BORG-125ED-BINO by DIY of Mr.M in Saitama pref. 埼玉県のMさん自作

<BINO製作背景>
今回、BORG125EDでEMS-BINOを製作する事になった背景は、
何度か同市内にお住いのYさんのお宅にお邪魔してEMS-BINO
での惑星観望や、フィールドへ出て150mmBINOでのDeep-Skyを堪能
させて頂き、両眼で見る臨場感、開放感の魅力に完全に心を奪われ
ぜひ、自分としても、EMS-BINOを所有したいと考えるようになり、
その思いは日に日に強くなっていきました。
せっかく作るのであれば、軽量かつ出来るだけ大口径で、気軽に
フィールドへ連れ出せる事が出来る機材が欲しいと言うことと、
手元に1本、BORG125EDを所有しており、125mm Apoとしては、
類まれな軽量級の鏡筒だったことが決め手となり、BORG125EDで
EMS-BINOを製作する事を決意した次第です。
Yさんの紹介で、松本さんへメールさせて頂き、突然のEMS製作の
依頼を快く引き受けてくださり、そこから私のEMS-BINO製作が
スタートしました。

依頼内容としては、EMS製作及び、BORG鏡筒の切断とFC100用
フォーカサーの取り付け。
当初、鏡筒へのフォーカサー接続はアダプターを介す事を
検討していましたが、松本さんからのご提案で、φ115mmの筒に
直接M114ネジを切り直付けする事となり、バックフォーカスを
10mm近く稼ぐことが出来るなど、何度かのメールのやり取りを
させて頂きながら、きめ細かなアドバイスを頂戴し、EMSと鏡筒
が完成しました。

そして、松本さんからEMSが届いてから、遅れること3週間。
ようやく架台のパーツが届きました。この間、EMSを装備した
鏡筒は目の前に2本揃っているのに、架台が無いために、
何も出来ずに指を咥えて見ているだけのお預け状態は
とても長く感じました。
架台到着後、早速、組み立ててみました。
松本さんHPのユーザーレポートや、先輩BINOユーザー Yさん
のアドバイスを基に、見よう見まねで設計した架台です。
くみ上げてみると、やはりと言いますか、素人設計なので
あちこちに設計ミスがあり(^^;、一部、妥協しなければなら
ない部分も出てしまいましたが、組み立てられない様な
致命的なミスは無く、何とか形にする事が出来ました。

架台に本体(EMSを除く),ファインダー,ウェイト(1kg)
を取り付けた状態で13.9kgと、片手でも余裕で持ち運べる
重量で、中々のライト級に仕上がり、自分の思い描いた
BINOを完成させることが出来ました。
鏡筒は、アリガタアリ溝式としたため、取り外せば
個々の重さは5kg以下となり、機動性は抜群に良いです。

<架台構造>
架台の基本構造は、松本さんのアドバイスの通り、プレート下側から
固定ボルトへアクセスできるようにし、調整の都度、アリガタを
取り外さず調整出来るようにしました。
また、Yさんの150mmBINO用に松本さんが改造して追加した機構を参考に
させて頂き、アリ溝をサイドからマイクロゲージで押して、左右の
筒の平行を調整する構造としました。
当初、機構的に複雑にして調整可能にするか、単純な機構にして
調整レスにするか悩んだのですが、有り合わせのパーツを多く
使ったので、ポン付けで平行が出るとは思えず、調整機構を
採用する事としました。

一部設計ミスがあり、架台の横幅(内寸)に対し、2本並べた鏡筒の
横幅がギリギリで鏡筒を斜めに傾ける事が出来ないため、アリ溝への
取り付けが上からの落とし込みで出来ず、スライドさせないと取り
付きません。
これは、設計ミスと言うよりは、HF経緯台の物理的な寸法によるもので、
単純に設計段階で気付かなかっただけなのですが(苦笑)、このスライド
させる作業が意外と煩わいです。
また、左右それぞれの筒を個々に取り外し、光軸の再現性を確認した
のですが、残念な事に、位置の再現性が低いことが分かりました。
再現性は、その後の原因解析で、ある程度改善の見込みが立って
来ておりますが、取り外しが煩わしいとなると、再現性が改善出来た
としても、最終的には架台と一体型での運用となりそうです。


<筒平行出しとEMS光軸調整の練習>
架台の完成翌日、早速近くの河川敷の広場に持ち出し、筒の平行出し
とEMSの光軸調整の練習をして来ました。
すぐにでも、星空の下に連れ出し、煌めく星々を堪能したかったのですが
ぶっつけ本番で暗がりの中での調整に不安があったため、まずは練習です。

遠くの鉄塔のてっぺんに照準を合わせ、まずは筒の平行出し。
調整用のマイクロゲージを使って、像が一致するまで追い込みます。
ただ、仮締めしたボルトを本締めすると、どうしてもわずかに動いて
しまいます。
そこで、EMSの光軸調整の登場です。
筒の平行出しで追い込めなかった、ほんの僅かなずれをX-Yノブで
追い込みました。
調整ノブは非常に軽く回り、イメージとしては指先の皮膚をノブの
ローレットにわずかに引っ掛けて回す感じで調整出来、200倍(手持ち
のアイピースで最高倍率)でも、難なく調整出来ました。
HPの「400倍オーバー!の高倍率でも常に完璧な光軸が維持されます。」
のコメントは、決して誇張ではない事が実感できました。

平行法での光軸調整は、2つの絵を重ねて立体視することを
昔から良くやっていたので、松本さんHPのユーザーレポートや
日記を読んで勉強した時から、なんとなくこんな感じかな?の
イメージを持っており、そのイメージと実機とがほぼ一致し
違和感なく行えました。ただ、最後の追い込みで、直前まで
2つにズレていた像が、スッと重なってしまいます。
それは眼球の回旋で、眼をアイポイントから30cmほど離すと
輻輳は完全に廃除できると松本さんからご教示頂き、現在は、
意識的に目を離して調整が出来るよう、練習中です。

<DEEP SKYデビュー>
お盆以降、中々天候に恵まれず、月齢との関係もあり
ファーストライトは、EMSを受け取ってから丁度1ヶ月が
過ぎた、9/6でした。

週末には台風15号が関東を直撃すると言う情報の中、
久々の青空。
金曜日でしたが、仕事を終え、ファーストライトの
場所に選び、向かった先は、三峰と言う秩父の山奥です。
到着は22時ちょっと過ぎ。月没は22時半頃なので、
慌ただしく光軸調整に取り掛かりました。
この時、日中に光軸調整の練習をしておいた事を
良かったと実感することとなりました。
と言いますのも、平行法で調整する際、まずは左右の
アイピースの輪郭が重なるように目の焦点を奥へ奥へと
ずらしていたのですが、暗がりの中、アイピースの輪郭が
見えないのです。
どこに焦点を置いて良いのか、感覚を失っていました。
この時、ふと思い出したのです。日中に調整をしていた時は
アイピースの輪郭の向こう側に、足元の砂利が見えていた事を。
これがヒントとなり、あえて足元を照らすライトを点灯。
これにより、アイピース輪郭が浮かび上がり、また
偶然にも、蛍光色の黄色いスニーカーを履いていたことが
功を奏して、スニーカーを見た焦点を固定したまま、
アイピースの中の星を見つめる。その時、視野の端の
スニーカーを意識(直視ではない)しておく。
正しいかは分かりませんが、何とかこの方法で
光軸調整を終える事が出来ました。


そしていよいよファーストライトです。
真っ先に狙ったのは二重星団hχ。
これまでの主力機材では、視野からはみ出してしまう対象
でしたが、BORG125ED-BINOなら、視野の中にピッタリ収まり、
宝石を散りばめた様な美しさに、しばし時間を忘れ、見入って
しまいました。
EMS-BINOは、hχを見るために入手したと言っても過言では
ないくらい、真っ先に見たい天体でしたが、実際にその美しい姿を
目の当たりにし、我が手中に納めたことの満足感に気持ちが高揚
しました。
hχとの別れを惜しみながら、次に選んだのは、アンドロメダ銀河。
3.4度の実視界(Masuyama32mm85度)では、伴銀河M110や腕の淡い部分
までもが余裕で同一視野に収まり、宇宙空間にぽっかりと浮かんだ
アンドロメダ銀河を見ているような感覚です。

しかし、面白いものです。
片目では十二分に広く、ぐるりと見廻さないと全景を見られなかった
85度の視野が、EMSを介し両目で見た途端、中央を見つめただけで
視野の隅まで認識出来、狭ささえ感じてしまうほど。
そう、「まるで宇宙船の窓から覗いている様だ」とのEMSの使用した
感想を多く見るように感じますが、まさにその通り。
(宇宙船に乗った事はありませんが(笑))
あたかも自分が、宇宙船の丸窓から宇宙を覗いているかのような
感覚を味わうことが出来、その臨場感に圧倒されるのです。
なぜ、今まで、あんなにも窮屈な道具(単眼、倒立)を使っていた
のだろうと、まじまじと感じさせてくれる、開放感、臨場感。
そして何よりも、見る事(覗く事)がこの上なく楽なので、
ずっと見ていたいと思える満足感がたまりません。
以前、友人と星見の間の談笑で、アイピース(単眼)を覗くときは
片目を閉じる(ウインク)か、覆い隠すか?を話した事があります。
私はウインク派。友人は覆い隠す派。
ウインクは長時間続けていると、顔の筋肉がピクピクと痙攣
し始めます。効き目の右では、慣れもあり長時間見続ける事が
出来ますが、痙攣が始まり左目に移行すると、慣れない右目を
瞑る頬の筋肉に力が入り過ぎ、すぐに顔が疲れます(笑)
友人は、鍛錬が足りない!!と言いますが、中々、顔面の筋肉を
鍛えるのは至難の業。
友人はと言うと、覆い被せた手が何となく気になり、出来れば
視力検査のお玉杓子(名称不明)が欲しい等と笑い合った事が
ありましたが、EMSを使えば、アイピースの覗き方など議論する
必要はありません。
ごく自然に両眼を見開けば、そこにある絶景を味わえると言う事が、
EMSならではの唯一無二の醍醐味であると、実感しました。

ファーストライトの晩は、スタートが遅かった事とロケーション
の関係で、さそり座や射手座付近の天の川は観ることが出来
なかったのが残念でしたが、秋の夜空では数少ない球状星団M15や
ぎょしゃ座の散開トリオ、惑星状星雲、系外銀河を楽しみ、
最後に、オリオン大星雲を見ました。
Yさんが良く、「逆さを向いたオリオン星雲は何だかなぁ。」
とおっしゃいます。
確かに、羽を広げた鳥の姿が逆さ向きでは、何か違和感があり、
飛び立つどころか墜落する鳥に見えてしまいますが(笑)、EMSなら
フェニックスが翼を大きく広げた雄大な姿に見え、これもまた
EMSの醍醐味の一つだと言えると思いいます。
今回は、あいにくフィルターを忘れてしまい、M42では真価を
発揮出来ませんでしたが、それでも、フェニックスが翼を広げた
様なその姿は圧巻で、特にトラペジウムを取り巻くガスの
ディテールはまるで写真を見ているような感覚で、鳥肌ものでした。

深夜3時を過ぎたころから雲が多くなり、ファーストライトは
幕を閉じることとなりましたが、やはりEMS-BINOは素晴らしいです!!
YさんのBINOを何度も覗かせて頂いていたので、EMS-BINOが
素晴らし事は十分に分かっていたはずなのに、改めてじっくりと
覗いてみて、やっぱり良いです。
色々無理をした部分はありましたが、それを帳消しにしてくれる
素晴らしい相棒を手に入れることが出来ました。


この度の、私のEMS-BINO製作にあたり、お忙しい中、EMS製作
及び鏡筒切断や取付けアダプター製作を快く引く受けて下さった
松本さん。そして、私をEMS-BINOの世界に導いて下さり、製作に
あたっても、親身にアドバイスを下さったYさんに、この場を
お借りし、お礼申し上げたいと思います。
本当にありがとうございます。

今回完成したEMS-BINOは、末永く星見の相棒として付き合って
いきたいと思っております。

Comment by Matsumoto: 管理者のコメント:
今回いただいたレポートでは、BINO製作のご工夫やご苦労のみならず、
初期(製作段階)の光軸調整や、使用段階での光軸調整について、
非常に詳しく、実体験に基づいて説得力あるご説明をいただきました。
これからBINOを自作される方、あるいはユーザーになられる方には、
とても良い参考になるかと存じます。
Mさん、この度は、大変有意義なレポートをありがとうございました。
続報も楽しみにしていますので、よろしくお願いいたします。