Visiters from Hungary (ハンガリーからの訪問者)

 

Two outland guys stopped at the approach of my shop looking at the display telescope on August 22nd. I just opened the entrance door and invited them into my shop. Then, we enjoyed talkings for a while and they took photos of us and promised me to send the files to me afterward. Here are the photos they sent to me recently.

They were Karate-Man who had come all the way from Hungary to have the Dan-Exam. at the Soke of their sect in Tottori City. They were not serious star gazers but seemed to have some interst in astronomy, too. One of them had “Google Sky” in his smart phone.

先月の22日頃、店のアプローチに置いていたニュートン反射に立ち止まっていた2人の外国人を店内に引き入れました。 基本コーカソイドの外見ながらも、何となく(遺伝子の)遠い因縁を直感した私が聞いてみると、やはりハンガリーの方でした。(これに似た経験を何度もしていましたので・・) 2人とも、空手の昇段試験か何かで、所属流派の宗家がある鳥取市にわざわざ見えたとのことで、空手のことに疎い私は驚きました。 シリアスではないものの、天文にも興味があるようで、一人の方のスマホにはGoogle-Skyがインストールしてありました。

母も交えてしばらく歓談した後、写真を一緒に撮っても良いかと聞かれたので、撮ってもらった写真です。 とかく反故にされ勝ちな旅先の約束事ですが、 帰宅したら写真をメールで送るという約束を律儀に守って送ってくれたものです。 人類の出アフリカまで遡れば皆兄弟なわけですが、ハンガリー人と日本人はそれよりも ずっと新しい時代レベルでの因縁があることを、彼らと会う度に感じます。 因みに、ハンガリー語の文法構造はヨーロッパの諸言語よりも日本語に近いし、名前の表記も 日本語と同じ、名字→名前の順番です。

(数年前に、イタリアの古楽アンサンブルのメンバーと飲む機会があって、メンバーの一人に微妙にアジアの血を感じたので、 遠慮なくそのことを伝えたら、他のメンバーが、「こいつの父親はハンガリー人だからな・・、」と納得げに言っていました。)

Another Swarovski ATX95-BINO / Swarovski ATX95-BINO 3台目

The two oculars this client had sent to me in advance seem to be the best match for this binoscopoe, in my opinion.Koenig 32mm offers specially high contrast and the calarity of the field. Though there was some distortion to be seen, it would be no problem in the night sky.

Swarovsky’s Zoom was superb with this binoscope. No distortion could be seen and gives very clear image to the edge of the field through the full range of the magnifications.The barrels of the both should be cut short so that they would not touch the mirror edge.(See the right photo.)

今回持ち込まれた2種類のアイピースは、(私の感触では)このBINOに最高のマッチングだと思いました。ケーニッヒ32mmは、視野のごく周辺の崩れや糸巻き状の歪曲等はあるものの、その単純な光学系(レンズ枚数が少ない)ならではの抜けの良さが際立っています。

Swaroのズームは、さすがに同一メーカーのマッチングのせいか、それ自体が優秀なのか、視野の全域で均一な結増性能を示していて、素晴らしいです。倍率の全ストロークで光軸もピントも微動だにしません。 ビルの直線もほとんど曲がらず、歪曲がほとんどありません。 複雑な光学系のはずですが、それを感じさせないヌケの良さがあります。低倍時の見かけ視界が狭い点はあるものの、アイレリーフも十分で、全ての焦点距離でメガネ装用の私が余裕で覗けました。

両アイピースとも、EMSのスリーブ類とアイピースのバレルを加工しないとこのBINOでは合焦しません。 防塵フィルターも観察時には撤去します。左の写真はSwaroズームのカスタマイズの図です。バレルが単体で外れないので、切断には周到な準備が必要でした。

BORG 71FL EMS-BINO完成

 以前BORG 71FL EMS-BINOのプロトタイプを報告しましたが、最近なんとか完成しました。 コンセプトは「公共交通機関と人力で運用可能な口径70mmの広視界対空双眼鏡」で、2インチアイピースでの実視野 が6度以上を目指しました(現在対空型でこのスペックの双眼鏡はありません)。 そしてもう一つの大切な条件は「接眼部が動かないこと」です。目幅調整のためのヘリコイドによる移動は 許容できますが、フォーカシングによる接眼部の移動はあまり好きではありません。というか、 一度でも接眼部の移動のないシステムを使うと後戻りできません。

 ということで、完成したのがこの双眼望遠鏡です。構造は至って簡単、H型ユニットに左右の望遠鏡 (ヘリコイドEMS仕様)を鏡筒バンドで固定するだけです。このH型のユニットはファインダーとアリガタを付 けるために一部突起部があるので、正確なH型ではありませんが、私はあえてH型と呼んでいます。この構造に よる双眼望遠鏡化はK-ASTEC製C型鏡筒バンドを活用することで可能となりました。フォーカシング用ヘリコイドはBORG製で対物ユニットを移動することでフォーカスシングしています。
 ところが、このヘリコイド は意外とヤワで「支え」が必要になります。ここで登場するのがすり割り式のC型鏡筒バンドです。通常の上 下分割式の鏡筒バンドでは対物ユニットを支え、かつヘリコイドでの摺動に対応することが上手くできません。 接眼部側の鏡筒バンドはただの固定なので、どちらでもかまいませんが、対物ユニット側の鏡筒バンドはこ のすり割り仕様であることが必須です。今回はH型ユニットを削りだし加工とし、鏡筒バンド連結部に溝を 付けました。これで、左右の鏡筒の平行性は無調整で担保されます。

 この双眼望遠鏡に組み合わせるアイピースは1.25インチがZeiss製のWw-Planokularです。焦点距離は23mm、 見かけ視界は65度の古いアイピースですが、視度調整機構が組み込まれています。凝った作りなので、見え 味は・・・と不安でしたが、他の最新型のアイピースを駆逐するだけの良像でした。このアイピースとの組合 せで17倍、3.7度の実視野が確保できます。さらに2インチによる広角仕様ではHyperion36mm (72度)で11倍6.5 度の実視野となります。使えるアイピースの種類が非常に多いこともこの双眼望遠鏡の特徴で、低倍率で も高倍率でもアイピースの選択には困りませんが、今はこの2種類に落ち着いています (ただし、Leica zoomも使えるので、こちらに移行する可能性はあります)。
 いずれにしてもおそろし く抜けの良い像の双眼望遠鏡です。同口径の双眼鏡と比較しましたが、網膜に届く光の量が明らかに違います。 感覚的にはガラス窓を通して見るのか、それとも窓を開けて見るのかの違いがあります。2枚玉の対物 と銀コートミラー2枚のおかげかもしれません。とにかく透過率が高い印象です。

 問題点もないわけではありません。鏡筒バンドの間隔、鏡筒長の最適解がまだ見つけられていません。 現状は無限遠の焦点位置に余裕を持たせる長さになっていますが、もう少し鏡筒を長くしてもいいと思って います。使用するアイピースもほぼ決まっているし、近距離から無限遠の合焦範囲を詰める必要があるかもし れません。ただ、実際に覗いてみるとそんなことはどうでもいいように思えてしまいます。とにかく枝葉末節 がどうでもよくなる楽しい双眼望遠鏡に仕上がりました。

 現在は私のような機械工作の素人でも既存の部品を組み合わせることで比較的簡単に双眼視を楽しむ ことができるようになりました。EMSの存在はその大前提ですが、的確なアドバイスや細かな手直しを引き受 けていただけるプロの手助けがあるからでもあります。EMS開発者の松本さんとK-ASRECの川野さんにこの場 を借りて深謝いたします。

黒木嘉典 (Kuroki Yoshifumi)
栃木県宇都宮市

Comment by Mtsumoto/ 管理者のコメント;

 黒木さんの自前設計によるBORG 71FL EMS-BINOの完成です。 じっくりと検討されたようで、見事に 理にかなった構造になっています。 まずは、心より、「おめでとうございます。」と申し上げたいと思います。

 このBINOの特筆すべき点は、H型のジョイントと前方のスリット付きバンドでしょうか。  一見しただけでは見過ごしそうなほど、さらっとシンプルに仕上がっていますが、ここをよく見ていただかないと、 このBINOの真価を理解したことにはなりません。

 実際に物を作るということは、自然に使い方も学ぶことになります。 作れないからと言って、その人がBINOを 使いこなせないわけではありません。工作や設計は全く出来なくても、BINOを上手に使いこなしている方もあります。 しかし、作れる人は、まず光軸調整に困ることはありません。
”使える”→”作れる”は常に真ではありませんが、 ”作れる”→”使える”は常に真です。 海外からの依頼は、もっぱらEMS部単体で自作されますが、使いこなせなかった例は 過去に一件もありません。

 この度は、非常に斬新なアイデアによるBORG 71FL EMS-BINOのリポートをいただき、ありがとうございました。  SWAROVSKI-X95-BINOの完成が梅雨の最中でしたので、多分まだ十分に見比べをされるチャンスがなかったと思いますが、 梅雨明け後にじっくりと観望されたご感想をいただけましたら幸いです。

Back-Focus saving (50ED;KOKUSAI-KOHKI) / バックフォーカスの確保(50ED;KOKUSAI-KOHKI)

I would often say “Never go panic when you find the original back-focus to be too short for the EMS.”.Here is a good example. Photo 4 (from left) shows that the original back-focus is only 108mm that is far less than “120mm” EMS-US or UM requires with no margin. 130mm or longer back-focus is desirable for the EMS-US(/UM) to use it with a margin of about 10mm.

In this case, minus profiled adapter is the answer, but how would you deal with it?The answer is the male flange of 2″ in diameter that will fit directly into the EMS housing.

EMS単体のご注文は常に最優先で、ほぼ即納を堅持してまいりましたので、今回もそれに従っています。(BINOの方、ご理解くださいませ。)さて、バックフォーカスが108㎜しかなく(写真4)、しかも31.7φスリーブのみです。 また、ドローチューブは細く、2インチバレルが挿入できません。EMSのバレルをショートタイプ(12㎜)に交換しても、バックフォーカスは遠く及びません。 あなたならどうされますか。

結論から申しますと、アダプター側(鏡筒側に接続)に2インチのオスフランジをセットし、EMSのハウジングを直接それに被せることで、EMS-USで(無限遠で)8㎜の余裕を残しました。(つまり128㎜のバックフォーカスを確保)

今回はEMSを特殊なメス接続にしたので、普通ならバレル先端にセットする内径30mmφの遮光環が取り付きません。 遮光環がなくても 致命的な問題は生じませんが、どこか取り付く所はないか探してみました。 すると、幸いなことにドローチューブ内径にP=0.75のネジが切ってあったので、それに合わせて遮光環の外周を加工して、独立的にセットしました。(写真3、5)

Cutting short of the eye-piece barrels (SWAROVSKI X95-BINO) / アイピースバレルの切除(SWAROVSKI X95-BINO) 

Low profiled 2″sleeves and shortening of the barrels of oculars are effective in making focus with the SWAROVSKI X95-BINO.

Leica-Zoom等が裸眼(個人差あり)で無限遠にもうちょっとでフォーカスしないとのことで、追加工を施しました。右の2つは2インチスリーブ(短33mm(標準は58mm))に奥まで入り、左(P027)のバレルは8㎜ほど挿入しきれない部分が上に残ります。 この状態で、左の2つは同焦点になります。(PO27mmは、バレル先端が防塵フィルター枠に乗る状態で止まります。左の2つのアイピースのバレルはそれぞれ、6mmと11mmずつ切削トリミングしました。言葉使いの便宜上、タイトルには切除と書きましたが、このくらいの短縮ですと、切削が合理的です。慎重にジグを用いて加工したのは言うまでもありません。)

一番右のLeica-Zoomは左2つのアイピースに対し、4㎜ほどピントが内に来ます。 追加工後も、強度近視の方は裸眼では合焦が厳しいかも分かりません。(追加工により2mm光路長を短縮) 上記は、全て防塵フィルターを付けた状態ですので、防塵フィルターを外し、より短い2インチスリーブ(28㎜)を用意すれば、ピントはさらに5㎜ほど余裕が出ます。

Low profiled adapters for the Leica Zoom (SWAROVSKI X95-BINO) / ライカズーム用 アダプター(SWAROVSKI X95-BINO)

Being asked for making low profiled adapters for the Leica Zoom eyepieces, I hit on a universal solution rather than a specialized one.The result is the low-profiled normal 2″ barrel and the low-profiled 2″ sleeve.

SWAROVSKI X95-BINO用のライカズーム 用アダプターのご依頼を受け、当初は当BINOに特化した物を考えましたが、一般的な解が見付かりました。

それは、ライカズーム側に、EMS純正の31.7→50.8ADを追加工したアダプターを、瞬時の着脱を前提に取り付けるもので、この方法ですと、そのまま他の望遠鏡にも共用できます。 EMS用の2インチスリーブは、当然ながら、ライカズームの挿入部先端が防塵フィルターに触れない最小限の高さ(33㎜)にし、上記50.8㎜ADも防塵フィルター枠と干渉しないぎりぎりの(挿入長)15㎜にしました。 アダプターが短いですが、浅い溝があることと、2インチスリーブが真鍮バンド式クランプになっているので、問題ありません。

同時に、PO27㎜用のアダプターもご依頼いただきましたが、こちらは上記33㎜高のLOW-PROFILE 2インチスリーブが共用でき、ピントもほぼ同焦点になることが分かりました。

Swarovski X95 EMS-BINO

最近のスポッティングスコープの高性能化はめざましいものがあります。これらのスコープの対物レンズ系の高性能化も すごいけれど、アイピース、特にズームアイピースの進歩は本当に凄いものです。なかでもライカのズームレンズはジックリ 使わせていただきましたが、まぁこれなら単焦点アイピースは要らないかもと思わせる像質でした。これほどの高性能のズーム アイピースが出現したらそれに一本化され、さらには接眼部にズームアイピースを組み込むメーカーが出てきても不思議では ありませんでした。それが、Swarovski X シリーズだと思っています。

先日その Swarovski ATX95 で友人と一緒にと昼の景色を見たり、星を見たりしていたのですが、そのよく見えること、 M81/82についてはそのコントラストも含めて驚きました。しかも、このXシリーズの対物ユニットにはフォーカサーも組み込まれ ており、とても軽量にできています。そして松本さんに連絡、相談、そして完成したのが Swarovski X95 双眼望遠鏡です。

コンセプトは「心と体の贅肉をそぎ落とした小型軽量お手軽双眼望遠鏡、ついつい使用頻度が高くなる双眼望遠鏡」でした。 双眼化において対物ユニットとEMSの接続アダプターが一番の難所でした。バヨネットマウントの攻略は難物でしたが、 このマウントを逆手にとってEMS取付角度の再現性が担保されたアダプターが完成しました。詳細は 松本さんのHPを 参照して下さい。これは画期的なアイディアです。

小さくて軽い10cm 級双眼望遠鏡ですが、今一歩の点もあります。まずは光学性能。スポッティングスコープとしての純正 接眼部仕様の場合、焦点内外像はほぼ対称です。しかし純正のプリズムを使用しない場合、焦点内外像は非対称になります。 明らかに負修正、つまりプリズム光路による補正も考慮した設計をしていると言うことでしょう。
問題は球面収差がある程度残った 状態を許容できるのか・・・ということです。私の場合、少なくともこの双眼望遠鏡の限界倍率である158倍は許容範囲と思います。 この倍率で土星を見ると本体の縞やカッシーニの間隙もしっかりとしたコントラストで見えます。これは人それぞれですが、 ハイランダー・プロミナーやミヤウチのフローライト/EDシリーズその他の双眼鏡では高倍率はなかなか得られないし、得られ たとしても左右の光軸の問題があります。SwarovskiX95 双眼では球面収差のわずかな残存はありますが、倍率の自由度は高い し光軸の問題は事実上ありません。私はこの望遠鏡の光学性能は十分及第点をあげられると思っています。なんと言ってもF5.8 ですから。

アイピースの選択。どのようなアイピースでも使えるわけではありません。推奨はテレビュ ーのアイピースになります。しかも視野環の位置が「6mm OUT」のものです。ただし、ナグラーズ ームはダメ。首から下が長すぎる。手持ちのアイピースで比較すると、デロスの像質が一番良いよ うです。でも、いかんせんデカイです・・・。倍率の色収差を考えると今のところナグラー type5: 16mmが私のデフォルトアイピースです。2インチアイピースも使用可能です。上手くいけ ば4.5度程度の実視界が取れます。専用アダプターで無限遠のピントが確保できるアイピースは 確認している中ではEWV32mm、テレビュー・パンオプテック27mm、ライカズーム8.9-17.8mmです。

Swarovski X95 EMS-BINO を星空の下で使ってみました。いつもの南会津のフィールドです。

設営は2,3分。Pelican 1550 caseから本体を出して、Gitzo 2380に載せるだけ。取っ手に等倍ファイン ダーを付ければ、後はキャップを外してアイピースを挿入すればOKです。しかも軽いので、この状態で 一式担いでウロウロできます。
写真三脚はスリックのプロフェッショナルデザインIIを使っています。 これのよいところは重さとエレベーター。エレベーターを調整することで、天球上のどの対象もほぼ同じ 姿勢で見ることができます。本体の全長が短く軽いし、倍率も高いわけではないので、何ら問題はあり ません。
傍らにはK&Mのマイクスタンドに載せたiPad2 があります。これはファインディングチャート用の 星図ソフトを表示させています。これは星仲間のKさんのやり方をマネさせていただきました。ただし、 望遠鏡と星図ソフトのWi-Fi接続はしていません。星をたどって導入する古式ゆかしき方法ですが、 この導入過程が意外に面白いのです。望遠鏡の実視界は2度以上あるので、M天体をはじめとするメジャー どころは瞬時に視野の中に導入することができます。多分光害まみれの空だと無理でしょうね。 これも十分美しい星空と広視界アイピースのおかげです。

組み合わせるアイピースは前述のごとく視野環の位置が「6mm OUT」のテレビュー製が中心です 。星空の下ではいろいろ試してみましたが、Nagler Type5: 16mm (x35@2.4°)がデフォルトでときおり Nagler Type6: 9mm (x61@1.4°)に差し替えるくらいでした。双眼なので惑星もNagler Type6: 7mm (x79@1°)くらいで十分楽しめます。最高倍率は経緯台の操作性も考慮するとNagler Type6: 5mm (x110@0.7°)だと思います。
上記アイピースのいずれをSwarovski X95 EMS- BINOと組み合わせても視野 周辺まで星は「点」です。これは非常に気持ちがいい。もちろん中心像も満足。見つめても、眺めても 楽しめます。「あのアイピースなら星の色がもう少しよくわかるかも・・・」などとも思いますが、 システムとして考えると、この組合せが最適解かもしれません。
今回は2インチを試していませんが、 ライカズーム8.9-17.8mmの場合はx31@2°とx62@1.3°になります(最低倍率と最高倍率しか使いません)。 もしかしたらこれが最小のセットかもしれません。

Swarovski X95 EMS-BINO の実際の見え味はどうであったか?バカバカしいくらいによく見えました。 視野一杯の星像も美しいし、抜けもいいし、これといった欠点が見つかりません。

M13、M3、M22、M11はザラザラではなくツブツブです。コントラストが高く星像が小さいので本当に 美しい。

M8、M20は圧感でした。特にM8は立体感のある微光星の集簇を取り巻くように星間ガスの存在が認識され ます。高コントラストと双眼視がなせる技なのでしょう。まるでKトレーディングの宣伝文句のようですが、 そうなんです。

M27は「亜鈴」ではなく「ラグビーボールです」出っ張った部分の濃淡がよくわかります。

M81、M82もいい感じ。M82の複雑な濃淡がおもしろい。M51は伴星雲に腕が伸びているのがわかります。

そしてはくちょう座の網状星雲。フィルターなしでハッキリと認識される。特に東側の星雲はまさに 「横顔」です。これには驚きました。

実際の星空を覗いた感想ですが、このBINOの特徴は抜けと高コントラストかもしれません。Swarovski の レンズコーティングとEMS ミラーの銀コーティングとの相乗効果でしょう。この美しい視野の星々を眺めて いると多少の球面収差や色収差の残存はもうどうでもいいことだと再認識しました。

Swarovski X95 EMS-BINO は小型軽量による易運用性、十分な集光力、短焦点による広視野、そして美しい星像、 これらが高次元でバランスされたすばらしい双眼望遠鏡でした。おそらく10cm 級の双眼望遠鏡では最高傑作だと 思います。やっと「青い鳥」を見つけたのかもしれません。最後にこの双眼望遠鏡の具現化に多大なる御尽力を いただいた松本さんに深謝申し上げたいと思います。

黒木嘉典 (Kuroki Yoshifumi)
栃木県宇都宮市

管理者のコメント;

This binoscope is definetly the advent of the new concept of the EMS-BINOSCOPE in that it is an ideal combination of the Objective Unit of a Spotting Scope(SWAROVSKI X95) and the EMS.
I must give Mr.Kuroki, who had the foresight of the marvelous results and the courage to take it into practice, my biggest applaud.
You can see my processing reports in the link quoted below.
Binoscope Making Report,dated 4/27,28; 5/2,15,16,25,31; 6/2.

BINO製作情報速報で何度かご紹介しておりました、SWAROVSKI X95-BINO について、黒木さんよりさっそく詳細なユーザーリポートを いただきました。 今回までにご報告いただいている内容も含めた集大成とも言える、価値あるリポートです。  ご計画の動機から実際に使用されたご感想まで、非常に懇切におまとめいただきました。

筆者の今日までのEMS-BINOや広範なご自作経験を含めた各種光学機器とのかかわりの深さが、今回のリポートの説得力を高めています。   趣味の世界では、マニアは独自の一面的な 判断に陥り易いものですが、筆者は対極の選択肢も知り尽くした上で今回の選択をされたことが、本文からも、 また過去のリポートからも分かります。

スポッティングスコープは純粋に光学的に見れば、天体観望に特に適した光学系でないことは、黒木さんも本文でご指摘の通りですが、 その生産台数の桁違いの多さからか、工業製品としての成熟度は一般的に言って天体望遠鏡よりも格段に高いということが言えると思います。 その成熟度とは、軽量さ、コンパクトさ、また使い勝手、メカとして、また光学的な性能や外見の美観までを含めた総合的なものを指します。 そして、ごく最近になって SWAROVSKI とごく一部のメーカーがユニット分割構造のスポッティングスコープを生産し始め、EMS-BINOへの利用が 可能になったということです。

今回の黒木さんの革新的な挑戦の成功が、天体望遠鏡業界の今後の製品開発に何らかの好影響を与えることを願っています。 スポッティングスコープよりもシンプルな光学系の天体望遠鏡が、現行のスポッティングスコープのような 軽量化、コンパクト化、そしてモデュール化を達成できないはずはない、と私は考えます。 天体望遠鏡業界では 、唯一BORG(トミーテック)だけが、かなり以前より各部パーツのモデュール化や軽量化の先駆けを成してはいるものの、私に言わせれば、 まだまだ「天体望遠鏡」としてのステレオタイプの範疇からは脱却していず、今後の開発に期待したいと思います。

なぜスポッティングスコープはあんなに” Cool”、格好よいのか? 天体望遠鏡の生産台数では、あの流線型の鏡筒ラインはコスト的に 本当に無理なのか?等々、天体望遠鏡業界も真剣に考えるべき時期に来ているのではないでしょうか。
ステレオタイプや面子は合理的な思考を破綻させます。先端の客観データをいくら示されても、未だに銀蒸着へのアレルギーが治癒しないことや、 アイピースのピント位置の統一が出来ない天体望遠鏡業界の現状を見ると、悲観的になってしまいますが、早く目を開いて欲しいものです。

黒木さん、この度はまたタイムリーに素晴らしいリポートををご投稿くださり、本当にありがとうございました。 他の件も含めまして、追加リポートがございましたら、 またよろしくお願いいたします。

追記: ななつがたけ北天文台の”天文台日記”にもリポートを投稿されていますので、こちらもご参照ください。

2013年6月9日
2013年6月5日
2013年6月3日

追記2: SWAROVSKI-X95-BINOの製作記は、
当サイトのBINO製作情報速報の、 2013年、4月/27,28; 5月/2,15,16,25,31;
6月/2 に掲載しています。

Customizing the EMS-US set adapting to the smallest IPD,”51mm”!! / 最小目幅51mmへの挑戦!!(EMS-US)

The standard housing of the EMS is 59mm in the outer diameter, and 50.8mm in the inner one.So, it seemed to be almost impossible for the standard housing to adapt to the smallest IPD of 51mm, or at least to be required the large trimming of the housing and the repainting afterward.In spite of the negative estimations, I found a good solution to get the minimum IPD of 51mm without trimming the housing at all. The answer is the eccentric 2-inch cap. Of course I should shift the mirror to some extent to the lower side in advance.That’s “Deceptively Easy” isn’t it?

「瞳孔距離 51mm の家族に双眼視の感動を味あわせたい!」 そんな真剣なご相談を受ければ、一肌脱がないわけには行きません。^^; さらに防塵フィルターも設置されたいとのことで、頭をひねりました。 まず、EMSの標準ハウジングの外径=59mmで、目幅方向対面部のトリミングが最初から施してあるため、 アダプターを少しトリミングすれば、57mm程度までのカスタマイズは簡単です。 ところがそれ以下になると、今度は塗装済みのハウジング自体を削らないといけません。ハウジングの内径は50.8mmあるため、一定の壁厚を残せば、54mmくらいまでが現実的なところです。 それにしても、トリミング部の補修塗装等、頭が痛いものです。

いろいろ考えた結果、良い方法があることに気付きました。 それは、31.7ADの基部の2インチキャップの36.4φ,P=1ネジを偏心させることです。EMSのハウジングは、ミラーのセンタリング移動も出来るので、金物の偏心に即してミラーをシフトすることが可能です。(と言うか、ミラーのシフトでカバーできる範囲の2インチキャップの偏心で51mmが達成できるということです。)

この手の加工はCNCフライスの真骨頂で、今回もヘリカル加工が功を奏したことは言うまでもありません。

以前は、20年以上前に特注した36.4φ,P=1のタップを多用していましたが、それを使うよりもずっと能率的かつ正確です。 このタップ、数年前に見学に見えた(望遠鏡関係の)加工業者さんにお貸ししたきり返って来ませんが^^;、ヘリカル加工を習得してからはタップがなくても困らなくなりました。(停電時やマシンの故障時以外は^^;)

SWAROVSKI ATX95-BINO completed!! / SWAROVSKI ATX95-BINO、完成!!

SWAROVSKI ATX95-BINO is completed. But, one of the objective unit is kept by the client (not here) and this photo actually is the composite one of the left and the right unit.You can see how I have treated the annoying bayonet.

SWAROVSKI ATX95-BINOが完成しました。 ただし、今回当方でお預かりした対物ユニットは一個のみでしたので、左の完成写真は、左右仕様でそれぞれ別々に撮影した写真の合成です。依頼者の方がBINOの上級者になられますと、こうした芸当も出来るようになります。

左のアリミゾは前後軸で、右のアリミゾは左右軸に配置しており、従って左の鏡筒は前後のみに移動出来、右の鏡筒は左右のみに移動できるようになっています。つまり、簡易な目幅調整が非常にシンプルな構造で実現しています。 光軸の初期調整は、左のアリミゾが水平方向の微調整を、右のアリミゾが上下方向の微調整をそれぞれ受け持ちます。 運搬用ハンドルユニット(兼ファインダーベース)は今、アルマイトに出しています。 (多分、アルマイトは今日仕上がると思うので、今日中に発送できると思います。)

今回のBINO作りでの最大の難関、かつ解決への核心は、いまいましい^^;バヨネットをどう扱うか、ということでした。理想的なのは、純正のオスのバヨネットに完璧に適合するメスのバヨネットを作ることですが、これは加工のハードルが高過ぎたことと、それだと構造的に十分にlow-profileに出来そうになかったため、それは早々に回避しました。

そうなると、バヨネットの爪の奥の細い径の所に固定ビスを当てるのが常識的な考えかと思いますが、それだと、対物ユニットにEMSを圧着させることが出来ません。 そこで、私は、一見あり得ない方法に打って出ました。ローレットネジの先端ポリアセタールがバヨネットの爪の裏側ではなく、またバヨネットの爪の真心でもなく、爪の厚みの奥の角線に当たるようにしましたが、目算は適中しました。 こうすることで、バヨネットがテーパフランジと同じ役割を果たすわけです。

さらに、バヨネットの爪を逆手に取り、上の画像の赤い矢印で示したアジャスタブルな突起を配置することにより、EMSの固定アングルに完璧な再現性を持たせることにも成功いたしました。

黄色い矢印は、EMSの接続フランジを固定するものです。 ここを分解することはまずありませんが、アダプターの内部構造が見えるように分解して撮影しました。 実際には、アダプターはEMS側に常にセットして、接続の再現性を持たせます。

TOA150-BINO completed!! / TOA150-BINO 完成!!

TOA150-BINO is completed. It will be the advent of the next stage of EMS-Binoscope making.

難産でしたが、やっと完成しました。 この度はいろんな面で良い勉強をさせていただきました。今後のBINO作りに役立てさせていただきたいと思っています。

今回は搭載重量の制限が厳しかったので、架台はほぼ無改造の方針で臨みました。 そのため、BINO本体は水平回転軸の真上ではなく、少しだけ右に寄っています。 左のウェイト軸ホルダーにスペーサーを噛ませているのは、そのためで、三脚とウェイトが干渉しないようにしたものです。これは当方での架台の動作チェックのためで、納品時にはスペーサーは撤去します。(納品先ではピラーになるので、スペーサーは不要)

架台のメンテ等で、鏡筒を下ろす必要が生じた場合は、鏡筒を1本ずつ抜き取ります。 もちろん、先にEMSや合焦機構、さらに鏡筒末端のフランジを撤去しておかないといけません。 バンドの内面にはテフロンテープを貼っていますので、コツさえ覚えれば、鏡筒の抜き取りも前後バランスの初期調整も比較的楽です。 フレームの精度剛性は十分なので、光軸の再現性は万全です。

 

(同日追記) 今回のセンターフォーカス・システムで、左右の視度に差がある場合にどう対処するかについて、どちらからもご質問がないので、先回りしてご説明します。^^; 結論から申しますと、目幅調整用のヘリコイドを用います。 通常の眼幅調整は、リンク画像のように、左右同時対称的にヘリコイドの転輪を回します。 次に、右眼の近視が強い(遠視が弱い)不同視の方は先ほどの作業に続けて、左右のヘリコイドを今度はそれぞれ反時計回り(同方向)に同量回します。(←同量回すことで、目幅の変化を相殺します。) 左の近視が強ければ、当然その逆に回します。

「そんなことをしたら左右のアイピースの高さがずれてしまいます。」・・と、おっしゃいますか? それでは、私からの質問です。 「市販の90度対空双眼鏡では、左右の視度をどう補っているでしょう?」お分かりでしょうか。 市販の双眼鏡も(直視、対空に限らず)、アイピースを前後(上下)させて合焦させています。 つまり、不同視(左右の屈折度が違う方のことで、視力の差は無関係です。)の方は程度の差こそあれ、左右のアイピースに段差が付いた状態で双眼鏡を覗きますが、眼鏡で補正出来る程度の不同視なら、全く問題なく覗けることはご承知の通りです。

しかも、(ここからが極めて重要なところ^^;)EMSの場合は、目幅ヘリコイドの軸(つまり第1反射光線)がアイピースの光軸と60度の角度を持つため、同量の不同視で生じる 左右のアイピースの段差は、同軸のヘリコイドで補正する市販の双眼鏡の1/2にしかなりません。(cos60°=1/2)(つまり、不同視補正時のアイピースの段差は通常の双眼鏡の1/2しか生じないということです。)

この方法は、左右の視度差を先に補正してしまい、最後は双眼視のままピントを追い込むというものですが、どうしても片眼をつぶりながらダイレクトに合焦操作をしないと気が済まない方もおられるかも分かりません。 しかし、それは単なる習慣であり、むしろ、単眼視での合焦操作は、眼の調節が入りやすく、どうしても近視寄りのピントになり勝ちです。 実際、検眼(屈折度測定(視力検査ではありません))に於いても、最後には両眼開放で行った方が調節の介入が起こりにくいことが分かっています。