Swarovski X95 EMS-BINO

最近のスポッティングスコープの高性能化はめざましいものがあります。これらのスコープの対物レンズ系の高性能化も すごいけれど、アイピース、特にズームアイピースの進歩は本当に凄いものです。なかでもライカのズームレンズはジックリ 使わせていただきましたが、まぁこれなら単焦点アイピースは要らないかもと思わせる像質でした。これほどの高性能のズーム アイピースが出現したらそれに一本化され、さらには接眼部にズームアイピースを組み込むメーカーが出てきても不思議では ありませんでした。それが、Swarovski X シリーズだと思っています。

先日その Swarovski ATX95 で友人と一緒にと昼の景色を見たり、星を見たりしていたのですが、そのよく見えること、 M81/82についてはそのコントラストも含めて驚きました。しかも、このXシリーズの対物ユニットにはフォーカサーも組み込まれ ており、とても軽量にできています。そして松本さんに連絡、相談、そして完成したのが Swarovski X95 双眼望遠鏡です。

コンセプトは「心と体の贅肉をそぎ落とした小型軽量お手軽双眼望遠鏡、ついつい使用頻度が高くなる双眼望遠鏡」でした。 双眼化において対物ユニットとEMSの接続アダプターが一番の難所でした。バヨネットマウントの攻略は難物でしたが、 このマウントを逆手にとってEMS取付角度の再現性が担保されたアダプターが完成しました。詳細は 松本さんのHPを 参照して下さい。これは画期的なアイディアです。

小さくて軽い10cm 級双眼望遠鏡ですが、今一歩の点もあります。まずは光学性能。スポッティングスコープとしての純正 接眼部仕様の場合、焦点内外像はほぼ対称です。しかし純正のプリズムを使用しない場合、焦点内外像は非対称になります。 明らかに負修正、つまりプリズム光路による補正も考慮した設計をしていると言うことでしょう。
問題は球面収差がある程度残った 状態を許容できるのか・・・ということです。私の場合、少なくともこの双眼望遠鏡の限界倍率である158倍は許容範囲と思います。 この倍率で土星を見ると本体の縞やカッシーニの間隙もしっかりとしたコントラストで見えます。これは人それぞれですが、 ハイランダー・プロミナーやミヤウチのフローライト/EDシリーズその他の双眼鏡では高倍率はなかなか得られないし、得られ たとしても左右の光軸の問題があります。SwarovskiX95 双眼では球面収差のわずかな残存はありますが、倍率の自由度は高い し光軸の問題は事実上ありません。私はこの望遠鏡の光学性能は十分及第点をあげられると思っています。なんと言ってもF5.8 ですから。

アイピースの選択。どのようなアイピースでも使えるわけではありません。推奨はテレビュ ーのアイピースになります。しかも視野環の位置が「6mm OUT」のものです。ただし、ナグラーズ ームはダメ。首から下が長すぎる。手持ちのアイピースで比較すると、デロスの像質が一番良いよ うです。でも、いかんせんデカイです・・・。倍率の色収差を考えると今のところナグラー type5: 16mmが私のデフォルトアイピースです。2インチアイピースも使用可能です。上手くいけ ば4.5度程度の実視界が取れます。専用アダプターで無限遠のピントが確保できるアイピースは 確認している中ではEWV32mm、テレビュー・パンオプテック27mm、ライカズーム8.9-17.8mmです。

Swarovski X95 EMS-BINO を星空の下で使ってみました。いつもの南会津のフィールドです。

設営は2,3分。Pelican 1550 caseから本体を出して、Gitzo 2380に載せるだけ。取っ手に等倍ファイン ダーを付ければ、後はキャップを外してアイピースを挿入すればOKです。しかも軽いので、この状態で 一式担いでウロウロできます。
写真三脚はスリックのプロフェッショナルデザインIIを使っています。 これのよいところは重さとエレベーター。エレベーターを調整することで、天球上のどの対象もほぼ同じ 姿勢で見ることができます。本体の全長が短く軽いし、倍率も高いわけではないので、何ら問題はあり ません。
傍らにはK&Mのマイクスタンドに載せたiPad2 があります。これはファインディングチャート用の 星図ソフトを表示させています。これは星仲間のKさんのやり方をマネさせていただきました。ただし、 望遠鏡と星図ソフトのWi-Fi接続はしていません。星をたどって導入する古式ゆかしき方法ですが、 この導入過程が意外に面白いのです。望遠鏡の実視界は2度以上あるので、M天体をはじめとするメジャー どころは瞬時に視野の中に導入することができます。多分光害まみれの空だと無理でしょうね。 これも十分美しい星空と広視界アイピースのおかげです。

組み合わせるアイピースは前述のごとく視野環の位置が「6mm OUT」のテレビュー製が中心です 。星空の下ではいろいろ試してみましたが、Nagler Type5: 16mm (x35@2.4°)がデフォルトでときおり Nagler Type6: 9mm (x61@1.4°)に差し替えるくらいでした。双眼なので惑星もNagler Type6: 7mm (x79@1°)くらいで十分楽しめます。最高倍率は経緯台の操作性も考慮するとNagler Type6: 5mm (x110@0.7°)だと思います。
上記アイピースのいずれをSwarovski X95 EMS- BINOと組み合わせても視野 周辺まで星は「点」です。これは非常に気持ちがいい。もちろん中心像も満足。見つめても、眺めても 楽しめます。「あのアイピースなら星の色がもう少しよくわかるかも・・・」などとも思いますが、 システムとして考えると、この組合せが最適解かもしれません。
今回は2インチを試していませんが、 ライカズーム8.9-17.8mmの場合はx31@2°とx62@1.3°になります(最低倍率と最高倍率しか使いません)。 もしかしたらこれが最小のセットかもしれません。

Swarovski X95 EMS-BINO の実際の見え味はどうであったか?バカバカしいくらいによく見えました。 視野一杯の星像も美しいし、抜けもいいし、これといった欠点が見つかりません。

M13、M3、M22、M11はザラザラではなくツブツブです。コントラストが高く星像が小さいので本当に 美しい。

M8、M20は圧感でした。特にM8は立体感のある微光星の集簇を取り巻くように星間ガスの存在が認識され ます。高コントラストと双眼視がなせる技なのでしょう。まるでKトレーディングの宣伝文句のようですが、 そうなんです。

M27は「亜鈴」ではなく「ラグビーボールです」出っ張った部分の濃淡がよくわかります。

M81、M82もいい感じ。M82の複雑な濃淡がおもしろい。M51は伴星雲に腕が伸びているのがわかります。

そしてはくちょう座の網状星雲。フィルターなしでハッキリと認識される。特に東側の星雲はまさに 「横顔」です。これには驚きました。

実際の星空を覗いた感想ですが、このBINOの特徴は抜けと高コントラストかもしれません。Swarovski の レンズコーティングとEMS ミラーの銀コーティングとの相乗効果でしょう。この美しい視野の星々を眺めて いると多少の球面収差や色収差の残存はもうどうでもいいことだと再認識しました。

Swarovski X95 EMS-BINO は小型軽量による易運用性、十分な集光力、短焦点による広視野、そして美しい星像、 これらが高次元でバランスされたすばらしい双眼望遠鏡でした。おそらく10cm 級の双眼望遠鏡では最高傑作だと 思います。やっと「青い鳥」を見つけたのかもしれません。最後にこの双眼望遠鏡の具現化に多大なる御尽力を いただいた松本さんに深謝申し上げたいと思います。

黒木嘉典 (Kuroki Yoshifumi)
栃木県宇都宮市

管理者のコメント;

This binoscope is definetly the advent of the new concept of the EMS-BINOSCOPE in that it is an ideal combination of the Objective Unit of a Spotting Scope(SWAROVSKI X95) and the EMS.
I must give Mr.Kuroki, who had the foresight of the marvelous results and the courage to take it into practice, my biggest applaud.
You can see my processing reports in the link quoted below.
Binoscope Making Report,dated 4/27,28; 5/2,15,16,25,31; 6/2.

BINO製作情報速報で何度かご紹介しておりました、SWAROVSKI X95-BINO について、黒木さんよりさっそく詳細なユーザーリポートを いただきました。 今回までにご報告いただいている内容も含めた集大成とも言える、価値あるリポートです。  ご計画の動機から実際に使用されたご感想まで、非常に懇切におまとめいただきました。

筆者の今日までのEMS-BINOや広範なご自作経験を含めた各種光学機器とのかかわりの深さが、今回のリポートの説得力を高めています。   趣味の世界では、マニアは独自の一面的な 判断に陥り易いものですが、筆者は対極の選択肢も知り尽くした上で今回の選択をされたことが、本文からも、 また過去のリポートからも分かります。

スポッティングスコープは純粋に光学的に見れば、天体観望に特に適した光学系でないことは、黒木さんも本文でご指摘の通りですが、 その生産台数の桁違いの多さからか、工業製品としての成熟度は一般的に言って天体望遠鏡よりも格段に高いということが言えると思います。 その成熟度とは、軽量さ、コンパクトさ、また使い勝手、メカとして、また光学的な性能や外見の美観までを含めた総合的なものを指します。 そして、ごく最近になって SWAROVSKI とごく一部のメーカーがユニット分割構造のスポッティングスコープを生産し始め、EMS-BINOへの利用が 可能になったということです。

今回の黒木さんの革新的な挑戦の成功が、天体望遠鏡業界の今後の製品開発に何らかの好影響を与えることを願っています。 スポッティングスコープよりもシンプルな光学系の天体望遠鏡が、現行のスポッティングスコープのような 軽量化、コンパクト化、そしてモデュール化を達成できないはずはない、と私は考えます。 天体望遠鏡業界では 、唯一BORG(トミーテック)だけが、かなり以前より各部パーツのモデュール化や軽量化の先駆けを成してはいるものの、私に言わせれば、 まだまだ「天体望遠鏡」としてのステレオタイプの範疇からは脱却していず、今後の開発に期待したいと思います。

なぜスポッティングスコープはあんなに” Cool”、格好よいのか? 天体望遠鏡の生産台数では、あの流線型の鏡筒ラインはコスト的に 本当に無理なのか?等々、天体望遠鏡業界も真剣に考えるべき時期に来ているのではないでしょうか。
ステレオタイプや面子は合理的な思考を破綻させます。先端の客観データをいくら示されても、未だに銀蒸着へのアレルギーが治癒しないことや、 アイピースのピント位置の統一が出来ない天体望遠鏡業界の現状を見ると、悲観的になってしまいますが、早く目を開いて欲しいものです。

黒木さん、この度はまたタイムリーに素晴らしいリポートををご投稿くださり、本当にありがとうございました。 他の件も含めまして、追加リポートがございましたら、 またよろしくお願いいたします。

追記: ななつがたけ北天文台の”天文台日記”にもリポートを投稿されていますので、こちらもご参照ください。

2013年6月9日
2013年6月5日
2013年6月3日

追記2: SWAROVSKI-X95-BINOの製作記は、
当サイトのBINO製作情報速報の、 2013年、4月/27,28; 5月/2,15,16,25,31;
6月/2 に掲載しています。

Customizing the EMS-US set adapting to the smallest IPD,”51mm”!! / 最小目幅51mmへの挑戦!!(EMS-US)

The standard housing of the EMS is 59mm in the outer diameter, and 50.8mm in the inner one.So, it seemed to be almost impossible for the standard housing to adapt to the smallest IPD of 51mm, or at least to be required the large trimming of the housing and the repainting afterward.In spite of the negative estimations, I found a good solution to get the minimum IPD of 51mm without trimming the housing at all. The answer is the eccentric 2-inch cap. Of course I should shift the mirror to some extent to the lower side in advance.That’s “Deceptively Easy” isn’t it?

「瞳孔距離 51mm の家族に双眼視の感動を味あわせたい!」 そんな真剣なご相談を受ければ、一肌脱がないわけには行きません。^^; さらに防塵フィルターも設置されたいとのことで、頭をひねりました。 まず、EMSの標準ハウジングの外径=59mmで、目幅方向対面部のトリミングが最初から施してあるため、 アダプターを少しトリミングすれば、57mm程度までのカスタマイズは簡単です。 ところがそれ以下になると、今度は塗装済みのハウジング自体を削らないといけません。ハウジングの内径は50.8mmあるため、一定の壁厚を残せば、54mmくらいまでが現実的なところです。 それにしても、トリミング部の補修塗装等、頭が痛いものです。

いろいろ考えた結果、良い方法があることに気付きました。 それは、31.7ADの基部の2インチキャップの36.4φ,P=1ネジを偏心させることです。EMSのハウジングは、ミラーのセンタリング移動も出来るので、金物の偏心に即してミラーをシフトすることが可能です。(と言うか、ミラーのシフトでカバーできる範囲の2インチキャップの偏心で51mmが達成できるということです。)

この手の加工はCNCフライスの真骨頂で、今回もヘリカル加工が功を奏したことは言うまでもありません。

以前は、20年以上前に特注した36.4φ,P=1のタップを多用していましたが、それを使うよりもずっと能率的かつ正確です。 このタップ、数年前に見学に見えた(望遠鏡関係の)加工業者さんにお貸ししたきり返って来ませんが^^;、ヘリカル加工を習得してからはタップがなくても困らなくなりました。(停電時やマシンの故障時以外は^^;)

SWAROVSKI ATX95-BINO completed!! / SWAROVSKI ATX95-BINO、完成!!

SWAROVSKI ATX95-BINO is completed. But, one of the objective unit is kept by the client (not here) and this photo actually is the composite one of the left and the right unit.You can see how I have treated the annoying bayonet.

SWAROVSKI ATX95-BINOが完成しました。 ただし、今回当方でお預かりした対物ユニットは一個のみでしたので、左の完成写真は、左右仕様でそれぞれ別々に撮影した写真の合成です。依頼者の方がBINOの上級者になられますと、こうした芸当も出来るようになります。

左のアリミゾは前後軸で、右のアリミゾは左右軸に配置しており、従って左の鏡筒は前後のみに移動出来、右の鏡筒は左右のみに移動できるようになっています。つまり、簡易な目幅調整が非常にシンプルな構造で実現しています。 光軸の初期調整は、左のアリミゾが水平方向の微調整を、右のアリミゾが上下方向の微調整をそれぞれ受け持ちます。 運搬用ハンドルユニット(兼ファインダーベース)は今、アルマイトに出しています。 (多分、アルマイトは今日仕上がると思うので、今日中に発送できると思います。)

今回のBINO作りでの最大の難関、かつ解決への核心は、いまいましい^^;バヨネットをどう扱うか、ということでした。理想的なのは、純正のオスのバヨネットに完璧に適合するメスのバヨネットを作ることですが、これは加工のハードルが高過ぎたことと、それだと構造的に十分にlow-profileに出来そうになかったため、それは早々に回避しました。

そうなると、バヨネットの爪の奥の細い径の所に固定ビスを当てるのが常識的な考えかと思いますが、それだと、対物ユニットにEMSを圧着させることが出来ません。 そこで、私は、一見あり得ない方法に打って出ました。ローレットネジの先端ポリアセタールがバヨネットの爪の裏側ではなく、またバヨネットの爪の真心でもなく、爪の厚みの奥の角線に当たるようにしましたが、目算は適中しました。 こうすることで、バヨネットがテーパフランジと同じ役割を果たすわけです。

さらに、バヨネットの爪を逆手に取り、上の画像の赤い矢印で示したアジャスタブルな突起を配置することにより、EMSの固定アングルに完璧な再現性を持たせることにも成功いたしました。

黄色い矢印は、EMSの接続フランジを固定するものです。 ここを分解することはまずありませんが、アダプターの内部構造が見えるように分解して撮影しました。 実際には、アダプターはEMS側に常にセットして、接続の再現性を持たせます。

TOA150-BINO completed!! / TOA150-BINO 完成!!

TOA150-BINO is completed. It will be the advent of the next stage of EMS-Binoscope making.

難産でしたが、やっと完成しました。 この度はいろんな面で良い勉強をさせていただきました。今後のBINO作りに役立てさせていただきたいと思っています。

今回は搭載重量の制限が厳しかったので、架台はほぼ無改造の方針で臨みました。 そのため、BINO本体は水平回転軸の真上ではなく、少しだけ右に寄っています。 左のウェイト軸ホルダーにスペーサーを噛ませているのは、そのためで、三脚とウェイトが干渉しないようにしたものです。これは当方での架台の動作チェックのためで、納品時にはスペーサーは撤去します。(納品先ではピラーになるので、スペーサーは不要)

架台のメンテ等で、鏡筒を下ろす必要が生じた場合は、鏡筒を1本ずつ抜き取ります。 もちろん、先にEMSや合焦機構、さらに鏡筒末端のフランジを撤去しておかないといけません。 バンドの内面にはテフロンテープを貼っていますので、コツさえ覚えれば、鏡筒の抜き取りも前後バランスの初期調整も比較的楽です。 フレームの精度剛性は十分なので、光軸の再現性は万全です。

 

(同日追記) 今回のセンターフォーカス・システムで、左右の視度に差がある場合にどう対処するかについて、どちらからもご質問がないので、先回りしてご説明します。^^; 結論から申しますと、目幅調整用のヘリコイドを用います。 通常の眼幅調整は、リンク画像のように、左右同時対称的にヘリコイドの転輪を回します。 次に、右眼の近視が強い(遠視が弱い)不同視の方は先ほどの作業に続けて、左右のヘリコイドを今度はそれぞれ反時計回り(同方向)に同量回します。(←同量回すことで、目幅の変化を相殺します。) 左の近視が強ければ、当然その逆に回します。

「そんなことをしたら左右のアイピースの高さがずれてしまいます。」・・と、おっしゃいますか? それでは、私からの質問です。 「市販の90度対空双眼鏡では、左右の視度をどう補っているでしょう?」お分かりでしょうか。 市販の双眼鏡も(直視、対空に限らず)、アイピースを前後(上下)させて合焦させています。 つまり、不同視(左右の屈折度が違う方のことで、視力の差は無関係です。)の方は程度の差こそあれ、左右のアイピースに段差が付いた状態で双眼鏡を覗きますが、眼鏡で補正出来る程度の不同視なら、全く問題なく覗けることはご承知の通りです。

しかも、(ここからが極めて重要なところ^^;)EMSの場合は、目幅ヘリコイドの軸(つまり第1反射光線)がアイピースの光軸と60度の角度を持つため、同量の不同視で生じる 左右のアイピースの段差は、同軸のヘリコイドで補正する市販の双眼鏡の1/2にしかなりません。(cos60°=1/2)(つまり、不同視補正時のアイピースの段差は通常の双眼鏡の1/2しか生じないということです。)

この方法は、左右の視度差を先に補正してしまい、最後は双眼視のままピントを追い込むというものですが、どうしても片眼をつぶりながらダイレクトに合焦操作をしないと気が済まない方もおられるかも分かりません。 しかし、それは単なる習慣であり、むしろ、単眼視での合焦操作は、眼の調節が入りやすく、どうしても近視寄りのピントになり勝ちです。 実際、検眼(屈折度測定(視力検査ではありません))に於いても、最後には両眼開放で行った方が調節の介入が起こりにくいことが分かっています。

Anodizing parts of the TOA150-BINO / いよいよアルマイト工程(TOA150-BINO)

The left is the parts for the framework and the right is for the binoscope itself.Isn’t it miraculously simple for the structure of the large binoscope?

いよいよアルマイト工程です。 左はフレームのパーツで、右はBINO本体のパーツです。今回は重量制限も厳しく、徹底してシンプルな構造を目指しましたが、こうしてパーツを並べてみて、我ながら善戦したと感じます。^^; 右の写真の合計6個のパイプ部品と2本のロッドは全て、純正フォーカサーの代わりに用意した物なので、純粋にBINOの基礎部分を構成する部品は、2枚のメガネプレートだけということになります。

TOA150-BINO preliminerily assembled / TOA150-BINO、仮組み立て!

TOA150-BINO is preliminerily assembled and proved to be quite successful.The repeatability of the optical axes is also superb on the new framework.

記念すべき仮組み立てです。 基本、大成功です。 当然ながら、TOA150-BINOは地上物を見ても凄まじい見え味です。新型フレームの光軸の再現性も完璧でした。(初期調整すら不要)合焦機構は、昨日も触れたように、もう少し手を加えます。(リニアベアリングを併用します。) これからが最後の正念場です。(鏡筒は、予想したよりもずっと前に出せることが分かりました。仰角による接眼部の上下移動の量が大分緩和されそうです。)

Linear Bearing is added / リニアベアリングの追加

無負荷の段階では極めてスムーズだったために、良い気になって省きましたが、EMS、アイピースと負荷が増すと、やはりこれ(リニアベアリング)は必要でした。手持ちがありますので、至急対応します。 まだ追加加工がありますが、今度こそ、一両日中に仕上がるはずです。(仮組み立て後にアルマイト工程に送ります。)

TOA150-BINO almost completed!! / TOA150-BINOほぼ完成!!

TOA150-BINO-LX80

The linear bearing lastly added has drastically enhanced the performance of the focuser.

フォーカサーは、どたんばでの設計変更が功を奏しました。 これでフォーカサーは完璧です。^^写真でお気付きと思いますが、第1第2プレート共、初期の設計を上下逆に用いました。

設置予定だったスタビライザーシャフトを元の位置で手前に延ばすと、EMSと干渉することが分かったからでもありますが、この方がややこしいメカが隠れるので、怪我の功名でした。^^; フォーカシングノブも、上から手を突っ込むのを止め、写真のように、EMSの手前下から操作することにしました。 この方がより自然に操作できるようです。 細部の仕上げの後、いよいよアルマイトです。

Innovative Center-Focusing System, quite successful!! (TOA150-BINO) / センターフォーカス機構の成功!!(TOA150-BINO)

The core part of the Center-focusing System is perliminerily assembled and I found it quite successful.It moves not only silky smooth but also has moderate friction enough to prevent the system sliding down of itself.Another stabilizer will be added to the second plate as the one already set on the first plate.

お待たせしましたが、本日やっとセンターフォーカスの主要部分を組み立てて動作確認をしました。結果は期待以上で、まずは安堵しました。 目下設計中の15cmF5-BINOのVERSION9にも同じ方式を採用することにします。

操作は実に滑らかで、駆動速度も眼視に理想的です。これだけの規模の左右のドローチューブが同時並列的に正確に前後することに、我ながら感動に浸っています。(通常のネジだとこうは行きません。) 滑りネジ機構が滑らか過ぎると自重でスライドダウンしてしまうことを懸念しましたが、前もって施した対策が功を奏し、適度なフリクションがちゃんとシステムを保持してくれています。

現段階でも、中央の滑りネジ機構部と左右のボールローラーとの3点支持により、第2プレートの平面内の回転方向の安定性はすでに万全ですが、プレート面と直角(左右端を前後)方向に故意に捻る外力を加えると、構造上少し前後に揺れるので、第2プレート側にも、これから第1プレートにセットしたようなスタビライザーをセットする予定です。

(現状でも、敢えて接眼部を握らなければ問題はありませんが、スタビライザーの追加によってより剛性がさらにアップするはずです。これは、中央シャフトがたわむのではなく、滑りネジのゆとりによるもので、想定していたことです。シャフトネジの手前側にも同軸の延長棒をセットし、第2プレートに固定したスタビライザーがそれを軸にしてスライドするようにします。)

(接写ぎみなのと、該当部のズームアップの構図のため、メカがやや大袈裟に写真に写ってしまったのが残念です。 実際には、この写真で見るよりもずっとシンプルでコンパクトなシステムです。 追って、撮り直した画像をお見せします。^^;)

The ball roller installed (TOA150-BINO) / ボールローラーをセット。(TOA150-BINO)

本来なら今日は仮組み立てしたTOA150-BINOをお見せできる予定でしたが、ちょっとしたハプニングで明日以降に持ち越すことになりました。外注した滑りネジのシャフトの両端のネジ加工が、一般的なM6ネジのつもりだったのが、特殊な細目ネジ(P=0.75)でした。 急遽該当するタップを発注した次第です。(確かにメーカーのwebカタログにもそう記載してあり、私の不注意でした。(しかし、なんでわざわざ特殊なネジを切るのだろう??^^;))