BORG76ED-BINO

 今年2月Megrez90-BINOを製作していただきました。それのEMSを兼用してより軽量なBINOを試作してみましたので紹介させていただきます。

【経緯】
2年前にシュミカセ(C11)を購入し、このファインダーとしてBORG100アクロ(EWV32 20倍4.1°)を同架していました。これだと導入したい対象がほとんど確認できてしまうので導入が非常に簡単になりました。そしてこのファインダーをいつかは対空双眼鏡に置き換えたいと常々思っていました。 Megrez90-BINO製作時はC11にEMS-bino同架することは考えていなかったのですが、黒木様のBORG71FL双眼望遠鏡 プロトタイプ(自作)のユーザレポートを読ませていただき、これならC11に同架できるかもしれないと直感し、松本様に相談しながら2本鏡筒を並べて試作してみました。

【BINOの仕様】
・ 重量5kg以下
・ 片持ちのL型プレートで保持
・ EMSはMegrez90のものを兼用(EMS-L目幅ヘリコイド仕様)
・ 鏡筒は10cm単眼の光量となるよう7cmクラスのアクロマート
・ 視野はファインダーの導入機能として4°程度、倍率は散開の鑑賞に最適な20倍程度 

【試作結果】
・ 鏡筒はSYNTA やBOSMAの安価な8cmアクロマートを検討したのですが、鏡筒の切断や接眼部の交換が必要でそれらを2本用意する費用を考えると手持ちのBORG76ED に1本新たに中古鏡筒を探して購入することにしました。(この入手が一番苦労した点です。)

・ 鏡筒の構成は76EDレンズ【7800】【7801】【7507】【7508】と最新の軽量のヘリコイドLⅡを採用しました。BORGはパーツを揃えると高めですが、軽量で鏡筒長がパーツで調整可能なのでbinoの素材としてはうってつけです。

・ 製作に関してはL型のアルミプレートを製作依頼しました。
・ 鏡筒の平行調整は遠くの鉄塔を見ながら行いました。
・ 組立したところ重量はアイピースを除いて4.8kgでMegrez90の約半分の重さで片手で楽に持てます。

・ 作動感は試しにポルタ経緯台に搭載したところちょっと水平回転が重い感じでした。C11を搭載しているT-Mount改ではバランスをとると水平15°位から天頂までフリーストップで動きます。また水平回転も左右の重量バランスがとれて軽快に動きます。

・ 視野はEWV32mmで16倍 5.4°瞳4.9mm、アメリカンサイズのSW24.5mmで20倍 3.3°瞳3.6mmとなりました。

【実視結果】
 先日2回目の遠征でようやく実視できました。場所はホームの赤城山です。 さそりが南中し夏の天の川がなんとか見える当地としてはまずまずのコンデション。 アンタレスでファインダーの光軸合わせをしながらbinoを見るとM4が見えたのでそのまま主砲C11でM4を確認。球状星団はやはりC11には敵いません。 先に沈みかけている春のディースカイをチェック。M81,82ペア、M51、M101、M3、M65,66ペアを確認。 その後南に戻りM6,M7を導入。散開はbinoでないと入りきりません。とてもシャープに見えます。 そして夏の銀座M8,M22,M17と射手座からM11方向へ散策。さらに上っていくとコートハンガーが入ってきました。binoでは余裕で入るのでかわいらしく見えます。 M8などはbinoで星野の中で見ても主砲で拡大してみてもきれいに見えました。 M57もこの倍率ですがbinoでなんとか確認できました。そしてM27も容易に確認できます。網状星雲は見つけられませんでした(フィルタ無では無理?)。見忘れたM5を見て後ろをみるとカシオペアが上がってきたのでET星団を見て最後に天頂にあって後回しにしていたM13を見て薄明を迎え本日終了。 導入対象の見え方に関しては比較している空のコンデションが違うのですが単眼の100mmアクロに比べて双眼の76mmアポは互角以上と思われます。 このbinoは計画通り導入及び散開星団の鑑賞と活躍してくれました。

【課題】
・ ヘリコイドの作動ですがEMSと2“アイピースでは作動が重く、フロントで使わないと厳しいものがあります。まあ途中アイピースは交換しないのでよしとすることにします。

・ 構造がアルミプレートに鏡筒バンドをただ乗せただけなので光軸が自宅で調整した状態と少しずれたようなので保持方法を改善していきたいと思います。

【最後に】
 長年イメージしていたシュミカセ+対空双眼のシステムが具現化できとりあえず嬉しくて報告させていただきました。口径からするとC11が主砲ですが大きな対象に対しては広視界の76ED-binoが主砲となります。まだまだ気づいていない問題があると思いますが徐々に改善していきたいと思います。
 また76EDbino単体での軽量・分割性を生かして、海外遠征に持参し昼間は片側で日食の撮影と片側で観望、夜は双眼観望鏡として南天の観望などと夢を膨らませております。
 EMS歴3ヶ月の素人ですがEMSと市販品のパーツを組み合わせで高性能な双眼望遠鏡ができてしまうのですから、EMSをここまで進化させてきた松本さんに改めて感謝いたします。 またユーザーレポートを書いてくださった黒木様にも感謝いたします。

埼玉県 Y 

Comment by Matsumoto/ 管理者のコメント;

 Yさん、Megrez90-BINOに続き、 BORG76ED-BINOのご成功、おめでとうございます。

 まずは、某業者さんによるTマウントの改造が見事ですね。  改造後の形式は、常に重心が水平回転軸上にあるので、力学的に有利で、経緯台として 高性能が期待できますね。 鏡筒の下に干渉物が無いことによる開放感も捨てがたいですね。
 片側にバランスウェイトでなく、BINOをセットされた点が良いですねえ。 実に無駄がありません。 (左右共BINOになるともっと良いのですが^^;。)
 ところで、こうしたセッティングでは、左右の光学系の 光軸が完璧に合致していると、楽しさも倍増し、そうでないと半減するのですが、Yさんに お聞きしたところ、垂直方向はアリ溝と架台の取り付けのバカ穴の範囲で、水平方向は BINO側の鏡筒バンドの取り付け部で調整されているそうで、さすがです。

 この手のT型架台で私が今非常に注目しているのが、やっと供給され始めたMEADEのLX80です。 自動導入のGOTO架台ですが、非常にしっかりしているようで、搭載可能重量が桁外れです。 4月28日~29日にニューヨークで開催された望遠鏡フェア(NEAF)では、米国の代理店さんが125SD-BINOを LX80に搭載して展示されました。 この段階では、まだ実際のフィールドではチェックできていませんが、近日中にこの架台の最終的な評価が得られる予定です。( 以下のYOUTUBEの後後半にちらっと登場します。)
NEAF10分間ツアー

2014年5月4日追記 掲載時とのタイムラグにより、LX80架台に対する評価が今では変わっていますので、責任上、 現状を追記させていただきます。
 まず、掲載時は極端な円高とあいまって、LX80架台の非常に高いコスト/パーフォーマンスに注目したのですが、現在では円安が固定して値上がりしたこと により、価格的な魅力は半減してしまいました。

 次に、電子系統が脆弱(過電圧に対する保護回路が不十分か?)のようで、端子の差し間違いで一瞬で回路がパンクする等の問題が確認 されています。こうした開発初期のトラブルは一般的に珍しくないのですが、メーカーの修理対応に月単位、年単位の時間がかかることの 方が問題で、現状ではお勧めできない状態になっています。 メーカーの製品自体の供給もストップしているようで、改善を模索しているのかも分かりません。  ということで、性能が完全に安定するまで、まだしばらくは様子を見た方が良さそうです。 以上、当リポートとは無関係ですが、 LX80架台の評価について、訂正いたしました。