm 390倍でも像は崩れませんでした。感無量…

架台と合体

 BINOが横浜に無事届き、さっそく架台と合体です。耳軸高は137cmなので天頂付近を見るのには良いのですが、 BINOを持ち上げるのは大変です。翌日、近所の鉄工所でポールを12cmカットしてもらいました。これですと、 BINOを持ち上げて設置する時、両方の耳軸受けを見ながら載せられるので、安全です。

横浜でファースト・ライト

 さっそく我が家の屋上で観望開始です。鳥取で見た月面はどうでしょう。モヤが無い分、コントラストがくっきり しています。少しグリーンが入った月面の色がきれいで、月の砂の感触が伝わってくるような感じは初体験で した。これは、やはり“色が濃く見える”特色が+に働いているためだろうと思います。最初のねらい通り、 温度順応も迅速です。
 続いて、すぐ近傍の土星へ。表面の帯のみならず、輪の影など、恐ろしくシャープです。 シーイングの影響で、クックッと像が変化していきますが、時々見せる素晴らしい像には言葉もありません。
 「ご飯よ~」に応答が無いので、次女が様子を見に来ました。Nagler Zoom 2.5mmで土星を見せたら、「この前 の土星とぜんぜん違う~!」と目が離れません。この前の土星とは、ORIONドブ300mmF4.5(高精度+増反射マル チコート)+Baader V+2”GPC+Ethos 8mm だったのですが(都会では大口径が生かせず、オフ・アキシス・シャ ドウ・マスクを使用しても小口径/High Landerに負けてしまう事も度々です)。

 宇宙を100億分の1に縮小すると、いろいろな事が見えてきます。100億分の1の宇宙では、太陽は14cm、地球は 15m離れた所の1.3mmの粒です。シャトルは地球の表面0.03mmを飛んでいます。ちなみに、光速は毎秒3cm。我々は、 1.3mmの地球から、128m程離れた所の1.2cmの大きさの土星を見ています。望遠鏡って、凄いと思いませんか?

使い勝手

 操作ハンドルで空をスイープしていると機銃掃射みたいで、私などはラット・パトロール(1960年代の戦争アク ションTV)を思い出してしまいます。ファインダーは無くても導入には不自由しない程、全てが自然に動いてく れます。正面に見えている対象物を正像のままどんどん拡大して両目で見れる、という事が、どれ程人の生理に 適っているか、改めて実感します。

 ハンドルの下にはバランサーが付いていて、このハンドルをトロンボーンのようにスライドさせる事で、様々な 重さのアイピースに対応できるようになっています。しかも、このカウンター・ウエイトは、アイピースと対側 の低い位置にあるので、重量級アイピースでBINOが高仰角になった時の安定作用もあります。何という絶妙なアイ ディアなのでしょう。鏡筒が短いので、ハンドルを固定したままでもバランスは大きく崩れる事はありません。
 よく話題に上る“光軸調整”ですが、フォーカシングの時間よりも短いですし、幸いEWV32mm~Ethos 17-8mm間で は、わずかの補正で済んでいます。私の場合は、悩む間も無く、すぐに馴染んでしまいました。

 EMS調整ノブに付いた原点復帰 “←” マークの効果は絶大です。まず、この←2つ(水平用・垂直用)を手前に一 直線になるように向け、この時点で大きく光軸がずれていたら、鏡筒をねじって光軸を補正すれば良いのです。 ですから、安心して鏡筒を脱着できますし、移動の際、光軸がずれたとしても、冷静にすぐに復帰する事がで きます。EMS調整ノブを回しすぎて、迷路に迷う事もありません。この“鏡筒をねじる光軸補正”ですが、 実際に教わらないと理解は難しいかもしれません。鳥取までは遠いのですが、訪問の価値は計り知れませんで した。

 優れた製品・工芸品を使う、という事は、設計者・製作者の意匠を感じ対話をする、という事でもあります。 時に生き甲斐すら与えてくれる事もあります。生涯を供に過ごせるBINOを持つことができて、私は本当に幸せです。
  導入

 いつも、SkyScoutを使用しています。実視界3°あれば、ほとんど視野に導入してくれるので、大変重宝してい ます。基準星で設定する必要が無く、いきなり導入してくれるので、条件の悪い都会の空にもピッタリです。 しかし、経緯台でブンブン振り回して気ままに観望し、その上、導入や天体の確認ができるSky Tourは大変便利 でしたので、今回は奮発してスーパー・ナビゲーターを取り付けました。

 High Landerには、VixenのXYスポット・ファインダーを取り付けています。これをそのままBINOに取り付る事が 可能ですが、今回は、国際光器の正立ファインダーを取り付ける予定です(納入待ち)。“正立像”で統一です。 前述した通り、実際にはファインダーが無くても導入に不自由しない程、使い勝手は良いです。

都会の空も捨てたものではない

 都会の空は明るいです。私の住んでいる保土ヶ谷は、横浜駅から1駅なので、かなり明るいです。こんな所で星 なんか見えるの?と思う方も多いと思います。しかし、夜も10時を過ぎると、天頂付近は、条件が良ければス カッと見えます。夏はM57なども良く見えます。また、イザとなれば、1時間半少々で富士山・新五合目まで行 けますので、便利な都会かもしれません。ただ、最近は静かに観望を楽しんでいる脇で、我が物顔で発電機を ブリブリ回して撮影をする人が増えてきて、大変迷惑しています。もしお知り合いにこのような行為で写真を 撮って喜んでいる人がいたら、厳しくモラルを問いただし、即刻やめさせていただきたいと思います。 

腰痛対策

 BINOの総重量は、3.5”フォーカサーを採用した事で、22kgになってしまいました。鏡筒は8.3kgですが、 鏡筒バンドが1個1kgありますから、これだけで20.6kgになってしまいます。ですから、総重量が22kgで抑え られた、というのは驚異的です。

 とはいうものの、腰痛に悩まされないようにするには、BINOを持ち上げて移動する時間をできるだけ短くし なければなりません。幸い、ペントハウスから出して架台に載せた後は、キャスターでガラガラ移動すれば良 いだけですが、BINOの保管も考え、カンガルー・リフター:KGL-25を導入しました。
 普段は、地震が来ても大 丈夫なようにテーブルを低めにしておき、BINO設置の時は数回ペダルを踏めば、BINOの取手が1m位まで高く なります。床から持ち上げる時に一番腰に負担がかかりますから、これで腰痛対策は万全です。
 リフターは各社から様々な機種が出ていますが、カンガルー・リフターが、最も少ないペダル回数でテーブル をトップまで上昇できる機種でした。 

最後に

 写真歴は36年でカメラも大好きですが、徹底した眼視派で、天体写真を撮ることはありません。また、夜の仕事 をしている訳ではありませんが、1年の1/3は帰宅が遅く、星を見るチャンスは多くはありません。一つ一つの 機会を大切にしたいと願って、このBINOを注文しました。まだ満月なので、これからディープ・スカイへ旅立 つのを心底楽しみにしています。

 小学生の時は、ボール紙で作った屈折望遠鏡、某社の廉価版屈折望遠鏡で、すっかり屈折(挫折)してしまい ました。高校の頃は、木辺成麿さんの「反射望遠鏡の作り方」を幾度も幾度も読みましたが、資金が足りず計画 のみで終わってしまいました。友人は、20cmを作る、と意気込んでいましたが、そんな大きな物を作ってどうす るの?と真剣にアドヴァイスしたのを覚えています。35年前は20cmの反射は相当重く、据付方法を本気で考え なければならなかったのです。今のシュミカセやドブソニアン、見かけ視界100°のアイピースを考えると、 まさに隔世の感があります。

 EMSとの出会いは割と古く、1994年に松本さんにいろいろ問い合わせて沢山FAXを送っていただいた事があ ります。この時は、自作に自信が無く見送りましたが、それから15年。やっと実現に至りました。EMS双眼は、 鏡筒2本分の価格+αがかかりますが、効果は√2倍ではなく、2乗以上ではないか、と思います。鏡筒のクオリ ティが上がると、これまた2乗で効いてくるように感じます。

 今回のEMS双眼望遠鏡を通じて多くの事を学び、そして、心温まる交流が何よりも財産として残りました。 また、このBINOの製作にあたり、多くの方々から貴重なアドヴァイスをいただきました。国際光器の小山さん にも大変お世話になりました。この場を借りて、厚くお礼を申し上げます。そして何よりも松本さん、心より 感謝申し上げます。どうもありがとうございました!

Comment by Matsumoto/ 管理者のコメント;

 YKさんは、4月4日から5日にかけて当方を訪問され、7日に後送したBINOを受け取られ、 12日の今日、神速のリポートをくださいました。 1994年にもFAXを交換させていただいているようですが、私が初めてYKさんとお会いしたのは、去年の双望会 でした。双望会からの帰路を豊橋駅までYKさんの車に便乗させていただいた時、少年時代より心酔して来られた 世界的に有名な某音楽家との劇的な出会いと、その方との現在に至るまでの濃密な交流の感動的な経緯を伺い、大いに 共感、感動し、「この方のBINOを、今までのノウハウを総動員して作ってみたい。」と、強く思ったのでした。 YKさんも”以心伝心”と書いてくださいましたが、お仕事はもとより、第二のライフワークであるはずの 音楽関係の活動を含めて、とりわけ多忙でいらっしゃるにもかかわらず、BINO作りの過程で送信させて いただいたメールのご返信は極めて迅速で、かつ当方の設計意図もよく理解してくださるので、非常に仕事がしやすかった印象があります。  また、ご訪問に先立って、ご指定の梱包材料を手配して当方に送ってくださり、こちらでのご滞在2日目に は BINOの梱包を手伝ってくださるという徹底ぶりでした。 私の製作技術はまだ発展途上と考えていますが、YKさんは製作者の意図を良く理解してくださり、まさしく 製作者をやる気にさせる依頼者でした。私は、自分自身を、褒められてばかりいないと仕事が出来ない人間だとは 思っていませんし、改善すべき点を指摘されれば、可能な限り対処する姿勢は持っているつもりですが、 YKさんの例のように、心の琴線に響く関係が構築されていますと、依頼者の方との相乗効果のようなものが 出来上がるBINOにも反映されるということを、この度、改めて痛感しました。 この度、YKさんの非凡な感性に響くBINOが製作できましたことが大変幸せで、誇りに思います。  また、YKさんの方で全て整えられたポール+キャスターがBINO本体と見事にコーディネートされ、その 美しさを高めていることにも、感心しました。 今回のリポートについて、YKさんは「長い文章になった・・・」と言われましたが、今までに交換させていただいた 情報の量からしますと、私は、非常に簡潔で短い文章だと思いました。 YKさん、数ヶ月後にぜひまた続報をお願いしたいと 思っています。
 また、このリポートによって、私自身もYKさん以上に感動をいただいたと思っています。

Coo became a Cinderella Boy!! / 玉の輿に乗ったクー

Coo is enjoying blissful days with his new keeper. He won the freedom of playing out at his leisure through his personal entrance door that was made by his kind keeper, and the warm room of the perfect shelter at a time.

クーが玉の輿に乗りました。新しい飼い主は私の友人で、とても信頼の置ける方。車で数時間かけて、今月の 初旬に婿入りしました。無理解なご近所のために家の中に幽閉されたクーでしたが、一度ノラの生活を 経験したクーには耐え難いことでした。 決して元の飼い主の母が薄情だったのではなく、私たちとクーが 今後の人生を幸せに過ごせるかどうかの、ぎりぎりの判断をした結果なのです。

クーは、星が見える広々とした里の個人天文台の主猫になり、晴耕雨読ではなく、晴遊雨寝の極楽を 味わっています。^^ それにしても、運の強い猫です。 人間でも、路頭に迷う運命の人もいるのに、 クーは自らの強運で、いつでも外で自由に遊べる環境と、暖かい自分の個室と、新しい飼い主の深い 愛情の全てを手中にしたのです。

クーの近況

クー帰る (Coo came home!)

クーが家出 (Coo ran away!)

クーちゃん、ごめんよ。(Forgive me, “Coo”.)

Coo became a Cinderella Boy!! (玉の輿に乗ったクー)

Coo is enjoying blissful days with his new keeper. He won the freedom of playing out at his leisure through his personal entrance door that was made by his kind keeper, and the warm room of the perfect shelter at a time.

クーが玉の輿に乗りました。新しい飼い主は私の友人で、とても信頼の置ける方。車で数時間かけて、今月の 初旬に婿入りしました。無理解なご近所のために家の中に幽閉されたクーでしたが、一度ノラの生活を 経験したクーには耐え難いことでした。 決して元の飼い主の母が薄情だったのではなく、私たちとクーが 今後の人生を幸せに過ごせるかどうかの、ぎりぎりの判断をした結果なのです。

クーは、星が見える広々とした里の個人天文台の主猫になり、晴耕雨読ではなく、晴遊雨寝の極楽を 味わっています。^^ それにしても、運の強い猫です。 人間でも、路頭に迷う運命の人もいるのに、 クーは自らの強運で、いつでも外で自由に遊べる環境と、暖かい自分の個室と、新しい飼い主の深い 愛情の全てを手中にしたのです。

クーの近況(2008,12/13)
クー帰る(2008,2/4) (Coo camehome!)
クーが家出(2008,2/3) (Coo ran away!)
クーちゃん、ごめんよ。(2008,1/10)(Forgive me, “Coo”.)

Adjustment of EMS-BINO / EMS-BINOの調整

Finished EMS-Binoscopes are free from the original adjustment, because they are carefully adjusted by Matsumoto before shipping. Especially those who had accepted the binoscope at my shop have proved that EMS-BINO will have no collimation problem by the vibration of the family car while carrying.

EMS-BINOはこちらで十分に調整して供給していますので、本来はユーザーサイドの初期調整は不要です。(X-Yノブでの使用中の微調整は別) 特にこちらで受け取られ、マイカーで遠路をお帰りの方は、車の振動くらいでは光軸が狂わないことも証明してくださっています。

Still, however, some of them have shown collimation problem by shipping. And in such a case, users should recover the collimation by themselves if you cannot afford to bring your troubled binoscope to my place. So, I reccommend you to carefully study at my website to master how to adjust the disordered binoscopes.

しかし、こちらで受け取られず、運送屋さん経由で納品させていただいた場合に、 たまに光軸の狂いや像の倒れを訴える方がおられます。こちらで説明を聞かれる方のBINOは狂わず、説明を 聞かれない方のBINOだけがどうして狂うのか、未だに謎ではありますが^^;、どちらにしましても、EMS-BINO の調整原理は極めて単純であり、復元も極めて簡単ですので、サイト内の説明をよくお読みになり、まさかの事態で 慌てないようにしていただければ幸いです。

Assume that the left 500yen coin is the image of the left telescope. In condition that the XY image adjuster has not lost the original position, I can judge the objective end of the right telescope is misalined in the left-down direction. In other wotds, you have only to pan the right scope in the same direction as the right 500yen coin.

上の写真は、左の500円硬貨が左眼の像と仮定します。EMSのXY調整ノブが原点を見失っていないとしますと、 右の鏡筒先が左下に振っている状態で、言い換えれば、右の500円硬貨が逃げているのと同じ方向に鏡筒先を 振れば左右の像を合致させることが出来るわけです。
さて、合致させたのが次の画像です。

This is the merged image by the above adjustment. You will still find something odd in the above image. Yes, the left 500yen coin leans to the left, and the rihgt one to the right. In other words, the left and right image of the vertical lines form the “V” shape. So, I call this tendency of the error “V error”. And the counterpart error I call is “/I”(lambda) error. Now, you know that collimation is one thing, and image inclination is quite another.

何だか変ですね。双眼視のコンポジット効果どころか、だぶったような像ですね。 最初の画像に返って見てください。左の500円硬貨は天方向が左に倒れ、右の硬貨は右に倒れていますね。 これを私は『V字傾向の像の倒れ』と言います。
像の倒れの調整は、光軸の平行調整とは別個に必要なのです。

Above image shows the inclination-adjusted and collimation wanted condition.

上の画像では、像の倒れが綺麗に修正されています。(修正方法はサイト内で反復説明しています。) (像の回転調整が光軸の平行調整とは全く独立的に行えることが、EMSの特筆すべき特長なのです。)

The image below shows the condition both collimation and inclinations are rightly corrected.

倒れが修正された状態で鏡筒を正しく振ると、下の画像のようになります。

この画像は、実際に半透明の2枚の画像を処理ソフトで重ねた物です。

像の回転は、EMSを構成する2つのユニット(望遠鏡側と眼側)の接続アングルの調整で自由自在 になります。
この事を先日ご説明した方が、「そんな事をしたら、EMSが曲がってしまうのでは??」と 心配なさっていました。^^; 左右のEMSについて、対称的に修正しますし、調整量は眼に見えないほどの微量なので、 心配無用なのです。
それから、最初にトライされる時は、常に極端に回して見て、回転方向を見極めることが 大切です。 像が回転する原理さえ分かれば、しめたものです。^^
(見ながら追い込むのは一人では 難しいので、目分量で動かしては仮固定してチェックし、追い込んでください。調整作業の結果、生じるEMS全体の倒れは後で 望遠鏡接続部を修正すれば良いのは言うまでもありません。)

要するに、EMS-BINOは復元調整自在なシステムであるということです。説明文を読むのがどうしても 面倒臭い方は、やはりこちらまでご足労いただく必要がありますね。^^;

(たまに遭遇する、説明が理解できない方のために、どうすれば理解していただけるのか、試行錯誤しています。 最終的な物とは言い難いので、この原案を取り敢えず日記に残しておくことにします。)

Here is the study-tool of the image-inclination adjustment.

同日追記: 重複になりますが、サイト内の該当説明を参照しない方が多いのでは?との危惧から、特別サービス^^; で、像の倒れの修正方法の新たな教材を用意しました。 下の画像をご覧ください。

1.Unscrew the three yellow arrowed set-screw, and the connection of the two units of the EMS is released, and you can rotate the units with each other. Take the most care when you unscrew the last screw so that the eye side units that is slightly blued will not rapidly drop down.

2.Rotate the whole blued part quite a bit in the same direction of that you want to rotate the image. Red arrow shows the rotating direction to correct the inclined image shown at this sample.

3.Of course, you should reversely do the same adjstment on the opposite scope. Don’t forget to screw the set-screws after finishing the adjustment, too.

機種により異なりますが、15cm-BINOの場合は、EMSの眼側ユニットは、目幅クレイフォードにジョイント用の オスのテーパー部を挿入し、黄色い矢印の先端辺りの3箇所のM3のセットビス(芋ネジ)で固定しています。 従って、そのネジを緩めれば、接続が解除されるわけです。もちろん、いきなり3つ共緩めて、脱落事故に 至らないように細心の注意が必要です。

さて、最後の3つ目のセットビスを慎重に緩めると、水色の紗をかけた部分全体が双方向に回転できる状態になります。 上のV字傾向の倒れを修正する場合は、赤い矢印の方向に回転させます。
つまり、像を回したい方向と、眼側ユニットを 回転させる方向が同じなのです。当然、鏡対称で、右のEMSの眼側ユニットも同じ調整をします。
微量とは言え、この調整の結果、アイピーススリーブは上が寄り添う形で相対的に傾斜することになります。 今度は、EMS全体を少し回して元の位置に戻せば良いのです。
左右共にこの修正を施し、像をチェックし、まだ不完全 であれば、また元の調整に戻り、追い込んで行きます。

文章にすれば面倒に聞こえますが、慣れれば、 回転量と像の回転角の関係も感覚的に理解できるようになり、長くても数分以内で完了する作業です。

双眼クイズも合わせてご覧ください。

クーの近況

こんにちは。 クーです。松本家に飛び込んで早、一年と2か月、大方は満足で、まあ狙いは ほぼ当たりだったかな。 でも外に出られないのはちょっと息が詰まる。

一度、一週間ほど朝だけ外出させてもらっておったら、前のお宅の爺さんから文句(前庭に糞をするとか、オレは 身に覚えがないが)が出てまた元通りの監禁生活になっちまった。 朝、店の主人が屋上で30分ほど遊ばせてくれるのと、 夜中に婆ちゃんちでドタバタ暴れて何とか鬱憤晴らしをしとる。

それはそうと、何とも寛容性の低い地域社会になったもんだ。 この間の新聞に写真家の岩合光昭さんが、「猫が幸せで ない町は人間も幸せではない・・・」ちゅうような良いこと書いとったが、あのジジイに読ませてやりてえ。(=゚з゚=)ムー

・・・とクーは申しております。もっとも、野良猫に餌を無制限に与えて、地区で異常繁殖→糞害憤慨という のは論外ですが、去勢したオス猫が朝の1時間ほどだけ家の近所を自由に散歩することすら許されないというのも、心外ですな。

Handy EMS-BINO

チビBINO by 正立ミラーシステム<ご報告>
 先般いろいろとご相談させていただいておりましたEMS双眼鏡が、 ほぼ完成しましたので、ご報告させていただきます。このEMS双眼鏡 ですが、以降”チビ”と記載します。 このチビは手持ちできる事、対物レンズが交換できる事が特長です。 写真は70mmと50mmの対物レンズをつけたものです。 さすがに70mmとなると重たく長時間の手持ちはしんどいですが50mmだと 十分手持ち可能です。 これで長年の夢であった、キャンプ用のリクライニングチェアにもたれ てゆっくりと夜空を眺める。また、見たいときに即座に星を見るといった、 私のわがままが叶います。がんばって購入したアイピースの活用率が 上がるのも嬉しい限りです。
<製作のきっかけ> 
 これを作るに至った経緯ですが、以前より、手持ちできる90度または 45度の対空双眼鏡が欲しくて、いろいろ物色していました。 しかし、丁度良いものが見つかりませんでした。宮内光学さんの物も 検討しましたが、手持ちは無理かと思いあきらめてました。 それが数週間前、なんともラッキーな事に、ネットショップで旧型の EMSを、それも左右セットで購入する事ができ、一気に夢の実現 に向かった次第です。
<チビのスペック>
   チビのスペックについて以下にまとめさせていただきます。■対物有効径:50mm,70mm
■焦点距離:不明
 ※家にあったビクセンのフィールドスコープと、古い無名の   双眼鏡のレンズを利用のため。
■合焦機構:対物レンズ前方繰り出し式
■光軸調整:対物レンズ取付け部回転方式(取付け部は数ミリ偏芯)
■目幅調整:多少可(接眼部プレートの締め付けを緩めておこなう)
■接眼部規格:φ31.7mm差込式
■材質:  ・接眼部プレート:4mmアクリル板
 ・対物側プレート:5mmアルミ板(松本さん製作品。感謝!)
 ・鏡筒  :塩ビ(全て水道管パーツ)
 ・合焦機構:フェルト
■正立機構:【旧型】EMS
■その他:双眼鏡ホルダー取り付けネジ穴付き

<今後の展開> 実はこの70mmのレンズですが、像が悪くかつクモリがあり50mmの方が 良く見えるような気がするほどです。幸いチビは、どんなレンズでも 受け入れてくれるので、良いレンズを探すなど、これからシステムを レベルアップして行くつもりです。

<お願い> 最後に松本さんにお願いがあります。 この旧型のEMSですが、購入して初めて市販されていた事を知りま した。ユーザの方のホームページでEMSの開発の過程が少し記載さ れている記事を見させて頂いた事がありますが、正確な所でEMSの 開発史をお教えいただけないでしょうか?松本さんのホームページに EMS開発史のページを作っていただく事をイメージしています。 今回、新旧のEMSを所有し、改めて現行モデルのすばらしさを 実感しております。例えばその開発史の中で、旧型から現行に移行す る過程での松本さんの創意工夫点や苦労話しを明らかにしていただけ ますと、EMSのすばらしさを、私も含め所有者の方にさらにお分か りいただけると思います。お忙しいとは存じますがご検討いただければ幸いです。
 大阪市 赤澤

Comment by Matsumoto/ 管理者のコメント;

● 懐かしい物を見せていただきました。   これが、商品化した最初のEMSで、当時の名称は『正立ミラーシステム』でした。 入手してくださってありがと うございます。 きっとこのEMSも、相応しい方の手に届いて、喜んでいると思います。  それにしても、赤澤さんの工業デザイン的なセンスにはいつも舌を巻かされます。この方に本格的な工作手段を与え たら、どんな物が出来るかと、想像が膨らみます。

● 赤澤さんにきっかけをいただきましたので、ちょっと長くなりそうですが、EMSの開発の経緯をご説明したいと思 います。

● EMSの製作販売は、天ガの1989年12月号で紹介してもらってからのスタートです。(構想立案、自分用 の製作は、Sky&Telescope誌の1982年11月号(私の最初の自作BINO)からさらに数年前に遡ります。)(発売価格=@ ¥34,800)
  このEMS、『正立ミラーシステム』は、元来単体用であって、ほとんどは単体の右目仕様で供給していました。  その後数年間で、全部で200個くらいは作ったと思います。   ただ、双眼用のペアを作っていたのは最後頃(1992年頃か?)で、極めて少数のペアだと思います。 15組作った かどうか、はっきりとは記憶していません。 実は、6年ほど前に、当時のEMS仕様から現行仕様にリフォームしたお客 さんが、古いEMS(お送りいただいた写真と同じ物)を寄付してくださった物が当方にも1組あります。(下のリンク のテレビ番組に出てくるもの)

●  初期のEMS(正立ミラーシステム)は、その外観から一般にはダイカスト製だと思われていますが、実は鋳造品 ではないのです。^^;   2種類の厚手のアルミアングルと、側面の穴を塞ぐ薄いアルミ板を複雑に組み合わせて作っていました。全てネジ による接合で、ヤスリ等で継ぎ目が分からないようにし、さらにネジの頭はバテで封印してから焼付け塗装をして、 ごまかしていました。^^; 今から思えば、考えられないような手間をかけていました。 工作機械も、当時は旋盤 やフライスは持っておらず、粗末な家庭用ボール盤と卓上丸ノコと手ヤスリだけで仕上げていました。文字通り、命を 削って作っていました。^^;(ボール盤に治具を付けて、フライスの代用にしていましたが、結構危険で、たびた び悲鳴を上げながら使っていました。^^;)
 当時のEMSは、私のテレビ番組の中でも紹介しています。

 売り出し当時、あまりに作業が大変なので、当時親しくしていた某光学の営業の方(数年前に他界されました)に 話したら、本気で検討してくれたのですが、結果は、「全く同じ物を工業的に作るとしたら、原価コストだけで1個 10万円はかかる。」ということでした。そして、これなら量産可能ということで、代わりに作ってくれたサンプルは、 アルミ板金プレス製の粗末な物で、とても受け入れられませんでした。 結局、そのモデルは最後まで私の手作りで 対応しました。

(一部マニアの方が、あたかもマツモトが特許を傘に着て、不当に高い価格で市場を独占していたか のように中傷されることがありますが、現実は全くの逆なのです。私は現在まで一貫して天文マニアや自作マニアを 支援する姿勢を貫いて来たつもりです。)

● 1990年には、特注の三角パイプ (250kg(最小単位)を確保しましたが、さらにそれから数年で、より能率的 な鋳物に移行したので、結果的にはそのほとんどを無駄にしました。^^;) を使用した、2ユニットタイプの2イン チ用の物(汎用ミラーシステム)も並行して作り始めました。

● 1995年には、今とほとんど同じ形状の鋳物(木型)を開始すると同時に初期の1体型のEMS(正立ミラーシステム )と分割型の汎用ミラーシステムの製作を中止し、さらに2001年の秋には鋳物(木型)を中止してダイカストを採用し、今日に至っています。
  三角パイプを採用した段階で、加工の省力化は著しかったのですが、形状にこだわって角を落としたりすると、 三角パイプの側面の蓋のアルミ板の折り曲げや、組み立て、継ぎ目を隠す作業が結構煩雑に感じ、(だんだん贅沢 (横着)になって^^;) 鋳物屋さんに相談し、アルミ鋳物の採用に踏み切ったのです。

 しかし、それでも木型(つまりは砂型)によるアルミ鋳物は、形状が不正確なため、一皮大きく鋳込んでもらった ものを、やはり機械加工で仕上げるわけですから、アルミアングルの組み立て→三角パイプ→アルミ鋳物 と進めて 来た省力化も不十分に感じ、最終形状が最初から得られる究極な物としてのアルミダイカストの導入に踏み切った次 第です。

● ワンボックスタイプを早期に中止したのは、製作の手間がかかり過ぎることが主な理由ですが、BINO用を意識するようになって、 像の倒れの調整がほぼ不可能であることが分かり、また、ダイカストの型を検討する段階で、致命的に非能率な方法と 悟り、完全に見切りました。 つまり、一型数百万円のダイカストの型がたくさん要るのです。受け(ミラーをセット する側)とカバー(望遠鏡接続バレルとアイピーススリーブをセットする側)だけでも2種類ですし、カバーは左右用 で互換性がありませんから2種類の別の型が必要になります。 ご承知のように、現行のEMSの型は一つで右眼、左眼 用に互換可能です。

 アングルを利用する方法に気付いた時点では、合理的な方法と思ったのですが、工業的な方法を自ら学んで行く 過程で、はるかに合理的な方法が他にあることを悟ったわけです。自作マニアのサイトに、最近、今更のようにこの方法 を画期的なものとして提案されていますが、その認識には26年以上のタイムラグがあるわけです。(あと26年経てば 理解できるでしょう。^^;(EMSが単に市販の斜鏡を2枚無加工のまま貼り付けた物ではないことは、当サイトを 注意深く見てくだされば、理解できるはずですが・・・))

衒学者にご注意を
EMSと特許
タイムラグを考える
2007年を振り返って

昨年他界された須田さんのユーザーリポートには、当時の正立ミラーシステムの ロンキーテストの写真が掲載されています。

 いつもながら、くどい説明で失礼いたしました。   初期のEMSを購入してくださったこと、またそのことをご報告くださったことに、深く感謝したします。

BORG60N-BINO

「トラベルBINOユーザーレポート」

 出張や家族旅行に持って行けるBINOが欲しくて、「トラベルBINO」を作りました。 マツモト式EMS-M+BORG60nを利用しました。最大の特徴は軽量コンパクトです。 フルセット重量(三脚やアイピースを含む)はわずか6kg、片手で楽々持てます。 架台セットで収納した縦横サイズはA4以下、アタッシュケースの中に納まります。 飛行機の中にも持ち込み可能です。

 自作にあたりEMS-LとMどちらにするか迷いましたが、バックフォーカスと小型化 に有利なMを選択しました。EMS-M でも2インチアイピース(30mm, 70°クラス)が 使用可能です。

 架台は色々と検討した結果、西田氏のアルミ経緯台がジャストフィットでした。 軽量かつフリーストップの操作感は抜群です。

 先日北海道出張があり、仕事道具と一緒にトラベルBINOを持っていきました。 仕事の後、ホテル近くの公園に持っていってセットアップ。旅の後で調整は必要 ですが、EMSのおかげで調整はすぐに終わりました。マツモト式EMSのX-Y調整機 構は素晴らしいできばえです。これ無しに快適な双眼望遠鏡は考えられません。

 北海道ではすでに紅葉が始まっていました。風に揺れる紅葉は美しく、見ていて あきませんでした。トラベルBINOは地上風景にも予想以上の性能を発揮してくれ ました。

 常用アイピースはWilliam Opitcs UWAN16(見かけ視界82°、倍率×20)、相性は バッチリです。アイカップをカメラ用に交換したおかげで、顔に吸い付くような 快適さです。まるで裸眼をそのまま20倍ズームアップしたような感覚でした。

 そのまま公園に置いておいて、夜いよいよファーストライト。 すばるがすっぽり視野におさまります。おそらく実視野は3°弱でしょう。h-χ など秋から冬の散開星団をひととおり流しているうちに、あっというまに一時間 が過ぎました。ストレス無しに長時間眺めることができるのはBINOの最大の強み ですね。

 一方、正直言って 6cmの限界も感じました。ギャラクシーには力不足です。 トラベルBINOの用途は、天の川を流しながらM35やM42などメジャーな星団星雲を 楽しむことですね。小型軽量ならではの使い方が楽しみです。仕事がら地方出張 が多いので、これからも出張先に持っていこうと思っています。登山に持ってい って、アルプス山頂からの星も楽しみです。

 これからアイピースやフィルターを増やすのが楽しみです。なお目幅調整機構が まだなので、近いうちにLMガイドで完成させる予定です。

自作に当たってアドバイス頂きました松本さんほか皆様、本当にありがとうご ざいました。

Comment by Matsumoto/ 管理者のコメント;

 杉本さんは、EMS-Mを利用されて、総重量わずか6kgの超コンパクトBINOを実現されました。   西田さん作の架台も見事です。

  EMSのX-Y調整機構についてコメントしてくださいましたが、自作のキャリアがある方ならではの 着眼だと思いました。EMSの双眼セットとしての機能として、このX-Y調整機構は欠く事のできないものです。

 単体用のEMS-SやMを2個調達すれば、あるいは自作されれば、素材コストは随分と安くつくわけですが、BINOとして 満たすべき機能を自作で補完するためには、余分に相当な努力と投資を強いられるわけで、トータルのコストと仕上がりに関して、 どちらが有利なのかは簡単には評価できません。  杉本さんは、これらの点を良く理解してBINO用に特化したEMSセットをご利用くださったものと思います。

 EMS-MによるBINOの作例は、今日まで意外に少なく、私の記憶が明確なのは、今回の杉本さんの他には、 YamauchiさんとSakamotoさんだけですが、今後はコンパクトなBINOへの要求と共に使用例が 増えてくるかも分かりません。

 1989年に初めて天文誌に紹介されたEMSは、正立ミラーシステムという名称で、一体ケース構造でした。 当時は36.4mmのネジ込み式が一般的には最大のアイピースで、2インチアイピースはまだ広く 普及していませんでした。そのような当時の背景から、最初のEMSは、36.4ネジ込みのエルフレ32㎜(60度)クラスが ケラレなく使用できることを前提に設計していました。その当初のEMSの役割(キャパ)を後継した現行のEMS-Mの構成ミラーは、その初期型EMSよりも一回り大きく、 杉本さんも指摘しておられるように、2インチの32㎜クラスの広角アイピース(EWV32でもケラレはさほど気になりません)まで 使用できるわけです。(ただし、optionの2インチスリーブは必要) 

 光路長については、ミラーサイズで決まると思っておられる方が多いのですが、それはミラー同士の干渉の回避等で二次的に 関係するだけであり、実際には、ミラーケースのサイズと構成ユニットのジョイントの長さ、それとアイピースを 挿入するスリーブの長さで決まりす。 従って、EMS-MとEMS-Sは、同一のケースで同構成ですので、光路長は 全く同じです。EMS-Lとの光路長の差も、ケースは同一ですので、ジョイントパイプの長さとアイピーススリーブの長さ の差に過ぎません。 たとえば、EMS-LにEMS-M用の31.7ADを装着すれば、その光路長の差は14㎜しかありません。

 場所を借りて、EMSのことに少し触れさせていただきました。 杉本さん、トラベルBINOのご成功、おめでとう ございます。さっそくのリポート、ありがとうございました。

EMSと特許

 EMSと特許との関係について、一部に誤解があるようなのでご説明しておきます。

 私が平成元年に出願し、平成6年に許可された特許の「発明の名称」は、“正立ミラー”でも“EMS”でもありません。  その名称は『正立プリズム』であり、正立ミラーは、その反射面をミラーで代用した応用例に過ぎません。

 識者?の一部の方がEMSの特許に否定的な理由は、「アミチプリズムという既存のプリズムがまず存在し、 単にその反射面をミラーで代用したのがEMSである」、という認識からだと思います。その理解の出発点で誤解がある わけです。

 「アミチプリズムの光路を解析すれば、必然的にたどり付く方法」という意見は、まさに「後出しジャンケン」 の卑怯な論法であります。その時点で“公知”だったかどうか、ということは、常に特許関係の論争で問題になる点 ですが、その時点でEMSのような製品が公知と言えるほど普及していなかったことは元より、その原理を具体的に広く 公開していた実例はありませんでした。

 少なくとも、特許庁は、公知でなかったと判断し、さらに一定の公開期間に、根拠ある異議申し立てもなかった ために、実際に特許として認定されたわけです。

 私の『正立プリズム』は、唯一の反射面を持つ2つの光学素子で構成された90度対空用の正立系であり、入射角 を規定することで、既存のポロプリズム等との違いも明瞭にしています。まして、一つだけの光学素子で構成される アミチプリズムについては、特許庁の審査での比較対象(拒絶理由)にすら上りませんでした。

 つまり、私は全く新規な「正立プリズム」を発明したのであって、そのプリズムのミラー代用系がEMSであると いうことです。

 「特許請求の範囲」では、構成ミラーをまとめて一つのケースに収納したものと、独立したケースに収納して連 結した物を区別しておらず、つまり、初期のワンボックスタイプのEMSも包含された形で特許となったわけです。

 特許庁の電子図書館の検索メニューで、→「特許・実用新案検索」→「公報テキスト検索」を開き、上の公報種 別の「特許公報」にチェックし、出願人の名前に「松本龍郎」を入れて検索されれば、私の特許「正立プリズム」の詳細が 参照できます。(「初心者向け検索」では、平成5年出願以降しか出て来ないようです。)