Another MEADE-AZM90-BINO by Mr.YN in Tokyo

 御社の「EMS-ULセット+IPDヘリコイド」とミードの AZM-90 経緯台セットのAZM-90鏡筒で自作の双眼望遠鏡を更に作成しましたので紹介の写真を送付します。
 これで「EMS-ULセット+IPDヘリコイド」使用の双眼望遠鏡は8台目になりました。

● 毎度、詳細なご報告をありがとうございます。


 前回のAZM-90鏡筒を使用の双眼望遠鏡との違いは、片持ち架台対応を行ったことです。前回重量が結果9.2kgとなったので片持ちでも使用できるのではないかと思い作成してみました。
 その他、2インチ接眼部、鏡筒バンドが前回と異なる種類を用いたことにより変更対応しています。

 今回もAZM-90鏡筒は接眼部が31.7mmなので、2インチ接眼部に交換しましたが前回とは異なる種類で接眼部長さが比較して22mm短い接眼部です。

 AZM-90 鏡筒は同じ品種であり 口径90mm、公称焦点距離600mm、実測焦点距離659mm(対物レンズ後面からの数値)、アクロマートレンズです。エントリーモデルとしてセット販売されています。

● 焦点距離の公称値が誤差の範囲を超えていますね。OEM発注で製作しているはずですが、最終的には販売者の意向なんでしょうね。F値が明るい方が良く売れる、ということでしょうか?
 測定されたのは、いわゆる頂点距離ですね。メガネレンズはその矯正原理から、この頂点距離から頂点屈折力を以って度数を定義しています。厳密には、焦点距離は像側の主点(下図のH2)から焦点までの距離で、一般的なアクロマートだと焦点距離>頂点距離なので、尚更この焦点距離の公称値には?を感じますね。

 焦点距離表示が信頼の置けるアイピースをセットされて、射出瞳径を正確に測定し、倍率から対物の焦点距離を逆算してみてください。



 片持ちフォーク経緯台またはT型経緯台にのせる双眼望遠鏡ユニットとしてはバランスウエイトが付いた状態で8.0kgの重量になりました。重量はありますが比較的扱いやすいです。
 経緯台や「EMS-ULセット+IPDヘリコイド」は使い回しです。

アクロマートですが、気持ち良く見える感じです。

● 鏡筒の高級志向で、アクロが肩身が狭い昨今ですが、少なくともDeepSkyの眼視観望用機材としては、”アクロ双眼≫アポ単眼” は断言できますね。
口径で比較すると、”10cm双眼≫15cm単鏡筒” でしょうか。

 微動機能のある経緯台なので、多少重量バランスが崩れても、クランプして微動を用いれば運用できてしまう利点があります。片持ちなので軸にモーメント重量がかかり、上下方向はクランプフリーでも摩擦が多く重くなりがちで、これでもバランスが多少崩れても使用できてしまいますが軽快感は無いです。

● 外見はすっきりする片持ち架台ですが、かなり大きなねじりのモーメントが常にかかっていますからね。手前ミソになりますが、中軸架台だと常に左右のモーメントが相殺されます。

 個人的には、完全バランス状態のHF2経緯台や中空架台での軽快な操作性と回転半径のコンパクトさを気に入っていますが、バランスに敏感ではない微動機能による経緯台の使用も好きです。

● 逆に言えば、片持ちフォークだと微動装置が必須のようですね。

 尚、取付方向対応したに運搬用ハンドルを設置していないことによりますが架台に載せる ときは平行に持ち上げて載せられる操作となるHF2経緯台の方式のほうが比較して楽です。

● 両持ちのフォークが力学的には有利ですね。 ただ天頂時のピラー等とBINO本体の干渉回避のためには、フォークを傾けるか、垂直のままうんとフォークを長くしないといけません。HF2経緯台はデフォルトで90度と45度しか選べす、45度だと重心が水平回転軸から大きく離れ、水平回転の精度と滑らかさに懸念が生じ、転倒の危険も増します。私は利用する時は、たいてい、中間の60度くらいで固定できるように小カスタマイズしています。

以下、詳細について追加説明します。

(1) AZM-90 鏡筒は接眼部を2インチ接眼部に交換するとともに双眼望遠鏡用としてバックフォーカスを得るために41mm鏡筒を切断して、199mmのバックフォーカスになりました。品名ラベルはあらかじめ剥がして貼りなおしました。なんとかそれほどダメージ無く剥がせました。
 ドロチューブとぶつかるので鏡筒内4枚の絞りの内の手前1枚を取り除きました。焦点位置が段差の位置にある接眼鏡ではドロチューブの引き出し量35mm程度で無限遠に合焦しました。双眼鏡から転用の18mm接眼鏡ではドロチューブの引き出し量43mm程度で無限遠に合焦しました。尚、ドロチューブのストロークは70mmです。
 AZM-90 鏡筒は 口径90mm、実測焦点距離659mmでしたので計算すると約F7.3となります。尚、公称はF6.7(品名ラベル表示など)です。
 今回使用の2インチ接眼部は以前にAmazonで購入したもので、現在は販売価格が変更されて比較的安い価格設定の販売業者でも1.4倍程度高くなっていました。

(2) 鏡筒間隔D=160mmとして作成しました。
 双眼望遠鏡ユニットの構造としては、これまで7台作成したものとほぼ同じです。経緯台の縦プレートにビクセン互換のアリガタプレートを取り付けて片持ち対応としました。
 縦プレートは両側にあり、アリガタプレートを左右どちらにも取付できるようにしました。特にT型経緯台では中心軸に向かって左右どちらでも運用するものが多いように感じられます。片持ちフォーク経緯台は右側取付が多いように感じています。
 基本寸法はHF2経緯台に使用の時と同じにしてあるので、HF2経緯台で使用したくなったときは、少しの追加加工改造と耳軸部品追加取付で対応可能となっています。

 一応、上下バランス位置は、今回も 2インチ450g程度の例えばマスヤマ32mm接眼鏡を取り付けた時には、鏡筒径の中心から8mmにバランス位置があり、31.7mm100g程度の接眼鏡を取り付けた時には鏡筒径の中心位置にバランス位置との結果なりました。
 アリガタプレート付近に目印をつけ、アリ溝プレートとの接続時にできるだけ近くでクランプできるようにしました。

 架台に取り付けるときの注意としては、鏡筒を垂直にして、アリガタプレートが水平に近くなる方向で操作してクランプするやり方が良いと思います。鏡筒を水平にしてアリガタプレートを垂直にして操作すると自重で下にスライドしてしまいクランプ固定が大変だからです。尚、スライドによる落下防止のストッパネジは付けています。
 アリ溝側も面クランプのアリ溝では締まりが弱い感じがして、傷がつきますがネジクランプも追加しました。

 本来は鏡筒バンドに運搬ハンドルを付けたかったのですが、鏡筒バンドがプラスチック製で軽量は好ましいのですが、取り付けると強度的に不安だったので、運搬用ハンドルはプレート取付にしました。スペースの関係からハンドルは1本です。また、鏡筒プレートへは鏡筒バンド内からのネジ止めになってしまっているため、上下方向の視軸の初期平行調整は、下からできずに鏡筒を一旦外してスペーサ用ワッシャを挟み込む方法構成になり少し面倒になっています。

 取り付けた2インチ接眼部は本来、90mm径鏡筒用のものでは無く、フランジ内径がほぼ90mm径でしたので、内径に取り付けることにしましたが、そのままでは90mm径鏡筒がはまりませんでした。ミリ以下の寸法差のようだったので、鏡筒に金鋸で長さ12mmスリットを6箇所入れ、ペンチで少し外径を小さくして押し込みねじ止めしました。旋盤が使える環境 のある人ならばアダプタを作成するところでしょう。なんとか取り付けられてよかったです。

● 凄い力技ですね。^^; メーカーさんは顧客のニーズをよく考えて商品開発をして欲しいと思います。単焦点が売りの鏡筒で2インチ対応しない製品の存在意義は? もしかしたら、売りたくないためではないか? 正確に言えば、上級マニアが買わないように(つまり同社の上位機種を買うように)、敢えてそうしているように見えます。
 YNさんもそろそれ旋盤等の加工手段を導入される潮時が来たようですね。加工手段の制約は、発想の制約になり、それが固まってしまうと、物作りの技量の成長もそこで止まってしまいます。

 接眼部はクレイフォ-ド式のものであり、EMSと重たい接眼鏡(合計1kg程度)を取り付 けると、自重によるスライドが発生しない耐荷重に余裕が少ないようで、動作フリクション最大にネジ調整して用いています。

(3) EMSの上下方向が調節範囲に入らなかったので鏡筒バンド取付プレートの片側に0.5mm厚のワッシャーを入れて、EMSの調節範囲内としました。
鏡筒バンド取付ネジスパン68mmで0.5mmなので0.4度程度の初期視軸上下方向補正調整になったのでしょうか。

● ここで一言、失礼します。
 YNさんは理解されていると思いますが、EMSのXY調整機構を誤解されている方が多いので警鐘を鳴らさせていただきます。
「BINOの製作段階では、右のEMSのXY調整機構には一切触らないようにお願いします。」EMSのXY調整機構は、BINO製作のための初期調整機構では決してありません。皆さん、真っ先にXYノブを回すので、困ります。BINO製作時の初期調整では、左右の鏡筒の光学的平行をできる限り確保し、基礎構造上、追い込みにどうしても制限がある場合だけ、左のEMSで調整することをお許ししています。どちらにしても、右のEMSのXYノブで初期調整をすることはありません。XYノブは、市販のアイピースを交換した時の誤差をキャンセルするための機構です。

(4) これまでと同様に31.7mm接眼鏡と2インチ接眼鏡交換時の前後バランス調節用の約1kgの調節移動可能のバランスウエイトを取り付けています。
バランスウエイトを取り付けていない双眼望遠鏡も多いように見受けられますが、接眼鏡の交換によるバランス崩れはどのように対処しているのか対処事例を知りたいです。
 やはり1kgはそれなりに重たいし、邪魔なので無しで対処できるならそのほうが良いと思います。
大型双眼鏡だと割り切って、固定倍率で使用接眼鏡を固定使用で満足できる人はそれで良いとも思いますが。

●失礼ながら、1kgのカウンターウェイトとお聞きした時には私も驚きました。
工夫次第で減量できると思いますよ。

(5) ミードの AZM-90 はセールなどのタイミングに会えばB級品などを比較的安価に購入でき、アクロマート(分離型レンズ、全面モノコーティングみたい)ではありますが気持ちよく見え、口径90mmと100mmに迫る口径であり、F7程度の長さで取り扱いも割とコンパクトで、自作を楽しむには良い素材と思います。
エントリーモデルではありますが鏡筒内絞りも4枚あり、31.7mm接眼部を含めそれなりにしっかりした作りの感じで良いです。レンズセルはプラスチック製で鏡筒へは簡単なねじ止め方式です。AZM-90 経緯台セットの付属品のファインダーはビクセン互換アリガタ脚のLEDドットであり、双眼望遠鏡にそのまま転用使用できて便利です。しかし、架台はシーソータイプであり、天頂方向に向かない範囲がある、カメラなど取付て鏡筒重量が重くなると上下の固定できないなど、私には使いづらいもので、エントリーモデルそのものといった感じです。破棄もったいないのでL型プレートを追加して、鏡筒が上下軸を中心にバランスをとれ位置に改造変更するか、写真三脚の代用のように水平方向を中心に使用するのはどうかなど有用化を模索中です。

 ミード AZM-90 を双眼望遠鏡に使用できるようにするには追加で交換する2インチ接眼部の入手と90mm径対応の鏡筒バンドの入手が必要と思います。
接眼部については31.7mm→2インチアダプタの使用も考えられますが、F7.3 程度なのでドロチューブ光路長を含めるとケラレてしまい使用できそうもありません。

 また鏡筒バンドも前後バランスの調整に必要なので、固定で設計は厳しいと思います。アリ溝アダプタを使用する方法もありますが、その分重量増になりますし、AZM-90に取り付いているアリガタは長さ118mmと短いので、もう少し長いもに交換しないと使いづらいと思います。

 参考までに私の場合はミード AZM-90 経緯台セットは、過去のそれぞれのセールのタイミングなどを含めB級品などを1セット約10,000円~約17,000円程度で入手してきました。

 尚、コストパフォーマンスからは以前にも紹介しましたが 重量と大きさに拒否感が無く、アクロマート(F8.3)で許容できる人であれば、ケンコーのSE-120L 鏡筒を使用して、HF2経緯台を使用する双眼望遠鏡の作成がおすすめです。私にとってはやはり重量と大きさが気になり気軽には運用できずに運用が少ない状況です。既設で2インチ接眼部であり、この接眼部は光路長からもそのまま使用でき、鏡筒バンドも付属しているので追加購入の必要もありません。付属接眼鏡の1つのPL25接眼鏡も視野の広さは普通ですがアイレリーフも長く見えもよく使いやすい接眼鏡です。しかし、付属している口径50mmの光学ファインダーは倒立ファインダーであることと、約450gと重たいことから双眼望遠鏡には使用しなほうが扱いやすいと思います。LEDドットファインダーの入手はしたいところです。もったいないのでこの50mmファインダー2個を使用して正立プリズムを用いた90度対空双眼鏡の作成を考えています。
 尚、ケンコーSE-120鏡筒、SE-102鏡筒はF5程度と短焦点なので、既設の接眼部では光路長が長くて双眼望遠鏡用にはほぼ使用できず、光路長が短い接眼部などへの交換が必要になります。

● YNさん、今回も渾身の詳細なリポートをありがとうございました。
 前回いただいたリポートも併せて拝読しまして、素材鏡筒の加工や運用に随分と苦労されたことが分かります。これからBINO作りを目指す方には、もっと楽に利用できる鏡筒を探される際の参考例とされた方が良いかも分かりませんね。
 これは私にも言えることなのですが、YNさんはこれからBINO作りを挑戦される方のために、非常に親切に詳細をご報告いただきました。 しかし、これを読まれた方の中には、「BINO作りってこんなに大変なものなのか?じゃあ、やめておこう!」となる方もいるのでは?という不安も感じます。情報は多いほど良いとも限らず、この辺は難しいところです。其の辺をわきまえてお読みいただいけることを願います。

Comment by Matsumoto; / 管理者のコメント;
 今回は、失礼ながら私のコメント(赤字)を本文に挿入させていただきました。