TOA130-BINO(Newest Version)

Mr.Takemori in Kanagawa Pref.

 一昨日は 忙しい中 お相手していただきどうもありがとうございました。 (ようやくネットの使える環境に戻ってきました)

昨日(日曜日)は原村の山小屋に到着すると よく晴れていたので 早速 Bino を組み立てて操作のおさらいをしてみました。

 EWVで星を見ると最初から左右の像が一致しており、少しアイピースから 目を離してみても ほぼ一致しているようで、再現性の高さに驚きました。

 月の出る時刻になっていたので、9mmのアイピースで、主に月と二重星 を見ることにしました。γAnd を導入したところ 正に天上の宝石ともい うべき美しさで、これはいままで体験したことのないい感覚です。αGem、γLeo、 それに月面もクリアかつコントラスト、色彩ともすばらしいも ので、銀ミラー効果か、鏡2枚が介在している感じは全くありません でした。

Comment by Matsumoto/ 管理者のコメント;

 7日に当方でTOA130-BINOをお引渡しした竹森様より、神速の第一報をいただきました、 まだ正式なリポートではないということでしたが、お願いして、いただいたメールの該当部分をその まま掲載させていただきました。 関東からこちらまで引き取りに見えるたのは、大変な労力だったかと思いますが、 お越しくださる方は、その努力に見合う収穫を持ってお帰りになると確信しています。  鏡筒単体着脱式のBINOを、最初から完璧に使いこなしてくださって、大変嬉しく思います。 この他、水平方向のバックラッシュが認められるとのご指摘をいただきましたので、急遽、ベアリングを 手配させていただいています。TOA鏡筒は、やはりトータルに組み立てた重量は半端でないため、水平回転軸にかかるアキシアル加重も 半端でなく、鏡筒径もピラー径も太く、天頂まで鏡筒を向けるために、重心のシフト量を大きくしたのが原因のようですが、改善の要素が 見付かる良いきっかけになりました。 (目下、新型中軸架台は一台ごとに改善を重ねております。) 架台の改善が終わり、本格的なファーストライトをされましたら、またぜひリポートをお願いします。  この度は、タイムリーなご報告をありがとうございました。

12cmF5-BINO

 さて、去る7月11日に、12cmF5BINOを受け取りにお店にお邪魔して以来、天候不順と月明かり のせいで、なかなかBINOをまともに振り回せず悶々としていました。 が、ようやく高気圧の張り出し域に スッポリと覆われて、先週8月15日に、自宅から比較的アクセスしやすい南房総の山中へ遠征してきま した。

 本当に待ちに待った日です。目的地への道中、お盆中でもあり帰省や行楽の渋滞も覚悟していまし たが、以外やスムースに流れました。夜行性の趣味にもメリットはあるようです。海ほたる方面の東京圏 の大光害域を背に南下してゆくと、右手にさそりのS字が傾きかけています。急がねば。しかし、後部シ ートには主役のBINOを寝かせているので、レーサー気分でつづら折れの山道を駆け上がるわけにはいきま せん。ここは、はやる気持ちを抑えて、粛々と歩を進めます。

 開放した車窓からは昼間の暑さは影を潜め、どこはかとなく秋の気配が忍び寄ります。到着するやいなや車から飛び出し空を見上げると、満天の星空 を天の川がサラサラと流れています。思わずこの地の山ノ神に手を合わせてお礼をつぶやきました。この 星見場は稜線づたいを通る林道の待避所的な平場で、昨年より時折足を運びます。
 首都圏の光害の影響はかなりありますが、 朝、晴れると浦賀水道、三浦半島越しに秀峰富士が拝め、地理的な開発の困難さが、 周囲の自然を色濃く残しています。また、江戸時代の南総里美八犬伝のゆかりの地でもあります。さらに 安房という名は、神武天皇の御世に四国阿波から派生したもので、古代史を紐解いてゆくと、宇宙の成り立 ちまで到るそうです。かの地、鳥取で産声をあげたBINOに、星空を案内してもらうのにふさわしい、氣の 良い土地です。

 わくわくしながらも、あっけなくBINOを組上げ、光軸と眼幅を微調整。鼻歌交じりで誰で もいたって簡単。眼幅調整のクレイフォードのつまみをゆっくりと廻し、左右の視野円が合致したその時、 単眼時代の観望スタイルは粉々に砕け散りました。
 もちろん、双眼鏡での星空散歩は好きでした。何とい いましょうか、倍率による迫力、視野全体の透明感、迫力は50ccの原付スクーターとナナハンぐらいの 違いがあります。透明感は、車を運転中、雨がフロントガラスを濡らし始めたときと、ワイパーでさっと 拭い去った直後ぐらいの違いがあります。一般的な7倍50mmなどのスペックを持つ双眼鏡でさえこの 差ですから、単眼の望遠鏡ではいわずもがなです。誇大広告と公正取引委員会から怒られそうですが、数字 には現われない体感のインパクトに偽りはありません。こうなると、空の何処に眼を向けても、大満足 です。

 かつて、マクルーハンという学者が 「Media is message] なる言葉をメディア界に投げかけまし た。これは、個々人が情報をどのように解釈するかは、その内容よりも伝えるメディアそのものに大きく 影響を受ける。というものだったと記憶します。BINOにはメディア進化の可能性が大いにありますよ。 今、林の輪郭にアンタレスとM4が沈みかけています。急ぎ向けてみます。ターゲットを導入する際の操作 性、安定感、全体のバランス、どれも申し分なしです。長く付き合う道具とは、かくありたいものです。

 WS30mm 20倍 4゜強、M4が中心近くまで星々に分離されています。妖光を放つアンタレスと同一視野で の光景は絶品です。ここから、銀河に沿ってゆっくりと散策してゆきましょう。ファインダーは要りま せん。ただ、行きたいほうへ向ければよいのです。大抵、一つや二つ小さい散開星団や散光星雲が視野に ちりばめられています。背景には微光星の海原が拡がります。時折、有名どころの星雲星団に立ち寄る 際、視野の端で捉えてから中心へといざなうこのひと時がたまらずスリリングです。静止像は勿論の事、 視線を流している最中の動きのある光景も魅力です。このような感覚、楽しみは単眼では気づきません でした。旅人が旅のプロセスにこそ重きを置くような感覚です。

 夢中で操作ハンドルを握り締め ていると、あっという間に時間は過ぎ、天頂付近を飛翔する白鳥付近が視野に入ってきました。 この位置でもBINOの見易さにかげりは一切ありません。夥しい数の星の海をかきわけて、網状レムナント のある辺りへと進行します。もう、何も言えましぇん。一度、他人の30cmドブソニアンにOⅢ フィルターを通してハの字の東側のアップを見せていただき、いたく感動したこともありました。
 今、眼前に広がる漆黒の背景には、ハの字の両方がその独特な形状と濃淡をあらわに鎮座しています。 ノーフィルターです。何故か深呼吸をせずにはいられません。 ...。夜も更け東の空には雲越しに 下弦の月が山肌を照らし始めています。足早に、ケフェウス、カシオペア、ペルセウスと天の川を辿ること にします。低空の層雲が空を覆ってきました。足元ではコオロギが遠慮気味に独唱しています。残念ながら お開きのようです。

 そうそう、ボーグの60EDで夏の散光星雲を撮る予定でしたが、それどころではあり ませんでした。
 松本さん、この上ない素敵な道具をこの世に生み出していただき、ありがとうございました。 良い道具には、優れたデザインや高い機能性、利便性などの土台に、製作者の高次の志が脈々と息づい ています。利益最優先の大量生産により日常生活に流布する、さまざまな工業製品や農産物等々にもこう した高い志の復権が欲しいものです。
 今後もご健勝でわれわれ星見人を刺激し続けてください。私も 微力ながら、一人でも多くの人にこのBINOで宇宙の美しさを紹介できたらと思い、ペンを 置きます。

              サルスベリの紅白の花が満開の頃      玉川

Comment by Matsumoto/ 管理者のコメント;

 製作者冥利に尽きるリポートをいただきました。今までにいただいている数々の リポートもそれぞれに個性があって素晴らしいものばかりですが、久しぶりに感性にストレート に浸透するリポートに出会った気がいたします。

 単体の屈折式天体望遠鏡のランク表記に、(単レンズはもうあり得ませんね)アクロマート、 セミアポクロマート、2枚玉アポクロマート、3枚玉アポクロマートと、かなりのバリエーション があるわけですが、EMS-BINOの真価は、そういうランクの比較の次元の外にあるということを、 玉川さんが非常に分かりやすく説明してくださいました。

 もちろん、素材鏡筒を選べば、さらに素晴らしいことは事実ですが、決定的な部分はEMSが持つ 基本原理のシンプルさによる勝利に他ならないという事実が、昨今の鏡筒の高級指向の陰でかすんでしま うことに少々の危機感を持っておりましたので、この度は非常に良いタイミングで、私たちが原点を 見失わないように一喝いただいた気がするわけです。

 玉川さんの初対面の印象は、”天文マニア”のステレオタイプからはほど遠い、スポーツマン 的な立派な体躯の持ち主だったことですが、もっと忘れられないのが、『合理的な命や道具の裏には シンプルな数学の定理が隠されている。』という信念を深く共有する方だったことです。
 私の拙文である、『人類の至宝』もよくお読みくださっていて、玉川さんはその日、大変興味深い、 フィボナッチ数列(曲線)の話をしてくださり、一緒に大いに盛り上がりました。 5億年を生き抜いたオウム貝の巻き線等がこの曲線と合致するのだそうで、長年繁栄して来た合理的 な命や使い道具には、合理的でシンプルな数学の定理が隠されているということを再確認した思いでした。 EMSの種明かし

 ただ、数年前、箱型のEMS-Sユーザーの方が同新型を追加購入された際( その方はネットをしない方で新型の画像を見ていなかった)、「今度はサザエみないな奇妙な形だ・・・」 と不評だったことも印象に残っています。^^;この、サザエの形^^;を具現するために数百万円の投資をし た意義は、この方には理解できなかったわけです。
 ですから尚更、信念を心底共有できる方との出会いは貴重であり、何物にも替え難いわけです。

 蛇足を重ねて、せっかくの素晴らしいリポートを spoil してはなりませんので、ここらで締めくくります。

 また、追加リポートを楽しみにしております。

TMB130-BINO

 マツモトさんに製作を依頼したTMB130-Bino(シグニチャーシリーズ口径130mm/F7アポクロマート 鏡筒)が 7月に完成し、やっと星空を見る機会に恵まれました。 そこで、導入の経緯と観望しての印象について、報告させていただきます。

1 導入の経緯

 仲間が持っていたSky90-BINOで見せてもらったのが、Binoとの最初の出会いです。そのときに 見せてもらったM31が、はるか遠くにあるはずなのに、手前に浮き上がっているように見え、その不 思議な光景がずっと頭から離れませんでした。そこで、どうしてもBinoが欲しくなり4年前にマツ モトさんから12cmBinoを購入しました。

 Binoで星空を見ていると、時を忘れてしまいます。 仲間に見せると、だれもがじっと見入ってしまいます。そして、Binoを見て感動した仲間が、次々 とBinoを購入しました。FS102・CAPRI-102ED・ZS110と気がつくと購入した人はみなアポ鏡筒でし た。低倍率で見る限り12cmBinoで見る星空は決して10cmクラスのアポBinoに負けていません。 それどころか、淡い星雲は12cmの方がよく見えました。しかし、アポBinoで見る星像はシャープで すし、月や惑星の周りには全く色がつきません。もう少し大きい口径のアポで見たら、どんなにすばら しいかと思うとアポBinoが欲しくなり、その気持ちを抑えることができなくなってしまいました。

 アポ鏡筒をBinoにするために、まず考えたことは口径と重さでした。口径は12cmよりも大きく、 重さは21kgを超えないことが条件でした。TOA130Sを所有しておりましたので、これでBinoを作って もらおうかとも思いましたが、片方だけで10.5kgもあり、完成すれば21kgを超えることが予想されます。 また、150LD-Binoを使っておられる方々のレポートを読ませてもらうと、とても大きくて私には無理だ と思いました。TOAをBinoにすることはあきらめました。

 そんなある日、TMBシグニチャーシリーズ口径130mm/F7アポクロマート鏡筒が中古で出ているのを見て、 大きさといい、重さといい、Binoにするにはもってこいだと思い、すぐに購入しました。しかし、 もう一本同じものがなければBinoはできません。そこで、私が所有している機材をすべて手放して 新品をもう一本買うことにしました。当然、TOA130も手放すつもりでしたが、仲間から思い留まるよう に言われ、この鏡筒だけは手元に置いておくことにしました。30cmドブも28cmシュミカセも惜しいとは 思いましたが、両目で見る宇宙の魅力には勝てませんでした。

 さて、国際光器さんにもう一本注文してから3か月が経ち、やっと2本揃いました。そして、最初の TMBを購入してから待つこと4ヶ月。やっと待望のTMB13cmBinoが手に入りました。

2 観望の印象  Binoの取り扱いは慣れているつもりでも、今回のBinoは12cmのときとはその構造が違うた め、マツモトさんに直接お会いして、調整の仕方を教えていただくことにしました。

  マツモトさんには丁寧で分かりやすく説明していただき、そのおかげでファーストライトの折は何 も心配することなく、扱うことができました。ただ、どのBinoでもそうですが、アイピースを交換 するたびに、EMS調整ノブで光軸を補正しなくてはいけないのがちょっと面倒ではあります。

 今年の夏は、天候に恵まれず、せっかく出来上がったのに覗く機会が無くてイライラしていまし た。先月の終わりに一か八かでいつも行くG村へ行ってみました。
 すると、上弦の月が雲間から見えてい ました。逸る心を抑えつつ、筒を月に向けました。月の周りには全く色がついていません。クレーター のエッジも立っています。ときどき、月の前を雲が流れていくのですが、これがまたすばらしい眺めで した。明らかに12cmBinoとは違います。TOAに双眼装置を付けて見たのとも違います。明るさと いい、シャープさといい“アポクロマート双眼望遠鏡”で見る月はすばらしかったです。
 次に、上って たばかりの木星を見てみました。笠井のバローレンズ(2インチマルチショートバロー2X;マツモト短 縮改造1.75×)を取り付けイーソス8mmで約200倍で見ました。12cmとは1cmしか口径が違わな のに、とても眩しいのには驚きました。そして、模様が濃いのにも感動しました。色はニュートン反 射(15cmF9・鏡は足立製で38年前に自作)で見たのと同じで、とても綺麗でした。ピントを合 わせるときは振動がありますが、それもすぐに収まり、見かけ視界100度の中でじっくりと見ること ができました。これなら、赤道儀でなくても十分観望することができます。その他に雲間からM13を 見ました。これも12cmよりもはっきりと見ることができ、端まで星が分離して見えました。

 その後もG村へ持っては行くのですが、いつも曇りでなかなか見られませんでした。しかし、16日の 夜は運よく一時間程度見ることができました。 我慢強く晴れるのを待っておりますと、願いが叶ったの か、東の空から晴れ始めてきました。さっそく、M31、M33、hχ、M15といった秋のメジャーどころを観 しました。M31は何度見てもすばらしい眺めです。腕がどこまで伸びているのか、残念ながらコンディシ ョンが悪く確認はできませんでしたが、視野いっぱいに広がるその姿は圧巻です。また、hχも息を呑む 美しさでしばし見とれてしまいました。
 そのうちに、雲がとれはじめ夏の星も見えてきましたので、 M13、M57、M27とたてつづけに見ることができました。ただ、すぐにまた雲が出てきて、しばし休戦。 再び、雲がきれてきたところでもう一度、秋の空を流していると、今度は濃い霧が立ち込めてきて、 全く辺りが見えなくなってしまいました。さすがに、今度はいつ晴れるか分からないので、帰宅する ことになりました。まだ消化不良ですが、とりあえずご報告させていただきました。

 最後に、今、国際光器さんの松本さんにビクセンのジュラポール三脚(ニューアトラクス赤道儀 2000PC用)にHF経緯台を取り付けるアダプターを作っていただいております。これが完成す ると、もっと安定して見ることができるのではないかと期待しております。

                    星好き先生

Comment by Matsumoto/ 管理者のコメント;

”星好き先生”は、今回も奥さまとご一緒に、出来上がったBINOとの対面に わざわざ遠路をお越しくださいました。

 前回、12cmF5-BINOにご対面いただいてから早4年とは、月日の早さに驚かされます。 前回は奥さまが、闘病中だった犬のクーに優しく声をかけてくださったのが印象に残っています。 星好き先生には、12cmF5-BINOをしっかりと稼動させてくださり、多くの方にEMS-BINO入門の きっかけを与えていただき、さらにまたこの度、ハイエンドのBINOを作らせていただいたことに、深く 感謝しております。

 このTMB(Signature)130と、すでに販売中止になっている150LD鏡筒辺りが、1体構造のBINO の重量的な限界ラインに位置するようです。 星好き先生より今回のBINO製作の依頼をお受けした 時点では、大型の中軸式の架台のアイデアがまだ煮詰まっておらず、無難なHFフォーク式でお作りしました。

 リポート本文中で、「木星の色が過去に見たニュートン反射の色・・・」と 肯定的にご評価くださり、大変光栄です。
 それは一つには、色収差が非常に少ないTMB鏡筒と プリズムを通さないEMSとのコラボレーションの結果でもあるのですが、望遠鏡やEMSを通して 見える”色”について、最近衝撃的な体験をし、EMSのさらなる向上に着手しているところでございます。

EMS-ULTIMA coming soon

EMS-ULTIMA
Evolution from aluminum to Silver

EMS-ULTIMA, equipped with enhanced silver coated mirrors, is coming soon. The graph above shows its extraordinary reflectivity.
Dark blue line shows the relfectivity of one reflection, and light blue line shows that of two times reflectons. Note that the scale of the bottom of table is not “zero”, but “75 percent”.

Now that EMS has achieved not only the diffraction limited resolution but also the practically total reflection of the incoming light, there will be no reason even for the most conservative users to dispense with EMS in their visual observation.
I believe it declares the advent of the new age of visual Telescopes.

It has been well known that Silver inherently has very high reflectivity through the visible spectrum except for the violet. But at the same time, it is also widely known that Silver degrades rapidly. So a Silver coating has not yet replaced aluminum in spite of its attractive features.

特殊増反射銀コート使用のEMS-ULTIMA(EMS-アルティマ)がもうすぐ誕生します。 上のグラフは、この度EMSへの応用に成功した特殊銀コートの反射率特性です。青のラインが 1回反射の曲線、水色が2回反射後の曲線です。どちらも入射角は60度の場合です。表枠のボトムの スケールはゼロ(0)でなく、75%であることにご注意ください。驚異的な反射率を達成していることが お分かりになると思います。

これにより、EMSは、望遠鏡の解像度を極限まで引き出すのみならず、明るさの最終的な利得についても 実質上の全反射をほぼ達成したと言えます。このことは、未だに倒立像や裏像に固執される保守的なマニアで さえも、EMSを排除する根拠を失うものであり、眼視用の望遠鏡のあり方に於ける新時代の到来を宣言するものである と確信します。

金属としての銀が紫付近を除けば、可視光線(及び赤外まで)の反射率が理想的に高いことは古くから 知られていますが、同時に、その面が化学的に耐久性に乏しいことも広く知られています。 そのため、 銀コートはアルミコートを駆逐するには、現在までには至っていません。

Not yet, but not “not from now on”.
Now, EMS-ULTIMA is breaking the age long stereotype as a past one. Recently developed enhanced silver coating has achieved super high reflectivity through the total visible spectrum including violet and enough durability allowing the continual use in the air at the same time, and I have developed the way to realize it on the mirror of EMS overcoming many difficulties.
The average reflectivity through the visible spectrum per one mirror is as high as 98.5 percent, and 97 percent of the incoming light is secured even after 2 times of reflections.
Following is the history and process I have traced before reaching this ultimate goal.

しかし、それは”現在までは・・”という意味であり、”これからも無理・・・”という意味ではありません。 EMS-ULTIMA(アルティマ)が完成したら、上記の常識は直ちに覆されて過去のものになるわけです。 この度開発された増反射銀コートは、紫を含む全可視域で極めて高い反射率を達成し、同時に過酷な環境 テストにパスした、非常に画期的なものなのです。その蒸着を具体的にEMSのミラーに応用するには、また それなりの困難もありましたが、それらも全てクリヤーしました。

可視光線全域の平均反射率=98.5%で、2回反射後でも97%を達成しています。 以下に、この究極の コートを選択するに至った経緯をご説明します。

Attaining erect image at the right angle viewing with only two reflections itself is unexcelled feature of the EMS that cannot be substituted by any other devices. Judging from the least possible number of the reflection,”2″ of EMS, compared with the traditional devices of 4 or 6 times reflections, originally I did not think it urgent to additionally improve the reflectivity of the mirrors. So, I had chosen the traditional mirror of the highest visible reflectivity with time proven durability, among those that were available at that time.
The answer was “enhanced aluminum coating” that is the aluminum coating over coated by some layers of dielectric to boost the reflectivity of the normal aluminum and at the same time to enhance the surface durability.

2回反射のみ(しかもノンダハ)で90度対空の正立像を達成しているEMSの特長は、他のいかなる手段 でも置き換えることは出来ません。 従来の手段で同じことをしようとすれば、4回~6回の反射を要求するので、EMSのミラーの反射率を特に 上げることの性急性を当初は感じていませんでした。 従って、当時、長年の実績もあって、性能が 安定して反射率も高い、増反射アルミ蒸着を選んだわけです。増反射アルミというのは、通常のアルミ蒸着の 上に誘電体膜をかけて、反射率のダメ押しと表面強化を兼ねたものです。

Dielectric coating is becoming popular recently for its alleged remarkable reflectivity. But, regrettably, recent investigations showed that it is not suited for the purpose of higher index-angle, such as 60 degrees of the EMS, and thicker light cone of brighter optics of F/5 or shorter that should contain rays of wide range in index-angles. Dielectric coating is very critical about index-angles and causes unwelcome polarization, and we should know that the perfect reflection is given only under the optimum condition originally intended in the plan. Even by customizing the layer thickness and increasing the number of coatings up to hundreds layers to overcome the degradation at the higher index-angle, unwelcome byproduct effect will balance out the merit of its original super high reflectivity, along with the inflation of the cost.
Concretely speaking, there is a tendency of shortening the width of the peak plateau of the reflectivity, peak shifting to the shorter wavelength direction (violet shift), and cause drastic down turn at the longer wavelength or the counterpart.

誘電体多層膜ミラーが、「驚異的に高い反射率・・」というキャッチと共に、最近人気が 高まっていますが、残念なことに、EMSのような高入射角度(60度前後)の光学系や、F5程度以下の 明るい光学系には不向きであることが分かって来ました。後者も、いろんな角度から鏡面に光線が入射 するからで、やはり誘電体膜の入射角依存性が高いことがその理由です。

誘電体多層膜は、設計意図に合致して使わないと、その能力が目一杯に発揮されないのです。むしろ、誘電体多層膜 は、特定の波長だけを反射させるレーザー関係の素子としてその本領を発揮するようで、ブロードバンド の要求が高いほど膜数が増え、同時に弊害も生じます。 具体的には、入射角が大きいほど、また反射域を広く取るほど困難になり、膜数が100層を越えたりして、 コストも非現実的に肥大し、強い偏光等の副産物も生じます。

I have done some experiments on three kinds of coatings to check which is the most excellent and suitable choice for my purpose. Seeing the results of the experiments will help you understand why I have chosen the enhanced silver coating as the ultimate one for my EMS.

私は、1.増反射アルミ(当方で使用している物)、2.誘電体多層膜、3.増反射銀コート、の 3種類のペアサンプルを使用していくつかの実験をしてみました。 その結果を見ていただけば、 私がなぜ増反射銀コートを究極の物として選んだかがご理解いただけるものと思います。

Test 1: multiple reflection experiment-1;

If you hold a pair of mirrors in such a way that two surfaces closely face each other, and obliquely poke into the gap, you will see the endless line of your eyes of multiple reflections.

テスト1:多重反射実験1;

2枚の同種類のミラーを近接して対面させ、隙間を斜めに覗くと、あなたの眼の連続反射像を 観察することが出来ます。それは、反射のしくみから、1,3,5,・・・と奇数回でカウントアップ して行きます。

enhanced aluminum

enhanced silver

The largest image of the camera lens is the direct, number 1, reflection image and next to left will count up to 5,7,9,….times reflected images. Left photo is enhanced aluminum and the right is enhanced silver. いずれの写真も、右端の大きなカメラレンズが1回反射の像で、3回反射の像はどちらかのミラー の陰になって撮影できず、5回反射以降の像が写っています。写真に番号を振りました。左に行くほど 反射回数が増えます。 可視光線平均としては95%の高反射率を誇る増反射アルミであっても、 赤い光線の落ち込みによって、カラーバランスがどんどん崩れて行くのが顕著です。 また、デジカメのレンズ部だけでなく、ミラーを保持する私の指先も写っていますが、 銀ミラーでは、その健康な血色が20回反射を超えてもまったく褪せないことは驚きに値します。

Test2: multiple reflection experiment-2;

Two mirrors faced to each other in such a way that forward end touch each other like a book slightly opened. The set stayed on my visiting card. In this experiment, dielectric one showed worst in contrast, though brightness was rather good. (direct image is marked by a red circle.)

テスト2:多重反射実験2;

矩形の(アルミだけは楕円形)ミラーをブック型にわずか開いたペアを、私の名刺の上に置きました。 いずれの写真も、赤い印がダイレクト(無反射)像です。この実験では、反射率の高さでは 銀と同等だった誘電体多層膜の像のコントラストが極端に悪いのが印象的でした。(紗がかかった見え方)

enhanced aluminum

dielectric

enhanced silver

Test3:transparency test on dielectric mirror;
テスト3:誘電体多層膜の透過テスト;

diode key-holder light

passing through dielectric mirror

You can even see through fluorescent tube

I found rays passing through dielectric coating. If it reflects 98 percent of the incoming light, 2 percent of the light seems to go through it. I thought it very unwelcome feature when I aim at the superb image contrast. The photo witnesses the fact of the diode flashlight passing through the dielectric mirror.

何気なく誘電体多層膜ミラーを屋内からかざして屋外を見たら、明るい屋外の景色が透けて見えたので 仰天しました。ミラーを大きく傾けた際に顕著であり、視線に垂直にしたら外の景色が見えなくなったので、入射角 依存の関係で仕方ないのだろうと思いましたが、ダイオードライトで試したら、垂直でも完全に光を 通していることが分かりました。先の実験でのコントラストの低下と関係があるかも分かりません。

蛍光管も透けて見えます。例えば、誘電体多層膜ミラーの場合は、98%反射したとすると、どうやら2%の光は ほぼ透過しているようです。かすかな迷光を嫌って遮光シートを貼るほどの天体望遠鏡の使用目的に対し、 わずかでも光が漏れることは気持ちの良いものではありません。

Comparison of Silver and aluminum Coatings

銀とアルミの比較

comparison of reflectivities

From top to bottom, dark blue line represents one reflection by enhanced silver, light blue that of two reflections, red line one reflection by enhanced aluminum, green line that of two reflections.

You will find not only the extraordinary high reflectivity of the enhanced silver, but also the remarkable flatness of the line. Through these experiments, I have studied the fact that the flatness of the line is as important as the highness of it.

(No image processing has been done on the above photos of experiments except for trimming. And I must add that the silver sample mirrors were almost two years old since deposition at the experiment.)

グラフは、上から、青が1回反射の増反射銀、水色が同2回反射後、赤が1回反射の増反射アルミ、緑が 同2回反射後です。

増反射銀は、単に反射率が高いだけでなく、曲線が極めてフラットであることに気付かれたと思います。 この一連の実験から、私は曲線のフラットさが、その高さと同じくらいに重要であることを知りました。中央(緑付近)が 極端に突出した比視感度曲線が有名ですが、視感度が低い領域は重要でないというのは逆で、そうであるからこそ、 強い刺激を眼に入れてやらないといけないようです。

それと、私たちはミラーの反射率について、どうしても望遠鏡メーカーや販売店の公称値を 鵜呑みにする傾向がありますが、このような簡単な実験により、かなり正確に実際を検証することが出来ました。
たとえば、反射率99%と言っても、反射率曲線のピークや視感度のピークに於ける数値を言っている場合や、 可視域全体の平均と言っても、可視域の幅の定義の仕方で、その表面的な成績は随分と異なるものになります。 まして、入射角依存のことなどは全く認識されていないのが通例のようです。
それと、何よりも大切なことは、単なる数値では表しにくい要素こそがより重要であるということです。 いくら明るくてもコントラストが悪くては淡い対象を 認識できないわけで、高いコントラストと両立した上での高反射率が求められるわけです。  正直申しまして、当初は、現在まで使用して来たアルミ増反射以上の物を他のミラーに認めたくない気持ちもありましたが、 1回反射の段階ですでに圧倒的に鮮やかな自分の顔色を映す銀ミラーに強い衝撃を受け、今まで 嘘の色を見て来たことに気付かされたわけです。
この度は、先入観を捨てていろんなミラーを実際に試してみたことで、究極の物に出会えたことを大変幸せに思っています。

(実験写真は、どれもトリミング以外の画像処理は一切やっておりません。 また、 実験の時点で、サンプルの銀ミラーは蒸着からすでに、ほぼ2年経過していたことも付け加えておきます。)

Acknowledgement

I musn’t forget to extend my sincerest appreciaton to some of my friends who have assisted me devotedly. They have given me a lot of information about the silver coating and even have done durability experiments.
Above all, their encouragement helped me a lot to keep up going wih this difficult project.

謝辞

特殊銀ミラーのEMSへの実現に関し、数名のEMSユーザーかつ友人の方々には、貴重な情報のご提供 や、ミラーの耐久性テスト等で大変お世話になりました。 また特に、心よりのお励ましをいただいたことで、 このプロジェクトを最後まで諦めないで続けられたことに、この場を借りて深くお礼申し上げます。(2009年8月4日)

Durability test on the Silver Coating

My friend in heaven

One of my dearest friend passed away on the morning of 17th that happened to be the day of my new EMS housing planned to be casted for the first lot.

She was so amazing that I had never heard of her complaining of her health despite that she has had cancer for as long as ten years.

I have just come home from her funeral carried out by Christian style.

The preach of the minister was,
JOB: 19-25 to 27;
PSALM: 23-1 TO 6.

We sang number 189,LITTLE BROWN CHURCH that she liked to sing.

かけがえのない友を失いました。

彼女が癌をかかえていたことを知ったのはほんの最近なのに、喪主の挨拶から、10年も闘病しておられたことを 知りました。

市民運動の戦友でもあった彼女の知力と行動力は半端でなく、健康上の愚痴など、一度も彼女の口から聞いた ことはありませんでした。大きな仕事をしていた夫を支えながら6人の子供を育て上げた、見事な生き様でした。

わたしが初めて世の中と出会ったとき

いつかこの日が来ることは覚悟していました。 メールが来なくなって久しいので、心配していましたが、 逝く時は黙って逝く方だと予想していた通りでした。 最後まで弱みを見せなかった彼女のやつれた顔は見たく なかったし、彼女も見せたくなかったはず。 結局一度も見舞いに行かず終いでした。

私もメールの返信は早いことで定評がありますが、彼女の作文のスピードは桁外れでした。 こちらがピンポン玉を投げれば野球ボールが返って来て、野球ボールを投げればバスケットボールが返って来ました。

膨大な交換メールが大切な遺品となりました。  以下は、最後頃にいただいたメールです。

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先日はヒョンなことからメールをやりとりすることになり、お馬鹿な話もご紹介して しまいました。

そこで、今日はお口直し。
中目黒教会の友人が送ってくれましたので、彼女の文章を早速おすそ分けです。

KKさんの中目黒教会報への寄稿から。

時折海外の友人から、興味のある文章がインターネットで送られてくる。ユーモア たっぷりの小ばなしもあるし、宗教的、精神的な意味深い文もある。だいたいどの文 の終わりにも、「あなたのお友だちにも、これを送ってね。」と書き加えられてい る。今月ご紹介するお話もその一つである。キリスト教的コメントは何も含まれてい ないが、この話を読んだ私は、欠けたところの多い私をそのまま受け入れて、役立た せてくださる神様の存在を思ったのである。

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ひびが入ったかめ

中国のおばあさんが肩にかけた天秤棒の両端に、一つずつカメをぶら下げて水を運 んでいました。一つのカメは完全無欠で、入れた水全部を運ぶことができましたが、 もう一つのカメにはひびが入っていました。

小川からの長い道のりを家まで歩いてくると、ひびの入ったかめの水は半分に減っ ていました。おばあさんが一杯半の水を運ぶ毎日が二年間続きました。

完全なかめはもちろん自分の功績を自慢しておりました。しかしかわいそうにひび が入ったかめは、自分の不完全さを恥じ、本来なら一杯の水を運ぶために作られたの に、半分しか運べないことを嘆いていました。

苦い失敗と思われた二年の後、ある日このかめは小川のほとりでおばあさんに言い ました。
「わたしは恥ずかしい。わきについたひびのおかげで、家に着くまでに半分も水が 漏れてしまうのですから。」
おばあさんはにっこり笑って言いました。
「お前さんの側の道に沢山の花が咲いているのに気がつかないかい?反対側の道に は花なんか何も咲いていないのに。
わたしはお前さんのひびにはずっと前から気がついていたのだよ。だからお前さん のカメの側の道に花の種を蒔いておいたのさ。毎日帰りの道にお前さんが水をやって いたのだよ。だから二年間テーブルに飾る花が沢山摘めたのさ。
ひび割れの状態のそのままでいてくれたお前さんがいなければ、家の中を優雅に飾 るお花はなかったのさ。」

私たち一人ひとり、それぞれ欠けたところを持っています。でもこの欠けやひびが 一緒になって、私たちの人生を非常に興味深く、価値あるものにしてくれるのです。 私たちは一人ひとりをあるがままの姿で受け入れ、その人たちの長所を見つけなけれ ばいけません。

さて、ひび割れを持つお友達や家族のみなさん、今日もよい日でありますように。 そしてあなたの行く道の傍らに咲く花の香をかぐことを忘れないでね。

この文を誰でも好きな人に送ってください。そしてこれをあなたにお送りしたひび 割れのかめを忘れないでね。

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TOA130-BINO

Dear Tatsuro –

I am sending you photos of my completed binoscope. All is perfect.

I am enjoying the views very much. My self-made mount functions very well in all respects. I even find no need to add any friction adjustment capability, because the adjustable stainless steel weights allow perfect quick adjustment for fine balance with any eyepiece pair to perfectly hold any altitude. Of course, this idea was given to me from the photograph of the TOA-130 binoscope on your web site. It was a very good idea and I thank you for it.

Perhaps the only disadvantage of the TOA-130 is the heavy weight, which requires more careful setup and take down, especially the take down in the dark. But of course the big advantage is the optical near perfection.

I am not exactly happy with these photos, because it is hard to see detail of the black mount when the sky background it so bright. I hope to take some better photos on a cloudy day to send you some better photo.

Best regards,
John Pierce
e-mail

 Here comes his quick response!

Tatsuro,

Thank you for the link. Now, yes, I would like to add to my report these comments:———————————–

Tatsuro, I want to thank you very much for your EMS backs that I purchased from Joe Castoro. Your EMS backs are very fine craftsmanship, and your design is very elegant. The system is easy to collimate and merging views is always easy. And I really appreciate the views that are oriented correctly up/down and left/right. The various adjustments have become easy to accomplish now with very little thought. This is all made possible by your great EMS invention.

Thank you for suggesting that I should use your Extra Large 65mm EMS backs. These TOA-130 are rather large diameter, and the Extra Large backs allow the tubes to be spaced a wider distance apart. I think assembly of the system would be less convenient with the 50mm EMS backs requiring closer spacing of the telescopes. Plus I am happy to know that there is never any vignetting with this system.

My eyesight is not perfect. My left eye has a little astigmatism, and my right eye has more astigmatism. The merging of two eye views results in an image quality that helps very much to overcome the defects of my eyesight, without wearing glasses. Thank you for making this possible.

I would also like to thank Joe Castoro for his advice and assistance in helped me to make a successful binoscope. Joe is a good partner for you in the USA.

管理者のコメント;

Dear John,
Congratulations on your completion of the fine “TOA130-BINO”! I am much proud of you on the splendid job. It is very interesting and exciting to see various approach that is different from mine, but as efficient as mine. I also note of your special talent of planning, too. I am also looking forward to your next plan and am always ready to assist you. Thank you for your generosity to allow me to put your name and e-mail link on this file, too. I am always welcome of your further contribution to this corner. Your friend, Tatsuro mustn’t forget to thank Mr.Joe Castoro who had kindly assisted him through his project, too. 

 EMSセットと鏡筒用65φスリーブのみをご提供し、後は自作されました。(自ら設計して外注 されたパーツも含む) いつも思うのですが、言語の壁を越えて、EMS接眼部のみを取り寄せてBINOを自作される外国の方には、深い 敬意を禁じ得ません。BINO本体の製作には、BIG-BINOの服部さんの作品も参考にされたそうです。最初のメールをUPさせていただいたら、ジョンは直ぐに追加のコメントをくれました。 まさに以心伝心。近所に住んでいてもコミュニケーションが取り難い友人もいますが、地球の裏側に 住んでいても痒い所に手が届く友もいる。スリリングな時代に生きて良かった。^^

ステレオタイプ(stereotype)の呪縛 / Spell of the Stereotype

 ”天体望遠鏡=倒立像”、というのも一つのステレオタイプであって、世間一般的には未だに抜け出せていないもの だと言えますが、この辺までですと、当サイトをご訪問くださる方々はすでに問題意識を持たれて長く、とっくの 昔に脱ぎ捨てられたステレオタイプかと存じます。 しかし、このステレオタイプにも段階があって、さらに上の、またその上の階層でも、それは存在するわけです。 私たちが未だに抜け出し難い、(屈折式の)天体望遠鏡の構造のステレオタイプは、外観から言いますと、筒先 から、対物フード →(中に)対物レンズ(セル&対物側フランジ) → 鏡筒パイプ → (フランジ&)繰 り出し装置(ドローチューブ)→ 接眼アダプター の順に構成されるもので、実際、これから逸脱した市販の天体望遠鏡は皆無であると言っても過言ではありません。

そして、望遠鏡メーカーには、天体望遠鏡は直視で見るのが基本だという意識が猛烈に強くあって、アイピースと 望遠鏡接眼部との間には、せいぜい天頂プリズム(ミラー)が1個介在するくらいの認識しかありません。 です から、たまに双眼装置等に気を使った、極端にバックフォーカスの長い鏡筒を出したとしても、上記、直視(もし くは天頂プリズム1個)での合焦とを両立させようとするものだから、どうしても極端に長いドローチューブを 一緒に装備してしまうことになるわけです。

そして、その長い管路(ドローチューブ)の末端に、これまた長い同等管路を持つ双眼装置やEMSを装着して、 ドローチューブをうんと繰り入れて使用していたわけです。

合焦しない場合は、やむなく鏡筒のカット等を行って長い総管路のフルシステムをさらに対物側に繰り入れ、鏡筒カットを 免れて合焦する場合も上記のジレンマを背負うわけです。(特に小口径の鏡筒では、ドローチューブの後端が対物レンズ後面 に当たりそうになることも珍しくありません。 ドローチューブもカットすれば状況は緩和しますが、往々にして 内径が細い物が多いので、抜本的な解決に至らないのが普通です。)

望遠鏡メーカーが、“直視(もしくは天頂ミラー1個)での合焦”の呪縛から解き放たれない限り、EMSの都合と 市販鏡筒が完璧に折り合うことは今後もあり得ない、ということに気付くのに、あまりに長い年月を要しましたが、 ようやく最近になって、そのことを明確に認識できるようになりました。 つまり、私自身も、『望遠鏡パーツは、ドローチューブ末端のアダプターに挿入するもの』というステレオタイプ の呪縛に縛られていた、というわけです。

長いドローチューブの末端に、さらに長い光路長の光学アタッチメントを装着することの矛盾は、単に光学的な側 面ばかりではありません。視度補正や、規格が統一されていないアイピースのピント位置のばらつき《これはアジ ャストリング等の外部的な工夫で克服できる》を補償するためだけに、ドローチューブ+光学アタッチメント+重 量級アイピース、という巨大な総質量を大掛かりな手段で以って常に動かし続ける、という、力学的な矛盾でもあ るのです。

上記ステレオタイプから開放された先に、どんな正解が待っているかと言いますと、それは、『メインフォーカ サー(+長いドローチューブ)を撤去した鏡筒、またはフランジにEMSの第一(望遠鏡側)ユニットを直結する。』 ということです。
(もちろん、今度は余るバックフォーカスに相当した延長管を要する場合もありますが、市販鏡筒の現状からすると、それは不要か、せいぜい極短い物でしょう。 特に小口径の場合は、重量構成比が大きいメインフォーカサー の撤去は、軽量化という極めて大きな副産物ももたらしてくれます。また、今までEMS-BINOの素材として 却下して来た、繰り出し装置の先にレンズ後群が配置されたphoto-visualタイプの鏡筒も 射程に入ることになります。)

ただし、それを美しい形で実現するには、いくつかの課題をクリヤーする必要があります。当サイトを注意深く 見てくださっていた方は、私がそれらの一つ一つを克服して行った過程を思い出してくださっていることと思い ます。

まず、メインフォーカサーを撤去するわけですから、別の設置箇所を決めて、代替フォーカサーを設置しないとい けません。先述の趣旨からして、設置箇所は当然アイピースのごく近傍になるわけですが、2インチサイズのアイピースを使用する前提に於いて、58㎜くらいの目幅制限を満たすための外径制限があるので、low-profileの要求 と相俟って、これだけでも十分、計画を断念するに足るハードルがあったわけです。

曲折を経て、最小目幅の障害にならないアイフォーカサーの基礎的な実験に成功したことは、すでにここで発表し ています。

次に、フォーカサーをアイピースの根元に移動したことで、第一ミラーユニットを少し大きくする必要が生じま す。 これは単に光学的な要求ばかりではなく、鏡筒→フランジ→EMSの第一ユニットに至るアウトラインが極力 段差なく美しい流線型となって繋がるためにも、十分な大きさ(開口径)の第一ミラーユニットを準備することの 意義は大きいのです。

これは、現状でも口径12cmクラスくらいから窮屈だったEMSの第一ミラーハウジングを、いよいよ大きくす るための機が熟したということです。

目下、20年来の懸案だった新型の大型ミラーハウジングを、満を持して開発中であり、それが完成すると、 EMSがこれまでの諸々のジレンマから開放され、いよいよ次のステージに向けて大きく進化するわけです。

数ヶ月以内には、ここで重大発表をさせていただくことになるでしょう。


2009年5月25日

MOROHA NO TSURUGI (両刃の剣)

“MOROHA” maeans “double-edged” in Japanese, and “NO” is for “of” , and “TSURUGI” is for “sword”. The order of the words is reversed in Japanese. So, the title means ” DOUBLE-EDGED SWORD”. Japanese use the term expressing contradictive resort that can bring us both the blessing and curse.

A video of EMS-BINO was submitted to “YOU TUBE” by an Italian user. I firstly welcomed the fact that the VIDEO of my EMS-BINO is being released to all over the world, and put the link on top of my website. But, stop to think of it, I thougt at the same time of the concern of MOROHA NO TSURUGI both in the field and in its contents itself. I know that there is no harm meant by the submitter, but he treats my EMS-BINO as if it were of the same level of product as the commercial binoculars. So, I withdrew the link of it on the top of my website.

イタリアのユーザーが”YOU TUBE”にEMS-BINOの動画を投稿してくれたので、一時トップページに リンクを貼ったものの、国内のユーザーの方のアドバイスもあり、また自分自身の危惧もあったので、取り下げました。 常に新鮮な情報を発信し続けるのには莫大な時間とエネルギーを費やすのですが、一方で情報発信は 両刃の剣の側面を持ち、何ともやっかいなものです。

投稿者には悪意はなく、業者さんでもあるので、市販の大型双眼鏡も売らないと経営が成り立たない 事情も分かりますが、撮りかたから、氏の本音の価値観が自ずと読み取れます。 ここはおおらかに受け止めるのも一つの選択肢 ではあると思いますが、好意的な第三者の目にも違和感があったということは、やはり”blessing”を抑えこむ”curse” の部分が無視できないのだろうと判断しました。また、すぐ隣にこんなふざけた投稿が並んでいるような”YOU TUBE” という玉石混交のメディア自体についても慎重になる必要があるようです。

EMSを扱いながら、横に裏像の天頂ミラーを並べる販売店も、営業のために仕方なくという雰囲気ではなく、 積極的に裏像の天頂ミラーを推販していることに矛盾を見ますが、今後どの辺で線を引くのか、 難しい判断を迫られることが多くなると思っています。

TMB: APM APO 130/F6-BINO

経緯

 1992年にMeade LX-200 20cmF10を購入しましたが、家の前の空きスペースで観望するためには、階段を10段少々 降りなければならず、また、住宅環境や転勤、多忙生活のため、自然と望遠鏡の稼働率は低くなってしまいました。 Al Nagler の名言 「望遠鏡は、使わない時間が長い。」

 時は流れ、2005年に家の建て替え計画が持ち上がりました。当然、“屋上にドーム”も頭をよぎりましたが、 2~3種類の望遠鏡を使い分けたかった事、予算が無かった事で見送りました。ただし、将来、簡易型ドームなどを 設置できるように、しっかり屋上にスペースは確保しておきました。紆余曲折あり、2007年2月に完成。膨大な音楽 関係の資料等の片付けに1年近くかかりましたが、一段落してくると、屋上が気になってきました。幸い、ペントハ ウスを望遠鏡収納スペースとして占領する事に成功し、以前の観望の煩雑さの反動から、Kowa High Lander Prominar を購入しました。屋上に出して2分後には観望できる簡便さ、10cm程度の優秀な屈折望遠鏡を無用としてしまう程 の恐ろしく優秀な光学系、アイピースを交換して21×(実視界3°)~96×(実視界0.8°:Meade UW 4.7mmを使用) まで対応できる応用力、アイピースまで純正トランクに収納できて総重量が11kgですから、非の打ち所がありません。
 その後、第1回双望会に参加する事ができ、天候には恵まれませんでしたが、圧感!の望遠鏡群を見る事ができま した。

 EMSを使用した2インチ・アイピースの双眼の世界は流石でした。双眼鏡もそうですが、一度広い見掛け視界に 慣れてしまうと(しかも、あっという間)、狭い視界は、随分と窮屈に感じてしまいます。また、ちょうどその 頃、仕事で大変お世話になった同世代の方が亡くなり、EMS双眼をやらずして死ねるか、という強い思いと、松本 さんと親交を持つに至り、ついにEMS双眼望遠鏡を発注する事となりました。

双眼の魅(威)力

 今は無き、Atom横浜店のA氏から同社の双眼装置を紹介され、Meade LX-200 20cmF10にPentax XL 21mmで使用し ていました。私の双眼装置は今も健在で、球状星団や惑星など、見事に見せてくれます。 我が家から700m離れた所に高圧線の鉄塔があり、屋上では、ちょうど手を伸ばした親指の先位の大きさに見えます。 私は、いつもこれで光学系のチェックをしています。この鉄塔のガイシを大きく視野に導く事も可能ですが、 近傍のパラボラ・アンテナの文字がはっきり見えるのは、Nagler 5mmでもTMB Super Monocentric 5mmでもなく、 双眼装置+ Pentax XL 21mmです。しかも見やすさは圧倒的です。これが双眼の魅力・威力でしょう。

鏡筒選びは楽しくもあり、悩ましくもあり

鏡筒を選ぶのは実に楽しいですが、明確なコンセプトがあったので、選択肢はあまり多くありませんでした。1. 優秀な屈折。
2. 低倍率指向(嗜好)。EWV 32mmで実視界3°確保。
3. EMS双眼望遠鏡を丸ごと移動可能(総重量20 kg、できれば18 kg以下)。
4. 生涯を共にするEMS双眼望遠鏡(only oneを目指す)。

 優秀な屈折というと、真っ先にTOA-130が候補に挙がります。今まで覗いた中で最高の1本でしたが、鏡筒重量が10.5 kgなので、これでは重くて移動できません。いくら高性能でも、観望する度に組み立てるのは、私の場合、結果的 に疎遠になってしまうのは体験済みなので、ここは諦めざるを得ません。また、TOA双眼はいくつか報告もあり、 追従では面白みに欠けます。
 ASTRO-PHYSICSは全ての点で条件を満たしていますが、納期に何年かかるか見当もつ きません。TECは140mmですが、F7で重さが8.6 kgという事で却下。BORG 125SDは重さがわずか3.5 kg、しかも焦点 距離は750mmですから、EMS双眼にうってつけです。実際に覗いてみると、ヌケが良いクリアーな像ですが、色収差 の点で、TOAに一歩譲ります。
 そこで登場したのが、TMB:APM APO 130/780 LW でした。780mmという焦点距離も、 7.4 kgという重量も申し分ありません。有り余るバックフォーカスも魅力です。解像度もTOA並み、という事でし たが、いかんせん予算がかなりオーヴァーしてしまいます。同シリーズには、3.5”フォーカサーのCNC-LW IIと いう、実に美しく眩しい鏡筒がありますが、重量は8.3 kgで、価格もさらに高くなってしまいます。松本さんに、 「2.5”のフォーカサーと3.5”のフォーカサーがあるのですが、どちらが良いでしょう?」と聞いたら、 「断然3.5”のフォーカサーの方が良い」との事。随分悩みましたが、ああ、もうこうなったらやるしかない!  円高も手伝って、一目惚れしたCNC-LW IIを注文する事となりました。焦点距離を1%以内で揃える、というリクエ ストも快諾していただきました。

鏡筒が到着。しかし…

 鏡筒を注文したのが2008年11月初旬で、1月末に出来上がるとの事。3ヶ月ありますから、その間に、まず架台の 準備をしました。ピラー脚にキャスターを付け、ペントハウスからゴロゴロと移動する事に決めていたので、ピラー 脚はVixen(85cm)を採用。足のネジは12mmφなので、東海キャスター F100N12Sがぴったり入ります。デザイン上、 グレイ色と100mm径を選択しました。

 我が家に鏡筒が届いたのは2月中旬ですから、ほぼ予定通りで、焦点距離も1%以内に収まっていました。何と 美しく魅力的な望遠鏡でしょう。フードを短縮すると、信じられない位短くなり、2本並べると、潜水ボンベが2本 並んでいるようです。名付けて “ツイン・タンク”。3.5”のフォーカサーも頼もしく、この鏡筒にして本当に 良かった!と思いました。
 ところが、メーカーが鏡筒出荷の段階で鏡筒バンドが品切れである事に気づき、これか ら製作するので1ヶ月待ってくれ、という連絡が入ってきました。その上、レンズには恐ろしい程のホコリが入って おり、へなへなと腰が抜けてしまいました。レンズ・セルを外してみると、幸いホコリはレンズ後面のものだった ので、きれいにクリーニング。さっそく覗いてみると、色収差の無い素晴らしい解像度の鏡筒でした。不思議なの は、TOAは、あっさりしたクリアな像ですが、TMB/APMは、PLフィルターを通して見たような濃い色で、ずいぶん 見え方が違っていた事でした。しかし、この“濃い色”が、きっと+の方向に働いてくれるに違いありません。 EMS双眼望遠鏡の大成功を予感し、鏡筒は松本さんの所へ旅立って行ったのでした。

EMS双眼望遠鏡の製作

 鏡筒バンドが届く間、フレーム以外の部分の製作開始です。製作は、松本さんに全て一任しました。たまたま注 文が少ない時だったので、あっという間に心臓部のEMS-LSが完成。ドロー・チューブの末端の所に接続するEMS専用 のアダプターを製作していただきましたが、この美しい鏡筒のデザインにマッチする、素晴らしい仕上げのアダプ ターでした。フレームは、鏡筒バンドを利用したシンプルなものとし、耳軸の連結部等はアルマイト加工を希望し ました。もっとも、私があれこれリクエストしなくても松本さんは全て把握していて、今回ほど以心伝心という 言葉を感じた事はありません。

 結局、鏡筒バンドは、到着まで1ヵ月半かかりました。もう3月中旬を過ぎています。この間、ジリジリとした 思いで待ちましたが、不安と夢は膨らむばかりでした。別な鏡筒バンドが届いたらどうしよう… 早くしないと トラペジウムが沈んでしまう! 春のメシエ・マラソンには間に合うのか?

 鏡筒バンドを松本さんの所へ送ってから完成までは、まさに電光石火。2日後にはフレームが出来上がり、 1週間後には完成してしまいました。何とシンプルで機能美あふれるフレームなのでしょう! HF経緯台の延長も 見事な仕上がりです。長年の松本さんの経験とエッセンスが凝縮されているのを感じ、すっかり感動してしまいま した。 

鳥取訪問

 遂に4月初旬の週末、“恋人”を引き取りに、鳥取へ行く事になりました。強風のため、飛行機が着陸できず、 空中旋回しています。フライト・アテンダントに聞いたら、「冬などは、よく名古屋か大阪に着陸する」との事。 夜に名古屋で下ろされたら、どうやって鳥取まで行けばよいのでしょう。フライト・アテンダントの答え 「私共 は、その後については分かりかねます」。また先週は、風の影響で成田で飛行機が落ちています。「半年も待って、 覗かずに死んでたまるか!!」 幸い30分程旋回したところで天候が回復し、無事鳥取へ着いたのでした。

 ワクワク・ドキドキ。半年の思いが脳裏を駆け巡ります。ああ、ついにこの瞬間が… 何と美しい佇まいなので しょう。さっそくBINOを覗いてみると、闇夜の水銀灯が高解像度で迫ってきます。色収差は全くわかりません。
 少し頭を冷やした所で、“鏡筒をねじる光軸調整”等を教わりました。夜も更けてきたところで空を見上げたら、天 候が回復し、月が見えてきました。少しモヤがかかっていますがBINOを外へ出し、観望する事になりました。EWV 32mmに続いてEthosへ。おおっ、何というシャープな像でしょう! Nagler 6 5mmでは、宇宙船の窓から顔を出し て、すぐ近くの月面を見ているようです。エラストテネスなどは、今、隕石が衝突してできたばかりのように見 えています。月齢8.9ですが表情豊かです。見慣れているクレーターなのに、BINOから目を離す事ができません。 さらにNagler Zoomでぐんぐん倍率を上げてみましたが、2mm 390倍でも像は崩れませんでした。感無量…

架台と合体

 BINOが横浜に無事届き、さっそく架台と合体です。耳軸高は137cmなので天頂付近を見るのには良いのですが、 BINOを持ち上げるのは大変です。翌日、近所の鉄工所でポールを12cmカットしてもらいました。これですと、 BINOを持ち上げて設置する時、両方の耳軸受けを見ながら載せられるので、安全です。

横浜でファースト・ライト

 さっそく我が家の屋上で観望開始です。鳥取で見た月面はどうでしょう。モヤが無い分、コントラストがくっきり しています。少しグリーンが入った月面の色がきれいで、月の砂の感触が伝わってくるような感じは初体験で した。これは、やはり“色が濃く見える”特色が+に働いているためだろうと思います。最初のねらい通り、 温度順応も迅速です。
 続いて、すぐ近傍の土星へ。表面の帯のみならず、輪の影など、恐ろしくシャープです。 シーイングの影響で、クックッと像が変化していきますが、時々見せる素晴らしい像には言葉もありません。
 「ご飯よ~」に応答が無いので、次女が様子を見に来ました。Nagler Zoom 2.5mmで土星を見せたら、「この前 の土星とぜんぜん違う~!」と目が離れません。この前の土星とは、ORIONドブ300mmF4.5(高精度+増反射マル チコート)+Baader V+2”GPC+Ethos 8mm だったのですが(都会では大口径が生かせず、オフ・アキシス・シャ ドウ・マスクを使用しても小口径/High Landerに負けてしまう事も度々です)。

 宇宙を100億分の1に縮小すると、いろいろな事が見えてきます。100億分の1の宇宙では、太陽は14cm、地球は 15m離れた所の1.3mmの粒です。シャトルは地球の表面0.03mmを飛んでいます。ちなみに、光速は毎秒3cm。我々は、 1.3mmの地球から、128m程離れた所の1.2cmの大きさの土星を見ています。望遠鏡って、凄いと思いませんか?

使い勝手

 操作ハンドルで空をスイープしていると機銃掃射みたいで、私などはラット・パトロール(1960年代の戦争アク ションTV)を思い出してしまいます。ファインダーは無くても導入には不自由しない程、全てが自然に動いてく れます。正面に見えている対象物を正像のままどんどん拡大して両目で見れる、という事が、どれ程人の生理に 適っているか、改めて実感します。

 ハンドルの下にはバランサーが付いていて、このハンドルをトロンボーンのようにスライドさせる事で、様々な 重さのアイピースに対応できるようになっています。しかも、このカウンター・ウエイトは、アイピースと対側 の低い位置にあるので、重量級アイピースでBINOが高仰角になった時の安定作用もあります。何という絶妙なアイ ディアなのでしょう。鏡筒が短いので、ハンドルを固定したままでもバランスは大きく崩れる事はありません。
 よく話題に上る“光軸調整”ですが、フォーカシングの時間よりも短いですし、幸いEWV32mm~Ethos 17-8mm間で は、わずかの補正で済んでいます。私の場合は、悩む間も無く、すぐに馴染んでしまいました。

 EMS調整ノブに付いた原点復帰 “←” マークの効果は絶大です。まず、この←2つ(水平用・垂直用)を手前に一 直線になるように向け、この時点で大きく光軸がずれていたら、鏡筒をねじって光軸を補正すれば良いのです。 ですから、安心して鏡筒を脱着できますし、移動の際、光軸がずれたとしても、冷静にすぐに復帰する事がで きます。EMS調整ノブを回しすぎて、迷路に迷う事もありません。この“鏡筒をねじる光軸補正”ですが、 実際に教わらないと理解は難しいかもしれません。鳥取までは遠いのですが、訪問の価値は計り知れませんで した。

 優れた製品・工芸品を使う、という事は、設計者・製作者の意匠を感じ対話をする、という事でもあります。 時に生き甲斐すら与えてくれる事もあります。生涯を供に過ごせるBINOを持つことができて、私は本当に幸せです。
  導入

 いつも、SkyScoutを使用しています。実視界3°あれば、ほとんど視野に導入してくれるので、大変重宝してい ます。基準星で設定する必要が無く、いきなり導入してくれるので、条件の悪い都会の空にもピッタリです。 しかし、経緯台でブンブン振り回して気ままに観望し、その上、導入や天体の確認ができるSky Tourは大変便利 でしたので、今回は奮発してスーパー・ナビゲーターを取り付けました。

 High Landerには、VixenのXYスポット・ファインダーを取り付けています。これをそのままBINOに取り付る事が 可能ですが、今回は、国際光器の正立ファインダーを取り付ける予定です(納入待ち)。“正立像”で統一です。 前述した通り、実際にはファインダーが無くても導入に不自由しない程、使い勝手は良いです。

都会の空も捨てたものではない

 都会の空は明るいです。私の住んでいる保土ヶ谷は、横浜駅から1駅なので、かなり明るいです。こんな所で星 なんか見えるの?と思う方も多いと思います。しかし、夜も10時を過ぎると、天頂付近は、条件が良ければス カッと見えます。夏はM57なども良く見えます。また、イザとなれば、1時間半少々で富士山・新五合目まで行 けますので、便利な都会かもしれません。ただ、最近は静かに観望を楽しんでいる脇で、我が物顔で発電機を ブリブリ回して撮影をする人が増えてきて、大変迷惑しています。もしお知り合いにこのような行為で写真を 撮って喜んでいる人がいたら、厳しくモラルを問いただし、即刻やめさせていただきたいと思います。 

腰痛対策

 BINOの総重量は、3.5”フォーカサーを採用した事で、22kgになってしまいました。鏡筒は8.3kgですが、 鏡筒バンドが1個1kgありますから、これだけで20.6kgになってしまいます。ですから、総重量が22kgで抑え られた、というのは驚異的です。

 とはいうものの、腰痛に悩まされないようにするには、BINOを持ち上げて移動する時間をできるだけ短くし なければなりません。幸い、ペントハウスから出して架台に載せた後は、キャスターでガラガラ移動すれば良 いだけですが、BINOの保管も考え、カンガルー・リフター:KGL-25を導入しました。
 普段は、地震が来ても大 丈夫なようにテーブルを低めにしておき、BINO設置の時は数回ペダルを踏めば、BINOの取手が1m位まで高く なります。床から持ち上げる時に一番腰に負担がかかりますから、これで腰痛対策は万全です。
 リフターは各社から様々な機種が出ていますが、カンガルー・リフターが、最も少ないペダル回数でテーブル をトップまで上昇できる機種でした。 

最後に

 写真歴は36年でカメラも大好きですが、徹底した眼視派で、天体写真を撮ることはありません。また、夜の仕事 をしている訳ではありませんが、1年の1/3は帰宅が遅く、星を見るチャンスは多くはありません。一つ一つの 機会を大切にしたいと願って、このBINOを注文しました。まだ満月なので、これからディープ・スカイへ旅立 つのを心底楽しみにしています。

 小学生の時は、ボール紙で作った屈折望遠鏡、某社の廉価版屈折望遠鏡で、すっかり屈折(挫折)してしまい ました。高校の頃は、木辺成麿さんの「反射望遠鏡の作り方」を幾度も幾度も読みましたが、資金が足りず計画 のみで終わってしまいました。友人は、20cmを作る、と意気込んでいましたが、そんな大きな物を作ってどうす るの?と真剣にアドヴァイスしたのを覚えています。35年前は20cmの反射は相当重く、据付方法を本気で考え なければならなかったのです。今のシュミカセやドブソニアン、見かけ視界100°のアイピースを考えると、 まさに隔世の感があります。

 EMSとの出会いは割と古く、1994年に松本さんにいろいろ問い合わせて沢山FAXを送っていただいた事があ ります。この時は、自作に自信が無く見送りましたが、それから15年。やっと実現に至りました。EMS双眼は、 鏡筒2本分の価格+αがかかりますが、効果は√2倍ではなく、2乗以上ではないか、と思います。鏡筒のクオリ ティが上がると、これまた2乗で効いてくるように感じます。

 今回のEMS双眼望遠鏡を通じて多くの事を学び、そして、心温まる交流が何よりも財産として残りました。 また、このBINOの製作にあたり、多くの方々から貴重なアドヴァイスをいただきました。国際光器の小山さん にも大変お世話になりました。この場を借りて、厚くお礼を申し上げます。そして何よりも松本さん、心より 感謝申し上げます。どうもありがとうございました!

Comment by Matsumoto/ 管理者のコメント;

 YKさんは、4月4日から5日にかけて当方を訪問され、7日に後送したBINOを受け取られ、 12日の今日、神速のリポートをくださいました。 1994年にもFAXを交換させていただいているようですが、私が初めてYKさんとお会いしたのは、去年の双望会 でした。双望会からの帰路を豊橋駅までYKさんの車に便乗させていただいた時、少年時代より心酔して来られた 世界的に有名な某音楽家との劇的な出会いと、その方との現在に至るまでの濃密な交流の感動的な経緯を伺い、大いに 共感、感動し、「この方のBINOを、今までのノウハウを総動員して作ってみたい。」と、強く思ったのでした。 YKさんも”以心伝心”と書いてくださいましたが、お仕事はもとより、第二のライフワークであるはずの 音楽関係の活動を含めて、とりわけ多忙でいらっしゃるにもかかわらず、BINO作りの過程で送信させて いただいたメールのご返信は極めて迅速で、かつ当方の設計意図もよく理解してくださるので、非常に仕事がしやすかった印象があります。  また、ご訪問に先立って、ご指定の梱包材料を手配して当方に送ってくださり、こちらでのご滞在2日目に は BINOの梱包を手伝ってくださるという徹底ぶりでした。 私の製作技術はまだ発展途上と考えていますが、YKさんは製作者の意図を良く理解してくださり、まさしく 製作者をやる気にさせる依頼者でした。私は、自分自身を、褒められてばかりいないと仕事が出来ない人間だとは 思っていませんし、改善すべき点を指摘されれば、可能な限り対処する姿勢は持っているつもりですが、 YKさんの例のように、心の琴線に響く関係が構築されていますと、依頼者の方との相乗効果のようなものが 出来上がるBINOにも反映されるということを、この度、改めて痛感しました。 この度、YKさんの非凡な感性に響くBINOが製作できましたことが大変幸せで、誇りに思います。  また、YKさんの方で全て整えられたポール+キャスターがBINO本体と見事にコーディネートされ、その 美しさを高めていることにも、感心しました。 今回のリポートについて、YKさんは「長い文章になった・・・」と言われましたが、今までに交換させていただいた 情報の量からしますと、私は、非常に簡潔で短い文章だと思いました。 YKさん、数ヶ月後にぜひまた続報をお願いしたいと 思っています。
 また、このリポートによって、私自身もYKさん以上に感動をいただいたと思っています。

Coo became a Cinderella Boy!! / 玉の輿に乗ったクー

Coo is enjoying blissful days with his new keeper. He won the freedom of playing out at his leisure through his personal entrance door that was made by his kind keeper, and the warm room of the perfect shelter at a time.

クーが玉の輿に乗りました。新しい飼い主は私の友人で、とても信頼の置ける方。車で数時間かけて、今月の 初旬に婿入りしました。無理解なご近所のために家の中に幽閉されたクーでしたが、一度ノラの生活を 経験したクーには耐え難いことでした。 決して元の飼い主の母が薄情だったのではなく、私たちとクーが 今後の人生を幸せに過ごせるかどうかの、ぎりぎりの判断をした結果なのです。

クーは、星が見える広々とした里の個人天文台の主猫になり、晴耕雨読ではなく、晴遊雨寝の極楽を 味わっています。^^ それにしても、運の強い猫です。 人間でも、路頭に迷う運命の人もいるのに、 クーは自らの強運で、いつでも外で自由に遊べる環境と、暖かい自分の個室と、新しい飼い主の深い 愛情の全てを手中にしたのです。

クーの近況

クー帰る (Coo came home!)

クーが家出 (Coo ran away!)

クーちゃん、ごめんよ。(Forgive me, “Coo”.)

Coo became a Cinderella Boy!! (玉の輿に乗ったクー)

Coo is enjoying blissful days with his new keeper. He won the freedom of playing out at his leisure through his personal entrance door that was made by his kind keeper, and the warm room of the perfect shelter at a time.

クーが玉の輿に乗りました。新しい飼い主は私の友人で、とても信頼の置ける方。車で数時間かけて、今月の 初旬に婿入りしました。無理解なご近所のために家の中に幽閉されたクーでしたが、一度ノラの生活を 経験したクーには耐え難いことでした。 決して元の飼い主の母が薄情だったのではなく、私たちとクーが 今後の人生を幸せに過ごせるかどうかの、ぎりぎりの判断をした結果なのです。

クーは、星が見える広々とした里の個人天文台の主猫になり、晴耕雨読ではなく、晴遊雨寝の極楽を 味わっています。^^ それにしても、運の強い猫です。 人間でも、路頭に迷う運命の人もいるのに、 クーは自らの強運で、いつでも外で自由に遊べる環境と、暖かい自分の個室と、新しい飼い主の深い 愛情の全てを手中にしたのです。

クーの近況(2008,12/13)
クー帰る(2008,2/4) (Coo camehome!)
クーが家出(2008,2/3) (Coo ran away!)
クーちゃん、ごめんよ。(2008,1/10)(Forgive me, “Coo”.)