The Blue Bird of Happiness /(幸せの青い鳥)

There seems to be a fairly good number of people who are not pleased with their eye-glasses.

Some portion of them have unhappy eyes of extreme anisomyopia with the dominant eye of unhappy choice, or other factors for which it is very difficult to prescript comfortable glasses; but what I am goning to tell now is about those who have no such extreme factors on their eyes but still, who are not pleased with their glasses even after buying so many glasses at as many optometlists or opticians, just as if they have been bar-hopping in search of the imaginary Blue Bird.

…..To be continued.

今日、これからお話することは、メガネに悩んでいる方にとって、極めて重要なことだと思います。 話をすっきりと組み立てるために、例外を最初から省き、敢えて断定的な言い方をしますことを、事前にお断りしておきます。
確かに、不幸にして、メガネでの矯正に無理があるような極端な不同視(左右の極端な度数差がある眼)等を持つ方も一定数ありますが、今回は、眼自体には著しい屈折上の欠陥はないにもかかわらず、 当人もしくはメガネの作り手側の不適切な判断が不幸を産んでしまっているケースが、あまりにも多いということをお伝えしたいと思います。

昨今の大手の全国チェーン店の、有名芸能人を使用した集中豪雨的なテレビ広告には視聴者の大半はすっかり洗脳されるようで、(ベッキー、いい加減にしろ!^^;) 当店のような零細個人商店には対抗するすべもなく、来客数は 減少の一途を辿っていますが、代わりに、「あらゆる医療機関やメガネ店を渡り歩いたが、満足できるメガネには一つも行き当たらなかった・・。」 と、当店の噂を最後の砦のように、辿り着かれるお客さんが時たま見え、私はその度に俄然張り切って腕を揮うわけです。

最近、外国人の方のメガネを作りましたが、出来上がったメガネを掛けていただいてすぐに、
「私は母国時代より今日まで20個くらいのメガネを作りましたが、こんなに最初から快適なメガネは初めてで、 本当に感動しました。 『新しいメガネには、しばらく慣らす期間が必要なもの』と理解していましたが、それが間違いだったことを初めて知りました。」
というコメントをいただき、眼鏡屋冥利に尽きる思いをしたところです。

眼は左右2つあるので、単純ではありませんが、ここで長々と専門的なことを書いても読み飛ばされると思うので省きます。
要するに、「良く見えるメガネと、掛けて快適なメガネは別だ。」ということです。 完全矯正値の9割の度数にしておけとか、8割にしておけとかいった 単純なものではありませんが、大事なのは、メガネを掛ける方の虚飾のない本音のニーズがどこにあるのか、ということを、本人がまず冷静に自問する ことが大切で、次にメガネ作りに関与するプロも、お客(患者)を決して無意識にでも誘導することなく、本音を的確に引き出して感じ取ることが大切なのです。

遠近両用(特に累進多焦点レンズ)を例に挙げますと、遠方視力と近方視力の両方を同時に欲張らないのが、度数選定のコツです。 自分のライフスタイルで、どちらを優先すべきかを冷静に考え、常に遠近の度数差が最小限になるように配慮することが大切です。 検者側は、被検者(お客/患者)を誘導するのではなく、本音を見抜かないと いけません。 検眼椅子に座らせられて視力表を見せられる異常心理下でば、どうしても、よりよく見える方の度数を選び勝ちです。 被検者が検者に流される だけでなく、検者も被検者によく流されます。 しかし、メガネが出来てから、「あなたがこの度数(強い方)が良いとおっしゃったでしょう?」 などと言うようでは、メガネ屋(眼科医)失格です。^^;

「”メガネ”がもともと嫌いだ。」という方が結構います。 実は、メガネもそうした方を嫌います。^^; 顔にかかる水を嫌う間は、良いスウィマーになれないのと同じです。しかし、今日の話の主旨は、顔にかかる水に慣れろ、というのではありません。

メガネが嫌いなら、嫌いな人に適した処方がありますよ、ということを言いたいわけです。 「わしゃあ、メガネを外すとほっとする。」と言う人が意外に多いのです。 「じゃあ、なぜメガネを掛けるのですか?」と問うと、 「掛けんと見えませんがなあー。」と返ります。

私がメガネが嫌いそうなお客さんによくする説明にこんなのがあります。 「ご飯が美味しい濃い味だったら、決して一生主食として食べ続けられませんよ。ほとんど味がないところが良いところなんです。 メガネも 一緒です。 完璧に見えなくても、生活に困らず、掛けていることを忘れて、そのまま顔を洗おうとしてしまったり、掛けているメガネを探すくらいの 方が良いのです。」

メガネが嫌いな人は、多分、次のように考えているのだろうと思うふしがあります。 「大嫌いなメガネを掛けてやるのだから、掛けた瞬間から、ばっちり見えないといけない。 裸眼と大差ない見え方なら、嫌いなメガネを掛ける 価値が無い。」 しかし、実際はそうではありません。 そうではないということを、テストレンズを仕組んだサンプル眼鏡を交えてじっくりと説明すると、 大方の人は理解してくれます。 外したくなるメガネよりも、掛けたくなるメガネの方が良いメガネだということ。 そしてそんなメガネが 可能だということを。

・・・つづく。

7月28日追記

何個メガネを作っても満足できない人には、二つのケースがあります。 一つは、不幸にしてろくでない眼鏡屋や眼科医としか出会えなかった人で、一定の割合でそうした例が あるようですが、これは業界の現状を考えれば不思議はありません。^^; しかし、今回のテーマはその場合ではなく、自分が空想した(あり得ない)理想のメガネを捜し続けている人、つまり、実在しない幸せの青い鳥を 求めて流浪している方に引導を渡すことです。

メガネレンズは、顔に装着するという事情から、むやみに複雑に重い光学系を構成するわけには行かないので、常に単レンズであり、諸収差の残存には最初から妥協する前提で成り立っているものです。 まず、メガネ装用者は、この点を肝に銘じておく必要があります。 ただ、幸いにして、左右の球面度数(非乱視の度数とご理解ください)が同じで、乱視の度数も軸も左右でほぼ等しい方は、 像の歪曲や変形、視線の移動によるプリズム効果等が左右で相対的に打ち消しあうために、簡素な単レンズ系であるメガネレンズでも、よほどの特異体質でない限り、慣れないようなことはまずないでしょう。

しかし、左右の度数差、乱視軸の不同等がある方と、遠近両用(とくに累進焦点メガネ)装用者は、メガネでの矯正に限界がある(つまり妥協すべき部分がある)ことを知らないと、いわゆる”青い鳥探求者”となり、多大な時間とお金を無駄にすることになるでしょう。

左右の度数差が極端な人は、例外を除き、屈折異常度の強い方の度数を、弱い方に歩み寄らせる形で、左右差を最小限にすることが、快適なメガネを実現するために必要です。 特に、度の強い方が利き目でない方は幸せで、その眼は相当ぼけていても、両眼視にはほとんど支障はありません。 逆に、左右差のまま完全矯正すると、メガネをかけた瞬間は良くても、時間が経つにつれて頭が痛くなったり するものです。 乱視の場合も、同じような考え方で妥協点を探ります。 多少の軸の左右差であれば、極力左右の乱視レンズの軸方向を一致させます。 その操作が不都合なほどに左右で方向がかけ離れている場合は、 時には乱視の矯正を諦める方が好結果につながることもあります。

累進レンズ(遠近両用)に対する、(幸せのために^^;)取るべき態度ですが、まず、累進レンズは、レンズメーカーが宣伝するように、「どの距離でも理想的にはっきり見えるメガネ」では決してないということです。 使い道具は全てそうですが、汎用器(複数の機能を持つ道具)は、単独の機能に着目すると、専用器に適うはずがないということです。

爪切りや鋏やナイフや栓抜き等が一体になった道具がありますが、それぞれの機能では、専用の道具にかなわないものの、キャンプ地や山での遭難時等では、それが命を 救うことすらあるでしょう。 汎用器は、汎用性そのものが目的な場合に携行してこそ、意義があるわけです。 自宅のキチンなら、それぞれの道具をきちんと整理して 置いておくのが正解でしょう。

累進焦点メガネもそれと同じで、遠用と近用(さらには中距離用)のメガネを頻繁に着脱交換するのが現実的でない場合に、ありがた味が出るわけです。 累進レンズ不適合の性格の方が異口同音に言われることに、「このメガネはぼける部分があります。」というのがあります。
一方、すんなりと累進レンズを使いこなす方は、 もともと不満がないので、こうしたネガティブな感想は全く出ないわけですが、多分、次のように理解しているはずです。 「このメガネは、(距離に応じて)はっきり見える部分がある。」 つまり、累進レンズをネガティブに見れば、遠方を基準にすると、近用部は遠方がぼける度数帯を構成し、 読書距離を基準にすると、遠用部は近くがぼける度数帯を構成し、同じメガネの枠内にそれぞれが邪魔な領域を占めることになるわけです。 一方、ポジティブに見れば、メガネの枠内のどこかには、必ず目標の距離に対応した領域が存在し、そこで見る限りはっきり見えるわけですから、「このメガネはよく見える部分が ある。」と言えるわけです。
「ぼける部分がある。」というのと、「はっきり見える部分がある。」というのは、ほぼ同じことを言っているようですが、 装用者の姿勢(捉えかた)で、評価は正反対に分かれるわけです。

・・・つづく。

Cataract / 白内障

There must be very few people these days who don’t know about surgery to remove cataracts.
Cataracts are clouding of the eye’s lens, and the prevalence increases after the age of 60. In other words, there is almost no one who is free from suffering from cataracts in our lifetimes.
But, we are very happy living in the era of cataract surgery that can be done easily and safely. You can restore the clarity of your eye lens to the very level of a new born baby just after a “15 minute” surgery, with no fear or pain. The eye’s cloudy natural lens is removed and replaced with a clear artificial lens implant, called an intraocular lens or IOL.
But, I would like to share my professional opinion with you before you decide to have cataract surgery. As you know, every lens has its own power which is also true for the IOL. It is up to you which one you choose from the various kinds of IOL available, Myopia (shortsightedness),Hyperopia(farsighted ness), or Emmetropia( the correct eye).
I am not going to argue with your decision should you choose emmetropia, but I must warn you that your new IOL will have a fixed focus and that emmetropia may not necessarily be the happiest or best choice for you.
The artificial lens will never bulge according to the distance when you stare at a close object or target, as the natural lens does. Therefore, you should review your lifestyle carefully before you decide which distance is best for you. If you consider it seriously, most of you will arrive at the conclusion that the optimum focus distance of between 2-meters and 50cm, rather than an infinite distance; which means a moderate Myopia lens is the right choice.
 白内障や眼内レンズのことを知らない方は少なくなりましたが、皆さん、”距離”についての認識が甘すぎて、術後に不便している方が非常に多いので、警鐘を鳴らしておきます。
 濁った水晶体を取り除いた所に挿入する眼内レンズも”レンズ”ですから、あらゆる度数が可能です。 つまり、白内障手術は、一生を通じて、好きな屈折力の眼に産まれ変われる、千載一遇のチャンスなわけです。 そうした極めて重大な決断が迫られる、手術直前の段階で、(一般的に)眼科医は(相手が老人なので、詳しい話は理解できないと思うのか?)さらっとしか明視距離のことに触れず、あれよあれよと言う間に手術を終えられた患者が後になって、自分のライフスタイルにそぐわない、新しい我が眼に困惑するわけです。
 眼内レンズは、生身の水晶体と違って、常に固定したままで、近業時に都合よく調節して(膨らんで)くれません。たとえば、無限遠に合わせてしまう(つまり正視)と、屋内では読書距離は当然ながら、それより遠いテレビの距離でもややボケて見えるわけです。 優先的に見たい距離は、個々のライフスタイルや生活環境、好みによって変わるので、手術前にはじっくりと自分のライフスタイルを見つめ直し、公約数的な明視可能距離を決定しておく必要があるのです。
 希望の明視距離を数字で担当医に指示しない場合は、概して正視に近い眼内レンズを入れられることが多いようですが、上記を真剣に検討すれば、大体1.5m~0.5mくらいの間に答があるはずです( 近視度に換算すると、-0.75D ~ -2.0D くらいの弱度近視 )。
 先日、(女性の)画家の方に(手術前の)相談を受け、「50cmでやってもらってください。」とご指示し、結果、大変喜んでいただきました。(担当医師は、「本当にそんなに近くして大丈夫か?」と、何回も念を押したそうです。^^;)
 まあ、どの距離を選択したとしても、術後の眼は調節力を失っている(究極の老眼)わけですから、全ての距離に対応するには、遠近両用メガネ等が必用になります。
ただ、裸眼の時にどの距離が見えたら一番便利か?ということを真剣に考えておくことが重要だということです。
判断基準は他にもあるでしょう。 メガネが使えない極限状態を想定したサバイバルを重視したり、女性の場合は、裸眼で鏡を見てお化粧できることも重要です。
また術前の眼の屈折状態(近視,正視,遠視)も考慮する必要があります。元が遠視だった場合は近視度が強くなったら遠方視力に不満を持つでしょうし、元が強度近視だったら、裸眼で読書距離が完璧に見えた方が良いでしょう。
眼に関する他の日記

Example of the rotative device for a binoscope on an equatorial. / モデュール化した回転装置の利用例

I have just received the acknowledge e-mail with some photos from the lucky guy who got the first moduled rotative mechanism for an equatorial mount.He has proved the success of the modularity of my rotative mechanism for a binoscope on an quatorial mount. Because, he could set his EDT80mm OTA onto the system to form an equatorial version of the fine binoscope, just as easily as a piece of cake.

最新型の回転装置を get された方から、さっそく、感激のメールと共に画像が送られて来ました。 全く何の問題もなくEDT80mm(通常は汎用スライドマウントで経緯台モードでご使用;鏡筒は元の段階で40mm短縮加工済み)をセットされ、新型回転装置のモデュール化の成功を証明してくださいました。

モデュール化とは、各々のパーツが光軸精度に責任を分担する方法のことです。従来の考え方は、複雑に組み立てたBINOの光軸の平行度の(誤差の)収支を最終的にゼロにすれば良いという発想でしたが、最近の私の考え方は、構成パーツそれぞれに光軸の精度を最大限確保させる(責任を持たせる)ものです。

たとえば、鏡筒にアリガタを何らかの方法でセットするとしましょう。 そのアリガタが鏡筒の光軸と極力平行になるように、設計上も工作上も(再現可能な範囲で)最大限の努力をするわけです。 他の全ての構成パーツがそういうふうであれば、それらを組み合わせても、BINOに組み立てた時の最終的な光軸は、最初からかなりの精度で収束することになり(経験的に立証された)、EMSのX-Y調整の安全圏に納まる、というわけです。 このことを、ここ数年(喉を枯らして)私はモデュール化、と言って来たのですが、やっとお分かりになったでしょうか。^^;

Equatorial rotative module / 赤道義用回転装置(BINO用)

Now it is ready to be shipped. The inner parts were anodized from the stage of 6/7 article.

出直しのために作り直しとなった回転装置ですが、パーツのアルマイトが完了し、明日ラッキーな方の元に嫁ぎます。^^;(モデュール化(汎用化)タイプの回転装置、第1号機)

ある日の「医師当直日誌」より(I さん筆)

先週、外来に出ている時、二六歳の青年が診察を受けに来た。一年前から胸痛、 動悸、喉頭狭窄感等の症状があり、近くの病院にかかっていたという。父の交通事故死 などのショックもあり、会社もほとんど休みがちであった。病院でいろいろ精査したが 特別の異常もなく「精神的なものでしょう」と言われ精神安定剤等の投与を受けていた。 診察してみて確かに不安神経症的な病であろうと思われた。カルテの住所を見るとH市で ある。勤務先も確かK市で盛岡と関係ない。「どうして当院へいらしたのですか」と訊く と、県立中央病院時代の私のことを聞いて来たのだという。私はすっかり感激してしま った。医師冥利に尽きるとはこのことである。患者さんは有難いものだとつくづく思った。 H市から医大や県立中央病院へ行くのでなく、そこを素通りしてはるばるこの盛岡の外れの地 まで来てくれる……。その患者の心を想い責任の重さを痛感しないわけにはいかなかった。
その晩、県立中央病院時代のことをあれこれ考えた。当時の受持患者は今の四分の一 以下。検査や外来で忙しかったが、患者と話す時間も結構多くとれた。心身症のよう な患者もいて、ベッドサイドに腰掛けて話し込んだり、家族や職場の上司と面談した りしたものだ。入院している高校生の勉強がおくれるのが気の毒で数学を教えたりも した。確かに「手のかかる」患者達で、努力が実を結ばないこともあったが、無駄な 苦労をさせられたという感じはない。彼等は私に医師としての道を指し示してくれ たという想いが強い。
初心忘るるべからず
私を訪ねて来てくれた青年の顔を思い浮べながら、改めてそのことを肝に銘じた次第。

(1987年8月3日)

日誌に書いた二六歳の青年Aさんは、その後もキチンと二週おきに通って来てくれ ている。漢方薬が効いたのか症状も軽くなり、会社にも行けるようになった。 「胸が苦しくったって、 動悸がしたって、『これがオレの生きている姿なんだ。 文句あっか』と思うといい」とか「私の好きな宮本輝という作家も君と全く同じ病気。 価値のある立派な人がなる病気だと私は思う」と話したりしている。Aさんも病気がよく なれば私の所には来なくなるだろう。それが悲しくもあり、医師としての喜びでもある。

その人との出逢いに運命的なものを感じさせられる存在を人誰しも持っていると思う。 私が県立中央病院時代に出逢った患者のBさんは、そのような一人であった。Bさんは、 循環器科病棟に入院していた四六歳の女性(当時)で、トイレ歩行も困難な程の重症の 心臓弁膜症を患っていた。この人がある時から腹痛を訴え出し、消化器科の医師に精査してもらったが原因がわからず、やむなく各種精神安定剤や鎮痛剤を試みたが効きめがなく、ついには月何十本もの麻薬のモルヒネの注射を受けていた。しかし、それでも痛みのコントロールは不可能であった。食止めにして点滴だけで栄養を取る方法も試みられたようだが、やはり効きめがない。当時私は医師になって二年目で、研修医として循環器科病棟に配属されたばかりであった。科長回診に従いていって、初めて出逢ったBさんの峻しい表情に私は強烈な印象を受けた。怒り、諦め、苛立ち、哀願……ありとあらゆる複雑な感情がその表情にこめられていた。私は主治医にBさんの腹痛にアプローチさせてくれるようにたのんだ。医師や看護婦が彼女の訴えに真剣に耳を傾けていないように思われたし、漢方薬なら何とかなるかもしれないという期待もあった。病状の把握が難しく治療は困難を窮めたが、漢方薬開始後、麻薬や鎮痛剤の投与は一切不用となった。しかし、腹痛の訴えはかなり執拗であった。一年にもわたる腹痛が簡単に治るはずはなかった。Bさんのベッドのわきに腰を下ろし、彼女の話に耳を傾けるのが私の日課であった。心臓弁膜症による心不全症状が出たのが二十代、その頃手術を受けたが症状の改善に至る程の効果はなかった。結婚をしたが、子供をつくるのは医師から止められた。ずっと入退院の繰り返しで、夫に妻らしいことは何一つしてやれなかった……。そのような話をしている最中にも痛みのため顔は歪んでくる。Bさんのお腹をさすってあげながら話を聞くこともあった。こうして何回か訪室するうちにBさんの顔も次第に穏やかになり、ある時から私を笑顔で迎えてくれるようになった。腹痛の方も次第に軽くなり、三、四ヶ月でほぼ軽快した。そしてその頃私も、他の病棟に配属替えとなった。

その後何ヶ月かして、Bさんが腹痛を再び訴えるようになったと聞いた。漢方薬が止め られたことと、ある看護婦の心ない対応(「本当にあなたお腹が痛いの」と言ったこと)が その原因であったと思っている。私はBさんのことが気懸りで、県立中央病院を辞めたあと も何度か見舞った。私を見た瞬間、彼女の顔がパッと明るくなり笑顔がこぼれる。しかし、 やはり腹痛で苦しんでいた。私はもはや主治医でも何でもなく、ただ彼女を励ますことしか できなかった。その彼女も悲しいかな今はこの世の人ではない。心不全が悪化し昨年の夏亡 くなってしまった。事情があって彼女を自分の病院で看取ってあげられなかったことは、 痛恨の極みと言うほかはない。しかし、Bさんとの出逢いから私が学んだことははかり しれないものがある。自分はどのような仕事をすべくして生れて来たのか、どのような医師 であるべきかを、Bさんは笑顔で私に語ってくれるのである。私は彼女の笑顔を生涯忘れな いだろう。

私は自分が勤務した病院で機会ある毎にBさんのことを話して来た。ベットサイドに腰を 下ろし患者と同じ眼の高さで、患者と等身大の人間として話し合うことの大切さを訴えている。 何故私がこのようなことを強調するかと言えば、私自身生れながらにして病める者、 障害をもつ者であるからである。母は私を身ごもった時、胆石症を病んだ。その疝痛発作を 止めるために医師が打った一本のモルヒネが私の左眼の視力を奪った。(それが事実かどうか 不明であるが、少なくとも私はそのように言われて育った。) これが実に私の医学と医師との 出逢いなのである。何という刻印を医学は私の体に遺したのか。この障害のために私がどのよう に悲しい少年時代を送ったか、どのように屈辱的な体験をさせられて来たかについては、ここで 述べるつもりはない。ただ、そのことで私は我が身の不幸を嘆いたことはないし、この世に生 を受けたことを悔んだこともない。そのような体験があるからこそ、私は患者の心がわかる のだし、BさんやAさんのような人に巡り逢うことができたのだと思う。眼は一つしか与えられ なかったが心にもう一つの眼を持つことができたような気がするし、本当のものを見て死にた いという生涯の願いも叶えられそうな気がする。医師になって本当に良かったと思っている。


手作りは楽し(I さん筆)

小さい頃、私は「破壊屋」と呼ばれていた。何でも物心がつく頃、家の自転車をまるごと解体 してしまったのだそうだ。当の私には全然記憶がない。ただ、スパナを持ってあちこちの機械類 のボルトを外して回ったことはうっすら覚えているから、自転車を解体したのもおそらく事実なの だろう。三歳か四歳頃の出来事と思われる。こうしたこともあって、私は周囲から将来機械屋に なるだろうと思われていた。その通りにはならなかったが、小さい頃からメカニズムには強い関心 があった。もののしくみや働きが知りたくて、どうしてもそれを分解したくなってしまう。 ところが一度分解したものを元通りに組み立てるのは遥かに難しく、かなりの習熟を要する。 それに挫折し、それこそ分解が破壊に終わってしまうことが多かったわけである。

しかしながら、私は物を壊してばかりいたのではない。ものを作ることにも大いに熱中した。 コマ、竹馬、チャンバラの刀など、遊び道具は大概自分で作った。腰に鉈をぶら下げ、山を歩き回 って材料を見つけてくるのである。極め付きは木の橇であった。適当な木を選び、鉈と鋸と金槌を 使い半日がかりで「愛馬」を仕上げる。郷里釜石はほとんど雪が降らないので、テカテカに固めた 土の斜面を滑るのであるが、傾斜によっては恐怖感を覚えるほどのスピードが出、実に爽快で あった。

このようなわけで、大工仕事や、金属を加工する仕事には今でも関心がある。工房を構え、 レンズや反射鏡を磨き、金属を削り出して手作りの天体望遠鏡を作ったり、自らの力で一軒の家を拵え るのが生涯の夢である。望遠鏡を作るのはもしかしたら実現可能かもしれないが、家はおそらく無理 であろう。昔、近所の棟梁が息子一人を助手にして家を建て上げたのを見て感嘆したことがあり、自分 もいつかはと思ってきたのであるが、それこそ叶わぬ夢であろう。

私は、医者にならなかったら、大工か旋盤工になっていたかもしれないと人に語ったことがある。 それほど私は、ものを作るのが好きだし、ものを作る人々を心から尊敬しているのである。イギリス には家具の修理を専門とする職人がおり、ヴィクトリア朝などの古い家具を修理する仕事が立派に職業 として成り立っている。そのような職人に私は憧れている。いつかNHKの「手仕事にっぽん」という 番組で、壊れた腕時計を修理する職人が紹介されたことがある。折れた歯車の歯の修理の際に、廃品の 歯車の歯を切り取り、それをハンダ付けして再生するという非常に細かな作業であった。修理が見事に 成功し時計が再びチチチチと動く音がとても感動的であった。また、東京の南部の町工場には、 素晴らしい金型職人や自分の指先でミクロン単位の違いが分かる旋盤工がいる。このような人達こそ、 国の宝と言わずしてなんと言おうか。額に汗し泥や油にまみれてものを作り出す仕事こそが価値がある のだ。もの作りへの関心を失い、濡れ手に泡式の金儲けに走るこの国は一体どこへ行くのだろうか。

大層偉そうな話になってしまったが、もの作りが好きだといっても、私自身は非常に不器用な人間 である。ただ、何故かものを作るのが楽しく途中で投げ出したりしないだけである。小学や中学の頃は 技術の時間が少なく、「手本」通りに作ることを要求されたり、自分の作品を他人と比較されたりする ことがなかった。学校教育には功罪両面がある。自分のもの作りへの情熱が学校教育でスポイルされ なかったのは幸いであった。

いつだったか、病棟の輸液ポンプの把手付きのボルト(ポンプをポールに固定するボルト) を修理する機会があった。プラスチックの把手が割れ、ボルトが曲がっていた。業者に修理を依頼して いるが埒があかないという。それではと修理を買って出た。ボルトの径は九ミリ。ボルトにはネジのピ ッチが異なる二つの規格があるが、そのどちらとも違う特別の規格らしい。曲がったボルトを使うしか ない。万力に一方の端を固定しモンキーレンチで他端を挟み力任せでどうにか曲がりを修正した。把手 には、望遠鏡メーカーののみの市で入手したアルミ部品を使うことにした。精確にセンタリングし、 卓上ボール盤を使ってシャフトに九ミリの穴を掘った。それに垂直にわ き側方から三ミリの穴をシ ャフトに開け、ネジ穴を切る(タッピングという)。把手をボルトに固定するネジ穴である。把手を回 しやすいように四隅にヤスリで円形の切れ込みを入れ、ボルトに横ネジで固定して完成。正味四時間。 久しぶりに創作の喜びを味わうことができた。

私は、このような仕事が全然苦にならない。家でも、ちょっとした修理や障子張り、網戸張り などは自分でする。かくして、女房に「医者をやめても食べていけるわね」と適当におだてられながら 便利屋を務めることになるのである。

 

I wonder how many astronomy manias would know the initial type of my EMS I had released in 1989 in Japan. This Amici-analogue type of EMS was originally made by me before 1980, and my article appeared in November,1982 issue of Sky and Telescope magazine.

Catering to the order of initial type of EMS user, I made a 36.4mm-thread to 2-inch adapter, and I had touching gratitude e-mails from him with some attachment of his moving essays that impressed me so much. I am sorry that I can share them with only those who can read Japanese. But, if you can, please try it to read.

DIY is Fun

From ” My Diary on duty at the Hospital”

Here are the related articles concering to the initial or next-initial EMS.

125ED-BINO & EMS-1

Handy EMS-BINO

A folding wheel chair

You can see the anatomy of the initial EMS in my TV program below.(in Japanese only)

Dream chaser(Challenge to the stereotype…)

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6月5日に、「36.4ネジ(望遠鏡)接続タイプの小型EMS用に、”36.4ネジ→50.8φ差込”の アダプター製作」のご依頼を、岩手県の I さんという方からいただきました。

最初にピンと来たのが、10年以上前に製作したことがあった、箱型のEMS-Sでしたが、よくお聞きしたところ、 それではなく、何と、一番初期のアミチプリズム型のEMSではありませんか。 それをずっと今日まで愛用してくださって いることに加え、最近、代理店さん経由でEMS-ULも追加購入してくださっていました。(左の写真の下の隙間からEMS-ULが少し見えます。) もちろん、今忙しいから・・と、 とても断ることは出来ませんでした。^^;(横のアルマイト未処理のアダプター単体は、当初にお作りしていたPENTAX(105EDHF)用です。)

感激はそれで終わりではありませんでした。 完成したパーツの納品後にいただいたメールには、アダプター製作を 喜んでくださったお気持ちが綴られていたわけですが、添付いただいた以下の2つのワードファイルには 大層心揺さぶられ、I さんに無理を言って、ここで紹介させていただく次第です。

手作りは楽し

ある日の「医師当直日誌」より

どんな職業でもそうだと思いますが、日々の仕事は、ややもすればストレスが溜まるものではないでしょうか。 地道な誠意は伝わりにくく、派手なパフォーマンスをする世渡り上手は脚光を浴びやすかったりします。

しかし、こうしてたまに遭遇する、心の琴線に響く client との出会いが、歩き続ける元気を与えて くれるのだと実感させられます。 振り返ると、実際そうでした。

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初期(と準初期)のEMSに関係した日記とリポート

125ED-BINOとEMS-1

Handy EMS-BINO

折りたたみ式車椅子

また、以下のテレビ番組の中でも、初期のEMS(正立ミラーシステム;EMS-1)の内部構造を分解してお示し しています。

夢をつむぐ人々(常識への挑戦・・)

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人生はうたかたの夢。初期のEMSを開発してから、あっという間に過ぎ去った時間が折り返した頃には、私はすでにこの世に いないか、いたとしても、もうこの仕事はしていないでしょう。 想い出も、またかかわった人たちも、いずれは消えて行く宿命 ではありますが、臨終に思い出すであろう甘美な出会いに恵まれたこと(多分これからも)を改めて幸せに思います。

C5-BINO on the MiniTower-Pro / follow up report-2! 続報-2!

続報(2)

ご無沙汰いたしております。我が「C5モバビー」も、製作後何年か経ち、 その架台も含めて数か所改良しましたので、ご報告いたします。

C5本体についての追加点は、
1.本体フードの取付
2.鏡筒前部へのバランスウェイトの取付
3.副鏡光軸調整ねじの取り換え
4.レーザーポインターの取付
5.正立ファインダーフードの取付
6.カメラ雲台の取付
7.iPadの取付
8.アイピースレデユーサーとEMSの保護フィルターを取り外し、 ケンコーのAC3(48ミリ)の取付。
です。

経緯台についての追加点は、
A.スカイファイの取付
B.延長タワーの取付
C.バランスウェイトシャフトの延長シャフト取付加工
D.バッテリー兼カウンターウェイトの採用
E.ハンドコントローラー装着金具の取付
です。

1.は、金属業者に依頼し、アルミ製のしっかりしたもので、フェルト材の巻き付け物とは異なり、しっかりとした物に できました。

2.の採用理由は、仰角のバランスが悪く、軽く望遠鏡を触る程度で垂直軸のロックが緩んでいましたので、 取り付けることにしました。まず、望遠鏡を垂直に立ててバランスをとり、次に、望遠鏡を水平にしてバランスする ように、望遠鏡を前後させます。そうすることにより、望遠鏡はどの位置でもバランスできるようになります。
3.は、工具を使用しないで、光軸調整をやり易くするためです。
5.は1と同じ業者に依頼し、作成してもらいました。ネジを切っていますので、取り外しは簡単です。
6.のカメラ雲台の取付は、取っ手にメスネジをきって、そこに取り付けました。小さなネジを大きなネジの上に取り付け 、2点止めにしていますので、緩みによる回転などありません。
7.のiPadは、スカイサファリプロと連動しており、画面をタッチするだけで望遠鏡が自動導入・自動追尾を開始します。これは大変 便利です。導入制度も1度以内の視野でしたら問題なく導入できます。iPadのスカイサファリは、スカイファイを経由してWi-Fiで経緯台 本体と繋いでいます。

Bは、I.OPTRON社のオプション製品です。
Dも、I.OPTRON社のオプション製品約で、3.5キロのウェイト兼用バッテリです。これも、非常に重宝しています。一晩使っても問題なく、、他社赤道儀 などにも利用できないか検討しています。
Eも、ちょっとしたことですが、あると便利なので、業者に依頼し作成してもらいました。アルミ製のしっかりした物で、カチッと 収まります。

簡単に持ち運びできますので、観望会などには重宝しています。スカイサファリの惑星拡大画像をiPadで表示し、 覗いた時の実際の画像と見比べられるので、皆さんに喜んでいただいています。

塩塚
2014年6月8日

Comment by Matsumoto/ 管理者のコメント;

 また塩塚さんに無理を言って、いただいたメールをそのまま掲載させていただきました。  こうして納品後、何年後でも、初期の motivation を失われることなく工夫を重ねておられると、本当に嬉しいものです。

  塩塚さんの過去のリポート;

C5-BINO on Mini Tower(2012,2/05)
C5-BINO follow-up-1(2012,2/13)

Rotative mechanism (FSQ106-BINO) / FSQ106-BINO用の回転装置-1

 

 

This is the combination of the moduled rotative mechanism and the slide unit I had developed before. Note the XYZ axised penetrations of the columns that have resulted in the simplest structure inattaining the double function.

モデュール化した回転装置と、すでにモデュール化に成功している新型のスライドユニットが合体しました。(というか、一部がその機能を兼ねます。) 3本のジュラルミン丸棒による XYZ-軸状の(擬似)相貫構造が、本来の回転子と鏡筒の水平保持ベース(スライド機構)を極めてシンプルに達成していることにご注目ください。

 

X95-BINO and 15cmF5-BINO(V.9)

2年半ほど前に星見を始めた団塊世代の高齢者です。
月と木星、土星をまず見てみようと思って初心者向けの望遠鏡を購入。それなりに見えるものの、長く見続ける気にならず 「さてどうしたものか」と取り出したルポルド6×30で見るスバル、ペルセウス、ヒヤデスに魅せられ、V社BT81SA双眼鏡を購入。 低倍率で見る夜空の美しさにとらわれ、半年後には鳥取まで出かけることとなってしまいました。

昨年の8月末にSwaro X95-BINO、今年の2月に15㎝F5-BINOが届き、空の状態の良い時には夕食後、 車で20分ほどの6等星が見える山に出かけています。自宅は高台の南向きで3Fにある寝室の窓から カノープスが肉眼で見れます。深夜に楽しめるよう南向きに15㎝F5、北向きにX95-BINOをセットしています。

Swaro X95-BINOは鏡筒長が短くHF2経緯台を垂直位置で使用でき、きわめてスムーズな動きで快適。 ハンドルはいろいろ考えた末、写真のようになりました。垂直動作に適した形は吊り輪のような形と思いますが、 それをベースにピント合わせ、光軸合わせ、天頂をクリアーすることなどを考慮した結果の形状です。
地上の風景と天の川散策はEWV32㎜(17倍、星間視差での実視界4.3°はちょっと残念)、散開星団等主力はN5-16㎜34倍、 球状星団はN6-9㎜61倍、月面と惑星はPhoton5㎜110倍です。Radian3㎜ と比べてもPhoton5㎜のシャープな中心像は十分 なのでこれで済ませています。EWV32㎜のアイレリーフ20㎜は実に快適、眼を浮かせたままBINOを振り回してもブラックアウトなどとは無縁 。大きなアイレンズの周辺に地上の風景がぼんやり広がりその中に宇宙の窓が開いています・・・”どこでも宇宙ドア”。 障子の穴から覗くといった感覚とは無縁の快適さです。
周辺像の流れはありますが見たい方向にBINOの眼を向けるのは肉眼と 同じことと割り切っています。このBINOひとつで十分夜空を楽しめます、初心者にこそ望遠鏡ではなくBINO を勧める必要があると思いますが光学機器の業界はどこを向いて仕事をしているのでしょうか?

15㎝F5-BINOが届いた日は月没が明け方4:00、オメガ星団の南中が4:00という逃せない日、 しかも澄み切った冬空。N4-22㎜34倍、真南高度約7°に合わせるとそこにオメガ星団の堂々たる姿がぽっかり浮かび上がっている。 X95ではこうは見えません、バックグランドから抜け出すことができない状態でした。周りの星々を従え巨大な綿帽子が浮遊する姿は その後の春の空では見ることができません。絶妙のタイミングで納入していただきました。
現在使用中のアイピースはEWV32㎜23倍星間視差での実視界3.4°、N4-22㎜34倍、N5-16㎜47倍、N6-9㎜83倍です。15㎝F5-BINOは 松本さんが長年手を加えてきただけあって素晴しいBINOに仕上がっています。山に出かけてセットしすぐ覗いても光軸が ずれていることは全くありません、このBINOの基本設計が素晴らしいことを実感できます。
鏡筒一本8㎏弱、Manfrotto117B三脚(耐荷重18㎏、エレベーター付)+中軸架台が8kgと運搬とセッティングに全く負担がありません。 操作ハンドルはX95-BINOと同様の木製自作、車で出かけるときは写真のBINO-Bedを後部座席に載せその上でゆっくりしてもらいます。 積み木方式6段椅子は写真の三つのパーツの組み合わせで1~6段の高さに可変できます。残念ながらBINOの上下動と同時にエレベーター を操作し椅子の高さは固定という目論見はダメでした。BINOが重くエレベーターの操作がスムーズにいきません。 電動エレベーターがほしいですね。エレベーターを下げた状態で高度80°をクリアーできるのでそのまま使用することがほとんどです。

その後晴れた日には毎日見続けた印象をまとめてみます。

①表現力の豊かさ;15㎝の集光力からくる星々の輝きの強さと色彩の豊かさそれと同時にバックグランドに微光星が 多く見え天の川の淡い表情も楽しめます。BINOを振り回したときに目につく赤やオレンジに煌めく星々、さしずめ” 星の王女様”の瞬き。このBINOの第一印象は「ウワーッ!これは楽しい」でした。

②期待以上に楽しめる天体
・天の川と中小散開星団 ; 「星像が膨らむ」ということを心配していましたが全く問題ありません、 15㎝+銀ミラーEMSの威力でぎょしゃ座など素晴らしい眺めです。M37の星粒の多さと輝きの強さなどM11とともに ランキング下位からこのBINOで一気にベスト5入りです。

・球状星団 ; これも口径の威力で倍率に応じた表情の違いを楽しめます。現在N6-9㎜83倍がMaxですがどこまで 上げられるか確認したいと思っています。また、さらに大口径にしたら・・・と欲が出ます。

・月面と木星&土星 ; 期待していなかっただけにもうけものです。口径を11㎝に絞ってN6-9㎜83倍で見ればもうけ ものと割り切って十分楽しめます。

③期待の大きさ通りにならなかった天体
・大型で明るい散開星団 ; 10㎝クラスで十分に楽しめていたわけですから期待する方がおかしいということを教えられました  。バックグランドの明るさがマイナスに作用するということでしょうか、スバルはX95-BINOに分があります、しかし素晴らしい  散開星団に見えることに違いはありません。

・銀河 ; 期待が大きすぎたと思います。一ランク上の見え方には違いないのですが15㎝をもってしても銀河はやはり遠い! 標高1000mまでBINOを持ち上げて再確認をしてみたいなと思っていますが・・・。

総合的に見て、この15㎝F5-BINOが現在の私には最高のBINOと思われます。15㎝アポ鏡筒はサイズ&重量&コスト の点から限界を超えています。X95-BINOも月面&惑星&地上風景用となって15㎝F5が現在の主力です。 BINOを一台だけに限定されたら迷わず15㎝F5-BINOを選択します。今後の課題は使い勝手をさらによくすること、 例えばアイピースの重量、焦点位置の同一化、など。現在主力のN4-22㎜はアイガードを外して使っています、EWV32㎜と同様に覗きやすく ブラックアウトとは無縁です。EWV32㎜との重量差がかなり縮まり、また螺旋フォーカサーの操作性も向上します。

天体観望を趣味とする方たちの多くがオーディオを趣味とされていますが私もオーディオを趣味として50年になります。 物理特性を追いかけていた時代の”音が苦”状態から抜け出して現在は音が楽しい”音楽”の世界を満喫しています。 表情豊かな生きた音を求めて使いこなしの努力をするようになってから楽しめるようになりました。

天体観望も恒星が生きていることを実感できること、そしてその輝きの”精気”と”色彩”が生み出す風情を楽しめる ことが一番かな?と15㎝F5-BINOを手にした今思っています。それほど強いインパクトを与えてくれました。BINOの世界を 知らずにいたら”天文が苦””光が苦”のブラックホールに落ち込んでThe Endだったかもしれません。天体観測は”天文学”、 15㎝F5-BINOでの天体観望は”天文楽””光楽”の世界です。

これからも(両)”眼を開いて夜の中を広い視野で見ていきたい”と思います。松本さんがこの仕事を 長く続けられることを願ってやみません。

福本
兵庫県

管理者のコメント;

去年の8月に納品させていただいたSWAROVSKI-X95-BINOと、今年2月に納品させていただいた15cmF5-BINO-VERSION9のリポートを同時にいただきました。

謙虚に初心者を標榜しておられますが、両機種とも最初から上手に使いこなされましたので、この度初めてのリポートをいただくまでは あまり交信をさせていただく機会がありませんでした。 それだけに、新鮮で心に響くリポートとして読ませていただきました。 久しぶりに BINOを製作するエネルギーを充填していただいた感じがします。

バックオーダーがかなり停滞していましたので、操作ハンドルまでは気が回っていなかったのですが、見事に美しいハンドルをセットして いただきました。 製作者の意図を良く理解してくださっていて、少なからず感動いたしました。 組み立て式の椅子や収納ケース等を拝見し、 美術的な家具の製作の高度なノウハウをお持ちであることが分かりました。お部屋の雰囲気も含めて、ヨーロピアンな風情を感じ、羨ましく拝見しました。

15cmF5-BINO-VERSION9は、これまでのEMS-BINOとは一線を画する最初のBINOだと思っておりますが、相応しい方に 届きましたことを嬉しく思います。

15cmF5-BINO-VERSION9の製作記事は、製作情報速報(2013~) の 2013;11/26, 12/4~29、2014;1/8~10, 1/13, 1/15~17, 1/22, 1/24, 1/28, 2/1, 2/3 に掲載しています。

SWAROVSKI-X95-BINOの製作記事は、製作情報速報(2013~) の 2013;5/15,16,25,31; 6/17,28; 8/21,25; 9/1 他に掲載しています。

SWAROVSKI-X95-BINOの話題がCLOUDY NIGHTS で盛り上がっています。