115ED-BINO ファーストライト

仙台市内から車で約40分。市の北西部に位置する泉ケ岳の駐車場(標高約550m)にて今回BINO(SE115ED-BINO)のファーストライトを迎えることができました。松本さんを鳥取へ訪ねて早一週間。こんな早期に自分のBINOを持つことができるとは夢にも思っていませんでした。BINO製作をご依頼して以来、ずっとこの日が来ることを待ち望んでおりました。松本さんのここまでのご指導に深く感謝申し上げます。

梅雨空続く6月下旬、製作を依頼しているBINOの完成を見に行くため、仙台から夜行バス(仙台~大阪)+JR(大阪~鳥取)を乗りついで鳥取市を訪れました。松本さんは、ご多忙にかかわらずご夫婦で(!)私の訪問を快く対応してくれました。松本さんに会うまで「いったいどんな人(?)なのだろう」「光軸調整など難しい話は理解できるかな」等心配しておりましたが、それらは一気に吹っ飛び、長時間に渡り有意義な時間を過ごさせて頂きました。BINOの調整方法のみならず、これまで松本さんが歩んできたBINOの貴重なお話を伺うことができました。これは本当に勉強になりました(大収穫でした)。
BINO製作中は、松本さんから多くのご提案を頂きながら、異例の早さで進行しました。松本さんとのメールのやりとりはいつも率直で、未熟なわたしのいろいろな誤解をときほぐしてくれました。また「メイキングレポート」でも掲載されたように、(私が持ち込んだ)KenkoのSE115EDはカサイのBLANCA-115EDTに外見がそっくりですが、BINO用にはバックフォーカスがかなり不足ということでやむなく短縮加工してもらいました。また長年使用してきたHF経緯台についても心得るべき点などいろいろとご指導を頂きました。スタート時点から松本さんには本当にご苦労をおかけしました!

鳥取訪問も無事終了し、翌週自宅にBINOが届きました(箱5つ)。箱からBINOを取り出し再度ご対面!。ご指導受けたばかりの「うろ覚え」の光軸調整を行い、ベランダから地上の建物や電線で「像」を確認しました。初めはなかなか「像」が重ならず焦り(?)ぎみでしたが、なんとか合った(?)ので、いてもたってもいられず、BINOと三脚を後部座席に積み込み、近くの山(泉ケ岳)へ向かってしまいました。
現地は、雨上がりで地面が少し濡れていましたが、BINOの設置をして観望をさっそく開始しました。泉ケ岳は仙台方面(南東)が街明りでかなり明るいのですが、テストとしては十分な空で、晴れた日には天の川まで見ることができます。今回使用したアイピースはEWV32mm(25倍)とナグラー16mm(50倍)。さらに松本さんに加工してもらったマルチショートバロー(加工後1.75倍)を使用しました。

時刻は2011年7月5日(火)20時過ぎ、ついにファーストライトの瞬間です。はじめの対象は西天に沈みつつある月齢4の月でした。地上で合わせた(と思っていた)光軸はみごとに(!)ずれていて、はじめ月が二重に見えました。鏡筒のねじれを確認し、眼福とミラーを微調整して像が一致した時、地球照が美しい月がついに観望できました。流れる雲の合い間から月が見え隠れし、周辺部のクレーターがはっきりと立体的に見えました。しだいに西の空に見えなくなっていきました。
つづいて観望シーズン終了間近の土星。はじめその明るさが気になりましたが、タイタンや他の衛星までくっきりと確認できます。おとめ座の空域に浮遊する土星と衛星は、他の星々と調和し「一枚の絵」を見ているようでした。しばらくそのライブに見入ってしまいました。まさに「窓からのぞくような感覚」です。

初日だから調整程度までにしておこうと思っていたのですが、ここまで来るとさらに欲が出てきます。さっそくおおぐま座のメシエ天体めぐりへ出かけました。はじめはM81とM82です。2つの銀河が同一視野に飛び込んできた時、思わず暗闇で声を出してしまいました「キターっ!」。これだけの広視野で見たのは初めてです。2つの銀河の特徴が対比されはっきりと見えます。なんと不思議な感覚なのでしょうか。
つづいてM97、M108、M109、M106、M101、M51を次々と導入。ミザール(A・B)とアルコルもきれいに分離して見えています。正立像なので面白いように順番に導入できました。当日の午後、仙台ではいわゆる“ゲリラ豪雨”があり、“ひょう”まで降りました。直後から急に晴れだし、空気中の塵が落ちたので空のコンディションも良かったのだと思います。しだいに天頂に天の川も見え出しました。

東天から天頂にかけて夏の大三角が見えています。次はそこへBINOを向けました。こと座のベガを導入後、そのままM57へ。リングははじめはっきりしませんでしたが、時間がたつにつれ、濃淡がはっきり見えるようになってきました。つづいてアルビレオ。「おーっ!」その美しいこと。少し下がって、コートハンガーとや座を確認し、こぎつね座M27へ向かおうとした時、思わずBINOを止めてしまいました。それまでM71はぼんやりしたイメージのマイナー天体でした。しかしその夜は「球状」に、さらに「分解」して見えるのです。この天体がこのように見えるのは初めてでした。マルチショートバローの効果でしょうか。「ここまで見えるとは...」しばし沈黙。じわじわと感動がこみ上げてきました。
15㎝BINOオーナー先輩の宮城のSさんもファーストライトのレポートに書いていましたが、本当に「星がありすぎ」です。いままで見えなかった星々が「双眼効果」によってよけい見えるようです。BINOで天の川をさっと「流し見」し、その美しさを十分に堪能しました。

ここまで来るともう止まりません。つづいてさそり座~いて座方面です。アンタレスを導入したのち、球状星団M4とM80を確認すると一気に下降します。すもうとり星付近を抜け、さそりの尾(シャウラとレサト)を経て、ついにM7へ到着。明るい散開星団の恒星一つ一つが前後に立体的に見えます!こんなことってあるのでしょうか?。そう思いつつ全速(?)で南斗六星付近へ向かいます(まるでジェットコースターですね)。
いて座で導入してみたかった天体に球状星団M22があります。この日は透明度もよく、M22がキレイに分解して見えました。この晩M13やM5も見ましたが、なぜかM22が一番キレイに見えました!つづいてM8干潟星雲(おーっ!)M20(あーっ!)M24(げっ!)へ天の川「上り」です。見える見える(あたりまえですが)、M17&M16のガスの様子までくっきり見えます。このあたりでたて座からわし座に向かいましたが、あまりに興奮しすぎで目標のメシエ天体を見失ってしまいました。「キターっ!」「おーっ!」「あーっ!」「げっ!」「ギャーっ!」コトバにならないコトバを暗闇で発しつづけ、もうすでに3時間経過。時刻はすでに23時近くをまわっていました。(どこにも通報されませんでしたが...)

東の空に秋の星座がのぼってきました。そうだM31が見えるかもしれないぞ。そう思い東にBINOを向けました。アンドロメダ座ミラクから上に恒星を2つ上がると...「でたっー!」M31です!伴銀河M32とM110まではっきりくっきり見えます!写真のようには見えませんが、230万光年はなれた天体を自分のBINOで見ているんだと思うと、感無量でしばらく見入ってしまいました。「もう単眼倒立には戻れないなあ...。」そう思った瞬間です。充実感と次回の期待を胸に撤収し、家に着いたのは1時近くでした。しばらく興奮で寝つけませんでした...。

これまで DOB(25cm)での観望が主に行ってきましたが、BINOはちがった切り口(双眼正立の世界)で宇宙を見せてくれます。短時間でこれだけ見ることができたのも、ずっと手動で天体導入を苦労(訓練?)してきたからなのだと思います。星図を片手に倒立像であることを想定し、なにかカンのようなもので常に導入していたような気がします。それでも25cmで星雲星団や銀河をとらえた時の感動はひとしおでした。
しかし、BINOの場合その感動とはちがっていて、天体の位置が星図の通りなのです(あたりまえですが...)。BINOの平面上部に星図を載せて(こんなことは従来の望遠鏡ではできませんね)、正立ファインダーでそのまま天体位置が容易に特定できるのです。このあたりまえのことに深く感動するのです。なにより導入自体がとても楽しく感じられました。
このBINOによってますます観望機会が増え、より多くの天体も導入できそうな予感がします。これから秋や冬の天体シーズンが本当にまちどおしく感じられました。

この日をなんとか迎えることができたのも松本さんはじめ、周囲の多くの人々たちのおかげと考えております。これからは、機会あるごとにBINOのすばらしさを周囲に伝え、もっと自分の時間を大切に過ごしていきたいと考えております。また次回レポートします。本当にありがとうございました!

仙台市 渡辺 利明

管理者のコメント;

渡辺さんより、115ED-BINOのファーストライトのご一報をメールでいただき、当リポートコーナーへのご投稿をお願いしたところ、快く詳細にまとめてくださいました。  初めてEMS-BINOでじっくりと天体を観察された感動を素直におまとめいただき、初期の感動を呼び覚ませていただいた感じがいたします。

お持込の115ED鏡筒(KENKO)が(恐らく同じOEM供給元と思われながら) 、想定していたBLANCA115EDT鏡筒とは仕様が大きく異なっており、最初はご心配をおかけしましたが、最終的にはBINOに特化したカスタマイズによって課題は全てクリヤーできました。 その都度、問題点を率直に申し上げましたが、素早いご反応をいただき、速やかに作業を進めることが出来ました。

渡辺さんには、この度の御地元の震災被災にもかかわらず、遠路をご訪問くださったことにつき、深く感謝いたします。 これより、秋~冬の天体も115ED-BINOに覗かれることを心待ちにしていると思います。 その節には、またぜひ追加リポートをよろしくお願いいたします。
さっそくの臨場感溢れるリポートをありがとうございました

Debut of the Larger Helicoid / 大型ヘリコイドの完成!!

Today is the commemorative day of the larger helicoid to be finished.It is not only larger in size, but perfectly designed to perform the ergonomic IPD adjustment with the helicoid.The left handed helicoid and the right handed one are provided. The bottom end is 65mm tapered male flange and the top end is 65mm female sleeve. The shortest hight without flange is 27mm and the longest 43mm. (stroke is 16mm)

EMS-BINO用に特化した大型ヘリコイドが完成しました。 標準ヘリコイドの経験を活かし、さらなる精度剛性アップとデザインにもこだわりました。(左の写真で標準ヘリコイドとのサイズ比較が出来ます。)

左右で逆ネジを用意しましたので、左右で天地を逆に取り付けなくても、左右対称の操作が可能になります。(そのため、ロゴも入れられました。)末端形状は、65φテーパーボスと、65φメス(差込)で、実効最短長=27mmで、ストローク=16mmです。余裕で想定される最大の目幅領域をカバーします。

William Optics『80mmセミアポ』の銀ミラー化リフォームと15cmBINO /WO80-BINO with Silver Mirror and 15cmBINO

William Optics 80mmセミアポ の銀ミラー化リフォームをして頂きました。 皆さんのレポートと精力的な耐久試験の結果、懸念材料が無く、性能は格段にレベルアップすることが確実であると証明されていますので、迷うことなくリフォームを申込みました。

お忙しい中、日程の無理をお願いし、持ち込み後、即リフォームとBINOのメンテナンスもして頂きました。 生憎の天気でしたが、リフォーム後は、景色の色合いが違っています。BINOに疎い妻も驚嘆していました。私の目は乱視があり、BINOで見る時も、完全には像が一致しなくてもしかたがないとの思いがあったのは確かですが、リフォーム後は、雨を通しても数十メートル先の木々の枝が一本一本クッキリと見えます。雨粒もしっかり見えていますが、雨を通りぬけた景色に見とれていました。 眼鏡がなくとも、キリッとした像に『今までこのセミアポの性能を発揮させていなかった』と気付きました。

丁度、旅行先で海が見え遠くに漁船が浮かんでいます。BINOでは雨の中、かすかにですが赤い旗が見えます。しかし、持参していた口径70mmの双眼鏡では、漁船の存在は分かりますが、赤い旗の存在は確認出来ずとても不思議な感じを体験しました。

赤色付近の反射率が改善された銀ミラーの効果と言えると思います。しかし色彩の改善ばかりでなく分解能も数値では表現できませんが確実に改善されている事例として紹介させて頂きました。

又、BINOを持ち込んだおり、松本さんより、BINOを運搬する方法などを、皆さんに紹介して欲しいとの御依頼がありましたので、10に1つでも皆さんの参考になる部分があればと、恥ずかしながらレポートを作らせて頂きました。

15cmBINOについても若干紹介させて頂きます。 松本さんの工作力、アイデアには足元にも及びませんが、改善の工夫を考える一時は大変楽しいものでして数々の失敗もありますが、成功した時の嬉しさは格別であることに免じてご覧頂ければ幸いです。

双眼鏡と違い、色々と工夫(お金を使わずとも)できるのも、BINOの良い点であると思います。15cmBINOも銀ミラー化できる日が近い事を夢見ながらのレポートでした。 松本さん有難うございました。

石井 邦雄

管理者のコメント;

4月22日に岡山県よりご訪問くださり、WO80-BINO用のEMS-Lセットの銀ミラー化(EMS-ULへのupgrade)を施工させていただきました。 その際、同BINOのご工夫の数々に非常に感心し、当リポートをお願いした次第です。 今回、非常に懇切、詳細に多くの画像を含めてご説明くださいました。

ごく最近になって、小型のPCやスマートフォンでリアルタイムの天体のローカルな位置情報(高度角と方位)に簡単にアクセスできる時代に至り、BINOの高度角と方位を何らかの方法で表示させることで、天体の確実な導入支援が可能になることに 石井さんもいち早く気付いておられ、デジタル傾斜計と方位のアナログ目盛りを巧みにHF経緯台に組み込んで 実際に使用しておられました。

その際、当方が方位表示の試作用に確保していたデジタル分度器をお見せしたところ、同じ物を入手され、当方より先にHF経緯台に見事にインストールされ、実用性を実証しておられました。 実は、5月7日に15cm-BINOのEMS-LSの銀ミラー化で再度ご訪問くださった時に、現物を見せていただき、大変感心した次第です。

石井さん、貴重なお時間を割かれての懇切なご投稿、誠にありがとうございました。 よろしければ、また15cmF5-BINOのリフォーム(銀ミラー化)につきましても追加のリポートをいただけましたら非常に幸いです。

FS102-BINO by Mr. Alfredo Sayalero, Spain

Freddy Universe

管理者のコメント;

スペインの Alfredo さんが、自サイトに(半)自作のFS102-BINOを紹介してくださいました。

スペイン語ですが、そのまま読める方は別として、いきなり日本語への自動翻訳でなく、英語へ翻訳してからお読みになることをお勧めします。 (それでもおかしな翻訳になりますが、日本語への自動翻訳よりはましです。)
EMSとスライドマウントをお送りして、BINOを組み立てられました。 言葉の壁を越えて、自分で組み上げ、調整されたのですから、大したものです。

私の仕事の性質上、依頼者の方との緊密な情報交換により、互いに極めてパーソナルな関係が構築できて、大変嬉しく思っています。 この度の東北関東大震災についても、心よりのご心配と励ましをいただきました。

15cmF6-BINO/ ~初めての体験「M42が赤みを帯びて見える」~

 3月4日は福岡県糸島市は透明度抜群の夜でした。私的な事 ですが、心臓の手術後1年が経過し、体調がこれまで以上に良 くなり、寒い夜の行動もOKになったので、海の近くの暗い場 所まで出かけました。

 黄金色の夕空に浮かぶ雲の底がピンクに染められています。 そのような夕空を見ながら15分で目的地に着きました。  「150LD(銀ミラー)」を組み立て、EWV32㎜アイピー スを装着して、まだ明るい青い夕空の大犬座を観望すると、視 野には沢山の星が見えています。M41もばらけた姿を見る事 が出来ます。

 次に、夕空の青みが十分に残っている午後6時50分頃、オリ オンに双眼望遠鏡を向けたときのことです。何とオリオンの散 光星雲が微かにではなくはっきりと赤みがかって見えたのです 。一瞬わが目を疑いました。

「ウソだろう。散光星雲が夕日に映えてピンク色になってい る。(有り得ない)」と思うほどでした。
 一度目を離して再度見ましたが、やはり赤みがかって見えま す。見えていた範囲は散光星雲の比較的明るい部分でした。イ ーソス13㎜に替えてみましたが、この時は赤みは感じませんで した。再度32㎜に替えてみました。やはり赤みを帯びています 。ずっと見続けていましたが、空の青みが減少して暗い空にな るにつれて、その赤みは感じられなくなり、白っぽい、いつも のもの散光星雲になりました。
 何故、赤みを帯びて見えたのでしょうか。
 目の錯覚?、心理的な意識がそうさせた?、背景がまだ明る く目の色彩を感じる細胞が活動していた?、等々考えてみまし たが私には分かりませんでした。

 このような経験をお持ちの方はいらっしゃるのでしょうか。

 その後は、北の空から東の春の天体を楽しみました。町の近 くとしては比較的暗い空(アルニタク横のNGC2024は見えませ んでした。)でした。二重星団からスタートして、天の川を流 し、M37,36,38と、お決まりのコースをたどりました。

 アイピースを13㎜に交換して、M1からスタートして、M51,108,97,81,82 と、メジャーな天体めぐりです。東の空は福岡市の明かりが有 るので、獅子座の銀河は40度以上の高度になって見え始めま した。MGC2903から始まってM96付近には5つの銀河が見えてい ました。手持ちの星図がポケット版だったので、同定が出来な い天体が有りました。M65,66,それに微かにNGC3628が見えてい ました。  銀河はその特徴的な形が良く見えていました。
 最後に上がってきたばかりの土星を見て観望を終わりました。

 手術後、短い時間ですが何度か心臓が止まった事が有りまし た。止まった時は視野が真っ暗になり頭がジーンとしました。
幸い「再起動」してくれたので良かったです。
 以前とは少し違った気持ちで星を見ています。幸せな気持ち で・・・。

 そんな幸せなひと時を「150LD」は提供してくれます。

   感謝、感謝。 

富山良兼

Comment by Matsumoto/ 管理者のコメント;

 まずは手術後も順調に回復され、以前以上にご健康を取り戻されたことにつきまして、心よりお慶び申し上げます。

  この度は、銀ミラー化で再生した150LD-BINOを、再起されたお体でしっかりと観測された、意義深いリポートをいただきました。 一時的でも生命の危機を体験されたことで、より感性も研ぎ澄まされたのでしょうね。 非常に象徴的なご体験で、良いお話を聞かせていただきました。

  M42の赤みは、去年の双望会の会場でも、銀ミラー化したEMS-BINO等で、複数の方々が異口同音に指摘しておられましたが、今回は、夕方の薄明時に赤みが見えたというご報告です。 以前にも、月がある夜にM42がピンクに見えた(複数の方と一緒に観察:20cm-BINO)というご報告がありましたので、何か関連があるかも分かりませんね。

  気候はこれから良くなる方向ですので、どんどん観測されて、また続報をお願いいたします。   久しぶりのご投稿、誠にありがとうございました。

What is the “light path” of EMS? / EMSの光路長とは?

For the benefit of the EMS-BINO planners, I will show the anatomy of the “light path” of the EMS-UL. The total light path of the EMS consists of three parts.

Path “A” is the distance from the bottom of the barrel to the first reflection point, that is 2 + 18 = 20mm.Path “B” is the distance from the first reflection point to the second one, that is 18+2+12+2+18 =52mm.Path “C” is the distance form the second relfection point to the top surface of the 2-inch sleeve, that is 18 + 2 + 58 = 78mm. So, the total light path is A + B + C = 20 + 52 + 78 =150mm.
*The light path of EMS-UL is shortened by 2mm on July 21,2017. Now, the correct light path of the standard EMS-UL is 148mm.(2018,11/05)

EMS-BINOを計画される方のために、EMSの光路長について、標準仕様のEMS-ULに則してご説明します。

総光路長は、図のA,B,Cに別れます。 Aはバレルの根元(ツバの前面)から第1反射点までの距離で、ツバの厚みとハウジング内の半光路長の和で、2+18=20㎜となります。は、第1~第2反射点間の距離で、18+2+12+2+18 =52mm、は、第2反射点から、2インチスリーブの天面までの距離で、18 + 2 + 58 = 78mmとなります。総光路長= A + B + C = 20 + 52 + 78 =150mm となるわけです。

ここで、BINOの規模(鏡筒中心間隔)によって、Bが異なるということがポイントです。まず、標準寸法のままの接続管で、目幅=60mmの時の鏡筒中心間隔”D”を計算してみましょう。Bは空間的に傾斜しているので、Bの目幅方向への射影Sを把握しないといけません。S=B/√2=52/√2≒36.8㎜ となります。 従って、その時の鏡筒間隔=36.8X2+60 =133.6㎜ ということになります。

この算出のメカニズムさえ理解できれば、鏡筒最大径がそれを越える場合に、どれだけBを延長すべきかが分かります。

2017年7/21以降、EMS-ULの光路長は2mm短縮して148mmになっています。(2018,11/05追記))

New Helicoid Optimized for Binoscopes! / BINO用ヘリコイド開発!!

before: Pentax Helicoid extension tubes

after: New Matsumoto Original Helicoid optimized for Binocular use

Helicoid tubes and IPD-Crayford tubes, each has its merit and I have chosen one of them in the cases.

The main problems of the commercial helicoid tubes for camera parts are the lack of enough rididity and the end shape that needs to be processed to connect to other telescopic parts.

Now, I have successfully developed this new helicoid perfectly speciallized for binoscopic use.I can definitly say that it is more rigid than any other commercial helicoid tubes planned for camera parts.This is designed for the heavy use of binoscope back that will hold EMS and heavy oculars at a time.Both ends are tapered boss that will fit into the 50.8mm standard sleeves. This means it is easily used reversible on left or right EMS for the ergonomical hand operations.

目幅調整用の伸縮管としては、ヘリコイドとクレイフォードがあり、それぞれに長所があります。 小型のBINOで伸縮管の最短長を特に短くしたい場合や、気密性を重視する場合はヘリコイドが適しますし、またユーザーさんの好みによっては、大きなBINOでもヘリコイドを使用することもあります。 つまり、ヘリコイドにも捨てがたい長所があるのですが、残念なことに市販の短いヘリコイドは主としてカメラ関係のパーツ用を前提としているので、BINO用のような大きなモーメント加重は想定してなく、つねに剛性に不安がありました。 さらに末端形状も不都合なことが多く、その都度接続リング等を加工しないといけませんでした。(最近は主にクレイフォード式を採用して来た理由。)

この度試作に成功したヘリコイドは、最短長=わずか22mm(ストローク16mm)で、両端が2インチのテーパーボス(末端だけに該当リングを取り付けているのではなく、構造部のエンドがその形状になってる。)で、リバーシブルに2インチ挿入部に取り付くように出来ています。外径72mmで無理のない壁厚を確保しており、剛性も万全です。 (2インチのテーパーボスはEMSハウジングに嵌入するため、実質最短長=22mm)

(左右のヘリコイドを上下逆に使用する(リバーシブル)意義は、以前にもここでご紹介しましたが、左右のヘリコイドを両手で同時にねじる際に、自然な左右対称的な動きで行えることにあります。 仮に左右のヘリコイドを同向きにセットしますと、左右のヘリコイドを左右の手で同方向に回転させないといけないので、よく間違えますし、動作に違和感を覚えるものです。製作者の作業性として、ヘリコイドの両端が共通形状になっていることは大きなメリットがあるわけです。)

最短長=22mmということで、今後はより小型のBINOにまで、鏡筒固定方式が適用できることになりました。

後日追記:このBINO用ヘリコイドは、左右で逆ネジを用意しましたので、左右で天地を逆にして取り付ける必要はなくなりました。(ご自分でBINOを分解された際には、左右を取り違えると、製作者の意図に反することになります。^^;)

APM-LZOS152-BINO

1 APM-LZOS双眼望遠鏡構想の経緯と製作経過

そもそも双眼望遠鏡を新調しようと思い立ったのは、メガネの マツモトさんのHPで紹介されている「横浜のKさん」のAPM/LZOS 130/F6-BINO- 新型EMSを拝見し、鏡筒のあまりの美しさとBINOのカッコ良さ に魅せられたからでした。

そこで、2010年3月26日に国際光器へ連絡を取り、「横 浜のKさん」のAPM/LZOS 130/F6-BINO-BINO1でのリクエストを 参考にさせていただきつつ、次の3つの条件を付して2010 年4月14日正式に発注しました。

(双眼望遠鏡にする為の条件)

1) 2台の焦点距離の差を1%以内で揃える事。
2) 2台の接眼部マイクロフォーカサーを左右対象に取付ける 事。
3) フードゴロマークを1本は右/1本は左に貼り双眼にした時 にどちらからでも見えるようにする事。

待つこと3ヶ月半、2010年7月26日に鏡筒入荷のお知ら せメールが来ました(^^) 早速、メガネのマツモトさんに連絡を取り、直接、国際光器から 鏡筒が送付される旨連絡させていただきました。

国際光器への鏡筒発注と同時並行で何度かメガネのマツモトさん とBINO製作の打ち合わせをさせていただいておりましたが、最 終的には主として次のような要望となりました。

(BINO製作にあたっての要望事項)

1) EMS-UXLセット(第2ミラーオーバーサイズ)プレミアム仕様
※ 低倍率用としてテレビュープルーセル55mmを使用 したいため。

2) フォーカサーのつまみの位置を縦にせず、横の位置で操作 できるようにする。

3) 架台は、より安定した新設計のフォークタイプとする。  これに十分な大きさのCRADLEをセットし、そのペースプレー トに2本の鏡筒を別々に着脱するアリミゾを設置する。

※ 鏡筒本体が12kg、鏡筒バンド2kg、合わせて14kg以 上になるため、安全に1本ずつ取り外しができ、且つ耐久性に優れた架台を希望 したい旨お伝えしたところ、新設計フォークタイプのご提案をいただいた。

4) 架台は、俯角30度~天頂まで向く特別仕様とする。   ※ 地上の風景についても観望可能なようにするため 。

5) スーパーナビゲーター自作キットのエンコーダーの組込

6) タカハシSE-Sピラー脚のネジピッチと東海キャスターのネ ジピッチが微妙に合わず殆ど入らないため、取り付け加工を施す。

しばらくBINO製作の順番待ちの状態が続きましたが、いよいよ 2010年10月20日APM(TMB)152-BINO計画がスタートしま した。 少しずつ出来上がっていくBINO、日々のHPの更新をワクワクし ながら拝見しておりました(^^)

2 APM-LZOS 152mm/F8 CNC-LW BINO 遂に完成!

そして、遂に2010年12月2日、APM-LZOS 152mm/F8 CNC-LW 3 枚玉スーパーEDアポクロマート EMS双眼望遠鏡 が完成しまし た! 手元へは、2010年12月6日無事に到着しました(^^)/~~~

荷物が到着して、まず驚いたのはAPM-LZOS鏡筒の入っている箱 の大きさでした。 50インチのプラズマの箱と同じ長さですが、幅の厚いこと・・ ・

早速、慎重に箱を開封し、ピラーから組み立て、次にピラー取 り付け部と新設計のフォーク(丈夫そうで且つ完成度の高い仕 上がりにちょっと興奮^^)を組み立てました。

そして、いよいよ鏡筒の取り出しです。

一瞬、意外とコンパクトかな?・・・と思ったのですが、フォ ークに固定(すごく簡単で楽でした)、フードを延ばして測って みると130cmオーバー、想像はある程度していましたが、いや はや巨大なこと・・・(>_<)

3 初観望

外は暗くなり、雨と靄でコンディションはダメダメですが、組 み上がって、まず約200m程先の街灯をイーソス17mmで覗いてみ ました。

テレビューNP-101双眼望遠鏡を里子に出してから早4ヶ月… う~ん、久しぶりの広視界に感動です。 バックフォーカスがどの位か気になって見てみると、約300m先 の民家の明かりで右8mm、左10mmの残り幅でした。 いずれ星の出ている時に無限遠に合わせてみようと思います。

現在の2インチアダプターは、かつてのテレビューNP-101双眼 望遠鏡の世代と異なり、ナグラータイプ4-12mmやイーソス10mm で本当にギリギリEMS保護フィルターに触れないように設計さ れていて、驚きでした。

今度は、ABBEⅡ16mm、10mm、6mm、4mmに、ツァイスABBEバロー を組み合わせ、約200m先の街灯の明かりを双眼で眺めてみまし た。

ABBEⅡ4mm×バロー2倍=600倍でもクリアで色収差はなく、クリ アなままの見え味でした。
感無量・・・(*^_^*)

かつて譲り受けた今は無きNP-101双眼望遠鏡と比較すると、質 感・機構・造りなど全てがグレードアップしているようで、と にかく感動しました。

4 地上風景の観望(昼間)

152mmの口径の威力は、やはり凄いです。

テレビューNP-101のときは108倍(ナグラータイプ6-5mm)にな ると昼間でもかなり暗くなりましたが、APM152では100倍(ナ グラータイプ4-12mm)でも十分な明るさがあり、なんと言って も像質がシャープです。

銀ミラーによる効果も大きいと思われますが、本当に素晴らし いです。

イーソス17mmとAPM-LZOS 152mm鏡筒との相性については、昼間 の観望では眼の位置を正確に合わせないと視野に一瞬、薄いオ レンジなどの色が現れます。 この点は、テレビューNP-101に装着した場合には一切見られな かったことなので、やはり同じメーカーのアイピースと望遠鏡 の相性が最も優れていると言うことなのでしょう。

因みにイーソス17mmでの最短観望距離は約10mでした。 約10mの距離を、70.6倍の倍率で、落葉低木の僅かに残ってい る赤く小さな実を眺めてみました。 当然、近すぎてEMSの光軸調整は必要ですが、何か不思議な感 じがしました(^^)

5 星空観望

12月は、なかなかよい天気に恵まれないのですが、寒さ対策 として消費電力1,000wの反射式電気ストーブで身体を暖めつつ 、部屋からのお気軽観望方式で、薄雲の向こうになんとか見え る星空を眺めて楽しんでいます(^^)

イーソス17mmによる無限遠(星空)は、その後、目幅をキッチ リ合わせて覗いてみると、バックフォーカスを7mmほど残して 何とか大丈夫でした。

ただし、新しく発売された ニコンNAV-17HW の場合、スリーブ の長さが58mmと非常に長い(通常は35mm程度)ため、無限遠に 焦点が合わないと予想されます。 今後もし、APM-LZOS鏡筒で双眼望遠鏡を計画される場合は、発 注の段階でAPM社に4cm程度鏡筒を切断してもらうよう予め要望 しておいた方が良いでしょう。

このイーソス17mm(71倍)でオリオン座大星雲を見てみました が、写真で見るように翼の広がりが見えました(私の目では色 は白くしか見えまっせんが…^^)。 また、木星もイーソス17mmで見てみたところ、縞模様がハッキ リと見え感激しました。

また、ABBEⅡ-10mm×ABBE2倍バローに換え240倍で見てみたと ころ、シーイングがよくなく、木星が煮えたぎって過剰倍率で したが、それでも凄く明るく見えました^^。

松本さん、このような大変素晴らしいBINOを製作して下さいまし て、誠にありがとうございましたm(_ _)m

2011年1月1日
林 孝之 (Hayashi Takayuki)
秋田県秋田市

BLANCA130EDT-BINO

5年前からテレビューPRONT-BINO、笠井SCHWARZ150S-BINO(以下SCHWARZ)の2台を使用しています。今回3台目のBINOとして笠井トレーディングのBLANCA130EDT-BINO(以下BLANCA)を導入しましたのでレポートします。

【BLANCAの構造】
松本さんのところから届く時は(写真1)のような梱包状態です。梱包はしっかりしていましたが、左側鏡筒の合焦機構にガタが出ていたので松本さんに確認しながら調整しました。松本さんの所で2晩テストした時点では異常が無かったとの事なので輸送時に衝撃が加わったものと思われます。

(写真2)は以前からドーム内で使用していたSCHWARZと並べたところです。拡幅HF経緯台(真鍮耳軸+バランスウエイト付き)+スライド式眼幅調整機構は同じですが、スライド機構の精度向上、アルマイト加工、アリガタ式鏡筒単独取付機構、鏡筒スケアリング調整機構が追加されています。(写真3)この部分の構造はBINO Progress Report 製作状況速報の2010年10月5日前後に詳しく紹介されています。

スライド眼幅調整機構は樹脂系軸受けを使用した新型だそうです。ガタ無く、精密に動きますが、予想より鏡筒が長かったのでアイピースを覗きながら眼幅調整するのはやや困難になりました。(3枚玉の対物レンズが重いので接眼側が長くなる)より大型の鏡筒の場合は鏡筒固定+IPDクレイフォード眼幅調整式の方が使いやすいかもしれません。

BLANCAは焦点距離が900mmあるため、SCHWARZより一回り大きく感じます。双眼状態で重量は約24kgです。SCHWARZが約20kgですから、かなり重いです。(ともにバンド・スライド機構・ファインダー・ウエイトシステムを含む)ただグリップハンドルの太さが適切なため、鏡筒を1本ずつ持ち上げるのは比較的楽でアリガタ式の鏡筒単独取付けの効果もあり、重さ・大きさの割りに組み立ては簡単です。またグリップハンドルは鏡筒の指向方向を確認するのにも便利です。対空型ファインダーをはじめて装備しましたが導入時の姿勢が楽になりました。

合焦機構には減速微動装置があり、この部分が左右対称に調整されて出荷されています。特に高倍率時の合焦に便利です。尚、合焦機構の取扱説明書は入っていましたが、光軸調整機構の説明書はありませんでした。

ウエイトシャフトは360度回転できます。対物側が重いので後ろ側にシャフトを出して鏡筒の重量バランスを調整しています。(写真4鏡筒右側)

(BINO Progress Report 製作状況速報の2010年10月17日にも記事があります)ウエイト位置を簡単に調整できますので、アイピース交換に伴う重量バランス変動をすぐにキャンセルできます。ウエイトは1個約500gです。

操作ハンドルは鏡筒直付けです。SCHWARZでは架台取付方式でした。(写真5)それぞれ一長一短がありますが、握り部分の太さと材質の面ではSCHWARZ(樹脂製)の方が良いと思います。また鏡筒直付け式は、高倍率時にやや振動を生みやすい印象です。これはピラーに移動用キャスターを付けている事も影響しているようです。

【手持ちアイピースでの印象】
SCHWARZとBLANCAを簡単に比較してみました。最上段は倍率、実視界(見掛視界を倍率で割った概算値)、射出瞳径です。


EWV32mm(笠井)
見掛視界85度 アイレリーフ20mm 480g/1個

SCHWARZ150S
【23倍 3.6度 6.4mm】
BLANCAに比べれば星像は大きめですが十分立派な像です。二重星団などは賑やで美しく見えます。 また色を楽しむ二重星もアポ鏡筒より向いているかも知れません。 低倍率では乱視の影響が大きく出るので眼鏡着用など対策が重要になります。80%くらいから同心円状に像が流れ、最周辺部は崩れますが十分実用範囲です。自宅の空ではIDAS-LPS-P2フィルターを併用することが多いです。

BLANCA130EDT
【28倍 3度 4.6mm】
小さく収束するシャープな星像と、非常にすっきりしたコントラストの高い像質が印象的です。周辺像の崩れ方はSCHWARZとほぼ同傾向のようです。射出瞳径が少し小さくなり背景が暗くなるので光害カットフィルター無しでも使えます。SCHWARZでは自宅か らだと難物だった螺旋状星雲やNGC253も容易に確認できました。 また月を見ると背後の恒星群の中に浮かんだような姿を見ることができます。月をこれほど美しく見せる望遠鏡は初めてです。


イーソス17mm(テレビュー)
見掛視界100度 アイレリーフ15mm 725g/1個

SCHWARZ150S
【44倍 2.3度 3.4mm】
見かけ視界100度は絶景です。それも双眼視ですから尚更です。ただ双眼視だと、何故か視野枠がやや目立ちます。目幅や覗く角度に注意がいるのかも知れません。 乱視がある場合はディオプトロクス(乱視補正レンズ)を装着しないと性能を発揮できません。視野の70%辺りから像が流れているように感じられます。昼間の地上風景では色収差と糸巻状の歪曲がかなり出ますが、星では気になりません。

BLANCA130EDT
【53倍 1.9度 2.5mm】
SCHWARZで気になる周辺部での像の乱れが少なくなり、さらに見事な超広視界の世界が楽しめます。射出瞳径がちょうど良いようで、背景が適度に暗くなり星雲状天体が見やすくなります。M42やM33はSCHWARZよりもディテールが見えているようです。昼間の地上風景は、色は感じないものの、歪曲が気になります。


イーソス10mm(テレビュー)
見掛視界100度 アイレリーフ15mm 499g/1個

SCHWARZ150S
【75倍 1.3度 2.0mm】
17mmよりかなり引き出した位置で合焦します。非常に相性が良いようで超広角にもかかわらず、全視野ほぼ良像です。最周辺は若干ピント位置が異なり星像が肥大しますが、余り気になりません。光害が残る空では、この位の 射出瞳径が淡い天体の検出に向くようです。お奨めの組み合わせです。

BLANCA130EDT
【90倍 1.1度 1.4mm】
こちらも視野全面で素晴らしい像です。星像がSCHWARZより小さくなるので見栄えがします。 またコントラストが非常に高くM42の暗黒星雲部が穴のように見えます。月は全景が収まりますが、同時に細部構造まで良く見えます。DEEP-SKYから惑星まで幅広く楽しめる組み合わせです。


ラジアン4mm(テレビュー)
見掛視界60度 アイレリーフ20mm 345g/1個

SCHWARZ150S
【188倍】
アイレリーフが長く覗きやすいですがさすがに過剰倍率ぎみです。月や木星を見ると青紫のハロが気になりますが、模様は意外と良く見えます。第四世代型なので合焦操作がやや大変です。クレイフォード式なら 問題ないでしょう。

BLANCA130EDT
【225倍】
ハロ・着色も無く非常にすっきりした像を結びます。対物レンズは更に高倍率に耐えそうですが、架台の制約でこの位の倍率が実用限界のようです。 木星はこの倍率でも眩しいので、笠井のムーン&スカイグローフィルター かNDフィルターを使うと模様が見やすくなります。


倍率、射出瞳径が異なるので単純な比較は難しいですが、銀ミラーのBLANCAはアルミミラーの15cmSCHWARZと同等か、それ以上の集光力があるように感じます。優秀な光学系により星像が小さく収束する上に、銀ミラーの反射率UPが効いているようです。特に淡い星雲状天体の検出ではBLANCAが勝るようです。但し銀ミラー同士で比較すれば集光力はSCHWARZが上回るかもしれません。

今回、あらためて痛感しましたが、低倍率では乱視の影響が強く出ます。(私の乱視は右目-1.5(90度) 左目-0.75(110度))アイレリーフに余裕のあるEWV32mmでは眼鏡を着用すれば概ねOKですが、イーソス17mmではテレビューのディオプトロクス(乱視補正レンズ)が必要になります。ディオプトロクスの回転位置を調整すると別物のように星が点像になり、光学系の性能が1ランク上がったように感じられます。乱視の方がアイレリーフの短いアイピースを使う場合には必需品でしょう。またFの明るいSCHWARZの方が顕著に影響が出ます。

【まとめ】
当初TOA130等他の鏡筒も検討しましたが、直焦点撮影をする予定が無いこと、架台の制約から使用上限が200倍強程度である事、新たにアイピースなどアクセサリー類を揃える必要もあった事から、コストパフォーマンスに優れるBLANCAを選択しました。実際の星を見ずに発注するのは不安もありましたが、光学系は十分満足の行くレベルで、トータルバランスに優れた組み合わせにできたと思います。
一方で、15cmF5級アクロマートの優秀さを再認識しました。DEEP-SKY中心に100倍程度までならアポ鏡筒と遜色ない性能を秘めています。アポ鏡筒とはかなり価格差がありますので、差額をアイピースやアクセサリー類、遠征費用にあてるという選択肢は十分に成り立つと思います。
今後はBLANCAをドームに設置し、SCHWARZを移動用に使う予定です。

【おまけ ドームへのルームドライヤー設置】
BLANCA導入に合わせて、連続運転できるダイキン製のルームドライヤーを取り付けました。(写真5右側に写っています) 工事費込で約4万円でした。これは横浜のY.K.さんのレポートにあった機種と同じものだと思います。構造上、室温を若干上げてしまいますが、対物レンズの温度順応に顕著な悪影響を与える程では無いようです。

ミサゴ
2010年11月9日


Comment by Matsumoto/ 管理者のコメント;

3台目のBINOとしてBLANCA130EDT-BINOを導入してくださったミサゴさんより、さっそくリポートをいただきました。

まず、着荷時にメインのクレイフォード・フォーカサーが緩んでいたそうでしたが、うまく調整してくださいました。クレイフォード・フォーカサーは、物理実験用の円滑な4輪台車を、定盤(精密な平面)上で与圧を与えながら転がす原理ですので、構造は極めて単純明快です。  問題が生じるのは、与圧が足りなくなった時(ガタやスリップが生じる)や、定盤と車輪の間、またはドローチューブのフラット部とドライブシャフトの間に異物が混入した時(コロコロ感が出る)、あるいは、ノブからシャフトにかけて被覆した化粧パイプ等が移動してドローチューブにこすれている等の場合に限られますので、それらをチェックして原因を取り除くのは難しくありません。

今回は、この規模のBINOとしては、初めて鏡筒平行移動方式を採用してみました。 これは依頼者の方と相談の結果決定したものでしたが、私も新しい平行移動の機構を試してみたかった事情があり、速やかにその方式で合意に至りました。

初めての仕様だけに、操作性等、未知数なところがあり、得失が生じましたことには反省し、今後の改善に繋げたいと思っています。 ミサゴさんの長い経験に基く技量により、うまく使いこなしてくださっていることに感謝しています。

操作ハンドルは、今までも鏡筒固定方式のBINOで鏡筒直付けをしたことがありましたが、鏡筒平行移動方式に採用したのはこれが初めてでした。 今回はどうやら、今まで通り、CRADLEのベースプレートからロッドを延ばしてハンドルを付ける従来の方法がベターのようで、それに変更させていただく予定です。

お手持ちのアイピースとの相性等について、SCHWARZ150S-BINOとの詳細な比較をしてくださいました。アクロマートとアポクロマートの2種類のBINOについて、片方を完全に否定するのではなく、それぞれの存在意義を理解され、両方とも使いこなしておられることに感心しました。 より上の性能を目指すのが、人間のサガ(性)ではありますが、少なくともDEEP-SKY対象については、アクロマートでも十分に善戦することは、先日参加しました、双望会でも感じたことです。

また、銀ミラーの効果が口径の壁を越えることを検証くださいました。 銀ミラーの13cmがアルミミラーの15cmに匹敵もしくは凌駕するとのご報告は、他の方からも同様の感想をいただいておりますので、間違いないようです。 それは、単なる総合的な反射率の向上だけではなく、各色を平等に反射することによるコントラストの向上の効果が相乗するためだと思われます。 去る双望会の会場でも、多くの参加者の方々が異口同音にコメントしておられました。

望遠鏡の性能が良くなるにつれて、架台が課題になって行きます。 BINO製作の納期が延びるので、以前は架台の製作には手を染めないことにしていましたが、最近はそうも行かなくなって来ました。 バックオーダーの消化が滞りながら、自ら墓穴を掘っているような気もしますが、ここは加工手段を進化させながら乗り切らないといけないと思っています。

BINOは依頼者の方と一緒に作り上げて行くものだと思っています。 納品したらそれで終わりではなく、改善箇所があれば、依頼者の方と一緒に改善して行く姿勢でおりますので、今後ともよろしくお願いいたします。 ご多忙中にもかかわらず、懇切なリポートをありがとうございました