8cm-BINO

 私が定年後、山中の一軒家に住むようになって5年が経った昨年の夏のある夜、 頭上に輝く美しい昴、M-31の雲の様な星雲の姿、更にはおうし座 で煌く木星や土星を肉眼で見たとき、もっと大きくして眺めたいと思うようになりました。

 勿論、当時は星雲、星団の名前も知りませんが、美しいものをそのままの 姿で近くで見てみたいという素朴な気持ちからでした。  早速某メーカーの114mm反射鏡を購入し昴を覗きました、ところが何か 違う気がするのです、眼視や7x50の双眼鏡で見たのと星の並び方が違う のです、左右、上下が反転しています天文の世界ではそれが当たり前の 事とは当時知る由もありませんでした。

 むかし、船乗りをしていまして双眼鏡は必需品でしたので7x50はいつも つかっていました、これは見たままの形を近づけて見せてくれます、これ 船乗りの常識ですし一般の常識でもあると思います。 なのに天文界では どうして????。

 そこで初歩の天体観測という本を買い、佐治アストロパークをたずね、 宮本さんにいろいろとんちんかんな質問をし、くわしく、丁寧に教えて戴き 松本さんを紹介してもらいました。

 松本さんも素人の私に、親切に対応して戴いたのですが、特に何が見たいのか的を 絞ってと教えていただきました。 私は望遠鏡で星を眺めているとき 右に逃げたら鏡筒を右に振ると更に大きく逃げてしまうのは、人間の生理 に反する現象なのでどうも腑に落ちない事を強調しましたところ、EMSを見せてもら いこれだっ!! とすぐに注文してしまいました。

 しばらくは、Vixen102EDを赤道儀に乗せて星空散歩をしていましたが、 何かものたりず、再々松本さんを訪ねるうちに、100mmMTTを見せてもらい 遂に私の理想とする両眼でありのまま見える望遠鏡にたどりつきました。

 松本さんに無理を言って工程の中に私の80mmBINOを割り込ませて もらい、Vixenのハーフピラーの経緯台に加工搭載してもらいました。

 この自称チビBinoは常に組み立てたまま我が家に大きな顔押して鎮座して 居ますが取り扱いはいたって簡単、400mm F5だけあって、  1.分解も脚とフォークマウントがワンタッチで切り離せる。
  2.軽自動車にそのままつめる。
  3.眼幅、視野調整もいたって簡単。
  4.アイピースの交換も暗闇の中でも簡単。
  5.合焦調節も左右のヘリコイドで一発。
  6.軽量で、星の導入もクイックファインダーの装備と相まって
    素人にも簡単。
  7.組み立てたまま片手で抱いて持ち運べる。

  などなど、これからの好シーズンに大いに活躍してくれそうです。 どうも天文の素人がと思われるでしょうが、素人が、彗星大接近や惑星 大接近のとき大騒ぎするだけでなく、美しい夜空にロマンを求めていつも 楽しく複雑な設定なしに、気軽に見たままの星の姿を捉えることのできる 天体望遠鏡こそ真の望遠鏡だとおもいます。

 ちなみに私はこの夏、120mm F5 Twinn-Binoの製作を依頼して います。 チビBinoとあわせてこの夏小3の孫娘と星空散歩をするつも りです、どんな夏休みになるか、今からたのしみです。

山内 満喜男
Makio Yamauchi

Comment by Matsumoto/ 管理者のコメント;
 山内さんは、深海6500の操縦士として、世界最深の潜航を達成された方で、MHKの ドキュメントシリーズ ”プロジェクトX”でも紹介されておられますので、ご存じ の方も多いと思います。

 この度、海の底から空の上へと、挑戦の対象を180度転向されたかに見えますが、 山内さんのお話を聞くにつれ、未知な物に対する探求心には共通項があるのだという ことをいつも実感させられます。