松本の光学講座 2024;The “D” and the size of the first Mirror/ “D”と第一ミラーのサイズとの関係

 分かる方にとっては、「何を今さら?」の内容だと思いますが、分からなかった方にとっては、EMS-BINOを理解する突破口になる図かも分かりません。
 31.7サイズアイピースしか使わないならEMS-UMA、2インチアイピースを使用するならEMS-UL、という、短絡的な理解は、BINOのプランニングには通用しません。
 上の図は、同じ対物レンズ(F値、口径、焦点距離、全て同じ、目幅も60mmと想定)で、D(鏡筒間隔)が変化した時の、第一ミラーの理想サイズの変化を図示したものです。
 Dが少しでも大きくなると、第一ミラーの要求サイズが急に大きくなることがお分かりになると思います。これが、BINO設計の初期段階で、Dをミニマムにすべく、最大限努力することの理由です。
 「私は31.7アイピースしか使わないから、EMS-UMAで良い!」と、頑迷に主張される方もあって、その場合は、ご当人が気付くまで、仕方ありません。^^;
 大方の望遠鏡メーカーさんの理解レベルも大体そんなもので、単体のEMS-ULクラスで合焦すれば、BINO化も可能だと思っている節があります。

Askar 140-BINO in the making-5/ Closer measurement of the Back-Focus / バックフォーカスの再測定

 バックフォーカスの測定について、勘違いしている方が多いように見受けます。
初心者の方に多いのは、繰り出し装置のストロークを測って、それだけで判断される間違いです。
 それがなぜ誤解を生じるかは、長くなるので説明を割愛します。
 で、どうするのが良いのか?ですが、遠景を紙に投影すれば直接的に分かりますが、確実に光路長が分かっている装置(双眼装置やEMS)をセットしてみるのが簡単です。
 繰り出した総長+セットした装置の光路長が答えです。
 本例だと、165+153= 318mm でした。これは、D=261mmでEMS-UXLを使用してもあり余るバックフォーカスでした。EMS-UXL(D=261mm)の光路長の予定=268mm(フィルタースロット付き2”スリーブ)なので、フォーカサーの繰り出し長=318-268=50mmとなります。
 鏡筒側の伸縮筒を完全縮退させて、フォーカサーの繰り出し長=50mmということです。

Askar 140-BINO in the making-4/ Trimmings of the Bands and Dovetails / 鏡筒バンドとアリガタのトリミング

 十分に長いバックフォーカスから、伸縮鏡筒(140)、着脱可能な延長鏡筒(120)と、Asukarシリーズ鏡筒の、BINO化に好都合で斬新、英断の仕様を絶賛した後ですが、BINO化の視点から見ますと、まだ不十分な点もありました。
 Askar-120での経験から、今回もバンドボトムは10mm以上のスリム化を予定していたのですが、上の写真のように4mmのトリミングが限界でした。なぜか? それは、バンドボトムが裏側から大きく肉抜きしてあり、中空になっていて、希望の量だけカットすると、アリガタを取り付けるネジベースを消失することになるからです。まあ、たった4mmですが、光路長換算だと√2倍になるので、5.7mmの光路長節約です。

アリガタの無駄な部分をカットしました。
 かなりの減量になりましたが、主目的は減量ではなく、天頂時にアリガタが中軸架台の水平回転部と干渉しないための処置です。

Askar 140-BINO in the making-2/ Tripod Customize/ 三脚改造!(Manfrotto-475B)

”信じる者は救われる!”^^;
 私もユーザーさんに教えてもらうまでは、15㎝クラスのBINOにカメラ三脚?と半信半疑でしたが、気付けば、自分ように2台、またユーザーさんに何台も勧めていました。
 今回も、実際に見学に見えたことで、三脚とキャスター自体のクランプの剛性に感動され、その場で(スマホで)発注され、さきほど直送で当店に届いた次第です。同時に注文していたキャスターも届き、さっそく施工しました。
 脚その物は太くはないのですが、開き角度が無制限(無段階)なのと、開き止めステーの構造が合理的で、全体の剛性は十分です。さらにエレベーターもしっかりしており、操作中も位置情報が破綻しません。

松本の光学講座 2024;What is “Inner Product”?-/ 内積とは?

”内積”と聞いただけで逃げ出す日本人が多すぎる!
 その食わず嫌いで、多くの損失を被ることになりますよ、一生を通じて。
内積とは、ベクトルの対応成分を掛けて合計したものです。
まず、x軸方向の単位ベクトル(1,0)と、y軸方向の単位ベクトル(0,1)の内積を求めてみましょう!
1×0 + 0×1= 0 で、内積=0 です。
次に、ベクトルA(-4,3)とベクトルB(3,4)の内積を求めましょう。
-4×3 + 3×4 = 0 で、これも内積=0  です。
 そうです。直交する2つのベクトルの内積は、常に0になるのです。
3次元の任意の2つのベクトルA(a1,a2,a3), B(b1,b2,b2)も同じ計算方法で、
A・B(内積)=a1×b1 + a2×b2 + a3×b3 で、直交していれば、値は常に0になります。
どうでしょう? 内積って簡単ですよね。 さあ、気を取り直して、昨日の講座をちゃんと読んてみてください!

Askar 140-BINO in the making

 高知県の方が一昨日、Askar140鏡筒x2を持ち込まれ、いよいよ、初めてのAskar140-BINOの始動です。
 BINO作りでは、まずバックフォーカスの確保に腐心するのが常でしたが、このシリーズの鏡筒については、バックフォーカスが十二分にあり、その点を全く心配する必要がないのが極めて新鮮です。
 その他にも、実に真剣にユーザーの立場で配慮された新機軸が網羅されており、古い価値観の呪縛に囚われた他社の製品には、正に望遠鏡の黒船の襲来になるに違いありません。

松本の光学講座 2024;Solution of the erect image by 60-deg and 90-deg prisms(mirrors) / 60度プリズム(ミラー)と90度プリズムの正立解

LUNT35-BINO

 60度転向のプリズム/ミラーを2つ接続して、所定のアングルだけねじると、90度対空の正立ミラーになる、というのがEMSの原理であることは、すでによくご存じと思いますが、その内の1つのプリズムを90度プリズム(直角プリズム)(P2)に交換しても、別の正立解があるのです。
 まず、P2をX軸の回りにθ回転させてみます。→ V2’→
すると、V1→とV2’→が直交するときが正立解なので、直交条件の内積=0 から、回転させるべきθが求まります。(cosθ=1/√3)
 次に、求まったθ(cosθとsinθ)から、P2 回転後の (CD)’→が求まるので、(CD)’→とBA→の内積を求めれば、その角度が求まります。(CD)’→とBA→の角度=αとすると、cosα=1/2となり、α=60°、従って、対空角度は180-60=120°、ということが分かります。これは、90度対空よりもさらに30°下を覗き込む角度になります。
(※ V1→、V2→は、反射点、B,Cに於けるそれぞれの法線単位ベクトル。図示したその他のベクトルも全て単位ベクトルとする。)