クーの近況

こんにちは。 クーです。松本家に飛び込んで早、一年と2か月、大方は満足で、まあ狙いは ほぼ当たりだったかな。 でも外に出られないのはちょっと息が詰まる。

一度、一週間ほど朝だけ外出させてもらっておったら、前のお宅の爺さんから文句(前庭に糞をするとか、オレは 身に覚えがないが)が出てまた元通りの監禁生活になっちまった。 朝、店の主人が屋上で30分ほど遊ばせてくれるのと、 夜中に婆ちゃんちでドタバタ暴れて何とか鬱憤晴らしをしとる。

それはそうと、何とも寛容性の低い地域社会になったもんだ。 この間の新聞に写真家の岩合光昭さんが、「猫が幸せで ない町は人間も幸せではない・・・」ちゅうような良いこと書いとったが、あのジジイに読ませてやりてえ。(=゚з゚=)ムー

・・・とクーは申しております。もっとも、野良猫に餌を無制限に与えて、地区で異常繁殖→糞害憤慨という のは論外ですが、去勢したオス猫が朝の1時間ほどだけ家の近所を自由に散歩することすら許されないというのも、心外ですな。

Handy EMS-BINO

チビBINO by 正立ミラーシステム<ご報告>
 先般いろいろとご相談させていただいておりましたEMS双眼鏡が、 ほぼ完成しましたので、ご報告させていただきます。このEMS双眼鏡 ですが、以降”チビ”と記載します。 このチビは手持ちできる事、対物レンズが交換できる事が特長です。 写真は70mmと50mmの対物レンズをつけたものです。 さすがに70mmとなると重たく長時間の手持ちはしんどいですが50mmだと 十分手持ち可能です。 これで長年の夢であった、キャンプ用のリクライニングチェアにもたれ てゆっくりと夜空を眺める。また、見たいときに即座に星を見るといった、 私のわがままが叶います。がんばって購入したアイピースの活用率が 上がるのも嬉しい限りです。
<製作のきっかけ> 
 これを作るに至った経緯ですが、以前より、手持ちできる90度または 45度の対空双眼鏡が欲しくて、いろいろ物色していました。 しかし、丁度良いものが見つかりませんでした。宮内光学さんの物も 検討しましたが、手持ちは無理かと思いあきらめてました。 それが数週間前、なんともラッキーな事に、ネットショップで旧型の EMSを、それも左右セットで購入する事ができ、一気に夢の実現 に向かった次第です。
<チビのスペック>
   チビのスペックについて以下にまとめさせていただきます。■対物有効径:50mm,70mm
■焦点距離:不明
 ※家にあったビクセンのフィールドスコープと、古い無名の   双眼鏡のレンズを利用のため。
■合焦機構:対物レンズ前方繰り出し式
■光軸調整:対物レンズ取付け部回転方式(取付け部は数ミリ偏芯)
■目幅調整:多少可(接眼部プレートの締め付けを緩めておこなう)
■接眼部規格:φ31.7mm差込式
■材質:  ・接眼部プレート:4mmアクリル板
 ・対物側プレート:5mmアルミ板(松本さん製作品。感謝!)
 ・鏡筒  :塩ビ(全て水道管パーツ)
 ・合焦機構:フェルト
■正立機構:【旧型】EMS
■その他:双眼鏡ホルダー取り付けネジ穴付き

<今後の展開> 実はこの70mmのレンズですが、像が悪くかつクモリがあり50mmの方が 良く見えるような気がするほどです。幸いチビは、どんなレンズでも 受け入れてくれるので、良いレンズを探すなど、これからシステムを レベルアップして行くつもりです。

<お願い> 最後に松本さんにお願いがあります。 この旧型のEMSですが、購入して初めて市販されていた事を知りま した。ユーザの方のホームページでEMSの開発の過程が少し記載さ れている記事を見させて頂いた事がありますが、正確な所でEMSの 開発史をお教えいただけないでしょうか?松本さんのホームページに EMS開発史のページを作っていただく事をイメージしています。 今回、新旧のEMSを所有し、改めて現行モデルのすばらしさを 実感しております。例えばその開発史の中で、旧型から現行に移行す る過程での松本さんの創意工夫点や苦労話しを明らかにしていただけ ますと、EMSのすばらしさを、私も含め所有者の方にさらにお分か りいただけると思います。お忙しいとは存じますがご検討いただければ幸いです。
 大阪市 赤澤

Comment by Matsumoto/ 管理者のコメント;

● 懐かしい物を見せていただきました。   これが、商品化した最初のEMSで、当時の名称は『正立ミラーシステム』でした。 入手してくださってありがと うございます。 きっとこのEMSも、相応しい方の手に届いて、喜んでいると思います。  それにしても、赤澤さんの工業デザイン的なセンスにはいつも舌を巻かされます。この方に本格的な工作手段を与え たら、どんな物が出来るかと、想像が膨らみます。

● 赤澤さんにきっかけをいただきましたので、ちょっと長くなりそうですが、EMSの開発の経緯をご説明したいと思 います。

● EMSの製作販売は、天ガの1989年12月号で紹介してもらってからのスタートです。(構想立案、自分用 の製作は、Sky&Telescope誌の1982年11月号(私の最初の自作BINO)からさらに数年前に遡ります。)(発売価格=@ ¥34,800)
  このEMS、『正立ミラーシステム』は、元来単体用であって、ほとんどは単体の右目仕様で供給していました。  その後数年間で、全部で200個くらいは作ったと思います。   ただ、双眼用のペアを作っていたのは最後頃(1992年頃か?)で、極めて少数のペアだと思います。 15組作った かどうか、はっきりとは記憶していません。 実は、6年ほど前に、当時のEMS仕様から現行仕様にリフォームしたお客 さんが、古いEMS(お送りいただいた写真と同じ物)を寄付してくださった物が当方にも1組あります。(下のリンク のテレビ番組に出てくるもの)

●  初期のEMS(正立ミラーシステム)は、その外観から一般にはダイカスト製だと思われていますが、実は鋳造品 ではないのです。^^;   2種類の厚手のアルミアングルと、側面の穴を塞ぐ薄いアルミ板を複雑に組み合わせて作っていました。全てネジ による接合で、ヤスリ等で継ぎ目が分からないようにし、さらにネジの頭はバテで封印してから焼付け塗装をして、 ごまかしていました。^^; 今から思えば、考えられないような手間をかけていました。 工作機械も、当時は旋盤 やフライスは持っておらず、粗末な家庭用ボール盤と卓上丸ノコと手ヤスリだけで仕上げていました。文字通り、命を 削って作っていました。^^;(ボール盤に治具を付けて、フライスの代用にしていましたが、結構危険で、たびた び悲鳴を上げながら使っていました。^^;)
 当時のEMSは、私のテレビ番組の中でも紹介しています。

 売り出し当時、あまりに作業が大変なので、当時親しくしていた某光学の営業の方(数年前に他界されました)に 話したら、本気で検討してくれたのですが、結果は、「全く同じ物を工業的に作るとしたら、原価コストだけで1個 10万円はかかる。」ということでした。そして、これなら量産可能ということで、代わりに作ってくれたサンプルは、 アルミ板金プレス製の粗末な物で、とても受け入れられませんでした。 結局、そのモデルは最後まで私の手作りで 対応しました。

(一部マニアの方が、あたかもマツモトが特許を傘に着て、不当に高い価格で市場を独占していたか のように中傷されることがありますが、現実は全くの逆なのです。私は現在まで一貫して天文マニアや自作マニアを 支援する姿勢を貫いて来たつもりです。)

● 1990年には、特注の三角パイプ (250kg(最小単位)を確保しましたが、さらにそれから数年で、より能率的 な鋳物に移行したので、結果的にはそのほとんどを無駄にしました。^^;) を使用した、2ユニットタイプの2イン チ用の物(汎用ミラーシステム)も並行して作り始めました。

● 1995年には、今とほとんど同じ形状の鋳物(木型)を開始すると同時に初期の1体型のEMS(正立ミラーシステム )と分割型の汎用ミラーシステムの製作を中止し、さらに2001年の秋には鋳物(木型)を中止してダイカストを採用し、今日に至っています。
  三角パイプを採用した段階で、加工の省力化は著しかったのですが、形状にこだわって角を落としたりすると、 三角パイプの側面の蓋のアルミ板の折り曲げや、組み立て、継ぎ目を隠す作業が結構煩雑に感じ、(だんだん贅沢 (横着)になって^^;) 鋳物屋さんに相談し、アルミ鋳物の採用に踏み切ったのです。

 しかし、それでも木型(つまりは砂型)によるアルミ鋳物は、形状が不正確なため、一皮大きく鋳込んでもらった ものを、やはり機械加工で仕上げるわけですから、アルミアングルの組み立て→三角パイプ→アルミ鋳物 と進めて 来た省力化も不十分に感じ、最終形状が最初から得られる究極な物としてのアルミダイカストの導入に踏み切った次 第です。

● ワンボックスタイプを早期に中止したのは、製作の手間がかかり過ぎることが主な理由ですが、BINO用を意識するようになって、 像の倒れの調整がほぼ不可能であることが分かり、また、ダイカストの型を検討する段階で、致命的に非能率な方法と 悟り、完全に見切りました。 つまり、一型数百万円のダイカストの型がたくさん要るのです。受け(ミラーをセット する側)とカバー(望遠鏡接続バレルとアイピーススリーブをセットする側)だけでも2種類ですし、カバーは左右用 で互換性がありませんから2種類の別の型が必要になります。 ご承知のように、現行のEMSの型は一つで右眼、左眼 用に互換可能です。

 アングルを利用する方法に気付いた時点では、合理的な方法と思ったのですが、工業的な方法を自ら学んで行く 過程で、はるかに合理的な方法が他にあることを悟ったわけです。自作マニアのサイトに、最近、今更のようにこの方法 を画期的なものとして提案されていますが、その認識には26年以上のタイムラグがあるわけです。(あと26年経てば 理解できるでしょう。^^;(EMSが単に市販の斜鏡を2枚無加工のまま貼り付けた物ではないことは、当サイトを 注意深く見てくだされば、理解できるはずですが・・・))

衒学者にご注意を
EMSと特許
タイムラグを考える
2007年を振り返って

昨年他界された須田さんのユーザーリポートには、当時の正立ミラーシステムの ロンキーテストの写真が掲載されています。

 いつもながら、くどい説明で失礼いたしました。   初期のEMSを購入してくださったこと、またそのことをご報告くださったことに、深く感謝したします。

BORG60N-BINO

「トラベルBINOユーザーレポート」

 出張や家族旅行に持って行けるBINOが欲しくて、「トラベルBINO」を作りました。 マツモト式EMS-M+BORG60nを利用しました。最大の特徴は軽量コンパクトです。 フルセット重量(三脚やアイピースを含む)はわずか6kg、片手で楽々持てます。 架台セットで収納した縦横サイズはA4以下、アタッシュケースの中に納まります。 飛行機の中にも持ち込み可能です。

 自作にあたりEMS-LとMどちらにするか迷いましたが、バックフォーカスと小型化 に有利なMを選択しました。EMS-M でも2インチアイピース(30mm, 70°クラス)が 使用可能です。

 架台は色々と検討した結果、西田氏のアルミ経緯台がジャストフィットでした。 軽量かつフリーストップの操作感は抜群です。

 先日北海道出張があり、仕事道具と一緒にトラベルBINOを持っていきました。 仕事の後、ホテル近くの公園に持っていってセットアップ。旅の後で調整は必要 ですが、EMSのおかげで調整はすぐに終わりました。マツモト式EMSのX-Y調整機 構は素晴らしいできばえです。これ無しに快適な双眼望遠鏡は考えられません。

 北海道ではすでに紅葉が始まっていました。風に揺れる紅葉は美しく、見ていて あきませんでした。トラベルBINOは地上風景にも予想以上の性能を発揮してくれ ました。

 常用アイピースはWilliam Opitcs UWAN16(見かけ視界82°、倍率×20)、相性は バッチリです。アイカップをカメラ用に交換したおかげで、顔に吸い付くような 快適さです。まるで裸眼をそのまま20倍ズームアップしたような感覚でした。

 そのまま公園に置いておいて、夜いよいよファーストライト。 すばるがすっぽり視野におさまります。おそらく実視野は3°弱でしょう。h-χ など秋から冬の散開星団をひととおり流しているうちに、あっというまに一時間 が過ぎました。ストレス無しに長時間眺めることができるのはBINOの最大の強み ですね。

 一方、正直言って 6cmの限界も感じました。ギャラクシーには力不足です。 トラベルBINOの用途は、天の川を流しながらM35やM42などメジャーな星団星雲を 楽しむことですね。小型軽量ならではの使い方が楽しみです。仕事がら地方出張 が多いので、これからも出張先に持っていこうと思っています。登山に持ってい って、アルプス山頂からの星も楽しみです。

 これからアイピースやフィルターを増やすのが楽しみです。なお目幅調整機構が まだなので、近いうちにLMガイドで完成させる予定です。

自作に当たってアドバイス頂きました松本さんほか皆様、本当にありがとうご ざいました。

Comment by Matsumoto/ 管理者のコメント;

 杉本さんは、EMS-Mを利用されて、総重量わずか6kgの超コンパクトBINOを実現されました。   西田さん作の架台も見事です。

  EMSのX-Y調整機構についてコメントしてくださいましたが、自作のキャリアがある方ならではの 着眼だと思いました。EMSの双眼セットとしての機能として、このX-Y調整機構は欠く事のできないものです。

 単体用のEMS-SやMを2個調達すれば、あるいは自作されれば、素材コストは随分と安くつくわけですが、BINOとして 満たすべき機能を自作で補完するためには、余分に相当な努力と投資を強いられるわけで、トータルのコストと仕上がりに関して、 どちらが有利なのかは簡単には評価できません。  杉本さんは、これらの点を良く理解してBINO用に特化したEMSセットをご利用くださったものと思います。

 EMS-MによるBINOの作例は、今日まで意外に少なく、私の記憶が明確なのは、今回の杉本さんの他には、 YamauchiさんとSakamotoさんだけですが、今後はコンパクトなBINOへの要求と共に使用例が 増えてくるかも分かりません。

 1989年に初めて天文誌に紹介されたEMSは、正立ミラーシステムという名称で、一体ケース構造でした。 当時は36.4mmのネジ込み式が一般的には最大のアイピースで、2インチアイピースはまだ広く 普及していませんでした。そのような当時の背景から、最初のEMSは、36.4ネジ込みのエルフレ32㎜(60度)クラスが ケラレなく使用できることを前提に設計していました。その当初のEMSの役割(キャパ)を後継した現行のEMS-Mの構成ミラーは、その初期型EMSよりも一回り大きく、 杉本さんも指摘しておられるように、2インチの32㎜クラスの広角アイピース(EWV32でもケラレはさほど気になりません)まで 使用できるわけです。(ただし、optionの2インチスリーブは必要) 

 光路長については、ミラーサイズで決まると思っておられる方が多いのですが、それはミラー同士の干渉の回避等で二次的に 関係するだけであり、実際には、ミラーケースのサイズと構成ユニットのジョイントの長さ、それとアイピースを 挿入するスリーブの長さで決まりす。 従って、EMS-MとEMS-Sは、同一のケースで同構成ですので、光路長は 全く同じです。EMS-Lとの光路長の差も、ケースは同一ですので、ジョイントパイプの長さとアイピーススリーブの長さ の差に過ぎません。 たとえば、EMS-LにEMS-M用の31.7ADを装着すれば、その光路長の差は14㎜しかありません。

 場所を借りて、EMSのことに少し触れさせていただきました。 杉本さん、トラベルBINOのご成功、おめでとう ございます。さっそくのリポート、ありがとうございました。

EMSと特許

 EMSと特許との関係について、一部に誤解があるようなのでご説明しておきます。

 私が平成元年に出願し、平成6年に許可された特許の「発明の名称」は、“正立ミラー”でも“EMS”でもありません。  その名称は『正立プリズム』であり、正立ミラーは、その反射面をミラーで代用した応用例に過ぎません。

 識者?の一部の方がEMSの特許に否定的な理由は、「アミチプリズムという既存のプリズムがまず存在し、 単にその反射面をミラーで代用したのがEMSである」、という認識からだと思います。その理解の出発点で誤解がある わけです。

 「アミチプリズムの光路を解析すれば、必然的にたどり付く方法」という意見は、まさに「後出しジャンケン」 の卑怯な論法であります。その時点で“公知”だったかどうか、ということは、常に特許関係の論争で問題になる点 ですが、その時点でEMSのような製品が公知と言えるほど普及していなかったことは元より、その原理を具体的に広く 公開していた実例はありませんでした。

 少なくとも、特許庁は、公知でなかったと判断し、さらに一定の公開期間に、根拠ある異議申し立てもなかった ために、実際に特許として認定されたわけです。

 私の『正立プリズム』は、唯一の反射面を持つ2つの光学素子で構成された90度対空用の正立系であり、入射角 を規定することで、既存のポロプリズム等との違いも明瞭にしています。まして、一つだけの光学素子で構成される アミチプリズムについては、特許庁の審査での比較対象(拒絶理由)にすら上りませんでした。

 つまり、私は全く新規な「正立プリズム」を発明したのであって、そのプリズムのミラー代用系がEMSであると いうことです。

 「特許請求の範囲」では、構成ミラーをまとめて一つのケースに収納したものと、独立したケースに収納して連 結した物を区別しておらず、つまり、初期のワンボックスタイプのEMSも包含された形で特許となったわけです。

 特許庁の電子図書館の検索メニューで、→「特許・実用新案検索」→「公報テキスト検索」を開き、上の公報種 別の「特許公報」にチェックし、出願人の名前に「松本龍郎」を入れて検索されれば、私の特許「正立プリズム」の詳細が 参照できます。(「初心者向け検索」では、平成5年出願以降しか出て来ないようです。)

Knowing nothing is better than knowing things by halves.(衒学者にご注意を!)

Knowing nothing is better than knowing things by halves.
Never trust any second hand information about EMS in the web.

There are too many pedants in the web who believe themselves to be the perfect masters of the principle of the EMS. But, in most cases, they only regard my EMS just as an analogue of the Amici’s Prism and never understand the real meaning of it.

It is a shameful dilemma for them to deny the originality of the EMS, while appealing themselves to be pioneers or something by attributing the principle of the EMS to the traditional optical theory, as if it is a “scoop” or something.

 人はどうやら二次情報や三次情報の方に、より耳を傾ける傾向があるのかも知れない。 しかし、あらゆる分野の情報をwebに求めてみると、その大半は全くの出鱈目か、信憑性を装った不完全なものである。 前者のように、誰が見ても出鱈目がバレているのは、不快ながらもむしろ罪は軽いのだが、問題はむしろ大半を占め る後者の情報だ。後者の情報は、社会への害毒だ。

 しかし、なぜストレートに一次情報を取りに来ない方が多いのだろう。手を受けて待っているのに。 医者がいても、 側にいる看護士の方が話しやすいということだろうか。

 “Knowing nothing is better than knowing things by halves.” という英語圏の諺があるが、EMSのオリジナリティ を否定する衒学者の方々には肝に銘じて欲しい言葉だ。

 15年以上前に某国立大学の名誉教授の先生(光学)とFAXで長い文書を一定期間に渡って応酬したことがあった。この 先生も御多分に漏れず、EMSは単なるアミチアナログという短絡的なご理解であって、ミラーの間隔を調整して目幅調整が出来ること等を理解していただくのに随分と骨を折った。 しかし、最後には兜を脱がれ、鳥取の当方まで見学に見え、自分用のEMS-BINOも注文された。 最後には理解して認められるところが本物の学者先生の偉いところ、ただの衒学 者とは大きな違いだ。

 EMSを既存の原理に帰着させ、そのオリジナリティを否定するのは衒学者の一般的な傾向であり、その意見を発表され るのも自由ではあるが、実は、EMSの新規性を公然と否定してみせることで、自らの知識?をひけらかし、つまりは 自らの新規性をアピールしている姿は大きな“矛盾”であり、私の目には実に滑稽に映るのである。

FS102-BINO

FS102-BINO(Made by Mr.Mario Muriel using the EMS)

“Siempre me había sentido atraído por la osbservación binocular y a lo largo de mi vida he tenido muchos prismáticos mas o menos buenos. Pero fue cuando descubrí el invento del Sr. Matsumoto cuando mis sueños se hicieron realidad, plasmando mi pasión en estos extraordinarios binoscopios gracias a la aparición de EMS. Van equipados con dos Panoptics de 24 mm (que son de lo mejor que he conocido) y dos PowerMate x 2.5 para observación planetaria con Plosls de 12mm, todo ello de Tele Vue. Los planetas son como bolitas flotando en 3D, impresionantes, y los campos estelares de la Vía Láctea parece que se puedan tocar, tambien impresionantes.
Desde aquí, quiero animar al Sr. Tatsuro Matsumoto en el camino de la investigación de la observación binocular.

Mario Muriel – Spain.”

(English)

“I always had been attracted by the osbservation by binoculars and throughout my life I have had many more or less good binoculars. But it was when I discovered the invention of Mr. Matsumoto taht my dreams were actually put my passion in these extraordinary binoscopios thanks to the emergence of EMS. Van Panoptics equipped with two 24 mm (which are the best thing I have ever met) and two PowerMate x 2.5 for planetary observation with Plosls of 12mm, all of Tele Vue. The planets are like balls floating in 3D, impressive, and the stellar fields of the Milky Way seems to be playing, also impressive.
From here, I want to encourage Mr. Tatsuro Matsumoto in the way of investigating the observation by EMS-BINO.

Mario Muriel – Spain. “

Comment by Matsumoto/ 管理者のコメント;

Thank you very much for your second tribute to my website. Let me admire your craftsmanship and the right skill of adjusting the system.

 FS102-BINOのマリオさん(スペイン)が二度目の投稿をくださいました。写真の背景に模型飛行機が写っており、 マリオさんのCraftsmanshipに再度、納得しました。互いに外国語である英語を唯一の”communication tool”と しながら、お送りしたEMSセットを見事にBINOに仕立て上げておられます。

Sky90-BINO in Uighur, China

Total Solar Eclipse with Sky90-BINO in China

Okadaさんのウィグル(中国)皆既日食遠征記です。

 ご無沙汰しております。Okadaです。この度、再び皆既日食を観に、星ナビ協賛日通旅行「2008年中国シルクロード 皆既日食ツアー8日間コース」に参加して中国奥地の新疆ウイグル自治区 伊吾県に行きました。

【エアポート】

 丁度、北京オリンピック開催直前であったため、空港でのチェックは非常に厳しく、空港では、過去の旅行での経 験も含めて最も厳しい、手荷物も含めたすべての重量チェックが行われました。ツアーでの旅行であったため、グル ープチェックインという形で、多少の重量オーバーは大目に見てもらえたのでしたが、双眼望遠鏡の重量対策は大きな 問題であることを改めて感じ、さらなる軽量化を今後検討しないと行けないと思いました。

 また、中国国内線において手荷物チェックでアイピースとEMSが目にとまり、いろいろと聞かれることになりました。 望遠鏡のアイピースであると言っても、専門用語に近い単語であるためか、あまり理解してもらえませんでした。 百聞は一見にしかずと言いましょうか、以前何かで写真を見せればよいということを知っていたので、組み立てた 状態の写真を見せたところ、若い検査官の人は、目を大きくして、すごい望遠鏡だ!と驚きながらも笑顔で言ってく れました。

【EVE】

 バスでの長い移動でしたが、先にも記述した理由より途中公安による検問が何回もありました。翌日の期待が高まる 中、何だかな~という感じでした。しかもその前日までは天気が悪く、移動中雨が降るようなこともありました。 バスの中はあえて天気の話はしない雰囲気が漂いながらも、皆心の中でてるてる坊主をぶら下げていたのでした。

 我々のツアーの皆既日食観望場所は、政府指定の観測地で、日食城という名称が与えられていました。そこには夕 方18時過ぎに到着しました。ただ、18時と言っても、緯度が札幌並みに高いのと、北京標準時を採用していること から2時間ほど早いため、体感的には16:00ぐらいでした。そこには今回の日食のために、立派な建物やモニュ メントが建てられていました。しかし、風景を入れて写真を撮る写真屋さんもいることから、下見にてこの建物から 数100m離れた小高い何もない丘で陣取ることとなりました。

 これから夕食になるのですが、全日程を通してハズレは無く、食事面においては非常に良かったです。特にこの地方 特産のハミ瓜(メロン)は甘みがあって非常に美味しかったです。また、先日まで天気が悪かった空が、この時間あた りからみるみる回復していき、明日への期待が高まってきました。

 日食を観に世界各国から人が集まります。夕食後、お祭りムードのテント場にSky90双眼を出し、その場に脚を止め たフランス人や中国人の方々に木星やM13などを見て頂きました。日食に見に来るだけにオタクらしく、ETHOS (フランス人はエトスと発音していました)2本に驚いていたり、EMSに非常に興味を持っていました。私個人のHP は持っていないので、日本の双眼オタク紹介と勝手にEMS販売促進のためにマツモトさんのHPとBigBinoの服部さんの HPを記載したカードを渡すと、「ビジネスマンだ~」とその場に居合わせた者達で大笑でした。 

【雲と賭け】

 皆既日食自体は夕方のため、それまでは木立のあるテント場で参加者の方々と歓談し、期待を高めていました。そ して、日食開始数時間前にいよいよ移動開始です。

 前日下見をした場所は遙か遠くに天山山脈を望み、周りには全く何もない最高のロケーション。また砂漠地帯だけに 日本よりも空気が乾燥かつ澄んでいます。しかし、真夏の砂漠は過酷で、恵みなる太陽の光のはずが、まるで殺人光線 のように強烈でした。

 昼過ぎまでは快晴だったものの、第一接触前から太陽の周りにはいやな雲が湧いてきました。しかし、そのときは あまり雲を気にすることなく部分食は進み、いつの間にか灼熱であった気温が徐々に下がり、皆既がもうすぐだとい うことを肌でも感じていました。

 ところが!いよいよ皆既10分近くになりましたが、なんと雲が太陽を覆うじゃありませんか!!おそらく数千人 近くは居よう、少し離れた日食城からは祈りに近いような悲壮な声が聞こえてきました。

 この時点で、雲が流れて行くか行かないかはかなり微妙で、5分前近くには知り合いが居ても経ってもいられず、 機材を抱えて走り出しました。周りの方々と「移動するか!しないか!雲は抜けそうか!ダメか!」などと雲の行方 を眺めながら声を掛け合っていました。そして、皆の想いが通じたのか、わずか皆既直前2,3分前に「抜ける!」 と確信が持てたのでした。

 皆既約30秒前。誰かが「コロナが見えるぞ~!」とのかけ声に反応して覗いた時、2年前エジプトでもう一度会い たい、と想ったコロナに再会を果たしたのです。Canonの10x42IS防振双眼鏡でコロナの広がりを確認すべく覗くもの の、90mm双眼で覗いたらもう戻れません。EMS双眼で織りなすコロナは、90mmある口径のおかげで、分解 能高く流線が美しく見え、そしてEMSでしか達成できない82°という広視野且つ5.25°という広視界を両目 で観ることができるのです。プロミネンスは独特なピンク色に輝き、そのうちの一つは、まるでカモメが羽ばたくよ うでもありまた。

 しかし、今回の皆既は2分弱。もっと見続けていたいという思いとは裏腹に、時間はあっという間に過ぎ去ってしまい、 右端が明るくなってくるのが感じ取れます。そして、突然光り輝く太陽が現れた瞬間、それは世にも美しいダイヤ モンドリングなのです。しかし、無情にもそれは皆既の終わりを意味し、えぇっ~もう終わり~!?もっと観たいと いう欲をやむなく打ち払うかの如く、双眼から眼を離すのでした。

 そしてこの後迎えるのは、観られた!!という満足感が怒濤の如く押し寄せ、しかしもっとみたい、もう一度みた い!という気持ちが入り乱れた瞬間でもあったのでした。

 後から思うに、こうやって日食病に冒されるのだと思いました。

【北天】

 テント場に戻ったツアーの皆は、撮影した写真を見せ合ったり、もう来年の話で盛り上がったりしていました。 ところで、今回このツアーを選んだもう一つの理由として、真っ暗な夜空の下での天体観望がありました。それは期 待通りの夜空で、北天の天の川が光り輝く、日本ではもう味わうことができないような素晴らしい夜空でした。北 極星は普段見慣れた高さより遙かに高く、北斗七星が周極星となっていました。また天の川はその名の通り河のよう になって光り輝いていました。いて座付近が明るいのは既知ですが、はくちょう~カシオペアのあたりも非常に明る く、また暗黒帯の入り用がはっきりわかるほどでした。

 たった9cmの口径ですが、双眼視の効果は絶大で、ETHOS13mmとの組み合わせで観たM31は3°近くあるかの 如く見えたでしょうか、暗黒帯の入り方も素晴らしく、ベテランのドブユーザーの方もドブに迫る見え方だと喫驚 する見え方でした。もちろんもっと大口径の望遠鏡を持っていけたら、もっと見えたと思います。網状星雲はフィラ メント構造がわかるほど容易に見え、また真ん中部分の淡い星雲もノーフィルターで容易く見えるほどの素晴らしい ものでした。特に驚いたのが、ペリカン星雲の眼やくちばしの切れがはっきりわかるほどで、私を含めその場に居合 わせた者は驚いて観ていました。南天も素晴らしいですが、北天も負けたもんじゃないと見直しました。

 メジャーな天体、マイナーな天体などなどたくさん観ていましたが、緯度が高いゆえ夜明けまでの時間は意外に短 く、黄道光が見え始めたところでお腹いっぱいとなり就寝することとしました。

【See you Again!】

 個人で段取りを立てて、世界各地に日食や彗星、オーロラ、南天などを求めることができる方は、本当に素晴 らしいな~と思います。私などはトラブルがあったときの対応など到底で きないとわかりきっているので、ツアー参加にならざるを得ない状況です。個人でなんでもできる方からツアーを 見ると、大名行列的で融通が利かないかもしれません。

 しかしながら、ツアーも良いなと思えるのは、いろいろな人と出会えることです。天文業界では有名な方、日食が初 めての人、20年以上のベテランさん、ダイヤモンドリングのみ追い求める人、なんだか面白そうなので申し込んだ 人などなど。そして、何よりも、あっ前のツアーでお会いしましたね!と言える方々に会えることです。また、ツア ープログラムには載っていないオプションの数々など、陰ながらツアーを支える添乗員のおかげで、同じ目的をもっ て集まったツアーは、ある意味快適で本当に楽しかったです。

 来年の皆既日食は日本近海で起こるため、EMSを使用した双眼望遠鏡ユーザーに出会えるのではと思ってます。そし て彼の地で、あっ!また会いましたね!と言える日を楽しみにしています。 See you Again!

【写真解説】■01 今回の荷物(スーツケース×2、リュックサック)
■02 日食城
■03 ハミ瓜(哈密市内にて撮影)
■05 日食前のSky90双眼 (遠く天山山脈を望む)
■06 皆既日食
■07 皆既中の観望風景

Comment by Matsumoto/ 管理者のコメント;

 Okadaさんより、オーストラリア南天観望エジプト日食→に続いて、 中国での皆既日食遠征のリポートをいただきました。渾身のリポートで、私を始め、現地に行けなかった者にとりましては、何よりのお土産です。 実際に体験なさった方の何分の一いや、何十分の一かも分かりませんが、リポートを読ませていただきながら、手に汗を握っていました。

 それにしても、これだけ世界中を旅したEMS-BINOも数少ないことでしょう。お荷物の写真がありますが、大荷物にも 見えますが、むしろ、よくこれだけコンパクトにまとめられたものだ、と驚かされました。 大きな荷物を持っての移動は 大変かと察しますが、EMS-BINOで観る皆既日食には、その苦労が報いられるだけの感動があるのだということを、Okadaさんは身を以って証明してくださっています。 海外の方から”Businessman”と揶揄されてもくじけないで^^;、常にSky90-BINOをお供にしてくださってありがとうございます。

 Okadaさん、今回も貴重なリポートをありがとうございました。

Megrez80-BINO

 お送りいただいたEMSセットと目幅調整台座、短縮済み鏡筒等を、先日組み立て、Megrez80-BINOを 完成させることが出来ました。 以来、こちらは天気が悪い日が続きますが、晴れの合間を見て具合をみました。 右側に妙な金色の棒が付いてますが、重りの付いた棒を前後に移動させて全体の前後重量バランスをとってます(重りを変えたりもします)。 添付写真のように難なく組み立て、アイピース他納入品の不具合品はありませんでした。 光軸合わせは右の鏡筒を振って出来るだけ行い、EMSの調整ノブは最後に使うという松本さんのアドバイスでちゃんと出来た気がします。 合焦状況は問題無く、下の通りで鏡筒の切断した長さは適切だったです。          ドローチューブ繰り出し量      2倍バーロー時
EWV-32mm        14 mm            5 mm
イーソス13mm       22 mm           4 mm
WO-6mm           15 mm            6 mm
気になった点は以下ですが大きな問題ではないです。

● 片持ちの「Easy Touch」に積んだのでモーメントが大きいので傾く。 もう片方に適当な望遠鏡を積めば勾配は軽減されると思いますが、トータル重量が気になってきますが... 望遠鏡を購入してバランサー兼用させようかと考えてますが何かアドバイスあればお願いします。 曇りでしたが、雲間から顔を出す月や木星、天の川の付近を観望しました。 感想は「やはり全然違う、松本さんから購入して良かった~」と思いました。 いったんセッティングしてしまえば、ストレスを全く感じずに気持ちよく観望できました。 上下左右に鏡筒を楽に自在に振り、視界の先の星野は、非常に広視界で明るシャープな像で感動的です。 これまでは大体Megrez80に双眼装置を付けて(バローを使わないと合焦しないので好きな低倍率が無理)天体観測してました。 これだと視野周辺はケラレるし視野は狭い・暗い(特に高倍率)、双眼装置は重いので天頂付近はドローチューブがズルズル落ちるし、 双眼装置自体も回転し易いしストレスのたまる天体観測でした。 「Easy Touch」のような片持ちは少数派で、重量が片側に偏る不利はありますが天頂も楽々見れるし、 ストレスなしに操作出来るのは経緯台式と変わらないと思います。
 曇りがちでしかも月夜に一度天の川付近を短時間流した位ですが、プリズムを使わないEMSでの双眼システムの実力は充分感じました。 これからは有名な球状星団や新月時の晴れた夜に天の川付近をじっくり流すのが楽しみです。 Megrez80はバックフォーカスが短くて、色々対策はありましたが松本さんへ送って、鏡筒の切断短縮の完璧な仕事をして頂き正解でした。 納期や配達も非常に気をつかっていただき恐縮しました、良いものをありがとうございました。                                       K:(オランダ在住)             

Comment by Matsumoto/ 管理者のコメント;

 Kさんは同胞ながらオランダ在住で、ご見学はもとより、事前のパーツ類の往復にも大きな制約がありました。 Megrez80鏡筒とT字型架台はすでに所有しておられましたが、荷物の安全と軽量化のため、鏡筒パイプ(フランジ付き) のみをこちらにお送りいただき、切断、短縮加工をした物を、目幅調整台座とEMSと一緒にご返送しました。  にもかかわらず、写真のような見事なEMS-BINOを完成されたことに、まずは敬意を表したいと思います。 さらに、独自のウェイトシステムは非常に合理的に出来ていると思います。

 片持ち架台に搭載した際の傾斜傾向は、私も以前にZenithStar80-BINOで経験していました。アリガタ取り付け用のブラケットを ソリッドな10mm厚のアルミ板にして対策にしたつもりでしたが、やはりそれでもタワミ傾向が出るようですね。

 タワミは、片加重による架台のタワミとBINOの台座のタワミの合算だと 思いますが、後者の対策としては、ブラケットとベースプレートが作るL型の部分に筋交いを設置するか、タワミ分を見越してL型の角度が少し鋭角に なるようにシムを入れればほぼ解決すると思います。

 ただ、片持ち式はもともと、総合的に軽量で、シンプル、コンパクトが売りのシステムなので、強化対策で重量が増したり構造が複雑化するのであれば、 最終的にはやはり両持ちのフォーク式架台に分がありそうですね。
 搭載機材の下に自由空間が広く確保される片持ち架台の開放感には、確かに大きな魅力はありますが、 EMS-BINOに関する限り、90度対空のメリットにより、通常の両持ちフォークでも 天頂付近の観察に何らの障害もありません。
 実は、この度供給させていただいた目幅調整台座は、 一般用と共通な規格を採用していますので、耳軸部を設置するだけで即、両持ちフォーク架台に対応できるように 配慮しています。      

15cmF5-BINO

1 購入の決め手

 約1年半ほど松本さんのホームページを拝見させていただいていたのですが, 思い切って2007年1月に15㎝F5-BINOを注文しました。このタイミングで お願いしたのは,概ね次の理由です。

 まず,15㎝F5-BINOそのもの評判のすばらしさですが,これは言うまでも ないと思います。次に,私も今年「不惑」の年を迎えるということで,体力や視力 に余裕があるうちに15㎝F5-BINOで存分に観望を楽しみたいと思ったこと です。また,僭越ながら,松本さんの15㎝F5-BINO開発がたいへん高水準に 安定してこられたように感じたからです。さらに,原油高など物価が上がって くる中,松本さんの経営努力で価格が維持されているうちに購入しようと思った 次第です。迷われている方はぜひ参考にしていただき,ご決断下さい。(^_^;) なお,注文してからオプションを決めるに際しては,松本さんからいろいろと 有益かつ適切なアドバイスをいただきました。そのおかげで15㎝F5-BINO そのものにしたことを含めて,私にとってベストな選択ができたと思っており ます。

2 訪問

 EMSの光軸調整のレクチャーを受けるために,宮城県から鳥取市までうかがい ましたが,とても有益で価値ある体験でした。松本さんが「一度は現物を見て調整 方法などのアドバイスを受けられた方がいいですよ」とおっしゃる意味がよくわか りました。EMSを鏡筒からはずしてからとりつけ,光軸調整をするところまで, 手取り足取り丁寧に教えていただきました。また,像が傾いたときにそれを修 正する方法なども教えていただきました。やはり,百聞は一見にしかずです。 おかげさまで,ファーストライトでも光軸調整に手こずることなく,星空を満喫 できました。
 また,開発にまつわる苦労話など興味深いお話をうかがうことができ,大変 楽しいひとときでした。松本さん,完全な文系で素人の私にいろいろとご教示 いただきまして,ありがとうございました。m(_ _)m

3 観望

 私は天体写真はまったくやらず,眼視専門ですし,これまで大口径の望遠鏡 は持ったことがないので(タカハシFS-102のみ所有しています),他と比べて どうこう言える立場にはありません。しかし,15㎝F5-BINOの使いやすさ, すばらしさはファーストライトで実感しました。

 ファーストライトの観望地は仙台市内から車で30分程度のところで,天の川は はっきり見えるのですが,それでも仙台市内の光は気になります。肉眼では 5等星がやっと見える程度です。

 私のものはEWV32㎜と2インチマルチショートバローを備えただけのシステム ですが,夏のメシエ天体,天の川めぐりは息をのむ美しさです。最初にのぞいた ときは,「なんじゃこれー。星がありすぎる!」という感じでした。「宇宙船の窓から 星を見ている」という表現がぴったりです。また,バローを使うとコントラストが 上がり,球状星団のつぶつぶもはっきりしてきて絶景です。クレイフォード接眼 部のなめらかさのおかげでピント合わせも簡単で,シャープで美しい星像を楽し めました。M11,M13,M22,ペルセウス座の二重星団は特にすばらしい眺め でした。M27や干潟星雲などもよく見えましたが,星雲用にフィルターが欲しく なってしまいそうです。(^_^;)

 幅広改造HF経緯台の性能もすばらしいです。ガタは皆無で高度軸の堅さの微 妙な調整も自由自在です。三脚とHF経緯台,15㎝F5-BINOの相性もばっちり で,風が吹いてもほとんど揺れず,安定した観望ができました。 松本さんが勧めてくださったドットファインダーも大変便利で,15㎝F5-BINOの 正立,低倍率と相まって,目的の天体が指差し感覚で簡単に導入できます。 ちょっと暗い天体の場合は5㎝正立ファインダーと併用することでよりスムーズ に導入できます。

 ファーストライトの日はみずがめ座流星群がたくさん飛んでおり,15㎝F5-BIN Oの視野の中で流星を3つほど見る幸運がありました。(^_^)v 流星にも色の違 いがあるものだと思いました。広視界の賜ですね。

4 機動力

 15㎝F5-BINOの機動力もすばらしいと思います。写真のとおり,自宅では 和室に無造作に立てています。三脚の下端には雑誌を置いて畳を傷つけ ないようにしています。先日震度5弱の地震がありましたが,無事にその まま立っていてくれました。HF経緯台の60度加工のおかげです。

 持ち出すときはEMSとアイピースのついたままの鏡筒を自動車の後部座席 にポンと載せ(緩衝材は何も無し),三脚とHF経緯台はトランクにそのまま 入れます。もちろん,安全運転はしますが,普通の振動などは全く気にせず, そのまま運んで,観望地で組み立てればすぐに使えます。15㎝F5-BINO の鏡筒も男性なら1人で簡単に経緯台に載せられます。屈折なので温度 順応に神経質になることもありません。こんなに簡単にすばらしい星空を観 望できるのですから,なまけぐせがつきそうです。(^_^;)

 最近は車の後部座席に積んでおいて,仕事帰りにちょっと郊外に観望に いこうかとたくらんでいます。

5 最後に

 このようにバランスのとれたすばらしい双眼望遠鏡を持てて大変うれしく 思います。最近は天候不順でストレスがたまる日々ですが,晴れ間を ねらってお気軽観望をしたいと思います。

 仙台市では7月に新しい天文台がオープンして,連日多くの市民が天文 台に足を運んでいるようです。素人に毛が生えたくらいの私が言うのも おかしいですが,天文ファンが1人でも増えてくれればいいと願っています。

 松本さん,私の素人的な質問にも丁寧にお答えいただき,また,調整方法 についても懇切丁寧にご教示いただき,ありがとうございました。また, わからないことなどご相談させていただくかも知れませんが,どうぞよろ しくお願い致します。m(_ _)m                              宮城県 S

Comment by Matsumoto/ 管理者のコメント;

 宮城県のSさんより、大変懇切なリポートをいただきました。 また、車でBINOを受け取りに見える方は比較的多いのですが、Sさんは空路でわざわざ出来上がったBINOを見に 来てくださり、BINOは後日宅配便でお送りしました。”初心者”を自認していらっしゃいますが、このご姿勢には感服し、 感謝の気持ちで一杯です。 また、”PROGRESS REPORT(製作情報速報)”もずっと見てくださっていたようで、 この点も、とかく固定観念で捉えやすい老練マニアや一般業界人よりも客観的に見てくださっていたようです。

 振り返りますと、鏡筒が黒かったSCHWARZ150S-BINO(ちなみにschwarzはドイツ語で黒のこと)の第一世代から始まり、 第二、第三、第四世代に至り、さらにフォーカサーをオリジナルの大径クレイフォードにし、目幅調整を鏡筒固定のヘリコイド 目幅調整方式から、IPDクレイフォード方式へと進化して来ました。BINOに有害なイメージシフトの要素を 一つずつ潰して来たわけで、ここに至って全ての阻害要因を排除できたわけです。

 Sさんには、観測リポートもしっかり書いていただきました。分かりやすい言葉でご感想を飾らずに的確に書いてくださっています。 マニアも古参になるほど光学系の机上データにうるさくなるという一般的傾向があるのですが、15cmF5アクロマートというスペック の従来的な常識を覆すものが、この15cmF5-BINOにはあります。製作者が言うのでは説得力に乏しいので、 こうしてユーザーの方が証言してくださるのは大変ありがたいことです。

 私の地元の友人も、15cmアポの単体鏡筒は別に持ちながら、この数年はもっぱら15cmF5BINOでのdeep-skyにはまっていて、前者の アポ鏡筒はたまに惑星や二重星観測をされる時しか出番がないそうです。 主観的な表現ではありますが、ざっと、

従来の(短焦点アクロマートに対する)一般常識
                  < 15cmF5(アクロ)単体鏡筒
                           << 15cmF5BINO


  ということで、最後の(<<)は体感して初めて理解できる部分だということです。

 Sさん、素晴らしいリポートをありがとうございました。 またBINOを作る元気が湧いて来ました。

FS102-BINO

FS102-BINO(最新型)

 マツモトさんにBINOの製作を依頼し、ゴールデンウィーク明けに完成して新型台座に乗った、 FS-102BINO のすばらしさを紹介させていただきます。このBINOを受け取ってまだ1ヵ 月半ですが、 特に新型台座の使い勝手の良さ・完成度の高さを未熟者ですが報告いたします。

導入経緯

 私は小学生の頃、ちょうどアポロが月に着陸した頃に初めて望遠鏡を買ってもらい、その後10年くらいは 一生懸命に星を追いかけておりましたが、いつの間にか星を見なくなり忘れておりました。
 ところが5年位前にふと本屋で天文ガイドを手に取り投稿写真を見ると「なんだこれっ!!」。望遠鏡の広 告をみても「自動導入???」驚きのあまり「おもしろそう」とこの世界に戻ってきてしまいました。 それからは機材を買い・買い替えを繰り返し、25センチニュートンと自動導入赤道儀にある程度満足し、 落ち着いたつもりでした。

 しかし、現在の観望仲間と出会い、またまた衝撃を受けてしまいました。 その仲間たちの30~40センチドブソニアンは銀河や球状星団が写真のように見え、ついには50センチまで 登場し銀河の腕がぐるぐる見えるのには卒倒しそうでした。

 その仲間の1人に12センチの双眼望遠鏡を使っていらっしゃる方に覗かせてもらい、大口径とは違う「楽に 見る楽しさ」を教えてもらいました。そしておおたさんのCAPRI-BINOを覗かせていただき、私の腹は決まり ました「手元に1本あるFS-102を生かしてBINOをつくってもらおう」と。

 もう1本を譲っていただける方をスターベースさんでご紹介いただき、早速マツモトさんとメールで打ち合 わせをさせていただき、「65φバレルであとはおまかせで」なんていい加減な依頼をしてしまいました。

 ゴールデンウィークごろの製作状況速報で進行具合が分かるようになりマツモトさんから「新型の台座にし ますのですごく良いですよ」とのご連絡をいただき、完成品は「目幅調整機構は、今まで製作して来た中で も最高の滑らかさと操作性で、もちろん最高の剛性も兼ね備えています。」とのことで、早速鳥取へ引き取りに向かいました。 その場で基本的な調整法や使い方を2時間ほど習い、帰宅後一度ばらして組み上げ構造を理解しました。

実際に手にするまでは、調整が難しいとか、光軸はどうするんだろうといろいろ心配をしておりましたが、 「なにも難しいことはありません」「案ずるより生むが易し」そんな感じでした。

新型台座

 今回マツモトさんが開発された目幅調整スライドユニットの使い勝手が「誰にでも簡単に扱えて」すこぶる 良いものです。
 写真でもわかるかと思いますが、クレイフォード微動の要領で5kg強の鏡筒が実に滑らかにスライドし、 まさに最高の滑らかさと操作性で、最高の剛性も兼ね備えたというのが良く分かりました。そしてその 微動ハンドルが接眼側と対物側両方にあり、接眼側は自分で調整するときに使い、対物側のハンドルは例え ば子供が覗いているときに楽に調整をしてあげることができます。この機構は微妙な目幅の調整に絶大な 威力を発揮します。

 これは常に現状に満足することなく研究開発に時間をかけておられた成果が生んだものだと思います。 耳軸も真鍮製のものでバランスにこそ敏感ですが、これもバックラッシュもなく非常に使いやすいもの です。私の場合はバランス用に手首・足首用のトレーニングウエイトの500gと1kgのものを用意し ました。

アイピースと木箱

アイピースはハイペリオン 3.5mm 234倍 実視界0.29度
        ミードUWA    6.7mm 122倍 実視界0.67度
        イーソス    13mm  63倍 実視界1.59度
          EWO     30mm  27倍 実視界2.52度

 これらのアイピースでピント位置も問題はありませんでした。 ただ、ハイペリオンを2インチで使おうとすると防塵フィルターにあたってしまうので、31.7mm で使わなければなりません。車の積み下ろしや室内の移動の事故を考え、木箱を桐で作りました。 軽い箱ですが、深く考えずに作ってしまい、非常に持ち運びにくい大きさになってしまいました。

 天気に恵まれず暗い空に出会えておりませんので、早く夏の天の川あたりや普段あまり見ることがない月 を見てみたいと思います。 仲間からも「BINOさえ持ってくれば他の機材はもってこなくていいから」とも言われております。

 記念すべき新型1号機を私にいただけたことを感謝し、一生ものとして自分で手を加えつつ大切に使ってい きます。ありがとうございました。

                                  そら

Comment by Matsumoto/ 管理者のコメント;

「そら」さんはBINO製作を思い立たれてから、かなり早いテンポでプランニングの決定から素材 鏡筒の確保、当方への発注をこなされ、遠路にもかかわらず、完成したBINOを当方まで受け取りにお見えいただきました。

 ご注文いただいた頃、ちょうど中小口径用のシステムの設計を根本的に洗い直していたところで、多くの 方を随分とお待たせしてしまった主因にもなったのですが、こうして、リポートの形で、製作者の意図を 完璧に代弁していただくと、製作の苦労が完全に報われる気持ちがいたします。

 新型のスライド台座は、中小口径のBINOの基本構造を構成する部分です。旧型の自由スライド、クランプ方式から、 微動送り機構へと進化しました。原理は極めて単純で、クレイフォード・フォーカサーと酷似しています。 コストや重量が肥大しないことにも配慮し、成功を納めたと思っています。 依頼者の方々のニーズは 多岐に渡りますので、汎用性に富ませることも重視し、構成パーツ(のネジ穴配置等)は極力対称性を 持たせ、プレートパーツは都合によってリバーシブルに再構築できるようにしています。逆に、旧型でこだわった プレートパーツの角のアール加工は、機能に 関係ないので、生産性(納期短縮)を優先させるために割愛し、直線的な トリミングにしました。そうした製作者の隠れた腐心に ついて、「そら」さんがユーザーとして完璧に理解して発表してくださり、大変喜んでいます。

 今回は、「そら」さんには、新型スライド台座のメカについて重点的に発表していただきましたが、 梅雨が明けて夏のdeep-skyを堪能されましたら、またぜひ観望リポートをお願いしたいと思います。  「そら」さん、すばらしいリポートを本当にありがとうございました。