BORG 76/101ED-BINO

 「松本さんの双眼天体望遠鏡」と言えば充分聞き及んではいましたが、初めてそれを見たのは東京「あきる野市」にある スタークラウド宮野さんのショールーム(William Optics代理店)でした。雨模様のせいか2階からの景色はいまいちで したが、何よりびっくりしたのはZenithstar 80 EDの左側の鏡筒が何んとスルスルと嘘のように軽く左右に移動できること でした!
 これはただものではない、と直感しました。是非入手したいと考え、松本さんのHPで値段を調べると、とても2本の鏡筒 込みの値段とは思えないreasonableなものでした;しかし待てよ、うちには屈折が5本もある!これ以上新規に入手したら 部屋で座る場所もなくなるではないか?何とか手持ちの鏡筒を活かしたい。

 Scope Lifeの遊馬さんに相談したら、幸いにもボーグの77 EDと101 EDの「訳あり品」が1本づつ格安に入手できました。 Borgはレンズ交換式なので、これなら手持ちの鏡筒とあわせて二種類の双眼天体望遠鏡が一挙にできるかも知れない! 松本式のミラーは十数年前に買った手持ちがあります。メールで松本さんにお尋ねしたところ、問題なくそれを活かしてEMS セットとして頂けるとのこと・・・これで一応自作材料は揃ったようです。 勿論、松本さんの「クラフツマンシップ」に頼る方が無難なのですが、なぜか「作りたい」という衝動がおさえられません。

 はじめ無謀にも鏡筒スライド方式を考えましたが、素人がそんなムリをするより、EMSに目幅調節用のヘリコイドをつけてもら えば済むではないか、と考え直しました(ただし、焦点合わせを簡単にするためには本当はスライド方式の方が分があるように も思えますが・・?)。
 松本さんからはメールで懇切な指導が得られました! 鏡筒間隔は156ミリ程度が良いとのことで、早速近くのドイトに行って 材料を買い漁りました;まさに「クラフツマンシップ」ならぬ、「ドイトマンシップ」で作ったのが写真1の鏡筒台座です。 木板も3ミリのアルミアングルで補強するとかなりの強度が得られます。予め眼鏡に定規をあてがい鏡で眼幅の見当をつけて いたので、あとはEMSに内臓されているXY調節機能の助けを借りて意外に容易に「双眼視」が実現(!)しました。片目で見る のとは全く違う!

 一応、製作に先立つコンセプトとしては;
[1] レンズ交換式(77EDと101ED)にする場合、両者のレンズハウスの重量差を考慮すると運搬用の取っ手は前後にスライドお よび固定できることが好ましい(ドイトでは充分に長い金属取っ手は売っていないので)。
[2] その取っ手は観望中には不要だから、着脱式としてファインダーと交換できると面白い。
[3] ファインダーは「対空用」としては90度の正立ミラー(松本さんの31.7mm用の小型ミラーも所有していましたので)を使 用し、一方「地上用」としては普通の45度正立プリズムを付けたものをそれぞれ製作する。
[4] 見る対象によっては微動の利くTA経緯台の方が良い場合もあり得るので、HF経緯台との間で簡単に兼用可能とする。

 製作の手順としては;
A]アルミアングル材で補強した木板をHF汎用プレートに取り付け、その下から自作の木製アリガタでプレートをサンドイッチ 式にはさんで頑丈に固定。これで写真1のようなHF/TA兼用の鏡筒台ができました。なお、中央の長いアルミ材は「運搬用の 取っ手」または「ファインダー」をスライドさせるためのレールです。
B]このレールには写真2のAの「取っ手」およびBの「対空直角ファインダー(松本氏の小型ミラー装着)」のいずれかを 取り付けられます。なお、Cは45度プリズム付きの地上用ファインダーです(いずれも鏡筒部分は自作)。
C]あとは鏡筒バンドを取り付けて鏡筒をしっかり固定し、76EDまたは101EDのレンズハウスをねじ込むだけです。(とは言 え、光軸を物差しレベルで±0.1mm程度の精度で調整する必要があるのは勿論です。一旦調節すれば、あとは鏡筒バンドをゆ るめない限り、対物レンズを交換しても全く問題ありません)
D]一先ず完成です。写真3は76EDを付けたところ(運搬用取っ手が付いたままです)で、写真4は101EDに対空ファインダー をつけたところ、また写真5はHF経緯台からTA経緯台に移して地上用のファインダーを装着したところです。

 結構多目的に使えそうですが、まだ実は木星と月しか見ていません。アイピースは松本さんにお願いしてEWV 32mmを購入しま した。 反省点としては、台座が何分にも木製であるため、10cmクラスなら何ら問題ないのですが、15cmクラスではこの方法では強度 的に不安と思われます。また夜露に頻繁に晒される使用法の場合には耐久性も問題かと思われます。

 外観のスマートさから言っても松本製には遠く及びません。しかし何といっても「自作」は楽しいものです。家から車で5分 のところにドイトがあったので、助かりました。一日に何度もドイトに通ったのが楽しい思い出です。これからも「ドイトマ ン」として頑張ってみたいと思っています。
 何よりも矢張り、自分の考えで設計(?)し作ったものは大袈裟に言えば我が子のように可愛いものです。それにしても松本 さんのEMSと数々のアドバイスがなければ到底できなかったことです。同氏に深く感謝申し上げます。 これからもいろいろとご指導お願い致します。 

立川 四郎
Shiro Tachikawa
E-Mail
HP:ベランダで星空散歩

Comment by Matsumoto/ 管理者のコメント;

 立川さん、BINOの完成、おめでとうございます。
  立川さんとは、BINOのご計画段階で何度もメールを交換させていただいたのですが、EMSをお送りした後は、スムーズに組み立てを 完了され、初期調整方法についても特にご質問はなかったように記憶します。もともと単体EMSのユーザーでいらっしゃったのも、ご理解が 早かった理由かも分かりませんね。

 入手できるパーツと工作手段をうまく活用して製作されたと思います。自分の工作手段と入手可能な材料に従って設計を決める、という 点では、私が物作りをする時の方針と何ら変わりません。 鏡筒をBORGにされたのは、口径76mmと101mmの互換のメリットの他に、この鏡筒の徹底したmodule化による汎用性の高さ、応用性の 豊富さから、自作向きの鏡筒だったという点で正解だったと思います。ヘリコイドは眼視用のメインのfocuserとしては必ずしも操作性は 良くありませんが、これも他のlow-profileのcrayford式等と交換することも可能ですね。

  材料を、金属に限定されずに、利用できる工作手段を考慮されて、木材とアルミ材を組み合わされたのも正しいご選択だったと思います。  自作は、立川さんも書いておられるように、単に予算の節約ではなく、それによってしか得られないものが多くあると 思います。

  自分で作る事の喜びや、作った物への愛着があるのはもちろんですが、私は、『作ることで理解が深まる』という点が自作の最大の 意義だと思います。たとえば、望遠鏡業界には売るだけの立場の方も多いですが、そういう方には、どうしても到達できない 理解の壁のような物があると思います。 
 私は、売るだけの立場と、作る立場の両方を体験して来られた方を知っていますが、その方が、 昔を振り返られ、「あの頃は何も分かっていなかった。下請さんにも随分と無理を言っていた。赤面の至りだ。」というような 意味の事を述懐しておられたのが印象に残っています。私自身も、今でも物を作りながら、ほぼ毎日が新たな発見や反省の連続です。

 鏡筒の選択、材料の選択と、適切な判断をされましたが、眼幅調整の方式をヘリコイド式にされたことも、設計を簡素にする意味で 正解だったと思います。 私が今までに海外に供給した双眼用のEMSセットのほとんどはヘリコイド眼幅調整方式なのも同じ理由です。  ただ、リニアベアリング等の入手先をご存知であれば、自作でも平行移動方式はさほど難しいことはありませんが。

  完成した写真を見せていただきますと、ファインダーも絶妙な位置に配置され、全体も格好良く仕上がっています。確かに機能は 外観に表れると言った感じですね。木材と薄手のアルミアングルを組み合わせる方法は、強度と軽量を両立させる意味では優れた 方法かも分かりません。 そう言えば、”零戦”もアルミ合金材と木材が巧みに組み合わせてあったと聞いたことがあります。 これが、立川さんの初作のEMS-BINOですから、今後のさらなる進化を期待しております。また、観測リポートの方もお待ちしています。
 立川さん、詳細な自作リポートをありがとうございました。

タイムラグ(Time Lag)を考える

 タイムラグという言葉は、もはや日本語になっているが、a time lag というのは和製英語でなく、 れっきとした英語だ。”lag”は、lag behind~として使われることが多く、Genius英和辞典の例文には、 ~behind the rest of the nation in economic reforms. とある。 意味は、文字通り、“時間の遅れ”のことであるが、やはり“タイムラグ”の方がよりピンと来る。

 タイムラグというのは、どんな場合でももどかしいものであるが、人間が絡むと特に歯痒く、深刻になる。悪意は瞬時で伝 わるのだろうが、善意はなかなか伝わらないか、逆に誤解さえされ得るし、一旦誤解されたら、その誤解を解くには時には何十年 もかかるか、一生解けない。

 科学的な成果にしても、その時代の水準を超えて画期的な物であればあるほど、認められるのは後世を待つことになり、 数百年後にやっと認められるようなケースが希でないことを科学史が証明している。

 タイムラグということを、今の自分にからめて言うと、たとえば、1.新製品の構想と、2.その実験、試作、検証と、 3.Webでの公開と、4.一般への認知、までにはそれぞれの段階でタイムラグがあり、そのもどかしさはいつまでも埋まることは ない。

  ただただ、新たな成長の節目の到来の予感に、一人武者震いするしかない今日この頃…。   自分が常に進化しているということを主張し続けて、じっと時が来るのを待つしかないようだ。

Crystal of Snow / 雪の結晶

地区の問題に振り回されて過酷な?^^;毎日ながら、今日は高2の娘が英検準1級の二次に好成績で合格。 我が家にとって、久しぶりの明るいニュース。 目標に向けて精進するは楽しいばかりで はなく、むしろ苦しいこと多く、勝利の美酒を味わうも一瞬で、すぐに次のハードルが立ちはだかる。 しかし、そのかけがえのない美酒の味を早い段階で教えたことは、私の子育てへの加点かな?と思えども、 「今回はDadの世話にはなっていない。」と娘の正直な感想。

娘が高校に入ってから家庭教師を首になったのは父の計算外。お父ちゃん自身の学習motivationを削いだ要因 としては、地区の問題を上回る。^^;

ゲレンデのリフトで隣の娘の手袋に、
On the glove of my daughter in the Ski lift by my side,
希有に大きな雪の結晶。
Unusually large Crystal of Snow

その美しさとはかなさに、避けられない別れの宿命に、
The beauty and fragility threatened  me with the fate of farewell
おののきながらもまどろんで、
And dozing in the silence

超速 preview (プレビュー)した自分自身の臨終の、
To dream to see myself in the deathbed,
走馬燈の一コマに、
Watching a revolving lantern of my whole life,
再び現る雪の結晶。
To see the Crystal of Snow Again.

あれから7年、意外に早かった、来るべき別れのリハーサル、先輩方はいずれ戻ってくれると慰めてくれるが・・・^^;。

TSA102N-BINO

 12センチBINO(F5アクロマート)を購入して以来、いつかはアポ双眼を所有したいと考えて おりました。そうこうしているうちに新型15センチBINOの発売があり、 また、スノーさんのリポートを拝見してから物欲がどうしようもないくらいに 暴れ出し、最近弾かなくなったギター数本を売ってしまう等金策の後、15セ ンチBINOを注文しました。

 となると本来12センチの載っていた架台が遊 んでしまう。これはもったいない(?)。そこでこの際、アポ双眼にしようと 思いました。注文した15センチBINOとの兼ね合いから、ちょっとFの長 いのと思っていたのと、何人かの方の FS102-BINO のカッコイイのに憧 れ、TSA102N を思い切って2本購入しました。(ローンで~す) N(対物フード固定式)にしたのは特に意味はありません。今まで12センチBIN Oを収納していたケースにもぴったり入ります。値段の方も安いです。

 さて注文してから4日目の日曜日の朝、定休日の会社で息を凝らして(?)待 っていると、ヤマト運輸のトラックの例の「キーッ」と止まる音。とうとう来 ましたタカハシの箱2つ。実はタカハシの望遠鏡買うのは30年ぶりなんです。 フード周りのTAKAHASHI TSA102 の文字が緑色でなかなかです。

 さていよいよ換装です。特に難しいことはなく、落っことさないように気を付 けてと。鏡筒バンドはビクセン製ですが少し大きめだったので、バンド内側に 薄いウレタンを3点貼りにしました。2時間ほどで完成。うーんデカイ。架台 のハンドルはもう少し手前がいいな。(これは松本さんにお願いしました。) フォーカスノブは12センチBINOに付いていたのを使用。ファインダーは 国際光器の正立。ドットファインダーはスカイサーファーです。

 カッコついた ところで会社のガラス越しに遠くの木々を眺めます。よく見えます。ただ当日 は天気も悪く、ファーストライトは翌々日の夜となりました。まずはお月様。 EWV32を付けて見ました。さすがアポです。クレーターの彫りが深いです。 シャープです。12センチアクロには完勝です。エッジが切れ上がる感じです 。次は土星。ショートバローを追加して観望です。輪は鋭く、本体は丸く、何 というかいつぞやグラビアで見た伊東美咲のヒップラインの如しです。暫し見 とれておりました。(土星をです)。恒星は色がきらびやかです。

 総合的にみて、換装は成功と言えると思います。鏡筒を切断せずとも余裕で合 焦します。(例の<上がり>のええっと例のTYPE4-22ってやつでもOKで す)あとフェザータッチフォーカサーがあればと思いました。(また・・・)

 松本様にはいろいろとアドバイスしていただきました。ありがとうございまし た。15センチBINOの残金も使ってしまったので、出来上がりは遅れてもい いです。(嘘・・いや少し遅れる方が・・) また機会があれば、今度は空の暗いところでのレポートを送ります。

                             わかやまん

Comment by Matsumoto/ 管理者のコメント;

 ”わかやまん”さんが気取らずにさらっと書いてくださった原文をほぼそのまま 掲載させていただきました。 12cmF5-BINOから15cm-BINO発注、そして12cm-BINOの TSA102N鏡筒への換装と、筆者のエキサイティングな心情の動きがストレートに伝わって、楽しく 読ませていただきました。

 12cm-BINOが、確か納品から約半年という短命に終わりましたが、発展的なリフォームの結果ですので、 大いに歓迎いたします。 こうした、ユーザーの方自身によるリフォームやカスタマイズは、EMS-BINOを理解 する上での最高の教材であり、それに成功されたということは、”わかやまん”さんがかなりのレベルのEMS-BINO ユーザーになられたことの証明です。
 それでは、観測リポート、お待ちしています。

故足利先生に黙祷

 今日の地方紙で、恩師の足利先生が一昨日(2月4日)に亡くなっておられたことを知った。享年97歳だった。 ショックではあったが、実は 2005年の10月に先生と最後の握手を交わしていた時に、別れを覚悟していた。

 2005年の10月16日に、初老の紳士が来店された。「入院中の父親のメガネだが、レンズを読書用の度数に交換してもらいたい。」 と言われ、メガネを見るなり、足利先生のメガネだと直感し、お尋ねしたらやはりそうだった。足利先生は胃癌に罹患され、手術は 成功したものの、術後に脳梗塞が発症したとの息子さんの説明だった。

 私は万感の思いでメガネを仕上げると、病室の足利先生に届けた。先生は私を認識されたようで、堅い握手をして分かれた。 後で支払いに見えた息子さんに、今回は代金は頂かないことをお伝えすると、かなり遠慮されたが、今までの足利先生との 付き合いから、私の見舞いの気持ちであることを説明して理解していただいた。 足利先生は、メガネをお届けした日 に退院され、老人養護施設に入られた。 私は息子さんに名刺を渡したが、息子さんは自分の連絡先を語られることはなかった。

 その後、足利先生からの音信はなく、施設宛に出した年賀状も返信が来なかったので、こちらのことは、もう認識しておられなかったのかも知れない。  足利先生の最後のメガネを、私は写真に撮っていた。 大切な片身になった。

60度を折る ”サバイバル数学”

数学嫌いだった私が数学好きになって行ったのは、それが物を作ることや、物を理解する上で必要だったからです。  未だに、数学が得意だとは言える段階ではないのですが、自分に必要な数学は自然に身に付いて来たと思うし、 実用との接点を体感する醍醐味を知れたことを幸せに思っています。“survival mathematics”というのは私の造語か、 すでにどなたかが使っておられるのか知りませんが、私にとっての数学は、まさしくサバイバル数学なのです。

ですから、数学を勉強することに苦痛を感じている中高生を見ると、大変歯痒く、ついおせっかいをしてしまいた くなるのです。

古い話になりますが、20年以上前に自宅屋上にドームを製作した時には、幾何学的な基礎知識が大いに役立 ちました。正方形の観測室の土台の直角出しには(3:4:5)を利用しましたし、観測室の火打梁の設置には正方形から正八 角形を作図する方法が功を奏しました。

今日は、極めてシンプルで役に立つ”技”をお伝えしたいと思います。この手の分野に詳しい方は、すでにご存知かも分か りませんが、唸ってくださる方もおられるかと思います。便利だと思われたら、覚えておいて活用してください。  ただ、いきなり答えを言ってしまってはつまらないので、一応、各自でトライしていただきたいと思います。
分からなくても、24時間くらいは、我慢して解答をクリックしないでください。

問題: 長方形の紙を2回だけ折って60度を作ってください。 ただし、布団たたみのような3つ折りは禁止です。(3つ折りでは正確に折れません。)  また、折ってから開いても結構です。折れ線が2本までOKということです。

解答

解答では証明を省いています。証明は簡単ですので、各自でやってみてください。

数学関連日記
EMSの種明かし
懸賞ゲット
懸賞ゲット2
1立方センチの立方体
人類の至宝1
人類の至宝2
人類の至宝3

MEGREZ90-BINO

 2006年12月23日いつもお世話になっている北軽井沢のキャンプ 場でMegrez90BINOで星を見ました。 天の川が楽に見える素晴らしい環境です。 天気は時折曇った時もありましたが、概ね晴れていて星を堪 能する事が出来ました。

 Megrez90BINOで見る散開星団は星像が小さくシャープで、色も 忠実に再現されていて思わず「生きていて良かった!」と思い, しばし時を忘れてその美しさに見入ってしまいました。 松本さんや、BINOを紹介して頂いたスノーさんに感謝していま す。 Megrez90BINOで見るhχやすばるは素晴らしいです。

夜半過ぎは春の銀河観測に没頭しました。 M81、82、M108、フクロウ星雲、M106、M109、M101、M51、M63 、おとめ座銀河団など楽しみました。 9cmとは思えない成果で、生まれて初めて見た星雲もありまし た。

 明け方は水蒸気が多く、ソンブレロ星雲は確認できませんでし た。思ったよりも寒くなかったので、水蒸気が多かったのかも しれません。

 9cmだと銀河はやや迫力不足を感じました。 銀河用に12cm又は15cmBINOが欲しくなりました。  惑星・散開星団用にMegrez90BINO、星雲・銀河用に12cm又は15cmBINO を使い分けたいと思います。 フィルターも欲しくなりました。 こちらは研究課題です。

後日4mmのアイピースを使い155倍で金星を観測しました。 155倍でもEMSのXY調整を少し動かすだけで簡単に両目の星が合 致します。 素晴らしい機構です。これからも高倍率での惑星観測や低倍率の星雲星団観測を楽し みたいと思います。

 最後にBINOの素晴らしさを列挙します。

①長時間(一昼夜)観測していても大丈夫な位楽に観測できる。
②宇宙の奥行きを感じる事ができる。(3次元的に見えます)
③対空双眼鏡と比べて低倍率から高倍率まで使用できる。
④ミラー2枚で正立対空を実現している為非常に抜けが良い星像。
⑤EMSによって2本の望遠鏡の調整が簡単に短時間に出来る。

などがあげられます。

 BINOは宇宙を楽しむ究極のお気楽望遠鏡だと思います。 これからも宜しくお願いします。                         スタークラウド 宮野

Comment by Matsumoro/ 管理者のコメント;

 宮野さんは旺盛な情熱とエネルギーで頻繁に遠征観測なさっているので、 今後も体験を重ねてBINOのエキスパートになってくださることを期待します。
この度はすばらしいリポートをありがとうございました。

遷喬小学校創立134周年

一ヶ月ほど前に母校の遷喬小学校 の校長先生より電話があり、創立134周年記念式典での 講話を依頼されました。 こういう式典で話をするのは、少なくとも世間的に成功者と言える方の役目で、自分には無縁のことと思って いたので、当惑しましたが、校長先生の熱心な依頼に、思わず承諾してしまいました。

現校長先生は、私の死んだ姉と同じくらいの年齢の、とてもチャーミングな女性です。以前に一献交わす機会があり、 学童期に、お名前の”和江(むつえ)”を(当時の)先生に正しく呼ばれたことがなく、いつも”かずえ”と呼ばれて悲しかった こと等をお聞きしていたので、あのお優しいオーラは、挫折を知る者だけが持つ独特のものだと理解していました。
ということで、いくらでも適役がおられるとは思ったものの、意図あって挫折だらけの人生を歩んで来た私を選んでくださった のだと勝手に解釈して、講話をお引き受けすることにしたのです。

それでは、恥をしのんで、今朝発表させていただいた講話をご紹介します。

”あなたたちの未来は明るい”

おはようございます。遷喬小学校創立134周年、おめでとうございます。

私の名前は、『まつもと たつろう』と言います。 「たつ」は、お正月に揚(あ)げる凧によく書かれている、りゅう(龍)という漢字です。「ろう」は、たろう(太郎)、じろう(次郎)の郎です。 私は、遷喬小学校を昭和39年、1964年、今から42年前に卒業した、あなたたちの先輩です。多分、あなたたちのお父さんより 年上で、おじいちゃんより年下の、ちょうどその中間あたりの年齢だと思います。

今日はみなさんの前でお話をさせていただくことを、大変誇りに思い、感謝しています。

さて、みなさんは、多分、これから言う3つのグループのどれかに入ると思います。 Aのグループは、今最高に幸せで仕方がない人です。 そしてBのグループは、どちらとも言えない人、そしてCのグループは 不幸せな人です。実は、私は少年時代はBか、ともすればCのグループでしたが、今はとても幸せです。
今日は、Cのグループにいた私がどうやって今幸せになったかをお話したいと思います。

なぜ私が今幸せなのかと言うと、今から12年前に私は望遠鏡に関する発明をして特許を取り、その発明を利用した、 両眼で覗ける望遠鏡を作り始めたのですが、十年ほど前から広まったインターネットによって、お客さんが増え、日本や世界の 天文マニアの人が私の望遠鏡を注文してくれるようになったからです。

私が作っている天体望遠鏡は、上下左右がさかさまにならないで、とてもはっきり見えるもので、同じ様な望遠鏡やカメラ を作っている、ニコンやミノルタの社員の人でも、私に注文をして来ます。

望遠鏡の工作は、金属を切ったり削ったりするので、紙や木を切るように簡単ではありません。 私はそういう専門の大学を出たわ けではないのですが、全て大人になって社会に出てから自分で勉強して技術を身に付けました。また、海外からの問い合わせは 英語のメールを扱いますが、英語も自分で勉強し、今では辞書に全く頼らずに海外のマニアとメールを交換しています。

私の本業はメガネ屋ですが、星を見るという自分の趣味から始まった望遠鏡作りで、世界で自分しか作れない物を持った ことと、世界中の天文マニアの人たちから頼られることで、物作りの喜びを知り、今が一番幸せだと思っています。

あなたたちも、将来、物を作る仕事か、物を育てる仕事か、それらの人たちが作った物を売る仕事か、それらの人の手助けをする 仕事か、人に何かを教える仕事かのどれかの仕事に就くはずです。 どんな仕事に就いても、自分の働きが人の役に立っている、 という実感が持てたら、私たちはとても幸せになります。

私は姉二人を持つ末っ子として育ちました。小学校の頃から、二人の姉は勉強が良く出来ましたが、私は出来ませんでした。 成績はいつも中間辺りをうろうろしていたように記憶します。かと言って、スポーツでも、少し鉄棒が得意だったり、 短距離走が速かった程度で、それも一番だったことはありませんでした。 小学?年の時、リズム感が悪かった私は、 足踏みのリズムがおかしいと、担任の先生に皆の前で悪い見本でやらされ、先生に、「まるで芝居の“馬の足”だ」 と言われました。

私はそんな自分が嫌いでした。
小学校時代のそんな自分を作り変えようという強い決意で入った中学でしたが、陸上部に入部早々、苦手の長距離走でしごかれ、 1週間でケツを割ってしまいました。その後に入ったバスケットボール部でも長続きせず、勉強でも目立つことが出来ず、 二人の姉は鳥取西高に行ったのですが、姉弟で私一人が鳥取商業高校に進みました。

鳥商では、バック転も鉄棒の車輪も出来ない状態から器械体操を始めました。過酷な練習で、手の皮むけや筋肉痛が治る間はなく、 最初の1年は下痢が続き、3年間で3度も骨折し、体はボロボロになりましたが、今度はがんばり抜き、高校3年の時に、第24回 長崎国体に出場しました。挫折(ざせつ)と絶望(ぜつぼう)の少年時代でしたが、これがささやかで初めて見た一筋(ひとすじ) の光でした。

しかし、私の親は、私が家業の眼鏡屋を継ぐのが当然だと考えていましたので、ただ国体に出場したくらいでは、私を別の道に進ませる気はありませんでした。 当時の自分としても、いくら体操が好きだと言っても、体操で自分が理想とするところまで到達する自信はなかったので、 確実なレールが敷かれた家業を継ぐしかありませんでした。

こうして、また新たな挫折(ざせつ)を経て、家業に従事しながら始めた趣味が星を見ることであり、それがそれまでの天 体望遠鏡の使い勝手に疑問を持つきっかけとなり、さきほど紹介した天体望遠鏡関係の発明につながったわけです。

人生は、あなたたちが考えるよりずっと長いものです。今勝っている人がずっと勝っているとは限らないし、今負けている人がず っと負けているとは限りません。今勝っている人は、負けている人を思いやり、また、将来負けないようにがんばり、今負けてい る人は、将来必ず勝つチャンスがやって来ることを信じてがんばれば良いのです。

最近、小学生の自殺をよく耳にして、胸が痛みます。挫折(ざせつ)の連続の少年時代を過ごした私には、 彼らの気持ちが痛いほど良く分かります。さきほど説明したCのグループにいる人たちにとっては、少年時代ほどつらい 時期はないのかも分かりません。先が見えない将来は、ちょうど出口の見えないトンネルのように不安に感じるものです。
しかし、Cのグループの人たちには、今が一番つらいけど、それはずっと続くものではないこと、また、喉がからからに乾いた後 の水が美味しいように、その後に来る幸せは、Aのグループの人たちが味わえないほど素晴らしいものがあるということ を知って欲しいと、強く思います。

Aのグループの人たち、今最高に幸せな人は、家に帰ってから、どうして幸せなのかをよく考えてみてください。 今すぐ分かるか、何十年後に分かるか、わかりませんが、もし誰かのお陰であると分かったら、その人たちにお礼を言ってください。そして、幸せでないと思っている人たちを思いやってください。

そして、もし、あなたたちの中で、明日を見たくないほどつらい方がいたら、担任の先生か、あなたが一番話しやすい 先生と、自分の親につらい理由を話してください。
もし、どうしても回りに話せる人がいなかったら、いつでも私の所に来て、そのわけを話してください。私の家は、 市役所の前、岡本PTA会長の岡本自転車店の1軒置いた隣のメガネ屋です。

とても10分間では、お伝えたいことのほんの少ししかお話できませんでしたが、最後に、一番お伝えしたいことを繰り返して おきます。

子供時代はつらいものです。でも、永久に苦しいということは絶対にありません。また、あなたの親や先生はいつもあな たのことを想っているということです。それはたいてい、ずっと後になってから分かるものです。

私の研究が4年前に、スカイパーフェクTVの科学番組になって全国放送された時(ネットでは現在でも常時視聴可)に、 46年前に遷喬小学校で私のことを「まるで芝居の“馬の足”だ。」と言った先生がものすご く喜んで、祝ってくださいました。

大人になることは決して怖いことではありません。子供時代には体験できない、楽しいことがたくさんあります。ですから、 あなたたちの未来はとっても明るいということを知っておいてください。

今日は、私の下手な話を最後まで聞いてくれて、ありがとう。
さようなら。

「スノー」さんが ”新型15cmF5-BINO第1号機” のリポートをくださいました。(2006年11月23日)

新型15cmF5BINOの1号機が届きました。 12cmF5BINOからのステップアップとなります。 打ち止めと思って購入した12cmBINOでしたが、これが素晴らし過ぎて、半年で、遠征すること十数回、晴れれば自宅観望と 嵌ってしまい、むしろ加速して15cmに辿り着いてしまいました。

 届いた日に自宅にて軽くファーストライトを行い、先週末に観望会に参加しディープスカイによるファーストライトとなりま した。写真は左が 15cmBINO、右がお世話になっているショップの方(私の12cmBINOで感染されたようです・・・)の Megrez90BINOです(これもスーパーBINOで素晴らしい絵を見せてくれます)。

 さて、新型15cmBINOの特徴は①鏡筒プレートが無く鏡筒バンドを繋げて支持していること、②ハンドルが鏡筒に直付けになって いること、③クレイフォード接眼部がオリジナルになっていることです。①と②は写真の2台のBINOを比較するとよくわかります。

 まず、①ですが、当初は鏡筒バンドの締め付け具合がわからず、いつの間にか光軸がずれていることがありましたが、 適切な締め具合が見つかってから光軸の変化が無くなりました。むしろ、鏡筒バンドを緩めて鏡筒を捻って行う光軸調整は実際に 行うと非常にやりやすく、従来20~30分かかっていた光軸調整がものの数分で終ります。また、従来の鏡筒移動式の目幅調整 ですと、不意に左鏡筒を触って、平行に動いてしまうことがありましたが、新型では鏡筒が固定されており、EMS部のヘリコイ ドで目幅調整しますので非常に快適です。
 低倍率では眼の補正力でカバーできますので、他の方に少し見てもらう分には、 目幅とピントの再調整を繰り返すことも無く、各自のピントのみ合わせて頂くだけで問題ありませんでした。総じて軽量化も 進み、バランスが良く想像以上に軽く持ち上がります。非常に進化した印象を持ちました。

 次に②ですが、顔下に空間に余裕が出来たこと、ピント位置とハンドルが近く手の移動量が減ったことなど、実際に使用してみ ると、非常に快適になっております。また、持つ幅が広くなり、望遠鏡を振り回す軽快感が一層高まっています。私見ですが、 見た目にもシンプルになって格好良くなっています。ひとり悦に入っております(笑)。

 ③に関しては、口径確保等の光学的な問題の解決にも繋がっていそうですが、実際の操作感も素晴らしいものがあります。 従前の12cmに付いていた純正のラックピニオン式繰り出し装置と異なり、非常に滑らかな操作感となっています。バローを挟んで重量が増して もその滑らかさは変わりません。おかげでピント合わせが非常にスムーズになりました。またまた私見になりますが・・・(笑)、 オフブラックに塗装されており、非常にカッコえ~です。ここの高級感が一番高かったり。。。。

 以上、新型で進化した部分の感想です。次に、実際に覗いた時の印象ですが、既に多くのレポートがありますので、12cmとの 比較の上で簡単に報告いたします。まず、印象的なのは強烈な明るさです。そのおかげで、散開星団などでは、奥行きが非常に深 くなった印象を持ちました。また、網状星雲では細かい襞までよく分かります。バラ、北アメリカ等の散光星雲も強烈に迫ってき ます。12cmと15cmでは一段ポテンシャルが異なります。

 その中で、強い印象を受けたのが銀河です。12cmでもM81、82、その お伴星雲を同一視野に見ながら、M82の爆発銀河の様子がよくわかったのですが、15cmになるとM82の不規則形状が一層強烈に浮か び上がります。きれいなM81と不規則なM82が同一視野で対照的にポッカリ空間に浮かんでいる様子は、宇宙の奥深さが感じら れます。同口径の単眼では想像できない、大口径ドブとは異なる世界がそこには広がっています。更に感動だったのが、 かみの毛からおとめ座にかけての銀河群でした。BINOを流すだけで次から次へと無数の銀河が飛び込んできます。視野の中は 銀河、銀河、銀河、銀河・・・と数え切れません。超広角で低倍率でありながら、無数の銀河を容易に視認することができます。 まさしくハイコントラストな屈折BINOの本領発揮です。無数に漂う銀河を眺めていますと悠久の時の流れを実感します。

 このよう に銀河を相手にしても15cmBINOであれば潜在的なポテンシャルは相当に高いと期待できる結果となりました。 12cmよりターゲット が一層広がることは間違いありません。他にオリオン星雲やアンドロメダ、すばると他の方々にも覗いて頂きました、総じて良く 見える、すご~い、きれい~、欲しい~と、高評価を頂きました(自画自賛!笑)。

 こうして15cmBINOのファーストライトが無事終了しました。12cm時代からの経験も踏まえると、低倍率の時は、大抵の場合、 目幅調整無しに多くの方に簡単に覗いて頂けます。また、一般の方々でも星雲星団を容易に視認でき、無数の星々に圧倒され 感動してもらえます(単眼時代には「がっかり」されることが多かったのですが・・・)。つまり多くの方々と一緒に楽しむこ ともできる望遠鏡だと言えます。正立超広角ハイコントラストのおかげで、等倍ファインダーだけで次から次へと簡単に対象が 導入できます。覗く姿勢も楽です。

 また新型になって、鏡筒による光軸調整が容易になり、接眼部のピント合わせも楽にな りました。つまり、15cmF5BINO新型の操作性は従来の12cmより一層ビギナーに優しくなったと感じます。もちろん、大きく重 くなっているのですが、座布団に包んで折りたたみ2輪カートに対物側から載せて運んでいますが、移動による振動で光軸がずれ ることもありませんでした。架台に載せる力があれば、15cmF5の使用は問題ありません。天文ファンに限らず、アウトドアライフ やスローライフの延長で宇宙の無限の時間を感じたい方にもお勧めできる望遠鏡です。朝に見た雪を頂く浅間山を覗いた時も 最高の迫力でした。恐ろしいほどの視野の抜けの良さ、対象の立体感は双眼鏡の及ぶ所ではありません。ますますBINOライフ にどっぷり浸かって行きそうな予感です(既に浸かっている?笑)。                      スノー

追記:11/28 先週に引き続きディープスカイ観望を目的に遠征して参りました。いつもの遠征場所はそろそろ凍りつく季節になります ので、冬眠前にと・・・(笑)
 今回は、時間に限りがあり、メジャーなものを一通り流した後に、オリオン座周辺を対象に散光星雲のテストを行いました。 レンズに夜露が付くことはありませんでしたが、鏡筒が凍りつくほど厳しい冷え込みで、非常に濃い天の川が見られるコ ンディションの夜空でした。アイピースはEWV32mm、左に UHCフィルターを、右にOⅢフィルターです(1枚しかありません ので・・・泣)。
 観望したものは、バラ星雲、オリオン星雲、ワシ星雲、もみの木星雲、エンゼルフィッシュ星雲、モンキー星雲です。 低空は若干の光害にかぶっている中で、観望できたのは驚きです。もみの木星雲は恒星との間の暗黒帯が、モンキー星雲はお 饅頭形状にくびれが明瞭に認識できました。ワシ星雲は長細い襞にしか見えませんでした。馬頭星雲は認識できませんでした ・・・残念!!更に暗い空が必要かもしれません。いつか再度チャレンジしたいと思います。
 上記以外にメジャーなものでも収穫がありました。網状星雲やオリオン星雲の強拡大です。沈みかけの網状星雲を50倍近く で見ると、もうそれは複雑な襞の形状が見られました。非常に繊細な印象の星雲です。90倍近くのオリオン星雲は、ガス雲の 中に放り込まれたような気分になります。ガス層が何層にも重なって複雑にうねっており、絹のようにガスのベールを感じで見 ることができました。また、プレアデス星団の恒星を取り巻くガス雲も印象的です。下部の方に広がりがあって写真のイメージ に近い絵です。このように見えたのは初めてで、しばらく見惚れておりました。
 以上の通り今回のテストは短時間ながら先週を上回る成果を得ました。対象の中には、この観測地ではドブを持ってしても 困難な対象が含まれています。それが、存在だけなら容易に、中には形状の認識までできる星雲があったことには驚きました。 両目で見るため、特段の集中力も不要で、気楽に探索が出来ます。15cmBINOのポテンシャルには驚かされます。 これからの活躍がまたまた楽しみになった夜となりました。(スノー)

 私信(★松本との交信):12/2 
 上記の追加リポートをいただいた時の私信部分の掲載につきまして、スノーさんのご了解を得ました。

11月28日:
> > たいしたレポートではありませんが、よろしければ追加下さい。

★ 掲載の件、承諾くださって、ありがとうございます。

>> > > 自分の感じたホットな気分(体は極寒でしたが・・・笑)をもう少し上手く 伝えられればと思うのですが・・・・

★ それは文章という手段が持つ宿命的なもので、読み手のキャパも大きく関係 するので、感動が100%伝わらないのは、やむを得ないと思います。少なくと も、私が読むと、BINOの醍醐味、凄さがビシビシと伝わりますよ。

>> > > それにしても15cmBINOには驚かされます。12cmBINOとも大きな差が あり、以前愛機だった15cmF6.5屈折や15cmF10マクカセの単眼から は想像できないほど別次元の世界を見せてくれます。星を見るのは機材単体の性 能が半分、人間の認識力が半分と感じます。機材の単体性能を追求するのも良い ですが、最近の機材は安くても一定の水準に達しているだけに、人間側の潜在力 を引き出す方が効率的なのでしょうか。

>> > > そういう意味でBINOは人間側の認識力を大きく引き出す為、結果的に非常に 効率的に観望の幅を広げる望遠鏡だと最近は思っております。

★ ここまで理解されましたか。感覚的には体感しても、上にご指摘の点をきち んと文章にしてくれた方はまだいなかったような気がします。
 世の中は、まだ机上の光学性能を、収差曲線等だけを持ち出し、重箱の隅をつ つくような議論ばかりが横行しているような気がしますが、比較する光学系が一 定の水準を保っているという前提の下では、上にご指摘の要素の方が圧倒的な効 果を発揮するわけです。

  たとえば、単眼の視力がそれぞれ0.7程度の人が、両眼では1.0くらいの視力 が出る場合が多いことは、私は本業のメガネ業から日々経験していますが、これ は、言い換えますと、単眼で100倍で見ているのと、双眼で70倍で見ているのと がほぼ同じ大きさに見えるということです。
 双眼視否定論者が机上論から「望遠鏡自体の分解能が単眼、双眼で変わるはず がない。」と言います。 確かにそれはその通りですが、それは議論のすり替え であり、それは「望遠鏡はゆらぐ大気の底で生身の人間が覗くものだ」というこ とを忘れた議論だと思います。
 現実には、より低倍で同じ効果が得られる双眼視の方が、はるかにシーイング の悪影響を排除できるのであり、双眼視の生理的なコンポジット効果とそのこと (倍率の実効値)が相乗するのです。

Comment by Matsumoto/ 管理者のコメント;
 スノーさんが、新型の15cmF5-BINOのリポートをくださいました。 何台ものEMS-BINOを使いこなして来られただけ あって、製作者の意図を雄弁に代弁してくださいました。

 鏡筒バンドで2本の鏡筒を連結する方式は、今回が初めてではございませんが、「BINO製作状況速報」でも触れました通り、 今回は、今までの経験を活かし、運搬用のハンドルを基本構造の一部に取り込む事で、剛性のアップと軽量化を同時に実現い たしました。構造は至って単純ですが、製作にはいくつかの秘訣がございます。

 スノーさんは、1組のEMSと1つの眼幅調整台座を共用されて、12cmF5鏡筒とFS102鏡筒を随時換装されながら2種類のBINOとして活用して おられましたので、換装の度に、製作者の初期調整の作業をされていたことになり、その熱意と到達された技量には感服いたします。

 しかし、ここでスノーさんが引用されました、”20~30分かかっていた光軸調整”という意味は、その作業の事であり、通常のEMS-BINOの 使用では不要な作業ですので、誤解のないようにお願いいたします。
 私が今まで製作して来ましたEMS-BINOは基本的にユーザー調整は不要ですので、 よろしくお願いいたします。(アイピース交換時のアイピース起因のずれをEMSのXY調整でわずか補償するのみ)

 新型の15cmF5-BINOのねじれ調整の方法も、普通はユーザーの方が使用されることはなく、バランス調整のためや、 鏡筒の分解等の必要が生じた際に、バンドを締め直す際のみに必要になるものです。これはBINO製作時のメーカーサイドの 初期調整とお考えください。 今回の新型の15cmF5-BINOの光軸の安定性は、鏡筒を固定したことも貢献していますが、 クレイフォード式のフォーカサーが操作の円滑さとガタの無い剛性を同時に満足していることもその大きな理由です。 特に、クレイフォードの原理構造上、ドローチューブの回転ガタが皆無であることのメリットはBINOにとって計り知れないものがあります。

 15cm-BINOの見え味について、スノーさんならではの、実体験を元に説得力ある解説をしてくださいました。 15cmというのは、口径の一つの節目のようで、ずっと以前ですが、 某天文アマチュアの重鎮の方が、「15cmクラスのEMS-BINOは、日頃30cmクラスの単眼の望遠鏡の見え味に慣れている者をも唸らせる。」 という意味の事をおっしゃいましたが、スノーさんの今回のリポートでそのことを思い出しました。

 この15cmF5鏡筒は、中国製のアクロマートですが、その明るいF値や口径の大きさから、古典的な常識からしますと、大味な見え味(たとえば集光力のみ目立って、 像の精度が甘いというような)を 予想し勝ちですが、どっこいそれは多くのユーザーの方々が証言しているように、少なくとも低倍での眼視性能は、市販の大型双眼鏡などは 比較の土俵にも上らせないほどのものがございます。私が初めてこの15cmF5鏡筒を手にした時、同社のF8鏡筒と並べて 昼間の景色を同じ30mmクラスのアイピースで見比べた時、むしろ前者の方が明るくシャープな印象を持ったくらいでした。(倍率 が低いからですが、低倍性能に於いて、F値が小さいメリットが発揮できているということです。)

 今、冬に向かった季節ですが、季節がめぐりましたら、またぜひ夏の天体についてのリポートも楽しみしていていますので、 スノーさん、よろしくお願いします。

 スノーさんがさっそく追記をくださいました。 スノーさんは12cmBINO以来、極めて 高い稼働率でBINOを活用してくださっていて、興味深い私信もたくさんいただいています。ご本人の了解をいただいた上で、 近日中に一部をご紹介できたら、と思っています。(11/28)

FS102-BINO

 12cmF5のBINOを所有し始めて日も浅いというのに、手元の望遠鏡をBINO化してしまいました。それほど、12cm F5BINOの衝撃は大きいものでした。

 さて、BINO化したのはFS102です。この鏡筒で見る、単眼時での惑星のシャープさとコントラストには素晴らしいもの があり、以前は自宅観望のメインとして使用しておりました。12cmF5BINOに接して以来、FS102の双眼で見る月 ・惑星はどれほど凄い画を見せてくれるのか想像する日々でした。そこで、思い切ってもう1本購入し、BINO化した次第 です。

 さて、梅雨の合間を狙い、天気予報と睨めっこする週末が続きましたが、ついにチャンスが巡って参りました。前線はやや 南にあり、日本海側方面は晴れ予報、大気はやや不安定なものの、こうした時は、標高の高い場所では短時間でも雲海の上 に出る可能性があります。出撃です。

 現地に到着すると、霧が出ているものの、薄らいできます。直ぐに組立て、高く上がった天の川の観望体制に入ります。 EWV32mmで覗くと、針を突付いたようなシャープな微光星が迫ってきます。単眼以上に明るいせいか、痛いほど目に付き刺 さるような星々の輝きです。そして流していると、北アメリカ星雲が飛び込んできました。ややもやった空であるものの ノーフィルターで十分に見れます。そのうちに、霧が再び出始めました。慌てて、ネビュラフィルター装着し、天の川を 南下します。そして干潟星雲へ・・・・おぉぉおお!絹のような繊細な星雲構造が見えます!!ドブ以来の迫力です。 そして、急いでフィルターを外し、M6、7へ。散会星団の美しさはアポならではと言うぐらい、繊細な輝きを見せます。 そのうち、東から霧が覆って来ました。ざっと実観望時間30分程度ですが、FS102BINOの実力の片鱗を感じとれた日 となりました。

 そして、数日後、仕事から帰って駅を降りると、晴れています!!木星です!!急いで帰宅し、即、組立て観望体制に入り ます。
 まずは、PL20mmで木星を覗きます。プローセルですが、テレビュー製で、抜けの良さと、シャープさ、望遠鏡を選ば ない汎用性で、実は最も気に入っているアイピースです。広角を求めないならば、安価で非常にお勧めです。 さて、木星ですが、倍率40倍、十分に模様が見れます。低倍率、衛星、模様、BINOの立体感が相まって、本当にポッカリ 木星が浮いているように見えます。少し気流が安定しないようですが、UW4.7mm約170倍に上げます。気流がピタッと とまる瞬間、恐ろしいほど、うにゃうにゃした模様に彩られた木星が浮かび上がります。「口径10cm?倍率170倍? 嘘でしょう!!」。双眼装置で見るより、矛盾するようですが、立体感と平坦さが両立して、非常に自然な立体感で見え ます。また、12cmF5と違い、まだまだ倍率が上げれる余裕を感じます(アイピースへの物欲が・・・)。色収差も少 なく、両目で見ているため、長時間でも疲れません。ひたすらシーイングの良くなる瞬間を待てます。

 こうして、星雲星団、惑星と楽しんだ次第です。後は、お月様ですね・・・

 さて、12cmF5との比較も交えながら、ポイントをまとめますと、

①星雲の迫力は口径差があり、12cmの方が上に感じます。一方で散会星団は、シャープさがあり、色が楽しめる FS102です。むしろ最強の兵器かもしれません。

②月、惑星は口径差が小さいこともあり、長いF値を持ち、かつフローライトであるFS102が圧倒的です。また、気持 ち良さもFS102が圧勝です。

③一方で、調整はFS102の方がシビアになります。星像が鋭い分、周辺まで非常に気になります(覗きたくなる?)。 遠征時は、現地で、30分も鏡筒の位置の微調整を続け、ミラー調整前の光軸調整に時間を掛けていました。遠征時は明 るいうちに現地に着きたいですね。

④重量も、長さもFS102は楽なものではありません。逆に12cmF5は口径を考えると、驚くほど軽量、コンパクト だと言えます。したがって、自宅FS102、遠征は12cmF5が中心となりそうです。

⑤対象や好みによっては広角アイピースが必ずしも良いわけではありません。特に2インチ超広角アイピースは視野の制約 がないと思えるほど覗き回れる分、アイポイントが安定せず見やすいものではありません。楽に見るには、自分のポイント に合わせたアイカップを作成するなどの工夫が必要かもしれません。一方で、テレビューのプローセルなどは抜けシャープ さとも抜群で、コストパフォーマンスは高いと思います。視野も狭い分、アイポイントが安定し、楽に見えるメリットは大 きいと感じます。単眼時には感じなかった問題で、BINOの良さは低倍率超広角が得られる面にあるのも事実ですが、対象に よって使い分けるのも良いかと思います。

 最後に、FS102はバックフォーカスに余裕があり、非改造で、10分で鏡筒換装が終ります。このようなことが出来るの も、EMSおよび架台の汎用性の高さゆえです。シンプルな構造と楽な調整が相まってなし得る楽しさです。対象により長焦 点アポと短焦点アクロを使い分けるのは、BINOの楽しみの幅を大きく広げます。

 さて、目の前にボーグが転がっています。超軽量BINOが出来るかも・・・・(笑)

スノー

Comment by Matsumoto/ 管理者のコメント;

スノーさんが、初めての12cmF5BINO(アクロマート)を入手されてから、快進撃を続けておられます。

 最初のBINOの完成時に、わざわざ当方まで対面に来てくださいましたが、スノーさんの探求心と吸収力には、 目を見はらさせられます。

 元の12cmF5鏡筒とFS102鏡筒は、最大径が同じくらいなので、EMSも台座も共用が出来ます。ハンドルのロッドのみ、 少し長いのをお作りしました。

 自分で作って(組み立てて)みる、というのが、EMS-BINOの原理を理解するための好適かつ最終のレッスンだと思います。  スノーさんは、それを1か月ほどでクリアーされたわけです。 BINOの耐性菌に取り憑かれられたようで、ごしゅうしょうさまです。^^;

 続報を楽しみにしております。