近業用メガネ(老眼鏡)の”明視域”というものを理解していただくために、単純なモデルをご用意しました。眼の調節力(水晶体が膨らむ程度)は、年齢や個人差によって異なりますが、一律に調節力=+2.0Dと想定しています。調節力=+2.0Dとは、水晶体が目一杯に膨らんだ時に、+2.0Dのレンズ相当の水晶体の度数アップを行えますよ、という意味です。目一杯ですから、それを長時間キープするのは疲れるということも、お留め置きください。調節力は個人差が著しいので一概には言えませんが、+2.0Dとは、大雑把に言うと、50~60歳の調節力でしょうか。
調節力が3.0Dくらいになると、33㎝を見る時に全力を使うわけですから、長時間の近業が厳しくなって来ます。これが、大体やせ我慢の限界で、40歳代の後半になってメガネ店に駆け込むタイミングになることが多いようです。
上の図からご説明します。
調節力=+2.0Dの人に+1.0Dの凸レンズを装用させると、無調節の時に1m先まで明視することが出来ます。110cmになれば直ちにボケるか?と言われれば、そうでもないので、狭い部屋であれば、この段階では、遠くがぼけて困る、という印象はあまりないでしょう。で、今度は近くですが、調節力を目一杯に発揮すると、レンズの+1.0Dと調節分の+2.0Dを加えて+3.0Dになるので、瞬発力では33㎝まで見えることになりますが、これも長時間の作業は厳しいでしょう。40㎝くらいで作業するように習慣付ければ、このレンズでも実用になることになります。
2番目の図は、レンズの度数を2倍の+2.0Dにしたものです。近業距離がより余裕で見られるようになります。ただし、明視域が随分狭く(浅く)なりました。これは、固定したレンズで眼の調節力を加勢してやってるわけですから、より遠くが見たければ、都度、レンズを除去するしかありません。
3番眼の図は、レンズの度をさらに2倍の+4.0Dにしたものです。
この辺になると、明視域はさらに浅くなります。「もっと近くをよりよく見たい!」というお客さんの要望に安易に乗ると、「前のメガネの方が良く見えた!」と言われかねません。
一般の方は、”明視域”という概念がほぼなく、度数を上げればさらに良く見えるだろいう!という考えなので、注意が必要です。