今日の地方紙で、恩師の足利先生が一昨日(2月4日)に亡くなっておられたことを知った。享年97歳だった。 ショックではあったが、実は 2005年の10月に先生と最後の握手を交わしていた時に、別れを覚悟していた。
2005年の10月16日に、初老の紳士が来店された。「入院中の父親のメガネだが、レンズを読書用の度数に交換してもらいたい。」 と言われ、メガネを見るなり、足利先生のメガネだと直感し、お尋ねしたらやはりそうだった。足利先生は胃癌に罹患され、手術は 成功したものの、術後に脳梗塞が発症したとの息子さんの説明だった。
私は万感の思いでメガネを仕上げると、病室の足利先生に届けた。先生は私を認識されたようで、堅い握手をして分かれた。 後で支払いに見えた息子さんに、今回は代金は頂かないことをお伝えすると、かなり遠慮されたが、今までの足利先生との 付き合いから、私の見舞いの気持ちであることを説明して理解していただいた。 足利先生は、メガネをお届けした日 に退院され、老人養護施設に入られた。 私は息子さんに名刺を渡したが、息子さんは自分の連絡先を語られることはなかった。
その後、足利先生からの音信はなく、施設宛に出した年賀状も返信が来なかったので、こちらのことは、もう認識しておられなかったのかも知れない。 足利先生の最後のメガネを、私は写真に撮っていた。 大切な片身になった。