去年の10月に EMS-ULS (R+L pair) 目幅ヘリコイド付 を注文しました。それと同時にタカハシFC100DZ鏡筒2本を発注しました。EMSはすぐ納品されましたが、筒は発注から8ヶ月かかってやっと届きました。
タカハシは「FC100DZ」を発表したものの、所定の精度のレンズが磨けず、
悪戦苦闘したようです。ようやく最近、受注が再開されました。現在のFC100シリーズは、タカハシにしては軽くて筒も細いので、双眼望遠鏡に適しています。「DF」の方が焦点距離が短くて軽いので双眼望遠鏡向きです。
EMSも2インチスリーブ用で十分です。でも、「DZ」の方が星像がシャープなようです。
私はこの筒で直焦点撮影もしたいので、「DZ」で65mmスリーブにしました。(65mmスリーブ用のレデューサーを持っていたりもします)
FC100DZは、ドローチューブ内径が63mm程度ですが、ドローチューブ後端に72mmのネジがあります。
そこにねじ込める65mmスリーブを作りました。EMS-ULS+Masuyama32mmで、ドローチューブが2cmほど出たところでピントが合います。鏡筒を短く加工する必要はありません。これだけ余裕があれば、どのアイピースでもOKでしょう。
架台は iOptron AZマウントPro + リンクス製ブラケット + リンクス製ポータブルピラー脚。
ブラケット天板にフライスで2本の溝を掘ってもらい、そこにアリガタレールをはめ込んで平行を出しています。
アリガタ上面からボルトを入れて、天板下側でナットで締めています。当初は、撤収時は鏡筒を1本ずつ外すことを考えていましたが、
それよりも天板ごと外して、2本1セットで持ち運んだ方が楽だと思いました。合計8kg程度なので、老人になってもなんとか運べます。
iOptron AZマウントPro を使ったことがない人は、これの使い勝手がどうなのかを知りたいと思います。
結論から言うと、10cmまでの双眼望遠鏡での観望や13cmまでの屈折鏡筒での観望や写真撮影をするには、最高の架台です。
架台の電源を入れると、自動的に鏡筒が天頂を向き、水平回転軸が360°回ります。その間にGPSから各種設定情報を取得します。
1回転した後、そのとき地平線上にある一番明るい天体(太陽以外)の方を向きます。このとき多少ずれているので、ハンドボックスでその天体を視野中央に入れます。これでアライメント完了。この後は、ハンドボックスに目的の天体を入力するか、選択肢から選べば、自動でそちらを向いた上で自動ガイドに入ります。
また、この架台はWi-FiでiPadやiPhoneにつながるので、それらにSky Safariを入れておけば、星図画面にタッチするだけで自動導入できます。
自動導入した天体が視野中央からズレていたら、ハンドボックスで中央に持っていってアジャストすれば、そこから次の天体に行くとき、正確に向いてくれます。
写真を見てわかる(?)と思いますが、電源ケーブルがありません。架台にバッテリー内蔵で、フルチャージしておけば、一晩中動き続けます。
逆に、ACアダプタをつないだまま使うと、ACアダプタのケーブルが脚に巻き付いて、ケーブルが切れるかコネクタが折れます。
この経緯台は、上下回転軸のクランプはありますが、水平回転のクランプはありません。つまり、水平回転はモーターで回すしかありません。
しかし、モーターの回転スピードは10段階(9段階?)で簡単に変えられて、最高速で回せば、手動で回すのと変わらないくらいの速さで回ります。
エンコーダーを内蔵しているわけではないので、上下回転軸も、最初にロックしたらクランプを緩めてはいけません。
先に、写真撮影にも最高の架台、と書きましたが、経緯台で写真撮影? と思われる人がいるかもしれませんね。30秒以内の短時間露光を繰り返し、
それらを加算合成すれば、長時間露出の写真と同等以上になります。経緯台ガイドですから、長時間ガイドになると写野が回転します。
しかし、ステライメージで加算合成すれば、その際に写野の回転も補正してくれます。私は、そうやって撮影した画像は、写野円1°とか3°とかの円形写野にしています。そうすると赤道儀で撮った写真と何ら変わりません。私がやってみた範囲では、f=700mmで20秒露出程度までは、連続100コマ撮ってガイド失敗ほとんどなしです。
FC-100DZ BINOで、やっと地上の景色ですが、見られました。とてもきれいな像です。右側EMSの光軸調整ネジも、ごくわずかに動かすだけでOK。
リンクス製ブラケットもポータブルピラー脚も快適です。これで星を見たいのですが、北関東の夜は全く晴れません。
文章の半分以上が AZマウントPro の紹介になってしまいましたが、素晴らしく便利な経緯台なので、販売終了になる前に買っておいた方がいいと思います。
松本さんからEMSを購入して8ヶ月かかりましたが、やっとBINOとして使えるようになったので、ご報告まで...
FC-100DZ BINO としてのレポートはまた別の機会に。
Comment by Matsumoto / 管理者のコメント;
APM175-BINOを始めとした多くのBINO製作のご経験のある、栃木県のNさんのご投稿です。
一般的には、マニアは小口径からスタートして、徐々に大口径を目指すのが通例ですが、一度大口径を達成すると、稼働率の低下から、最終的には少し口径を妥協(中口径?)した落とし所に落ち着くことも多いようです。
今回のNさんのBINOは、まさしくそうした事例で、皆さんにも大いにご参考になるものと思います。
架台の”iOptron AZマウントPro”については、私から無理を言って、特に詳細に解説していただきました。
Nさん、この度は大変意義あるご投稿をありがとうございました。続報を楽しみにしております。