長文を書いても、ほぼ読んでくださらないことが分かったので、図に可視化してみました。
”射出瞳”を一言で言うと、”接眼レンズが作る入射瞳の実像” ということになります。
言い換えると、「接眼レンズによる対物レンズ自体の実像」です。
①の光線は実在しませんが、光路図に描いても問題なく、むしろ考察に有効です。
Fは、アイピースの物側焦点であり、かつ対物レンズの像側焦点でもあります。
F’は アイピースの像側焦点。
対物レンズ枠は、アイピースにとって有限距離にあるので、常にその像側焦点 F よりも外側に結像します。この図でお分かりのように、対物レンズ枠がアイピースに近いほど射出瞳は外側に出るわけで、実は、アイレリーフは固定されたものではなく、対物レンズの焦点距離によって微妙に変化します。(対物の焦点距離が短い方がアイレリーフが長くなる。)
この図から、望遠鏡の倍率=入射瞳径/ 射出瞳径 となることにもご納得いただけたと思います。
もう一度、図の入射瞳(Entrance Pupil)と射出瞳(Exit Pupil)の関係をよくご覧ください。
入射瞳の環の中をくぐる光線は、ことごとく、射出瞳の環の中から出て行く! ということです。
ここに観察者の眼の入射瞳を置けば、対物レンズをくぐる光線をことごとく捉えることが出来るわけです。( 瞳孔径>射出瞳 が前提ですけどね) 眼の入射瞳は、角膜上ではなく、角膜が作る、解剖学的瞳孔の虚像で、角膜よりも眼の内部にあるため、角膜は射出瞳よりも前に位置しないといけません。一見十分そうなアイレリーフの公称値に反して覗きにくいアイピースが多い所以です。
いかがでしょうか? これで射出瞳の本当の意味がご理解いただけたでしょうか?
72年の人生を振り返って、天文に興味を持ち始めてからでも52年、あらゆる方と出会いましたが、射出瞳の意味を明瞭に理解している方と出会ったことがありません。
それは、教育界から天文マニア、望遠鏡業界を含めて異常なことだと私は思っています。
これで、「初めて射出瞳の意味が分かった!」という方がおられましたら、ご連絡いただけると励みになります。 また、教育界や望遠鏡業界の方で、”初めて分かった!”という方は、正しい知識の啓蒙に努めていただけますと幸いです。