Sky90-BINO in Uighur, China

Total Solar Eclipse with Sky90-BINO in China

Okadaさんのウィグル(中国)皆既日食遠征記です。

 ご無沙汰しております。Okadaです。この度、再び皆既日食を観に、星ナビ協賛日通旅行「2008年中国シルクロード 皆既日食ツアー8日間コース」に参加して中国奥地の新疆ウイグル自治区 伊吾県に行きました。

【エアポート】

 丁度、北京オリンピック開催直前であったため、空港でのチェックは非常に厳しく、空港では、過去の旅行での経 験も含めて最も厳しい、手荷物も含めたすべての重量チェックが行われました。ツアーでの旅行であったため、グル ープチェックインという形で、多少の重量オーバーは大目に見てもらえたのでしたが、双眼望遠鏡の重量対策は大きな 問題であることを改めて感じ、さらなる軽量化を今後検討しないと行けないと思いました。

 また、中国国内線において手荷物チェックでアイピースとEMSが目にとまり、いろいろと聞かれることになりました。 望遠鏡のアイピースであると言っても、専門用語に近い単語であるためか、あまり理解してもらえませんでした。 百聞は一見にしかずと言いましょうか、以前何かで写真を見せればよいということを知っていたので、組み立てた 状態の写真を見せたところ、若い検査官の人は、目を大きくして、すごい望遠鏡だ!と驚きながらも笑顔で言ってく れました。

【EVE】

 バスでの長い移動でしたが、先にも記述した理由より途中公安による検問が何回もありました。翌日の期待が高まる 中、何だかな~という感じでした。しかもその前日までは天気が悪く、移動中雨が降るようなこともありました。 バスの中はあえて天気の話はしない雰囲気が漂いながらも、皆心の中でてるてる坊主をぶら下げていたのでした。

 我々のツアーの皆既日食観望場所は、政府指定の観測地で、日食城という名称が与えられていました。そこには夕 方18時過ぎに到着しました。ただ、18時と言っても、緯度が札幌並みに高いのと、北京標準時を採用していること から2時間ほど早いため、体感的には16:00ぐらいでした。そこには今回の日食のために、立派な建物やモニュ メントが建てられていました。しかし、風景を入れて写真を撮る写真屋さんもいることから、下見にてこの建物から 数100m離れた小高い何もない丘で陣取ることとなりました。

 これから夕食になるのですが、全日程を通してハズレは無く、食事面においては非常に良かったです。特にこの地方 特産のハミ瓜(メロン)は甘みがあって非常に美味しかったです。また、先日まで天気が悪かった空が、この時間あた りからみるみる回復していき、明日への期待が高まってきました。

 日食を観に世界各国から人が集まります。夕食後、お祭りムードのテント場にSky90双眼を出し、その場に脚を止め たフランス人や中国人の方々に木星やM13などを見て頂きました。日食に見に来るだけにオタクらしく、ETHOS (フランス人はエトスと発音していました)2本に驚いていたり、EMSに非常に興味を持っていました。私個人のHP は持っていないので、日本の双眼オタク紹介と勝手にEMS販売促進のためにマツモトさんのHPとBigBinoの服部さんの HPを記載したカードを渡すと、「ビジネスマンだ~」とその場に居合わせた者達で大笑でした。 

【雲と賭け】

 皆既日食自体は夕方のため、それまでは木立のあるテント場で参加者の方々と歓談し、期待を高めていました。そ して、日食開始数時間前にいよいよ移動開始です。

 前日下見をした場所は遙か遠くに天山山脈を望み、周りには全く何もない最高のロケーション。また砂漠地帯だけに 日本よりも空気が乾燥かつ澄んでいます。しかし、真夏の砂漠は過酷で、恵みなる太陽の光のはずが、まるで殺人光線 のように強烈でした。

 昼過ぎまでは快晴だったものの、第一接触前から太陽の周りにはいやな雲が湧いてきました。しかし、そのときは あまり雲を気にすることなく部分食は進み、いつの間にか灼熱であった気温が徐々に下がり、皆既がもうすぐだとい うことを肌でも感じていました。

 ところが!いよいよ皆既10分近くになりましたが、なんと雲が太陽を覆うじゃありませんか!!おそらく数千人 近くは居よう、少し離れた日食城からは祈りに近いような悲壮な声が聞こえてきました。

 この時点で、雲が流れて行くか行かないかはかなり微妙で、5分前近くには知り合いが居ても経ってもいられず、 機材を抱えて走り出しました。周りの方々と「移動するか!しないか!雲は抜けそうか!ダメか!」などと雲の行方 を眺めながら声を掛け合っていました。そして、皆の想いが通じたのか、わずか皆既直前2,3分前に「抜ける!」 と確信が持てたのでした。

 皆既約30秒前。誰かが「コロナが見えるぞ~!」とのかけ声に反応して覗いた時、2年前エジプトでもう一度会い たい、と想ったコロナに再会を果たしたのです。Canonの10x42IS防振双眼鏡でコロナの広がりを確認すべく覗くもの の、90mm双眼で覗いたらもう戻れません。EMS双眼で織りなすコロナは、90mmある口径のおかげで、分解 能高く流線が美しく見え、そしてEMSでしか達成できない82°という広視野且つ5.25°という広視界を両目 で観ることができるのです。プロミネンスは独特なピンク色に輝き、そのうちの一つは、まるでカモメが羽ばたくよ うでもありまた。

 しかし、今回の皆既は2分弱。もっと見続けていたいという思いとは裏腹に、時間はあっという間に過ぎ去ってしまい、 右端が明るくなってくるのが感じ取れます。そして、突然光り輝く太陽が現れた瞬間、それは世にも美しいダイヤ モンドリングなのです。しかし、無情にもそれは皆既の終わりを意味し、えぇっ~もう終わり~!?もっと観たいと いう欲をやむなく打ち払うかの如く、双眼から眼を離すのでした。

 そしてこの後迎えるのは、観られた!!という満足感が怒濤の如く押し寄せ、しかしもっとみたい、もう一度みた い!という気持ちが入り乱れた瞬間でもあったのでした。

 後から思うに、こうやって日食病に冒されるのだと思いました。

【北天】

 テント場に戻ったツアーの皆は、撮影した写真を見せ合ったり、もう来年の話で盛り上がったりしていました。 ところで、今回このツアーを選んだもう一つの理由として、真っ暗な夜空の下での天体観望がありました。それは期 待通りの夜空で、北天の天の川が光り輝く、日本ではもう味わうことができないような素晴らしい夜空でした。北 極星は普段見慣れた高さより遙かに高く、北斗七星が周極星となっていました。また天の川はその名の通り河のよう になって光り輝いていました。いて座付近が明るいのは既知ですが、はくちょう~カシオペアのあたりも非常に明る く、また暗黒帯の入り用がはっきりわかるほどでした。

 たった9cmの口径ですが、双眼視の効果は絶大で、ETHOS13mmとの組み合わせで観たM31は3°近くあるかの 如く見えたでしょうか、暗黒帯の入り方も素晴らしく、ベテランのドブユーザーの方もドブに迫る見え方だと喫驚 する見え方でした。もちろんもっと大口径の望遠鏡を持っていけたら、もっと見えたと思います。網状星雲はフィラ メント構造がわかるほど容易に見え、また真ん中部分の淡い星雲もノーフィルターで容易く見えるほどの素晴らしい ものでした。特に驚いたのが、ペリカン星雲の眼やくちばしの切れがはっきりわかるほどで、私を含めその場に居合 わせた者は驚いて観ていました。南天も素晴らしいですが、北天も負けたもんじゃないと見直しました。

 メジャーな天体、マイナーな天体などなどたくさん観ていましたが、緯度が高いゆえ夜明けまでの時間は意外に短 く、黄道光が見え始めたところでお腹いっぱいとなり就寝することとしました。

【See you Again!】

 個人で段取りを立てて、世界各地に日食や彗星、オーロラ、南天などを求めることができる方は、本当に素晴 らしいな~と思います。私などはトラブルがあったときの対応など到底で きないとわかりきっているので、ツアー参加にならざるを得ない状況です。個人でなんでもできる方からツアーを 見ると、大名行列的で融通が利かないかもしれません。

 しかしながら、ツアーも良いなと思えるのは、いろいろな人と出会えることです。天文業界では有名な方、日食が初 めての人、20年以上のベテランさん、ダイヤモンドリングのみ追い求める人、なんだか面白そうなので申し込んだ 人などなど。そして、何よりも、あっ前のツアーでお会いしましたね!と言える方々に会えることです。また、ツア ープログラムには載っていないオプションの数々など、陰ながらツアーを支える添乗員のおかげで、同じ目的をもっ て集まったツアーは、ある意味快適で本当に楽しかったです。

 来年の皆既日食は日本近海で起こるため、EMSを使用した双眼望遠鏡ユーザーに出会えるのではと思ってます。そし て彼の地で、あっ!また会いましたね!と言える日を楽しみにしています。 See you Again!

【写真解説】■01 今回の荷物(スーツケース×2、リュックサック)
■02 日食城
■03 ハミ瓜(哈密市内にて撮影)
■05 日食前のSky90双眼 (遠く天山山脈を望む)
■06 皆既日食
■07 皆既中の観望風景

Comment by Matsumoto/ 管理者のコメント;

 Okadaさんより、オーストラリア南天観望エジプト日食→に続いて、 中国での皆既日食遠征のリポートをいただきました。渾身のリポートで、私を始め、現地に行けなかった者にとりましては、何よりのお土産です。 実際に体験なさった方の何分の一いや、何十分の一かも分かりませんが、リポートを読ませていただきながら、手に汗を握っていました。

 それにしても、これだけ世界中を旅したEMS-BINOも数少ないことでしょう。お荷物の写真がありますが、大荷物にも 見えますが、むしろ、よくこれだけコンパクトにまとめられたものだ、と驚かされました。 大きな荷物を持っての移動は 大変かと察しますが、EMS-BINOで観る皆既日食には、その苦労が報いられるだけの感動があるのだということを、Okadaさんは身を以って証明してくださっています。 海外の方から”Businessman”と揶揄されてもくじけないで^^;、常にSky90-BINOをお供にしてくださってありがとうございます。

 Okadaさん、今回も貴重なリポートをありがとうございました。