Optical Common sense Quiz-2-3-answer / 光学常識クイズ 第二段-3-解説

一般的な近軸結像公式 1/s’ – 1/s = 1/f に前回の問いの既知の値を代入すると、
1/s’ + 1/2 = 1/0.5 = 2
1/s’ = 2 – 1/2 =3/2
s’ = 2/3
 となりますね。敢えて計算しやすい数値にしたのと、1枚レンズの結像なので、一般的な結像公式でも、特に計算に苦労することはありません。しかし、これが、間隔を置いて、2枚、3枚となるとどうでしょうか? まず s’ もそのままでは次のレンズの計算に使えず、都度、レンズ間隔を差し引かないといけませんし、像点距離は都度、逆数を求めないといけません。

 行列を用いた近軸追跡では、物体距離と像点距離からは離れ、特定のx座標での高さhの点での光線の傾角α(定義はtanα)で光線を特定します。x-y平面上の幾何学的なベクトルに似た表記になりますが、x座標の席には、傾角 α が入ります。
 図のA→がHに入射する光線ベクトル(敢えてベクトルと言います。)で、B→が H で屈折した光線ベクトルです。A→に屈折マトリックスを掛けたら B→ になるわけです。
 繰り返しになりますが、ここらで、おさらいをしておきます。
1/s’ – 1/s = 1/f  の両辺に h を掛けると、(平等に両辺にどんな数を掛けても問題ない)
h/s’ -h/s = h/f となりますね。
 ここで、h/s’は、定義した α’、h/s は α 、また 1/f = Φ(レンズの度数)だから、
上式は、α’ = α + hΦ と書けるわけです。
また、屈折の前後で h に変化はないので、h = h’ です。
 それらをまとめて行列表記したのが、図中に書いている、屈折マトリックス です。
(屈折マトリックスの右上の成分は常にレンズのパワー(1/f)です。対角成分は常に0,他の2つの成分は常に1,従って、行列式の値=常に 1 です。)

 α’ = 3h/2 となりましたが、α’の定義は
 α’ = h/s’ から、s’ =h/α’、
これに、α’ = 3h/2 を代入すれば、
 s’= 2/3  が求まります。
  今回は、敢えて h を通しましたが、この計算でお分かりの通り、h の初期値は何でもよく、計算に好都合な 1 にすれば、よりシンプルになるわけです。(x軸とy軸の尺度を合わせる必要はない。)
 本例は、1つの屈折マトリックスで完結する例でしたが、複数の屈折マトリックス、移行マトリックスを繋げていけば、どんな複雑な光学系でも解析できるわけです。

 本例では、行列方式の優位性を十分にお伝えできなかったかも分かりませんが、手法自体はご理解いただけたのではないでしょうか。光学系が複雑になるほど、行列方式の優位性が際立ちます。