Schwarz-Binoを納品頂いて一ヶ月になります。ひょんなことから30年ぶりに天文への興 味が再燃し、思い切っての購入でした。現在は首都圏のマンション暮らしですが、先日帰 省した際に持ち帰り、漸く満足のゆく観望ができましたのでご報告致します。
帰省先は名古屋から50km圏の内陸部ながら、年々夜空は明るくなってきています。そ れでも3月末の一晩、透明度の高い晴天に恵まれました。使用アイピースは笠井のケーニ ヒ32mm65度(X23・実視界2.8度)、SiebertOpticsのPrem ium18mm75度(X42・実視界1.8度)です。これでもファインダーの必要性 を全く感じさせません。実は勿体ないことに、購入後一度も附属ファインダーもクイック ファインダーも使用していない次第です。
さて、星図も持たず、うろ覚えながらも「何となく」の方向に鏡筒を向けて導入できたも のを挙げますと、M1、3、35、36、37、38、41、42、43、44、45、 46、47、51、65、66、81、82、101、104、NGC3628、290 3、h-χなど。特に小宇宙たちのおぼろげながらも確かな光芒は、これまでM31や3 3位しか見てこなかった目には感動もので、思わず独り感嘆の声を上げずにはいられませ んでした。まだ小学生だった頃、同じ田舎で、当時はもっと暗かったであろう空に6cm 屈折を向け、どうしても見つけられなかった天体たちが、今は次々に視野に入って来ま す。時間を忘れる、童心に返る、とは正にこのことです。おかげでこの一晩で風邪を引 き、妻にも子供に、更に姉や姪にも感染してしまった訳ですが・・・
私にとっての双眼視のメリットは、逆説的ながら「望遠鏡の存在を感じさせない」という ことです。「臓器の存在を最も意識するのは、そこが病気になった時だ」という言葉に通 じるものがあるかもしれません。対空式であることが唯一の不自然さと言えば不自然さ で、それを除けば、経緯台のスムーズさとも相俟って「望遠鏡で観望している」という意 識を持つことが殆どありません。恰も肉眼そのものが広角望遠レンズになったかのような 一体感と快感を覚えます。
見掛けよりもコンパクトであることも嬉しい驚きでした。宅急便が玄関に到着した時に は、そのダンボール箱たちの巨大さに思わず妻と笑ってしまったものでした。それが、親 子3人の荷物にチャイルドシート、ベビーカーも載せた小型2Box車に楽に収まりま す。自宅がマンション9Fのため台車の購入も検討していたのですが、杞憂に終わりまし た。
30年のブランクは一気に吹き飛びました。自分が今後どれほどのめり込むか、少々恐れ ているところではあります。
渡辺 文彦
Comment by Matsumoto/ 管理者のコメント;
本日(2003年4月8日)、渡辺さんよりいただいたメールをそのまま掲載させていただきました。 快く承諾していただいた渡辺さんに、改めてお礼申し上げます。
BINO製作の仕事を始めて、かなりの年月を経、様々なユーザーの方と触れ合うことができ、大変幸せに思っております。 中にはお忙しくて梱包を一ヶ月も解くことが出来なかった方もあり、また、十分に味わう前に、いきなりソース等の調味料をドバドバかけて 食される方ありと、変化に富んでいるのですが、どの方もありがたいユーザーさんであります。
しかし、何と言いましても、製作者として一番嬉しい瞬間は、使用リポートをいただく時です。
渡辺さんも長い中断を経て、天文の世界にUターンされた方のようです。 少年期に宇宙へ夢を馳せ、進学、就職、結婚、子育て等の大事のために一時期天文から 遠のき、ある程度落ち着いて来る中年期に入ってまた天文に戻られた、というパターンを勝手に想像させていだだきました。
私の少青年期には、口径15cmの屈折式、しかもそれが双眼でなど、とても自分の手に届く物とは思っていませんでした。 中年になってから手にする望みの機材は、人生の前半を真面目に努力して来た方、しかも夢を忘れずにいた方に対する天からのご 褒美ではないか、と最近私は感じるようになりました。
私自身については、BINO作りがたまたま仕事になったために望みの機材に 近い環境にいるだけであって、本来ならとても天からのご褒美をいただける身分ではないと、これまた最近感じるようになりました。
それにしても、ご理解のある奥様のようで、ご家庭の暖かさが伝わって来ます。
渡辺家に一層の幸来たれ。