BORG125ED-BINO evolved, from EMS-ULS to -UXL / EMS-UXL仕様に改造!;by Mr.M in Saitama prefecture/埼玉県のMさん

(Mさんより、渾身のレポートをいただきました。僭越ながら、今回は赤字で私のコメントを挿入させていただきました。)

 この度は、EMS-UXLを最期短納でご対応いただき、ありがとうございました。

 こちらこそ、ありがとうございました。互いの communication がスムーズに運び、万事円滑に進んだ結果ですね。

さて、早速ではありますが、昨年末に購入させて頂いた、EMS-ULXへのリフォームが完了しましたのでご報告をさせて頂きます。

 使用感やEMSの性能に対するコメントは、他のベテランユーザーさんがされており私が改めて報告出来る事は無いので、今回のリフォームにあたっての工夫した点や苦労話を報告させて頂きます。

 お願いさせて頂いたEMS-UXLは12/22に到着し、子供たちよりも一足早いクリスマスプレゼントとなりました。
おかげ様で、何とか年内のリフォームが完成し、気持ちの良いお正月を迎えられました。(写真1,2)

 今回いただいた渾身のレポートは、当方にとっては何よりのお年玉になりました。

 2019年に初めてEMS-BINOユーザーとなり、1年半弱の間に2台のBINOを所有する事となりましたが、これで私のBINO製作は、一旦、完遂となりました。
あとは、使い倒すだけです(笑)

 思い返せば、BINOの知識が全く無い状態から、松本さんのHPや知人のBINOを参考に設計がスタートした初号機の製作が、私のBINOライフの始まりでした。
 中軸架台を知人から勧められましたが、予算の関係でVIXENのHF経緯台をベースとし、コの字に組んだプレートを寝かせ鏡筒を並べた、ブランコ式平置きのホルダーでBINO初号機を完成させたのが、2019年8月でした。(写真3)

 この方式が伝統的なアプローチですね。 現在でも、ほとんどの自作例がこの方法を採用していますね。

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 出来映えとしては、初めて作った割には良く出来たと自画自賛していましたが、重量面で目標10kg以下に対し、13.2kg。
 松本さんのHPでは、BORG125EDの後継機の125SDで10kg切りの超軽量級のBINOが紹介されており、その差に愕然としました。

一般的な意味では、これでも十分に軽量化されていますね。デザインも秀逸です。

 そんな折、軽量&全長の短いの3インチクレイフォードフォーカサーを入手することが出来き、また、2号機としてFC100(CLASSIC)-BINOを完成させ、EMSがもう1set欲しくなったタイミングでEMS30周年セールが始まり、今回のリフォームを決意するに至りました。

 今回のリフォームのコンセプトも2号機同様に、「作らずに作るBINO」ですが、クリアすべき課題が5つありました。
”作らずに作るBINO”良い言葉ですね。私の設計方針もまさしくそれです。

  1. EMS―ULS⇒UXLに伴う、重量増加
     ⇒BINOホルダーの構造を見直し、10kg以下が目標
  2. EMS―ULS⇒UXLに伴う、光路長の消費増大
     ⇒手持ちの全てのアイピースで合焦
  3. 目幅確保(目幅60~70mm )のため、最大幅(D寸法)の増大
     ⇒HF経緯台のフォーク幅に収まるサイズの達成
  4. 手持ち全てのアイピースをフルストロークで完全バランスの達成。
     ⇒1kg/本~90g/本のアイピースで完全バランス。(左右で1.8kgの差を吸収)
  5. 見た目を格好良く!!
     ⇒あくまでも主観(自己満)
    設計の無駄が省けると、自ずと見た目も良くなりますね。(人間の体と同じ。^^;)

 一つ目の課題である重量増をクリアすべく、軽量化のためBINOホルダーを一から見直し。ブランコ型プレートを改め軽量部材とVIXENのSX鏡筒バンドを組み合わせた軽量のメガネ型BINOホルダーを採用。
シンプルを追求して行くと、自ずとこのスタイルになりますね。
 併せて、軽量3インチクレイフォードフォーカサーに換装する事で、EMSサイズアップに伴う重量増を相殺。

 さらに二つ目の課題である光路消費増大(約+16mm)もフォーカサーの換装で対応でき、手持ちの全てのアイピースで合焦が確認出来ました。

 三つ目の課題。目幅:60~70mm(D寸法:170mm)を確保するためには、センタープレートをt:8mmにする必要があります。しかし、HF経緯台のフォーク幅に収めるには最大でt:6mmまで。目幅を妥協しフォーク幅改造なしで進める手もあったのですが、目幅優先とし、t:8mmの肉抜きされた超軽量プレートを購入。メガネ型ホルダーを完成させました。(写真4)
良いプレートを探されましたね。

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 センタープレートが厚くなった分、幅の拡大改造が必要となってしまいましたが、大規模な改造は私の技量では無理なため、幅寸法の拡大が最小で済むよう、サイドプレートを一工夫しました。
 鏡筒バンドにはアクセサリー取り付け用の台座凸部分があり、この凸形状が邪魔です。そこで、プレートの中央部に肉抜き形状があるプレートを探し、その肉抜き部に凸部をすっぽりと収まるように組付けることでサイドプレートの強度(厚み)を確保しつつ、幅の増大を最小限にできました。(写真5)
素晴らしいアイデアですね。かつ、好適な部材をよく探されましたね。

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 結果、フォーク幅の改造はt:1.5mm×2(左右合わせて3mm)のプラ板を挟むだけの小改造で済みました。(写真6)
 フォークをベースシャフトに固定するための3本のM4のキャップボルトがプラワッシャーと干渉するはずですが、穴開けされたのですね? 私はCNCフライスで六角穴のスペーサーリング(アルミ合金)を作ったことがありましたが、結構手間でした。

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 4つ目の課題、所有する全てのアイピースをフルストロークで完全バランスの達成。
 最重要かつ難題ですが、意外にマニアや業界に理解されていない問題だと思います。多分、理解していたのでしょうが、ずっと昔に諦めて放棄してしまった、というのが正解かも分かりませんね。だから、大方の市販の手動架台は、クランプ固定+微動機構で逃げている感がありますね。フルストローク完全バランスの架台の操作性と使用感には、絶大なものがあるのですがね。バネやフリクションで無理やりモーメントを打ち消そうとするのとは一線を画したメリットがあり、十分に苦労の見返りのある挑戦なんですけどね。
 私が所有するアイピースは、1kg/本~90g/本。その内8割を占める400g/本付近をデフォルトとしてウエイト無しで完全バランスが取れるように、耳軸を鏡筒の上下中央より上方へシフトする寸法を決めました。
 私がいつもサイトで触れていることですが、これが極めて重要なポイントですね。残念ながら、市販の経緯台等、この配慮が不十分だと思います。
 EMSは上方へ直角に曲がってさらにアイピースを取り付けるので、鏡筒の上半分に重量が偏ります。
 そうですね。また、EMSを度外視しても、ファインダー、タブレット等々、アクセサリーはほとんど鏡筒の背中側(天側)にセットしますからね。鏡筒を水平に置いた時に天側が重くなることがほとんどです。
 最重量アイピースと最軽量アイピースでは前後(対物レンズ側と接眼側)バランス調整に加え、アイピース背丈の考慮が必要で、私の機材で完全バランスを達成するためには、ウエイトは耳軸をまたいで前後,上下に移動させる必要があります。
 まさしくその通りですね。それをいかにシンプルに解決するかというのがもう一つの課題ですね。
 そこで、解決策としてウエイト保持をモノレール構造(レールに載せるor吊り下げる)とし、BINOの前後,上下に設置できるよう、市販のアルミフレームを流用した脱着可能なハンドル兼バランサーユニットを組上げました。
素晴らしいアイデアですね!
 これにより、1kg/本 のスーパーヘビー級から90g/本 のライト級のアイピースまでの完全バランスを達成させています。(写真7,8,9)

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 5つ目の課題である、見た目のカッコ良さ。
3インチフォーカサーから第一ミラーのハウジングへ。、そこから綺麗な曲線を描いて観測者の眼元まで続くフォルムは、前後,左右,上下どこから見ても無駄のないカッコ良さで、これからの星見ライフを供にしてくれる相棒への愛着がさらに増す、惚れ惚れする仕上がりとなりました。
素晴らしい!

 今回のリフォームにおける最大の課題は、EMS-ULSからEMS-UXLへのサイズアップによる光路消費と重量増大への対応でしたが、フォーカサーの換装により軽量化と光路長を確保することで、それぞれ相殺することが出来、ほぼ狙い通りの結果となりました。
 逆に、軽量化に伴う副作用として、鏡筒バンドの平行度と平面度の悪さ故の2本の鏡筒の水平方向の平行精度の悪化がありました。
 2号機では、アルミ切削品を採用したため、組み合わせるだけで水平方向は平行精度を確保できましたが、SXバンドはアルミダイキャスト製でさらに取り付け面にも塗装が載っており、危惧した通り、ただ組み合わせただけでは平行が出ませんでした。
 そこで、EMSの光軸調整ノブが原点にある事を確認したうえで、四つのバンドの内一つに0.1mmのシムテープを挟むことで、水平方向の平行度もばっちり決まりました。
 完璧ですね。もっとも、この程度の調整ですと、代わりに左のEMSで初期調整をする手もあります。(経験者向け)

 完成した新生BINOの重量は、10.8kg(EMS-UXL含む)となり、10kg切りは達成できなかったものの、125mmApoとしては、かなりの軽量級に仕上がりました。(FC100-BINO(2号機)よりも軽いです)
 また、松本さんオリジナルの目幅調整ヘリコイドは、軽量化に対する貢献度は大きく、目幅調整機能を有したクレードル(ホルダー)を採用した機種よりも、クレードル部で3割ほどの軽量化できることも、軽量BINO完成の大きな要因だと考えております。

 BORG125EDは、性能面では最新機種と比べると明らかな差があり、不満な点が無いわけではないのですが、価格面(中古)では相応の光学性能であると思いますし、何よりも軽量であることによる機動性が抜群です(非力な私でも、片手で余裕で持ち運べます)。機材の重量は立派な性能の一つであると私は考えており、価格、性能(光学性能,機動性)のトータルバランスで、私にはベストチョイスだと、改めて感じています。
 昨今の高級鏡筒は重厚化の傾向にあるようで、眼視派としては殘念なことです。BINO用に特化した軽量な鏡筒の開発を希望します。

 完成後、まだ新月期を迎えておらず、またコロナ禍による緊急事態宣言が出てしまい、ファーストライトがいつになるか判らない状況で、部屋の中で新生BINOを眺めながらニヤニヤしながら、フィールドへ連れ出せる日を今か今かと待ちわびています。
ファーストライト後の続報を楽しみにしています。^^

 EMS販売30周年記念セールの最後の購入者になるだろうと思い、年末ぎりぎりの駆け込みで注文しましたが、31周年セールに継続されるとの事で、思惑(?)は外れはしましたが(笑)、セール継続によりさらにEMS-BINOユーザーの輪が広がる事を期待しております。
恐れ入ります。

 末筆となりましたが、この度は、年末のお忙しい時期の依頼にも快く引き受けて頂けたことに、感謝いたします。ありがとうございました。
 コロナ感染が全国的に広がっております。くれぐれもお体にはお気を付けください。
 この度は、渾身のレポートをありがとうございました。
 これからBINOを自作される方の非常に良い参考になると思います。
  今後共、よろしくお願いいたします。